仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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Episode 5

 

 

 

Episode 5「人生ゲーム」

 

 

 

 

「うんしょ、うんしょ!」

 

「お、ゆまタソどうした~?」

 

 

リビングに入ってきたゆまは、大きな何かを抱えていた。

ニコは気になって何を運んでいるのかを聞いてみる。

すると、ゆまは嬉しそうに目を輝かせてそれをズイっと見せてきた。

 

 

「これ皆でやるんだー! ニコお姉ちゃんも一緒にしよーよ!」

 

「ニコたんって呼んでくれよ~。何々? ああ人生ゲームか」

 

 

なつかしいとニコ。

昔ちょろっとやった事はあるが、最新の物ともなると中々触れられないものだ。

っていうか何で死んでない筈の自分がココに来たのかはイマイチ分からないが、まあまどかと言う例もあるし、どうせ予定も無い。戯れに付き合うのもいいだろう。

メインカラー同じ緑色と言う事もあるし、ゆまには愛着が湧く物だ。

 

 

「おい、たかみぃもやろうぜ」

 

「あぁ? 俺ァは今忙しいんだよ」

 

 

カチャカチャカチャカチャと高見沢は、先ほどから知恵の輪を攻略するのに夢中だった。

ただし中々コレが難しいと言うか。玩具の分際で俺様を下に見やがってと、よく分からない対抗意識を燃やしていたわけだ。

 

 

「うっせーなガチャガチャカチャカチャ! 諦めろよジジイ!!」

 

 

そんなに解きてーならこうしてやるよ! ニコは変身してバールを振るう。

すると再生成の魔法が発動されて、高見沢が格闘していた知恵の輪の素材が一瞬にしてちくわに変わった。

 

 

「何してくれてんだテメーは!!」

 

「これで簡単になったろうが。さ、行こうぜゆまたん」

 

「うん! 行こー! ニコたん!」

 

 

手をつないでマミ達がいる所に向かう二人。

高見沢はフニャフニャになった知恵の輪を少し弄ってみる。

あ、ちぎれた。

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、人生ゲーム? 面白そうね」

 

「うん! やろうやろう!」

 

「おー、懐かしいなー」

 

 

ゆまが持ってきた人生ゲームに集まる一同。

やった事はあれど、一つのバージョンを買うと、他のバージョンを買うと言うのは無い。

そもそもそんな頻繁にやる物でも無いし。物珍しさから、みんな乗り気になっていく。

普段は下らないと鼻で笑いそうな芝浦達も、ゲームと言う言葉には弱いのか。

特に何も言う事はなかった。

 

その後もゆまの提案と言う事もあって、それぞれのペアで協力して戦う事に。

須藤は銀行役をやってくれると言うので、マミはまどかと組んではじめようと。

 

 

「お、そうだ。ただやるだけってのも悪くは無いけど……」

 

 

いい事を思いついた。

そう言って変身したニコは、バールを振るう。

すると人生ゲームが光り出し――

 

 

「「「!?」」」

 

 

ボンと煙を上げて爆発したかと思うと、一同のいる場所がマミの部屋から、見た事の無い景色へと変わったではないか。

いや待て。マミは気づく、自分とまどかが車に乗っているのを。

オープンカーで、本物ではない様だ。

これはもしや――

 

 

「私の魔法でリアルにしてみた」

 

「凄いわ! こんな事もできるのね!」

 

 

ニコは人生ゲームを固有結界の様に練成し、実際に体感できる様にゲームを作り変えた。

 

 

「マジかよ、他のゲームでもできんの!?」

 

 

芝浦は自分の乗っているグレーの車を見つめながらテンション高く周りを見回している。

 

 

「おう。ギャルゲでもアクションでもなんでもござれ」

 

「うっは! マジすっげ!!」

 

 

車を叩いてみる芝浦。質感はプラスチックか?

