仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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Episode 3

 

 

 

 

 

Episode 3 「サンタさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たんたんたーん、チャンチャカチャーン、たんたんちゃーんちゃちゃーん!」

 

 

楽しそうに歌うゆま。

他のメンバーは各々自由に過ごしていた。

 

 

「ふんふふーん、ふんふふーん、ふんふふふ、ふ!」

 

 

ゆまは楽しそうに靴下を持ってニコニコと笑っているじゃないか。

不思議そうに首をかしげる佐野。流石に気になってきた。

 

 

「何してんの?」

 

「佐野さん、もう少しでクリスマスじゃないですか!」

 

 

まどかに言われてピンと――、来ない。

 

 

「え?」

 

「クリスマスですよ!」

 

「いやでも今は――」

 

「クリスマス!」

 

「だから――」

 

「ク・リ・ス・マ・ス!!」

 

「いやいや!」

 

 

そこで銃声が聞こえて佐野の意識がブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

「佐野さん。もうすぐクリスマスですね」

 

「うん、そうだね!」

 

 

そういえばカレンダーを見ればそこには12月と書いてある。

そうだ、12月だ。12月なんだ……。

 

 

「12月と言えば、やっぱりクリスマスでしょう?」

 

「そ、そうだねマミちゃん。はは、ははは!」

 

 

ゆまは靴下を持ってはしゃいでいた。

 

 

「ってか……、そもそもこの世界に季節の概念ってあったんだね」

 

「それは突っ込まない約束よ佐野さん」

 

 

ゆまの鼻歌に集まってくるメンバー。

そう、やはりクリスマスのメインイベントと言えばサンタさんだろう。

大人になった佐野達にとっては、クリスマスはどちらかと言えば恋人と過ごすイベントだ。

しかし、ゆま程の年齢ならば、プレゼントのほうが楽しみだったりするものだ。

 

 

「ゆまちゃんは何を貰うんですか?」

 

「んーとね!」

 

 

須藤の言葉に、ゆまは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。

いくつか候補があるらしく。お人形を貰おうか、猫のぬいぐるみをもらおうかで悩んでいるらしい。

 

 

「須藤さんは何をもらうの?」

 

「私はもう大人ですからね。貰えませんよ」

 

「へー! じゃあ佐野ちゃんも?」

 

 

うなずく佐野。

そう言えばいつから貰わなくなっていたっけ?

懐かしい思い出だ、きっと誰しもが通る道だろう。

 

 

「じゃあ、ゆまは、いつまでプレゼントもらえるのかな?」

 

「え? さあ?」

 

 

やや適当に答える佐野。

しかし、ゆまとしてはいつまでもプレゼントは貰い。

やはりこの問題は気になって仕方ないのだ。

 

 

「ねえねえ」

 

「んあ?」

 

 

ゆまは一同から少し離れた所で携帯ゲームをしている芝浦に話しかけた。

芝浦はゆまの話を聞いていなかったのか、そこで初めて状況を把握する。

 

 

「芝浦お兄ちゃんはどう思う? ゆま、いつまで貰えるのかな?」

 

「ぶふーっ! いつまでって!? あんなジジイいないんだから親の都合でしょ」

 

「―――」

 

「「「「………」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何言うとるんじゃああああああああああああああ!?

戦慄、沈黙。マミと佐野は目を見開いて芝浦を睨む。

いやそうだろうけど、それは黙っておくのが暗黙のルールってもんだろうが!

佐野は真っ白になって固まっているゆまを見て汗を浮かべた。

 

 

「え……?」

 

「いやッ! だぁかぁらぁ! 親なの! おーや! サンタなんて不法侵入ジジイは幻・想!」

 

(く、クソガキにありがちな否定方法しやがってぇええッッ!)

 

 

佐野はとりあえずフォローの言葉を探すが、もう何から何まで遅い気がする。

取りあえずマミは行動に移すことに。このままでは余計に芝浦の言葉を、ゆまの心に植え付けてしまうかもしれない。

 

 

「ティロフィナーレ」

 

「「えええええええええええ!?」」

 

 

爆発と共に吹き飛ぶ芝浦。

佐野はてっきりフォローの言葉を用意するのかと思ったが、どうやらまず芝浦を黙らせる事を優先したらしい。

しかし黙らせ方ってモンがあると思うのだが――……。

 

 

「ちょっとデブさんッッ! 淳君をいじめないでよ!!」

 

 

芝浦の危機に飛んできたのはあやせ。

しかし何をとんでもない事を言っているのか。

佐野は慌ててあやせの口を塞ぐ。

 

