仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
Episode 7「ケンカ」
「マミさん! 大変大変!」
「あら、どうしたの?」
ベランダで須藤と紅茶を飲んでいたマミの元へ、まどかが血相を変えてやってくる。
なんでも新たにやって来たユウリと杏子がケンカをしているとか。
リュウガが真司の鏡像と言う事で一人の参加者とは認識されず、結果ユウリ一人でココにやってきたのだ。
そして今、そのユウリと杏子がケンカしているらしい。
元々ゲーム内では何度も衝突していた二人だ、それが抜けきれていないのだろうか?
「やれやれ、困ったわね」
マミが現場に向かうと、そこにはルカと東條に止められている二人が。
「ぐぎぎぎぎ! さっさとコレ解除しろぉお!」
「駄目だ」
「お前もだよ英雄野郎!」
「僕はまだ英雄じゃないよ」
ルカが杏子を凍らせ。タイガがユウリをフリーズベントによって停止させる。
どうやらカードや魔法もココ仕様になっているらしい。
本来、人は止められないフリーズベントでも、ユウリはピッタリと止まっているじゃないか。
「ああ、マミちゃん、須藤さん」
「佐野さん、どうしたの?」
「いや、実は――」
二人がケンカしている訳だが、その理由はと言うと――
「巴ェエ! この畜生がアタシ様のプリンを食べたんだよぉお!」
「食べてねぇッつってんだろうが! しつこいなお前は!!」
「………」
くっだらねぇ。
マミだけでなく、他の誰もが思ったことだろう。
プリンって、少し前まで本気で殺し合ってた二人が今更プリンって……。
「新しく用意するから、それでいいじゃない」
「いいや良くないね! 問題はこのクソ女がアタシのプリンを食べた事にあるのだ!」
「だから食ってねぇって言ってるだろうが! 本当に分からない奴だな!」
「この前の芋羊羹の時も同じ事言ってただろうが!!」
「あれは嘘だったんだよ! あれは食った。でも今回は食ってねぇ!」
「うるさいうるさい! 今更信じられるか!」
「んだとぉおお!」
「「グルルルルル!!」」
マミは大きなため息をつく。
まったく、どちらかが大人になれば済む話しなのだが、この二人にとっては中々そうはいかない物だ。
杏子も杏子でユウリにちょっかいを出すし、ユウリもユウリで杏子にちょっかいを。
今回もどちらが悪いとは言えないが、むしろ両方の日ごろの行いが齎した結果と言えば良いのか。
「巴さんの言う通りだよ。プリンくらいでケンカなんて、英雄ならとてもしない事だし……」
「別にアタシ英雄目指してませんからぁ! 関係無い部外者は引っ込んでて下さるゥ?」
「むしろプリンくらいってプリンを馬鹿にしてんのか? アァ!? そんなんだからアンタは何時までたっても凡なんだよ! カスザコが!!」
「………」
「ぅうぅぅうう!!」
「ああ! 泣かないでくれ相棒! 君が無くと私まで涙がナイアガラだよ!!」
東條は変身を解除して、バルコニーで声を押し殺して泣きじゃくる。
キリカが慰めているが受けた心の傷は大きい。
あの二人、一を言えば十が返ってくる程の凶悪さだ。特にピリついている今は。
「もう! 東條さんに後で謝りなさいよ二人とも!」
「コイツがアタシ様のプリンを食わなきゃ東條にも当たる事は無かったんだけどなーッッ!!」
「だぁぁからぁ! 食ってねぇって言ってるだろッ!」
「芋羊羹もマスクメロンもティラミスも全部お前だったろうがァァ!」
「いや、だからその時は嘘ついて食べたけど、今回はマジで違うっての!」
(前は嘘ついて食べたんだ……)
そこで咳払いが聞える。
見ればルカが二人の間に割り入っていた。
どうやら彼女もこの無限に続くと思われる応酬に呆れが来たらしい。
「お前ら、食べ物で争うのは浅ましいぞ」
「うるさいなド貧乳! プリンより固そうな胸しやがって!」
「お姉ちゃんにちょっとは栄養分けてもらうんだなー!」
「………」
ブチッ! そんな音が聞えた気がする。
そして一同の目の前に氷付けになった杏子とユウリが。