アクセルやブレーキは無い様だが、タイアはちゃんと別パーツとして付いているのを見ると回転する機能はありそうだ。

助手席では、あやせもハイテンション気味である。

 

 

「淳くん! これってランデブー!? ハネムーン!? とにかく愛の逃避行だよね!!」

 

「ウザい」

 

「ああん、突き放すのもうまいんだから☆」

 

 

ギャーギャーと騒ぐ二人を尻目に、シートに踏ん反りかえる高見沢。

黄緑色の車を見つめながら鼻を鳴らす。

 

 

「おいテメェ、そんな事できる力があるんなら、もっと本番の時に頑張れよ」

 

 

高見沢はしかめっ面で二本のちくわを再び一つにしようと格闘していた。

 

 

「戻る訳ねーだろ! 何やってんだ!!」

 

 

首を振るニコ。

ココまでの魔力はゲームでは出せなかったと。

どうやらこのマミの部屋は、どれだけ魔法を使ってもソウルジェムが汚れないらしい。

だからココまで大きな魔法を使うことが出来たのだ。

 

 

『みなさん、準備はいいですか?』

 

「わ! 空から須藤さんの声がする!」

 

 

銀行役の須藤は、結界の外からマミ達を観察している様だ。

須藤はまず、皆に最初に与えられる一万円を配った。

車の方へお金を当てると、振り込まれた事になり、車に現在の所持金額が刻まれる。

さらに白い車に乗っていたキリカと東條の上に、ルーレットが回転し始めた。

 

 

「おぉ! なんだコレ!?」

 

「止めれば、いいのかな?」

 

 

東條はハンドルの中央についているボタンを押してみる。

すると10の所で針が止まった。

同時に彼らの車が、文字がついている道路の上を走り出していく。

 

 

「すごいすごーい!」

 

 

はしゃぐゆまと、唸る一同。

本当によくできている物だ。高見沢もほほうと声を出してそれを見ていた。

確かによくできている、これを全部ニコがプログラミングしたのだろうか?

 

 

「まあそうだな。でも私がゲームマスターって訳じゃない」

 

 

このシステムと言う概念は構成したが、もちろんあくまでもシステムを作っただけだ。

シナリオはこの人生ゲームに依存すると。

早い話、止まったイベントを疑似体験できるシステムを作っただけで、中身までは把握していない。

東條たちが何のマスに止まるのかは知らないと。

 

 

「それにしても、いきなり10なんて凄いなぁ」

 

 

まどかの言葉で気分を良くしたのか、東條は少し嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「これで僕も英雄に近づけるのかな?」

 

「もっちろんさ相棒! さあ、どんな事が待っているのかなー!」

 

 

シートの上で飛び跳ねるキリカ。

二人は当然スタートから10マス進んだところで停止する。

人生ゲームは色々なイベントを経由して資産を増やすのが目的だ。

だいたいはお金が増えたり減ったりするイベントが多いのだが、果たしてどうなるのやら。

 

 

「んー、なになにー?」

 

 

車の大きさ故に、止まった所の文字は見えない。

故にカーナビの様に、車の中にモニターがついており、そこにイベントが表示された。

今回のイベントは――

 

 

『車が爆発。死ぬ☆ ゲームから除外される』

 

「へー! 爆発す……」

 

 

は?

二人の目が丸くなるのと同時に、車が光り輝き――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

 

 

「「うわあああああああああああああああああ」」

 

 

粉々に爆発する車と、空に飛んでいく東條とキリカ。

二人はそのまま見えなくなって、最後はキラリと光って終わった。

え? 固まる一同。なに、今の。

 

 

「「「………」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「どえええええええええええええええええええッッ!?」

 

「怖い怖い怖い! 何今の! 何で爆発したの!?」

 

 

混乱に叫ぶ一同。

一方で――

 

 

「ぐへぇ!!」

 

「ごっぷ!」

 

「!?」

 

 

目を見開く須藤。

ボードゲームから排出される様に東條とキリカが飛び出てきたかと思えば、東條は焦げ焦げだし、キリカに至っては元の毛量からは考えられない程のアフロになっている。

 

 

「な、何があったんですか二人とも!!」

 

 

須藤はユッサユッサと二人を揺らし、話を聞こうとする。

しかし怪我はしていない様だが、衝撃が凄かったのか。

東條は完全に目を回しており、話を聞ける状態ではなかった。

キリカは、かろうじて意識があったのか。プルプルと手を伸ばして人生ゲームを指差す。

 

 

「ば、爆発……ッ!」

 

「爆発!?」

 

「――ガクッ」

 

「呉さん!? く……ッ、呉さぁああああん!!」

 

 

須藤はふと、横に転がしてあった人生ゲームのパッケージを確認する。

そこには『鬼辛! 荒波もまれまもれてもみくちゃ2014』と書かれた箱が。

まどか達視点でも、須藤の叫びが空に響き渡る。

 

何? 最近の人生ゲームって参加者死ぬの?