 

「ばッ! 駄目だって! デブちゃんの事をマミっていうのは――! ってぎゃああああああ! 間違えたッッ!!」

 

「ティロフィナーレ」

 

 

あやせと佐野を吹き飛ばすマミ。

おなじみの黒こげアフロの洗礼を彼らは受ける事になった。

 

 

「巴さん……、威力がおふざけでやるソレじゃないんですが」

 

「嫌だわ須藤さん。私は太ってないから全然怒ってないのよ」

 

 

微妙に話しが通じていない辺りに狂気を感じる。

須藤は青ざめたまま黙って後ろへ下がるのだった。

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

「さて、」

 

「む゛ーッ! ム゛ーッッ!!」

 

 

リボンで芝浦を縛りあげて動きを封じるマミ。

だが問題はここからだ。ゆまは真っ白に固まったまま動かなくなり、取りあえず寝室に置いておく。その間に緊急集会を始める事に。

 

 

「困ったことになったわ!」

 

 

芝浦を隅っこの方に放置する一同。

取りあえずこのありがちな問題をどう解決するかである。

だいたいこう言うのは保育園だか幼稚園で経験する様な問題だ。

 

 

『いや、俺サンタなんか信じてねーし? びびってねぇし?』

 

 

そんなものは大人ぶったクソガキが言うものとばかり考えていたが、まさかそのクソガキがこんなに近くにいるとは思わなかった。

 

 

「ただまあ、マジだからさぁ。何とも言えないっていうか。ねえ?」

 

 

頷くマミ。

正直なところを言えば、当日はマミがプレゼントを用意しようとしていた。

サンタがいる事を信じさせようにも、いかんせん真実が芝浦寄りの時点で何とも言えない。

 

 

「こうなったらもうサンタなんていないって事、ちゃんと教えて。そこからフォローしたら? 下手に嘘を重ねると余計に傷ついちゃうかもよ」

 

「そうねぇ、佐野さんの言うとおりかも。みんなはどう思う?」

 

「え?」

 

「へ?」

 

「ん?」

 

「お?」

 

「あれ? あれれ……?」

 

 

そこで疑問の声を上げる者が。

 

 

「か、鹿目さん? ど、どうしたの?」

 

「え? いやッ、い……、いないんですか? サンタさんって――……」

 

 

真っ白になっていく鹿目まどか。

 

 

「え? 貴女も!?」

 

 

マミはしまったと息を呑む。

まどかは信じられないと言う表情で一同を見ていた。

どうやら彼女もまた純粋な心の持ち主だったらしい。何とも言えない申し訳なさが。

 

 

「え? あ、あれ? わたし今年も貰って――? あれ!?」

 

 

プルプルと震え始めたまどか。

どうやら開いてはいけない扉を開いてしまったようだ。

 

 

「あ、あちゃー! こりゃ可哀想な事しちゃったねぇ。ねえ須藤さん?」

 

 

佐野は小声で須藤に助けを求め――

 

 

「いない……? う、嘘だ――ッ! だったら私が過去に信じた者はなんだったんだ……!!」

 

「アンタもかよッ! 嘘だろッッ!?」

 

 

崩れ落ちる須藤を、佐野は冷めきった目で見つめる。

案外分からない物だなとつくづく思う。

 

しかし今思うと佐野が小さい頃は、両親が頑張ってくれていたんだろうか?

 

 

(あんな家庭を顧みなかった親父でさえサンタを否定はしなかった)

 

 

母親も自分の為に――……

 

 

「今更かな」

 

 

とにかく今はゆまの機嫌を取るのが先だ。まどかと須藤には残念だが諦めてもらおう。

佐野とマミは、取りあえず否定した本人に謝罪してもらうのが一番手っ取り早い筈だと考える。

 

 

「という事で、発言を撤回してもらえるかしら?」

 

「じゅ、銃を構えながら言うなよ!!」

 

 

転がる芝浦に、マミはニッコリと黒い笑みを浮かべて銃を突きつける。

断れば再び黒こげアフロの刑だろう。しかしそれでも挑発的な笑みを浮かべる芝浦、いないものはいない。それを居ないといって何が悪いのか?

