仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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Episode 4

 

 

 

 

 

 

Episode 4「あだ名」

 

 

 

 

「お腹が空いたな」

 

「………」

 

 

キッチンにおいてある椅子に座りながら、キリカはぼんやりとそう呟いた。

マミ達は少し離れた所にあるソファに座って談笑しており、芝浦達はゲームで遊んでいるため、キリカの声を聞いたのは隣に座っている東條だけだった。

 

 

「死んだのに、お腹って空くのかな?」

 

「じゃあキミは今私が感じている空腹が嘘だって言うのか? そんな馬鹿な!」

 

 

だいたいココにきてから三食はきっちり食べているし。

キリカの言葉に東條は成る程と頷く。死んではみたものの、意外と生きている時と何も変わらないじゃないかと。

当然お腹も空くし、喉も渇く。マミやまどか曰く、ココは死後の世界なのだから時間の概念は無いらしいが、とりあえず分かりやすいという事で時計は置いてある。

今は午前9時だ。あ昼までにはもう少し時間があり、朝を食べていないキリカにとっては辛い時である。

 

 

「あぁ、もう……、お腹の皮と背中の皮がピッタンコだよ」

 

 

へなへなと萎んでいくキリカの声。

東條は読んでいた本から視線を外して彼女の方を見た。

 

 

「上の戸棚に、お菓子があるんじゃないかな?」

 

「え? ああ、そうかそうか」

 

 

マミからは部屋にある物は全て勝手に使って良いと言われている。

と言う事は、食べ物も勝手に食べていいのだろう。

キリカは椅子を棚の前に置いて、上に足を乗せた。

 

「えーっと……、お! あるじゃまいかあるじゃまいか!」

 

 

棚をゴソゴソと漁り始めるキリカ。

東條は再び読んでいた本に視線を戻す。

しかしそこで感じる人の気配。見れば、ゆまがコチラにやって来ている所だった。

どうやら彼女は東條がずっと読んでいた本が気になっていたらしい。

 

 

「どんなご本を読んでるの?」

 

 

柔らかい笑みを浮かべて東條の本を覗き込むゆま。

しかしすぐに彼女は複雑そうな表情でモゴモゴと。

 

 

「うぅ、文字ばっかり……!」

 

 

挿絵の一杯ある小説か、漫画かと思っていただけに、怯んでしまったようだ。

東條は怯むゆまを見て、ほんの少しだけ笑みを浮かべると、簡単に内容を説明してみせる。

何のことも無く、ただ普通に家族のために働いていた男が、ある朝目覚めると醜い虫に変身していたと言う話だ。

その虫を取り巻く人間模様を描いたお話らしく、東條はこの本を何度も読み返しているのだとか。

 

 

「酷いんだ、皆」

 

 

男は家族のために必死に働いていたのに、いざ男が醜い虫になれば冷たくなっていく。

意思疎通ができないのも原因だったろうが、周りの人は醜い虫を男ではなく醜い虫として扱う様になるとか、ならないとか。

 

 

「妹だってね。義務感だの使命感だので虫を守るけど、結局最後は自己満足だって気づくんだ」

 

 

そして結局、虫は虫として見られてしまう。東條は少し悲しげにそう言った。

小説と言うのは、人によって解釈の差や感想の違いが大きく出る。

この小説もまた例外ではないのだろうが、東條にとっては、なんともまあ救いの無い話に思えた。

 

 

「きっと周りの人は、男が変身したのが金の卵を産む鶏なら、人間の時よりも丁重に扱っていたと思うのに」

 

 

世の中だってそうだ。

個性を大切にしろと言う。人を差別するなと喚き散らす。

けれどもそれは、持っていない者が、自分の扱いを少しでも良くしようとする言い訳でしかないのかも。

当たり前の事だが、世界に好かれるのは、どれだけの時が流れても、能力のある者や、才能のある者。

持っている者だけだ。

 

でも、だからこそ希望はあった。

コレは醜い虫に変身したからこうなったのであって、もしも自分がプラスの者に変わる事ができたのならば、皆は掌を返して自分を認める筈なのだと。

 

 

(ああ、でももう意味なんて無いのか)

 

 

ココは死後の世界なのだから。

 

 

「キミには少し、難しい話かも」

 

「ふぅん」

 

 

少し虚ろな目で、東條はゆまに微笑みかけた。

そういえば本の作者は、この物語を喜劇と言っていたとか。

もしかしたら真面目に考える事そのものが間違っていたのかもしれない。

 

 

