仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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あとがきにビルドの事書いてます。
最終回まだ見てない人は気をつけてね


Episode 9

 

 

 

Episode 9「一人の時間」

 

 

 

 

 

俺、北岡秀一はスーパー弁護士である。

生まれた時からエリートだった俺は、当然幼少期から裕福な暮らしの中に身を置いていた。

当然だな。品のある人生は品のある環境にて形成されるもんさ。

自分が華麗なら華麗さが俺に寄ってくるって言えばいいのかね?

まあとにかくそんな俺の朝は当然優雅でエレガントな物な訳よ。

小鳥の声を聞きながらトーストとコーヒー片手にクラシックを――

 

 

「あぁ! おいニコ! アタシのウインナー食うなよ!」

 

「いっぱいあんだろよ~! 足りなきゃマミに言えマミに!」

 

「おーい! シリアル派か誰か牛乳持ってないー?」

 

「あ、わたし持ってるよさやかちゃん! かけてあげるね!」

 

「ルカちゃんさっきからずっと納豆混ぜてない?」

 

「50回混ぜるのが拘りなので」

 

「おい秋山醤油よこせ」

 

「断る」

 

「なんでだよ! 目の前にあるじゃねーか!」

 

「めんどくさい」

 

「うぜー!」

 

 

クラシックを――ッ。

 

 

「おひこ! ほれおいひい!」

 

「き、キリカ! そんなに詰め込まないの! 零れてるじゃない!」

 

「ふぎぎぎぎぎっ! ジャムの蓋がとれない゛ーッ!」

 

「大丈夫? ゆまちゃん、僕があけるよ」

 

「上条君ボクに開けさせてくれないかな? その方が英雄になれそうだし」

 

「巴さん! お湯が空になりました!」

 

「あ! はーい!」

 

 

クラシ――

 

 

「おい! ユウリ! お前ゆで卵食いすぎ! 私も寄越せ!」

 

「ハッ! 欲しけりゃ奪ってみなよ」

 

「世紀末かよお前の頭は! 譲り合え!」

 

「このパンおいひーっ!」

 

「……ッッ!!」

 

 

く、クラシ――ッ!!

 

 

「だあああもう!」

 

 

クラシックも糞もあるか!

 

 

「お前らうるさいよ! 朝くらい静かにさせろ!!」

 

「!」

 

 

北岡はコーヒーカップをダン! と置いて吼える。

この空間に来てから快適に過ごせるのは結構だが、なにぶん人が多すぎる!

同時期に来た上条達も加わり、より一層同じ空間にいる人間の密度が増えるという物。

すると、そんな北岡の肩に触れる手が。

 

 

「北岡くん。気持ちは分かるけど、狭いのはみんな一緒だ。大家族だと思って割り切ろう」

 

 

ニッコリ!

そんな爽やかな浅倉のスマイルとサムズアップが、北岡の視界に広がってくる。

 

 

「うん。でコイツは誰なんだよ!」

 

「ミラクル浅倉だよ。愛と平和の為に戦う戦士なんだ」

 

「全力で気持ち悪いわ! コイツのせいで大体引いてるからね俺!」

 

 

蓮の話では、変な物を食べてこうなったらしいが、北岡からしてみれば死んだと思ったらこの空間に飛ばされ、キレイな浅倉が出て来ると言うカオスな状況である。

他は受け入れられてもコイツだけは無理と、北岡は顔を青くしながら何度も連呼する。

 

 

「北岡くん……、人は変われるんだよ?」

 

「おい止めろその可哀想な者を見る目! だいたいお前の場合は意味が違うから!!」

 

「同じさ! さあ、一緒に募金しよう!」

 

「どこにだよ! おい誰か本当にコイツなんとかしてくれ!」

 

「仕方ないなぁ、じゃあ戻してやるよ」

 

「なにっ?」

 

 

北岡の言葉に頷いたのは杏子だ。

彼女はデザートのポッキーを齧りながら浅倉の背後に移動する。

同時に変身。槍を持って咳払いをひとつ。

 

 

「頭叩けば直るだろ」

 

「昔のテレビかよ! そんなんで直る訳――」

 

「えいっ!」

 

 

ポカ!

