仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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久しぶりの更新です。空いたのは特に理由がありません。
すいやせん、普通に自粛期間とかはゲームしてました。

特別編はきりをよくしたいんで、100話で終わらせたいんですが……
ちょっとどのくらいの長さで終わるかわからないんで
今これが前編なんですけど、とりあえず全部終わった時点で三話に纏めさせてください。

最初のややこしい感じはわざとです(´・ω・)



特別編 龍騎-1

 

 

「おぉ、ダブル真司、戻ったか。で、どうだった取材は?」

 

『~~~~』

 

「おお、おお、おお。そうか」

 

 

アクターメバーエル。まどかが魔法で生み出した天使である。

その能力は文字通り、『役者』を作りだすことである。

三頭身でポッテリとしたドラム缶のような天使が、二人並んで編集長と会話をしている。

一体は真司を思わせるカツラや服装を、もう一体はシンジを思わせる格好である。一応変装しているとはいえバレバレのような気もするが、編集長や令子でさえ気づいちゃいない。

 

もちろん魔法の影響である。

戦いはいつ起こるかわからない。今までは学校や職場に迷惑をかけていたが、アクターメバーエルがいれば誤魔化しがきくということだ。

彼女らは普段の真司やまどかの行動を記憶し、こう言われればこう返すだろうという言葉を用意して投げかける。簡単に言えばAIのようなものなのだ。

 

面白い魔法を作るものだと――神那ニコは感心していた。

彼女もレジーナアイやマギアレコードなど、固有魔法の可能性をできる限り広げようと奮闘しているわけで。

そんな彼女にとってまどかが提示する可能性は良い刺激になる。

まどかはかつて魔法少女たる自身のイメージをノートに纏めたりしていた。

そういう創作性が魔法の応用力にも繋がるのだろう。固有魔法は素材のようなものだとかつてインキュベーターは説明していた。木材で腹は満たせないが、ボウルや箸を作ることで目標には近づけるように。

 

 

「ましてや鹿目には円環のうんたらかんたらの力があるんじゃろ? インスピレーションがビンビンくるね」

 

『それで作ったのがコイツかよ』

 

 

喫茶店。

テーブルの上に立つジュゥべえはニコの隣に座っていた『まどか』を見る。

 

 

『よしてよジュゥべえ。そんなに見られると照れちゃうねぇ』

 

 

まどかの筈だが、何かがおかしい。

まず等身が低い。声もなんだかダミ声だ。

それになんだか紙が動いているような、アニメから飛び出してきたかのような質感である。

 

 

「この前、鹿目と話し合って作った共作魔法なんだ。アクターメバーエルの中で"まどかを演じる天使"を私がカスタムした。名づけるならPersonal Another Picture Angelまどか……」

 

 

ニコも分身は使う。

彼女は分身に喋らせて、偽物を本物であるように偽装するが、まどかの場合は偽物だと分かりきっているものを魔法で『強引に本物だと思い込ませる』手段をとった。

その発想力に敬意を表し――

 

 

「このメバーエルちゃんは、まどか先輩って呼ぶことにしたよ」

 

『よろしくねジュゥべえ』

 

 

まどか先輩は目の前にあったコーラを両手で掴むと、口元へ引き寄せる。

 

 

『じゅぶるるるる! ずぞっ! ばじゅぐっ! ずびびびいぃぃ!』

 

『飲みかた汚ぇな』

 

『ごめんね、でも赤ちゃんみたいで可愛いでしょ?』

 

『おいちょっと待て、お前口に含んだの戻してねぇか? やだよこの子ばっちぃ』

 

 

そこでカランカランと音がする。姿を見せたのは美樹さやかだ。

 

 

「やっほ! ニコ!」

 

「おお、こっちこっち」

 

 

さやかは席につくと、まどか先輩に気づく。

 

 

「なーんだ。まどかも来てたの! 言ってよー!」

 

 

ジュゥべえはニコにだけ聞こえるようにテレパシーを調節。

 

 

『アクターメバーエルっつうのは魔法少女とかには効かねぇんじゃ……』

 

『アホには効果あるみたいだな』

 

『失礼だぞ』

 

 

一方でさやかは携帯を弄るまどか先輩を見る。

 

 

「あれ? まどか、今日なんか雰囲気違うねー。かわいいかわいい!」

 

『そうかな。えへへ、ありがとう』

 

「なにしてんの? ソシャゲ?」

 

『そうだよ。挨拶代わりの10連ガチャをね』

 

「言ってよー! 一緒にやろ! って、あれ? あたしの知らないゲームだ」

 

『マギアレコードっていうんだよ。ニコちゃんが作ったの』

 

「ふーん。あたしのスマホにも入れて!」

 

「申し訳ない。今はいろいろ調整中でね。そもそもこれはゲームじゃなくて私の魔法だから遊びじゃないんだよ」

 

 

ニコは薄ら笑いを浮かべつつ、近くにあったグラスをさやかに差し出す。

 

 

「さっき頼んでおいた。コーラでいいかな?」

 

「おおサンキュー! 気がききますなぁ!」

 

 

さやかはニコからグラスを受け取るとゴクゴクと一気に流し込み――

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、気絶した。

 

 

「コイツより私が先に死んだゲームがあったらこの場で死ぬ」

 

『……葬儀場はどこがいい?』

 

「マジかよクソ! ファック!」

 

 

ニコはカバンからキュゥべえを取り出すと、両手で顔を握りつぶす。

 

 

『死ぬの先輩かよ。お前マジでいい加減にしろよ』

 

「は? 真面目にやってるけども」

 

『代わりはいるけど、むやみに殺られるのは先輩も困るんだよ』

 

「別にイライラしてやったわけじゃないし」

 

『……にしても、何をコーラに混ぜたんだ?』

 

「ただの眠り薬。でもコイツ記憶戻ってるんだろ? ちょっと無防備過ぎない? 一応、元敵だぞ」

 

『それが美樹さやかの長所であり短所でもある……って感じか』

 

 

ニコはまどか先輩から携帯を返してもらい、画面を確認する。

 

 

「少女の境界、穏やかな日差し、寄り添い見守る心、ちょっと一口……。マジでクソみたいな記憶ばっか。もう全部持ってるし」

 

『何の話だよ? テメェ最近コソコソとしやがって。そもそも何で美樹さやかを眠らせた?』

 

「一つは余計な考えを持たないようにすること。雑念が入るとやりにくくて」

 

 

ニコは携帯にコードを付けると、先にある針をさやかの脳天に突き刺した。

 

 

「もう一つは、ちょっと脳に針入れさせてくれって言ってOKするヤツなんておらんじゃろ」

 

 

ニコは魔法を使ってさやかの『記憶』や『情報』を閲覧し始める。

 

 

「美樹さやかには円環の使者としての記憶がある。なぎさとコンタクトが取れない以上、コイツに頼るしかない。脳にもパソコンやメモリーカードみたいに容量がある。既に彼女が忘れている重要な情報もあるはずだ」

 

 

ニコはマギアレコード内にある『素材』という欄を睨む。

 

 

「リュットンのリボン? リュットンってなんだよ。オウル……? ダメだサッパリわからん」

 

 

ニコは笑みを消した。さやかの脳を探るが、ニコが欲していた情報が全くない。

 

 

(ッ? 全てわからずとも、ヒントすらないなんておかしいな……)

 

 

そこでニコはジュゥべえがいなくなっていることに気づく。

 

 

「ま、よろしい。いずれにせよ鹿目がいれば私のマギアレコードは完成するんだからな」

 

『え? どうしたのニコちゃん。なんでも言ってよ。なんでもしちゃうよ。え? 今なんでもって――』

 

「あぁ、いや。先輩じゃなくて」

 

『そっかぁ。じゃあさやかちゃんも寝ちゃったし何か食べよっか。わたしは家系にしようと思うんだけど』

 

「ねぇじゃろ。んなもん」

 

『ずぞぞぞぞぞーっ! ずるっ! ズボッ! ぴちゃ! ビッチャッッ!』

 

「あるんかーい!」

 

 

ニコはずっこけたように机に伏しつつ、さりげなくさやかに手を伸ばす。

そして魔法を発動すると、彼女の中にあるソウルジェムを抜き取ってみせる。

 

 

「でも、もっと美味いモンを食ったほうがいいよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍騎ィイイィイッッ!」

 

 

龍騎はドラグクローから炎をまき散らしながら、もう一方の手に持った剣を振り回していた。

龍騎や龍騎が落ち着かせようとしているが、龍騎は理性を失っているのか、まったく聞く耳を持たず目に映るものに切りかかっていく。

 

 

「お前のせいでサラが! サラガァア!」

 

 

剣に炎が纏わりつく、龍騎が回転切りを行うと赤黒い炎が拡散して、龍騎たちのアーマーを焦がした。

止めなければ。少し離れたところにいた龍騎は龍騎たちの方へ向かおうとするが、そこで発砲音と衝撃。

見れば龍騎が気だるそうにしながらガンモードに変えたライドブッカーを弄んでいる。

 

 

「やめろ士! 何を考えてるんだ!」

 

 

龍騎は前に出て龍騎を諭すが、そんなものに意味はない。

 

 

「言っただろ。一番強い龍騎を決めようぜって話。それだけだ」

 

「い、意味がわからないッ!」

 

「お前も戦え! シンジ!」

 

 

龍騎が地面を蹴った。一気に加速すると剣で切りかかる。

龍騎は咄嗟に腕を盾にして攻撃を受け止めるが、衝撃とともに火花が散った。

仮面の裏で歯を食いしばる。さらに腹部に衝撃が走った。龍騎の足裏がヒットしたのだ。

龍騎は後ろに下がりながら唸り声をあげる。

 

 

「本気なのか――ッ!」

 

「……さぁな」『ストライクベント』

 

 

ネオディケイドライバーはカードを介さずとも直接ライダーの力にアクセスすることができる。

龍騎は右腕に装備されたドラグクローを構え、腰を落とす。

口が光った。龍騎が突き出したドラグクローから熱線が発射されて龍騎を狙う。

しかし既にそれは見切っていた。龍騎は右へのステップでそれを回避するが――

 

 

「うぎゃぁああああーッッ!」

 

「あッ!」

 

 

しまったと龍騎は思わず口を押える。

回避してしまったおかげで、熱線はその背後にいた龍騎に直撃してしまったではないか。

しかも声から察するに真司だ。彼は煙を上げながら地面をゴロゴロ転がっていく。

戸惑っていると当然、動きも鈍くなる。オロオロとしている龍騎へ龍騎の飛び膝が入った。

よろけていると肩をつかまれ、胸部に銃口を押し当てられる。

ライドブッカーが火を噴いた。龍騎は地面に倒れ、龍騎はその上を踏み越えて走る。

 

 

『ソードベント』『アタックライド』『スラッシュ!』

 

 

龍騎は二刀流で走り出す。

 

 

「お、おい! なんかよくわかんねぇけどコッチ来んな! おい! なあって!」

 

「騒がしいガキは好きじゃない」

 

 

龍騎は炎をまとわせた剣を小柄な龍騎へ刻み付ける。

 

 

「あぢぢぢぢぢ!」

 

 

怯んでいるところを蹴り飛ばすと、そのまま剣を思いきり振るい、炎の斬撃を周囲へ拡散させる。

炎が迸り、火の粉が飛び散る。龍騎は倒れた龍騎を蹴り飛ばすと異形の龍騎を目指す。

 

 

「どうした加納達也、お前の龍騎はそんなもんか?」

 

 

刃がぶつかり合い、剣が絡み合う。

龍騎が腕を振るうと龍騎の腕から剣が弾かれる。肘を入れ、もう一度剣を入れると龍騎は情けなく地面を転がっていく。

 

 

「弱いな。だからお前は全てを失ったんだ」

 

「――ッ! なんだと! なんだとォォオォ……ッッ!」

 

 

龍騎は頭を押さえ、苦しそうに呻き始める。

様々な景色が頭の中にフラッシュバックしていった。

その中には、『彼女』の笑顔も存在している。

 

 

「ライダーとして負けたヤツは全てを失う。覚えておくんだな」

 

 

龍騎はライドブッカーからファイナルアタックライドを抜いた。

しかし視線の先には確かに立ち上がる龍騎がいた。

全てを失う? それは違う。自分は既に失った。だから取り戻そうとしたのだ。

まだ何も得ていないのに失うなんておかしな話だ。そんな簡単なことを間違うなんてなんだか無性にイライラしてくる。

 

それだけじゃない。龍騎だ。

龍騎が全ていけないんだ。龍騎さえいなければ目的は達成できた。

達成できたのに龍騎がいたから。龍騎が、そもそも、いなければ、失うことすらなかったのに――ッッ!