ッて言うか途中で一人減るシステムって気まずくならないの!?

そんなザワつきが起こり、ゆまはガクガクと震え始める。

どうする? やめるか? そんな雰囲気が起こりつつある中で、ニコは声を上げた。

 

 

「すまん! 途中で抜けられんわ」

 

「な、なんでだよ!?」

 

「そういう設定にしちった」

 

「何考えてんだよ!!」

 

 

吼える芝浦をジットリとした目で見ながら、ニコは耳を塞ぐ。

どうせなら全員で最後までやれた方がいいじゃないかと。途中で飽きてやめるヤツがいたら白けるし。

 

 

「特にコイツとか」

 

 

ニコは高見沢を指差す。

 

 

「んだぁ? 俺のせいかよ。ったく」

 

 

丁度その時、ニコたちにルーレットが回ってきた。

高見沢は気ダルそうに起き上がると、二つのちくわを投げ捨てボタンを叩くように押した。

出たのは9。ギリギリじゃねーか! ニコはヒヤリとするのだが、高見沢は笑みを浮かべる。

 

 

「どんな人生だろうが、勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあ」

 

 

発進する車。

進んだ先のイベントが表示される。

なんだ? 死ぬ? 死ぬのか? ニコは薄目を開けて、表示された内容を確認する。

 

 

『かまぼこ事業の開発に成功! 一万円を手に入れる』

 

「おお!」

 

「また練り物かよ!」

 

 

頭上から降ってくる大量のかまぼこ。と、同時に増える資産額。

そうだ、勝てばいい。所詮はゲーム、何を怯える必要があるのか。

高見沢はニヤリと笑うと、親指で自分を指し示す。

 

 

「追ってこい、ガキ共!」

 

「ふーん、面白いじゃん」

 

 

芝浦もまたその挑発じみた言葉に笑みを浮かべる。

さっきはちょっと、いきなりの事で怯んだが、よく考えてみれば所詮はゲーム。

いや、されどゲーム。その名がついている限り自分は負けない。

 

 

「そうだ、おれはゲームなら負けた事が無いんだよ!」

 

「――ねえ、淳君ってば!!」

 

「あ?」

 

「酷いよぉ、さっきから呼んでるのにぃ!」

 

「え? ああ、悪い悪い。なんだよ」

 

「あのね、怒らない?」

 

「はぁ? なんだよまどろっこしーな!」

 

「あのね、実はね――」

 

 

あやせはモジモジと体をくねらせる。

なんなんだ。芝浦は怒らないから言ってみろと。

すると、あやせは笑顔になって大きく頷いた。

 

 

「さっきね、ルーレット止めるボタン押したの♪」

 

「………」

 

「そしたら10出しちゃった! えへっ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ女ァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「う゛え゛ぇえ゛ん゛! 怒らないって言ったのにぃぃぃいいぃぃいッッ!!」

 

 

爆煙と共に吹き飛んでいく芝浦とあやせ。

星になっていく二人を、まどか達はガクガクと震えながら見つめていた。

同時にまどかの頭上に回転しはじめるルーレット。

 

 

「うぇひぃぃ! ど、どうしようマミさん!」

 

「お、落ち着いて鹿目さん! 私は何が出ても覚悟を決めているから! 貴女を責めないから!」

 

 

まどかは頷き、震える指でボタンを押す。

すると出たのは6である。

やったやったと手を繋いで喜び合う二人、ピンクの車は6マス分進み――

 

 

『道路にバネが! スタートに戻る』

 

「「なんなのソレぇええええええええええ!!」」

 

 

バヨヨーン。

ファンシーな音を立てるが、そのマスからスタート地点に戻されると言う雑な扱いだ。

車が地面に激突し、マミとまどかは濁点交じりのうめき声を上げて、もだえ苦しむ。

 

 

「け、結構衝撃あるのね……」

 

「フラフラしゅるよマミしゃん……」

 

 

その様子を見て、再び高見沢はシートにふんぞり返って一同を鼻で笑った。

なんだなんだと。どいつもコイツも歯ごたえが無い。

と、思っていたが――!

