仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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第10話 (編後)義正の当本

 

 

「やれやれ、仕方ありませんね。美樹さん、考え直すつもりは無いんですか?」

 

「あたりまえだッッ!!」

 

 

須藤はため息を一つ。そしてキャンデロロへ指示を出す。

命令を受けて、キャンデロロはさやかに攻撃をしかけていった。

 

リボンを銃に変え、黄色い弾丸を放つ。

さやかはそれを剣で受け流すと、再び須藤に向かって足を進めた。

だが魔女は次々に弾丸を発射し、さやかを近づけさせない。

 

 

「……ッ!」

 

 

激しい怒りがこみ上げてくる。

あんなに優しかったマミが、さやかに攻撃を仕掛ける。

それも全ては須藤のせいではないか。

 

さやかは明確な、そして鮮明な殺意を刃に込めた。

先ほど一瞬、心に浮かんだのは須藤への尊敬の念だ。

もちろんそれは嘘ではなかった。だからこそ許せない。マミを、そして自分を裏切った気がして絶対に許せなかった。

 

 

「須藤ォオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「美樹さん、貴女も正義の邪魔をすると言うのなら……」

 

 

Vバックルが須藤の腰に現れる。

 

 

「悪と、思って構わないんですね?」

 

 

須藤は冷たい目でさやかを睨みつける。

それでもさやかは足を止めなかった。だからこそ須藤もデッキをバックルへ装填する。

 

 

「変身」

 

 

激情のさやかと、驚くべき程に冷静なシザース。

その時、まどかはもう一度叫んだ。戦いを止めほしい。

その声が響く中で、さやかとシザースは武器を打ちつけ合う。

 

競り合う剣と、バイザー。

そこにかつての絆は無い。あるのは、明確な殺意のみである。

 

 

『ソードベント』

 

 

さやかは迫るボルナイフを紙一重で交わしながら、シザースの鎧に剣を叩き込む。

スピード面で見れば、さやかは圧倒的だ。しかし防御面ならばシザースの圧勝である。

 

シザースは剣を回避せずに鎧で受け止めると、反撃の蹴りをさやかのわき腹に叩き込んだ。

重い一撃だ。手加減なんて無い。さやかの呼吸が止まり、不快感に表情が歪む。

 

 

『!!』

 

 

一方でキャンデロロは標的をさやかではなく、サキに移した。

それは足止めであり、なによりも『盾』だ。

 

サキ達は、マミを攻撃できない。

シザースはそれを分かっていた。その中途半端な甘さが勝敗を決する。

蹴りを受けてよろけるさやかに、シザースは次のカードを発動した。

 

 

『フリーズベント』

 

 

ボルキャンサーが、さやかの真後ろに出現する。

一瞬の事で、反応が遅れてしまう。それがアウトだった。

さやかを包み込むバブル。剣で斬りつけても、足裏を叩きつけても全く壊れない。

 

 

「動けないッ!」

 

「それでは、さようなら」『シュートベント』

 

 

マスケット銃がシザースの手に収まる。

 

 

「憧れの先輩が使っている武器で死ねるなら、本望でしょう?」

 

 

シザースは迷う事なく引き金を引いていく。

破裂音が聞こえ、さやかは目を閉じた。反射的にマントで身を包んで防御の姿勢をとる。

苦し紛れだが、無いよりかはマシだろう。魔法で強化されたマントなら盾になってくれる筈だ。

 

 

「ッ!?」

 

 

しかし意外にも攻撃は外れていた。

水の弾丸は、さやかではなく、全く別の方向に向かっていたのだ。

首を傾げるシザース、この近距離で外すなど考えられない。

 

 

「……成る程、そう言う事ですか」

 

「須藤さん! さやかちゃん! 少し落ち着いてくれッ!!」

 

 

シザースの視線の先、そこに立っていたのは龍騎である。

先ほど違和感を感じてデッキを見てみれば『ガードベント』が追加されていたのだ。

この状況を打破してくれる希望を祈り、それを発動させたと言う訳だ。

 

今、龍騎が持っているのは真っ赤なマント。

それを靡かせれば、相手の攻撃対象を強制的に自分にする事ができる。

龍騎はまるで闘牛士のごとくマントを揺らす。それが効いたのか、キャンデロロもまたシザースの命令を無視して龍騎を追い始めた。

 

 

「余計な事をしてくれる――ッ!」

 

「いやッ、ちょっと待ってくれよ! 仲間同士で戦うなんておかしいだろッ!?」

 

 

キャンデロロは龍騎を本気で殺しにかかっている。

確かにおかしい事である事は間違いない。仲間同士で殺しあって、無意味極まりないだろう。

 

 

しかし、殺し合わなければならない。

片やマミを救うため。片や正義を守るため。邪魔な存在を消さなければ。

そこには何の矛盾も無いのではないか?