「……フン! これは魔法であえてサイズを変えているのだ。あえてだ。あえてだぞ」
「良くやってくれたわ双樹さん」
「気にしないでください。後は頼みましたよ巴マミ」
怒りのマークを浮かべて踵を返すルカ。
マミはカチコチに固まっている二人を見て、もう一度大きなため息を。
とりあえず溶けるまで待つしかないか。
「恩人、カキ氷つくってもいいかな?」
「お腹壊しそうだから止めておきなさい」
訝しげな表情を浮かべたキリカと東條に挟まれ、マミはどうしたものかと考える。
この氷が溶けた後の景色が容易に想像できた。
どうせまた喧嘩が始まるに決まっている。
「どうするんだい恩人。もう相棒のライフはゼロだよ。これ以上何か言われたらシクシクエンエンさ」
「そうだよ。僕もう、馬鹿にされたくないよぉ……」
「そうねぇ」
困ったように眉を曲げるマミ。
昔使った手が今でも使えるといいのだが――
「「!」」
ハッと気づいた杏子とユウリ。
なんだか記憶が抜け落ちているし。何故かビショ濡れだが、とにかく目の前には敵が!
再び燃え上がる闘志。ユウリと杏子は、それぞれを睨んで再び罵倒の言葉をぶつけようとするのだが――!
「はいはい、二人とも一旦休憩しておやつにしましょう」
「「!!」」
二人の前にはメイプルシロップがたっぷりかかったパンケーキが置いてある。
ゴクリと喉を鳴らす杏子とユウリ。
横目にギロリと双方を見つつも、視線はすぐにパンケーキへと移る。
「仲直りするんなら食べてもいいわよ」
「なっ!」
「……っ」
絶句して沈黙する二人。
しばらくはそのままどうしていいか分からず固まっていたが、やがて汗を浮かべて険しい表情をしていた杏子が大きな舌打ちを。
どうやら葛藤の末に屈辱の選択をやむなく選ぶようだ。
「ゆ、ユウリ……」
「な、なんだよ……」
「分かってるだろ……! 目の前にあんなに美味そうなパンケーキがあるんだぞ!」
「グッ!」
どうやらユウリも食には興味がある性格の様だ。
目の前のパンケーキを見てもう一度ゴクリと喉を鳴らす。
そして歯を食いしばり――
「な、仲直り……、するか」
「あ、ああ……!」
(子供……)
形だけの握手をしながらもニヘラと笑いあう二人。
マミは安堵と呆れを混ぜた様な笑みを浮かべて、二人に体を拭くのと、手を洗ってくる様にと促す。
乾いた笑みを浮かべながら洗面所へと移動していく杏子達を見ながら、キリカはほほうと賞賛の声を。
「ひゃるはないひゃ、ほんひん(やるじゃないか恩人)!」
「呉さん、詰め込みすぎ……」
口の周りを汚しつつ、ハムスターが如く頬をパンっパンに膨らませながらキリカはさらにパンケーキを口の中に入れていた。
あれだけ、いがみ合っていた二人が、ピタリと言い争いを止めて洗面所へと向かっていった。
こっそりと後をつけるマミ。そこにはタオルで体を凄まじい勢いでゴシゴシと拭いている杏子たちがいた。
「まあ、なんだ……、その、悪かったな」
「いや――ッ、いいんだよ。アタシこそゴメン、おとなげ無かったな」
ココは一つパンケーキもある事だし、水に流そうじゃないかと。
マミはその様子を見ながら微笑んでいた。
杏子は昔から食べ物が絡むと素直になっていたっけ? それが残っていて良かった。
ユウリも同じようなタイプの様だし、これからはこの手さえあれば安心だと。
「さ、さ! パンケーキちゃんがアタシを待っているぅ!」
「あ、おい! 待てよ! クッ!」
飛び出していくユウリと、ドライヤーで髪を乾かす杏子。
杏子もすぐに体勢を整えると、愛しのパンケーキの所へ一直線へダッシュしていく。
していく、のだが……。
「アアアアアアアアアアアっっ!!」
「!?」
杏子の悲鳴が聞こえて大急ぎでリビングへ戻るマミ。
何事か? 慌てて駆けつけると、そこには頭を押さえて驚愕の表情を浮かべている杏子が見えた。
「あ、あり得ない。ありえねぇ……!」
「どっ、どうしたの佐倉さん?」
すると涙目の杏子がマミの肩をガシッと掴んでブンブンと勢い良く動かす。