 

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

怒りの咆哮が異形なる龍騎を更なる異形へと変質させる。

アナザードラグレッダー。彼は憎悪を使役する。

見境ないドラゴンは、悲鳴のような雄たけびをあげながら頭を振り回す。

龍騎が弾かれ、龍騎が吹き飛んだ。ドラグレッダーは口から炎を連射して龍騎たちに直撃させていく。

 

 

「うわぁあああん! 熱いよぉおお!」

 

 

小さな龍騎が蹲り声を震わせていた。

それに気づいた龍騎はすぐにその龍騎へ駆け寄っていく。

 

 

「キミ! 大丈夫ッ? 待ってて今すぐに――!」

 

 

龍騎の胸が爆発し、煙を上げて吹き飛んだ。

小柄な龍騎は気だるそうに立ち上がり、腕についているドラゴンは呆れたように、申し訳なさそうに視線を泳がせていた。

 

 

「残念だったなメリケン野郎。日本の子供はクソガキしかいねぇんだよ。覚えてろ」

 

「偏見! やめろ! 国際問題になるぞ!」

 

「黙ってろドラグレッダー!」

 

 

小さな龍騎はドラグレッダーを、そしてそのまま龍騎たちを睨みつける。

なんだかよくわからないが、このままコケにされて終わるのは非常に腹立たしい。

 

 

「ぶっ潰す!」

 

 

龍騎は拳を思いきり引き――

 

 

「燃え尽きろ! ドラグーンインパクトッッ!!」

 

 

そして思いきり突き出した。

ドラグレッダーの口から巨大な炎が発射されると、空中にいたドラグレッダーに直撃して大爆発を巻き起こす。

悲鳴をあげながら龍騎が墜落した。それを見て龍騎は楽しそうにゲラゲラと笑う。

 

 

「それでいい。それが龍騎だ」

 

 

龍騎が言った。

そこで倒れていた龍騎も地面を殴り、立ち上がる。

 

 

「もう怒ったぞ! 子供だからって容赦しないからな! おしおきだ!」

 

 

龍騎はそれを聞いて拳を握りしめた。

複雑ではあるが、この混乱を収めるには、どうやら暴力が手っ取り早いようだ。

 

 

「ちょ、ちょっと待てよ! 本気で戦うつもり? そんなの間違ってるだろ! なあ! おい!」

 

 

龍騎は龍騎たちを落ち着けさせるために輪の中に入っていくが、そこで思いきり蹴り飛ばされた。

 

 

「うるさい奴だ。少し黙れ!」

 

 

それが開戦の合図だった。

龍騎たちは雄たけびをあげて突っ走る。

拳が入り乱れ、蹴りが乱舞し、戦いを止めようという龍騎は再び地面を転がされる。

 

 

「助けなきゃ!」

 

 

まどかたちは頷き、変身すると龍騎たちを睨む。

しかしすぐに滲む汗。小柄な龍騎以外が全く同じに見える。

一人だけは目を凝らすと、禍々しい姿であると『認識』できたが、ふと気を抜くと彼もまた『龍騎』であると判断してしまう。

何かがおかしい。龍騎が龍騎であると脳が判断しているようだ。どれが真司なのか、いまいちわからない。

 

 

「私に任せて! 真司さんと戦ってきたんだもの! 見分ける自信はあるわ!」

 

 

マミがマスケット銃を構え、射撃する。

龍騎に攻撃が命中した。火花をあげて地面を転がっていく龍騎からは城戸真司の声。

 

 

「巴マミ!」

 

「ご、ごめんなさい! だって前のゲームじゃすぐ死んじゃったから真司さんの癖とかいまいちわからなくてぇぇ……!」

 

「言い訳は聞きたくないわ! 引っ込んでて! ガープ!」

 

『はいに、ただいま!』

 

 

ガープはほむらの頭上に現れると、黒い弓矢を授けて消え去る。

ほむらは弦を引き絞ると、闇のエネルギーを集中させていく。前方では既にまた龍騎たちが入り乱れているが問題ない。

 

 

「ハァアア!」

 

 

黒い閃光が放たれた。それは迷いない動きで龍騎に直撃する。

 

 

「ぎゃあああああああ!」

 

 

悲鳴をあげて吹き飛ぶのは龍騎。

その! 声は! 城戸真司!

 

 

「ほむらちゃん!」

 

「あぅわぁ! 城戸さんを射抜いてしまいましたぁ! ごめんなさいぃぃぃい!」

 

「駄目だよほむらちゃん! ホムラちゃんになってもごまかせないよ!」

 

 

ホムラは気まずそうに眼鏡を外してほむらに変わる。

そこでハッとした。城戸真司以外を狙うという発想が間違っていた。

まずは混乱を加速させているだろう『ディケイド』とやらを狙えばいいのでは?

彼だけベルトの形が違う。すぐに探すが――

 

 

「ッ?」

 

 

いない。おかしい。ネオディケイドライバーが見当たらない。

 

 

「悪いな魔法少女共。ベルトは隠せるんだ」

 

 

龍騎の群れから士の声が聞こえた。ほむらは舌打ちを零す。

しかしそこで桃色の光が迸る。見れば龍騎たちの拳を遮断する結界が。

それに守られているのはもちろん龍騎だ。おどおどとしている中身は間違いなく城戸真司らしい。

 

 

「大丈夫ですかっ、真司さん!」

 

「まどかちゃぁぁん!」

 

 

まどかは結界をそのまま拡大、桃色のバリアが他の龍騎を弾き飛ばして地面にダウンさせる。

その隙にまどかは龍騎たちの中央へと向かうと、複雑そうに訴える。

 

 

「じ、事情はわからないけど、落ち着いてください!」

 

「悪いが、そういうわけにもいかないんでな」

 

 

龍騎は両手に持っていた剣を投げ捨てると、いつの間にか指に挟んでいたカードを見せつける。

するとVバックル部分にノイズが走り、ネオディケイドライバーが姿を現す。

龍騎は左手でドライバーを掴み、展開、そのままカードを放り投げた。

 

 

「変・身」『カメンライド』

 

「っ?」

 

『カブト!』『Change Beetle』

 

 

六角形の光、そして起動する赤い角。

そこには龍騎ではない。まったく違う形の騎士が立っていた。

 

 

「え? えっ? あれ? 龍騎じゃなくなっちゃった……!」

 

 

戸惑うまどかを前にして、カブト――ディケイドはベルトにあるスイッチに触れた。

 

 

『Clock Up』

 

 

それはまさに一瞬だった。

まどかの体に衝撃が走ったかと思うと、視界が反転していた。

それは彼女だけじゃない。近くにいた龍騎たちも同じだ。痛み、衝撃、足裏が地面から離れると再び衝撃が走る。

 

 

『ファイナルアタックライド――』『カカカカブト!』

 

 

光る足が龍騎に打ち当たる。きりもみ状に吹き飛んだ龍騎は、そのまま他の龍騎たちを巻き込んで地面を擦っていく。

 

 

「なんだよそれ! この流れで龍騎じゃねぇの出すなよ!」

 

「うるせぇクソガキ、俺は破壊者だ。それにこれはギリギリ龍騎だろ。赤いし」

 

「だったらほとんど龍騎だろ……!」

 

 

いろいろな声が聞こえてくるが、小さな龍騎がクナイガンで撃たれた。

龍騎は白目をむいて気絶する。一方でディケイドはクナイガンを投げ捨てるとライドブッカーを手にしてまどかを睨む。

彼女は地面に倒れている。好都合だ、ディケイドは再びクロックアップを発動して彼女を切り裂くために走る――が、しかしすぐに急停止。

ふいに背中に張り付けられた爆弾を見て唸る。

 

 

「なるほど」

 

 

起爆。

まどかの前には黒い髪をなびかせている暁美ほむらが立っていた。

とはいえ彼女はすぐに舌打ちを零す。爆弾の威力も落としたし、所謂『威嚇』の一撃でディケイドが爆発四散した時はギョッとしたが、それが能力らしい。

バラバラになった液体は収束。そのまま人の形になると実体化した。

ほむらは目を細めた。いつの間にかディケイドの姿がまた変わっている。黒いローブをなびかせたのは、ウィザード。

 

 

「高速移動も時間を止められちゃおしまいだ。悪くないぞ、暁美ほむら」

 

「あなたは何者なの? 他の騎士とは明らかに違うみたいだけど……」

 

 

ディケイドはチラリと右を見る。マミが銃を向けているのが見えた。

 

 

「土星って知ってるか?」

 

 

ほむらはまた不機嫌そうに舌打ちを零す。

関係ない言葉が返ってきたが、こういうタイプは何人か知っている。おそらくまともな会話ができないだろう。

一方でディケイドは言葉を続けた。

いや、待て。その前に一応お約束というものを守っておこう。

 

 

「ここがまどか☆マギカの世界か……」

 

 

水滴は近づけば、一つになっていく。

一つになった水滴は大きな粒になる。

粒は丸く、土星の周囲には輪があるものだ。星を囲む輪、それはひとつの『円』。

 

ここもきっとそうだ。

歪な惑星の周りにはきっと大きな輪があるに違いない。

それはきっと檻のように。それはきっと錠前のように。

その輪の色は何色だろう。きっと眩しいはずだ。

眩く煌めく、黄金の輪。

 

 

「目が眩む」

 

 

ディケイドが地面を蹴った。おまけに手にはガンモードに変えたライドブッカーが。

当然、射撃。ほむらは反射的に盾を前にして銃弾を防ぐが、衝撃はそれなりだ。

 

しかし彼女は冷静だった。あえて後ろに倒れる。

その最中に盾に腕を入れてハンドガンを抜き取っていた。

ほむらの上を通り抜ける弾丸、一方でほむらが撃った弾はディケイドの装甲に直撃していく。

 

ディケイドは後退しながらもライドブッカーをソードモードへ変形させると、腰のボタンに手を伸ばす。

一方でほむらも魔法を発動。騎士のような鎧を纏った馬が現れると、ほむらに闇の剣を与える。

それを掴み取ると、彼女は盾を構える。

 

 

「クロックアップ!」

 

「面白い。速さ比べといくか」『Clock Up』

 

 

まどかとマミはすぐにほむらの援護を諦めた。

赤と黒の残像が土をえぐり、遊具を破壊し、木々の葉を切り裂き、各地で激突していく。

猛スピードで切りあう二人。激しい火花が散り、互いは地面を擦りながら一旦距離を取り合う。

 

 

「ッ、これは……」

 

 

再び動こうとしたディケイドだが、そこで違和感を感じた。

体を確認するとすぐに気づく。糸だ。細く長い、黄色い糸がいつの間にか全身に絡みついている。

 

 

「レガーレヴァスタアリア!」

 

 

マミの声。そこで糸がリボンに変わり、ディケイドの全身を縛り上げる。

どうやら二人が走り回っている中、マミがリボンの結界を張り巡らせていたようだ。

狙いを定められないなら、『設置』しておけばいい。あとはディケイドが自分から糸に絡みにいってくれると。

 

 

「カードを入れられなければ、変われないみたいね!」

 

「やるじゃないか。よく、見てる」

 

「ありがとう。もうおしまいにしましょう!」

 

 

マミはマスケット銃をディケイドに向ける。

さらにほむらが悪魔の名を叫んだ。ハットを被ったコブラが一瞬浮かび上がると、ほむらに炎の力が付与される。

彼女はそのままその炎をマミのマスケット銃の銃口に纏わせた。

 

 

「だがこんなのもあるぜ?」

 

「え!?」

 

 

マミが引き金を引こうとしたとき、ディケイドの前方に灰色のオーロラが現れる。

オーロラがディケイドを通過すると、がんじがらめになっていた彼は一瞬で消滅。

ターゲットがいなくなればリボンは力なく地面に落ちる。

 

 

「そ、そんな! どこに!」

 

 

驚くマミの背後に現れるオーロラ。

 

 

「巴さんッ! 危ない!」

 

 

ほむらはマミに飛びつくと、彼女の位置を大きくズラす。

するとどうだ。先ほどマミが立っていた場所に通過する赤いスーパーカー。

 

そう、車だ。

 

ドライブと呼ばれる騎士に変身したディケイドは、その愛車トライドロンでマミを轢こうとしたのだ。

トライドロンは大きくドリフト。公園の遊具をすべて薙ぎ払いながら旋回し、再びライトが二人を照らした。

ほむらはアサルトライフルを取り出すと、惜しげもなく弾丸を連射していく。

しかし炎の力を付与して攻撃力を上げているにも関わらず、トライドロンのスピードは緩まない。

砂を使おう、ほむらがそう判断するとほぼ同時に、前方にまどかが着地する。

 

 

「任せて! アイギスアカヤーッッ!!」

 

 

巨大な盾が現れた。

そこへ容赦なく突っ込んでいくトライドロン。

激しい衝撃が伝わる。まどかは表情を歪ませる――が、しかし、彼女も意地がある。

 

背後には大切な仲間がいる。魔力を込めると、盾はより強固になっていく。

激しく地面を擦るタイヤ。しかしどうだ。ギュルギュルと音を立てるそれは回転しているが前に進んでいない。

完全にトライドロンの動きが止まった。ディケイドは舌打ちまじりにドアを蹴り破ると、車外へ出る。

 

そこで前後に四角い半透明の壁。左右を見ても同じ壁。

地面から壁が浮き上がる。頭上にも壁が。

これは箱だ。まどかが発動したニターヤーボックスがディケイドを完全に閉じ込めた。

 

 

「貴方も騎士なんですよね? お願いだから話を聞いてください!」

 

 

まどかはそう訴えるがディケイドは聞こえているのかいないのか。

ライドブッカーからカードを抜き取ると、それをバックルへ放り投げる。

 

 

『ファイナルアタックライド』『ドドドドライブ!』

 

 

どこからともなくトレーラー砲という大砲が現れ、ディケイドは銃口にエネルギーを集中させていく。

まどかは悲しげに表情を歪ませたが、そこで彼女の背後からほむらが現れ、前に出た。

その手には弓が握られており、既に弦は限界まで引っ張られている。

 

砲撃は同時だった。

バリアを突き破るビームと、弓から発射された黒いレーザーがぶつかり合う。

競り合う攻撃だが、ほむらが目を見開いた。

するとどうだ。見よ、矢が光を突き破りディケイドまで届いたではないか。

装甲が爆発する。ディケイドはゴロゴロと地面を転がり、変身が解除されて士に変わる。

やがて勢いが止まると、士は気だるそうに立ち上がり、服についている砂を払っていた。

 

 

「……やるな」

 

「当然よ。まどかと巴さんを守るためだもの」

 

「ふん、仲間か」

 

 

そこで退く。そして気づいた。

いつの間にか龍騎たちの真司たちの姿がない。

 

 

「あ、あれ?」

 

 

ディケイドに気を取られていたため、まどかも気づくのが遅れた。

本当に? ちょっと待ってほしい。

そもそも龍騎とは何か? そんなもの、『初めからいなかった』のではなかったか?

