仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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予約投稿です。なんかミスあったら、ごめんなさい(´・ω・)


第8話 夢の終わり りわ終の夢 話8第

 

 

 

「えええええええええええ! 他の人に売ったぁあああああああ!?」

 

 

さやかを待っていたのは、衝撃的な事実だった。

なんと店主が、さやかが買うはずだったCDを売ってしまったのだ。

流石にコレにはさやかも納得ができない。店主に詰め寄ると、バツが悪そうな表情が返ってくる。

 

なんでも、斉藤雄一のCDに特別な思い入れがある客が来たらしく、取置きしていると伝えると、価格の倍はある金を出してきた。

その鬼気迫るオーラに押されて、店主はオーケーしてしまったらしい。

 

 

「お詫びに店にあるCDを何でも一つ持って帰っていいから……」

 

「いらない!」

 

 

さやかは涙を浮かべて走り出す。

悔しかった。もう少しで手に入る筈だったのに。

もっと早く来ていればよかったのだろうか? 後悔や悲しみが心を染める。

 

べつに、必ずCDが無いと駄目な訳でもない。

上条に喜んでもらいたくて、近づきたくて。そんな打算的な思い出に手に入れようとした品だ。

 

もしも本当にほしい人がいるなら、それはそれで良い。

ただやっぱり、今のさやかには大人の割り切り方はできなかった。

 

 

「うぅぅ、ぐすっ!」

 

 

堪えても涙が出てくる。人に見られるのは恥ずかしい。

少し落ち着くまで、さやかは近くの公園に隠れる事にした。

 

 

「………」

 

 

ベンチに座って、地面を睨む。

デートは明後日。もう今から探しても見つかる訳がない。

プレゼントは無しにしよう。さやかはそう決めて、もう一度涙を拭いた。

 

 

(……落ち着いてきた)

 

 

そんなに気に病む必要なんてないのかもしれない。

たかがプレゼント一つ用意しなかったくらい、どうって事ない。

さやかは、自分に言い聞かせながら立ち上がる。

 

 

「あ、さやかお姉ちゃん!」

 

「美樹さん! どうしたの、こんな所で」

 

「!」

 

 

さやかの前に駆け寄ってきたのは、マミとゆまだった。

手にはスーパーの袋がある。買い物帰りなのだろう。

マミは元気が無いさやかを見て、何かあったのだろうと察した。そして、すぐに手を差し伸べる。

 

 

「これから須藤さんにカレーを作ってあげるんだけど、美樹さんもどうかしら?」

 

「え……? あ、いいの?」

 

「ええ、もちろん」

 

 

さやかは曖昧に微笑むと、マミの手を取った。

その手は暖かくて、とても強い光に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、おいしぃ! やっぱりマミさんってば料理うまいね!」

 

「褒めても何もでないわよ。ふふっ」

 

 

なんだかんだと、マミは嬉しそうに笑った。

いつも自分の為にだけ作っていた食事を、仲間の為に作って、しかも美味しいと言ってもらえる。

それがマミには嬉しかった。

 

 

「うん、おいしいよぉ!」

 

「ええ。本当に……、おいしいです」

 

 

ガツガツと食べるゆま。その隣では、須藤が笑みを浮かべていた。

しかし、マミは須藤を心配そうに見つめている。明らかな作り笑いだ、マミは須藤に水を差し出し、話を切り出した。

 

 

「最近本当にお疲れですね。何かあったんですか?」

 

「い、いえ……、大丈夫。心配はいりません」

 

 

須藤はそう言って笑うが、やはりその表情には疲労があった。

腕をみれば包帯が巻かれている。何でも酔っ払いが暴れているのを止めた時に、怪我をしたらしい。

 

 

「須藤さん、張り切るのもいいけど頼れる時は頼ってほしいわ」

 

「巴さん………」

 

「私達は互いに正義を見つけられた。だからこれからももっと支えあってもいいと思うの」

 

 

そう言ってマミは須藤に微笑みかける。

 

 

