どうやらToLOVEるに転生したらしい。   作:雪餅

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高校生活編始動!


高校1年 桜に潜む毛虫は成長すると蛾になるんだってさ。
01.高校生活エンジョイマン(大嘘)


高校生になった。

 

 

思った以上に短かった春休みを終えると、俺たち新一年生を迎える入学式が行われた。吹奏楽部の演奏を聞きながら体育館の真ん中を歩き、座るまでのあの時間がどうも嫌いだ。新しい一年はどんな奴なんだろうと品定めされているようで良い気分がしなかった。

 

 

高校でも入学式は長く、来賓の挨拶や保護者代表挨拶などで長い時間椅子に座らされていた。そのせいで最近、腰の調子が悪くなってしまい、慰謝料を請求するための資料作成をしたところ、ユキにバレてこっ酷く叱られてしまい断念。

 

 

しかし驚いたのは、あの変態校長が新一年生の前に立ち、堂々とした姿で至って真面目な挨拶をしていた事だ。その挨拶を聞いていた新一年生の何人かが校長を評価していたが、その後の校長の行動により評価はガタ落ちした。

 

 

その後の学校生活だが、俺はなんとかリトと同じクラスである1-Aになる事が出来た。予定通りに事が進んで一先ず嬉しいが、この程度で安心してはならない。近々、リトの元に悪魔っぽい名前の少女がやってきて安寧とはかけ離れた高校生活を送ることになるだろう。俺の予感は悪い方で当たるため使いたくないが。

 

 

「ほんとにさ、高校生活って良いよなぁ」

「どうした変態視姦魔王」

「それ昔に言われた……奴よりランク上がってない?」

「いや、よく言うだろ?高校からが本番って」

「本番って何!俺のこと馬鹿にしてるだけでしょ!?」

「うん」

「こいつ……っ!!」

 

 

どうやら、俺は1日に3回以上誰かをいじらなきゃいけない体質らしいからね。残念には思ってない。むしろ嬉しいくらいだ。

 

 

「まぁ中学よりは高校の方が楽しいよな。規則緩めだし、先生たち物分かり良いし」

「うんうん。それに、春菜ちゃんと一緒のクラスになれたし!」

「お前それが大方の理由だな」

「そ、そそそそんな訳ないだろっ!?」

「うわ、露骨すぎ」

 

 

こんな風に、リトは進学してからずっと浮かれている。授業中では西連寺の方をチラチラ見てるし、移動教室の時は少し距離を取って歩いてるし、俺との昼食中ほとんど西連寺の話しかしてこない。

 

 

正直に言おう。若干、いやかなり引いている。

中学から好きなのは知ってるし同じクラスになれた事が嬉しいのは何となくわかる。だからといってあまりにも西連寺の事で頭がいっぱいなリトを見てると、こいつ犯罪者なんじゃないかと疑ってしまう。疑っているだけだ。確信はしたくない。

 

 

恋は盲目といった言葉があるようだが、今のリトにはぴったりな御言葉だろう。自分の好きな女性にまっすぐ一直線。それがリトの良い点であり、同時に最大の欠点でもあるのだから。

だからといって俺からは何も口出しは出来ない。なんせ自分から誰かを好きになるといった経験がないガキだ。恋や愛といった物は、精神年齢高めな俺でもサッパリです。

 

 

「そんなに想ってんなら何回かは話したはずだよな。何回話した?」

「え、ええっと……」

「誤魔化したら今まで奢ったアイスの全額請求書送る」

「レシート全部取ってんのかよ……」

 

 

え、普通じゃないの?家に三年前から貯め続けたレシートが箱に入ってるんだけど。もしかして俺だけしかやってないの?

 

 

「昼休みは大抵俺たちといるだろ。朝と放課後は一緒だし、話すとしたら休憩時間だな。何回話した?」

「お前変なところ頑固だよなぁ。はぁ……まだ一回も喋ってないよ」

「…………リト、今度飯奢るよ」

「やめて!急に優しくなるのやめて!」

 

 

わかってたよ。わかっていたことなんだけれども、こいつどうしようもないな。高校生になれば人は変わるという。だがリトを見ていると、その言葉が本当なのか疑わしいものになってくる。

 

 

そもそも、人はそんな簡単に変われるわけがない。変わるのは服装、喋り方、態度などといった外見のみであって、中身も含めて根っこから変わろうとするならば、記憶を失うか死ぬほど努力するかのどちらかだ。前者はともかく、後者はとんでもないストレスと疲労感を感じるためオススメはしない。

 

 

また、過度なストレスや疲労感はうつ病になる原因の一つと言われている。新しい生活、新しい教室、新しい友人。何もかもが始めての高校生が根っこから変わろうとすれば、一ヶ月もしないうちにうつ病にかかってその人の人生を台無しにする恐れがあるため、高校生活では何も意識せず、素の自分で生活しているのが一番いいと思う。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ告ってみよ?」

「話が噛み合ってない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見事な黒髪だと褒められた前髪をいじり、休み時間と変わらないLHRの時間に本を読む。