「チビ猫ちゃん、キミも何か食べるかい?」

 

 

そこで棚を漁っていたキリカがゆまに一言。

 

 

「あ、ゆまクッキーがいい!」

 

「オッケー、クッキーだね」

 

 

どうやら食べたいお菓子の選別も終わったようだ。

キリカは片手にお菓子の袋を三つほど抱えて椅子から降りようとする。

だがその時だ、ふいにキリカはバランスを崩して、よろけてしまった。

 

 

「うわわわわぁ!!」

 

「「!」」

 

 

手をバタつかせて必死にバランスを取ろうとするものの、よりにもよって後ろ向きに倒れてしまう。まずい! キリカは目をギュッと瞑って落下していった。

 

 

「!?」

 

 

しかし、彼女に襲い掛かるのは痛みや衝撃ではなく、ふんわりと何かに包まれる柔らかな感触だった。

目を開けると、キリカを守る様にして黄色いリボンがクッションの様に存在していた。

ポカンと固まるキリカ。辺りを見回すと、手を伸ばしている魔法少女姿のマミが。

 

 

「危なかったわね、呉さん」

 

「おぉ! 助かったよ黄色ちゃん」

 

 

飛び起きるキリカ。

マミがいなければ今頃頭を打って脳震盪で死んでいたとかいないとか。

いや、もう死んでいるのだからこれ以上酷くなる事は無いのだろうが、やはりそれは気分的な問題がどうたらこうたらと早口で語っていく。

 

 

「とにかくキミは恩人だ! 今日から恩人さんだ!!」

 

「そ、そう? うふふ」

 

 

そう言えばとマミ。

キリカはよく人にあだ名をつけて呼んでいる。

一人に色々なあだ名をつける場合もあるが、織莉子をあだ名で呼んでいるのは見たことが無い。

 

 

「当然だよ、織莉子は織莉子だもの」

 

「そ、そうなの……」

 

 

そもそも何故キリカがあだ名をつけるのか?

それは他人の名前を覚えていないからだ。

そもそも覚えようとも思わない。キリカは自分の脳みその容量はできるだけ織莉子の為に使いたいと思っている。

つまり織莉子に関係の無い事は覚えたくないのだ。

その最たる物が人の名前だと言う訳だ。

キリカがあだ名をつけるのは、名前を覚えるのが面倒だから、いっその事自分でつけてしまおうと言う訳である。

 

 

「え? じゃあもしかして俺の名前とか全然覚えてない訳?」

 

 

佐野が身を乗り出してアピールする。

最終的には裏切りだのなんだのと、グダグダになったものの、少しの間は一緒に戦った仲ではないかと。

すると顎に手をあててフムと唸るキリカ。

 

 

「いやだな、流石にキミは覚えているよ」

 

「なんだぁ、じゃあ――」

 

「山中茂男くんだろ?」

 

「いや誰だよ! 全然違うから! 一文字もあってねーな!!」

 

 

どうやら佐野の事もすっかり忘れているらしい。

いや、先ほども言うように、最初から覚えるつもりも無かったのだろう。

 

 

「あらあら」

 

 

笑うマミ。

しかし佐野はともかく、パートナーである東條は普通に呼んでいた様な。

 

 

「トージョーは相棒だからね」

 

「……キリカ」

 

 

嬉しそうに目を輝かせる東條だったが、その時だった、芝浦が口を開いたのは。

相変わらず人を小馬鹿にしたようにニヤついており、マミ達は直感的に察する。

コイツ、ろくな事を言わねーな。なんて事を。

 

 

「じゃあ呉。東條の下の名前なんだよ?」

 

「馬鹿にしないでくれ! 私と相棒の絆は織莉子の次に固いぞ!」

 

「キリカ……!」

 

「だろ? ヒデオ!」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり英雄でもない僕に生きる資格なんて無いんだ。誰も名前すら覚えてくれないんだものね。毒虫になる資格もなく、空虚な妄想にもなれず僕はやがて塵になるんだ。そもそもこの世に本当に価値のあるものなんて無いのかもしれない。そう考えればまだ生きやすいじゃないか。喜びも悲しみも何もなく、それは名前すらもなく、人は実は無であり、そうすれば僕の名前も無くて、なんと呼ばれてもそれは正解で、とにかく僕はそうした宇宙の――」

 

「ど、どうしたんだい? 相棒! 相棒!? あい……ッ! あいぼぉおおおおおお!!」

 

 