「ええ、私も巴さんのおかげで正義を見つけた。自分の正義を貫くこと、それを止めるつもりはありません」

 

「あまり無理をしないでくださいね」

 

「そうですね。巴さんに心配をかけると、後が大変ですから」

 

「まあ。どういう意味かしら? フフ!」

 

 

そう言って笑いあう二人。

真司とまどかもそうだが、家族、友達、恋人、仲間、そのどれでもない不思議な絆。それがパートナーの間からは感じ取れる。

 

 

「いいなぁ、あたしも早くパートナーに会いたい」

 

 

そうしたら一日中、恋の愚痴でも聞いてもらおう。

さやかはそんな事を思いながらカレーを口に入れる。

 

 

「どんな人がパートナーなんだろ? いい人が良いな。できればイケメ――、あッ、でも北岡センセーみたいな人物は勘弁だけど――」

 

「大丈夫、ゆまもパートナーさんが見つかってないから!」

 

「おーおー! そうかそうか! ならいっそ、このさやか様のパートナーにしてやろうぞ!」

 

 

さやかはゆまのわき腹を高速で突き始める。

キャッキャッと笑うゆまを見て、さやかも笑顔に変わるのだった。

 

 

「ところで、何かあったの?」

 

「うーん……! たはは! まあ、ちょっと」

 

 

須藤が帰り、ゆまが眠った後、マミはさやかに公園で泣いていた理由を聞く。

 

 

「言いたくなければ無理にとは言わないけれど……」

 

「いやッ、たいした事じゃないんですよ。ただちょっと――」

 

 

たかがCDの一つや二つと思えればいいのだが、今も未練がましく心の中で黒い感情が渦巻いているのが分かる。

どうしようも無い悔しさをぶつける事ができなくて、また悲しくなってきた。

 

 

「美樹さん」

 

「ん? 何? マミさ………」

 

 

ふわりと、柔らかな感触と香り。

抱きしめられた。さやかは顔を赤くしながらマミを見る。

ああ、なんて優しい表情なんだ。ゆまと暮らす内に母性に目覚めたのだろうか? 皆のお姉さんと言う言葉が、マミには似合う。

 

 

「マミさん、実は――」

 

 

さやかは観念したように今までの事を全て話した。

マミはさやかが全て話し終わると、ハンカチで涙をぬぐってくれた。

 

 

「そうね、今まで頑張ったのに、それは悔しいものよね」

 

「うん。そうなんだよマミさん……」

 

「でも、それで美樹さんと上条くんの関係が終わった訳じゃないわ。CDを取り返す事は不可能かもしれない。だったら、次の事にむけて歩き出した方がいいわね」

 

 

マミはそう言って、自分のクローゼットから適当に服を選んでさやかに渡す。

 

 

「いつもと違う服装を見せてあげれば、イチコロだわ」

 

「い、いちころ……」

 

「ふ、古い言い方かしら? とにかくっ、もう終わってしまった事を後悔し続けても意味はないって思わない?」

 

「まあ、それは……」

 

 

そう笑顔で言われたら何も言い返せない。

さやかは、まだ渦巻いている悔しさを忘れる為に、マミを強く抱きしめ返す。

マミもしばらく、さやかの思うままに体を預けた。

 

 

「どう? 落ち着いた?」

 

「うん……」

 

 

少し経って、さやかは思う。

思えば、マミに助けられたのが魔法少女になるきっかけだったのかもしれない。

それでマミに憧れる様になって、今は弟子と言う事になっている。

 

あれから少しは近づけたと思ったが、どうやらまだ全然のようだ。

さやかは苦笑して、マミにもう一度しがみついた。

 

 

「今日はもう遅いわ、お家に電話して泊っていったらどう?」

 

「マミさん……」

 

「ん?」

 

「……大好き」

 

「ふふっ、ありがとう!」

 

 

マミは満足そうに笑うと、優しくさやかの頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

そこは、深い夜の闇。きっと全ての生き物は眠りに落ちている。

世界が静寂に包まれている。普段はうるさい虫の声も、今は全く聴こえてこない。

それはまるで、『彼女』の行動を邪魔してはいけないと気を遣っているように思えた。

 