 

 

「アァァ……! 会いたかったぜぇ北岡ァ、今度こそ潰す――ッ!」

 

(嘘だろマジかよ。あ、って言うかコッチはコッチでめんどくさいな)

 

 

何か釈然としない物を覚えながらも、北岡は頭を抑えながらその時点では何も言い返せず、黙るしかなかった。

そんな北岡を見ながら顎に手を当てるマミ。

確かに彼の言う事は分からなくはない。

 

悲しい話だが、もうほとんどの参加者がここにいる状態だ。

マミの家では限界もあるか。家族三人で暮らす分にはまったく問題なかったが、さすがにこの大人数ともなると、どこかで必ず顔を合わせることになる。

何かいい手があればいいのだが、それがなかなか思い浮かばない。

申し訳ないが、暫くは我慢してもらうしかないだろう。

 

 

「やれやれ」

 

 

朝食が終わり、昼食まで自由時間となる。

それぞれに散っていく面々。北岡はすっかり冷めたコーヒーを一気に口に含むと、辺りを見回してみる。

既に理解したことではあるが、この家ではテレビは使えない。

と言うのも、ほぼ必ず先客が陣取っているからだ。

 

 

「シャリゼリオンは酢飯の世界の方が現実なのよ!」

 

「違うって! あれは寿司オチに見せた多層解釈型の――」

 

 

今日もニコとマミがディープな特オタ議論に華を咲かせている。

ッて言うか寿司オチって何なんだよ、聞いた事ないよ……。

まあなんだ。北岡も自分よりも幼い女の子を掻き分けてでもテレビを見ようとは思わないし。

 

 

(本でも読むか……)

 

 

とは思えど、問題はやはりどこで読むかだ。

どこに行っても誰かがギャーギャー騒いでいるし。

ったく、これだからガキは困るね。北岡は冷蔵庫から何か飲み物でもと手を伸ばす。

 

 

「アァァ、北岡ァ、決着をつけようぜェェ」

 

「………」

 

 

ガチャン!!

 

 

「………」

 

 

あれ? 疲れてんのかな? 冷蔵庫の中に浅倉がいたような……?

いやいや、そんな事ありえないでしょ。うん、ありえない。

北岡はもう一度飲み物を取ろうと冷蔵庫を開け――

 

 

「アァァ、北お――」

 

 

ガチャンッッ!!

 

いや、いるなコレ。

気のせいじゃないなコレ。あいつどうやって入ったんだ?

いや、それよりも――、ああ! もういいやめんどくさい!

北岡は飲み物を諦めると、マミ達を通り過ぎてソファの方へと向かう。

誰もいないソファ。マミ達の声は普通に聞こえるが、集中すれば気にならないか……。

 

 

「よし、ここにするかな」

 

 

やれやれと、ため息交じりに本を開く。

だが――

 

 

「でさー! そん時にさー!」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「………」

 

 

横のほうでドカッと座り込むさやかとまどか。

まどかはまだしも、さやかは大声でゲラゲラと笑ったり、マシンガンの様に次から次へと言葉を並べていっている。

 

 

「それからそれから!」

 

「うんうん」

 

「――って事で!」

 

「へぇ!」

 

「なはははははは! マジうけるでしょ!?」

 

「うん、面白いね」

 

「でねー?」

 

「フンッ!」

 

「うごぉおッ!」

 

 

立ち上がり本を振り下ろす北岡。

それはさやかの頭にクリーンヒットすると大きく怯ませる事に。

目玉がちょっと飛び出したさやかは、すぐに涙目になって北岡へ詰め寄る。

 

 

「何すんのさセンセー!」

 

「うるっさいよお前は! 俺、本読んでるだろうが!」

 

「いいじゃん! あたし等に気にせず読んでればー!」

 

「集中できないんだよ!」

 

「だからって叩くなわがまんぼー!」

 

 

ワーワー言い合う二人を、まどかは困ったようにオロオロと見つめている。

 

 

「ごめんなさい北岡さん。うるさくしたなら他の所行きますから!」

 

「う……ッ!」

 

 

北岡も、まどかを前にすれば罪悪感がチクチクと刺激されると言う物。

まどかの様なタイプは得意じゃない。本来北岡は女性には甘い性格だ、まどかの様なものを見ると自分が情けなく見えてくる。

 

 

「あぁ、いや。まあ分かればいい。とりあえず今は俺が他の場所に行くから……」

 

 

北岡は本を持って踵を返――

 

 

「北岡ァ、勝負といこうぜェ」

 

「………」

 

 

あれ?