 

 

「社長ォ! ナメてもらっちゃ困りますね」

 

「!」

 

 

高見沢が後ろを振り向くと、そこには一マス遅れで張り付いてきた佐野とゆまが。

ニヤリと笑う高見沢。面白いじゃないかと。

ゆまも鼻をフンと鳴らしてガッツポーズを。

 

 

「さーてイベントはなんだ~?」

 

 

モニターに表示されるイベントの内容は――

 

 

『宇宙人にお金を七億円、おまけで一万盗まれる』

 

「桁おかしいだろ! クソゲーかよ!! プラスの時と落差激しすぎるだろちくしょぉおがぁあッッ! だいたいなんだよおまけで一万って! 七億で十分だろうが、まだ毟り取るのかよ!」

 

「佐野ちゃん元気いっぱいだね!」

 

「いやいや笑ってる場合じゃないんだよ! ゆまちゃん! 俺ら借金七億円だからね? だいたい盗まれたのに何で借金しねーといけねーんだよクソッ!!」

 

「ありゃー、ゆまタソ終わったな」

 

 

次にルーレットが出てくるのはニコ達。そこでチラリと前の景色を見る。

どうやら職業が決められる所まで来たらしい。

定期的にある給料マスを通過すれば、職種ごとのお金がもらえるのだ。

 

 

「ハッ、一会社を統べる俺が今更転職か」

 

 

ルーレットボタンを押す高見沢。

すると10の文字が叩き出される。

 

 

「流石は俺」

 

 

笑う高見沢だが、唸るニコ。

 

 

「このゲームは職種が10個だから、ルーレットの10を出したら、その職業に決めなきゃいけない」

 

「じゃあそれにすりゃいい。ギリギリなんだ。一番いい政治家とかだろ」

 

 

マスに止まる車。

書いてあった職業は――

 

 

『ヒヨコのオスメス判別士』

 

「「………」」

 

 

二分後

 

 

「だあああ! クソッ! こいつらなんだってこんなに同じ顔なんだよ!!」

 

 

ピヨピヨピヨピヨピヨ!

 

 

「だりー、まじだりー! もう適当に分けちゃってるわー」

 

 

ピヨピヨピヨピヨピヨ!

 

 

「ふざけんなよ! ちゃんとしねぇとこのイベント終わらねぇんだぞ!!」

 

 

ピヨピヨピヨピヨピヨ!

 

 

「あのー、まだですかー?」

 

 

ピヨピヨピヨピヨピヨ!

 

 

「仕方ないだろ! って言うか何なんだよこの職業はッッ!」

 

 

イライラしたように叫ぶ高見沢。

結局それから五分以上経過した後に、やっと仕事が終了する。

なんだってゲームでこんな疲れないといけないのか。

ぐったりとしているニコの頭の上には、ナメくさった様にヒヨコ様が鎮座なさっている。

 

ここでルーレットが回転し始めるまどか達。

やっと出番がまわってきた。

二人は笑みを浮かべてボタンを押す。

 

 

『6』

 

「「………」」

 

 

バネの音が無音の空間には良く響いた。

誰もが無言だったのは、何と声をかけていいのか分からなかったからだろう。

マネキンの様に無言、無表情の二人を乗せながら、空から振ってくるピンクの車。

スタート地点に戻る際の衝撃から漏れる濁点交じりの唸りが、より一層哀愁を漂わせていた。

 

 

「さ、さあ俺たちの番だな」

 

「がんばって返せよー、七億」

 

「うるっさいなニコちゃん! 俺たちも職業決められそうだから、それで――」

 

 

ルーレットを押すゆま。

職業がどうのこうのと言う話を聞いていたようだ。

ゆまは嬉しそうに目を輝かせている。

 

 

「ゆま、お花屋さんになりたい。佐野ちゃんは何してる人なの?」

 

「う゛ッ!」(無職とは言えない!)