 

『うごくのかい?』

 

「もちろん。そろそろ皆様には、生温い夢から覚めて頂かなければ」

 

 

少女は思い切り腕を振り上げ、『ソレ』を闇に突き立てた。

ガキン! と音がして、闇はよりいっそう深く広がっていく、

少女はそれを確認すると唇を小さく吊り上げた。

 

 

「夢の終わりを見せてあげよう。フルコースのシメは、最高のデザートで終わりたい」

 

『………』

 

「準備は整った。今から始まるのはッ、素晴らしき前奏曲(プレリュード)

 

『うまくいくといいね』

 

「当然ッ! 成功以外はありえないから!」

 

 

少女はそう言って踵を返す。

既に撒いた『種』は素晴らしい芽を出してくれた。後はこの『お菓子の卵』が孵るのを待つだけ、そうすれば全ての準備は整うから。

 

 

「フフフ……!」

 

 

少女はそのまま闇の中に溶けていく。

静かな静かな夜の中。笑い声だけが世界に残っている気がした。

 

 

 

 

翌日。

 

 

「お、おかしくない? まどかぁ」

 

「えへへ! 大丈夫だよさやかちゃん!」

 

「ああ、可愛いぞ」

 

 

まどかとサキの言葉を聞いて、さやかは恥ずかしそうに肩を竦めた。

今日は上条とのデートだ。マミから借りた服を着て、さやかは待ち合わせ場所に向かっていた。

一人じゃ不安だったので、待ち合わせの場所まではまどかとサキにも着いてきてもらう。

 

緊張して震えている。

きっと、上条はただ映画を見に行くだけのつもりだろうが、さやかとしてはそう言う訳にもいかない。

楽しみだが、足取りは重く、期待と不安が交互にやってくる。

 

 

「そう緊張しなくても大丈夫だよ、しっかり楽しんでくれば――」

 

 

そこでサキは言葉を止めた。

穏やかだった表情が、一変して険しくなる。

どうやら何かを見つけた様だ。それをまどか達も目で追う。

 

 

「あッ!」

 

 

そこに見えたのは間違いない。異形の巣窟だ。

 

 

「魔女結界――ッ!!」

 

 

サキの視線にあったのは、人気の無い自転車小屋だ。

そこに魔女の卵であるグリーフシードが存在していた。

 

 

「どうしてこんなところにグリーフシードが!?」

 

 

グリーフシードは魔女を倒すことでドロップされる。

その後、魔力を消費して穢れてしまったソウルジェムを浄化して、残骸はキュゥべえに処理してもらうのだ。

 

にも関わらず、このグリーフシードはご丁寧に自転車小屋の壁に『つき立てて』ある。

仮に誰かが捨てたのであれば、床に転がっているべきである。

つまり、誰かが故意に、グリーフシードを残したのだ。

 

グリーフシードの残骸はキュゥべえが処理しなければ、新たな魔女が生まれてしまう。

既にグリーフシードは孵りかけており、魔女結界の中には既に魔女が存在している可能性が高かった。

 

 

「いずれにせよ、完全に覚醒する前に破壊すれば被害は抑えられる。まどか、真司さんやかずみを呼んでもらえるか? 私はマミとほむらを呼ぶ!」

 

「うん! わかったよ!」

 

「あ……」

 

 

戸惑うさやか。しかしすぐにサキは笑みを浮かべた。

 

 

「大丈夫だ、さやか、キミはこのまま行け」

 

「そうだよ、さやかちゃん! ここはわたし達だけで大丈夫だから、上条君の所に行って!」

 

「うぇ! で、でも……!」

 

「安心しろ。ほむらも加わって私たちは強力になった。生まれたての魔女だけなら簡単に倒せるさ!」

 

 

サキはさやかを急かすように背中を押す。

 

 

「こんな状況で言うのもどうかと思うが、思い切り楽しんでこい」

 