 

 

「おりゃアアアアアアア!!」

 

「ッ!」『ストライクベント』

 

 

バブルは硬いが、壊れないワケでは無いらしい。

さやかが必死に暴れると、泡が弾けて消えた。

自由になったさやかは、再びシザースへ向かっていく。

 

 

「隠蔽、冤罪――ッ! 誤報! この世は腐っている!」

 

 

だから変えなければ。

シザースはストライクベントである『シザースピンチ』を振るい、さやかを狙う。

 

龍騎の『ドラグケープ』は攻撃の対象を自分に変える離れ業であるが、流石に意思あるものをずっと拘束し続ける事はできないらしい。

既にシザースは龍騎の洗脳を打ち払い、さやかと戦っている。

 

 

「美樹さん、貴女はまだ幼い。だからこの世の汚さが分からないんです!」

 

「うるさい! どんなに世界が汚くても、それがマミさんを巻き込んでいいって事にはならないッ!!」

 

 

再びシザースピンチと剣がぶつかりあった。

激しく火花が散り、さやかとシザースは互いに殺意を全開にして睨み合う。

 

だがシザースは忘れていた。

キャンデロロは龍騎が誘導しているのだ。

それはつまり敵は、一人じゃなくなったと言うこと。

 

 

「うォオオオオオオオオオッッ!!」

 

「!」

 

 

まさに、一瞬。それは一秒もない時間。

サキがシザースの横腹に掌底を叩き込んだ。

雷撃を纏ったその一撃は、シザースの装甲が薄い部分にえぐり込む。

 

 

「がァ――ッ!!」

 

 

想像を絶する衝撃がシザースを襲い、思わず動きが止まった。

 

 

「グッ!」

 

 

だが、なぜか攻撃をヒットさせたサキも、地面に膝をついて動かなくなる。

呼吸が荒く、立つ事ができない様だった。サキが一瞬で動いた事と関係があるのだろうか?

 

 

「くそッ! 予想以上に……! キツイな――ッ!」

 

 

サキはもう動けない。

しかし、作った隙はあまりにも大きい。その隙にさやかは須藤のデッキを狙う。

 

 

「待てッ! さやかァアッッ!」

 

「!」

 

 

さやかを止めたのは他でもないサキだった。

 

 

「どうして止めんのよッ、サキさん!!」

 

 

今ならシザースは隙だらけの筈なのに。

しかし普段の関係が染み付いているのだろうか。サキの命令を聞いて、さやかは足を止めた。

 

 

「須藤ッ! まどかを見ろッッ! さやかもだ!!」

 

「!」

 

 

シザースとさやかは、サキに言われるがまま視線を移した。

そこには、泣きながら震えているまどかの姿があった。

恐怖と混乱で腰が抜けているのか、立ち上がれずにへたり込んでいる姿はとても弱弱しい。

 

 

「須藤! お前の正義が正しいのなら、なぜ彼女は泣いている!? それでいいのか? お前の正義で人を悲しませてもいいのかッ!? 答えろォォ!!」

 

 

サキは震える膝を叱咤しながら立ち上がった。

その眼光に思わず怯むさやか、そして沈黙するシザース。

 

サキは、シザースに殺意こそ湧いたものの、本当に殺そうなどとは考えていなかった。

どんなに憎くても、どんなに苦しくても、しかるべき場所が存在している以上、自分たちの独断で命を左右してはならない。

 

なによりもマミが信じた『正義』のためにも、この戦いを続ける事は許されないのだ。

 

 

「魔女になったマミは通常の方法では戻らないんだろ? だけどきっと戻せる方法はある。それこそ全ての戦いが終わった後の願いでもいい」

 

「………」

 

「だから、こんな事はやめろ。止めてくれ……!」

 

 

須藤は、裁きと言う名の殺人を止めて、マミを何らかの方法で抑制しておけばきっと何とかなる筈だ。

 

 

「こんな状況だからこそ冷静さを失ってはいけない」

 

 

サキは掠れる声で必死に訴えた。

だからさやかも、シザースも攻撃を中断して後ろへ下がっていく。

分かってくれた様だ。サキは安心して笑みを浮かべた。

後ろにいるボルキャンサーに、気づかないまま。

 

 

「ッッ!?」

 

「浅海さん、私は――」

 

 

シザースはアドベントを発動していた。

何故? もう戦う必要はないんじゃないのか?

