皆様方のおかげでなんと、UA25000越え&お気に入り1000件越えをすることができました。自分の小説をここまでの人に見てもらっているなんて、本当に恐縮です。ありがとうございます。
これからも自分の小説を見てくださったら幸いです。それではどうぞ。
日直の朝は早い。それは高校生になったところで変わらない事実だった。
昇り始めた朝日が影を伸ばし、ひんやりとした風に当たりながら一人で通学路を歩く。
どちらかといえば夜行性な生活をしているため、早寝早起きという言葉は天敵とも言える。夜遅くまで起き、朝はゆっくりと二度寝をするのが日課だったが、日直という仕事は無情にも俺の日課を壊していくのだ。
だが嬉しいこともあった。早起きする事をユキに伝えておいたら、いつもより強めに俺のことを起こそうと試み、最終的にはデコピンで俺のことを起こしてくれた。久しぶりに妹のデコピンをくらい、成長しているんだなと感心しつつ気持ちのいい朝を迎えることができた。
「うわ、リトからの不在着信多いな……」
昨日は色々と疲れる1日だった。バイトの方は11時くらいまで続き、帰宅してから寝る頃には12時を過ぎてしまっていた。そのため今日の睡眠時間は6時間にも満たない。抜けきっていない疲労感に苛まれながら、重い瞼をなんとか持ち上げている状態。
そして昨日、俺の知らないところで【ToLOVEる】が始まっていた。俺が見たのは、リトが住宅街の屋根の上を裸足で走っている姿だけだったが、家出姫を連れていたので間違いない。
そうなると、今日はリトが告白をする日だ。本人は西連寺にしたつもりだが、ララの乱入によりその告白をララが受けてしまう。これにより、ララはリトと結婚すると言い出し事態は急展開を迎える。今朝はリトの高校生活のターニングポイントだ。
そんな大事な場面に俺が割り込める余地は無いだろう。リトには悪いが、教室に来たら少しは慰め、もとい弄ってあげよう。
職員室の側にあるロッカーから日誌を取り、中にあった紙の束を両手に持って教室に向かう。鍵が既に持ち出されていたが、こんな朝早くから来てるなんて何の用事だろうか。
校舎内にはまだそれほど人の気配も無く、早朝の絶妙な明るさも相まってどこか非日常感を感じさせてくれる。二階から外を覗けば朝練に勤しんでいる高校生の姿が映り、自分も高校生のはずなのに何故か場違いな気がしてきた。
気まずくなってきたのでさっさと教室に入ると、窓際の方で作業をしている知り合いの姿が。
「なんだよ、猿かよ」
「なんだよとはひでぇなすけべ。日直か?」
「そうだよ。そっちは」
「へへっ、野暮用さ」
俺より早く来ていた猿山が鍵を開けたらしい。手を上げてくる猿山に手を上げ返し、自席につき日誌の記入欄を埋めていく。これはそれほど面倒ではないのだが、全員分の椅子を降ろし、机の上に手紙を並べるのがめちゃくちゃめんどくさい。
「んで猿山。こんな早く来て何してたの?」
「ふっ、まあこっちに来いって」
やけに上機嫌な猿山に不信感を抱きつつ、窓際に近づいていく。校門には朝練の為かちらほらと生徒たちが歩いている姿が見られる。
特に変わったことはないが、猿山の右手に持っているそれを見てようやく理解する。やはり、こいつは中学の時と変わらない奴だ。
「彼女欲しいからって、朝から双眼鏡用意して待つか普通」
「俺は本気で彼女が欲しいんだ!行動しなきゃいつまでたっても出来ないんだぞ!」
「その性格じゃ当分無理そうだけど、良い娘いた?」
「何人か可愛い人はいたけど、俺の好みじゃない」
「贅沢言うなよ」
「良いだろ、少しくらいは」
口だけではなく、ちゃんと行動に移せるのは素晴らしいことだと思うが、双眼鏡まで用意して良い娘を探している様子は、側から見たら即通報ものだろう。俺は心が広いから証拠撮るだけで許してあげる。
「おっ、あの娘美人だぞ!しかも巨乳だ!」
「結局胸目当てかよ。まぁ、あれは美人だわなぁ」
「黒髪ロングってのも良いよな!どこのクラスか気になるぅ!」
確かに美人だけど、猿山が近づいたらすぐに破廉恥な人と思われるだろうな。見た目というか、オーラから猿山は破廉恥な感じがする。多分、生まれつきなんだろう。
「あっちの茶髪の娘も良いぞ!スポーティーな感じだな」
「あそこにいる娘良いぞ。足すらっとしてるし結構白い」
「この学校、女子の偏差値高いな!おぉ!あの先輩すげーデカイぞ!」
「どれどれ…………84、56、85だな」
「うわ気持ち悪っ」
「表出ろ猿」
「やってやんよ骨」
「お前ら」
お互いの胸ぐらを掴みながら振り返ると、そこには生徒指導の鳴岩先生が。
「今すぐ生徒指導室来い」
「「はい……」」