そこで三人は見る。空に浮かび上がる巨大な魔法陣を。

 

 

「なにあ――」

 

 

音が消えた。誰もいない。公園には士以外。

 

 

「番外編の始まりってところか。さあどう転ぶか……、しっかりと観測させてもらうぜ」

 

 

士もまた、すぐに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙があった。まどかは銀河の中で目を覚ます。

星は消え、惑星は遠のいていく。体を起こすと真っ暗な闇がただひたすら広がっている。

しかし何かを感じる。光だ。眩いはずなのになぜかそれを見ることができない。

すぐ近くにあるはずなのに見えない。

黄金の瞬きを。

 

 

「ソウルジェム。そしてグリーフシード」

 

「!!」

 

「噂には聞いていたけれど、やはり美しい。ぜひとも僕のものにしたいね」

 

「あ、あなたは……?」

 

 

闇の中でくっきりと浮かび上がる青年。

白いジャケットに茶色の髪。なによりもその腕にあるシアンの色をした銃。

 

 

「―――」

 

 

青年は何かを呟いたが――まるでノイズがかかっているような感覚。

まどかも、彼も、それを把握したのか。僅かな沈黙が生まれる。

 

 

『カメンライド』

 

 

まあ別に、それは今、それほど関係ないことだ。

その男、海東はネオディエンドライバーにカードをセットすると銃口を天に向けた。

 

 

「変身」『ディエンド!』

 

 

プレートが発射されていき、海東の姿がバトルスーツに変わる。

仮面に突き刺さっていくプレート群。発砲音と共に、全身に色彩が駆け巡る。

騎士ディエンドは戸惑うまどかに向けて、容赦なく弾丸を発射する。

 

 

「え? あっ、あの! えッ!?」

 

 

痛み。まどかは反射的に変身し、何とか防御を行うが、そこから先が問題である。

どうやらディエンドは敵意を持っているようだ。周囲を確認するが、ほむらたちの姿はない。まどかの表情はより曇っていく。

 

 

「やめてください! わたしに戦う意思はありません!」

 

「それは都合がいいね。話が早く済む」

 

 

鹿目まどかも話の分からぬ女ではない。というよりももはや予想通りであるという。

騎士とは戦うものだ。悲しいがもうその印象はできあがっている。

まどかにとって騎士は攻撃対象ではないとはいえ、目をそらすわけにもいくまい。

まどかはシールドを展開して銃弾をシャットアウト。さらにニターヤーボックスでディエンドを封じ込める。

 

 

「ごめんなさい。でも、大人しくしててもらいます」

 

 

ディエンドは壁を蹴ったり撃ったりしてみるがビクともしない。

そこでカードを二枚抜くと、それをディエンドライバーに装填していく。

 

 

「悪しき魔女を殺すのは彼らにお任せしよう」『カメンライド』『イクサ!』『ブレイブ!』

 

 

ディエンドが引き金をひくとホログラムデータが射出され、箱の外で具現化する。

西洋の騎士といった風貌のブレイブと十字架のような面を持ったイクサ。さらにイクサの面が割れると、衝撃波が発生してまどかを吹き飛ばす。

ディエンドが呼び出した騎士二人はすぐに剣を構えて走り出す。一方でまどかも倒れながらに弓を構えて迫るターゲットを睨んだ。

 

弦を引いて一発目。それはイクサに命中すると、大きくひるませる。

しかし次いで撃った二発目はブレイブが剣で切り裂き、三発目は腕にある盾でガードされた。

まどかは尚も矢を発射するが、ブレイブは剣を使って防御。確実に距離を詰めてくる。

 

ほら、もう眼前だ。

振り下ろされた剣をまどかは地面を転がることで回避し、その勢いで立ち上がる。

すぐそこにもう燃え滾る刃が迫っていた。まどかは跳躍でそれを回避すると、ブレイブの背後に着地する。

攻撃を仕掛けようとまどかは弓をステッキモードに変えた。

 

しかしその時、背中に焼けるような痛みが走る。

衝撃を感じて背後を確認すると、体を起こしたイクサの武器から煙が上がっている。

なるほど。剣が銃にも変わるタイプだ。まどかはすぐに背中に結界の翼を生み出して銃弾を防御した。

それだけではなく天使を召喚。銃弾を反射して再びイクサをひるませる。

 

まどかは加速し、そして足裏が地面から離れた。

翼を広げたままで高速回転。独楽のように回転しながらブレイブへ向かっていく。

向こうもすぐに剣を翼に合わせた。しかしまどかの回転力は速い。次々と迫る翼がついにブレイブの剣を弾いた。

そこでまどかは宙に舞い上がる。風圧も加わり、ブレイブに隙が生まれた。

まどかが大きく息を吸い込むと、服がボンと風船のように膨れあがる。

 

 

「パニエロケット!」

 

 

服がしぼみ、同時に猛スピードで斜め下のブレイブに向けて突っ込む。

頭にはシールドを纏わせており、そのまま強化された頭突きがブレイブの胸に直撃してブッ飛ばしていく。

しかしまだ安心はできない。まどかが振り返ると、イクサが走ってくるのが見えた。

 

まどかが片手を前に出すと、バリアが発生。

突如現れた壁に激突し、イクサは動きを止める。まどかはそのままバリアを前に押し出した。

イクサも壁に押されてまどかから離れていくので、その隙に詠唱を開始。早口で言葉を紡ぎ、まどかは矢を発射する。

 

スターライトアロー・キャンサー。

ステッキモードに変えた武器の周りに光が纏い、文字通り『カニの爪』に変わる。

ズワイガニが最も近いだろうか。長い脚の先にプックリとした楕円、そしてハサミがついている。

まるで槍だ。事実、まどかは武器を突き出してイクサの腰をガッチリとハサミで掴むと、そのまま武器を大きく振るった。

そしてハサミが開く。イクサは手足をバタつかせながら吹き飛び、地面に墜落した。

 

 

「えッ!」

 

 

だがそこで背中に感触が。確認すると、銃が押し付けられていた。

 

 

「う゛あ゛っっ!」

 

 

ゼロ距離射撃。よろけたまどかの前に、ディエンドが回り込んでくる。

そのスピードはまさに一瞬。今度はまどかの腹に銃口が突き付けられる。しかも高速移動で回り込む際にカードを装填していたらしい。

ディエンドライバーが電子音を告げる。アタックライド、ブラスト。

 

 

「きゃぁア!」

 

 

シアンの弾丸の群れに押し出され、まどかは地面に倒れる。

どうして? ディエンドはしっかりと封じていたはずなのに。

そこで思い出されるのはディケイドのオーロラだ。

なるほどそうか、アレをディエンドも使えるのだろう。まどかはすぐに立ち上がるが――

 

 

『クロスアタック!!』

 

 

太陽が見えた。その前に並び立つブレイブ、ディエンド、イクサ。

まずはイクサが剣をふるった。炎の斬撃がまどかに向かって飛んでくる。

明らかな大技、まどかも焦るというものだ。すぐに大盾(アイギスアカヤー)を生み出して前方に設置する。

斬撃はすぐに盾に直撃。かき消されるが、ディエンドは仮面の裏でニヤリと笑う。

 

隣にいたブレイブが剣を地面に突き立てた。

するとどうだ、まどかが立っていたところから火柱が上がり、彼女は悲鳴と共に空に打ち上げられる。

あとはディエンドがまどかをスナイプするだけでよかった。

銃口からは太陽の炎を付与された炎弾が発射されて、まどかに当たると爆発を巻き起こす。

 

 

「うっ! あぁ!」

 

 

まどかは地面を転がり、やがては止まるが、すぐには立てない。

その間にディエンドはまどかに照準を合わせると、再び炎弾を発射する。

あぶない。おしまいだ。まどかの表情が歪む。

 

 

「ハァアアア!」

 

 

だがその時、雄たけびと共に誰かが走ってくる。

これは――龍騎だ! 龍騎がドラグシールドを構えてまどかの前に立った。

 

 

「こんのっっ!」

 

 

ドラグシールドが炎弾を受け止め、かき消す。

龍騎はすぐに盾を投げ捨てると、ストライクベントを発動。ドラグクローを構えた。

ドラゴンの頭部が口を開くとディエンドの背後にあった太陽が小さくなっていく。龍が炎を吸い込んでいるのだ。

吸い込めば吐き出せる。龍騎が腕を突き出すとドラグクローから火炎放射が。

 

ディエンドは鼻を鳴らして後ろへステップ。

一方でブレイブとイクサは彼の盾になるべく前に出た。

悲鳴が聞こえる。イクサとブレイブが爆散し、データの塵となる。

だがおかげで火炎放射をガードできた。ディエンドと龍騎は睨み合う。

 

 

「なんなんだお前は! その子に手を出すな!」

 

「……ふむ。やれやれ」

 

 

ディエンドはカードを抜くと、それをディエンドライバーへセットする。

 

 

『アタックライド・インビジブル』

 

 

ディエンドが文字通り『消えた』。

影も形もない。気配もない。どうやら完全に撤退したようだ。

龍騎は振り返ると、へたり込んでいるまどかへ手を差し伸べた。

 

 

「大丈夫だった!?」

 

「ありがとう真司さん――っ」

 

「や、いいんだよまどかちゃん。魔法少女を守るのが騎士の役目なんだから」

 

 

まどかはもう一度お礼を言おうと口を――

 

 

「だから、キミは弱くていいんだ」

 

「え?」

 

 

顔を上げる。

 

 

「魔法少女は弱くていい。弱いのが当然なんだ。騎士が強ければいいんだ」

 

 

やや違和感。もちろん真司のことだ。悪意がないのはわかるが……、少し複雑だった。

とはいえ、まどかは何も言わない。なんだか急に眠くなってきた。

 

 

「俺たちが強くなるから、まどかちゃんは心配しないで」

 

 

お礼を言う気力もない。

体がダルい。まどかは思わずうつ伏せで倒れる。

意識がボヤける。景色も、世界も濁っていく。しかしそれでもまどかが光を感じたのは神々しく輝く『円』が近くにあったからに違いない。

 

 

龍騎はいない。けれども騎士はいた。

 

 

黄金の前で、彼は何かを呟く。

まどかはそれを聞かなかった。聞きたくなかったのかもしれないが、よくわからない。

しかし騎士の姿だけは見つめていた。

全てがおぼろげだったが、それでも心に残る程度には特徴がある。

赤い文字が面に刻まれている。禍々しくも神々しい騎士は何も言わず、ジッとまどかを見ていた。

 

 

「ら…ぃ」

 

 

まどかは面に刻まれた文字を呟こうとして、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

まどかは目を覚ます。

草の匂いがしたのは、芝生の上で眠っていたからだ。

はて? 先ほどのは? 夢を見ていたのだろうか? そしてさらに違和感が襲い掛かる。

というのも体を起こして周囲を確認した時だ。公園にいる。それはわかったが先ほどまでいた見滝原の公園じゃない。

芝生やベンチはなんだか強い色を放っているようにも見える。

見上げた空も、青がはっきりしているような錯覚を覚えた。

花が咲いているが、なんの花かよくわからない。とても綺麗な赤い花だが――

 

 

「ほむらちゃん!」

 

 

まどかは少し離れたところに、ほむらが倒れているのを見つけた。

彼女も気を失っているようだ。まどかはすぐに駆け寄り、無事を確かめる。

 

 

「だいじょうぶ? 起きてほむらちゃん!」

 

「う……!」

 

 

ほむらは目を覚ますと、すぐに立ち上がり、まどかを守るような仕草を取る。

しかし周囲に敵がいないのを察すると、訝しげに首をかしげる。

 

 

「ここは?」

 

「わたしにもわからないんだ……。確かわたしたち――」

 

 

公園の空に魔法陣が浮かび上がったのは覚えている。

頷くほむら、なんとなく理解してきた。というよりつい最近似たようなことがあったから察することができたともいえようか。

 

 

「転移魔法の類かもしれないわ。虚心星原のように見滝原とは違う場所に来たのかもしれない」

 

 

そこでほむらはまどかがキョロキョロと周囲を確認しているのに気付いた。ほむらもすぐに心臓を掴まれた感覚に陥る。

 

 

「と、巴さん!」

 

「う、うんっ、マミさんはどこ?」

 

 

少なくとも周りにはいない。

 

 

「……ッ?」

 

 

テレパシーが使えない。

まさかと思いキュゥべえたちを呼んでみたが反応はない。

 

 

「心配だけど、巴マミはベテラン魔法少女よ。アライブも手に入れているのだから、ちょっとやそっとじゃ死なないわ」

 

「う、うん。そうだね。でもなるべく早く見つけよう!」

 

 

頷くほむら。さて、いないのは龍騎たちもだ。

おそらく同じ場所に送られているとみて間違いないだろう。

そもそも龍騎があれだけいたのも今回の件が絡んでいる可能性は高い。

あまり思い出したくはないが、過去の記憶を探ってみても龍騎が複数いたゲームは存在していなかったはず。

リュウガはまだしも、龍騎が一人だけじゃなくて何人もいたなんてことを忘れるわけがない。

 

 

「それに、あの種類の違うカードを使っていた騎士……」

 

 

ディケイドの異質さはやはり引っかかる。

虚心星原とはまた少し違うベクトルで異質な事態が起こっているのは間違いないだろう。なんだか休まる時間もないものだ。

まどかとほむらは、さっそく公園を出てマミを探しに向かう。

 

レンガでできた道を少し歩くと町や人が見えてきた。

見滝原にも近い町並みはあるが、どこか西洋を思わせる造りだ。

ほむらはマズイと目を細めた。勉強ができるていでやってきたが、それはループの中で授業範囲を暗記していたからこその面がある。

この街並みを見るに日本語が通じない可能性がある。

 

 

「……?」

 

 

話し合う女性二人とすれ違ったとき、ほむらは首を傾げた。

女性は何か肩当――防具のようなものを身に着けていた。それだけではなく何か違和感を感じる。はて、気のせいでなければ耳が――

 

 

「あ!」

 

 

曲がり角に差し掛かった時、まどかが誰かとぶつかってしまう。

 

 

「おっとごめんよお嬢ちゃん」

 

「いえ! こちらこそすいません。人を捜し……」

 

 

熊が立っていた。熊だ。クマ。動物のアレ。毛むくじゃらのアレが二本足で服を着て立っていた。

 

 

「ドュッッ!」

 

 

まどかから今まで聞いたことのない声がして、ほむらも熊男に気づいた。

目を見開き、停止する。なんだ? 着ぐるみか? いやそれにしては随分とリアルというか、瞬きもしているし。

 

 

「とにかく怪我がなくてよかったよ。それじゃあ」

 

 

そういって熊は歩き去る。まどかとほむらは黙って彼の背中を見送った。

 

 

「ほむらちゃん……!」

 

「ええ、見たわ――ッ!」

 