「ねぇんだよ! アタシのパンケーキがッ!!」
「???」
いざパンケーキを食さんとする杏子であったが、彼女の前に置かれた皿には既にパンくずしか残っていない状態であった。
「どこだよ! アタシのパンケーキどこ行ったんだよ!」
マミを揺する力と勢いを加速させ、杏子は辺りを確認する。
すると、向かいの席には、うまそうにパンケーキを口に運んでいるユウリの姿が!
「てんめェえええええええッッ!!」
「あ?」
ユウリの襟を掴んで立たせる杏子。
ま、まさかとマミは嫌な予感をビリビリと感じてしまう。
この流れはまずい! すぐに杏子を止めようとするが、時既に遅し、と言った所だろうか?
「アタシのパンケーキ食ったろ!」
「はぁ? 何言っちゃってんのお前」
「復讐か? 復讐だろ! せッこい真似しやがって!!」
「いやいやいや! ちょっとちょっと!」
マミは二人を止めに入るが、奇しくも杏子のパンケーキがなくなった理由を知っている者は誰一人いなかった。
近くにいた筈のキリカや東條もテレビの方に視線を移しており、他のメンバーは他の場所で食べていたため、いつの間にか杏子の皿からパンケーキが無くなっていた事になる。
要するに、誰もユウリのアリバイを証明できないのだ。
「駄目よ佐倉さん、すぐに人を疑っちゃ」
「誰かに食われる以外にパンケーキが消えるモンかよ!」
「そ、それは確かに……」
だからってユウリのせいにするのは――
「かっちーん! ユウリ様ちょっとムカついちゃったなぁ……!」
「ア゛ァ?」
「先に人のおやつ食べておいて、よくもまあ図々しいと言うかさぁ」
「だからプリンは……! いや、上等だ。ケリつけるか?」
「あわわわわ!」
ど、どうしてこうなるのよぉ!
マミは困ったように汗を浮かべて二人を見る。
既に臨戦態勢と言う二人、って言うかココでは戦えないのまだ分かってないんだろうか?
もしかしてバ――
「ほらぁ! ひゃめまいかふぱいほみょ!」
訳するなら。
こら! 止めないか二人とも! だろう。
キリカがマミの代わりに二人の間に入って喧嘩を仲裁しようと。
「おんひんのへひゃでは、ふぁふぁふぁへはいんはほ!」
「な、何言ってるか分かんねぇよ!!」
「つか汚ねッ! なんか色々飛んできてる!! ばっちぃ!!」
口に詰め込んだパンケーキをショットガンのように撒き散らしながら説得を試みるキリカ。
だが残念、彼女の声は文字通り届かず。
むしろ二人の苛立ちをヒートアップさせてしまう事に。
「さてはお前かァ! お前がアタシのパンケーキを食ったのかぁ!!」
「えぇえええ!!」
杏子はキリカの隣で座っていた東條に吼える。
まさかのである。
「ぼ、僕じゃないよ! どうして僕って思うのさ!」
「なんとなくだ馬鹿野郎!!」
「うぅぅうう!!」
理不尽である。
しかしユウリも振り上げた拳の行き先が分からないのか――
「英雄志望ならアタシのアリバイが証明できる様にコイツのパンケーキ見張っとけよ!」
「うええええん!!」
理不尽その2である。
キリカもすぐに東條を慰めようとするが、何言ってるか分からない上にパンくずがいっぱい飛んでくるから、逆に煽ってる風にしか見えない。
男泣きの東條。必死に慰めるキリカ。もうそんな二人を忘れて言い合ってる杏子達。
カオスすぎる……! マミは頭を押さえて唸り声を。
「ぜっこーだコノヤロー!」
「上等だよバカヤロー!」
「「フンッ!!」」
そうしている内に二人は顔を逸らして別れていった。
「二人を仲直りさせたい?」
「そうなのよ、何かいい案は無いかしら?」
困ったマミが頼ったのはまどかだった。
彼女ならば何か言い案を出してくれるのではないかと。
まどかもそう言う事ならと目を閉じて唸る。
仲直り、仲直り、仲直り――
「そうだ! お手紙なんてどうですか?」
「手紙?」
自分の気持ちを口で伝えると言うのは難しい物だ。
しかし文字にしてみれば、意外と思っている事を素直に伝えられる筈であると。
それを聞くと笑顔のマミ、確かにそれならば!