 

 

「いつまでもガキみたいな幻想に浸るより、真実を話して金を渡してさ、好きな物を買わせた方が良いのさ」

 

「……コイツ」

 

「どうせ大人になれば、いないって分かるんだろ? だったらその時にショックを受けたり、恥をかくよりは、はじめからいないと分かった上でイベントを楽しめばいい」

 

「ゆまちゃんは子供よ。子供の時には夢を見る経験を養うのも大切だと思うわ」

 

「………」

 

 

舌打ちを返す芝浦。すると、あやせが飛び掛る。

いつもは芝浦の言葉を何の迷いも無く受け入れ、ベタベタしてくる訳だが、今日は珍しく反抗的だった。

 

 

「そうだよ淳くん! わたしはデ……、マミちゃんの言う通りだと思うな?」

 

「………」

 

 

銃を突きつけられて言葉を訂正したたあやせ。

とにかく、今日は珍しく芝浦の考えを否定していた。

というのも双樹あやせは、ゆまやまどかと同じくサンタの存在を信じる側の人間だったからだ。

 

 

「淳くんはぁ、捻くれてるからサンタさんがこなくなっちゃったんだよ☆」

 

「ハッ! じゃあ証拠でもあんのかよ!!」

 

 

そこであやせは自慢げに胸を張る。

芝浦と暮らし始めてからクリスマスを過ごした日もある。

二人暮らしの空間には当然プレゼントを仕掛けておく仕込などできない筈。

にも関わらず、あやせの枕元にはプレゼントがおいてあったのだ。

 

 

「なッ! じゃあ何でおれに言わないんだよ!」

 

「プレゼントと一緒に、この事は内緒って書いてあったもーん!」

 

 

あやせは自信に満ちた表情で芝浦を見下す。

よく分からないが、コレはいい方向に進みそうだと佐野達は希望を見出す。

 

 

「ちょっと待て、それルカだろ?」

 

「え……?」

 

 

芝浦はすぐにニヤリと笑って、あやせに言葉をぶつけていく。

一瞬カラクリが分からなかったが、すぐにその正体に気づいて核心を持った。

あやせはプレゼントを貰ったと言うが、そもそも芝浦達は二人暮らしではない。

三人なのだ!

 

 

「つまり、ルカがお前が寝ている間にプレゼントを用意していた!!」

 

「「「な、なんだってー!!」」」

 

 

そ、そんな事があっていいのか!?

あやせはすぐにルカに確認を取る事に。

 

 

「そ、そんな事無いよねぇ! ルカちゃん?」

 

『………』

 

「ル、ルカちゃん?」

 

『………』

 

「ちょ、ねえ違うって言って――! ルカちゃん? ルカちゃん!? ちょ、ル……、ルカちゃああああああああああああああん!!」

 

 

何も答えないルカを見て悟ったのか。

あやせは糸の切れた人形の様に崩れ落ちる。

結局自分が今まで信じてきたものの正体は、自分の中にいた妹だったのか。

 

 

『いや、でも……、ほら、私色似てますし』

 

 

だから何だっていうんだ。

ケラケラと笑う芝浦を見ながらガックリとうなだれるマミ達。

やはりこのまま芝浦が調子に乗るイメージしか見えない。

これじゃゆまを説得するなんてとてもとても。

 

 

「やっぱ、いない物をいるって説得するのはどうにも複雑というか」

 

「おや、私はいないとは言ってませんが」

 

「へ?」

 

 

ルカに変わった双樹は、腕を組んでニヤリと笑う。

 

 

「確かに今まで、あやせがサンタだと信じていた物は私です」

 

「ほらみろ」

 

「いえ。だが、だからと言ってサンタがいないとは言っていません」

 

「はぁ? 何言ってんだよお前まで。いないに決まってるだろ!」

 

 

芝浦の言葉にルカは首を横に振る。

意外にもルカは、あやせ達同じくサンタの存在を信じる側であった。

これは芝浦も予想外だったようだ。あやせよりもクールで現実的な所がルカの特徴だと思っていただけに。

 

 

「なぜなら、いない事を証明できないでしょう?」

 

「!」

 

 

表情を変える芝浦。

ルカは笑みを浮かべたまま芝浦に一つの質問を投げかける。

それは芝浦はサンタがいないと言う事を証明できるのかと言う事だ。

 

 

「チッ、変な物持ち出しやがって」

 

「フフフ」

 

「???」

 

 

何の話をしているのか?