 

見た。見た、けど。見たけれども。

突っ立っていると、他の人々も通り過ぎていく。そこでほむらは見た。

耳の長い人、顔が鳥の人、中にはほむらの腰くらいの大きさしかないおじさんがボテボテと歩いていく。

 

 

「?????!!??!?」

 

 

いかん。まどかが気絶しそうだ。ほむらは彼女の手を取ると、前に進み始める。

 

 

「落ち着いてまどか! あれはきっとエルフに獣人! ただのドワーフよ!」

 

「そ、それがおかしいんだよぉ、ほむらちゃぁん……!」

 

「何を言ってるの! なにもおかしくはないわ! だって――」

 

 

私たちだって魔女なんだから。ほむらはその言葉が適切かどうかわからずに口を閉じる。

かわりに入院生活中に見た映画を羅列していった。

ファンタジーな生き物はエンタメ映画には欠かせない。指輪をめぐる戦いを描いたものや、魔法学校で学びあい成長していく娯楽映画は興行収入がとんでもないことになっていたっけ。まあとにかくそれだけたくさんの人が見ているということだ。今だって金曜だか土曜の夜に地上波で映画がやっているが、実写やアニメ問わずそうした生き物はたまに見かける。

 

 

「で、でもまさか本当にいるなんて……!」

 

「そ、それはそうね。でも私たちも魔法が使えるのだから――」

 

 

橋にやってきた。

橋の端。ダジャレではない。橋の隅っこに誰かがうずくまっている。体育座りで膝の間に顔をうずめて震えている。

はじめは物乞いというか、お恵みを欲する人かと思ったが、どうにも気になる。

 

特徴的なドリルヘア。

ましてや服に見覚えが。ほむらは人差し指を唇の前にもっていき、まどかに『黙って』とジェスチャーを送る。

まどかも戸惑いがちに頷いた。

二人はジリジリとその人に近づき、なにやらブツブツ言っている声を拾ってみる。

 

 

「うぅ、ぐっす、ひっく! がなめざぁん。あげみざぁん。どこいっちゃったの゛ぉ?」

 

 

ほむらはその人の肩をポンポンと叩いてみる。

反射的にその人は顔を上げた。真っ赤になった顔。うるんだ瞳と目が合う。

 

 

「………」

 

 

その人はゆっくりと顔を下げて、また小さく丸まる。

わずかな沈黙。そしてバッと立ち上がると、すっきりとした顔で笑顔を浮かべていた。

 

 

「もう心配したのよ二人とも! 私は平気だったけど大丈夫?」

 

「もう遅いわ」

 

 

赤くなる巴マミと共に三人は町の散策を再開した。

 

 

「そ、それにしても」

 

 

マミは通り過ぎる毛むくじゃらの住民を目を丸くして見ていた。

 

 

「夢じゃないわよね?」

 

「ええ。私たちも驚いたけど、現実よ」

 

「よかった。寂しすぎて変なものが見えてるかと思ったわ……」

 

 

まどかとマミは強張ったようにして、ほむらに引っ付いて歩いていく。

 

 

「二人とも胸を張って。挙動不審は怪しく見えるわ」

 

「そっか。ごめんねほむらちゃん。えっへん」

 

 

胸を張るまどか。ほむらは唇を吊り上げ、そのままマミを睨む。

マミもハッとしたのか、まどかの真似をして胸を張った。

だがそこで今度はほむらがハッとしたように表情を変える。

胸を張ったまどかとマミ。ほむらはまどかを見る。次にマミを見る。もう一度まどかを見る。

二人は胸を張っている。胸を、胸を……、胸――。

最後に自分を見る。

 

 

「チッッ!」

 

「ど、どうしたの暁美さん」

 

「べつに。巨大であればいいってわけでもないの!」

 

「???」

 

「とにかくッ、今は城戸真司と合流しましょう! キュゥべえとも連絡が取れないし、嫌な予感がするわ」

 

「そうね。とりあえず街を見下ろせる場所にいかない? いくつか気になるところもあるし」

 

 

ほむらとまどかは頷いた。というのもこの街、中央部分に大きな城が見える。

さらに街を囲むように壁があるため、街の外の様子はわからない。

が、しかし唯一その壁を越えて見えるものがある。どうやらそれは木のようだ。

 

しかしただの木ではない。

壁を超えるほどの大きさ。樹齢を考えれば気が遠くなりそうなほど。

というよりも地球ではとうてい考えられないほどの大きさである。

虚心星原しかり、ただこの世界に転送されたわけではあるまい。

そのヒントになりそうなものがあの大樹にはあるような気がしていた。

 

 

「きゃッ!」

 

 

その時だった。まどかの肩に大きな衝撃が走る。

後ろから走ってきた誰かがぶつかったのだ。その人はローブを羽織って、フードも深く被っているため、人相が判別できない。

とはいえぶつかってきておいて謝罪もなく走り去るのはいかがなものか。まどかは気にしていないようだが、ほむらはムッとしながらその人の背中を睨んだ。

 

 

「!」「!?」「え!?」

 

 

ふと、三人の表情が変わる。

風を感じたのだ。真上、空か。しかし何もない。何も見えない。

だが確かに『気配』を感じた。それも重々しい雰囲気を纏ってだ。

これは――なんだ? 似ているものを知っている。

魔獣たちが放つ、重々しい悪意と殺意。

 

 

「来て! アンドロマリウス!」

 

 

体に蛇が巻き付いた女性がほむらの背後に出現する。

彼女が消えると同時に、ほむらも瞳に変化がおきた。それはまるで蛇のような鋭い眼光だ。

その目は、全てを視ることができる。だからたとえ『それ』が透明になっていても確認することができたのだ。

 

 

「追われているようね」

 

 

三人はすぐに地面を蹴ってローブの人を追いかける。

変身しているところを誰かに見られては困る。まずは魔法で脚力だけを強化して走った。

とはいえその最中に気づくが、ローブの人の足が速い。魔法で強化している三人の身体能力と同等と思われる。

 

そうしているとローブの人は河原になってくると、橋の下にやってきた。

周囲に人気はない。そうしていると透明になっていた追跡者が具現する。

先ほどは獣人やエルフなど、ファンタジーを強調していたが、次は逆だ。

重く冷たい機械がそこにあった。それは巨大な龍の頭部だ。どこかドラグレッダーに似ているのは気のせいだろうか。

いずれにせよこれが兵器の類であるというのは想像に難しくない。事情はわからないが助けなければ。

まどかたちは変身しようと前に出るが――

 

 

「!」

 

 

ローブを着ていたのは少女だった。

フードを下した彼女の瞳は緋色に輝き、その朱色の髪が炎のように揺らめいている。

なによりも彼女には角があった。そこに宿るのは大きな魔力だ。

少女は腕を前に出した。掌、そこに炎が集う。

 

 

「昇竜突破!」

 

 

少女が叫ぶと掌から紅蓮の塊が発射され、龍の頭部に直撃する。

爆発が起きて機械はバラバラに砕け散る。

爆炎の中からなにやら黒いタイツのようなものを着た男が転がってきた。

 

 

「イーッ!」

 

 

それは泡となって消え去る。

まどかたちは唖然とした様子で、炎の向こうにいる少女を見つめていた。

その目はより美しく、燃え盛るように光り輝き。朱色の髪もまた激しく燃え滾るように揺らめいている。

ほむらなどその美しさに目を奪われてしまい、しばらくは何も言わずただ突っ立っていることしかできない。

だから彼女と目が合っていることにも気づくのが遅れた。

 

 

「あ……」

 

 

角を持った少女は再びフードを被り、まどかたちの間を通り過ぎていく。

 

 

「今見たことは全て忘れなさい。命令よ」

 

 

ほむらは何と言っていいかわからず沈黙する。他の二人も同じようだった。

 

 

「あのっ、待ってください!」

 

 

しかしふと、まどかが叫ぶ。だから少女も立ち止まった。

 

 

「あの、えっと! わたしたち行くところがなくて!」

 

「……ッ?」

 

「迷惑じゃなければ……、ついて行ってもいいですか?」

 

 

少女は振り返り、ポカンとした様子でまどかを見ていた。

 

 

「……あなたたち、どこから?」

 

「えっと」

 

 

そこでマミがアシストに入る。

 

 

「す、すごく遠いところから来たんです。だからこの辺りに疎くて」

 

「……宿を紹介するわ」

 

 

するとまどかは大きく首を振った。

 

 

「お金ッ、持ってないんです」

 

「私が話をつける。タダで泊まれるわ」

 

 

なんだか凄いことを言う娘である。とはいえまどかは首を振る。

 

 

「泊っても、そこからどうすればいいか!」

 

「え?」

 

「わたしたち、お家もないですし、頼れる人もいなくて……、この知らない場所でこれからどうしたらいいか――ッ」

 

 

竜人の少女は顎を触りながらまどかたちを睨んだ。

なんだか怪しい。放浪の身であるというのに服は髪は綺麗だ。

まあとはいえ、少女はまどかの隣にいるほむらを見つめた。随分と目つきが悪い娘だこと。

なるほど、あの捻くれた瞳からは悲しみや苦労が透けて見える。

なにやら複雑な事情があることは確かのようだ。

 

 

「……ついてきなさい」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

三人はさっそく竜人の少女の後を歩いていく。途中でマミがヒソヒソと話しかけてきた。

 

 

「やるわね鹿目さん。何とか誤魔化せたわ。上手くいけば拠点が作れるかもしれない」

 

「わたしは別にそういうつもりじゃないんです。ただ……、なんていうかあの人狙われてたじゃないですか。助けてあげたいなって」

 

「そう、そうね。そのとおりよ鹿目さん。やだ私ったら恥ずかしい……!」

 

 

マミはしょぼんと項垂れる。それを見てほむらも腕を組んだ。

 

 

「でも、どうして彼女、狙われていたのかしらね」

 

「んー、たぶん教えてくれないと思うなぁ。あの感じだと」

 

「?」

 

「昔のほむらちゃんそっくり」

 

「え゛……」

 

 

ほむらはマミを見る。マミは高速で頭を上下に振っていた。

 

 

「あの目つきとか、瓜二つよ」

 

「冗談言わないで。あんなに冷たくないわ」

 

「冷たかったわよ。私なんて何度殺されそうになったか」

 

「あ、そういうことを言うのね巴マミ。だったらコッチも言わせてもらうけれど」

 

「もうふたりともっ、喧嘩はダメだよ!」

 

 

まどかは右手でマミの手を、左手でほむらの手を握る。

 

 

「ほむらちゃんに似てるから、余計に助けてあげたいんだよ……」

 

 

前を行く少女は決して振り返らないから。

そうしてしばらく歩いていると、あることに気づいた。

どんどんどんどん、大きなお城が近づいてくる。

 

 

「ここがアタシの城よ」

 

「へぇ、そうなんで……」

 

 

え? 三人の声が重なった。

一方で竜人の少女は改めてフードを脱いで自らの顔を晒す。

とても美しい少女だった。緋色の瞳がまどかを捉える。

 

 

「私はドラーグ=R=カレン。この国の王、ロムルスの一人娘です」

 

 

 

 

 

 

 

城戸真司は荒野で目覚めた。

そこはただひたすらに荒れ地が広がっていて他には何もない。

しかし真司はすぐに気づいた。背後にあるのだ。巨大な石像が19体。

いや、18体だ。真司には一つの石像の正体がわからない。

 

 

「クウガ――」

 

 

石の名前を教えてもらった。

中央にいたのは騎士の王だと言う。なるほど確かに煌びやかであり、禍々しくもある装飾の数々はその威厳と迫力を証明するには十分ではあるが……。

真司は少し拍子を抜かれた。仮面のデザインがいくらなんでも奇抜すぎる。

何も文字を刻まなくてもいいじゃないか。なんだか少し間抜けに見える。

 

 

「ビルド」

 

 

やがて騎士たちの名前を聞き終えたとき、真司は頭を押さえた。

どれも聞き覚えはあるが、一番大事な三番目の石像の名前が思い出せなかった。そんな馬鹿な話はあるかと真司とて思う。

だってあれは自分が変身してい――

 

 

「あれ?」

 

 

いや、違う。何を勘違いしているのだ。あれはシンジのものではないか。

そうか、そうだ。名前が同じだからといって彼のものを自分のものと勘違いするなんて一体どうしてしまったのか。

真司は少し不安になってしまった。疲れているのだろうか? それとも脳がおかしくなっているとか。

少し前のテレビで記憶障害だのと、脳の特集が組まれていたがもしかしたら自分の身にも何か起こった、とか?

 

 

「違う」

 

 

王が語る。

 

 

「アナザーライダーがお前の存在を幻にしようとしているのだ。其方は城戸真司でありながらも龍騎として生きてきた。逆を言えば龍騎ではない其方は、其方ではないとも言える」

 

 

ましてや、まどかたちの世界に身を置くならばなおさらだ。

真司が龍騎だったからまどかたちとの交流が生まれ、世界が交差したのではないか。

もしも真司がただの人間だったならば、もしも真司が龍騎にならなかったなら――

 

 

「価値は、あったと、思うか?」

 

 

区切る。淡々と、されども強調して。

そこで真司は目が覚めた。

 

 

「ッ?」

 

 

真司は体を起こす。何があったんだっけ? 何がどうなったんだっけ?

