「信長」たちが部屋に入ると、部屋の主である狼は無言で出迎えてくれた。首輪はついているが鎖ではつながれておらず、彼の運動量を考えてか、だだっ広い部屋の中に運動用の道具がぽつぽつと置かれていた。金色の瞳で一瞥をよこすと、興味を失ったように再び眠りにつこうとする。
「すまない、「ロボ」。話がある」
しかし、「ジェロニモ」の言葉に耳を立てると、億劫そうに立ち上がった。更にこちらをじっと見つめ、前足で床を軽くひっかく。早く要件を言え、ということだろうか。そんな人間じみた様子を見て「信長」は感想を漏らした。
「賢そうだのう」
「実際、我々の言っていることはほぼ理解しているだろう。E遺伝子の影響なのか、あるいはもともとの素質なのか。それは分からないが、彼自身が至って理性的なのは確かだ。問題は――E遺伝子である狼王ロボの方だ」
狼王ロボ。アーネスト・シートンの手記に登場する狼であり、アメリカ・ニューメキシコ州で家畜を襲うなどの被害を出していた群れのリーダーだ。力強さと賢さを併せ持ち、普通の手段ではとらえることができないと考えたシートンは、彼の妻ともいえる群れのメス狼を捕らえ殺した。そして、それに冷静さを失ったロボは捕らえられ、鎖に繋がれたまま餓死したという。
E遺伝子が歴史上において通常の進化から逸脱した傑物を基にするというならば、確かにこのロボは狼としてとびぬけた傑物と言えるだろう。しかし――。
「「ロボ」よ。頼みがある。人間とともに戦えるか?」
「■■……」
「ジェロニモ」の頼みに対し、「ロボ」が漏らす声は重々しかった。それはそうだろう。たとえ「ロボ」自身がそれを許しても、E遺伝子のロボは許すまい。人間に対する恨みは骨髄に徹するだろう。
しかし、今は猫の手も借りたい状況だ。狼だろうと何であろうと構うものか。
それが、人間に牙をむく存在であろうとも。
「わしからも頼む。ほんの少しでよい。我らを乗せて走ってはくれぬか」
「■■■■――!」
「ロボ」が鋭く吠える。彼の身から立ち上る怒気が周囲の空気をゆがませ、彼より二回りも大きい狼の輪郭を形作った気がした。見間違いかと思うほど、一瞬だけ。
「彼の首輪にはアンチE遺伝子装置が組み込まれている。だから心配はないはずだが……」
「それがいかんな」
「信長」はすたすたと「ロボ」に歩みよると、彼の首輪を探った。帽子の下の内心では怯えっぱなしだが、体の内側から湧き上がる衝動がそうしろと突き動かしていた。
「■■■■ッ!」
「そう暴れるな。今外す」
「待て、「信長」。危険だ」
「……分かっておる。わしとて、狼を家臣にしたことはないとも。しかし、今の状況は生前の最期と同じじゃ。これでは怒りが先だって仕方なかろう。首輪を外しても、今は抑え役もいるしのう」
「危ないと思ったら僕は勝手にやるが、いいか?」
「アヴィケブロン」がAUウェポンを構えて言う。
「もちろんじゃ。頼むぞ。……さて、これでよい」
首輪が音を立てて落ちると、「ロボ」は大きく飛びのいた。
「■■■■――」
「さて、どうでるか」
思わず、「信長」たち三人も身を低くして構えた。その時だ。
「■■■■!」
吠え声とともに「ロボ」が「ジェロニモ」に向かって突っ込んだ。「アヴィケブロン」が咄嗟に床に手をついてゴーレムを呼び出そうとするが――。
「む?」
「おお?」
「ロボ」は一気に軌道を変え、「信長」にとびかかると、彼女の頭上をかすめるように飛んで背後に着地した。狼は瞬発力よりも持久力が売りだと聞いているが、それでも不意を突かれたせいか、咄嗟に反応することができなかった。
「まさかフェイントとは……」
「うむ。……うむ?」
彼の頭脳に改めて感嘆しつつ、背後に振り返るとおかしな光景が見えた。
「ロボ」が木瓜紋のついた帽子をくわえている。まさかと思って頭上を探れば、指先がむなしく黒髪を探るだけだった。