 

 

キラキラと目を輝かせるゆまから目を逸らす佐野。

そして考えた結果――

 

 

「ひ、ヒーローかな」

 

「すっごーい!」

 

「すごいなヒーロー(無職)」

 

「さっさと進めヒーロー(借金七億)」

 

「黙ってろ前の緑ペア!!」

 

 

職業マスにたどり着く佐野たち。

記載されていた職業は――

 

 

『自宅警備員』

 

「なんなんだよそれはぁああああッッ!!」

 

 

職業じゃねーだろソレ! もらえる金額もゼロだし!

佐野は飛来して来るカードを、蹴りで跳ね飛ばす。

 

 

「他に何かもっとマシなものは無いのかよ!」

 

 

佐野が空に叫ぶと、須藤の声が跳ね返ってきた。

 

 

『残りのマスは金魚のオスメス判別士、鮭のオスメス判別士がありますが――』

 

「なんで全部オスメス決める奴しかないんすか! もっと他に普通のポピュラーな奴ないの!?」

 

『な、ないみたいですね。変わった人生ゲームだ』

 

「ぐぐぐっ!」

 

 

どうする? いやどうするっておかしいな。

ここで決めても無職のまま職業マスを出る事になるんだから。

可能性は低くても、金を稼げる物に活路を見出さなければ。

たださえ借金七億あるのに。ッて言うか何でこんなクソゲーまじめにやってんだ俺は――……。

そうしていると、ニコ達の番になる。

 

 

「お! 高みぃ。脱落した奴を復活させられるらしいぞ」

 

「あん?」

 

 

次にニコ達が止まったマスは、他の参加者を復活させられると言うもの。

しかもそのお礼に五万円がもらえるとか。

それは良い事だが、誰を復活させるのかと言う話になる。

 

 

「まあ最初に吹き飛んだ奴でいいだろ」

 

 

ボタンを押すと、スタート地点にキリカと東條が舞い戻ってくる。

これでプラス五万、ちょろいモンだぜ。

高見沢は余裕の笑みを浮かべて、ターンを終了させた。

 

 

「うおおおおお! 相棒ぉお! 戻ってきたぞおぉお!!」

 

「うん、さっきは本当に酷かったよね、ここから頑張ろう!!」

 

 

何にも出来ずに終わった二人は、戻ってこれた事でテンションを取り戻したらしい。

次こそはと意気込みを語り、ルーレットのボタンを強く叩き押す。

出た目は10! なんとも好調な出だしだ!

 

 

「行くぜ相棒! 爆進だぁああッ!!」

 

「あれ? キリカ、10って確か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

 

 

「ボンバァアアアアアアアアアアアア!!」

 

「うわぁあああああああああああああ!!」

 

「「………」」

 

 

黒焦げで吹き飛んでいく二人を見つめながら、まどか達はつくづく思う。

あの二人、何しに戻ってきたんだろう……?

そんな事を思っていると、次はまどか達の番な訳で。

 

 

「あ、マミさんルーレット出てきたよ!」

 

「か、鹿目さん! これは本当に注意して押しましょう」

 

 

スタート地点で二人は大きく息を吐いてルーレットを凝視する。

目押しできる速さではないが、ここに至るまで何もしてない。

って言うかいる意味が無いって言うか。なんていうか。

とにかく6か10以外を出せば、まだ活路はある。二人は頷くと、同時にボタンをタッチした。

 

 

『6』

 

「嘘ぉ……ちょっと――ッ、えぇ……?」

 

 

バヨヨーン。間抜けなバネの音と共に、まどか達の車が空高く跳んでいった。

逆に恥ずかしい。まどかとマミは顔を覆ってスタート地点に舞い戻る。

見ないで! 彼女たちの叫びを聞いて、ニコ達は無言で目を逸らした。

 

 

「やっぱりそんな大人の優しさなんていらない!」

 

 

マミの悲痛な叫びがフィールドには悲しく木霊していた。

 

 

「くそ、こうなったら他の職業でもいいから、とにかく金を稼ぎたい!」

 

 

次の番。

佐野はルーレットを回すが――

 

 

「だぁぁあ! 職業マス抜けちゃった!」

 

「はい、ニート決定ぇえ、佐野ちゃん乙」

 

「ニートなのかよ! せめてフリーターとかで金もらえないの!?」

 