そうか。そうだ。龍騎だ。みんなで戦って、それから……。

そう、確か魔法陣が見えて、そこで気を失ったんだ。

 

 

「ここ、どこ?」

 

 

周囲を確認する。

平地が広がって、なんだか遠くに巨大な木が見える。すごい。あんなのは見たことがない。

樹齢はどれだけだろう? 八億とかあるんじゃないだろうか。いや、ほんとうに。

 

しばらく口を開けて呆けていると、はたと後ろを見る。

そこには巨大な壁があった。一瞬判断に迷ったが、門が見えた。

真司はバカといわれることが多いが(本人は納得していないが)、取材で得た知識はある。

門とくれば壁の向こうが街だろうと想像するのは簡単だ。

問題は何やらその門で、よろしくないことが起こっているということだ。

ちょうど悲鳴が聞こえたのは時を同じくしてだった。

 

 

「うわぁあああ!」

 

 

門番の一人が壁に叩きつけられる。

真司は異常事態を察知したすぐに走り出す。

そして見た。鬼だ。鬼が門の前にいる。それもただの鬼ではない。

見た目は赤いドラゴンだが、長い角が二本頭部にある。そして鎧に覆われた太い腕には、鬼の金棒が握られていた。

まさにそれは、龍鬼(りゅうき)

 

 

「オラァア!」

 

「グォォオオオ!」

 

 

龍鬼は片手でもう一人の門番を掴むと、軽々と持ち上げて投げ飛ばす。

 

 

「グガガガガガ! 弱い。弱すぎるぜ! ドラグニアを守る番人がこの程度か?」

 

 

龍鬼は呆れたように金棒を肩に乗せ、高い壁を睨んだ。

 

 

「オレが眠って危機感が下がったか? 呆れたもんだが、ちょうどいい。今度こそすべてを破壊しつくしてやる!!」

 

 

まずは門番だ。龍鬼は金棒を振り上げ、倒れている門番を叩き潰そうと力を込めた。

 

 

「変身!」

 

「んー?」

 

「やめろ! お前ッ、なにやってんだ!」

 

 

龍鬼が振り返ると、龍騎が腰に掴みかかってきた。

だがこれがビクともしない。どっしりと構えた龍鬼は尻尾を振って龍騎を吹き飛ばしてみせる。

 

 

「誰だテメェは」

 

「なんだっていいだろ! お前こそどういうつもりだよ」

 

「どういうってお前……、決まってるだろ。殺そうとしてたんだよ。それともまさかお前、オレのこと知らねぇのか?」

 

 

そうだ。そうに違いない。龍鬼はゲラゲラと笑い始めた。

 

 

「ここまで落ちたか。この龍鬼も。これも全てはロムルスの野郎のせいだ」

 

 

龍鬼は壁の向こうにある城を睨んだ。

 

 

「だがそれももう終わる。オレが龍王の力を手に入れれば、全てが変わる」

 

 

龍鬼が歩きだした時、激しい熱を感じた。

振り返ると、龍騎が腰を落として構えていた。

その周囲にはドラグレッダーが構えており、口からは炎が溢れていた。

 

 

「俺を無視すんなッッ!!」

 

 

腕を突き出すと同時に放たれる炎。

昇竜突破。龍鬼は気だるそうにしながらも金棒を振るった。

 

 

「!?」

 

 

随分と簡単な話だった。金棒が炎を打ち返す。

反射された炎弾はスピードを増し、一瞬で龍騎に返ってくると直撃して爆発を起こす。

 

 

「うぁああぁあ゛ッッ!」

 

 

地面を転がる龍騎。

さらに龍鬼は金棒を地面に叩きつけた。

すると龍騎が倒れていた地面が爆発を起こし、龍騎は衝撃で空に舞い上がると、そのまま墜落する。

 

 

「ゴミが」

 

 

龍鬼は鼻を鳴らして踵を返した。

だが龍騎はすぐに力を込めて立ち上がる。あんな危険なヤツを街に行かせるわけにはいかない。

雄たけびを上げるとカードを発動。ドラグセイバーを片手に走り出した。

 

 

「!?」

 

 

だがそれは一瞬だった。

龍騎が龍鬼の背中を切りつけようとしたとき、ドラグセイバーの刃が粉々に砕け散った。龍鬼が振り返りながら金棒を振るったのだ。

その剛腕で生み出されたスピード。まさに一瞬で、龍騎は何が起こったのか理解するのにしばしの時間を要した。

だからこそ隙が生まれてしまう。

そもそも衝撃で腕の感覚も鈍い。何もかもがマヒした時間の中で、龍鬼だけが鮮明だった。

 

 

「が――ハッッ!」

 

 

龍鬼の足裏が龍騎の胸に押し当てられた。

瞬間、龍騎は後方へ吹っ飛んでいく。

それだけではない。龍騎が背中で地面を擦る中、胸の装甲を中心にして炎が駆け巡る。こうしてあっという間に龍騎は炎の塊だ。

龍鬼はニヤリと笑う。普段ならば時間を無駄にしたと苛立つところではあるが、なにせ『目覚めて』間もない。ウォーミングアップとしては悪くない。

 

 

「……いや」

 

 

訂正。龍鬼はますます笑みを濃くする。

なにせ龍騎を包んでいた炎が割れて弾け飛んだ。

砕けた鏡のように。

 

 

【サバイブ】

 

 

龍騎は強化形態に変わると銃を連射しながら龍鬼へ近づいていく。

青い光線は命中のたびに確実に龍鬼をのけぞらせていた。

そうしていると既に龍騎と龍鬼の距離はすぐそこまで来ていた。

龍騎が拳を握りしめると炎が宿り、そのまま燃え滾るパンチを打ち込んでみせる。

 

 

「なにッ!」

 

 

ヒットしたが――どうしたことだ。龍鬼は不動である。

 

 

「クッッ!」

 

 

ソードベントはカードを使わずとも発動できる。ドラグバイザーツバイから刃が伸びてドラグブレードを装備する。

龍騎はそのまま剣を振るうが、龍鬼はそこに金棒を合わせた。

武器がぶつかり合うと結果はすぐに訪れる。

なんと龍騎のドラグブレードが砕け散り、破片が地面に落ちたのだ。

 

 

「そ、そんな!」

 

「グガガガガ! 嘘ではない! 現実を見ろ!」

 

 

龍鬼の口から赤黒い炎が発射され、龍騎を包み込む。

激しい熱を感じた。激しすぎる熱だ。防御ができていない。龍騎は苦しそうに呻き、もがき苦しむ。

地面を後退していると炎が晴れた。目の前には龍鬼が立っていた。

まずはボディーブロー。龍騎の肉体に衝撃が走る。

脇腹の装甲が砕けて地面に落ちた。呼吸が止まる。脂汗がにじむ。

 

龍騎は必死に拳や蹴りを繰り出すが、それら全ては龍鬼に見切られ、命中してもかけらもダメージを与えられない。

そうしていると金棒が振り下ろされた。龍騎はドラグバイザーを盾にしたが攻撃を押さえられない。

あっけなく地面に叩きつけられ、そのまま思い切り蹴り飛ばされた。

龍騎はまるでサッカーボールのように吹っ飛んでいく。龍鬼はそれを見て笑い、持っていた金棒を地面に落とす。

 

 

「お前、よっわいなー。雑魚ってのは見てるだけで悲しくなってくるぜ」

 

 

龍鬼は両腕を前に突き出した。

そして大きく旋回させると、腰を落として狙いを定める。

この構えは間違いない。龍騎もよく必殺技キックの前に取る構えの型だ。

だからこそ龍鬼も同じように地面を蹴って空に舞い上がる。

だが地面に激突した龍騎も呻きながらなんとか立ち上がり、カードを構える。

 

 

【ガードベント】

 

 

ドラグランザーが龍騎の前で激しく回転し、渦のバリアを作り出す。

ファイヤーウォール。そこで龍鬼も右足を突き出した。

 

 

「ダアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

ドラゴンオーガキック。燃え滾る右足が炎を貫き、その向こうにいた龍騎に直撃した。

足裏が龍騎の胴体に突き刺さり、龍騎の体は吹き飛びながら爆発を起こした。

悲鳴が聞こえる。地面に叩きつけられたと同時に変身が解除され、真司は苦しげに呻くだけしかできない。

 

 

「そんな――ッ! サバイブが! こんな簡単にッッ! がはっ!」

 

 

一方で龍鬼はゲラゲラと笑っていた。

 

 

「いや違うな。弱いんじゃない、弱すぎる! あまりにも無力だ!」

 

 

龍鬼は落とした金棒を拾いに行こうと歩き出した。

しかしそこで龍鬼は目を細めた。何かが走ってくる。

それはこの世界にはない乗り物、バイクだ。

 

 

「ハァアア!」

 

 

乗っていたのは二人の龍騎。

変身済みのキットと竜生である。キットの後ろに乗っていた竜生はシートを蹴るとドラグレッダーの頭部を思い切り突き出した。

 

 

「消し飛べ! ドラグーンインパクトッッ!!」

 

 

巨大な火竜の頭部が発射され、龍鬼にかぶりついた。

飲み込まれる龍鬼。だがしかし、すぐに炎が消し飛んだ。

火の粉の向こうには腕を真横に伸ばした龍鬼が立っている。たったこれだけの動作で竜生の最大攻撃を打ち破ったのである。

当然ダメージを負っている様子はない。ほんの少しだけ押し出しただけだ。

 

 

「………」

 

「ビビッて声も出ねぇか。いいぜ、すぐに殺してや――」

 

 

龍鬼が一歩、二歩と足を前に出した時、ズボッと音がして龍鬼が地面に沈む。

 

 

「わははははーッ! クソバカがーッ! ざまあみやがれってんだ!!」

 

「あぁ゛!? なんだコレは!」

 

「落とし穴に決まってんだろ。テメェがおれのドラグーンインパクトを食らってる間にドラグレッダーと二人で掘ったんだよ!」

 

 

それは圧倒的な早業である。

火竜の口内に龍騎が入った瞬間スコップ片手にカサカサと猛スピードで走り、分離したドラグレッダーと共に穴掘りである。

ライダーの力が人間離れの動きを可能にしたのだろう。

その隙にキットは倒れている真司へ駆け寄り、無事を確かめる。

 

 

「ねえ、大丈夫! 怪我は!?」

 

「あ、ああ……! なんとかッ!」

 

 

脇腹に酷い青痣がある。もしかしたら折れているのかもしれない。

真司はキットに肩を貸してもらい、後ろに下がっていった。

反対に竜生はゲラゲラと笑いながら前に出ていく。

 

 

「さぁーて、テメェはもう動けねぇ! どうやってなぶり殺してやろうかねぇ。へっへっへ! なあドラグレッダー?」

 

「……いや、まあ、あんま龍騎の姿でそういうこと言うなよ」

 

 

呆れ顔のドラグレッダーではあるが、すぐにその表情が変わる。

爆発が起こったのだ。土片や砂が飛ぶ。目を丸くする龍騎と、焦りの表情を浮かべるドラグレッダー。

 

 

「マズイな……。ワシも久しく忘れておわったわ」

 

「あ? 何がだよ」

 

「そりゃお前、見ればわかるだろ。死を前にした緊張感よ」

 

 

周囲が消し飛んだおかげで穴が広がった。龍鬼は跳躍で地面に降り立つと掌を広げた。

すると地面に落ちていた金棒がひとりでに浮遊し、あっという間に龍鬼の手に収まる。

 

 

「まずいぞ竜生ッ、今のお前ではヤツに勝てるかどうか……!」

 

「なんだと……ッ! じゃあ逃げるか? あそこにいる龍騎を囮にすれば時間稼ぎくらいにはなるだろ!」

 

「……いやわかってたけどお前最低だな」

 

 

ふと、一同の視線が上に向けられる。気配を感じたからだ。

そして一同はすぐに目を見開いた。随分と異様な光景が広がっていたのである。

ドラグレッダーだ。龍騎の契約モンスター、それが空に浮いている。一体、二体、三体、四体……。

 

ざっと百体くらいはいるだろうか?

赤い龍の群れ、その背にはシートが備え付けられており、そこには無数の兵隊が乗っている。

兵隊は人に見えるが何かおかしい。皆、角が生えている。

そして中にはドラゴンのような顔をしたものもいた。

彼らは竜人と呼ばれる種族のようだ。

 

そしてその中心にいるのは隊長だ。

ドラグレッダーも他のそれとはデザインが大きく違っている。

まるでそれはカメだ。ワニガメのような翼竜は背中だけではなく、腹にも大きな鎧が装着されている。

ドラグシールダー。その甲羅に乗っているのは恰幅のいい男だった。彼もシルエットは人間ではあるが、顔はドラゴンのそれである。

重厚な鎧に身を包んだ大男は鼻を鳴らして飛び降りた。

 

 

「龍鬼"ドラギュノス"。噂には聞いていたが、まさか本当に蘇ったとはな」

 

 

隊長が地面に着地すると、周囲に亀裂が走る。

 

 

「テメェはなんだ? オレの記憶にはない」

 

 

龍鬼の言葉に、隊長の表情が歪んだ。

その手には巨大な盾があるが、彼はそれをすぐに投げ捨てる。

 

 

「我の名は"イェーガー"。前回の戦いでは隊の中にいた」

 

「ああ、そうかい。だったら覚えてねぇのは無理もない。あんな雑魚集団、いてもいなくても一緒だったからな」

 

「何人も友が死んだ。その名も覚えてないか」

 

「もちろん。それに、これからもっと死ぬ」

 

「いや、それは違う」

 

 

隊長・イェーガーはあるものを取り出した。

デッキだ。カードデッキ。それはイェーガーだけではない。

上空にいる多くの兵士たちも同じようなデッキを取り出して前に突き出した。

次々と装着されていくのはVバックル。

まさかと――、竜生の隣にいたドラグレッダーが唸る。

 

 

「変身!」

 

 

そう、そのまさかだ。

叫んだのはイェーガーだけではない。上にいる兵士たちも皆同じように叫んだ。

そしてデッキをセットする。となると、当然現れるのは龍騎だ。

 

そう、龍騎なのだ。

兵士たちは真司たちと全く同じ龍騎に変身した。

そしてイェーガーは通常の龍騎よりももっと重厚な鎧に身を包んだ――けれどもそれはやはり『龍騎』に変身していた。

真司や兵士たちが変身した龍騎を『通常』とするなら、イェーガー龍騎は非常に恰幅がよく、体格が大きい。

さらに腕には巨大なガントレット。脚部にも通常より装甲が多めに装備されている。

 

 

「龍騎隊! 放てェエエエ!」

 

 

イェーガーの命令により、空中に待機していた龍騎たちが一斉に攻撃を開始する。

次々とドラグレッダーの口から火球が発射されて龍鬼周辺に落ちていく。

イェーガーは降り注ぐ炎の雨の中を歩き出した。

 

