今作品は前に間違って消した作品を編集し直した物となっております。あらすじにもある通り、ゆる〜く明るくやっていけたら良いなと思います。
最初なんで少しグタグタかもしれません。どうぞ。
01.チュートリアルはスキップ可が当たり前でしょう?
12月の朝は寒い。
通学路を一人歩きながらしみじみ思う。冬が一番嫌いな季節だと。
周りには名も知らぬ同校の生徒がちらほらと歩いているのだが、片手で数える程度しか友人がいない俺にとって、通学路を誰かと一緒に歩くなど滅多にない。
受験という人生で数少ない壁にぶつかっている俺たちなのだが、友人はともかく俺に関しては自分の成績より二つ下の高校を選んでいるため焦りなど感じていない。
人生で
どうでもいいことだが、俺は転生者である。と言っても、その事に気付いたのは中学に進級してからだ。
小学生の時は、転生の障害と言うのか、前世の記憶が一切ない状態のまま12年間を生きてきた。その12年間で初めて出来た友達が、この世界の主人公、結城リト。
だけど、最初に会った時は俺の知っているリトではなかった。どこにでもいるような、サッカー好きの小学生そのものだった。
前世の記憶が無かったからか、小学生の俺はこの世界の最重要人物と簡単に接点を作ることが出来たのだ。子供って怖い。
でも中学に上がって間もない頃、リトが何にもないところで転んで女子生徒のパンツを見たと言うハプニング起こした。
その時に、俺は全部思い出した。思い出してしまった。
自分が【ToLOVEる】の世界に入り込んでしまった事。それによって既に変わりつつある世界のこと。
もちろん、これから先どうなるのかほとんど覚えている。覚えているからこそ、俺はみっともなく、これ以上ないくらいにリトを妬んだ。
あれだけのラッキースケベを起こしても許され、毎日毎日美少女に囲まれ、そのほとんどの美少女に好意を抱かれている。
この時ほどリトを妬み、神を恨んだことはなかった。
どうして自分をここに送ったのだと。どうして自分がリトの立場につけなかったのかと。
紙面上でしかリトの事を知らなかった俺は、リトに強く当たってしまった時期があった。
自分が恵まれていないのをリトの所為にし、一方的にリトが悪いのだと小学生じみた決めつけをしてしまっていた。
それでも尚、リトは俺のことを助けてくれた。
どんなに俺が嫌おうと、どんなに俺がリトを拒絶しようと、あいつは俺を見捨てなかった。
自分が情けなくなった。自分の心の狭さにうんざりした。前のも含めた今までの人生で一番自分を恥じた。
リトという存在を知り、器の大きさを見せつけられ、自分のちっぽけさを知った。
彼は苦労しているのだ。望んでもいない
自分の弱さを知った。彼の苦労を知った。なら、自分の役割を果たそう。
そんなことを決意したのがちょうど一年半くらい前。当時のことを思い出しながら、先に着いているであろうリトのいる校門に向かう。
まぁ結局、何が言いたいかというと…………
どうやらここは【ToLOVEる】の世界で、俺こと柊 ソラは転生したのだ。
*
「よっ、朝から女子生徒を視姦する変態スケべ君」
「朝っぱらからひでぇ言われようだなぁ!?」
おっと、朝から元気なようで。騒ぐならあちらへどうぞ。
軽い冗談にも本気のツッコミをくれたのが噂の結城リトくん。側から見たら突然叫び出す変人さん。どんまいリトくん。
「どうどう。それで?今日もいつも通りに視姦?」」
「視姦っておま……!してないよ!」
「は?社会でそれは通用しないんだよ?分かってんの?」
「急に辛辣ッ!?今日のテンションおかしいぞ!?」
そりゃあ、朝っぱらからリトの所為で恥ずかしい思い出を思い出してしまった八つ当たりです。他意は一切ございません。
ぎゃーぎゃー騒ぐリトが先ほどまで見ていた方向には、ちょうど下駄箱に友達と話しているリトの想い人が。無論、西連寺春菜のことだ。
原作がまだ始まっていないためなんとも言えないが、このままで本当に良いのだろうか。西連寺とほとんど接点ないし、今もこうして見てるだけ。相変わらずの初さになんだが……
「はぁ…………」
「毒舌の次にため息とかね、もうなんなのお前」
「お前さ、このままじゃ西連寺取られるよ?良いの?」
「は?誰にだよ」
いや怖い。さっきまで叫んでた奴が急に真顔になると怖いから。つい笑い出しそうになるからやめようか。
「冗談だよ、つか早く教室行こ」
「なんだよ、脅かすなよ……」
大袈裟な動作で安心するリトを他所に、さっさと教室に向かう。
先ほどは冗談と言ったが、強ち間違いではない。だって西連寺さんよ?美人で可愛くて性格良くて可愛くて成績優秀で可愛い西連寺さんよ?