真っ白になって部屋の隅に蹲る東條。

それを見て芝浦はケラケラと笑っていた。どうやらキリカは織莉子以外の人間の苗字はギリギリ、下の名前は完全に脳みそからデリートしていたようだ。

体育座りでズッシリと落ち込む東條と、それを必死に慰めるキリカを見て、マミは頭を抑える。

 

 

「そうだ! どうかしら、一度みんなのあだ名を教えてくれない?」

 

 

流れを変える意味での言葉だったのだろう。

マミはキリカのあだ名を全員文知りたいと言った。

それくらいならとキリカ。彼女は東條にもう一度謝罪をすると、まずは順番にココにいるメンバーからあだ名を告げる。

 

 

「私は恩人……、でいいのかしら? 別にそれほど大したことはしていないのだけれど」

 

「もちろんそれでいいとも! 恩人は恩人さ!」

 

【巴マミ】【命名・恩人】

 

 

死後の世界で住まわせてもらっているのが彼女の家というのもポイントである。

と言う訳で巴マミのあだ名は恩人と言う事に決定したらしい。

キリカは次にマミの向かいにいた須藤を見る。

 

 

「で、君はデカ長ね」

 

「は、はぁ」【須藤雅史】【命名・デカ長】

 

次は隣にいる鹿目まどか。

なんで死んでいない彼女がココにいるのかは知らないが、まあそこは今はおいておこう。

既にまどかの事もキリカはあだ名で呼んでいるシーンがあったような。

 

 

「うん、そうだ。君は桃色ピンクだね!」

 

【鹿目まどか】【命名・桃色ピンク】

 

「も、桃色ピンク……」

 

 

汗を浮かべるまどか。そういえばなんだかデジャブの様な気も。

あれは確か一番初めにマミ達とやっていたマジカルガールズの決め台詞にあった様な。

まあ確かに自分の色は桃色なんだろうが、そんなに印象深い物なのだろうか?

なんだかちょっとエッチな意味の様な気がして――

 

いや、なんでもない。

 

 

「やめてくれよそんなにうれしそうな顔をするのは! 私が照れてしまう!」

 

「う、うん……! う、うれしーな! ウェヒヒヒ……」

 

 

まあキリカが満足しているならいいか。まどかはそれ以上何も言うことはなかった。

 

 

「織莉子さんはあだ名は無いのよね」

 

「当然だよ、織莉子は織莉子だもの。美国織莉子っていう最高の名前があるじゃないか!」

 

 

ハァハァと息を荒げるキリカ。

前々からなんとなくそんな気はしていたが、思った以上に結構ヤバイ人なのかもしれない。

あの騎士にしてこの魔法少女ありと言うべきなのかどうか。

 

 

「オーディンはちなみに?」

 

「カミジョーはカミジョーさ。織莉子のパートナーだから覚えられたんだよ!」

 

【上条恭介】【命名・カミジョー】

 

「ちなみに、下の名前は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よしお」

 

 

次は佐野とゆまである。上条の問題はもう放置した。

そもそもキリカは本能であだ名をつけているので、あれこれ考えると言うことはあまりしない。あだ名と言うのは大方が名前からであったり、または行動からであったり。

キリカもだいたいそんな感じである。

 

 

「キミ達はバイトくんに、チビ猫ちゃん!」

 

「あ、ああ」【佐野満】【命名・バイト君】

 

「ゆま猫好きー!」【千歳ゆま】【命名・チビ猫ちゃん】

 

 

織莉子に雇われていたからバイトくん。

猫を模した魔法少女の衣装だからチビ猫ちゃん。

まあ随分とストレートな物である。

そう、ストレート、つまりは単純なのだ。

そうしていると、キリカの事を鼻で笑う奴が現れる。

 

 

「くっだらね。要は名前も覚えられない馬鹿って事じゃん」

 

「………」

 

 

キリカは真顔で一言。

 

 

「お前、クソウ●コな」

 

「はぁあああ!?」【芝浦淳】【命名・クソ●ンコ】

 

 

キリカの主観によってあだ名は決まる訳で。

非常に悪意のあるあだ名を受け取った芝浦は、当然憤慨物である。

尤もマミや佐野はサムズアップをキリカに送っている訳だが。

 

 

「ちょっとふざけないでよ! なんで淳くんがそんなばっちぃ名前なのよ! だいたい●の場所違うでしょ●の場所! これじゃあ淳君がクソウン●ってバレバレじゃない! ●ソウンコって!」

 

「やめろあやせ! これ以上掘り下げるな!!」

 

 