動きは鈍いが、やはりその防御力は通常の比ではない。

ガシャガシャと音を立てて、たとえ炎が自分に当たろうとも構わず前に進んでいく。

だがそれは龍鬼も同じだった。炎の中を走り、金棒を構える。

だからこそイェーガーもデッキからカードを抜いた。そしてそれを握りつぶすことで発動していく。どうやら右腕そのものがバイザーになっているらしい。

 

 

『ガードベント』

 

 

ドラグシールダーの甲羅を模した巨大な六角形の盾、ドラグシールドが装備される。

イェーガーはその巨大な盾を左手一つで持ち上げてみせる。

直後、盾にぶつかる金棒。だがこれがやはりというべきか。重厚な盾は重々しい金棒の一撃をしっかりと受け止めて見せる。

 

 

「ハァアアアア!!」

 

 

イェーガーはそのまま前に出ていく。

龍鬼視点、壁が迫ってくる。踏みとどまるが、そのすさまじい勢いは競り合いを許さない。

盾がすぐに直撃し、龍鬼は激しく後退。やがては勢い余って倒れてしまう。

すぐに地面を転がって立ち上がるが、そこで龍鬼は不快感に叫んだ。

不愉快だ。実に。空からは無数の飛び蹴りが迫る。

 

 

「チィイ! 目障りな!」

 

 

ドラゴンライダーキックの群れ。一発目は金棒で弾いたが、二発目は直撃。

後退したところに三発目が直撃。次々に龍騎が迫り、すぐに大爆発が巻き起こる。

 

 

「ムゥウン!」

 

 

力の籠った声。イェーガーは盾を思い切り地面に叩きつけると、何やら力をチャージし始める。

盾の中央にある赤い宝石がジワリジワリと光り輝いていく。

さらにそこで街の外から大勢の人たちが駆け付けた。

エルフ、ドワーフ、パン屋の親父。彼らの手には真司が使っていたのと同じドラグクローが装備されている。

 

 

「イェーガーさん! 手伝うぜ!」

 

「いかん! ヤツは危険だ! 下がっていてくれ!」

 

「何言ってんだ! 龍鬼が来たとありゃだまってられるかってんだ! なあみんな!」

 

 

皆、パン屋の親父の言葉にうなずいた。

ならばとイェーガーも頷く。彼は一同に炎の力を授けてくれるように頼んだ。

皆、それに応える。炎が生まれ、すぐに盾中央の宝石に集中していく。

どうやら住民たちによる協力のおかげでチャージ時間が早まったようだ。イェーガーが叫ぶと、龍騎たちはいっせいに龍鬼から離れていく。

 

 

「塵となれ! 龍鬼ッッ!!」

 

 

トルネードブレイズ。盾の中央から高エネルギーのレーザーが発射された。

螺旋の炎を纏うそれは一瞬で龍鬼へ届き、その肉体へ着弾する。

 

 

「ガァアアアアアアアアアア!」

 

 

はじめて龍鬼から苦痛の声が漏れた。

レーザーに押し出されることを数秒。すさまじい爆発が巻き起こる。

キットは真司を爆風から守るために前に出て、竜生に関しては尻もちをついて叫んでいた。

 

一方の龍鬼は激しく地面を滑り、やがては勢いも失って停止する。

しばし沈黙。だがすぐに地面を殴るのが見えた。どうやらダメージは与えられたが、まだまだ余裕のようだ。

彼は立ち上がると、金棒をイェーガーに向ける。

 

 

「面白ぇ。テメェを殺すのを楽しみにしておくぜ」

 

 

龍鬼の体が消えた。文字通り、消えてなくなったのだ。

イェーガーは驚いたように前に出るが、既に気配はない。

彼は変身を解除するとすぐにキットたちのもとへ駆け寄っていく。

 

 

「キミたちはどこの者だ! 我の隊ではないな? なぜここにいるのか!」

 

「え? あ、いやッ、えーっと」

 

 

キットは困ったようにうろたえるしかできなかった。

なにせ彼も外で目覚めたばかりだ。近くに竜生がいたので、彼と共にバイクで壁をグルリと回っているときに真司を見つけたのだから。

 

 

「そう、そうだ! それより彼を助けてあげてよ。怪我してるんだ!」

 

「ム!」

 

 

イェーガーは真司を見る。

 

 

「そうか。では運ばせよう。一同、城へ戻るぞ!」

 

 

真司は言葉が出なかった。

なにせ自分が変身していた龍騎が空にたくさんいて。その中の一人につかまれ、ドラグレッダーに乗せてもらったのだから。

鏡を見ているような気分だった。しかし自分は彼ではない。ましてや龍騎とも姿は違う。

なんだか少し気持ちが悪かった。

 

 

 

 

メイド。

掃除や料理など、家事を行う女性の使用人を指す単語ではあるが、日本においては少々捉え方が変わってくる。

というのも海外ではただの仕事(ワーク)であることに対して、日本においてはアニメや漫画などサブカルチャーに出てくる架空の幻想的理想存在(フィクション)として捉えているケースが多いのだ。

 

彼らが想像するメイドというのはハウスキーパーとしての役割はもちろん、主人に絶対的忠誠を誓う健気で一途な存在であるとされている。

さらにメイドにはメイド服という専用の衣装があり、この衣服にはオタクという生き物、中でも陰キャ目とよばれる類の種を『殺す』魔力が秘められているという迷信がある。

 

日本という国に住んでいる専門家、穂詩慕志(2014~)によればフィクションにおいてのヒロイン性、この点においてかつては暴力的や反抗的な一面を持つものが主とされてきたが、少し前からは奴隷やメイドといった存在や地位が感情移入視点よりも下の存在に求める声が多くなっているといわれている。

 

これは現代社会において不足しているものが刺激や反骨よりも『癒しや肯定』の面が強くなってきたからではないかとされている。

中でもメイドはその衣装の白と黒のカラーを見たときに無意識に神聖さを強調させて救いや癒しを強く求めるからではないかと推測されている。。

 

所説あるのはもちろんだが、少し遡ってみれば日本のオタク文化の最たるものが『メイド喫茶』と呼ばれていることから、我々がその存在に何を求めているのかを察することは難しくないと思われる。

さらに専門家は我々にメイドと呼ばれる存在には無限の可能性があると言う。

それは言葉を付け足すことでその存在があまりにも大きな刺激を受け、変容していくということにあった。

 

例を挙げてみよう。

先ほどツンデレという言葉を用いた。

これは全盛期よりは数を減らしたものの、いまだ根強い人気を誇るヒロインポイントではあるが――

そこにメイドを付け足し、二つを比較してみよう。

 

A・メイド

B・ツンデレメイド

 

いかがだろうか。メイドなのにツンデレ。これはおかしな話である。

メイドとは仕えるものであるにも関わらず、ツンをしてしまうのだ。デレがあるとはいえツンをするのだ。突くのだ。ちょっとは痛いのだ。

忠誠と痛みは真逆の方向にあるものである。逆らうというツンはまるですべてを貫く矛だ。

一方でメイドとはご主人さんのためにすべてを投げ出し、全てを包み込み、受け止めて見せる――いうなればどんなものでも受け止める盾である。

 

これはおかしな話であると専門家は吠えた。

最強の矛と最強の盾、ぶつかりあえば答えはでるが、それでは話が違ってくる。

 

ではこれは矛盾か? 違うのだ。ツンデレなメイドさんなのだ。

ツンデレだがメイドさんなのだ。いや、あるいはツンデレがメイドになってもいい。

これはこれで新しい銀河が生まれる。

 

普通のツンデレか、ツンデレなメイドさんか。

どちらがいいかは聡明な人間ならば考えるまでもないと専門家は叫んだ。

他にもある。クールという単語をくっつけてみよう。クールなメイドさん。

これもまた新しい銀河が生まれてしまった。元気なメイドさん。おっちょこちょいなメイドさん。かわいいメイドさん。

このように、メイドというのその前につける言葉を輝かせる存在であるとイギリスの大学が研究を発表したとかしていないとか。

 

中でも世界メイド保護機構WMPではこの単語の組み合わせによるメイドの魅力向上システムを、クロスアナライズワンダフルフィーバーとして発表。

専門家集会による研究の結果、最も素晴らしいメイドはエッチなメイ――

 

 

「!?」

 

 

暁美ほむらはゾッとしてブルブルと肩を震わせた。

 

 

「どうしたの暁美さん。風邪?」

 

「い、いえ。ちょっと寒気がしただけよ。もしかしたら頭が悪くなる電波が飛んでいたのかも」

 

「???」

 

 

深層心理の奥にいたガープが笑う。

――いえいえお嬢様。全くその通りで。馬鹿な妄想電波を受信しただけにござます。

が、しかし、その下らなきが人生の栄養になりますゆえどうかご勘弁を!

 

 

「それにしてもとっても可愛いわ二人とも!」

 

「えへへ、そうですか? ありがとうございますっ! でもマミさんもとっても素敵ですよ。ねえほむらちゃん」

 

「そうね。悪くないわ」

 

 

ほむらは黒い髪をかき上げてニヤリと笑う。大きな鏡に映っていたのは三人のメイドさんだ。

まどか、ほむら、マミにとってはコスプレのようなものか。少しテンションが上がっているようである。

 

 

「でもびっくりだねぇ。まさかお姫様だったなんて」

 

「ええ。すごい偶然だわ」

 

 

まどかたちは部屋をノックするとさっそくカレンに顔を見せる

 

 

「……貴女たち」

 

「カレン様の紹介のおかげで、お城に住んで働けるようになりました。どうもありがとうございます」

 

「……そう。よかったわね。要件はそれだけ? 済んだなら出て行ってちょうだい」

 

「いえっ! あのっ、お礼をしたくて。紅茶を淹れてきました」

 

 

マミが淹れたものだ。自信がある。なにせとても素晴らしい茶葉だった。是非見滝原に持って帰りたいくらいの。

 

 

「ありがとう。でもごめんなさい。人が淹れたものは飲まない主義なの。貴女たちで飲んで」

 

 

そういうとカレンはプイッとそっぽをむいてしまった。

ああ、マミが困っている。なんだかムカつく女だとほむらは思った。

 

 

(せっかく巴さんが淹れてくれたのに。可哀そうな巴さん。私ならゴクゴク飲むのに……)

 

 

イライラする。文句でも言ってやろうか? そう思っているとまどかが前に出た。

 

 

「わかりました。わたしたちでいただきますね。お気遣いありがとうございます」

 

 

まどかは笑顔で紅茶を下げると、そのままカレンを見る。

 

 

「カレン様は、お好きな食べ物とかってあるんですか?」

 

「………」

 

(無視? 無視! なんなのこの女)

 

 

ほむら舌打ちである。せっかくまどかが――

なんてことを考えていると、マミに掴まれた。

彼女はそのまままどかたちを連れてカレンの部屋を出ていった。

 

 

「だ、駄目よ暁美さん。王女様と喧嘩しようなんて死刑になっちゃうわよ!」

 

「……ごめんなさい。でもちょっと、その、態度が」

 

「仕方ないのよきっと。鹿目さんも簡単に話しかけていい存在じゃないんだから、注意しないと駄目よ」

 

「そ、そっか。そうですよね。はぁい」

 

 

ついつい自分たちの世界の物差しで考えるが、お姫様とはそれはさぞ高貴な存在に違いない。

下々のものとは口を聞いてはいけないのだろう。マミはそれが文化や伝統であるならば重んじるのは当然だと言った。

 

 

「とにかく今は眠る場所が確保できたことだけでも幸いよね。何日この世界にいることになるかもわからないし」

 

「そうですね。あ、真司さんのこと言えなかったなぁ」

 

「まあそれは他の人に聞けばいいじゃない。それよりまずは一旦お茶にしない? ほら、この紅茶本当にいい香りで――」

 

 

ドタドタドタと慌ただしく、前から何人かの竜人がやってくる。

マミは驚いたように紅茶が入ったカートを端に寄せた。

竜人たちはそのまま三人には目もくれず、カレンの部屋に入っていく。

 

 

「どうしたんだろ?」

 

「随分、慌てていたわね」

 

 

ほむらは周りを見る。誰もいない。

こそこそと歩き、扉に耳を押し当てる。

 

 

「い、いいのかな?」

 

「いいのよ。ほら、まどかと巴さんも聞いてみる?」

 

 

なんだかんだと気になる。二人はすぐにほむらに身を寄せた。

中にいる人たちは相当興奮しているのか、声はそれなりに聞こえてきた。

 

――龍鬼復活は最果ての占い師のいうとおりでした!

まずは彼の意見を聞くというのは? 落着きたまえ。とにかくこれは我が国の存亡に関わる事態だ。キドリオン様の言うとおりです。爺や。やはりヤツは龍樹に存在す……

 

 

「キミたち! 何をしているのか!」

 

 

三人はビクっと肩を震わせる。振り返ると、イェーガーが立っていた。

 

 

「散れ! メイドがいていい場所ではない! 持ち場に戻るのだ!」

 

「は、はい! すみません! あわわ!」

 

 

まどかたちは急いでイェーガーから離れる。が。しかし。

ほむらは二人の手を引くと、近くの部屋に入った。幸い、他には誰もいない。

ほむらが一つ念じると、スーツを着たナイトメア、ガープが現れる。

 

 

「お嬢様! このガープ! 呼ばれて飛び出ました。が!」

 

「向こうの部屋に忍び込みなさい」

 

「……お嬢様。阿呆ほど知りたがる。プライバシーなるものの価値が……ってお嬢様? お嬢様! おやめくだされば! 貴女の固有魔法、記憶操作は私には通用しませぬ! おやめください! カップ焼きそばのお湯を捨てずに粉末ソースを入れてしまう記憶を植え付けようとするのはおやめくだされ! 不毛極まりない! これどういう嫌がらせ!?」

 

 

観念したのかガープは小さなコウモリに変わると窓の外に飛び出していき、カレンの部屋が見える場所に止まる。

ガープが耳を澄ませると部屋の中の会話が聞こえてきた。そしてそれがそのままテレパシーでほむらたちの脳に入ってくる。

 

 

『龍鬼がいては王位継承の儀を行うことができない』

 

(龍騎……? え? 真司さん?)