佐野が首をかしげると、ルカは説明を始めた。

 

 

「悪魔の証明ですよ。いない物を証明するのは難しい、まあ屁理屈の様な物ですが」

 

 

いない事は誰にも証明できない。

それは『いない』からと言う理由を逆に利用した様な物でもある。

 

サンタがいない事を証明するには、世界中を探し回ってサンタが居なかった事を示さなければならない。だがもちろんサンタは生きている為、移動する存在である。

 

そして世界中というのは文字通り秘境と呼ばれる場所にも向かわなければならない。

とは言え、逆にいる事の証明としても弱いのだが。

 

 

「まあコレを使って言いくるめば納得してくれるでしょう。所詮相手は子供、簡単です」

 

 

佐野とマミも、これでゆまが納得してくれるのならば良しとする事に。

尚も不服そうな芝浦は放置して――

 

 

翌日、異変は目に見えて分かった。

この世界には『朝』と言うものが無く、同時に『夜』と言うものも明確には存在していない。

マミが住んでいた部屋が彼らの全てであり、窓やベランダから見える外の景色は、夜ともいえぬ闇の空間だった。

 

しかしそれでもマミ達には『朝』と『夜』の時間概念は存在しており、死ぬ前と同じく24時間で日付を計算していた。

 

 

まあそれはさておき、マミと佐野、ルカは早速起きてくるゆまを待った。

あれから真っ白になったまどかと須藤は知らん。放置していた。

諦めてほしい、それが大人の階段なのだから。

そうこうしているとマミの寝室の扉が開く。

 

来た! ゆまが出てき――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛ー! ォライッ、ォライッ! ちょーだりぃ!」

 

「「………」」

 

「くそがっ! マヂ盗んだバイクで走り出してーな!!」

 

 

めっちゃやさぐれてるぅううううううう!?

 

 

「誰アレ!? やさぐれって言うか。キャラその物が違っているけど!」

 

「しかも目つきがすごくソリッドになってる! 滅茶苦茶尖ってる!!」

 

 

ゆまは昨日とは違い、ギラギラと何かを睨む様な目つきになって起床してきた。

肩を大きく揺らして、意味も無く舌打ちを連打しながら床に座る。

あぐらをかいて片足は立てている。なんてお行儀が悪いんだ、マミは戦慄さえ覚えていた。

今のゆまなら、校舎のガラスを割ってまわるくらい余裕に思える。

 

 

「ゆ、ゆまちゃん……? おはよう!」

 

「おあ゛ぁぁあッ?」

 

 

なんなんなんだその獣の様な、オッサンの様な挨拶は。

マミは汗を浮かべて、昨日の事を持ち出してみる。

 

 

「マミお姉ちゃん。あたいはもう……、真っ黒に染まっちまったんだ。大人の闇に汚されて、真っ黒にねぇ」

 

(な、何テイストなの? 何キャラなの!?)

 

 

マミはブルブルと震えながら会話を続けていく。

っていうか一人称変わってるよね? あたいなんて言った事なかったじゃない!!

 

 

「あのね、やっぱり私サンタさんはいると思うな」

 

「やめてよマミちゃん、あたいをこれ以上ダーティの道に堕とすのは」

 

「いや、でも――」

 

「翼をもがれた堕天使は、永遠を彷徨う事すら出来ないのさ」

 

 

あれ、何言ってるか分からないわ。

いや正確には分かるし、結構そういうタイプの会話は好物だけど、少なくともゆまが言う台詞ではない。

 

そもそも明らかにキャラが変わっていると言うより別人じゃねーか!

どこでそんな言葉覚えたんだ!!

 

 

「そ、双樹さん!」

 

「え、ええ」

 

 

ルカは膝をついて、ゆまに視線を合わせる。

ギロリとナイフの様な視線で睨まれつつも、ルカは悪魔の証明を用いた説得を試みる。

確かにゆまの前にはサンタはこなかった。

 

しかしサンタは多忙だ。

だからサンタは両親に自分の代行として、両親にプレゼントを用意してくれと頼む。

 

 

「サンタは一人です。流石に世界中を夜の間に巡るのは無理でしょう?」

 

 

成る程、うまい手だとマミは関心する。

サンタがいる事を肯定しつつ、親がプレゼントを渡す事も否定しない。

これだったらゆまもうまく納得してくれるのではないだろうか?

