仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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Episode 8

 

 

 

 

 

Episode 8「クッキング」

 

 

 

 

マミの家のキッチン。

 

 

「皆さん、おはようございます呉キリカです。さ、相棒」

 

「と、東條悟です」

 

「かずみでーす!」

 

 

いぇーい、黒コンビはピースしながら笑顔である。

対して、訝しげな表情の東條、カメラも無いのにどこか緊張ぎみである。

そして三人に混じって同じくムスーっとしているのは――

 

 

「………」

 

「ほらー、蓮さんも自己紹介、自己紹介!」

 

「なんで俺がこんな事を……。だいたい誰も見てないだろうが」

 

 

明らかに嫌そうな顔をする蓮。

対して、かずみは頬を膨らませていた。

 

 

「どうせやる事ないんだし! ちょっとくらい付き合ってくれてもいいじゃーん!」

 

「いいじゃーん」

 

「チッ!」

 

 

蓮も子供相手には強く言えないのか。

それにかずみのお願いとくれば聞かざるを得ない。

蓮は速攻で折れたのか。何も言う事はなく、次に進める様にジェスチャーを。

 

なんでも東條が英雄になるにはどうしたらいいのかを考えた結果。

キリカ曰く、料理の出来る男は英雄に近づけるとの結論に至った。

故に喫茶店で料理の腕を磨いていた二人がヘルプとしてついた訳だ。

 

 

「はい、では早速メールを見てみましょう」

 

 

キリカはポチポチと人差し指でパソコンを操作する。

メール? 蓮が問うとかずみが説明を行う。

なんでもこのパソコンには、今日作って欲しいレシピをリクエストしてくる人のメールがたくさん来るのだと。

 

 

『P・N 赤いポニーテールの魔法少女さん』

 

 

「……これ、ペンネームの意味なくないか」

 

「はい、読むよー」

 

「………」

 

 

蓮の言葉に、キリカが食い気味で入ってくる。

前述の通り、メールには今日の料理のリクエストが書いてあるのだ。

 

 

『アタシは美味しい物が大好きです。毎日美味しい物が食べたいです。そこで美味しい物をさらにおいしく食べられる美味しい料理があったら美味しいです!』

 

「アホ丸出しの文章だな。最後の方とか自分でも何言ってるのか分かってないだろコイツ」

 

「酷いよ蓮さん! 杏――ッ、じゃなくて! この人だって美味しい物が食べたいんだから!」

 

 

名前が一瞬零れそうになったのは気のせいだろうか?

とにもかくにも、コレで何を作るのかは決まった。

マミの権限で食材なら何でも出せる状態にあるキリカ達は、早速作業に移る事に。

 

 

「よし、じゃあ今日は美味しいものをいっぱい使った美味しい料理を作っていきまッしょう!」

 

「おー!」

 

「これで……! 僕も英雄に近づける!」

 

「………」

 

 

大丈夫か?

蓮は少し心配になってきた。

 

 

「トントントントントン! 今日作りたくなる簡単レシピ! キリズキッチーン!」

 

「な、何だソレ?」

 

「知らないのかい? 最近の流行だよ」

 

 

そう言ってキリカは初めの材料を取り出してまな板に置いた。

 

 

「――ってちょっと待て! 何だソレは!!」

 

「何って、きのこに決まってるだろう?」

 

「す、すっごくカラフルだね!」

 

 

キリカが持ち出したのは七色の光るキノコである。

それはもう見るからにポイズン的な物を感じさせるのだが、そこはそれこの空間だ。毒の入ってる物は存在しないとかなんとか東條が言う。

 

 

「いや――、じゃあこれ何て名前のキノコなんだ?」

 

「……マジカル☆きのこ」

 

「今すぐ入れるの止めろ!」

 

「やだやだ! 入れるぅ!」

 

 

キノコを奪おうとする蓮だが、キリカは激しく抵抗を示す。

すぐに魔法少女へ変身すると、減速魔法を発動して蓮とかずみの動きをスローに変えた。

 

 

「おい! なんの為に俺達を呼んだんだ! アドバイス云々の流れはどうした?」

 

「私は私の道を行く事にしたよ!」

 

「何言ってんのキリカちゃん!?」

 

 

東條も東條で困った様な表情だったが、キリカがそっちの方が英雄っぽいと説くと、速攻でキリカ側に移った。

結果蓮達はただちょっかいを入れるだけの置物と化してしまったのだ。

 

 

「相棒キノコ切って」

 

「うん」

 

 

そう言って東條はデストバイザーを構える。

 

 

「何、してる」

 

「キノコ……、切る」

 

「包丁を使え包丁を! まな板ごと真っ二つにするつもりか!!」

 

「包丁……?」

 

「嘘だろお前!」

 