 

『わかっているなカレン。キミは龍の血涙には選ばれなかったのだ』

 

『それはもちろん……。わかっています。叔父上』

 

『まあまあ。それよりも姫様。龍機に遭遇したと聞きましたが!』

 

(龍騎! 真司さん!)

 

『ええ、襲われました』

 

(!?)

 

『ですが既に撃破しました』

 

(ええええええええええええええ!?)

 

『中に乗っていたものに見覚えは?』

 

『いえ。よくわからない黒い恰好でしたが、蒸発して消え去ったようです』

 

(え? あ、あれのことだったんだ……!)

 

『とにかく! よろしいですか! 龍鬼討伐のために我々はこれより――』

 

 

そこで何かが割れる音が聞こえた。窓だ。ガープは目を見張る。

 

 

「おや?」

 

 

ガープがぶら下がっていた木の枝。その上に『龍騎』は立っていた。

真司の変身しているタイプとはシルエットが違う。体は細く、仮面は細長く。長い尻尾がある。

まるでヤモリやトカゲだ。さらに右腕には巨大なドラグレッダーの頭部が装備されている。

ドラグクローではあるが、両髭の部分からエネルギーでできた弦が見えた。

これはボウガン。放たれたのは炎の矢だ。それが窓を貫き、カレンを貫こうとしたのである。

 

しかしイェーガーが反応すると、腕を伸ばして矢をつかみ取ったのだ。

細い龍騎は舌打ちを零すと、すぐに跳躍で木の枝から離れた。

よくわからないが、注目を集めるのは好まない。ここでガープも消え失せる。

 

 

「大丈夫ですか姫様!」

 

 

爺やと呼ばれた竜人がカレンに駆け寄る。

一方で『キドリオン』というカレンの叔父と、イェーガーは細長い龍騎を睨んだ。

 

 

「あの龍騎! バルガスか!」

 

「殺し屋の? それがなぜ姫を!?」

 

「わからんが目障りだ! イェーガー! なぜ侵入を許した! 親衛隊の失態だぞ!」

 

「は、ハッ! 失礼を! とにかくすぐに追いかけます!」

 

 

二人はカレンの部屋を飛び出していく。

爺やはカレンに駆け寄ると無事を確かめる。

 

 

「姫様! とにかく安全な場所にお隠れを! 私めもヤツを倒しに向かいます!」

 

「え、ええ……! 気を付けてね爺や――ッ!」

 

「もちろんです。おのれ殺し屋め! 絶対に許さん!!」

 

 

刀片手に飛び出す爺や。カレンは床を這い、部屋の隅でうずくまる。

そうしているとまどかたちが部屋に飛び込んできた。

 

 

「大丈夫ですかカレン様!」

 

「貴女たち! どうして!」

 

「えっと……、騒がしかったもので! とにかく大丈夫ですか!」

 

 

まどかがカレンに触れようとしたとき、その手は弾かれる。

 

 

「平気よ。それよりも早く隠れなさい! まだ殺し屋が近くにいるかもしれないのよ!」

 

「わたしは大丈夫です! それよりもカレン様が心配で!」

 

「ふざけないで! メイドに守られるほど弱くはないわ!」

 

 

ほむらはそれを聞いてムッと表情を歪める。

 

 

「確かに力はあるようだけど、気遣いを受け止める余裕はないようね」

 

「なんですって……!」

 

 

ほむらが呟いた言葉にカレンは反応する。

怒りの連鎖だ。マミは二人を落ちつけようとして――やめた。

廊下から誰かが歩いてくる。何から煌びやかなローブを着込んだ男性だった。

竜人とは思えない。普通の人間に見える。

 

 

「姫様。聞きましたぞ。危機一髪のようで」

 

 

男は腕をシッシと動かしてまどかたちに『退け』とジェスチャーを送る。

まどかたちが左右によけると、男はそこをズンズンと歩いてカレンの前に立った。

 

 

「最果ての占い師……、話は聞いているわ。龍鬼復活と侵入者を予言したようね」

 

「いかにも。私の千里眼が全てを見通したのです」

 

 

綺麗な宝石がいくつもついたネックレスがじゃらりと揺れる。

占い? 予言? うさんくさい。ほむらは眉を顰めたが、考えてみたら自分のパートナーも似たり寄ったりなのかもしれないので黙っておくことにした。

 

 

「うさんくさい」

 

 

ほむらはギョッとした。カレンはギラリと占い師を睨む。

 

 

「失礼な女王だ。おっと、まだ仮でしたか」

 

「わざわざ嫌味を言いに? そんな、まさかだわ」

 

「ふむ。確かに」

 

 

占い師は椅子に座ると、パイプをふかす。

 

 

「馬鹿な奴らだ。龍鬼や殺し屋だけが悪意のすべてだと思っている」

 

「ッ」

 

 

なにやら、空気が変わった。

占い師はパイプを投げ捨てる。

 

 

「まあ仕方ないか。馬鹿な男の系譜なのだし」

 

 

占い師の姿が変わった。人のそれから異形のそれへと。

肩や腕を覆う円形の装甲。そこに宝石が埋め込まれていき、最後に赤い角が二本頭で発光した。

 

 

「我が名はアマダム! 占い師ではなく魔法使いだ。貴様らの始祖たる存在である」

 

 

魔獣?

いや、けれども幹部級が変身した際に発生するモザイク状のエネルギーは確認できず、尚且つ自己顕示欲やプライドの高い彼らが魔獣ではなく魔法使いを自称したことが気になる。

いずれにせよ事態が理解できずに後ずさるまどかたち。

一方でアマダムは睨みつけてくるカレンを見て、小さく笑った。

 

 

「この国は養殖場、あるいは培養所か。いずれにせよ十分に力は育った。貴様らのクロスオブファイアをまとめて回収してやる」

 

「クロスオブ、ファイア……? 何をワケのわからないことを言っている!」

 

「どうせ間もなく消え去る命だ。ならばその前に私自らが奪ってやろう」

 

 

アマダムが手を前に出すと、火球が発射される。

アッと思うまどかたちだが、カレンはどこからともなく細身の剣・ドラグセイバーを生み出すとその炎を切り裂いて消滅させた。

 

 

「逃げなさい! 早く!」

 

 

怒鳴られた。一方でカレンはすぐに走り出すと、椅子に座っているアマダムへ切りかかる。

そのスピード、あっという間にアマダムの肩に刃が直撃するが――

 

「ッ!?」

 

「フッ! フハハハハ!」

 

 

アマダムは肩に剣を受けながらも、足を組んでくつろいでいるように見える。

それもそのはず、その攻撃は効いていないのだから。

 

 

「私は炎を理解している。ゆえに龍騎は私の力でもある。抗体を生み出すことなど造作もない!」

 

 

アマダムは立ち上がると足を振るう。

カレンは魔法陣のバリア・ドラグシールドを張ってそれを受け止めようとするが、アマダムの足は容赦なく魔法陣を粉々にするとカレンの首をへし折ろうと――

 

 

「!!」

 

 

固い感触。アマダムは首をかしげる。

カレンの頭とアマダムの脚の間に、桃色のバリアが張られているではないか。

ピー!

 

 

「は?」

 

 

腹から音がした。アマダムが確認すると、爆弾がくっついていた。

 

 

「ゴアアアア!」

 

 

爆発。アマダムは吹き飛び、扉を粉砕して廊下に倒れた。

今度はカレンが唖然とする番だった。つい先ほどメイド服を着ていた三人の少女が、きらびやかな衣装に身を包んで自分の前に立っているのだから。

 

 

「大丈夫ですか!」

 

「え、ええ……!」

 

 

変身したまどかたちは並び立ち、アマダムを睨む。

跳ね起きたアマダムは、まどかたちを見て大きく混乱しているところだった。

 

 

「なんだ……ッ! 何者だお前たち!」

 

「魔法少女よ!」

 

 

マミがマスケット銃を発砲する。アマダムは掌でそれを受け止めるが、痛みにのけぞり、大きく唸った。

 

 

(どういうことだ? 魔法少女? そもそもなぜ私にダメージが入る!)

 

 

そうしているとマミが走ってくる。

 

 

「チィッ! 目障りな」

 

 

アマダムもまた走り出し、まずは二人の脚が交差した。

唸るアマダム。マミの脚にはリボンが巻き付けられており、それが威力を上げているのだろう。

二人の蹴りは互角。弾きあい、今度はもう一方の脚がぶつかり合う。

弾きあう両者。マミは人間に見えるが、どうやらその身体能力は遥かに上昇しているようだ。アマダムはすぐに腕を振るい、手刀から斬撃を発射する。

 

 

「レガーレ」

 

 

マミは黄色いリボンを鞭のように振り回すと斬撃をかき消し、さらにリボンを伸ばしてアマダムの足首に巻き付ける。

そのまま腕を引いて一気に倒してやろうというのだ。しかしマミは目を見開いた。

アマダムは液状化すると、リボンをすり抜けてマミへ突進してくる。マミは後退しながら銃を連射するが、当然それらはむなしくアマダムをすり抜けていくだけだった。

 

 

「デカラビア!」

 

 

しかしその時、電撃がほとばしる。

ほむらがマミの後ろから顔を出すと、腕を前にかざした。

悪魔の雷は液状化しているアマダムの全身を駆け巡り、激しいスパークを巻き起こす。激しい痛みにアマダムの液状化は解除され、マミにたどり着く前に床に倒れた。

 

 

「イェゼレルミラー!」

 

 

立ち上がったアマダムは背後に気配を感じて振り返る。

するとそこには大きな鏡を持った天使が。よくわからないがアマダムはハイキックで鏡を粉砕しようと試みる。

が、しかし、鏡に足が当たった瞬間、ズブリと沈む。

なんだ? アマダムがそう思った時には既に『誰もいない』廊下にたどり着いていた。

 

 

「これはミラーワルド!? 馬鹿な! どういうことだッ!」

 

 

光が迸る。窓からほむらが飛び出してくると、アマダムに掴みかかった。

まだデカラビアの恩恵は続いているらしい。ほむらは放電しながらアマダムをひるませ、そのまま壁に叩きつける。

 

 

「ハァアアアア!」

 

 

ほむらは壁を思い切り蹴って、黒い翼を広げた。

窓を突き破って外に出る二人。アマダムはそこでほむらの腕を振り払うが、地面には墜落していく。

空にいるほむらは盾からアサルトライフルを取り出すと、すぐに連射していった。

 

しかしそこでアマダムは硬質化。ほむらの銃弾を完全に防ぎきる。

それだけではなく突然腕を前に出すと、伸長したではないか。

伸びた腕から繰り出されるパンチ。ほむらはなんとか盾でガードするものの、衝撃でバランスを崩して地面に落下してしまう。

 

落下時、なんとか体勢を整えて着地。翼を消滅させる。

アマダムも風の力で浮き上がると、すぐに体勢を整えて着地した。

上を見るとまどかが飛んでくるのが見える。彼女は次々と光の矢を発射するが、アマダムは高速移動でそれらを回避していく。

 

 

「ん?」

 

 

アマダムは見た。ほむらの矢、まどかの矢、そして廊下からはマミが銃を撃ったのが。

しつこい奴らだ。アマダムは指を鳴らす。するとどうだ、全ての時間が止まった。ピタリと。全てが沈黙する。

静止した時の中でアマダムだけが動くのを許される。彼はゆっくりと歩き、飛び道具のルートを外れると、空にいるまどかを撃墜しようと――

 

 

「グアァアア!」

 

 

闇の矢が飛んできてアマダムに命中、爆発が起こる。

地面を転がるなかで確かに見た。ほむらがしっかりと動いているのを。

 

 

「な、なぜだ!」

 

「……さあ」

 

 

タイムベントのカード。

本来はライアがほむらの時間停止中でも動けるようになるという効果だが、どうやら正確には所持者が止まった時間の中でも動けるようになる効果らしい。

持っているだけで発動できるカードのため、ユニオンを経由せずともほむらに効果が適応されたようだ。

さらにアマダムが怯んだことで魔法も解除されたのだろう。時間の流れがもとに戻り、まどかとマミも動き出す。

 

 

「あぁくそ! わけわかんねぇ小娘共が!」

 

 

アマダムは大きく地面を殴りつけた。全く、こんなはずではなかった。

さっさとカレンを殺して力を奪うだけ。それだけだったのに、なぜここまで手こずらなければならないのか。

腹が立つ。非常に苛立つ。怒りでいっぱいだ。

だからこそ多少エネルギーや力を消費しても彼女らを消そうと思う。

 

 

「今、これを使うことになるとはな!」

 

 

アマダムが腕を空へ伸ばすと、黒い光がほとばしり、そこに『穴』が生まれる。

目を見開くまどかたち。その穴は一気に大きくなっていき、すさまじい引力を発生させる。

マズイ。まどかがすぐにバリアを張って壁を作ったが、そのバリアは簡単に砕け、破片が穴に吸い込まれていく。

これはただのブラックホールではない、魔法で作り上げたブラックホールなのだ。

それはは全てを吸い込む。地面を、城を、存在をすべて消し去るまで消えない悪夢。

 

 

「いけない! 鹿目さん! 暁美さん!」

 

 

マミがリボンを伸ばして、まどかとほむらの腰に巻き付けて走る。

しかし凄まじい抵抗感にすぐに踏みとどまった。後ろから引っ張られている。

まどかやほむらは既に宙に浮いている状態だ。試しに矢でブラックールを攻撃してみるが、そんなのは無駄だ。矢が吸い込まれて消えるだけ。

 

 

「ふははははは! 飲み込まれろ! 星をも吸い尽くすエボルの力!」

 

 

これは――やむを得ない。

まさに、鹿目まどかがそう思った時だった。

 

 

「んあ」

 

 

気配。見える。拳。

 

 

「ぎょええええええええええ!!」

 

 

鉄拳がアマダムを吹き飛ばす。

剛腕。パンチ。吹っ飛ぶアマダム。その衝撃で一瞬気を失ったのか、ブラックホールはみるみる小さくなって、すぐに消え去った。

そしてアマダムが地面に墜落する。彼を吹き飛ばしたのは巨大な巨大な人魚姫。

 

 

「あ!」

 

 

まどかが笑顔になる。

あれは間違いない、魔女オクタヴィアだ。

ということは――

 