本来、この時間は自己紹介や委員会などを決める時間となっていたのだが、俺たちのクラスは他のクラスよりも早く決定したため、この時間は自習、もとい休み時間となっていた。

 

 

部活には興味はないし、かといって何もやらないと文句を言われてしまうため、中学生から続けていた安定の図書委員の座を勝ち取ることができた。負けた勝谷君には悪いが、図書委員だけは譲れないのだ。他の委員会と比べて仕事量は少なく、たまにある雑用もリトや猿をこき使えばすぐに終えられるため、楽して評価を上げられる一石二鳥の委員会だ。さらに図書委員なら、追加図書の要望が通りやすくなるため、タイトルだけ健全そうな物を要望すればこの学校に官能小説を置くことが出来ることが判明した。高校サイコーじゃん。

 

 

何度も言うが、僕は決してエロスではない。ただ知識欲が人並み以上にあり、それを堂々と読むことのできる度胸と周りの噂を気にしない図太さが備わっているだけであって、決してエロスではないのだ。俺をエロスと言うなら、ラキスケを体現化した結城リトくんはなんだと言うのだ。未来のハーレム王とでも名付けておこう。

 

 

「相変わらず本が恋人なんだな、お前は」

「……なんだ猿か。バナナやるから森に帰りな」

「やる気がすけべネコ」

「失礼、お前の場合は山だったな」

「表出ろコラ」

「山に帰してやんよ」

 

 

一触即発とはこういうことを言うんだろう。お互いの胸ぐらを掴み合い、正々堂々と戦うために俺の手には限界まで尖らせた鉛筆が握られている。これなら殴られても奴の目は潰せるはずッ!!

 

 

「まーまーまー、二人共ー。喧嘩しなーい」

 

 

机から立ち上がり、猿を故郷へ返してやろうと思った寸前のところでクラスの女子が仲裁に入ってしまう。物好きな人だ。男同士の喧嘩など無視してれば良いのに。

若干俺より高めの身長、ウェーブのかかった小麦色の髪、軽く着崩した制服。どこかで見たことのある彼女は、猿山を見て大きなため息を吐いていた。

 

 

「はぁ、これだから男子は困るのよねー。少しは自重しなさいよー」

「いいや、今回はこいつが悪いんだ」

「最初に絡んできたのはお前だろうが」

「はいはいどっちでもいいから……あっ、むっつりホモだ」

 

 

籾岡里紗。そういえば、彼女も歴とした原作ヒロイン候補だ。

リトのような事故ではなく、自分の意思で女子の胸を揉むことが多く、恐らく全ヒロインの胸を揉んでいるのではないかと記憶している。今時のギャルと思われやすい格好だが、友達思いでとてもいい人だと思っている。親が共働きでなおかつ一人っ子のため、寂しさを紛らわすために彼女はあのような過剰なスキンシップをとっているのだと思う。

 

 

家庭の事情は家と非常に似ている。家も両親はほとんど帰って来ることはない。しかし、俺には妹がいたため、寂しいと感じたことはほとんどなかった。しかし彼女は一人っ子。誰もいない家で一人でいるのは、とても寂しくて嫌なものだろう。そう考えると彼女に親近感が湧いてくる。

 

ん?あれ?

 

 

「むっつりホモって誰のこと?」

「ん?あんたのことだけど。知らなかった?」

 

 

クラス内での俺の印象は最悪らしい。

 

 

「四六時中真剣な表情で本読んでると思えば内容が過激な官能小説だし、図書室の追加図書要望欄に官能小説のリクエスト5個くらい書いてるし」

「えちょどこ情報」

「あと、登校から下校までずっと結城と一緒だもんね。結城は頻繁に顔赤くしてるし、あんたは楽しそうに笑ってるし」

 

 

リトが赤くなってるのは叫んでいるからだと思う。登下校もただ家が近いからであって、皆が勘違いしているような関係では一切ない。なぜ俺がハーレム王の餌食にされなきゃいけないんだ。俺は普通に美少女が好きなんだ。

 

 

「ちなみにそのあだ名つけたのはどちら様?」

「あたし」

「表出ろビッチギャル」

「ビッチって言った!ドーテーにビッチって言われた!」

「事実だろ!」

「違いますー!恋愛経験豊富だけどビッチじゃありませんー!」

「複数の男と付き合った時点でもうビッチ確定ですー!ビッチビーッチ!」

「むっつりホモのドーテーにビッチって連呼されてる!むっつりホモドーテーのくせに!」

「ビッチよりはマシだよ!」

 

 

「…………柊、籾岡」

 

 

口論がどんどんヒートアップしていく中、後ろにはいつのまにか生徒指導の先生が。

 

 

「二人とも、後で職員室来い」

「「はい……」」

 

 

 

 

籾岡と仲良くなった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんだか、俺……」

「口動かしてないで手動かせー」

 

 

2時間以上動かし続けていた手を止め、今更ながら後悔の味を噛みしめる。

 