 

 

「嘘乙。あたいはもうアウトローに生きる汚れモンなのさ。夢も希望もないんだよ」

 

「………」

 

「大人の嘘はやめとくれ」

 

 

駄目でした。

ってか乙とか絶対知らない言葉だった筈なのに。

マミは大きなため息をついて肩を落とした。

しかし次の瞬間、ゆまが言った言葉に彼女達は大きな衝撃を受ける事になる。

 

 

「もういいよルカお姉ちゃん。ゆま、本当は知ってたもん。サンタさんがいないって事くらい」

 

「え?」

 

「!」

 

 

ゆまは元に戻ったが、すぐに悲しそうな表情を浮かべてシュンとしていた。

 

 

「サンタが居ない事を知っていた?」

 

「うん……」

 

 

そこでマミはハッとした。

すぐにゆまの言葉を止めようと動くが、ゆまは首を振って言葉を続ける・

 

 

「だってね。ゆま……、本当はサンタさんにプレゼント貰った事なんて無かったもん」

 

「それは、どういう……?」

 

 

考えてみれば分かる事だった。

ゆまは両親から日々暴力を受けて育ってきたのだ。

そんな両親がゆまの為にプレゼントを用意するとでも?

 

誰かが言っていた。

サンタの正体はプレゼントをあげようとする親の心だと。

 

サンタの正体は子供の為にサンタを信じさせようとする親の愛。

だったらゆまの元にサンタが訪れる筈が無い。

 

 

「パパはクリスマスの日も帰ってこない時があったよ。ママはパパが知らない女の人の所に行っているって言ってた」

 

 

クリスマスに一人で過ごした時もあった。

ケーキもチキンも、クリスマスには食べたことが無い。

ずっとテレビの中にあった普通のクリスマスの景色を夢見ていただけだ。

 

 

「わたし、お願いしたの。サンタさんは来るのかなって」

 

 

すると酒に酔っていた父親が笑いながら言った。

あんなもん居る訳ない。あれは偽者。

存在否定。だからゆまは知っていた。サンタは存在しないのだと言う事を。

 

 

「もういい、もういいのよ……、ゆまちゃん」

 

 

マミはゆまを抱きしめると、優しく頭を撫でる。

ルカ達はそこで始めて、ゆまの事情を知る事になる。

 

あやせとルカの記憶にフラッシュバックするのは自分達が受けてきた屈辱の記憶。

それがゆまの過去と重なり、心を揺らす。

 

 

「そう……、ですか」

 

 

そこでルカはあやせにチェンジ。

ウインクを決めるとテンションを跳ね上げて、ゆまに笑顔を向ける。

 

 

「過去にクリスマスを味わえなかったのなら、今味わえばいいんだよ♪」

 

 

どうせココは死後の世界。

ここまで来て嫌な思いをする必要は無い筈だ。

 

 

「ようし♪ じゃあ明日クリスマスパーティしようよ☆」

 

「え!?」

 

「そうね、そうしましょう!」

 

 

マミは手を叩いてウインクを返す。

しかし12月になったばかりでクリスマスにはまだ早いのでは?

佐野がそう言うとマミは指を鳴らす。

 

するとどうだろう。

なんと日めくりのカレンダーがものすごい勢いでめくられていき、あっと言う間に24日である。

 

 

「えええええええええええ!?」

 

「ほら、この世界は願いさえすればある程度の事はできるのよ」

 

 

マミはそう言うと、次々に飾り付けの道具やクリスマスツリーを出現させていく。

夜までに飾り付けを終わらせればそのままパーティができるだろう。

マミとあやせは頷いて、他のメンバーを呼ぶ事に。

 

 

「じゃあゆまちゃん、今日は飛び切り楽しいパーティにしましょ!」

 

「う、うん!!」

 

 

何だかんだと楽しみだったのか。

ゆまは強く頷くと、マミにひっついて飾りつけを手伝う事に。

初めて間近にみる豪華なツリーに大興奮だ。ルカはそれを見て、微笑んでいる。

 

 

「さあ鹿目さん達もお願いね」

 

「「――――」」

 

 

相変わらず白いまどかと須藤は機械的に頷くと、紙でできた華を部屋中に貼っていく。

一方で双樹姉妹は部屋の隅っこで黙ってゲームをしているパートナーのもとへ。

 

 

「ね、淳くんもやろ?」

 

「やだよ。面倒だし、興味ないし」

 

『そう言わないで。淳も楽しみましょう! 私からのお願いです』

 

「………」

 

 

芝浦も先ほどの会話は聞いていた。

そしてもちろんそれが双樹の過去と少し重なる事もだ。

 

芝浦は真実を言ったまで。

ゆまに対する申し訳なさなど欠片とて感じていないが、それでも今の話しを聞けば色々思う所はあると言う物だ。

暫くは無言だったが、その内大きなため息をつくと持っていたゲームをクッションに向かって放り投げる。

 

 

「飽きた、作業ゲーはやっぱ駄目だな」

 

「じゃあ――」

 