ドン引きしている芝浦と、真っ赤になってキリカに抗議を行うあやせ。

キリカは当然イライラした様に表情を変える訳で。

 

 

「うっさいなゴスロリナルシスト!」

 

「なに!? なにそれ! 好きくない!!」【双樹姉妹】【命名・ゴスロリナルシスト】

 

 

あだ名がどの様になるのかはキリカの気分次第と言う訳だ。

当然、気分を害する様な事があれば、それだけ悪意が詰まった物へとあだ名は姿を変えていく。

そう、なんだか適当になっていくのだ。

 

 

「じゃあコイツは?」

 

 

佐野がリモコンのボタンを押すと、テレビのチャンネルがゲーム本編へと切り替わる。

はじめに映ったのは王蛇ペアの映像。唸るキリカ、こいつ等は織莉子の敵として今も舞台に存在している。

となれば当然、扱いも悪くなると言うか雑になると言うか。

 

 

「ヘビキチとゲス美だよこんな奴等」

 

【浅倉威】【命名・ヘビキチ】

 

【佐倉杏子】【命名・ゲス美ちゃん】

 

「そ、そう。じゃあ彼女達は?」

 

 

次に映ったのはリュウガペア。

キリカは鼻を鳴らしてユウリ達を睨む。

ユウリ達は織莉子を裏切り、多くの被害を生み出した者。

当然織莉子を愛するキリカからしてみれば煙たい存在だ。

 

 

「黒い人。露出狂」

 

「………」

 

【リュウガ】【命名・黒い人】

 

【ユウリ】【命名・露出狂】

 

 

ぞんざいに言い放つキリカ。

どんな人間にもちゃんとあだ名をつけるあたりまだマシなのか。

いやそれにしても適当すぎやしないだろうか? ゲス美だの露出狂ってもうあだ名と言うよりはただの悪口なんじゃ……。

 

あといくら何でもリュウガが適当すぎじゃないだろうか?

もうそれは、あだ名じゃなくてただの感想だ。

と、マミは思ったのだが、あだ名くらい本人の好きにすればいい様な気もする。

いや、それにしても酷過ぎる物がある様な気がするのだが。

 

 

「ん?」

 

 

順にあだ名をつけると言う流れの中、キリカの表情が変わる。

と言うのも次に画面に映った二人をキリカは知らない。

 

 

「誰コレ?」

 

「ああ、えっとね――」

 

 

するとマミが補足を。

ベルデペア、高見沢とニコはずっと他の参加者を避けていた為キリカ達が知らないのも無理は無い。

 

マミ達もゲームの様子を見れるテレビがなければ、彼らの存在を死して尚知る事は無かったろう。ニコに関してはキリカをココに送った張本人であるが、キリカがその事を知る由も無い。

 

 

「芋プレイヤーって事でしょ。まあいるとは思ってたけど、まんまとやられたよ、おれ」

 

「芋? 彼らは人間じゃないのかい?」

 

 

そんな訳無いだろと芝浦。

芋と言うのはゲーム用語のひとつで、その場から動かなずに敵をスナイプする者の事である。

まあベルデ達は動く事には動くのだから芋とは少し違うのかもしれないが、常に透明になって不意打ちの機会をうかがっている困った連中だ。

 

 

「ふぅん、じゃあポテトガールと芋男(いもお)でいいや」

 

【神那ニコ】【命名・ポテトガール】【高見沢逸郎】【命名・芋男】

 

「………」

 

 

本当に適当なんだな。

って言うかそれ絶対キリカ自身も数分後に忘れるパターンだろ。

そうは思えど、自分につけられたあだ名を思い出して芝浦は言葉を喉の奥へと引っ込める。

意外とショックだとは言えない。ウ●コに傷ついているとは口が裂けても言えない。芝浦はプライドの為に無言を貫いた。

それにしてもいくらなんでもウン●は酷過ぎるんじゃないだろうか?

 

 

「んー、じゃあ次は――」

 

 

チャンネルを操作する佐野。

今現在ゲームに参加している者たちが順番に映し出される。

その中で既に脱落した者たちの姿がそこにはあった。手塚海之、キリカは彼を見てうーんと唸る。

彼がいたから自分がココにいるような気がしなくも無い。

 

 

「でもクソウンコよりはぜんぜんマシだよね、占い師くんは」

 

「なんだよソレ!! つか隠せよ! モロ出しじゃねーか!!」

 

【手塚海之】【命名・占い師くん】

 

 

日ごろの行いの差と言うべきなのか。

キリカ曰く、ガイに殺されるのとライアに殺されるのなら金を払ってでもライアがいいと。

うなずく一同、吼える芝浦。こんなんだから自分たちはココにいるような気がしてならない。

 

 

「大丈夫だよ淳くん、わたしは淳くんにしか殺されたくないから♪」

 

「………」

 

 

なんだか話がズレて来ている様な。

っていうかあやせのフォローはフォローなのだろうか?

