どうやらToLOVEるに転生したらしい。   作:雪餅

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プロローグを1話で書いたつもりだけど、こっちを読んでもプロローグな気がします雪餅です。


中学校編はもう少し続けるつもりなので、少々御付き合いを。どうぞ。


02.嫌よ嫌よも好きのうち。

放課後。それは、学生にとって何よりも響きのいい言葉なのだろう。

 

 

ある者は友との会話に花を咲かせ、ある者は部活動に専念し、またある者は愛する者と帰路を共にするのだろう。

それも無理はない。放課後とは、学生が一日中勉強した後のご褒美みたいなもの。勉強が好きと言う人以外にとって、放課後という単語は甘美な響きなものなのだろう。

 

 

俺の場合、放課後と聞いて真っ先に思い浮かぶのは東野圭吾の推理小説だ。当時本を読むことが好きだった俺は東野圭吾作品の数々を読み漁っていた記憶がある。しかし残念ながら、こちらには東野圭吾の小説は存在しておらず、全く知らない作者の小説を読む羽目になっている。

 

 

だが受験生というのはかくも悲しく、大半が塾や家で数々の参考書と睨めっこしているだろう。それも全て志望校に合格するため、と言えば自然とやるしかないという使命感が出てくるだろうが、俺から言わせれば良いように言い包められているだけだ。

 

 

時に大人は、自ら言った言葉に責任を持たず、矛盾したことを恰も自分が正しいと言わんばかりに堂々と発言する。何故なら、相手は子供だからだ。もしも矛盾点を生徒に突かれたとしても、自分の方が人生を多く生きてきたのだと訳の分からない意見を述べ、自分の間違いを強引に正当化しようとする。

 

 

嗚呼、なんて汚い世の中なのだろうか。教師という立場を利用して生徒たちに間違った情報とやり方を提供し、それを学んだ今の世代が次の世代へと受け継がせてしまう。正に負の連鎖。義務教育なんてクソ喰らえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を本を読みながら考える冬頃。太陽は西の空へと沈みかけ、夕焼けがとても綺麗に住宅街を照らしている。

 

 

読んでいた小説から栞が落ちる。ため息を吐きつつ栞を拾い上げ、本に挟んで近くの机に本を置く。

世の中は不公平なもので、真面目さと貧弱さで有名な俺に図書室の整頓を全部投げ出してきた。「柊なら余裕だよな?」とか言ってきた教師に軽く敵意を覚える。まぁ案の定サボってるけど。

 

 

「やっぱ寒いな」

 

 

外では北風がビュービュー吹いているのにも関わらず、図書室の窓を全部開けて換気したのを忘れていた。めっちゃ寒い。けど良いや。

 

 

無駄に高い椅子から立ち上がり、軽く頭を回してみるとバキバキと音がする。最近運動してなかったしなーなどと思いながら面倒な本の整理を再開する。

こんな所に一人だけでいるのにも理由はある。といっても大した理由はなく、ただ一人で考え事をするだけだ。

 

 

「誰だ、こんなとこに悪魔大百科置いたの」

 

 

知っての通りこの世界は【ToLOVEる】。一見普通のどこにでもある街にいるが、この世界ではどんなに非常識なことも大抵許される一般常識ナニソレの世界だ。

校庭に隕石のような宇宙船が落ちて来ようが宇宙人がいようが受け入れてしまう。そんな世界に生まれ変わった常識人(仮)な訳だが、正直思っていた以上に楽できない。

 

 

多分それは、小学生の頃にリトと会ってしまったからだろう。その時から原作は開始しておらずとも原作介入は確実になってしまったのだ。別にその事を悔やんではいないが、これが結構神経使う。

俺の立ち位置というのは、メインキャラに関わっている友人、即ちサブキャラというところだろう。自分からは大それた事件は起こさないものの、恐らくこれからの話一つ一つに俺が付くのだろう。

 

 

あくまでも俺の願いは何事もなく原作が終わる事。それさえ叶えば後は結果論で全て上手くまとまる。

 

 

ではそうするために何が必要か。自分の脳をフルに使って考えたが、具体的な案には至らなかった。なんせこの世界は俺の知っている原作情報以外は予測不可能。原作で描かれてない日常をどう過ごしているかなんて分かるわけもなく、もしかしたら原作者すら知らないかもしれない。

 

 

それをただの一般ピーポー(仮)がその場で対応して上手く事を運ぶなんて出来るわけない。試験内容を全て予測するくらい難しい。

俺に出来ることは、最悪の事態に備えて慎重に行動すること。石橋は叩いて渡るより、より頑丈な素材で作り直した方が早いだろう。

 