 

そう、こんな命を賭けた状況だからこそ、普通の女の子としての幸せも感じて欲しい。

サキの言い分に戸惑いながらも俯くさやか。

 

 

「行って! さやかちゃん!!」

 

「……ッッ!」

 

 

まどかは笑う。

さやかは少し迷ったが、すぐにしっかりと頷いて二人に背を向けた。

 

 

「サンキューまどか、サキさん! 最強のさやかちゃんがいないけど、負けたら許さないよ!」

 

「えへへ、わかったよ!」

 

「やれやれ、これは厳しいな」

 

 

走り去るさやか。

もう限界だ。グリーフシードは音を立てて崩壊し、まどかとサキはそれぞれ変身を完了させる。

そして、二人はその闇の中に足を踏み入れるのだった。

 

 

「いくよお姉ちゃん!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、デートの邪魔をするなんて、無粋な魔女だわ」

 

「まどかちゃん達が危ない! 早く行こう!!」

 

 

連絡を受けて、残りの魔法少女達と龍騎、シザースは結界の中に集まった。

全体的にお菓子と病院をイメージさせる不気味な魔女結界。

一同にも緊張が走る。

 

 

「今回は、なかなか強力な魔女みたいね……」

 

 

マミは真剣な表情で歩いていく。

そんな中、ほむらがマミに声をかけた。

 

 

「どうしたの暁美さん?」

 

「魔女の中には、死んだと思っても、まだ生きているタイプがいるわ」

 

「なるほど。なら、決して魔女結界が崩壊するまで油断してはいけないわね」

 

 

頷く一同。

そこでマミは少しだけ唇を吊り上げた。

 

 

「ありがとう暁美さん。心配してくれてるのね」

 

「……え、ええ」

 

「でも皆がいれば大丈夫。それより、魔女を倒したら暁美さんも決め台詞を言うのよ?」

 

「え?」

 

 

目を丸くするほむら。笑顔のマミはいつも通りだ。

 

 

「暁美さんも魔法少女7の一員として、ビシっと決めてもらわなきゃ」

 

 

ああ、そう言えばそんな事してたっけ?

ほむらは決めポーズをとっている自分を想像して、ため息をついた。

でも……、意外と、悪くなかったりして。

 

 

「須藤さん、大丈夫ですか?」

 

「ええ。ごめんなさい。昨日も忙しくて――」

 

 

一方、龍騎とシザースも軽く会話を行い、足を進める。

彼らを先頭にして、一同はどんどん魔女結界の奥を進んでいく。

途中、看護婦の格好をした使い魔・『ピョートル』をなぎ倒しながら、一同は少し広いホールへと出た。

 

 

「けっこう広いわね。皆ッ、はぐれないようにして!」

 

『ア―ベ―ト』

 

「え?」

 

 

何か、『音』が聞こえたような。

嫌な予感がする。念の為に銃を構えるマミ、そして――

 

 

「わぁッッ!!!」

 

「!!」

 

 

それはまさに突然だった。

『入り口』と書かれた穴が出現し、かずみ、ほむら、ゆまの三人がその中に吸い込まれてしまったのだ。

 

まさに一瞬だった。

穴はすぐに閉じると、跡形も無く消え去ってしまう。

 

 

「罠ッ!?」

 

「ど、どうしようマミさん!」

 

 

混乱していると、脳内にほむらの声が響いた。

魔法少女同士のテレパシーだ。

 

 

『――魔女を倒せば結界は破壊されるわ』

 

 

ほむらが言うには、このまま罠にかかるよりは、マミ達に早く魔女を倒してもらったほうがいい。

ゆまはともかくとして、ほむらとかずみはそれなりに強い。

マミも少し考えるようにしていたが、結論が出たようだ。

 

 

「分かった。コチラは任せて! 必ずすぐに助けにいくわ!」

 

『ええ。了解』

 

「行きましょう皆ッ、魔女を倒すのよ!」

 

 