「少しだけ、付きやってやるよ。ずっと傍にいられるの超うざいし」

 

「わあ♪ さっすが淳くん!」

 

「うっざい、さっさと終わらせて次のゲームだ」

 

 

そう言って芝浦達も折り紙で輪を作って、鎖にする作業に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。

一同の頑張りもあってか、マミの部屋はすっかりクリスマスムードに染まっていた。

マミが魔法で出現させたケーキを始めとして、豪華な料理が並んでいる。

ゆまだけでなく佐野達も目を輝かせていた。

 

 

「うわーお! これは凄いなぁ!!」

 

「とってもおいしそう!!」

 

「すごい! すごいーっ!!」

 

 

ゆまは朝のやさぐれが嘘の様にはしゃいでいる。

まだ真っ白で固まっているまどかと須藤が、気になるが、まあ放って置こう!

一同はさっそくとクラッカーやら帽子やら鼻髭めがねを装備する。

 

 

「お前もつけろよクソガキ~!」

 

「はぁ? んな糞ダッセーもん誰が!!」

 

「やれやれ……」

 

 

ギャーギャー騒ぐ佐野と芝浦を放っておいて、マミ達はシャンメリーを持つ。

さあ楽しいパーティの始まりだ。女性陣は笑顔でグラスを鳴らし合う。

まどかも真っ白の無表情だが、グラスを打ち付けていた。かわいそうに。

 

 

「もががががが!!」

 

「あ! このクソガキっ! いちごだけ全部食べるか普通!? 皆に分けろよ!」

 

「何キレてんの? おれはいちごが食いたかっただけなんだけど。それくらいで怒んなよ大人げねーな」

 

「お前本当に何言ってんだ!?」

 

 

やっぱクソガキだわ、佐野はつくづくそう思う。

 

 

「まあまあ。どうせ念じれば出てくるんだからもう一度出せばいいんですよ」

 

 

そう言ってマミは再びケーキを出現させる。

 

 

「でも芝浦くんにはおしおきね」

 

「は?」

 

 

ボカーン☆

ファンシーな音をあげて、芝浦が奪い取ったケーキが爆発。

大量のクリームが芝浦の顔に。

 

 

「ぶぶぶ! な、なんだよコレ!?」

 

「うはははは! ざまあ、クソガキ!!」

 

 

実は最初のサプライズとしてケーキが爆発するように仕掛けていたとマミは言う。

と言うよりも、芝浦がこういった行動にでるだろうと言う予測を立てていたのも事実だが。

 

 

「ちょっとババア! 淳くんに何してんの!!」

 

「……ちなみに、チキンも爆発したりして」

 

 

マミがニッコリと笑って指を鳴らすと、あやせの前にあったチキンが爆発。

体中に肉の破片が飛び散る事に。マミはリボンの結界であやせ以外を守っている辺り、確信犯だろう。

 

 

「うええええええん! ベトベトぉ!」

 

「いけないわ双樹さん、貴女と同じ歳の少女をババアだなんて」

 

 

黒い笑みを浮かべて静かに言い放つマミ。

ありったけの殺意がそこにはありました。とはいえそこで叫ぶゆま。

 

 

「食べ物を粗末にしたら駄目なんだよ!!」

 

 

ド直球の正論が飛んできた。

ゆまは頬を膨らませて怒っているようだ。

 

 

「そ、そうね。ごめんねゆまちゃん」

 

 

マミが指を鳴らすと、飛び散ったケーキだのチキンだのが集まりだして再び形を作る。

そして新しく出したケーキを加えて、一同はクリスマスパーティを再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は経ち、パーティも終わりに近づいてきた。

 

 

「うーん、お腹いっぱーい!!」

 

「あら駄目よゆまちゃん、食べてすぐに寝ると牛さんになっちゃうわ」

 

「まあまあマミちゃん。どうせオレ達死んでるんだから。今更健康に気を使ったってどうしようもないでしょ!」

 

 

まあそうだが、それでいいのか。

なんとも言えない気分になるものだ。

しかし時計を見れば既に12の針が近づいているじゃないか。

 

飾り付けに時間がかかっていたのか。

加えてダラダラと食べていた為に遅くなってしまった。

 

 

「ゆまちゃんはもう眠ったほうがいいのかも」

 

「そうだね、それがいいや」

 

 

結局サンタについてはどうにもならなかったが、ゆま本人がこのパーティに満足してくれている様なので良しとしようじゃないか。

一同はそのままパーティの終わりを確認す――

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

その時だった。どこからともなく鈴の音が聞こえてきたのは。

シャンシャンと音を立てる鈴は、明らかに外から聞こえてくる。

いや、それだけじゃない。音がコチラへと近づいてくるのが分かった。

 

何だコレ?