サキの視線に、シザースは答える。冷静になるもなにも。

 

 

「私は、はじめから冷静ですよ」

 

 

その言葉と共に、ボルキャンサーはサキに襲い掛かった。ハサミが開き、首を狙う。

サキは疲労でまともに動けない。かろうじて後ろへ下がることで回避はできたが、少しや刃が掠ってしまう。

 

飛び散る鮮血。

シザースはもう決めていたのだ。魔法少女達は甘さに飲み込まれて、『正義』を邪魔しかねない。

 

 

「なら、仕方ないでしょう。平和には多少の犠牲がつきものだ」

 

「!」

 

「貴女達を殺すのも、また一つの正義です」

 

「なんで……」

 

『アドベント』

 

 

追撃を加えようとしたボルキャンサーだが、龍騎が発動したアドベントによってドラグレッダーが割って入る。

ドラグレッダーは長い体を鞭のようにしてボルキャンサーを吹き飛ばすと、咆哮を上げる。それは龍騎の叫びでもある。尚、戦いを止める様に叫ぶ龍騎。

 

だがもう全てが遅かった。

サキも、さやかも、シザースも確信する。

目の前にいる者を、殺さなければならないのだと!

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

決意の叫びと共に、サキの体が激しい放電を起こした。

先輩としてできるのは、さやかの手を汚させない事と見た。

サキ自身が須藤を殺す。親友を、後輩を、幼馴染を、仲間を守る為に。

 

白く光る落雷がシザースを捉え、再び動きを封じる。

そして鞭を伸ばしてシザースのデッキを狙った。

 

 

「しま――ッ!!」

 

 

シザースも落雷のスピードには対処できない。

衝撃が走り、帯電したまま膝を着く。そうしていると鞭が見えた。

 

 

「ぐゥウッッ!?」

 

 

バリン! と、音が響く。

吹き飛ぶシザース。見れば、腰中心にはサキの鞭があった。

 

"ランチア・インテ・ジ・オーネ"。

雷の魔法を、鞭の先に一点集中して貫通力を跳ね上げる魔法だ。

 

そう。鞭はデッキを貫いた。

そこでサキは崩れ落ち、うつ伏せに倒れて動かなくなってしまった。

どうやら魔法の代償として、疲労感が蓄積されるらしい。

 

 

「ぐあああ……ッッ!」

 

 

だが、同時に決着だった。壁に叩きつけられたシザース。

腰の中央にあるデッキを確認すると、小さいが穴が開いており、それを中心にして亀裂が広がっていく。

 

 

(くッ、油断していたか!!)

 

 

欠片が地に落ちる。

そして、徐々に崩壊していくデッキ。

亀裂が広がっていき、崩壊のスピードが上がっていく。

 

 

「!!」

 

 

シザースの体が。そしてボルキャンサーの体が粒子化を始めた。

デッキは騎士の魂ともいえるものだ。破壊されれば、変身が解除されてしまう。

 

 

「しまった!」

 

 

初めて明確な焦りを感じるシザース

前を見れば、さやかが剣を持って向かってくるのが見えた。

まずい。シザースは考える。粒子化――、つまりまだ完全に負けた訳ではない。

 

 

「ボルキャンサァアアアア!!」

 

 

シザースは叫び、ボルキャンサーを呼び戻す。

同時に装甲の全てが粒子化してしまい、須藤本人が引きずり出された。

 

だが、まだボルキャンサーは消えてない。

この僅かなタイムラグの間に、さやかを殺せば可能性はあった。

 

 

「美樹さやかを殺せェえッッ!!」

 

 

ボルキャンサーはそのままハサミを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下ろして、立ち止まった。

 

 

「え……?」

 

 

何で。どうしてッ?

契約モンスターは自分の駒じゃないのか!? 自分自身の鏡像じゃないのか!?

どうして主人が危険なのに立ち止まるんだ。再びボルキャンサーの名前を叫ぶ。

 

しかしどれだけ叫んでもボルキャンサーは動かなかった。

 

何かしたのか!?