 

しかも止まったマスが。

 

 

『お酒で気分がよくなった。他の人にお金を配る! 六億円失う』

 

「ふざけんなよ!! なんで借金してんのに金他人に配るんだよ! しかも桁、桁おかしいだろ!!」

 

「佐野ちゃん……、人生って厳しいね――ッ」

 

「おい借金13億しっかりしろよー、ゆまたん涙目じゃねぇか~」

 

「こんなの人生でもなんでも無いって! 俺は絶対に認めないぞぉおおッ!!」

 

 

そうしていると既にルーレットを回していたニコ達は、家が買えるゾーンまでやってきた様だ。

収入や現在の所持金に応じた家が買えるらしい。

 

 

「おうおう、高級マンションだってよ」

 

「まあ当然だな」

 

 

金を扇子の様にしながら笑みを浮かべるベルデペア。

佐野達は歯軋り交じりにそれを見つめている。

そして次のプレイヤーは――

 

 

「鹿目さんもう駄目なのよ! 私達は何を出しても6になる呪いをかけられているのよ! そうよそうに違いないわ……!」

 

「そ、そんな事ないですよマミさん。今度こそ違う数字出ますって!」

 

「嘘よ、ウソウソ! 私達は結局孤独な魔法少女! 皆でボードゲームなんて夢のまた夢だったのよぉぉぉ!」

 

「………」

 

 

スレたなぁ。

ニコは汗を浮かべてマミ達を遠くに見つめる。まあ仕方ないちゃ仕方ない。

しかしまどかの必死な説得により、なんとか落ち着きを取り戻すマミ。

気まずさ的な意味でも、頼むから6以外が出てくれと祈りを。

 

 

「――ッ」

 

 

回るルーレット。

マミとまどかは不安げな表情でボタンに指を乗せる。

 

 

「6が出たら私もう駄目かも……」

 

「信じましょう! マミさん!!」

 

 

ボタンを押す二人。

ギュッと目を瞑る二人、もう戻りたくない!

どんな事でもいいからせめて人生を少しでも歩みたいと。

すると――

 

 

『3』

 

「「!!」」

 

 

マミとまどかは言葉を失い、少し涙を浮かべて手を取り合う。

 

 

「嘘じゃないのね、鹿目さん!」

 

「夢じゃないんですよマミさん!!」

 

「やった! やっと進む事が出来るのね!!」

 

 

動き出す車。すると――

 

 

『飛行機に乗って移動! 30マス進む!』

 

「「!!」」

 

 

パァァっと明るくなる二人の表情。

これには佐野達も、おおと息を呑んで飛行機に変わる車を見ていた。

飛び立つまどか達。二人は笑顔のままに一気に移動していく。

そして到着したマスには『長旅ご苦労様』と言う文字と――

 

 

『世の中そんなにうまくはいかない。財布を忘れた、スタートに戻る』

 

「「………」」

 

 

は?

 

 

「「「………」」」

 

「いいなぁ、飛行機、ゆまも乗りたいなぁ」

 

 

死人の様な表情の二人を乗せて、飛行機はスタートに舞い戻ってく。

要するにただ単にスタートに戻るイベントだったと言う訳だ。

と言うか最初のサイコロ鬼畜過ぎやしないだろうか。

 

 

「……鹿目さん」

 

「はい……」

 

「戻ってきたわね」

 

「はい……」

 

 

マミは顔を抑えてプルプルと震えている。

そして――

 

 

「進めないなら、他の人を倒すしかないじゃない!!」

 

「お、おちついてくださいマミさんッ!」

 

 

マスケット銃を構えてニコ達を狙うマミを、まどかは必死に抑える。

その後も格差と言うべきなのか、運命の悪戯と言うのは続々と続いていった。

佐野たちの番になり、家を買うという事になるが、当然借金を抱える状態で家など買える訳も無く――

 

 

「これ、何?」

 

「金が無い、お前らの家」

 

 

佐野の前には土管が一個置いてあるだけだった。

 

 

「これ家じゃねーだろ! かろうじて雨が避けれる程度の物じゃねーか!」

 

「うるせーな、これだから金の無い奴は困る」

 

「!?」

 

 