なんかさっきまで自分が座っていた場所に変な奴がいるんだけど。

なんか蛇柄の服着てる男がそこにいるんだけど。

ッて言うかさっきまで冷蔵庫の中に入っていたのに、よく間に合ったな。

 

 

「ほっ」

 

 

ダキューン!

 

 

北岡は間髪入れずマグナバイザーを取り出して、浅倉のヘッドをスナイプする。

思わず前のめりになるさやか。

 

 

「いいの!? 呼吸をする様にスムーズな流れで人の頭撃っけど!?」

 

「いいよ別に。俺達もう死んでるし、コレ以上死なないでしょ」

 

「そ、そう言う物なのかなぁ……?」

 

 

北岡は白目をむいて倒れている浅倉を通り過ぎると、次の場所を目指す事に。

やはり人が集中するリビングは無理か。

考えてみれば最も人が集まる場所で一人になりたいと思う自分もアホだったかもしれない。

となると、そう、ロフトだ。あそこならば――

 

 

「お、いいねぇ」

 

 

誰もいないじゃないの。

北岡は早速近くの壁にもたれかかって読書を――

 

 

「ぐおぉおぉおおおお」

 

「………」

 

「んごぉおぉおおおお! ふぎっ!」

 

「……ッ」

 

「ふがっ! んっ! ぬぅおおぉぉお」

 

「ッッッ!」

 

 

うるせぇ! 北岡はイライラした様な表情で音の出所を探る。

するとマミが寝ているベッドに原因があると分かった。

近くに寄ってみると、そこには気持ちよさそうにいびきをかいていらしゃる杏子さんが。

一方で北岡のイライラメーターがどんどん上がっていく。

うるせぇ奴だ、裁きの時は来たぞ。

 

 

「……よし」

 

 

北岡はマジックペンで杏子の顔に太眉と髭、あとはおでこに『肉』の文字を書くと、少し清々しい表情で踵を返した。

早く次の場所を探さなければ。一人になれる場所を求め――

 

 

「アァァ」

 

「………」

 

 

気のせいか。俺の耳がおかしくなったのか。

北岡は眉間を押さえると、ゆっくりと首を振る。

なんか、ベットから変な声がした様な――?

北岡が振り返ると、相変わらず気持ちよさそうにいびきをかいている杏子が見えた。

 

 

「………」

 

 

待て、待て、待て。何かおかしいぞ、北岡は杏子の足に注目する。

そう、足だ。ベッドの上の方に頭を置いている杏子の足が、ベッドからはみ出している。

言っておくがベッドは当然杏子よりも遥かに大きい。

なのに掛け布団から足が出ているとはこれいかに。

 

 

「………」

 

 

まさか、まさかな。

北岡は再び足を杏子の方へ戻すと、ゆっくりと彼女が被っていた布団をはがして見――

 

 

「アァァ、北岡ァ、ここで会ったが――」

 

 

パタム。

 

 

「………」

 

 

え? 何? あいつテレポート使えたっけ?

北岡は先ほどのソファを覗いてみるが、そこに浅倉の姿は無かった。

一方で押さえ込んだ布団の下からは、あの呻き声が。

いや幻想、これ夢だ。北岡は何度か頷くと別の部屋を目指す事に。

 

 

「廊下は……、流石になぁ」

 

 

マミの家は部屋があと二つある。あとは廊下にトイレと風呂か。

 

 

「トイレねぇ」

 

 

意外と良いかもしれない。

と言うのも、自分達は死んでる様なのでトイレに行きたいとは思わないのだ。

死んでない筈のまどかとニコも仕組みは同じらしく、要するにトイレは不要の体になった。

と言う事はだ。誰も使わない空間と言う事ではないか。

たまにゆまがかくれんぼに使用しているくらいで、一人の時間を作るには最適か?