頷く龍騎達。

走り、先に進むと、お菓子の箱をイメージする扉が見えた。

この先に結界の主がいる。ならば、もう迷う必要も無い。

マミは加速し、扉を蹴破った。

 

 

『♪』

 

 

とてつもなく『脚』の長い椅子に座っているのは、魔女『Charlotte(シャルロッテ)』。

お菓子の魔女にふさわしく、飴の包み紙を連想させる頭に、赤いローブ。

小さくてファンシーな外見は、今までの魔女とは違い、ぬいぐるみの様な愛らしい姿だった。

 

だが、どんな姿であれ、魔女であることには変わりない。

シャルロッテは現在、使い魔のピョートルを女装させてお茶を楽しんでいる様だった。

つまりまだマミ達には気づいていないのだ。

ほむら達の事もある。マミは少し焦るように走り出し、魔女を狙った。

 

 

 

「みんな! 大丈夫!?」

 

「う、うん……! ゆまは平気」

 

 

一方、かずみ達三人は吸い込まれた先の空間にたどり着く。

しかし、そこでほむらは違和感に気づいた。

 

魔女が構成する結界は、その魔女に関するイメージが多かった。

たとえばゲルトルートなら薔薇庭園、ズライカならば暗闇。

今回も、病院と言うモチーフあれど、通路のいたるところにお菓子をイメージさせる装飾が施されていた。

 

だと言うのに、現在ほむら達がいる場所は『お菓子』なんて一片も感じられない空間だった。

図書館とでも言えばいいか。今までの空間とはデザイン性が全く違っている。

 

 

『ギョエエエエエエエエエエエ!!』

 

「!」

 

 

響く声。

ほむらとかずみは、ゆまを庇う様にして構えた。

この禍々しい雰囲気は、使い魔の物ではない。

 

 

「そんなッ!?」

 

 

ほむら達の視線は、しっかりとソレを捉える。

あり得ない。あり得ない筈なのに、ソレは目の前にいるじゃないか。

知らないだけだったのか? いや、少なくともこんな事は初めてだった。

 

何故、この空間にお菓子が存在しないのか?

簡単だ。何故なら――

 

 

「一つの結界に……、魔女が二体!?」

 

 

ほむら達の前に存在していたのは、

落書きの魔女・CALL(コール)SIGN(サイン)prologue(プロローグ)』だった。

 

 

「ほ、ほむら!」

 

「ッ! とにかく倒しましょう!」

 

 

子供の落書きをそのまま具現した姿のコールサイン。

適当に書かれた顔から、線で構成された手と足が存在している。

コールサインはそれを鞭の様にしならせ、ほむら達を狙った。

 

 

「とうッ!!」

 

 

かずみはマントを巨大化させ、ほむらとゆまを包み込む。

コールサインの攻撃はマントを貫通する事はなく、その隙にかずみは十字架で魔女に切りかかっていく

 

 

『ギョエエエエエエエエエエッッ!!』

 

 

黒い一閃がコールサインに刻み込まれた。

悲鳴をあげて、後退していく魔女。どうやら戦闘能力の高いタイプではないらしい。

だが、長期戦は避けたい。ほむらとしては、なんだか嫌な胸騒ぎがするのだ。

 

 

「私が動きを止めるわ。そのその隙に決着を!」

 

「うん! わかった!!」

 

 

かずみはコールサインを蹴り飛ばすと、バックステップで距離を離す。

次の瞬間、爆炎が無数に巻き起こり、コールサインの体を包みこんだ。

 

 

「うわ! 凄い!」

 

 

ほむらの魔法なのだろうか?