そんな才色兼備な西連寺さんなので、モテないわけがない。噂で聴いた程度だが、告白されることも多々あるらしい。
今のところ全部断っているらしいが、正直なところ、誰かが西連寺を奪ってしまうのではないかと思ってしまう。それほどまでに、リトは西連寺に手を出さない。うぶな所は良いのだが、安心して良いのだろうか。
正直なこと言うと、とっとと告白して付き合いやがれこの野郎だ。
「はぁぁぁ…………」
「なんで救いようのない乞食を見るような目でこっちを見るの?」
「ストレスで胃がキリキリ痛いんだよ、プリン奢れ」
「理不尽ッ!!」
はて、理不尽だろうか。結城リトのこれから起きる災難に俺が必ず干渉してしまうのだから、プリン奢るくらいで許すあたり、かなり寛容な心を持っていると自分で思うよ。
教室に入っても俺たちは近くに座る。なぜか席替えはしないことになっており、あと3ヶ月ほどはこの状態が続いていくらしい。
まぁクラスの中に友達どころか知り合いすらいない俺にとって、リトが近くにいる方が学校生活を満喫できる。主に、リトをからかえるから。
でも学校は好きではない。それは転生して自分の好きな世界になっても変わらない。義務教育なんてクソ喰らえだ。
そもそもToLOVEるが始まるのは高校に入学してから。その前にある今の中学校生活というのはほとんど謎に包まれたままだ。知ってることもほんの一握りあるか無いかくらい。
正直早く卒業したい。胃が痛くなることが多くて薬を使うようになった始末だ。
「前から気になってたんだけどさ、最近考え事多いよな?小学校の頃は馬鹿みたく一緒にはしゃいでたのに」
「消化器割って怒られ、屋上からプールに飛び込んで怒られ。またやる?」
「絶対やだ。なんか悩み事か?」
「友達の恋愛事情が面倒でね」
「それ言われると何にも言い返せなくなる……」
急にシュンとなるリトを一目見て大きく深呼吸。
スーー、ハーーー。
「オーケーマーク。まずは状況整理だ。まず、中三になってから西連寺と何回話した」
「マークって俺かよ……何回って言われても……」
「大方予想はついてる。二回か三回。どっち」
「うぐっ……はぁ……一回だよ」
…………へーーー。一回なんだ、ヘーーー。たったの一回だけなんだへーーー。
「一時限目は移動教室だ」
「待って!?どうか見捨てないでくださいッ!!」
いや常識的に考えて無理。どんな恋愛小説でも好きな女の子との会話は普通三回くらいしてるもんだぞ。それを一年でたった一回?はっ。
「俺の前でいつも強い口調で宣言出来るのにどーして西連寺の前で出来ないの?なんなのバカなの?いつでも告れるけど、今はその時じゃないとかイキった思考回路してる奴らと同じ脳みそなの?バカなの?アホなの?死ぬの?」
「やめてッ!無性に傷つく言葉をサラサラ吐くのやめてッ!?」
「重く考えすぎるのもよく無いよな。軽く行け。多分レウス装備の話すれば盛り上がる」
「女の子に急にモンハンの話とか普通するか?お前こそバカだろ」
「はっ、学年トップ10を常に維持している俺をバカと言うとかね、ゴキブリを神様として崇めてるのと同じだよ?」
「そこまで壮大にならないだろ」
少し話して分かったのだが、意外なことに西連寺はモンハンネタを知っている。て言うか経験者だな、アレは。ラギア弓縛りで行ったって言ってたもん。PS高いんだろうなぁ。今度誘ってみよ。
「そんな事どうでも良いけど、実はさ……」
「どうでも良いって言った!?俺の恋をどうでも良いって言った!?」
「どうどう、落ち着け。急がずとも運はお前を味方する。多分、きっと、そうだと良い」
「最近お前、俺で遊んでない……?」
「予想じゃなくて確信か」
「こ、こいつ…………ッ!」
リトが恨めしそうにこちらを見ながら手を握りしめているが、どうか忘れないでほしい。
俺はリトの友人で、俺自身がリトの恋の成就を願っている。ここには嘘偽りなど無い。本心でそう思ってる。
だからと言って、ちょっかいを出さないとは言っていない。以上
「お前が好きな人出来たら真っ先にからかってやる……っ!」
「受験シーズンに恋愛沙汰とか、頭の中お花畑だな。失礼、マリーゴールドだけか」
「マリーゴールド?なんで?」
「花言葉は『悲しみ』『嫉妬』『絶望』だ」
「……もう一周回ってすごいと思うよ、お前の頭」
自論になってしまうが、中3で付き合ったところで高校違ったら別れるしかなくないのでは?遠距離恋愛の破局率は8割を超えると言われているため、付き合った所ですぐに別れるのがオチ。
そもそもこの世界は高校からが本当のスタート。
「痛いなぁ……、胃がキリキリ痛いなぁ……」
「なんか……ごめん」
ある程度好感度を上げてから本気で攻略しに行くギャルゲーの基本が、リトの場合だと話すことすら難しい事に今更気づいた。下手に動きたくないが、何か手を打つべきなのだろうか。
ちなみに本日の授業は胃が痛いと言って一日中サボりました。少しは僕に休暇をください。頼むから早く