 

首を傾げる東條。

かずみもコレには驚いている様だ。

 

 

「東條くんお料理しないの?」

 

「うん、ぜんぜんした事ないよ。包丁ってなんだっけ?」

 

 

ああ思い出した。

料理に使うイメージが無いから頭から飛んでいたのだと。

 

 

「人を刺す時に使うヤツだね」

 

「………」

 

 

あれ? こいつヤバくね? かずみと蓮はアイコンタクトを取って汗を浮かべる。

笑みを浮かべてキノコを切り始める東條、深くは追求しないでおこう。

もしかしたら自分たちが料理される可能性が――

 

 

「はい次! マジカル☆お肉!」

 

「おい待て! 何の肉だソレ! 肉なのに青いぞ!!」

 

「たぶん魔……、牛だよ牛」

 

「今魔女って言いかけたよね!? それ本当に使うのキリカちゃん!!」

 

「大丈夫、きっとおいしいぞ!」

 

「その根拠の無い自信はどこから!? って、あぁ!!」

 

 

キリカは青いお肉を、適当に黒い爪で細切れにすると、鍋の中に投入していく。

東條が切り終わったキノコも加わり、キリカは顎に手を当ててフムと唸った。

次は……、そう。野菜だ!

 

 

「マジカル☆ベジタブルぅうう!」

 

「キリカちゃんとりあえずマジカル付ければ何でも良いと思ってない!?」

 

 

そしてキリカが手にしたのは――

 

 

『ピギィイイイイイ!!』

 

「「………」」

 

 

あれ……? れ、蓮さん。お野菜って鳴くっけ?

おい、なんで野菜に顔があるんだ?

二人の視線を受けながらも、キリカはそのお野菜を鍋の中に投入していく。

 

 

「さ、次はマジカル☆スープだ!」

 

「わぁ、綺麗だなぁ」

 

「「!?」」

 

 

キリカが取り出したのは緑色の液体。

キリカはふと動きを止めて、ビンの中に入ったスープの匂いを確認してみる。

 

 

「くッッせぇッッ! い、いや良い匂いだなぁ!」

 

「今臭いって言ったよね、隠す事もできずに言ったよね、矛盾しているよね!!」

 

「もう、カズミールってば、細かい事は気にしない気にしない」

 

「細かくないんだよな! 大きすぎるんだよな!!」

 

 

かずみを無視して鍋にマジカル☆スープを入れるキリカ。

火をかけてグツグツと煮立てる事に。

 

 

「じゃあ次は塩と胡椒を入れます」

 

「申し訳程度に普通の調味料使うのは止めろ」

 

 

当然、蓮の言葉は無視である。何のためのヘルプだったのか。

なべの中から先ほどの野菜の悲鳴が聞こえる気がするのだが、気のせいであってほしい。

 

 

「英雄は何が好きだい?」

 

「僕? うーん、特に何も……」

 

「私は甘いのが好きなんだ。コレ入れようコレ」

 

 

キリカはメイプルシロップを取り出すと、キャップをあけて容器が空になるまで鍋の中に注いでいく。

 

 

「ちょっと待ってくれ、そもそもコレ何作ってるんだ?」

 

 

蓮が問うと、キリカは目を逸らして『おいしい物』としか答えない。

 

 

「結構煮立ったね。じゃあ鯖とバナナを入れよう」

 

「どういう発想でその二つが入る事になったんだ! 喧嘩するってレベルじゃないぞ!!」

 

「わかったよキリカ」

 

「お前も分かるなッ! って言うかせめて内蔵くらい処理しろ――! っておい聞け! なんの為に俺達を呼んだんだお前らは!!」

 

 

鯖とバナナが鍋に投入された所で、どうやら仕上げに入るらしい。

 

 

「フンッ! ぐぐぐっ! ぎがぁああぁッッ!!」

 

「「!?」」

 

 

なんだなんだ! どうしたどうした!?

いきなり汗を浮かべて踏ん張るキリカに、蓮たちは恐怖を覚える。

何で料理作るだけなのに、そんな深刻な表情で苦しそうに踏ん張っているのか。

東條も、がんばれキリカ! などとコールを行いながら拍手をしている。

キリカは変身したまま掌を上に向け、尚も歯を食い縛って力を込める。

すると――

 

 

「――ッしゃぁあ! 出たぁあッ! 出たぞぉお!!」

 

「「!?」」

 

 

キリカの手の上に光る謎の球体が現れた。

いや、本当に謎である。確実に料理する時に見られる光景じゃない。

ッて言うか今この時まで、果たして本当に『料理』という行動は存在していたのだろうか。

 

 

「な、何だそれ――……」

 

「ふしゅぅううッ! マジカル☆ボールッ!」

 

 

キリカは鍋の蓋を開けるとその魔法玉を――

 

 

「最後に隠し味を入れます」

 

 

ポチャン。

 

 

「「―――」」

 

 

何入れてんだコイツ――ッ!