 

事の発端は一本の電話だった。後数秒早く音がなっていたら教師に取り上げられるハメになるところだった。

 

 

『もしもし切っても良いですか?』

『よおソラ!今すぐ来てくれ!』

『嫌ですよ……締め切り近いんですか?』

『一週間も無いんだよー。背景と消しゴムだけやってくれねーか?給料は色つけるからよぉ〜』

『……給料、いつもの倍近くは貰いますよ』

『おう。サンキューな、ソラ』

 

 

才培さんからヘルプの要請がかかり、給料欲しさに受けた自分は心底バカな男だ。前に安請け合いした時も同じ地獄に遭うハメになったと言うのに。

時刻はすっかり7時を超え、ここに来てから3時間ほど経っていた。他のアシスタントさん達は俺のことを気にすることなく、ひたすら腕を動かし続けている。

 

 

今ごろリトは何をしているのだろうか。過酷な労働を引き受けた俺のことは知らずに西連寺のことでも考えているのだろうか。そう思うと無性に腹が立ってくる。どうやら長時間集中したせいで疲れているようだ。

 

 

「飯買ってくるんで。おにぎりかサンドイッチどっちが良いですか」

「久々に肉食べたいんだよなぁ」

「紙汚れるから却下。皆さんもどうしますか?」

 

 

締め切り前の漫画家の食事は偏りがちだ。大抵作業をしながらご飯を済ませたいため、片手で食べられるものが多い。栄養素の高いウィダーでも良いのだが、ほぼ毎日それだけだと飽きてしまうため今回はおにぎりなどにすることに。

 

 

近くのコンビニまで走って向かい、適当におにぎりやパンなどをカゴに入れていく。今回の給料はかなりの額が入る予定なので、お金のことは気にせず手早くレジに向かってしまう。小銭を出さずに一万円札を出すと、若い店員から舌打ちをもらうが気にせずにコンビニから出る。

 

 

行きとは違って帰りはゆっくり歩き、少しでも右腕の回復に専念する。あの調子だと、今日中には帰れないかもしれない。一応栄養ドリンクを買っておいて正解だった。

 

 

「あれ?柊くん?」

 

 

右手を握ったり開いたりしていると、前にいる人から声をかけられた。だんだんと街灯に照らされていくその顔は、俺の知っている顔だった。

 

 

「やあ西連寺。犬の散歩?」

「うん。マロンが行きたそうにしてたから」

 

 

犬のリードを持っていたのはリトの想い人である西連寺だった。ハッハッと息をしながら俺のことを肉球で叩いてくるのが西連寺の飼っているマロンという犬だろう。

一見、俺に構って欲しくて叩いているのかと思うが、まるで西連寺に近づくんじゃねぇと警戒されているようだ。

 

 

「柊くんは?すごい量の食べ物だけど」

「知り合いの漫画家のバイトしててね。その買い出しの帰り」

「こんな時間までバイトしてたんだ。お疲れ様」

「ありがとう。ちなみに、知り合いってのはリトのことだよ」

「へ、へ〜、そ、そうなんだ……」

 

 

リトという単語が出た途端、明らかな反応を見せてくれる西連寺。やはり西連寺の気持ちは変わっていないようでひとまず安心。

それにしても、こんな時間に女の子が一人と一匹で外に出るのは少々危ないと思う。辺りは既に暗くなっているし、最近では不審者の情報も多く出回っている。ただでさえ彩南町ではトラブルが多いのだから、夜は気をつけた方がいい。

 

 

「あれ?あれって……ゆ、結城くん?」

 

 

西連寺が指差した方を振り返ると、家の屋根の上を必死に走っているリトの姿が。よく裸足であんなに走れるな。あっ、ジャンプもした。痛くないのかな。

 

 

「ああ……うん、多分」

 

 

俺の知らないところで原作が始まっていたらしい。リトの隣には奇抜な衣装に身を包んだ少女の姿が見える。十中八九デビルーク星から来た家出王女のララ姫だろう。その二人の後ろから黒服の二人が追いかけて来ている。

この後の展開としては、黒服がトラック投げる、リトがララの家出を知る、リトたち吸い込まれる、だったはず。俺がいっても何も出来ることはないだろう。とりあえず今は、こっちのフォローをしておかなければ。

 

 

「あれ、結城くんだよね?なんで屋根の上?というかなんで裸足で?」

「西連寺。今日はまっすぐ家に帰って、今日のことは忘れること」

「え?それってどういう……」

「大丈夫、明日になれば全てわかるから、寄り道せずに帰ること。わかった?」

「う、うん……そこまで言うなら」

「じゃあ俺はこれで。気をつけて」

 

 

すっかり時間が経っていることに気づき、必要なことだけ西連寺に伝えると、俺はまた走って戻ることになった。

 

 

俺の知らない間でポンポンと原作が進んでしまったいたようだが。何はともあれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ToLOVEる】が、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




若干、籾岡の喋り方に違和感があるかもしれません。難しいです。
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