須藤は辺りを見回すが、何もそれらしい様子はない。

サキは倒れて動けなくなっているし、まどかはへたり込んで泣いている。

龍騎はキャンデロロをおびき寄せているし、さやかは――

 

 

「――ッ!」

 

 

さやかは、すぐ目の前に。

 

 

「須藤ォオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

鬼のような形相で迫るさやか。

須藤の時間がスローモーションに変わる。その時、ある考えが頭に浮かんだ。

そんな事はない。そんな事がある訳がない。そう考えながらも、須藤は冷静に考えていた。

 

どうして、ミラーモンスターが動かなくなったのか。

自分が想いと共に変身した時、ミラーモンスターは誕生する。

その想いに背いた場合、モンスターへの信頼と絆も薄れるのだと、キュゥべぇ達から聞いたっけ。

 

須藤は、初めて変身した時に何を思っていたのだろう?

何を、ボルキャンサーに託したのだろう?

 

 

「………」

 

 

須藤はそれでも――

それでも言う。この選択は間違っていない。私自身が――

 

 

「――……、正義」

 

 

ドンッ! と、衝撃を感じた。

直後、焼ける様な激痛が胸を焦がす。

あくまでも冷静に須藤は確認を行う。目の前には苦しそうなさやかが見えた。

 

 

「………」

 

 

そして自分の胸に剣が生えているのを確認する。

 

 

「さ……やか――、ちゃ――……」

 

 

まどかは青ざめた様子でそれを見ていた。

龍騎もその光景につい立ち止まる。力なくドラグケープを落とし、サキは悔しそうに涙を流した。

 

さやかの剣は須藤の胸を貫いたのだ。

騎士の力を纏っていない須藤は、ただの人間となんら変わりない。

その状態で剣を刺されれば、訪れる結果は一つしかない。

誰もが理解していた筈だ。

 

 

「――――」

 

 

須藤の口からありったけの血が吹き出る。

コートが鮮血に染まっていき、その場に膝を着いた。

 

そして、口を開く。

声にもなっていないソレだったが、何故か鮮明に聞こえた気がして、さやかもその言葉は心に受け入れた。

 

 

『いずれ、分かる。この世は、悪意に満ちている』

 

 

だから、正義を。

ここまで、ここまでだった。須藤の言葉は、須藤の意思は。須藤の――

 

 

命は

 

 

倒れる須藤と、広がっていく血。

ピクリとも動かなくなったのは、もう死んでいるからに他ならない。

 

コレは夢? それとも現実なのか?

分かっていたのに、覚悟していた筈なのに分からなくなって、皆沈黙する。

だがそれでも時は進むのだ。キャンデロロは粒子化を始めていく。

呪いは終わる。夢から覚める。条件は達成された。

 

粒子がマミのシルエットを形作っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ?」

 

「!!」

 

 

ゆっくりと『彼女』は目を開けた。

何があって、自分は今どうなっているんだっけ?

 

ぼんやりと鈍る意識の中で、巴マミは目を覚ました。

直後、衝撃が走る。泣きじゃくるさやかに抱きしめられて、マミは思わず戸惑ってしまった。

 

 

(あれ? 私たしか、魔女に食べられそうになって。そしたらデートに行った筈の美樹さんに助けられて――……?)

 

 

「マミさぁあんッッ!! マミさぁんんッ!!」

 

「うふふ、どうしたの? そんなに泣いちゃって――……」

 

 

立ち上がったマミは、とり合えずさやかを落ち着かせる為に抱きしめる。

 

 

「よかった、本当に――……ッッ」

 

 

サキも泣いているじゃないか。

珍しい。長い間、一緒にいたが、泣いている姿は初めて見るかもしれない。

まどかも真司も放心状態で座り込んでいる。

ええと、何があったんだっけ? マミは苦笑しながら考えてみる。

 

 

「ぅううぅうう!!」

 

「あはは……」

 

 

とは言え、まずはさやかを落ち着かせないと、考え事もできない。

マミは仕方ないと笑い。さやかを抱きしめる力を少し強めて、頭を撫でた。

 

さやかはマミの香りと感触を確かめるように強く抱きしめた。

この優しさを守る為に取った行動を、後悔しないように……。

 

 

「ねえ、マミさん――」

 

「なぁ……、に?」

 