外は幻の景色の筈では?

佐野がマミに確認すると、マミは急いではカーテンを開いて外を見る。

 

 

「嘘――!」

 

「なになに、何が見え――、い゛ッッ!?」

 

 

マミと佐野が驚愕の表情を浮かべたのを見て、ゆまや芝浦も視線を其方へ向ける。

すると同じく悲鳴に似た声が上がった。

だってそうだろ? 外には空中を走るトナカイが!

 

 

「な、なんじゃありゃあああああああ!?」

 

 

見間違うはずも無い。

見間違う事があろうか。窓の外にいたのはトナカイと、ソリに乗った男の人だった。

白い髭を生やし、服は赤と白を基調としている。

そしてソリには大きな白い袋が見える。これは紛れも無く――

 

 

「さ、サンタぁあああああああああ!?」

 

「メリークリマス! ハハハハハ!!」

 

 

普通に笑って、普通にベランダに降りて来るサンタさん。

あれだけ存在しないだのするだのと吼えていた一同をあざ笑う様な登場だった。

 

 

「え? ええ? えええ!? ほ、本物!?」

 

「ま、まじ!?」

 

 

芝浦でさえサンタを凝視しえいた。

一方でゆまは、口をあけて目を見開いている。

そんな彼女に、サンタは綺麗に包装された箱を手渡した。

なすがままに受け取るゆまと、驚愕で動けない一同。

 

 

「大切にするんだよ」

 

「あ、ありがとう……!」

 

 

ポカーンとしたままお礼を言うゆま。

何が起こっているのかまだ分かっていない様だ。

それはマミ達も同じである。サンタの話しをしていたら、本当にサンタが来ました?

 

 

「ではメリークリスマス!!」

 

「あ! ちょ!!」

 

 

サンタは再びソリに飛び乗ると、何事も無かったかのように飛び去っていく。

遠ざかっていく鈴の音。瞬く間に静けさを取り戻したマミの部屋。

しかし時間が経つにつれて理解していく心。

 

 

「………!!」

 

 

ゆまは頬を蒸気させて拳を握り締める。

この腕に抱えたプレゼントの感覚は、夢でもなければ幻でもない。まごう事なき真実だろう。

つまりそれは先ほどの老人が現実だったと言う何よりの証拠だ。

 

 

「い、いいいいい!」

 

 

ゆまは、パッと笑顔を浮かべる!

 

 

「いたあああああああああああ!!」

 

「!」

 

 

そこで我に返るメンバー達。

 

 

「いた! サンタさんはいたんだねマミお姉ちゃん!!」

 

「え!? へ!? あ、ああえーっと……」

 

 

マミはすぐに佐野やルカとアイコンタクトを取る。

貴女も見た? そんな感じのやり取りを繰り返して、ある結論に至る。

それは自分達もまたあの存在をハッキリと見たと言うこと。

つまりあれは紛れも無い――

 

 

「さ、サンタクロースは本当にいたのね!!」

 

「そうだよマミお姉ちゃん! うわーい! やったーッ!!」

 

 

ゆまはプレゼントを抱え、笑顔ではしゃぎまわる。

それを見て佐野達のテンションも徐々に上がっていくと言う物だ。

短時間過ぎて今も夢のようだが、自分達は確かに本物を見て、声を聞いたのだから。

 

 

「すっげええええええ!!」

 

「ええ本当!」

 

「まさか本当にいたなんて――っ!」

 

「ウェッヒィイイイイイイイイ! やったね須藤さん、やっぱりサンタさんはいたんだよぉ!」

 

 

貴重な体験に心躍らせている様だ。

後ろではまどか達が復活して、手を取り合って回っているじゃないか。

なんともシュールな光景だが、彼女達が満足しているなら良しとしよう。

 

 

「………っ」

 

 

複雑な表情を浮かべている芝浦。

佐野はニヤニヤと彼に勝利宣言を行う。

 

 

「どうだクソガキ! 流石のお前も反論できないだろ~?」

 

「――ッ! ま、まあ」

 

 

不服そうに一同から離れる芝浦。

 

 

「………」

 

 

ルカはそれを見て彼の後をついていく。

途中あやせには出てこない様に頼んで、双樹の全てをルカが握る。

 