「と言う訳で、ごめんなさいのお手紙を書きましょう!」
「ぜってーヤダ! だいたい何でアタシが謝るんだよ!」
『世界のうまうま屋台』と言う本を見ていた杏子は、マミに引っ張られて大まかな流れを伝えられる。だが、それでハイそうですねと綺麗に流れないのが、もどかしい所ではないか。
「貴女も事実、昔はユウリさんのお菓子食べてたんでしょ?」
「だからって謝る義理はないね。あーやだやだ、考えただけでも――」
その時だった。
スッとマミは懐から『ある物』を取り出して杏子の目の前に持っていく。
「な゛ッ! そ、それは!!」
「フフ、良かったわ。好みが変わっていなくて」
杏子の目の前にチラついているのは、彼女が好きなお菓子が一つ、『うんまい棒コーンポタージュ味』である。
「しかもプレミアムじゃねぇかッ!! 期間限定商品である筈のソレが何故!?」
「ふふふ、私ならこの空間で生み出せるの。逆に私しか生み出せないの」
意味が分かるかしら? 分かるわよね、あなたは賢いもの。
マミの言葉に、杏子はゴクリと喉を鳴らして汗を浮かべる。
絶句する杏子、マミの奴このアタシを買収するつもりなのか!
お菓子一つで!!
「な、ナメんなよ……! アタシがお菓子一つで動くと――」
「あーあ、プレミアムは普通のより、まろやかなんだけどなぁ」
「しょうなの!?」
思わず噛んでしまうが気にしない。
マミはふふんと悪戯な笑みを浮かべて杏子の前でうんまい棒を右へ、左へ。
つられて顔を左右に動かす杏子。完全に操り人形である。
「仲直りする?」
「ふ、ふざけ――ッ!」
「じゃあ、これ私が食べちゃおうかなー?」
「ま、待って! 待ってくれマミ!」
「なぁに?」
マミが顔をズイっと杏子に近づける。
すると彼女は苦悶に満ちた表情を浮かべながらも、やがて小声で――
「それ、食べたい……!」
「じゃあ、お手紙書いてくれる?」
「か――、かきゅ!」
(流石師弟……!)