にやり、と笑われた気がした。「ロボ」は大きく首を振って帽子を投げ上げると、落ちてきた帽子に頭を差し出し、器用にもすっぽりとかぶって見せた。
「■■■■!」
一吼えすると、「ロボ」は踵を返し、ドアの脇のボタンを肉球で押した。自動ドアがあっさりと開き、狼は部屋の外へと駆けだした。この間、わずか三秒足らず。
「…………はっ」
「追うぞ!」
「走るのは苦手なのだが」
「いいから、つ、ついてきて! お願い!」
昨日に続き帽子をなくしてしまった真緒は「アヴィケブロン」たちにたどたどしく指示を出した。
三人で慌ただしく狼の跡を追う。部屋を出て右に曲がったはずだが、どこにも姿が見えない。それもそうだ。狼の走る速度はローペースでも時速30キロメートル、全力では時速70キロメートルにもに達すると言われる。百メートルを十秒で走る人間がようやく時速36キロメートルと言えば、その速さが分かるだろう。
近くにいたスタッフたちを捕まえて「ロボ」を見ていないか聞く。
「え? 帽子をかぶった狼? レクリエーションか何かかと思って見過ごしてしまったが……」
「え? あれって本物の狼なのか? ああ、先月捕まえたっていう……」
「どっち行ったっけ? 速すぎて目で追えなかったよ」
「……どうも」
これが信長モードなら「たわけ!」と叫んでいるところだが、今はそんな度胸もない。それに彼らを責めるのも無理だ。もし自分が彼らだったら、帽子をきちんと被った狼を見かけても、咄嗟に非常事態と判断し、周囲に知らせようなどとは思わないだろう。「ロボ」はそれも計算の上で、帽子を奪い、きっちりとかぶって逃げたのだろうか。
とにかく今は時間が惜しい。こうしている間にも他の小隊は各地で戦いを続けているのだ。
作戦決行は明日の日の出と決めている。おおよそ五時半とすると、今が夜七時くらいなので九時間半。ホルダーたちの仮眠や作戦前のウォーミングアップを考えると、すぐにでも「ロボ」の協力を取り付けなければいけないというのに――。
真緒は指令に通信をつなぎ、判断を仰ぐことにした。
「こちら「織田信長」です! 指令、今よろしいですか?」
『はい。何でしょうか。ああ、頼まれている兵器や設備の手配は順調ですよ。軍事方面のアドバイザーも手配済みです』
「ああ、それはどうも……じゃなくて! 「ロボ」が私の帽子をもって逃げ出したんです!」
『……どういう状況ですか、それは?』
「とにかく、「ロボ」の協力を取り付けるのに苦戦してます! どうしたらいいでしょうか!」
『ええと……仕方ありません。トンネル攻略作戦に向け、全ての人員を最優先で配置すると決めています。A・ローガン内の人員への指揮権を一時的に貸与します。それでどうにかなりますか?』
「ありがとうございます! っぜえ、っぜえ」
『大丈夫ですか?』
「今、走ってて! では、失礼しますっ!」
走りながら通信を切ると、ちょうど視界の先の広場で「ロボ」がくつろいでいるのに気が付いた。周囲の人々は帽子をかぶってあくびをしている狼を興味深そうに見るが、異常事態だと気づいているものは少ない。その数少ない一人がこちらに駆け寄ってきた。
「ミス・ロクテン。そ、その……あの狼は、一体? 騒ぎになって刺激してはいけないと思い、見張るだけにとどめていましたが……」
「ああ、やっとまともな人が……。ありがとうございます」
「よし。僕の能力で周囲を封鎖しよう」
「アヴィケブロン」が床に手をつくと、けたたましい音とともに床材がはがれ、巨大なゴーレムを形作った。合金のゴーレムたちはスクラムを組んで広場から伸びる通路をふさごうとする。
「■■■■■■■■■■――!!」
だが、「ロボ」はそれを許さなかった。周囲の壁をびりびりと揺らすほどの遠吠えを放つとともに、その身が青白い光に包まれる。一瞬にして体長が三メートルを超す狼の輪郭が形作られ、周囲の人々がようやく事態の異常さに気づいて悲鳴を上げた。