まあいい、次に映ったのは北岡だ。キリカは迷わず彼を弁護士くんと。職業が明確な人たちは楽でいいとキリカは笑う。

 

 

【北岡秀一】【命名・弁護士くん】

 

 

次に映ったのはナイトペアだ。

キリカはフムと顎に手を当てて。あだ名を考える事に。

しかし先ほどの相棒と言い、カミジョーと言い、どうにもキリカは下の名前を覚えるのが苦手らしい。

 

いくら織莉子以外の者を覚えたくないとは言え、織莉子からはいつも常識と礼儀を養う様にと言われたものだ。

よし、ここは一つ他人の名前とやらを覚えてみるか。

キリカはその旨をマミに伝えると、彼らのフルネームを聞く事に。

そして吟味、考えて考えた結果――

 

 

「カズミールと、ロン」

 

【かずみ】【命名・カズミール】【秋山蓮】【命名・ロン】

 

「………」

 

 

覚える気ねぇだろコイツ。

誰もがそう思っただろうが、キリカ本人はしっくりと来たのか、笑みを浮かべて何度か復唱していた。

どうやらそこそこ気に入ったらしい。

だから誰も何も言わない。と言うか、言っても意味なんて無いんじゃないだろうかと。

 

そんな中で映ったのは暁美ほむらだ。

キリカとしても、なかなか因縁深い相手(本人談)である。

と言うのもまず色が被ってる。

カラフルな魔法少女が蔓延る中で、何故イメージカラーが黒の魔法少女が三人もいるのか。

 

いやほむらは紫と白入ってるし、かずみは露出がすごいし、キリカは眼帯とか多少白も混じってると言えばそうなんだが。

だがやはりパッと見のイメージで言えば、もうそりゃ間違いなくモロ被りである。

さらに言えばなんか立ち位置も似ていると言うか何と言うか。

互いに友に尽くすと言うやり方は同調ともあれ、目的の違う自分たちにとってはお互いが非常に邪魔な存在になったものだ。

 

と言う事もあってか。

キリカの脳には、ほむらが非常に印象深く映っていた。

だからそれだけ名前も浮かぶというものだ。

 

 

「暁美――」

 

「お?」

 

「ぼむら」

 

(惜しい!)

 

【暁美ほむら】【命名・暁美ぼむら】

 

 

まあ爆弾使うから当たってると言えばそうなのだが。

 

 

「くっそう! もう少しでボムボムがこっちに来る筈だったのにぃ!」

 

「あの、暁美ほむら――」

 

「あんな奴ボムボムでいいよ! ちくしょう!!」

 

 

やっぱり覚える気は無いらしい。

あと残っているのは真司、美穂、サキ、さやかと言った所であろうか。

その三人は決戦の場でも言っていたような気がする。

真司は龍騎からドラゴンくん、美穂はファムから白鳥ちゃん、サキは自身のメインとする属性からビリビリちゃん。

 

 

「じゃあ残るは美樹さんだけね」

 

「美樹?」

 

「ええっと――」

 

 

マミはリモコンでテレビのチャンネルをさやかに合わせる。

キリカは、「ああ」と手をたたいて納得を。

 

 

「そいつはアイツか、アレでいいよ」

 

【美樹さやか】【命名】【アイツorアレ】

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしの扱い適当すぎるだろぉおおおおおおッッ!!」

 

「「!?」」

 

 

ベッドから飛び起きるさやか。

叫びながら跳ね上がったため、ビックリしたのか隣で寝ていたサキとほむらは汗を浮かべて視線を移した。

 

 

「ど、どうしたさやか!」

 

「え!? あ、ごめんサキさん。何か変な夢見ちゃって――ッ」

 

「夢?」

 

「そう。あ、でもどんな内容だったか忘れちゃったな。うがー! 気持ち悪い!!」

 

 

とにかくろくな夢じゃなかった!

そう言って頭を掻き毟るさやかを見て、二人は大変だなと思うしかできなかったそうな。

まあとにかくなんだ。人にあだ名をつける時は悪意を含ませるのは止めようと言う事なんだろう。

 

 

 

 

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