芝浦は男達が使っている寝室に向かうと、そこに置いてある椅子に深く座り込んでゲームを始めた。やや遅れてルカが入室、盛り上げるマミ達の声を遠くに聞きながら、柔らかい笑みを浮かべた。

 

 

「ふふ。たまには淳も他人のために動くのですね」

 

「あ? どゆこと?」

 

 

ルカは芝浦の向かい側に座ると、達観した様な笑みを浮かべる。

全てを理解している様な表情に、芝浦は舌打ちを漏らした。

それで確信を持ったのか、ルカは自分の予想を口にしていく。

 

 

「私は淳のことなら何だって分かります。あれは淳が驚く表情では無かった」

 

「???」

 

 

サンタを見た時の芝浦の表情は確かに驚いていたが、ルカにはあれが演技に見えて仕方なかったと言う。

 

 

「あの顔は驚いたと言うよりは――」

 

「おれはさ、確かめたかっただけだよ」

 

「え? 確かめたかった?」

 

 

芝浦はニヤリと笑ってゲームを続ける。

 

 

「そう。この世界は願ったらある程度の事ができるんだろう?」

 

 

マミはそれで料理を出した。それで飾り付けの材料を出した。

 

 

「だったら、あのジジイも出せるのかなってさ」

 

「成る程、フフフ」

 

「あの糞チビの為じゃなくて、おれの知的好奇心を満たす為さ。まあトナカイまで来るとは思わなかったけど、中々リアルだったろ?」

 

 

誰にも言うなよ。

芝浦はそう言って、ルカに背を向けてゲームを弄りだした。

 

ニッコリと笑って頷くルカ。

しかしそうなると気になるのはプレゼントの中身だ。

芝浦はゆまに何をあげたのだろうか?

 

 

「あー、そこは考えてなかったな。適当に考えたから」

 

 

気になるなら見てくればいい。何やら向こうは盛り上がっている様だし。

その言葉にルカは頷き、早速ゆま達の方へと戻ってみる。

そこには芝浦の言葉どおり、早速プレゼントの中身で遊んでいるゆま達が。

 

 

(どれどれ)

 

 

何をして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!」

 

「シューッ!!」

 

「シュゥウウウウッッ!!」

 

「シュゥゥゥーッ!!」

 

 

「「「「超! エキサイティン!!」」」」

 

「………」

 

 

な、なんだあれ?

ルカは危険でエキサイティンな空気を感じて、ソッと扉を閉めたのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

「ねえマミちゃん、悪いけど適当な雑誌出してくれないかな」

 

「ええ、いいですよ」

 

「?」

 

 

朝、佐野は朝食を食べながらマミにお願いをしていた。

それを見て首をかしげる芝浦。

 

 

「自分で出せよ」

 

「なんだよ、お前知らないのか? 願って出せるのはマミちゃんとまどかちゃんだけだっての」

 

「「は?」」

 

 

ルカも声を上げる。

そう言えば芝浦が使うゲームも全てマミに出してもらったような。

しかしあれはまだココのルールが分からなかったからだ。

芝浦は試しにゲームを念じてみるが、佐野の言うとおり現物が芝浦の前に現れる事は無かった。

 

 

「は? はぁ?」

 

「そ、そこまで驚く事か?」

 

 

そこで笑うマミ。

彼女がその力を貰ったのは、最初にココに来たかららしい。

 

 

「でも何でも出せるって訳でもないのよ。たとえば人を出したりはできないわ。道具は出せるけど」

 

「???」

 

「生き物は出せないの」

 

 

じゃあ何だ。

つまり芝浦は何も生み出せない?

それに生き物がダメって……。

 

 

「ねえねえ皆ぁ!」

 

 

そこで興奮したように走ってくるまどか。

何でも玄関に飾ってあったクリスマスツリーの下に、人数分宛のプレゼントが置いてあったらしい。

 

 

「まあ! 私たちにもプレゼントを!?」

 

「やるねぇ! サンタのお爺さんも!!」

 

 

はしゃぎながら入り口に向かう一同。

そこでルカと芝浦だけは取り残された様に座っていた。

 

 

「「……え?」」

 

 

顔を見合わせる二人。

すると、つまり昨日のアレは――

 

 

「「本物ぉオオオオオオオオオオッッ!?」」

 

 

 

 

 






芝浦ってクソでしたけど、メタルゲラスには愛されてたみたいな演出いいですよね。
なんかそこが面白みというか、もしかしたらペットには優しいタイプなのかなみたいな考えもできるのがいいですな(´・ω・)b
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