説教された。デジャブだ……。
*
「はぁぁ…………」
「お疲れだねリト、俺もだ」
「ソラの場合は自業自得だろ。俺のなんか……はぁ」
13回目のため息を吐いてるリトの幸せはとっくに下限値を超えているだろう。周りからしたらリトのラキスケは幸運の塊だと思うが、望んでない幸運は不運になりうる。
今朝の告白失敗……あれ失敗って言うかな。一応婚約者ゲットできたんだし、少なくとも失敗ではないような……当事者にしか分からない事か。
西連寺に誤解されたのがよっぽど悲しいのか、登校して来てからずーっとこんな感じだ。無理もないか、覚悟を決めた一世一代の告白で相手を間違えたのだから。
「そんで、婚約者になった姫様はどちらに?」
「どっか行ったよ。あと婚約者になってない」
「ふむ、じゃあこれから更衣室ワープか。俺の出る幕はまだ先かな」
「お前、今小声で何呟いた?」
「告白する相手間違える奴がいるかよボケって言った」
「ガハッ……!」
よし誤魔化せた。代わりにリトは情けなく机に突っ伏しているが気にせずお昼時間を堪能しよう。
妹の作ってくれた弁当に感謝の言葉を捧げ、一口ずつ味を噛み締めていく。相変わらず妹の弁当は綺麗に詰められていて素晴らしい。
この後の展開はこうだ。猿山がリト捜索中のララがいることを伝えにくる、そこでララとの関係を男子生徒が聞くとララがリトの花嫁宣言。嫉妬に溺れた男子生徒たちに追われ、リトたちはララの発明品でワープ脱出。制服をその場に残し、女子更衣室内で裸のままいるのを西連寺に誤解されるのがオチだ。
考えてみると可哀想な話だ。ララの発明品の所為もあるが、ララの花嫁宣言で嫉妬に溺れる男子生徒たちが主な原因だ。高校生で盛んなのは分かるが、是非とも自重という文字を辞書で千回は引いてほしい。
出汁の効いた卵焼きを頬張る。ふわっとしていて味もしっかり効いている。そのまま作り置きしといた混ぜご飯を食べるとなんとも素晴らしい。もしかしたらうちの妹は天才かもしれない。
「っかしーな……弁当がねェ」
「不運だね。でも大丈夫、いいことあるよ。多分、きっと……だと思う」
「曖昧すぎっ!はぁぁ……多分あの時だ……」
「煮干しいる?」
「無塩じゃん!友人に煮干しあげる奴初めて見た!」
「うちの子は好んで食べるのに……」
「なんで不満そうなんだよ!わかったから、食べるから!」
俺が片付けようとした煮干しを奪い取り口に入れるリト。しかし塩味が効いてないため、微妙な顔をしながら煮干しを噛みしめている。その姿を側から見たら、飼い主がペットにおやつをあげている光景にでも見えるのではないだろうか。周りから『ソラ×リトか?』『リト×ソラもありでは…』などと言われているが、気にせずひじきの煮物を味わう。
「おいリトっ!スッゲー可愛い女の子がおめーのこと探してんぞ!」
リトは煮干しを、俺はひじきを味わっていると、猿山の嫉妬が混じった叫び声が教室内に響いてきた。その声を聞いた途端、リトは猿山と共に教室から走り去ってしまった。唐揚げ美味しい。
事態はどんどん進んでいるが、俺は何をすればいいのだろうか。リトと一緒に行くのは論外だった。行ったところでワープしたら俺まで被害に遭うし。
男子生徒たちを止める、これも無理かな。嫉妬に狂った男子ほど怖いものは存在しないのだから。
『結城ィィィィィ!!』
『よくも俺より先にそんな可愛い娘と!!』
『リアジュウシスベシ…リアジュウシスベシ…』
ほら、あんな危険な男子たちを止めるなど俺には不可能。ていうか怖い、無理。
ワープ先は1階だったかな。まぁ西連寺の誤解はリトがなんとかするから大丈夫だろ。うん、問題ない。
そうなるとやはり俺のやることは制服回収かな。女子更衣室に制服持ったまま堂々と入るのはさすがにやばいと思うが、リトが全裸のまま制服取りに帰るよりは幾分マシだ。
「おーっす柊〜。なんの騒ぎ?」
「一言で言うと……婚活サバイバル?」
「ゴメン、全然理解できない……」
さらっと近くに座ってきた籾岡にため息を吐かれるが、俺にもよく分からない。
残しておいた卵焼きを口の中に放り込み、俺はそろそろ置かれているであろう制服を回収しに行くことにした。
「籾岡、あとは頼んだ」
「え、ヤダ」
「プリンで」
「任せな」
現金な奴め。
*
「よっ、それっ、えいやっ!って、全然当たらないよー!」
「初めてにしてはセンスあると思うよ。あとでダウン連教えるよ」
「だうんれん?教えて教えてー!」
「初心者にダウン連って、普通おかしいよね……」
楽しげに会話をしている中、俺は容赦なくアイクラでメテオを決めていく。負けてしまったが悔しがることなく「もう一回!」と言ってくれるのは非常に向上心が高い。すぐにダウン連くらいマスター出来そうだ。