「ずっと一緒にいてくれる?」

 

 

さやかはマミの胸に顔を埋めて言った。

きっとマミは笑いながらも、容認してくれるだろう。

これからの事は、それから考えればいい。マミがいる世界で考えれば――。

 

 

「………」

 

「ッ? マミさん?」

 

 

でも、少し待ってみてもマミは返事をしてくれなかった。

聞こえなかったのか? さやかはマミの顔を見るため手を離す。

 

 

ドサリ

 

 

「え?」

 

 

ドサリと、巴マミは倒れた。

そう言えばマミの香りが少し違った。この臭いは、さっき嗅いだばかりじゃないか。

どこで? 今、さっき――

 

須藤から、嗅いだ血の臭い。

 

 

「マミさん? ねぇ……、マミさんってば――……」

 

 

倒れているマミ。

おかしいな、おかしいな、おかしいな。どうして血が出ているの?

どうして脚や手が、変な方向に曲がっているの?

どうして青痣だらけなの?

どうして骨が皮膚を突き破っているの?

どうして、息が苦しそうなの?

 

 

「なにこれ」

 

 

さやかが小さく呟いた言葉。

それは誰にあてた物でもないが、質問と勘違いしたのか? 『彼』が口を開いた。

淡々と、何の感情もなく。

 

 

『言ったじゃないか、【魔法少女としての力を全て失う代わりに、しがらみから開放されて普通の少女に戻る】って』

 

 

魔法少女は願いを叶えたからこそ、力を手に入れたのだ。

ならば、その力を失うと言う事は。

 

 

『巴マミは、戦いから開放された代わりに、願いの力が無効化されたって事だな。ま、当然だろ! 願いを叶える代わりに戦いの運命に身を委ねるんだ、しかるべき代償だぜ』

 

 

ジュゥべえは得意げに言った。

 

 

「え? 願いが無効化され――……、え?」

 

 

マミの願いは生きたいと言う事だ。

それが、無効化されると言うことは――?

 

 

『よく分からないけど、さやか。はやくお別れを言った方がいいよ』

 

『ああ、そうだぜ。サキ達もいいのか? 巴マミは――』

 

 

キュゥべぇもジュゥべえも、声を合わせて言う。

 

 

『もう死んじゃうよ?』『もう死ぬぜぇ!』

 

 

………。

 

 

「うぁあァアあぁあァアアアァッッ!!」

 

 

初めに叫んだのはさやかだった。

マミの肩を掴んで必死に声をかける。

 

 

「ヤダよ! やだよ! やだよやだよマミさんッッ! 嫌だ、死なないで! 死なないでよぉッッ!!」

 

 

そこで我に返ったのか、サキとまどかも駆け寄り、マミに回復魔法をかける。

さやかも回復魔法をかけるが、マミを中心にして赤い海が広がっていくばかりだ。

 

 

「………」

 

 

マミは、その中でゆっくりと微笑んだ。

自分が置かれている状況を理解したようだ。

何故こうなったのかも、全て分かっていた。

 

そして訪れる結末も悟る。

だからマミはさやかの手を握って微笑んだ。

 

 

「もう……、い――」

 

 

声にならない声を出す。

聞こえているかは別として、マミは言葉を続けた。

もう、いいから。もう自分は。

 

 

「諦めるなマミッ! お前――ッッ!!」

 

「マミさんッ!! 嫌だよ! マミさ――……ぁ」

 

 

マミはまどかとサキにも微笑んだ。

そして、立ちすくむ龍騎にも。

 

 

「どうか…、須藤さ――、を、恨まな…、で……」

 

 

かわいそうな人。でも、それは自分もだから。

きっと、自分もいつか須藤と同じ考えを持ったかもしれない。

そう考えてマミは須藤を許した。きっと、皆は受け入れてくれないかもしれないけど。

少なくとも、巴マミは許したのだ。

 

 

「ぁ、も……、駄目――、ね」

 

 

ああ、もう駄目かもね。

マミはそう言って笑ってみせる。

本当に聞こえているだろうか? 本当に笑えているだろうか?