 

 

「………」

 

 

ドアノブに手をかけたところで、いったん停止する。

まさかに中に既に浅倉が控えてるとかそんなオチは無いよな?

え、俺今フラグ立てた? いやいや、まさかそんな。

いくらなんでも俺より早くロフトからココまでこれる訳が無い。

 

 

「………」

 

 

ノックはしてみる。

返事は無い。北岡はゆっくりと扉を開け――

 

 

「えいゆうえいゆうえいゆうえいゆうえいゆうえいゆう」

 

「………」

 

 

北岡は、ソッと扉を閉じた。

なんか、浅倉よりヤバい奴がいたような。

ためしにもう一回ゆっくりと扉を開けてみる。

するとそこには壁一面に筆で『英雄』と書かれた半紙が張り巡らされており、蓋をした便器の上には東條が体育座りで何度も英雄と連呼している。

 

あ、ヤバイわコレ。疑うまでも無くヤバイわコレ。

北岡は速攻で記憶を消すと、二度とトイレには近づかない事を決めた。

 

 

「ん?」

 

 

ふと、隣にある場所が目に留まる。それはお風呂場だ。

もちろん今の自分達はお風呂に入らなくても問題ないのだが、そこはそれ女性陣は気にするのか、定期的に誰かしらは入浴に使っている。

しかしそれはほぼ夜中。今の時間帯は誰も使っていないはず。

一応声をかけてみるが反応は無い、つまり誰もいない!

 

 

(風呂場で読書って間抜けっぽいが、背に腹は代えられないか)

 

 

北岡は風呂場に入ると床の感触を確かめる。

濡れていないし、綺麗に掃除してある。

なんだ意外と快適じゃないか、北岡は適当に座ると本のページを開い――

 

 

「ブアァアァアアア!!」

 

「………」

 

 

蓋をしていた浴槽から水飛沫と共に姿を見せたのは――

 

 

「北岡ァァ! 待ってたぜェ!」

 

「ここで!? ここでお前が来るのかよ!! って言うかよく俺が来る事が分かったな!!」

 

 

そう言いながらも北岡は浅倉をおいて、ダッシュで退出していく。

後ろから『待て』だの『何だ』のと聞こえて来るが、北岡は無視して次に進む。

駄目だ駄目だ。こうなるともういよいよ場所が無くなってくる。

 

残る部屋は二つなのだが、静かに過ごせる気がしない。

一つはマミの部屋で、もう一つがマミの両親の部屋なのだが、現在マミの部屋が女部屋になっており、両親の部屋が男部屋になっていた。

さすがに女部屋に行くのは抵抗があるので、実質残っているのは男部屋だけなのだが――

 

 

「………」

 

 

ソッと部屋を覗いている北岡。

そこには――

 

 

「あはっ! 淳くんつよーい!」

 

「違う違うコイツが弱すぎるだけ」

 

「な、なにをぉお!」

 

 

ゲームで言い合っている佐野と芝浦が。そうだな、まあそうだよな。

毎回こんな感じだから、でしょうねと言う感想しか浮かんでこない。

同じ部屋にいる高見沢は気にする事なくタバコをふかして雑誌を読んでいるが、俺はあんなのとは違って繊細でデリケートな男だからと、北岡は失礼な事を思いながら割り切っていく。

あとなんか……、高見沢の近くに蛇柄の服をきた男がコチラを睨んでいた様な気もしたけど――

 

 

「ま、気のせいだな」

 

 

北岡は扉をしっかり閉めて踵を返す。

するとちょうど部屋に入ろうとしていた上条とぶつかる事に。

 

 

「あぁ、悪い悪い」

 

「いえ……、どうしたんですか?」

 

 

上条は部屋に入らない北岡を不思議に思ったのだろう。

北岡も別に隠す必要は無いので、一連の流れを説明する事に。

とにかく一人になりたい&集中したいのだが、中々うまくいかないと。

 

 

「じゃあ音楽を聞いてみるのはどうです?」

 

「あぁ! なるほど」

 

 

上条が言うのは、携帯音楽プレイヤーを使ってみてはどうかと言う事。

これならば雑音の中でも自分がかけた音楽しか聞こえない筈では?