まどかは、マミに撫でられながらうんまい棒を美味しそうに齧っている杏子を見ながら流石だと頷いていた。
そして数分後、紙を前にしてペンを持っている杏子が。
「つってもよぉ、何書けばいいんだ?」
「うーん、あの時はごめんとかでいいんじゃないかな?」
「チッ、何だってアタシが……」
ブツブツと言いながらもしっかりと紙にペンを滑らせる杏子。
それを見ながらマミとまどかは嬉しそうに頷いていた。
――と、そこへたまたま通りかかった芝浦淳。
彼は通りかかっただけ。だから杏子が何をしているのか一瞬確認しただけである。
だから、かける言葉はただ一言。
「ぶっはwwwwきったねぇ字wwwwんんwwww」
「「「………」」」
「巴さん、向こうで芝浦くんが亀甲縛りで吊るされていたんですがアレは……」
「気にしないで須藤さん、きっと彼の趣味なのよ」
「……でも、あのリボンって巴さんの」
「趣味なのよ」
「……分かりました」
汗を浮かべながら逃げる様に離れていく須藤。
一方でまどかは、ふてくされている杏子を必死に説得をしている。
「はいはい、どうせアタシの字は読めませんよっと」
「そんな事ないよぉ! わたし杏子ちゃんの字好きだな! う、ウェヒヒ!」
「まどか、大人の嘘は止めてくれよ。アタシはどうせ教養のねぇ女さ」
床には書きかけの手紙がクシャクシャになって転がっている。
その後も苦戦は強いられたが、まどかとマミの必死な説得によって、何とか杏子のやる気を起こさせる事ができた。
何を書いたのかは知らないが、そこはもう杏子の熱い思いに賭けるしかない。
「ユウリさん!」
「うおぉ!」
佐野達と一緒に釣りができる玩具で遊んでいたユウリ。
そんな彼女へ、マミは半ば強引に手紙を押し付ける。
「な、なにコレ?」
「佐倉さんがどうしても伝えたいって」
「はぁ? そんなモン読む価値ないね」
「そんな事言わないで見てあげて。あの娘、ああ見えて素直なところもあるのよ」
「………」
「どうか、お願い。このままなんて寂しいもの」
「仕方ない。そこまで言うなら」
ユウリは渋々ではあったが、マミから手紙を受け取ると封を切って中身を確認する。
確認――
「あんんのクソ女ァァア!!」
「え゛ッ!?」
マミは怒りに震えるユウリを見て首を傾げる。
そしてユウリから手紙を奪い取ると、急いで内容に目を通す。
どうしてユウリは謝罪の手紙で怒っているんだ? マミは書いてある文字に素早く目を通した。内容はたった一文、一言。
それは――
『死ね』
「オラァアア!!」
「ぐぽぉおッッ!!」
「きゃああ! 杏子ちゃぁああん!!」
ズシャアアアっとマミの黄金の美脚を受けた杏子は、きりもみ状に床を転がっていく。
「ぎゃあああああ! 腰がぁああ!!」
「そんなに強く蹴ってないわよ」
それよりとマミは、杏子の口の中に銃を突っ込んで鼻と鼻が触れ合うくらいの距離まで顔を近づける。
「なんであんなこと書いたの?」
「ま、マミさん目がマジだよ」
「私はいつだって大マジよ」
「モガッ! モガガッ!」
「佐倉さん、また私をからかって――」
「モガガガガガッッ!!」
「マミさんそれじゃあ杏子ちゃん喋れないよ!?」
フンと鼻を鳴らして、マミは銃を杏子の口から引っこ抜く。
杏子は呼吸を荒げながらヨロヨロと立ち上がり、マミはすぐに詰め寄っていく。
謝罪の手紙だって言うのにどうして殺意100%の文なのか。
それを問うと、杏子はばつが悪そうに頭をかいた。
「いや、なんて言うか……、謝罪の言葉書いてたらむず痒くなって」
「だからってあんなの状況が悪化するだけじゃない!!」
こうなったらもう直接謝りに行くわよ!
マミのリボンに縛り上げられて、杏子はズルズルと引きづられていく。
「離せーッ!」
「離しません!!」
(流石師弟……!)