爆発のダメージが大きく、コールサインは悲鳴をあげて、のた打ち回る。

今だ。かずみは十字架の先端に光を収束して、それを魔女に向けた。

 

 

「リーミティ・エステールニ!」

 

『ウゲェエェエエェアァアアア!!』

 

巨大な光がコールサインを包みこみ、断末魔ごと消滅させた。

 

 

「いぇーい! ビクトリぃー!」

 

「やったね! かずみお姉ちゃん!」

 

 

ハイタッチを決めるかずみとゆま。

ほむらも、予想以上に弱い魔女に胸をなでおろした。

だが、妙だ。同じ結界に魔女が二体いた割には、あっさりすぎる展開ではないか。

 

 

「嫌な予感がするわ。早くまどか達の所へ行きましょう」

 

「うん! ゆまちゃん!」

 

 

かずみは、ゆまの手を取って走り出した。

そして時間は少し前に戻る。

 

 

「おま、たせ」

 

「あぁ、大丈夫、僕もさっき来……、て」

 

 

上条は待ち合わせにやって来た幼馴染を見て硬直する。

変な話、一瞬誰かと思ってしまった。少なくとも、目の前にいる美樹さやかを上条は知らなかった。

いつも私服は大体見た事のあるものばかりで、今回もそうだとばかり思っていたが。

 

 

「ど、どうしたのよ。そんなジロジロと見ちゃってさ」

 

「あ……、やッ、ごめん! 初めて見る服だったからさ」

 

「これね、先輩からもらったの。胸にちょっと余裕があるけど――って、何言わせんの!」

 

「僕は何も言ってないよ!」

 

「あはは、分かってるって」

 

 

女の子らしい格好は珍しい。上条はさやかを凝視してしまう。

そのまま赤面したさやかの顔を見るまで、上条は混乱したままだった。

 

 

「あ、あはは……! じゃあ行こうか」

 

「う、うん」

 

 

さやかはそこで気づく。周りを見ても、案外人は多い。

殺人事件が起こっているとはいえ、やはり毎日の流れは通常通りだった。

 

ふと街中のテレビでは、また猟奇殺人に関する話題が報道されている。

上条はその話題を真剣な表情で見つめるさやかに気づいたのか、足を止める。

 

 

「怖いね」

 

「うん」

 

「でもほら、今は明るいし、周りにたくさん人もいるし、大丈夫だよ」

 

 

今朝も、新たな死体が見つかったところだ。

政治家の息子で、権力を振りかざして悪さをしていたらしい。

恨みを持つ物が多すぎるせいで、犯人の特定ができない状態と聞く。

 

 

「大丈夫? さやか」

 

「うん、大丈夫大丈夫……」

 

 

ふと、頭によぎる嫌なイメージ。

やっぱり、皆にまかせた事に罪悪感を感じているのだおる。

先ほどからずっと胸騒ぎが消えない。締め付けるような思いが、さやかを包む。

 

 

「大丈夫だよさやか」

 

「え?」

 

「知ってるかい? 殺された人にはある共通点があるんだ。実はね……」

 

 

上条の言葉も、今のさやかには入ってこなかった。

どうしても集中して考えると、相手の話が入ってこなくなる。それがマイナスイメージならば尚更だ。

 

嫌な事を考えてはいけないと思えば思うほど、明確なイメージが襲ってくる。

やっぱり一緒に行くべきだったのではないか。そればかりがループしていた。

世界がスローになる。どんよりした物がのしかかってくる。

 

別にマミ達の実力を疑っている訳じゃない。

むしろさやかは、マミやサキよりもずっと弱い。

 

でも、たとえば魔女が不意打ちをすれば?

どうしてもマミ達が傷つくイメージが脳に焼け付いていった。

 

大丈夫、心配ない。

何度も自分に言い聞かせるが、どんどん膨れ上がる最悪の結末。

まどか達を失ってしまったら、一生後悔する。

 

 

「さやか」

 

「――え?」

 

 

肩に触れる手。

さやかはそこで、やっと意識を取り戻す。

そこには自分を心配そうに見つめる上条がいた。

 

 

「ご、ごめん恭介。ぜんぜん話、聞いてなかった」

 

「うん。やっぱり犯人が見つかるまでは怖いよね。今日は止めようか」

 

「あッ、でも――」

 

「いいんだ。映画はいずれレンタルできるし」

 

 

