二週間以上間が空いてしまったことに自分でも驚いています。どうしても新しいゲームを買うとやり込んでしまいますね…。
それはともかく、UA3700越えとお気に入り数95超え、ありがとうございます!!もう少しで3桁に入れると思うととても嬉しいです!
どうかこれからも自分の作品をよろしくお願いします。それではどうぞ
「今日、夢を見た」
「へぇ、どんな?」
「リトが西連寺に振られて泣いてるところに、誰かが打った野球ボールが当たったんだ」
「何でお前の夢で俺被害にあってんの?不吉だよ?」
「そしたら急に笑い出してさ、そこで起きたんだ」
「お前の中で俺の評価はどうなってんの!?」
超純情の癖に神の加護かなんかのおかげで、あらゆる事態をラキスケによって掻き回す天才だとは思う。
朝から安定の全力シャウトをしてくれるリト君。周りの人たちは誰も何とも言わず、もはやリトが叫ぶこと事態日常と化しているのだ。まあその8割くらいは俺のせいだと自負している。
受験が終わり、とうとう中学校生活最後の登校日を迎えることになった訳だが、思い出を振り返ることもなくどうでもいい話をしている。
最後の日なんだから特別なことをしよう、とも思ったがそういう日に限って問題が起きることは知っている。だから今日もいつもと変わらず、どうでもいい会話を繰り広げていくことにした。
「まぁ、正夢になることはないと思うから安心してくれよ」
「前に缶で足滑らせた夢見た時本当に滑らせたから怖いんだよ……」
「大丈夫。今回は多分ない」
「なんでそんな自信ありげなんだよ……」
夢にまでリトが出てくるって、どんだけリトのこと考えてるんだが。いやない。原作のことを考えているだけだ。俺までがあっさり惚れるチョロインになっても誰得だよ。
「あ、そうだ。今日の夜、卒業祝いをやるからソラたちも来いって親父が言ってた」
「才培さん休んで良いの?締め切りとかあるだろうし」
「この日のために終わらせて、2日だけ休暇取ってるんだって」
子供のために休暇を取るお父さん、マジかっこいいです。
結城才培。リトや美柑ちゃんの父親であり、同時に三本の連載を抱えている人気漫画家だ。酒が入ると美柑ちゃんにウザいと言われるくらい絡んでくるが、仕事には一切妥協を許さない職人気質の持ち主。
ついでに言うと人使いが荒い。中学生だと言うのに俺にバイトを要求し、一日中ペンを走らされた記憶が残っている。あれ以来受験勉強を理由に断っていたが、今日会ったら再び呼ばれそうだ……。
「そう言うことならお邪魔させて貰うよ。ついでに西連寺にも連絡するか」
「っ!!こ、今回はやめておこう!!」
相変わらずの純情さに胸を撫で下ろし、俺たちは中学最後の通学路を歩き続けた。
*
「おーっす、リトー。それにソラー」
教室に入ると、どこもかしこも思い出話に花を咲かせていた。修学旅行楽しかったねーだ文化祭の準備大変だったよねーだと、話が途切れる間も無くどんどん喋り続けている。
そんなクラスの喧騒をBGMに本を読み漁る。すると誰だろうか、名前を呼ばれてしまった。ちくしょう、今良いところだったのに。
「……あーっ、だれ?」
「2年間一緒のクラスメイトの名前忘れたのか!?俺だよ俺!」
「ごめんなさい、僕子供はいないんで……」
「詐欺じゃねーよ!覚えてないのか!?さから始まってちで終わる!」
「さ……?さ、サンドイッチ?」
「猿山!猿山ケンイチだよ!」
このクラスでは全力シャウトが流行っているのだろうか。さすがに叫びすぎたよ?