高見沢はシャンパン。

ニコはシャンメリーが入ったグラスを持って、やれやれと首を振っていた。

 

 

「どっから出したんだ!」

 

 

吼える佐野を尻目に二人は尚もグイグイと進んでいく。

 

 

「やっぱ人間、金ねーと駄目だな。心まで貧しくなる」

 

「そうだ。施しを与えられるだけの余裕があれば、心も豊かになる」

 

 

やはり人間には生まれもった何かがあるのか。それからも落差は大きく深くなっていく。

高見沢とニコはプラスイベントばかりに止まり、佐野とゆまはマイナスイベントばかりに止まっていく。

例えば前者は――

 

 

『金貨を掘り当てる。五億円プラス』

 

「おっほ! 見ろよたかみぃ視界全部金色だぜ」

 

『株でもうける5000万プラス』

 

「まあ当然だな」

 

『犬が地面を示して吼えた。掘ってみると埋蔵金が! 二億円プラス』

 

 

等々順調も順調に進む訳だが、後者は――

 

 

『金をバラまいてみる。二億失う』

 

「だから金ねーのに、なんでバラ撒けるんだよ!!」

 

『なんとなく6億円で島買ってみる』

 

「うぅぅ、ゆまお人形の方が欲しかったぁ!」

 

『競馬で敗北。5000万失う』

 

「働けよオレッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『6』

 

 

一方、なんだかんだと進む二組を見つめながら、バネの音だけが悲しく木霊していた。

そしてゴール前。実質二組での戦いとなった今、結果は明白な物である。

高見沢達の所持金は25億。そして佐野たちの借金は5京ちょいである。

 

 

「日本の国家予算でも返せないぞ~」

 

「宝くじ一等当てても絶望だな」

 

 

いつの間にか煌びやかなスーツとドレスを身に纏っていたベルデペア。

対して佐野とゆまはボロボロの補修だらけの布切れみたいな服を着ており、何故かゆまに至っては咳き込んで衰弱している様だった。

 

 

「佐野ちゃん……。もう、駄目」

 

「ゆま、諦めんなよ! 諦めたら終わりだぞ!!」

 

「でも、もうゴール目の前だし……」

 

「お、おい! しっかりしろ!!」

 

「結局、人生なんて生まれた時点で勝つ人と負ける人が決まってるんだよね……」

 

「小学生がそんなこと悟っちゃ駄目だって!!」

 

「がんばっても、駄目な人は駄目なんだよね……!」

 

 

涙目になって咳き込むゆま。

前を見るとゴール手前のマスに止まるベルデペアが。

すると彼らの上から金が降ってくる。

 

それを見てゆまは涙目に。

確かに向こうはゴールまであと一マス。

コチラは次のターンでこの状況を覆さないといけないのだ。

できる訳が無い! と言うか、そもそもスタートから一歩も動いて無いマミ達にすら負けるって何なんだコレ!

 

 

「いや、まあでも。確かにそうかもしれないけど。自分が折れたらそれこそ終わりだぞ!」

 

 

本人がその貧しさを自覚した時が本当の終わりだ!

最後まで自分は『望む自分』でなければならない。

それを聞くと、ゆまは複雑な表情で再び体を起こして前を見る。

諦めたくはないが、今更できる事も何も無いではないか。

 

 

「あ……」

 

 

ゆまの前に、横断歩道を杖をついてフラフラと歩いている老人の姿が見えた。

朦朧とする意識の中、ゆまは佐野の言った言葉を思い出して唇を噛む。

望む自分。彼女は頷くと、車から降りて老人を助けに向かった。

 

 

「な、なにしにいくんだ?」

 

「おじいちゃん、困ってる……。ゆま、困ってる人助けなさいって幼稚園で教わったもん」

 

「おー、偉いなゆまたん。でも人を助ける前に金返す努力をしたほうがいいと思うけど」

 

 

人助けは結構だが、自分が助かってないんじゃ仕方ないと。

 

 

「うるさいな! チッ!」

 

 

佐野も頭をかいて車を降りてゆまの方へ。

なんのギミックかは知らないし、所詮ゲームが生み出したNPCなんだろうが、ゆまがそうすると言うのならば仕方ない。

佐野も車を降りてゆまを手伝いに。

 

 

「大丈夫? おじいちゃん」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

お礼を言い合い分かれる両者。

ゆまは車に乗ると、少し目に光を取り戻して強く頷く。

そして叩くルーレット、心が折れれば負けは決定してしまう。

しかし逆を言えば、心が折れなければ希望は死んでいないのでは?