さやかは考える。

ここで上条と一緒に映画を見れば、より親密な仲になれるかもしれない。

でも、それでも浮かぶのは前日の事。マミの笑顔だった。

 

 

「ごめん、恭介……」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「ごめん!!」

 

「え?」

 

 

そう言って、さやかは踵を返して走り出した。

流石にこれには上条も驚き、怯む。送っていくつもりだったのだが、全速力で走り去るとは。

よく分からないな。上条は苦笑すると、自分も帰路につくため歩き出すのだった。

 

 

そして、時間は現在へと戻る。

マミ達はほむら達の事もある為、一気に決着をつける事を決めていた。

 

 

「悪いけどッッ!!」

 

 

マミはシャルロッテが座っている椅子に銃を叩きつける。

バランスを崩して落下するシャルロッテ。

まだ終わらない。マミはそのまま鋭い蹴りでシャルロッテを弾き飛ばすと、追撃の銃を一発おみまいした。

 

 

『×!』

 

 

シャルロッテは壁に叩きつけられ、さらにマミのリボンで拘束される。

抵抗を許さない連撃、マミは決着をつけるために必殺技を発動させた。

 

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

 

巨大な弾丸が発射され、シャルロッテに着弾する。

マミはさらに大量のマスケット銃を出現させると、それを交互に撃ちだした。

爆炎がシャルロッテを包んでいく、これを受けて平気な訳がない。

マミは勝利を確信すると、後ろを振り向いてまどか達に微笑みかける。

 

 

「やったねマミさん!」

 

「っしゃあ! さすがマミちゃん!」

 

 

自分達が出る幕は無かった様だ。

龍騎とまどかは、勝利を喜びあう為マミに駆け寄ろうとした。

まさに、その時、サキの表情が変わる。

 

 

「マミッッ!!!」

 

「え?」

 

「まだ死んでないッッ!!」

 

「ッ!?」

 

 

振り返ったマミ。視界には口があった。そう、口が。

 

鋭い牙、真っ黒な口の中。

シャルロッテには別の姿が存在するのだ。

マミが起こした爆炎で見えなかったが、目の前にいる化け物もシャルロッテなのだ。

 

同じくファンシーな顔からは愛らしさを感じるが、どう考えてもあの小さな体からは想像できない程に今の姿は巨大だ。

手足が無く、黒く長い体は、大蛇や恵方巻きを連想させる。

 

問題は今、シャルロッテが大口を開けてマミの眼前にいると言う事だろう。

あまりにも一瞬の事で、マミの、ましてや一同の思考は停止する。

 

 

『♪』

 

 

シャルロッテは口を閉じた。

言い方を変えよう。マミに齧りついた。

 

 

『………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ストライクベント』

 

「ウォォオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

爆炎がシャルロッテを包み、その巨体を大きく吹き飛ばす。

龍騎のドラグクローから炎が発射されてシャルロッテに直撃した。

 

その衝撃で我に返るまどか達、思わずマミの名を叫ぶ。

どうなった!? サキはマミの姿を追うが、どこにもいない。

まさか、遅かったのか。マミはもう腹の中に――。

 

 

「あッぶなかったねマミさん!」

 

「あ……」

 

 

巴マミも我にかえる。もう駄目かと思った、死んだかと思った。

でも、今こうして息をしている。どうして? マミは理解した。

今は横抱き――、つまりお姫様抱っこで抱えられている?

 

 

「み、美樹さん!?」

 

「ふふん! マミさんてば、あたしに惚れちゃうかもね」

 

 

マミを抱いていたのは青き剣士、美樹さやかだった。

 

 

「さやかちゃん!」

 

「へへっ、さやかちゃんただいま参上!!」

 

 

さやかは、みんなの為に戦う選択肢を取った。

自慢のスピードで駆けつけ、見事マミを救う事ができたのだ。

さやかはマミを降ろすと、ニヤリと笑って剣を構える。

 

 

「さあ、マミさんを危ない目にあわせた魔女(バカ)にお仕置きだ!」

 

 

そこで一同も戦闘態勢に入った。

 