猿山ケンイチ、リトの親友だ。リトとは対照的に女性に対しての興味が旺盛で、よくリトのトラブルを羨ましがっていたはず。
決して忘れていたわけではない。ToLOVEるに出てくる登場人物は全員もれなく頭に入っているが、中学に出てくる人は覚えなくていいやと思っていたから印象が薄くなっているだけ。特に遊んだ記憶も無いが、クラスの打ち上げとかで仲良くした気がする。
「まあまあ、落ち着けよ山猿」
「お前、わざと間違えたろ!?」
「生憎、冗談を言うのは好きじゃないね」
「この野郎……!」
「お、落ち着け猿山。ソラが変な奴なのは知ってるだろ」
ちょっと待ってくれ。どうして俺が変な奴っていう認識になってんの?それ聞いて猿山は納得しちゃってるし、周りから見た俺の評価どうなってんの?殆どの人と顔合わしたことないんだけど。凹むよ?
「そういや、お前ら卒業文集見たか?色んなランキングあったぞ」
「へー。リトは将来王様になりそうランキング1位だろ」
「なんだそりゃ。そーゆーソラはむっつりランキング1位じゃない?」
「お、それは当たってるぞ」
「な、なぜ……?」
「いや普通のことだろ」
二人の顔を見るに、クラス内の俺の評価は酷いものらしい。俺はリトの純情さを少しでも変えてあげたくてそういう知識を学んだり買ったりしていたが、この献身さが理解出来んとは。
「まぁそんなことよりだ。実はソラとリトに相談したいことがある」
「どうしたんだよ、そんな改まって」
「実は、卒業式の余韻で感極まってる女子に告白すれば彼女になれちゃうんじゃないかと思ってるんだけど……」
「帰れ山猿」
真剣な顔して何を相談するのかと思えば、少しでもこの猿を信じた俺が馬鹿だったみたいだ。
「だからお前はモテないんだよ。少し自重という言葉を学んでこい」
「モテないのは元からだよ!それに、このくらいの勢いじゃなきゃ一生彼女出来ないまま人生終わっちまうよ!」
「でも、そこら辺の女子を適当に狙うのはどうかと思うぞ?」
「俺にだって好みはあるさ!俺より身長低くて、美人で胸が大きくて髪が短くて……」
「あーあー、やめろ聞きたくない……」
そういやこいつ、高校で梨子に惚れるんだった。今ので全部思い出しちまったじゃねぇか。
確かにこいつは変態で下世話な思考をしている猿だが、一途なところは素直に褒めよう。けどそれすら叶わずに終わるんだからさすがに可哀想にもなってくる。
「おいソラ。なんで俺のことを捨てられた子犬でも見るような目で見るんだ」
「いや、うん。まぁ、来世いい事あるよ」
「なんで今世諦めなくちゃいけねーんだよ!諦めないからな!俺は絶対、彼女を作ってみせるんだ!」
「あっ、みんなの卒業文集載ってるよ」
「おー、どれどれ〜」
「俺の宣言無視するなよっ!!」
猿山の叶わぬ願いを聞き流し、俺たちは卒業式を迎えることとなった。因みに猿山は『キモ雄猿』という素敵なあだ名をつけられたそうだ。ドンマイ、猿山。
*
「くぁ〜!やっぱし、休みの日に飲むビールは美味いな!ソラも飲むか?」
「アウトですよ、才培さん……」
卒業式終わりの夜、俺たちは約束通りリトの家で卒業祝いを兼ねたパーティーを開いていた。パーティーといっても形だけで、いるのは俺とリトにユキと美柑ちゃん、それと才培さんの5人だけだ。互いに両親が忙しいため、俺と結城家で打ち上げをする際に全員が揃うのは滅多にない。それでも、行事があった日の夜は必ず2時間以上の電話が掛かってくる。国際料金もバカにならないだろうに。
そんな訳で、今日も美柑ちゃんとユキの手料理に舌鼓を打っている。パーティー用に作ったからか量も多く、なおかつどの料理も美味しいのだから二人の料理の腕には毎度毎度驚かされる。
「固いこと言うなって!バレなきゃ大丈夫だ!」
「おい大丈夫なのかこの親父」
「スルーしとけ」
いつも通りの光景にリトも苦笑いしている。まぁ法律なんて言葉はこの街にあるかすら定かではないから、ギリギリオッケー…なのか?