 

頭に思い浮かぶのは、中3のクラス替えで西連寺と別のクラスになった事にションボリしていたリトの顔。そもそも同じクラスだろうがリトの場合は見るだけで精一杯。告白どころか喋ることだって数えるくらい。だが、それでいいんだろう。

 

 

「失礼しまーす……て、ソラだけか」

「やぁ、今朝ノートを運んでいたら女子のスカートの中に頭を突っ込んだ変態くん」

「えっ……!?ちがっ、あれはその……っ!!」

「安心して。偶然だって理解してるし、被害者の方も特に気にしてない」

 

 

当事者と被害者以外に漏れていないはずの情報を出され、顔を真っ赤にするリト。相変わらず女性の免疫がないようで安心するよ。

 

 

「なんでそれ知ってんの!?見てた人誰もいなかったよ!?」

「それは……ねぇ…………ふふふふふ」

「笑って誤魔化そうとするな!」

 

 

静かに怒りながらリトが近づいてくるが、相手にせず本の整理を続ける。淡々と作業こなす俺を見て諦めたのか、近くの椅子に座ったリトが大きなため息を吐いている。

 

 

「えっ、人生終了の時間?」

「ため息ひとつで人生終わってたまるか」

「逃げるのは幸せと名誉と恋心の三点セット」

「なにそれヤダ」

 

 

なにか悩んでいるような表情をしていたリトだが、これだけ話せればもう十分だ。すぐに悩み相談になるだろう。まったく、夜ご飯ご馳走になろう。

 

 

「ソラはさ、進路どうするの?」

「…………あ、今日面談だったのか」

 

 

この時期になってようやく中3らしい悩みをしているようだ。よく見ると、リトの手には一枚の紙が握られている。大方、進路の最終決定をするための資料だろう。

 

 

「うちは両親共々家にいる時間少ないしな、進学しようかすら迷った」

「えっ……進学しなかったら、どうするつもりだった?」

「リトんちで楽しく暮らそうかなって」

「それを本気で言ってるあたり、すごいと思うよ」

 

 

進路調査票を渡された際にそれを妹に話したら、久しぶりに本気で怒られてしまい、その日から一週間ほど口を聞いてもらえなかった。やっぱり、妹も一緒に誘えば良かったのかな。

 

 

「で、要件は?」

「西連寺の進学先知らない?」

「知らない。帰れ」

「対応冷てぇなぁ!!」

 

 

冷たいと言われても、知らないものは教えることができない。まぁ知ってるけど。

西連寺の進学先は九分九厘、あの有名な彩南高校だろう。宇宙人がやって来たり学校崩壊したり変態校長がいたりなどなど。確かに災難な学校だ。原作知らなかったら絶対行きたくない。

 

 

「ちょうど良い、西連寺に直接聞いて来い。そうすりゃこの一年での会話回数が二回に増えるぞ」

「それが出来ないから相談してるんだよ!」

「あー出た出た。何でもかんでもすぐに出来ない!って言って投げ出す若者。これだからゆとりは……」

「ソラ、ちょっと不機嫌?」

「義務教育クソ喰らえ」

「自業自得だと思う」

 

 

自業自得?はっ、笑わせてくれる親友だ。俺がそんなことするわけないのに。

論点がズレそうなので整理するが、結局は西連寺の進学先を知りたいと。俺が素直に教えれば済む話だろうが、面白いからもうちょっとリトで遊ぼう。

 

 

「なんか今すごい嫌な予感がしたんだけど」

「ははっ、何を言ってるんだリト。厨二病は卒業したろ?」

「なんで俺が厨二病だったっていう設定なんだよ!なってもいないよ!」

「まぁお前の場合、厨二病よりかは思春期か。西連寺と上手くいってる?」

「知ってて普通聞くかそれ……」

 

 

無論、上手くいってない。そんなことはとっくの昔から知っている。

なんせ原作でのリトと西連寺の関係は、両思いだがどちらもそれに気づいていない元同中のクラスメイトといったところ。

 

 

故に俺は、中学校生活においてリトと西連寺との関係を進展させるようなことはあまりしなかった。流石に大丈夫か?と思うところもあったが、グッと我慢して何もしなかった。別に案が何も浮かばなかったということでは決して無い。

俺とリトとの会話が響く中、図書室のドアがガラガラと音を立てて開いた。静かな図書室では音は響きやすく、俺とリトは入室者の方に視線を向けた。

 