「来るか!」
「いや……?」
「■■■■■■!!」
身構えたこちらに対し、「ロボ」がとった行動は消極的だった。こちらに背を向けると、一つの通路をふさぐゴーレムをぶち倒し、空いた隙間へと体をねじ込んだ。AUウェポンを解除し、小柄に戻った体は難なく隙間をすり抜け、またどこかへと走り去ってしまう。
今更のように鳴り響く警報の中、三人のE遺伝子ホルダーは顔を見合わせた。
「こっちを傷つけるつもり、ないのかな?」
「一体何のつもりだ?」
「というより、これは……遊ばれている?」
帽子を奪った時の笑みのような表情。あくびをかみ殺してこちらを待ち構えていた態度。だとすれば……。
「「アヴィケブロン」、お願い。これから先、AUウェポンは無しで。「ジェロニモ」も」
「分かった。が、どうするつもりだ?」
「もちろん、捕まえる。帽子も取り返さないと。ただし、武器は無しで」
真緒たちはA・ローガンの指令室に駆け込むと、つっかえつっかえで周囲の人々に叫んだ。
「あー、その、「織田信長」です! 指令より、ここの、A・ローガンの指揮権を一時的に貸与されています! 狼を捕まえます! あと警報! 警報止めてください!」
「帽子が無いとダメダメだな、君は」
「ああもう、そう思うならそのお面貸して! この際かぶれるものなら何でもいい!」
「すまないが、この仮面はアレルギーと皮膚病のせいで手放せない。諦めてくれ」
「仕方ない。そこの君、彼女に帽子を貸してくれるか」
演技のスイッチとして帽子を条件づけていたせいで、帽子が無いと途端に心細くなる。いつまでもこんなことではダメだとわかっているのだが。
「ジェロニモ」がスタッフから借りてくれたDOGOOのシンボル入りの帽子をかぶり、心を落ち着かせる。少し感触は違うが、四の五の言ってはいられない。
真緒の眼がほんのわずかに赤く光った。要塞中に届くよう設定してもらったマイクを握り、叫ぶ。
「A・ローガンの全人員に次ぐ! こちら「織田信長」じゃ! 現在「ロボ」が、そのーあれじゃ、先月捕まえた狼のE遺伝子ホルダーが帽子を被って逃げておる! 奴から帽子を奪い返せ! くれぐれも、銃だの警棒だのは使わんように! あくまで遊びじゃからな! 繰り返す――」
やはり本調子ではない。どうにか放送を終え、ゼイゼイと息をついていると、「アヴィケブロン」がこちらから帽子を取り挙げた。
「え? な、何を」
「ああ。僕のAUウェポンならば、ゴーレムにしなくとも少々造形を変えることができるのでね。そこの壁をはがして作ってみた。どうだろう」
そう言って差し出されたのは、歪ながらも木瓜紋を模したピンバッジだ。それを帽子に取り付けると、ほんの少しだけ調子が戻った気がした。
「うむ。いくらかよいな。感謝する」
「それは良かった」
「しかし、事情が事情とはいえ床やら壁やら引っぺがして大丈夫なのかの?」
「ああ。おそらくあとで「ジャンヌ」に怒られるから、覚悟しておこう」
「……で、あるか」
「二人とも、急ぐぞ」
先に駆けだした「ジェロニモ」を追い、「信長」たちは駆けだした。
*
なるほど、相手はこちらのルールを汲んでくれたらしい。先ほどから捕まえようとやってくる人々は、誰一人として武器を持っていない。また、自分ではなく、帽子をとろうと必死になって手を伸ばしてくる。
いいぞ。
人の体は走るのにはあまりにも不向きだ。その分前足で小器用な真似ができるのは知っているが、それも今の状況では役に立つまい。一跳びすれば悠々と追手を振り払い、一駆けすれば軽々と引き離せる。人海戦術で来ても無駄だ。こちらのルートを読んで待ち構えても無駄だ。賢さと力強さを兼ね備えた自分には敵うはずもない。
どうだ、この身に眠る祖の狼よ。
自分の痛快さが伝わっているか?
彼らの必死さが伝わっているか?