「駄目だからね兄さん。お母さんに言いつけるよ」
「あの人も飲ませてくる側でしょ、飲んでるの60%とかだし……」
「お前、文化祭の打ち上げでなんか飲んでなかったっけ?」
「......さぁ?」
「おいなんだ今の間は」
ふざけた事を言うリトの言葉を右から左へ。僕は未成年飲酒なんてしてませんし、良い子は絶対にしてはなりません。
「はぁ、お父さん飲み始めるとすぐあーなんだから」
「もう慣れたけどね……元気そうで安心した」
仕事ではあんなに真剣で妥協を許さない職人気質なのに、酒が入るとこんなにも変わってしまう。やっぱりお酒は怖いですね。皆さんも気をつけましょう。
「あー、ちょっとお花摘みに行ってくるわー」
「花?何言ってんの?」
「お手洗いだよバカヤロウ」
リトに一言言っておき、俺はリビングから出てトイレに行かず、そのまま外に出て庭の方へ向かう。近くの腰掛けに座り、リビングから持ってきた炭酸飲料の缶を開けて口に付ける。
「ふぅ……」
懐から取り出したのは一枚の写真。そこには、結城家と俺たち兄妹が一緒に撮った姿があった。控えめにピースをするリト、そっぽを向いている俺、そんな二人にに笑顔で肩を組んでいる才培さん、そしてちょっと間を開けて呆れた表情をしている美柑ちゃんに、笑顔で美柑ちゃんと腕を組んでいるユキ。実に良く撮れていると思う。
覚えている限り、両親はほとんど家にいなかった。父親は会社で夜遅くに帰ってくるし、母親は海外に本社があるので年に数回会えれば幸運だろう。
その事について怒ったことはない。仕事の合間を縫って帰ってきたり、長期休みには絶対に家族みんなで出かけようとしていた。本当は休みたいはずなのに、子供のためにそこまでしてくれる両親には感謝してるし尊敬もする。
それでもやっぱり仕事は忙しいらしく、今日みたいに行事があっても来れない日は何度もあった。教師には毎度親はいる?と聞かれるのが少し辛かった。
昔から家庭事情が似ているため、俺は結城家と一緒に行事を共にすることの方が多かった。最初こそ遠慮したり気を遣ったりしていたが、今では家族同然の間柄にまで発展しており、いつも良くしてくれる才培さんには本当に感謝している。口に出したら調子乗るから絶対に言わないが。
でも一つだけ、不満を言わせてくれるのなら。
一緒の写真に写るなら、本当の両親と一緒が良かった。中学生の最後の大舞台。俺が自由に行動して良かった時間の最後は、家族と一緒が良かった。
そんな私欲は炭酸と共に流し込み、持っていた写真を懐に戻す。
自分が知っている物語のために、これから出会う全ての人のために、仮初の役割を演じきろう。
「ソラー。今から人生ゲームやるぞー」
「負けた奴は酒一気飲みだ!覚悟しとけ!」
「美柑ー!私たちもやろー」
「もー、わかったから」
誰がなんと言おうと。誰がその道を止めようとしても。
「ほらソラ!始めるぞ!」
「早く来いソラ!遅れると罰ゲームだ!」
「早くしてソラ。付き合ってあげるんだから」
「兄さん、早く早くー」
「……うん。負けても恨みっこなしだかんね?」
全てはそう、
結局、俺が惨敗したのは別の話。
・猿山との関係性
一応二年間同じクラスメイト。リト経由で知り合ったが、ソラくんは滅多に授業を受けていなかったためうろ覚え。友人の友人だが、あまり気を遣わなくて済む相手。
次回からは高校生編です。楽しく書いていきたいと思います!
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