 

「おのれ魔女め! よくも!!」『アドベント』

 

「フッ! はぁぁぁぁ……ッ」

 

 

ボルキャンサーが現れ、自慢のハサミでシャルロッテを刻んでいく。

シャルロッテには再生能力があるのか、ある程度ダメージを負うとその口から新たなシャルロッテを生み出す。

つまり脱皮を繰り返すようだ。

 

 

「なら、その再生が追いつかないスピードでぶちのめしてやる!」

 

 

ドラグレッダーが龍騎の周りを旋回し、ドラグクローと共に炎弾を放った。

『昇竜突破』、通常の倍以上ある炎弾がシャルロッテを焼き焦がす。

 

耐え切れなくなったのか、脱皮が始まった。

そこに待っていたのはさやかの剣だ。

斬撃はシャルロッテを刻み、さらに脱皮を誘発させる。

 

 

「させません!」『ファイナルベント』

 

 

シザースアタックで、シャルロッテの口に入り込む。

完全に脱皮しきれていない状況での攻撃。ましてや体内に侵入された。シャルロッテは表情を歪ませ、苦しみ始める。

その隙に、さやかは思い切り上空へ飛び上がり、剣を振り降ろした。

 

 

「おっりゃあああああああああああああ!!!」

 

 

一閃。シャルロッテは真っ二つに引き裂かれ、爆散する。

誰も疑わない完璧な勝利。今度こそ決着だった。

 

 

「っしゃああ!!」

 

「やったぁ!」

 

 

駆け寄って勝利を喜びあう一同。

さやかはそのままマミの元へ駆け寄る。

 

 

「大丈夫マミさん?」

 

「……あはは、腰が抜けちゃった」

 

 

危なかった、マミはそう言って笑う。

でも、とにかく無事でよかった。サキとシザースもホッと胸をなでおろす。

ほむらの言っていた通りだ。魔女の中には初見では見抜けない能力を持ったものが多い。

 

 

「……っ」

 

 

しかし、おかしい。

 

 

「魔女結界が崩れない! また!?」

 

 

ゲルトルートの時と同じだ。魔女は死んだ筈なのに、結界が解けないではないか。

以前のように、まだ何か潜んでいるのか? 一同は再び構えて、注意する。

もう少しすれば何かアクションがある筈だ。

 

 

「……ッ?」

 

 

しかし、何もおきない。

どういう事だ? マミは周りを見回し――

 

 

『アドベント』

 

「え? 何?」

 

 

何かが聞こえた気がした。

 

 

「皆! あれッ!」

 

 

まどかが何かを見つけた様だ。

みんな一勢に、まどかが示した場所を見る。するとそこには『テレビ』があった。

 

 

「魔女ッッ!?」

 

 

ブラウン管のテレビに翼が生えた魔女『H.N(ハンドルネーム).Elly(エリー)(Kirsten(キルステン))』

彼女は使い魔である『ダニエル』『ジェニファー』と共に、お菓子の結界に登場したのだ。

 

 

「一つの結界に別の魔女!?」

 

 

そんな話は聞いた事もない。

混乱するマミ達だが、シザースはシュートベントを発動して引き金を引く。

いずれにせよ魔女である事に変わりは無い。ならば、倒すまでだ。

 

 

『ヒヒヒ!』

 

「くっ!」

 

 

ダニエルが水流弾を防ぎ、エリーは動き出す。

空間に複数のモニタが出現して、それらは一つの映像を映し出した。

 

攻撃か? 防御の姿勢をとる龍騎達。

まどかは魔法を発動して前に出る。何がくるのか? 身構える一同だが、一向にダメージも衝撃もない。

 

 

「……ッ?」

 

 

どうやら、箱の魔女エリーは攻撃をする気はないようだ。

代わりに、エリーの周りに出現したモニタが全て同じ映像を映していた。

どうやら魔女は、まどか達にそれ見せたい様だった。

 

 

 

 






やっぱ、マミさんは最高やな!(´・ω・)b
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