そうやってユウリの所までやってきた二人。
再びぶつかり合う視線。ピリピリとした雰囲気が部屋を包み込む。
マミはすぐに肘で杏子をつついた。流石に先ほどの行動は自分に非があると思ったか、杏子は思い切り歯を食いしばった後、頭を下げる。
「すまんユウリ! アタシがいろいろ悪かった!」
「………」
ユウリは無言で杏子の肩に手を置くと――
「はぁぁあ? なんてぇええ?」
「ぐぐぐぎいぃいッ!!」(こ、ころしゅぅうう)
「た、耐えて佐倉さん!!」
マミの言葉を聞いて、ゆっくりと頷く杏子。
彼女はもう一度ユウリに向かって謝罪の言葉を述べた。
「悪かったユウリ、その――、いろいろ水に流そうぜ」
「杏子――ッ」
ユウリは一瞬呆気に取られた様な表情をし、そして一度ニッコリと微笑んだ。
「YA☆DA」
「「―――」」
ズボッ! ユウリは二つの指を杏子の鼻の穴に打ち込んで、完全にナメ腐った表情を浮かべている。
「許してあげなぁぁああいッ!」
「………」
「フンッ!!」
「ぎゃあああああああああああああ! 頭が割れたぁぁあ!!」
「ま、マミちゃん……今の技は――ッ!?」
「マジカルヘッドバットよ」
「え? いやそれってただの頭突――」
「マジカルヘッドバット!」
「……はい」
マミは、頭を抑えて転がるユウリを見ながら、大きく鼻を鳴らす。
「いい加減どちらか大人になりなさいッ!!」
「「だってコイツが!!」」
「だってじゃありません!!」
「「は、はい!!」」
リボンを強く床に打ち付ける。
杏子とユウリはビクンと跳ね上がって、思わず声を合わせる事に。
マミはそんな二人の手を取ると強制的に握り合わせて『握手』の形を作る。
「もう仲直り! 佐倉さんは絶対人のお菓子を食べない! ユウリさんは誰かを疑う前に、私か鹿目さんに言って。新しいの出してあげるから」
「「でも!」」
「………」
無言のマミだが、同時にユウリと杏子の前に巨大な大砲が出現する。
気づけば魔法少女の衣装に変わっているマミ。
彼女はゆっくりと呟く。
「もう、仲直りしたわよね?」
「え? あ、いや――」
「……したわよね?」
「「―――」」
大砲が追加される。
白目に変わる杏子とユウリ。
そんな事は無いとは思うのだが、逆らったら塵に変わりそうな迫力である。
「「………」」
結果――
「いやー! やだなぁマミ! アタシと杏子はいつも仲良しだっての! ねぇ?」
「お、おお! そうそう! 喧嘩するほど仲が良いって言うだろ! ははは!」
「本当かしら……?」
「ほ、本当本当さ! なぁ佐倉杏子!」
「そうそう! ははは! なあユウリ」
「じゃ、いいわ!」
「「………」」
笑顔に戻るマミと、ホッと安堵の息を漏らす二人。
マミは仲直りの記念にもう一度パンケーキを出してくれると。
「本当かマミ!」
「ゆまも食べたい!」
「ええ、もちろん」
笑顔に変わる杏子。
ユウリも食べれるというのなら拒みはしない。
じゃあと一同はリビングへ向かう。すると同時にロフトから降りてきた浅倉がダルそうに頭を掻いていた。
「お前ら、少しうるさいぞ。眠れやしない」
「ああ、悪かったな。実はよ」
一連の流れを説明する杏子。
浅倉は欠伸をかみ殺しながら興味なさ気に話を聞いていた。
「なんだ、そんな事か」
「え?」
「お前のパンは俺が食ったからな」
「……は?」
「うまそうな匂いがしてたんでなァ」
「「………」」
顔を見合わせるユウリと杏子。
「なあ、アタシのプリンももしかして――」
「俺が食った」
「「………」」
再び顔を見合わせるユウリと杏子。
「「ウラアアアアアアアアアアアアア!!」」
二人のラリアットが同時に浅倉に炸裂したのはその後だった。
息を呑むマミ、合図もせずにアイコンタクトだけで同じ攻撃を同時に当てるなんて――!
「やっぱりあの二人仲がいいのよ!」
良かった!
マミはニッコリと笑って二人にパンケーキを差し出したのだった。
「いや、その前に浅倉の奴、回転しながら飛んでったけどいいの?」