北岡はなるほどと唸った。確かにそれならば静かではないが、集中はできるか。

早速マミに音楽プレイヤーを用意してもらうと、北岡はソファに座って音楽を聞きながら本を読むことに。

 

 

「あれ? センセー戻ってきたの」

 

「ああ。いいよ、君らは話してて」

 

 

北岡はクラシックの曲が入った物をマミに注文し、早速イヤホンを付けて読書を開始する。

それなりに高級な物で、周囲の雑音を消してくれる機能までついていると来た。

なるほどコレならば集中しやすい。一曲目のクラシックも中々優雅で、自分に合っているじゃないか。

 

 

(いいねぇ、これで落ち着ける)

 

 

さやか達が前で話しているが、声はほとんど聞こえない。

これはいいものだ。そうしている内に一曲目が終わり、二曲目がスタートする。

曲名はどうやらメッセージと言う物らしい、聞いた事は無いし、クラシックのタイトルにしては非常に珍し――

 

 

『アァァ、北岡ァ、俺と勝負しろォ……!』

 

「―――」

 

 

嘘だろ、冗談だろ。

北岡はイヤホンからダイレクトに伝わってくる浅倉の声に、ただただ固まるしかなかった。

そして背後を振り向くと、デッキを構えている浅倉の姿が。

 

 

「どうやったんだよ! ッて言うかココじゃ戦えないって言ってるだろ!」

 

「関係あるか。これが俺の全てだ」

 

「アホかお前は! いや、待て……!」

 

 

ハッとする。

 

 

「……仕方ない。ま、そこまで言うなら、俺も無視する訳にはいかないか」

 

「やっと殺る気になったか、待ちくたびれたぜェ」

 

「ちょっと待ってろ、今用意する」

 

「アァ?」

 

 

そして五分後。

 

 

「……なんだコレは」

 

「見りゃ分かるでしょ。ピコハンとヘルメットだよ」

 

 

北岡と浅倉の間には、二つのピコピコハンマーと二つのヘルメットが。

 

 

「おい、ナメてるのか?」

 

「まあ聞けよ。このハンマーで殴られると一日気絶するんだ」

 

 

ニコに作ってもらったらしい。

ここじゃ殺し合いはできない。となれば気絶が一番死んでる状態に近いだろう。

それにこれは立派な勝負だ。勝ち負けが決まるんだから、それでいいだろうとまくし立てる。

 

 

「ルールは――」

 

 

叩いて被ってジャンケンポンである。

ジャンケンで勝った方がハンマーを構え、負けたほうはヘルメットで一撃を防ぐ。

浅倉は理解すると、渋々納得したようだ。どんな事でも北岡を潰せるのは気分が良くなると。

 

 

「じゃあやるか」

 

「ぶッ潰してやるよ」

 

「あ、ちょっと待て浅倉。アレなんだ?」

 

「アァ?」

 

 

北岡は浅倉の横を指差す。

 

 

「ほら、アレだよアレ」

 

「なんだって――」

 

 

ポコッ!

 

 

「―――」

 

「浅倉君、世の中を勝ち残るのは賢い者だよ」

 

「うわぁぁ、最低だよこの人……!」

 

「賢いの間違いだろ?」

 

 

一部始終を見ていたさやかは、汗を浮かべて目を細める。

ゲーム開始前に何のことはなく不意打ちしやがったコイツ……!

北岡は気絶した浅倉を適当に床へ転がすと、ソファに寝転んで再び本を開いた。

結局音楽プレイヤーは浅倉のうめき声がリピートされるようになったので、もう使えない。

 

どうした物か?