「やーっとこさ見つけたぞ「ロボ」よ! わしの帽子を返せぇ!」
「待てと言われて待つ泥棒がいるとは思えないが」
「二人とも。このペースだと「ロボ」はおそらく半日は走り続けられるぞ。むやみに追い掛け回さず、策を練った方がいい」
「だぁ――!」
そしてなにより、彼らの愉快さが伝わっているか?
「ロボ」は「信長」たちから逃げ回りながら、笑みを浮かべた。
かれこれ一時間以上も逃げ回っている。自分はまだまだ余裕だが、彼らは大分参っているようだ。勝負をかけるとすれば、そろそろだろう。
「よーし! 絶対崩すなよ!」
「おう!」
「おう!」
やはりだ。行く手を阻むように、人の壁が作られている。祖の狼の力を借りずにここを通るのは無理だろう。一度止まり、背後の「信長」たちの方へ取って返す。
「来た! ぬかるなよ!」
「分かっている」
「よし」
三人は気合十分といった感じだ。その背後からも何人もの人が押し寄せている。ここが勝負どころだ。
「■■■■!」
自分は一吼えすると、首を振って帽子を放り投げた。まさかそうすると思わなかったのか、「信長」たちの注意が頭上に舞った帽子に注がれる。狙い通りだ。
「ぐえっ」
「ぬおっ」
彼らの注意が上を向いている間に、自分は壁を蹴って三角跳びをした。そして先頭にいた背の低い「信長」の顔を踏み台に更に高く飛ぶ。続いて後続の顔を踏みつけ、帽子を回収しつつ、人の波を踏み越えて切り抜けた。
「や、やりおったな!」
「なぜ君は踏まれなかったんだ、「アヴィケブロン」」
「仮面で足が滑りそうだからか?」
「言っとる場合か! 追うぞ!」
先頭集団から状況が伝わっていないのだろう。逆走して来る自分に驚き、後続の集団が色めき立つ。ぶつかり合い、倒れてしまう人々すらいた。それでもこちらに手を伸ばす彼らをすり抜け、目を盗み、通路を駆け――。
しまった。
「やっと、こちらの策が通ったか!」
そう言って「信長」が追いかけてくるが逃げ場はない。何せ、この広場の通路は、今自分が走ってきた一箇所以外は全てゴーレムの残骸でふさがれているからだ。
自分は最初の広場に戻ってきてしまっていた。
*
ようやく追い込んだ。
ここは最初にゴーレムを使って道を封鎖した広場だ。「アヴィケブロン」のゴーレムは操作を止めれば自重に負けてただの岩や砂の塊に戻ってしまうが、今回は床や壁の素材を使っていたこともあり、壁としての機能をまだ保っていた。流石に「ロボ」と言えど、AUウェポンを使わずに金属や鉄筋コンクリートの壁をなぎ倒せたりはしないだろう。
使わずにいてくれるなら、だが。
「追い込んだはいいが、逃げられたりはしないのか、「信長」」
「そういうルールならば、おそらくは。一度「アヴィケブロン」がウェポンで道をふさいだから、こちらも一度ウェポンを使って壁を破った。あやつはそういうつもりだろう。これは狩りではない。あらゆる手段を使うつもりはあるまい」
「遊び、か」
ふと、「ジェロニモ」が笑みを深めた。
「狼は子供のうち、群れの仲間との遊びを通して狩りの訓練をする。群れの仲間たちの動きや癖を知り、大人になればそれを生かして一糸乱れぬ狩りをする。……そういうことなのか? 誇り高い狼よ」
「■■■■――」
まだ終わっていない、とでも言いたげに、「ロボ」は姿勢を低くして唸った。ならばこちらも。
「せぇーの!」
三人同時にとびかかる。やはり「ロボ」は左右に飛び交いフェイントを仕掛けてきた。しかし、こちらはそれに惑わされない。それぞれがあらかじめ決めておいた範囲に「ロボ」が飛び込んできたのを捕まえることに集中し、自分の領分以外を無暗に追いかけることをしない。果たして――。
「ジェロニモ」の指先がかすめ、帽子が宙に舞った。
「■■■■!」
「させるか!」
「信長」と「ロボ」が同時に飛んだ。指先と鼻先がぶつかり、帽子に迫り。
「とっ――た!」