あの後、男子生徒たちがぞろぞろと教室に戻ってくる時を見計らって制服を回収。女子更衣室で呆然としているリトと楽しそうなララさんに制服を渡し、今回の騒動は幕を閉じた。
無事に収拾出来たようにも思えたが、俺が女子更衣室に入っていくのを複数の生徒が目撃したらしく、学校内では『制服マニア』『勇敢なるむっつり』『女子でもイケるホモ野郎』などの噂が立っているようだが、一切気にせずに生きていこう。
女子更衣室内という現実的に考えて有り得ない場所でララ姫と初めて対面したわけだが、彼女は特に気にすることなく俺をリトの友人として受け入れてくれた。やはり地球と宇宙とでは常識が違うんだろう。身体的なものもあるけど、やっぱり宇宙人は心の広さが違うね。
ララさんが結城家に居候になる以上関わらない方が難しいので、とりあえずゲームで仲を縮める作戦に出た。宇宙から来た好奇心旺盛な姫様にこの作戦はピッタリ嵌り、現在に至る。
それにしても、ララさんの器用さには驚かされた。つい数十分前にコントロールを教えたばかりだというのに、もうCPレベル7の相手を倒せるレベルにまで到達している。出鱈目な機械ばかり作っているため忘れがちだが、彼女は天才気質なのだ。ダウン連の次は投げ連教えてあげよ。
「やっぱり、地球の文化ってすごいよね!こんなゲーム初めてやったよー!」
「喜んでくれたなら良かった。ところで、ララさんはお見合いが嫌で地球に逃げてきたんだよね?」
「そーなの!パパったらずーっとお見合いばっかさせるんだよ!しかもほとんど私の知らない人だし、うんざりしちゃって」
「そして逃げてる途中のワープ先がリトの家だったと。運いいなリト」
「良くないよっ!今日だってあの機械のせいで春菜ちゃんに……あぁ」
「急にテンション下げるなよ……美柑ちゃん、これどこ運ぶ?」
「放っとけば治るんじゃない?」
今日の不運を思い出したのか、リトは何事かを呟きながらため息を吐いている。同情したいけど、一般的な男子から見たら不運っぽい幸運だからいまいちフォローし辛い。
『我々宇宙人をこうもあっさり受け入れるとは、地球人は順応性に優れているのですね』
「いや、ソラが異常なだけだから。普通そんなすぐに受け入れられないって」
異常とは失礼な。別に言葉が通じない訳でもないし異形の化け物でもないのだから比較的受け入れやすい方だろ。
大抵の一般人は、ララさんの尻尾を見てもコスプレの装飾品だと思うし、髪の毛の色とかも海外から来たってことにしとけば通じてしまう世の中だ。宇宙人ですって言われてもそこまで騒がないのがこの世界の常識。これくらいのことで驚いていたら心臓が何個あっても足りない。
「おっと、もうこんな時間か。悪い、買い物に行かなくちゃ」
「てっきりうちで食べるかと思ったけど、違かったか」
「いつもお世話になってるし、今日はね」
日は暮れ始めたとはいえ、リトの一日はまだ終わらないのだ。この後ララと外で話をしているところ、付き人の乱入により事態は急変。襲いかかってくる付き人をなんとかしたり、リトが愛の叫びをしたりと色々盛り沢山なのだ。その場にいてもただ見ていることしか出来ないし、俺は素直に帰宅することに。今日の晩ご飯は親子丼と野菜スープで良いかな。
「そっかー、ソラ帰っちゃうのかー」
「ごめんねララさん。今度宇宙の話ゆっくり聞かせて」
「うん!楽しみにしてるね!」
「そんじゃリト、頑張って」
「うん…?また明日」
身体的にも精神的にも疲れるであろうリトに激励の言葉をかけ、俺はそそくさと退散していく。
何事も一番最初が肝心だ。運動するときには運動前の準備運動、料理するときは料理する前の手洗いなど、一番初めの行為を怠ると、のちに大変な目にあうことが多々ある。
今のところ原作通り進んでいる。要所要所にはどうしても関わってしまうが、物語の鍵となる部分にさえ気をつければこのまま順調に事が進むだろう。
今後は原作のシーンが一日おきに来るとは限らない。今のうちに情報を確保しやすい環境を整えておくべきだが、今はとにかく夜ご飯の買い物だ。
確かスーパーで卵の特売やってたなーなどと考えながら一人でスーパーへと向かう。途中、変な人に道を聞かれたため、とりあえず交番までの道を教えておいたが、あれザスティンだよね……?
猿山と絡ませるといつもあんな感じに。男友達とバカやってる感じは個人的に気に入ってるんですけど、やっぱり別のやつも考えた方が良いですよねぇ。
評価をしてくださった沢山の方々、本当にありがとうございます。お陰で色が付きました。感想での指摘も本当に助かっています。本当、感謝感謝です。