北岡は大きなため息をついて目を閉じた。

今もマミ達が熱中している声が聞こえてくるし――

 

 

「ちょいちょい」

 

「ん?」

 

 

目を開けると、腰に手を当てているさやかが見えた。

北岡が立ち上がると、彼女は親指で、ある場所を指し示す。

 

 

「あそこ使っていいって」

 

「あそこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、ぜんぜん音が聞こえないな」

 

「でしょ? そう言うつくりになってるんだって」

 

 

耳を澄ましても、今は北岡とさやかの声しか聞こえない。

ここはバルコニー、ベランダだ。椅子が二つ置いてあり、締め切った窓の向こう側、つまり室内の音声はまったく聞こえてこない。

 

 

「感謝してよねー、あたしが皆に頼んで独占させてもらったんだから」

 

「そうなのか? いつの間に……」

 

「いやぁ、センセーが浅倉さんとギャーギャー言い合ってる時に」

 

「……ああ、なるほど」

 

 

椅子に座る北岡。

これだよコレコレ、北岡がそう言うと、さやかはフフンと自慢げに笑っていた。

 

 

「どうよぉ! さやかちゃんってば、頼りになるでしょ?」

 

「ああ、たまには役に立つ」

 

「たまには!? いつもの間違いでは!? いつもの!!」

 

「はいはい、うるさいからアッチ行っててくれ」

 

「ひでー!」

 

「冗談だよ、ハハハ。感謝してるって」

 

「嘘だー! 絶対に都合の良い女だと思ってるー!」

 

「そんな事思うか!」

 

 

などと、二人の楽しそうな声が室内に少しだけ漏れてきた。

 

 

「………」

 

 

それを聞きながら上条は少しだけ唇を吊り上げると、踵を返して二人から離れようと。

あまり長くいると、立ち聞きしているのがバレてしまうから。

 

 

「上条くん、本当に良かったの?」

 

「鹿目さん……」

 

 

そんな彼に話しかけたのはまどかだ。その顔は寂しげである。

と言うのも上条は、この空間の支配者と言えるまどかとマミに、一つの願いを申し出た。

それは、美樹さやかから自分に抱いている好意を消してくれと言うもの。

そして上条がオーディンだと言う事を隠していた事『そのものの』流れを変更してくれと言う事であった。

上条がオーディンである事を誰も疑わないし、不思議に思わない。

 

 

「さやかちゃんは上条君の事――!」

 

「いいんだ、僕には……、資格が無い」

 

 

いや、きっと恐れているのかもしれない。

だから、知らないままで、終わったままでいい。

 

 

「さやかには、キミや巴先輩がいる」

 

 

そして北岡と言うパートナーが。

 

 

「いまさら僕一人の記憶が消えたところで、問題は無い」

 

「でも……!」

 

 

まどかとしては、さやかの恋心を無かったことにはしたくなかった。

しかし上条に懇願され、仕方なく――と言う事だ。

これでいいのだろうか? まどかとマミには引っかかる物があった。

 

 

「じゃあね。僕はあっちで雑誌でも読んでるよ」

 

「あ……」

 

 

ココは誰しもが幸福である空間であってほしい。

だからマミは上条の願いを無視できなかった。

今が上条にとって幸福だというのならば、まどか達はそれを否定できない。

たとえそれが本当の幸福ではないと分かっていても、上条の望みを否定できなかったのだ。

 

上条は今――、本当に幸せなのだろうか?

ふとした時に、いつも考えてしまう。

 

 

(いや――)

 

 

それはココにいる全員に言える事か。

まどかは複雑そうに表情を歪めながらも、上条に背を向けて歩き出した。

 

 

 

 

 














ビルド終わりましたね。
個人的にはかなり冒険した作品だと思います。

まあまずやっぱりエボルトをずっと引っ張っていくと言うのは新鮮でしたね。
幽遊白書の戸愚呂のような物と言えばいいんでしょうか。
強大な敵にどうやって立ち向かっていくのかを描いた構成は今までに無い刺激がありましたね。