白目の蓮達の前で、キリカ達はやりきった表情を浮かべていた。

すると鍋の蓋の隙間から光が漏れていく!

 

 

「なんか光ってるよ蓮さん!」

 

「ッて言うかあのボールはなんなんだ!」

 

 

混乱する二人の前で、キリカが作ったおいしい物が完成を向かえた。

 

 

「さ、盛り付けだ!」

 

 

火を止め、鍋の蓋を開けるキリカ。

手に持った皿にお玉で鍋の中にある料理をすくい入れる。

そう、そんな彼女の手にあったお玉には、無色透明でキラキラ光るゼリーが。

 

 

「えええええええええええええ!?」

 

 

絶叫するかずみ。

 

 

「なんで、なんであの工程を経てプルプルの綺麗なゼリーが出来上がるの!?」

 

 

お肉入れてたよね?

キノコ入れてたよね? 鯖とバナナ入れてたよね!?

あれどこ行ったの!? どこに消えたの!

大混乱のかずみと満足げなキリカ。蓮は頭を抑えて大きくうなだれる。

料理というのは自分が想像していたよりも世界が広かったようだ。

 

 

「完成シャイニングゼリー! 略してシャンゼリ!」

 

 

早速誰かに食べてもらおう!

二人は嬉しそうにシャンゼリを持って走り出した。

 

 

「おい待て! せめてコレ解除してからにしろ!」

 

「ッて言うかアレ食べて大丈夫なのかな!?」

 

 

減速魔法に抗いながら何とか動き出す蓮とかずみ。

とりあえずあの魔法兵器による被害者が出るのを防がなければ。

しかし既にキリカ達はターゲットを見つけたのか、出来上がったゼリーを一人の男に勧めている所だった。

 

 

「キミでいいや。食べてみてよ」

 

「アァ? 何だコレ?」

 

「シャンゼリさ!」

 

 

浅倉威。

彼はキリカが持ってきたゼリーに興味を示すと。疑いもなくスプーンと器を受け取る。

やめろ! 蓮は叫ぶが、食べ物と言う獲物を前にした浅倉には届いていなかった様だ。

既にスプーンでキラッキラに光るゼリーを一口。

 

 

「あああああああああ!!」

 

 

かずみはやってしまったと言う表情で浅倉を見る。

事実、彼が口にそれを入れた瞬間表情が大きく変わった。

 

 

「どうだいお味の方は。シャンゼリ」

 

「……ぉん?」

 

 

浅倉は訝しげな表情を浮かべると、もう一口ゼリーを口に含む。

そしてしばらく租借するともう一口、さらにもう一口。

あれ? 意外に悪くないのか? 蓮とかずみは呆気にとられた様に浅倉を見ているだけだった。

そうしていると浅倉はゼリーを全て食べ終わる。

 

 

「………」

 

「どうだい? おいしすぎてミラクルな世界に行ったみたいだろ?」

 

「どわわわわわ!!」

 

 

その時だった。

減速魔法の効果が切れて元のスピードに戻るかずみ達の動き。

蓮は立っているだけだったが、かずみは前のめりで動いていた途中だった為に、急に変わる早さについていけずバランスを大きく崩す。

 

 

「うわっぷ!!」

 

 

勢いあまって浅倉の方へと倒れるかずみ。彼の体に顔を埋めてしまう。

 

 

「あ、ごめんなさい!!」

 

 

浅倉の事はかずみも分かっている。

きっと睨まれるに違いない。

かずみはアワアワと体を離すが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァ、大丈夫かい? お嬢ちゃん」

 

「……え?」

 

 

は?

 

 

「なら良かった。君が無事ならそれでいいんだ。ハハハ」

 

「「………」」

 

「アァァ、なんだか愛と平和を守りたくなってきたァッ!」

 

 

じゃあ、俺はコレで。

浅倉はかずみの肩を軽く叩くと、敬礼に似たポーズを手で軽く。

 

 

「あー、人助けしてェ……!」

 

「………」

 

「世界が平和になってほしィいぇぁッ!」

 

「「………」」

 

 

誰、アレ。

かずみと蓮は嫌な汗を全身に感じて、ゴクリと喉を鳴らした。

やっぱり、変なキノコが原因だったのだろうか……。

 

 

「料理って奥が深いね蓮さん……」

 

「アレが料理なら、俺は一生料理を理解できる気がしないがな」

 

 

あ、浅倉さんが募金箱作ってる。

かずみの言葉に蓮はもう一度大きなため息をついた。

 

 

 

 

 


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