 

「まどか! 無事!? なんかアイツ吹っ飛ばしたけどいいよね!」

 

「さやかちゃん! わぁい! ありがとう!」

 

「なーんか気づいたら変な場所にいてさぁ。訳もわからず歩いてたらうちのまどかが襲われてるじゃないですか。コイツは許せないよねぇ」

 

 

木の上から声がした。まどかはその方向を見て――

 

 

「……あれ?」

 

 

固まった。

 

 

「あれ? どしたのまどか」

 

「……さやかちゃん?」

 

「え? そうだけど。あったりまえじゃん。何言ってんのさ」

 

「さ、さやかちゃんなんですか?」

 

「はぁー? だからそうだっ……」

 

 

さやかは思う。あれ? そういえばいつもよりも目線が『下』のような。

訳も分からずに歩いて、まどかの悲鳴が聞こえてきたら……って、とにかくそんな忙しく事態が動いていたから気づくのが遅れた。

そして今になって思う。なんか、手が変だ。

白い。真っ白だ。足を見る。真っ白だ。靴をはいてない。

ケツになにやら違和感がある。動かせた。尻尾だ。白い。

ってか、服を着てない。

 

 

「ぬぁんじゃこりゃぁあぁぁぁあああッッ!!??!?」

 

 

美樹さやかの声、美樹さやかの意志、けれどもその見た目はどう考えたってキュゥべえである。

いや正確に言うとキュゥべえとは違う。

ほむらはアッと声を出した。見覚えがある。あれは確か、小さなキュゥべえ、名前は確か喪九。

 

 

『やあ、無事みたいだね。よかった。安心したよ』

 

『キュゥべえ!』

 

 

頭に響く声。これはテレパシーだ。

まどかはすぐ横にキュゥべえが立っているのに気付いた。

 

 

『遅れて申し訳ない。まったく、最近はイレギュラーが多くて困るよ』

 

『見つけてくれたの!』

 

『ああ。キミたちがゲーム盤からロストした時はどうなることかと思ったけど、見つけることができてよかったよ。無事かい?』

 

『う、うん。わたしは平気だけど……、アレもキュゥべえたちの仕業?』

 

 

まどかが指さしたさやかを見て、キュゥべえは首を振る。

 

 

『いや、ボクらじゃないよ。あれはおそらく――』

 

 

そこで頭に別のテレパシーが。

 

 

『チャオ』

 

『ニコちゃん!』

 

『驚いてくれた? 私のサプライズ』

 

 

地球のファミレス。

ニコが持っているスマホの画面には、喪九となったさやかの視点が表示されている。

ちなみに今、人間の姿をしているさやかはニコの前で気絶していた。

 

 

『何をしやがったテメェ』

 

 

ニコの前にジュゥべえが現れる。

 

 

「べつに。ただこれが私の魔法、マギアレコードの一端だというだけでんがな」

 

 

喪九とは小さなキュゥべえだが、何もただの使い魔ではない。

前回はアグゼルに吹っ飛ばされて終わったが、アレは耐久度チェックだ。

 

 

「喪九ってのはあの小さなキュゥべえの名前じゃない。正確には何も入ってない状態のことを指すのさ」

 

『???』

 

 

ニコがキュゥべえのパーツを使って作ったのは、簡単に言えば『キュゥべえと同じ権限を持っている』ニコの使い魔である。

それがほしいと思ったのは前回の虚心星原の件だ。

なんらかの事態でゲーム盤の外に仲間が連れだされた場合、今まではニコたちは助けることはおろか、事情を知ることすらできなかった。

 

今も明らかに立っているステージが違っているため、助けに向かうことは難しい。

けれどもせめて遠隔から声をかけてあげるくらいはできる。あの小さなキュゥべえがいれば。

 

 

「インキュベーターがいける場所になら、同族の喪九もいける。あの子はあくまでもインキュベーター。キュゥべえたちの近くに飛ばせるのさ」

 

 

見滝原――というよりもゲーム盤の外にキュゥべえが飛んだ場合、ニコの携帯にその情報が入ってくる。

ならばそこへ喪九を飛ばせば、なんらかの情報を得ることが可能なわけだ。さらにそれだけではなくいくつかの機能を使ってある。

その一つが今のさやかだ。喪九にソウルジェムを食べさせれば、ソウルジェムの入れ物、つまりは魂の入れ物、肉体になる。

 

喪九の体を内包したソウルジェムの持ち主が自由に操れるということだ。

まあ問題があるとすれば、喪九が崩壊すればソウルジェムがむき出しになるので、かなり危ないわけだが。

 

 

「それにこのままじゃ体腐るな。安心しろ美樹。私らがしっかり守っとくから」

 

『いや何を勝手にしとんじゃー! まずは相談しろーッッ!!』

 

「や、だって実験体にするって言ったら嫌って言いそうだし」

 

『当たり前じゃああああああああああああ!』

 

 

うるさい。ニコは画面を切った。そしてニヤリと笑いジュゥべえを見る。

 

 

「ゲームのルールじゃ一度見滝原に入ったヤツはもう出れない。でもこの盤の外に行ったらどうなるかは言ってないよな? っていうか、作ってないだろそんなルール」

 

『う゛ッッ! せ、せんぱーい!』

 

『なるほど。考えたね神那ニコ』

 

 

まあいいだろう。

確かにこういう事態は運営としてもイレギュラー極まりない。

本来のゲームを円滑に進めることができなかったのはインキュベータ側に問題があると認めてくれたようだ。

それにルールの穴をつくというのも一つの趣ともいえる。

 

 

『見逃すよ。キミの作った喪九とやらも、ルールの裁定も改めてアナウンスしよう』

 

「ん、サンクス。あでも喪九ってのいうのは、何も入ってない状態なわけで」

 

 

小型キュゥべえ型支援使い魔、その名も――

 

 

「ノイン。これが私の新しい魔法さ」

 

 

ニコは画面をつけて再びテレパシーを送る。

ノインは食ったソウルジェムの持ち主と同じになる。つまり先ほどのとおり、同じ力が使えるわけだ。

さやかはまあいいと腕を組んで鼻を鳴らした。どうせここまで来たんだ。だったらまどかたちの力になってやろうじゃないかと。

一方でアマダムは立ち上がると強い爆発を発生させる。

まどかたちが駆け寄ると既にアマダムの気配は消えていた。

 

 

「……逃げられたわ」

 

「さやかちゃんかわいいね。えへへ」

 

「でしょでしょ、小動物系ってかんじ?」

 

 

まどかとさやか(ノイン)がわちゃわちゃやっている間に、ほむらとマミは情報を整理する。

 

 

「巴さん。聞き間違いかもしれないけれど、アイツ、ミラーワールドのことを知っていたみたい」

 

「なら自力で脱出できる可能性はあるわね。それにクロスオブファイアだっけ? お姫様も知らないことを知っているようだったし……。キュゥべえは何か知ってる?」

 

『いや。先ほどのターゲットも、クロスオブファイアも知らないよ』

 

 

そこで三人と一匹の前にジュゥべえがやってくる。

 

 

『今回はこっちの不手際もある。ソウルジェムはピカピカにしてやるよ』

 

 

とにかくキュゥべえたちはまどかを見つけた。これで安心だ。

 

 

『帰ろうか』

 

「……待って! キュゥべえ。まだ帰れない」

 

『どうしてだい?』

 

「やらなきゃいけないことがあるの」

 

 

キュゥべえとジュゥべえは顔を見合わせる。

まあ言わんとしていることはわかる。龍騎の件は一通り把握済みだ。

 

 

『それに、ボクらが気づいたということは――』

 

 

そこで場面はカレンの部屋に移る。

部屋の隅でへたり込んでいた彼女は、先ほどのまどかたちの姿を思い浮かべていた。

 

 

「まさか……、成功していたの? サモンライドが」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああ!」

 

 

逃げたアマダムは全身をかきむしっていた。サモンライド、なんだかそんな言葉が聞こえたような気がする。

なぜだか知らないが、怖気が走る。なんだか寒くなってきた。気分が悪い。

イライラすることばかりだ。魔法少女、そういうことか。だいたい把握した。

 

 

「まさか龍騎の技術が、そんなことに使われていたとはな。魔法少女か。私も少々眠りすぎていた」

 

「何をワケわかんねぇことをゴチャゴチャ言ってる」

 

 

鬼が島。そこにアマダムはいた。ソファに座っているのは龍鬼だ。

 

 

「しかし魔法少女ねぇ。そんなネズミが紛れ込んでいたとはな。本当に任せていいのかい?」

 

 

その向かい側にどっかりと座っていたのは――

 

 

「いいぜィ? こちとらよぉ、アイツらをブチ殺したくてウズウズしてんだよォ。城戸真司だの鹿目まどかだの、口にするだけで吐き気がするぜぇ。カカカカ!」

 

 

ゼノバイターは前方にあったテーブルに足を乗せて唸る。

 

 

「せぇーっかくアシナガちゃんに復活の機会を与えてもらったんだ。有効に使わねぇとなぁ? おい。それにオメー、ここはなんだか面白そうな世界じゃないのぉ」

 

 

それぞれ手に入れたいものがある。野心がある。

そのためには少しの間、手を取り合うのもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「仁美」

 

『はい。お任せくださいまし』

 

 

ニコの合図を受けて、画面の向こうにいる仁美はコネクトの魔法を発動させる。

しかし誰も呼びださない。ゲートを生み出すだけだ。

 

 

「どういうつもりなの?」

 

 

未来の世界。

拠点にいた鈴音は腕を組んで訝しげに魔法陣を睨みつけている。

隣にいるタルトは、事前に仁美を通じてニコの狙いを把握していたのでそれを鈴音に説明する。

これは一つの実験だ。上手くいくかは――微妙なところだろう。

ニコが目を付けたのはゲームに参加していない魔法少女のことだ。それは鈴音たちのことではなく、文字通りまどかが円環の理に導いたものである。

 

 

『そこが襲撃を受け、全ての魔法少女が現在、ダークオーブを通して魔獣の支配下にある。けれども本当にそれが全てなのか? 私はキュゥべえを通して情報を得るうちに気になったのさ』

 

 

ニコはそう言っていた。

 

 

「どういう意味?」

 

「実は私もかつて女神から聞いたことがあります。女神すらも知りえなかった領域があったと」

 

「?」

 

「私たちの存在を含め、このゲームには多くの抜け道がありました。神那様はそこに注目しておられるのではないでしょうか」

 

 

ニコはその時、白い塊をテーブルに置いて、そこにスマホをつなげた。

ナポリタンを食べていたまどか先輩はもぐもぐしながらその塊を見る。

 

 

『なぁにこれ』

 

「キュゥべえの塊」

 

『深くは聞かないことにするね。ずぞっ! ずぶぶぼぼぼ!!』

 

 

データ受信中。完了。仁美のアイコンをタップ。送信。

神那ニコの権限で志筑仁美のコネクトを使用。許可申請中……。

仁美からの許可を確認。受理しました。コネクト。

送信先はノイン周辺。位置情報を詳細に習得できませんが、よろしいですか? OK

肉体を構成中。しばらくお待ちください。1%、2%、5%、15%……。

構成を完了。Q-2133-2025-840Fからの情報を送信中。この作業は途中でエラーを起こす可能性があります。

情報を習得。名前を表示できませんが、よろしいですか? 名前を入力、サンプルA

OK。この作業は失敗する可能性がありますがよろしいですか。OK。

情報を転送します。しばらくお待ちください。

ノイン周辺にサンプルA個体を送信完了。作業を終了します。

 

 

「……残骸だけど、さて、どうなるか」

 

 

ニコはニヤリと笑い、手に持っていた注射をさやかにぶっ刺した。

 

 

『ニコちゃん。なにそれ』

 

「クサラナーイZ。まどか先輩、タピオカ一緒にしゃぶろうぜ」

 

『へー、ニコちゃんの地元じゃそういうんだね。タピオカはやっぱりちゅぽるものだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

少女は目を覚ました。洞窟だった。

洞窟か。洞窟だ。穴の中にお花が咲いてる。きれいだな。

いや、待て。なんで洞窟なんだ? いやそりゃあ洞窟なんだから洞窟なんだろうけど、それはおかしい。

たしか、ついさっきまで部屋にいて、漫画を読んでいたはずなんだが。

あれ? 漫画? なんの漫画だっけ? っていうかそもそも。

わたしは、誰?

 

 

「お、思い出せないの! こわいの!」

 

 

少女は涙目でオロオロとしながら周囲を歩き回る。

 

 

「誰かが倒れてるの!」

 

 

女性が倒れていた。少女はすぐに駆け寄り、肩をゆする。

 

 

「大丈夫ですか! 起きてほしいの! 寂しいの! 不安なの!」

 

 

少女の必死な叫びが伝わったのか、女性はゆっくりと目を開ける。

 

 

「あれ、ここは……?」

 

「わ、わたしにもわからないの! お姉さん怪我はないの?」

 

「う、うん。大丈夫だけど……」

 

 

女性は体を起こすと、少女と顔を合わせる。

随分、儚げな雰囲気なの。少女はそう思った。

 

 

「ねえキミ、落ち着いて。私は大丈夫だから」

 

 

一方で女性は、目の前で怯える少女をなんとかしてあげたいと思った。

 

 

「お名前は?」

 

「わたしは……」

 

 

記憶はないが、何も覚えてないわけではなかった。

自分の名前はわかっている。

 

 

「わたしは御園(みその)かりん。なの!」

 

「そう、私は紗愛(さら)っていうの。よろしくね、かりんちゃん」

 

 

紗愛は不安だった。どうしてこんなところにいるのか覚えていない。

それに自分は確か――

でも今はとりあえず、怯えるかりんを安心させてあげようと思った。

 

 

 






次から各キャラクターの説明とかもいれてきます。
あと、今回もちょっとやったんですけど
今まで真司とかは変身したら龍騎っていうふうに書いてたんですが、まあこんな感じなんで、特別編は変身後も変身者の名前を使っていきます。

あともうライダータイム龍騎とかのネタバレとかもゴリゴリやっていくんで、そこらへんは注意して下さい(´・ω・)
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