 

「あっ、柊くんに結城くん」

 

 

まさかのヒロイン登場。唖然とする俺とリト。

なぜこの世界はこう、都合よく事が進んでしまうのだろうか。これも全てリトの主人公補正の所為だろう。そうだろう。そうに決まってる。

案の定、リトは「さ、西連寺……っ!?」と驚いたまま動かない。我が友人ながらなんと情けない姿だ。写真に収めておこう。

 

 

「やぁ、西連寺。いつもの席なら空いてるよ」

「うん、ありがとう」

「どうぞごゆっくり」

「…………ソラちょっと来い」

「痛いですリトさん痛いから……ッ!」

 

 

肩を握力で握り潰さんばかりの力を込めてくるリト。どうやらご立腹らしい。リトに引っ張られるがまま、本棚の後ろ辺りに連れてかれる。

 

 

「聞いてないぞソラ!西連寺がいつもここに来てるって!」

「西連寺は放課後いつもこの図書室で勉強してるぞ。はい今言った」

「そういうことじゃなくて!ど、どうすれば良いの!?」

「いや俺頼りかよ……」

 

 

俺は万能青狸じゃないんだから。都合よく使える道具なんて無いから。

相変わらず、好きな人の事になるとすぐに顔を真っ赤にして戸惑うところは変わってない。そんなリトの姿に安心してため息を吐き、ほんの整理していた手を止め、先ほどとは逆にリトの肩を掴んでやる。それはもう、絶対に逃がさないくらいの力で。

 

 

「いつまでも俺頼りじゃダメだリト。飛び立つんだ。イカロスのように」

「今そんな状況じゃないの把握して?」

「安心しろ、俺の後をついてくれば問題ない」

「一ミリも信用できない」

 

 

一ミリも信用されなくとも、一ミクロくらい信用されてるならそれで良い。俺は常に全力でプラス思考に走っていこう。

西連寺がいる机の近くの本棚で止まり、未だ緊張しっぱなしのリトの肩を軽く叩いてやる。

 

 

「安心しろリト。今日は告白するんじゃない、進学先を聞くだけだ。俺に進学先を聞いて来た時みたいに気安く行けばなんとかなる。多分、きっと、そんな気がする」

「あ、曖昧すぎる……」

「安心しろ、失敗したら愚痴聞いてやる。それいってコーイ」

「うわぁっ!?」

 

 

リトの背中を反転させ、ちょっと力を込めてリトの事を押し出す。友人の悩みにここまで付き合ったんだ、今日はリトに奢らせよう。

小さな小さな決意をしながら俺は本棚に隠れ、二人の様子を遠くから見守る事にしよう。

 

 

「ゆ、結城くん?どうしたの?」

「えっ!?あっ、えーっと……その」

 

 

おそらく今、リトは心の中でめちゃくちゃ焦っているだろう。証拠にほら、目も合わせられないし手で頭をかいてる。あれリトが考え事してるときによくやる癖だ。頭の中パニック状態なんだろう。だが見守ろう。

 

 

「その……さ、西連寺は、さ……その」

 

 

言葉が上手く出て来ていないようだが、少しずつ内容を伝えようとしてる。頑張れリト!あっ、ユキからメールだ。なんだろう……

 

 

「し、進学先は……どこにっ、うわぁっ!?」

「えっ……きゃっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

皆様方が忘れているかもしれないから言っておこう。ここは【ToLOVEる】の世界だ。非日常こそが日常の世界。故に───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───()()()()()()()()()も、この世界では普通のことであることをわかって欲しい。

 

 

 

 

 

結果、バランスを崩したリトが西連寺共々倒れ込み、西連寺のスカートにリトの顔がめり込んだ状態に。なにこれ非日常(日常)すぎ……。

 

 

「キャーーー!!」

 

 

西連寺の叫び声と一緒に響く平手打ちの音。西連寺は顔を真っ赤にしたまま帰ってしまった。

頬を抑えながら固まっているリトになんと声をかけたら良いものか。今回のは流石に俺が悪い気もする。ちょっと強引すぎたかもしれない。まぁとりあえず……

 

 

 

 

 

「西連寺、彩南行くって」

 

 

「もうヤダお家帰る……」

 

 

 

 

 

 

流石にリトが可哀想だったので帰りにアイス奢りました。

 

 

 

 

 

 




あくまでも今作品の主人公は今のところサブという役付なので、ヒロインは悩んでいるところです。要望があれば感想欄ではなく、僕個人に送って来てください。待ってます。


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