「■■■■……」
帽子は持ち主のもとへと返っていた。
「信長」はさっそく帽子を被り慣れた方に変え、横で嘆息している「ロボ」に問いかけた。
「さて、と。気は済んだかのう」
「■■」
短く鳴くと、ロボはどこかに歩き始めた。おそらく部屋に帰るのだろう。
これで一件落着か。
そう思っていたら、「ロボ」が急に「アヴィケブロン」をど突き倒し、彼の手から零れ落ちたAUボールに前足をかけた。
「えっ」
「なっ」
反応する暇もない。ボールの補助もあってか、先ほどよりも更に一回り大きく感じる、力強い狼の体躯がみるみる間に構築され、要塞ごと揺るがしかねない遠吠えを上げた。
「■■■■■■■■■■――!!」
「な、なんじゃ? まだ何かあるのか?」
「気をつけろ、「信長」」
「痛いな……。僕のボールは戻ってくるのか?」
三者三様に「ロボ」を見守る。青と銀の毛皮に怒気を孕んだ狼がゆっくりとこちらを見た。
「■■■■」
何かを伝えようとしている。「信長」は恐る恐る近づき、「ロボ」の眼前に立った。しかし、狼は動かない。もう少し勇気を出して、その額に触れた。
次は負けない。
「え……?」
声が聞こえた気がして、もう一度触れようとした。しかし、その輪郭はすでに光に溶けていた。光の中から姿を現した「ロボ」は、AUボールを鼻先で「アヴィケブロン」の方に押しやると、今度こそ部屋に向けて歩き出した。
「どうした? 何か伝わってきたのか?」
「うむ。……次は負けない、と」
「次があるのか」
AUボールを拾い、ほとほと参った様子で「アヴィケブロン」が言う。
「信長」はそんな彼にあくまであっけらかんと笑って言った。
「うむ。次も勝つぞ。その前に――この作戦、なんとしても成功させねばな」
「ああ」
「よろしく頼む」
これで役者はそろった。
織田信長。
ジャック・ザ・リッパー。
アヴィケブロン。
ジャンヌ・ダルク。
ジェロニモ。
ジョルジュ・メリエス。
ビリー・ザ・キッド。
ウィリアム・シェイクスピア。
そして、狼王ロボ。
「いざ、出陣じゃ」
*
翌朝午前五時半。コスタリカ、トンネル太平洋側。
「さあて、者ども。準備はよいかの?」
コスタリカ、トンネル大西洋側。
『こちら「ジェロニモ」。準備良し』
コスタリカ、ニカラグア湖近くのウパラ上空のヘリコプター。
『こちら「メリエス」。オッケーですよ☆』
『こちら「シェイクスピア」。――ほんとに吾輩も出ねばならんのです?』
「メリエス」らのヘリコプターの真下。
『こちら「ジャック」。頑張るよ』
『こちら「ビリー」。誰が一番多く倒せるか競争しようか』
ウパラから南東に3キロメートル地点。
『こちら「アヴィケブロン」。気が重い』
『こちら「ジャンヌ・ダルク」。この作戦、本当に大丈夫なんですか?』
『■■■■……!』
各々の声を聴き、「信長」は大きくうなずいた。
「うむ。全員元気そうで何より。では健闘を祈る」
通信機の向こうから不満やら何やらがあふれそうになったが、間一髪通信を切ることに成功した。
ちょうどその時、海面の下から地響きが上がった。「戦艦型」を誘い出すべく投下された魚雷がトンネルの入り口付近で炸裂したのだ。
「敵影確認! 「戦艦型」です!」
「よし」
AUボールを握りしめる。体の内から衝動が沸き上がり、口の端が吊り上がって三日月を作った。光に包まれたボールが膨れ上がり、あっという間に銃を形作る。銃の大きさは真緒の身の丈ほどもあり、旗印たる永楽通宝をあしらった銃口は
輪郭を定めた銃から光が散ったまさにその時、眼前の海面に「戦艦型」が姿を現した。
備えは良し。空にはかき集めた空中要塞。背後には甲板上に並べた戦車の群れ。そして何より、それぞれの戦場で出番を待つ仲間たちがいる。
「
作戦の幕が切って落とされた。
原作2巻の範囲が何とか終わりました。今後ともよろしくお願いします。