あとは僕はネットの評価とかも見ているんですけど、今回はなかなか賛否両論だったというのか。
ガバガバという言葉が目立ちましたが、ここも思うところがあって。

まあ確かに同じような話が多かったり、説明が無い部分とかもあったと思うのですが、そこは見ている側に投げていたような気もしていて。

これはエグゼイドでも感じたんですけど、やっぱりSNSが今の時代ですから。
あえて説明せずに、「お前らが考えてくれ!」みたいな物があると思うんですよ。
考察や、妄想を公式に昇華させていく。エグゼイドやビルドのツイッターだと、ネットで盛り上がったワードを使ったりしているので、ある意味視聴者と一緒に作っていくみたいな新しいやり方も少しは感じましたね。
あえてブン投げる。それが良くも悪くも出ていたのでは無いでしょうか。


今ちょっと鎧武を見直しているんですけど、紘汰がインベスから人を守るシーンがあって、その後にインベスが逃げるんですけど、紘汰は追わずに戒斗と一緒にブラーボと戦うんですよね。
これ見てる人の中には、「いやいや、ドリアンはバロンに任せてお前はインベスを追えよ」って言う文句があるかもしれないんですけど、ちゃんとその後に紘汰が「インベス忘れてた!」みたいなシーンを挟むんですよ。
とりあえずこれで紘汰の性格みたいなものは分かるじゃないですか。

多分、今、ビルドやエグゼイドは、この「忘れてた!」をあえて書かないと思っているんですよね。
これで見る人によっては、そのまま受け取る人と、「忘れてた!」を妄想する人が出てきて、そういった考えをSNSで補完していく。
そういう形が来ているような気がしたんですよね。

例えば、ブリザードナックル使う回で、ライダー達がなぜか効果を知っている感じで連携したみたいな流れがあったんですけど、人によっては「説明してないのに何で知ってんだ?」だとか、「事前に打ち合わせしてた」とか、「ジーニアスの数式には、作戦を伝える能力がある」みたいな色んな意見があって、ちょっとしたシーンの一つにも捉え方の違いが出てくるのは非情に面白いと思います。


ただ個人的に気になったところは、ちょっとライダーの『遊び』が少なかったかなと。
ビルドは見た目かなりカッコいいですけど、まあ正直フォーゼとか、オーズの既視感みたいなものはありましたし。

クローズがドラゴンで、グリスがロボとカラスですか。あとはローグがワニ。
ってなっても、まあそこまで違いは無かったのかなと。
まあ特にクローズチャージとグリスは、ほぼほぼ能力的にそこまでギミックがあった訳じゃないですからね。ツインブレイカーも共通してますし。
ボトルの能力がなければ、かなり似てるって言うのが、ちょっと残念だったかなって思います。

ジーニアスも設定的にはコズミック系なんでしょうが、映画とかでちょっとやっただけで、そこまで能力を発揮してませんからね。
あと武器もそこまでギミックがあった訳ではないですし。
フルボトルバスターとかガンガンセイバーに似てるって言われてますけど、あっちはいろいろモードチェンジできるのに比べてフルボトルバスターはちょっと傾けて銃になるだけですから。

フルボトルも基本的にはフリフリシャカシャカするだけなので、玩具的な面白さがちょっと低かったかなと思います。
でもスチームガンはかなり面白かったですね。
剣と合体してライフルになったり、変身アイテムだったり。



とにかくいろろ書きましたけど、僕にとってビルドは、かなりの意欲作だなって思いました。
ガバガバだとか言われてるのは、まあ仕方ないかなとは思います。
僕も「あれこういう感じのヤツ前も見たな」みたいな感じはありました。

ただソレ込みでも、平成二期9作目にして、とんでもないものを放り込んできたなと言う感想でしたね。
まあやっぱりオーズからウィザードまでは守りに入ってたと思うので、鎧武だとか、エグゼイドみたいな「ぶち込んでやるぜ」感は好きですよ(´・ω・)b


キャラクターはげんとくんが一番好きでした。
ライダーはビルドのホークガトリングが一番かっこいいと思います。
あとタンクタンクも好きですね。


で、次はジオウですか。
歴代ライダー登場のお祭り作品なので、かなり楽しみにしておきます(´・ω・)

しかし白倉P……?
おかしいな、彼は韓国でゼビウスによって葬られたはず……。


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