 

人に優しく、そんな正しい自分でありたい。たとえそれがゲームの中であったとしてもだ。

マイナスイベントだらけで心が荒んでしまったとしても、たとえ生まれ変わっても返しきれない借金を背負ったとしても、最後まで自分は自分でありたいと願う心。

二人はゴール手前、ニコ達の後ろで停止する。

 

 

「老いぼれジジイなんざ助けて何になる。また借金が増えて終わりだ」

 

 

高見沢は勝利を確信して笑みを浮かべた。

一方でゆま達のマスに書いてあったのは――

 

 

『困っているお年寄りを助けた。するとその人は神様だった!』

 

「「!」」

 

 

二人の前に先ほど助けた老人が現れる。そして――

 

 

『現在一位のプレイヤーと資産を入れ替える』

 

「「はぁあ!?」」

 

 

光が放たれたかと思うと、ニコ達の所持資産を現していたメーターがとんでもない勢いで減っていき、あっと言う間にマイナスに。

一方で逆に佐野たちはあっという間にプラスへと。

 

 

「ざけんなよ! どんなクソゲーだよココまできて! 今までの何だったんだよ!」

 

「うおおおおおおおお! やった、やったぞゆまちゃん!!」

 

「うん! やったね佐野ちゃん!」

 

 

手を取り合う二人を見つめながらニコ達は絶句して汗を浮かべていた。

ニコ達はすぐ目の前がゴールなのだから、今更何をしようができる事は無い。

まして佐野たちが次に1を出したところでプラスイベントなのだから、向こうにマイナスは無い。

と言う事はだ、このゲームは――

 

 

「オレ達の勝ちだーッ!」

 

「わーい! やったぁ!」

 

「……ッ」

 

 

なんでだ。あんな訳の分からないマス一つで形成が逆転された。

金に塗れきった人生の自分たちが、金とは縁の無い奴らに負ける。

こんな事があるのか。ニコはゴクリと喉を鳴らしてゴールを通過する。

 

 

「ゆまちゃん、最後に良い事したからきっと神様が分かってくれたんだよ」

 

「そうね、最後まで何が起こるかわからないのが人生だもの」

 

 

どんな苦痛に塗れていると思っても、意外とその後にはすごく良い事が待っているかもしれない。

今のは極端かもしれないが、これは現実の世界にも言えることだ。

どんな人間であろうとも――

 

いや、様々な人間がいるからこそ、一人一人の人生がある。

何が起こるか分からない。だからこそ面白いのかもしれないと。

良い事をすれば神様が見ていてくれる。

そんなゆまの想いが、呼応したのかもしれない。

 

 

「最後まで何が起こるか分からないから、人生は面白いのよ!」

 

 

そう言って胸を張るマミ。

 

 

「―――」

 

 

ニコはその言葉を聞いて、再び喜び合っているゆま達に目を向けた。

 

 

「何が起こるか分からないのが人生か……」

 

 

成る程。

何か大切な事を教えてもらった気がする。

険しい状況であろうとも、人に優しくできる心があれば、いつかそれが報われるかもしれない。

それが、可能性の力。

 

 

「………」

 

 

笑顔のゆまを見るのも悪くは無いか。

とは言えど、ニコは高見沢にしか聞こえない音量で一言。

 

 

「いや、人生語ろうって言っても、私らもう死んでるじゃん」

 

「………」

 

「しかもマミ達に至ってはスタートから動いてないし。つかこれクソゲー掴まされただけじゃね?」

 

 

引きつった笑みを浮かべているニコの隣で、高見沢は汗を浮かべながらタバコに火をつけていた。

 

 

「お前それ絶対周りに言うなよ」

 

 

集団で生きるには、時に絶対に読まなければならない空気があるもんだ。

高見沢の言葉は、ゆま達の笑い声が響く世界では、ニコの心に良く響いた。

 

 

 

 

 

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