 

涙で濁る視界のなかで、マミは仲間を見続けた。

全身が鈍い。痛みはないがすごく疲れた。

 

 

「も……、み――、に……、で」

 

 

もっと、皆と一緒にいたかった。

でも、ずっと一人だったマミが見るには幸福すぎる夢だったのかもしれない。

 

 

「嫌だッッ! 嫌だ嫌だ嫌だァア!」

 

 

さやかは叫び、マミの手を握る。

その手は冷たくて、とても弱い光に見えた。

 

 

『ゆまちゃんの事が心残りだけど、後を任せる事、許してもらえる?』

 

 

聞こえただろうか? 声は出ていないが。

 

 

「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だよぉ!」

 

「マミ! 早く、何とか――ッ! 誰か、何とかッ!!」

 

 

泣き叫ぶまどか達。

マミは悲しまないでと微笑んだ。

 

そして、お願いを言う。

きっとまたいつか出会う時がきたら、その時も、また一緒にチームを組んで。

 

 

「た……、た、か――ッ」

 

 

笑顔で、マミは目を閉じた。

 

 

「マミ? おい……! 目を開けろ! おいッッ!!」

 

「止めてよ冗談でしょ!? マミさんッ!!」

 

「そんな! マミさ……」

 

「マミちゃん……? ウソだろ?」

 

 

サキもさやかも、マミが起きる様に必死にゆすっている

それをキュゥべぇ達は止めた。たった一言、絶対の言葉で。

 

 

『もう止めなよ、無意味だよ。だってもう死んでるじゃないか』

 

『そうそう。コッチとしても、やっと思い出せたんだからよォ、そう言うのチャッチャと終わってもらいたいぜ』

 

 

その言葉と共に、泣き崩れるさやか。

まどかはショックのあまり感情を出さず涙だけ流している。

力なく崩れる真司。

 

 

「――ッッ!!」

 

 

サキだけは鞭をキュゥべえ達に向けて睨みつけた。

 

 

「何故マミが死ぬ事を言わなかったッ!?」

 

 

サキは怒号を上げて二匹に問いかける。

だが、その返事はまた淡白なものだった。

 

 

『ソレくらい読み取ってもらいたかったよ。キミたち人間はいつもそうだね、説明された事が全てだと決め付けて情報を得ると言う努力を簡単に放棄する』

 

『そもそも詳しく聞かれなかったしな。つぅか、もういいよな先輩?』

 

 

それだけ、それだけの返事だった。

マミと須藤が死んだ事に、なんのリアクションも示さない妖精達。

 

サキは怒りがおさまらずキュゥべえ達に掴みかかった。

しかしその瞬間、二匹の姿が消失したのだ。

消えた? 戸惑うサキ。だがその時だった。

 

 

「マミおねーちゃん……?」

 

「ッ!!」

 

 

ホールの入り口にゆま達の姿が見えた。

魔女を倒し、ここまで来たのだろう。

 

 

「来るなァアッッ! 見るなッッ!!」

 

 

サキが叫ぶ。

かずみ達は肩を振るわせ、とりあえずは止まった。

しかしサキの鬼気迫る表情が、逆に不安を煽ってしまう。

 

いずれにせよ、倒れているマミは見えてしまった。

ゆまは気になって、必死に押されるかずみから離れようともがいていた。

 

 

(駄目だッ、ゆまにだけは見せられない! 隠し通さなければ――ッ!!)

 

 

サキは必死に逃げ道を探す。

死体をどうにか隠す事はできないか? いや、それよりもゆまの方を――。

そんな事を必死に考える。必死に、必死に、必死に――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【巴マミ】【須藤雅史】

【シザースチーム・両名死亡】

【これにより、両者復活の可能性は無し。よって、シザースチーム完全敗退】

 

 

「なんだ……ッ、これは――ぁ……っ」

 

 

もう嫌だ。

何が起こっているのか全然分からない。理解できない!

マミ達が死んだ事が『全員の脳』に叩き込まれる。叫ぶゆま、かずみもショックで手を離してしまった。

 

また、ゆまの泣き叫ぶ声が聞こえる。

おそらくマミの死体を確認したのだろう。でも誰も、ゆまを慰める事はしなかった。

誰もが立ちすくみ、黙る。そうしないと、少しでも落ち着かないと、壊れてしまいそうだったから。

 

ああ。ぼんやりと暁美ほむらは考えていた。

自分は、なんて馬鹿な夢を見ていたんだろう?

 

仲間になれるって、一緒に戦って。

一緒にお茶して、そしてアイツを倒してハッピーエンド。

凄く簡単に、楽に終わる楽しい夢を見ていた。

 

忘れていた。

きっと変な事が起こりすぎて腑抜けていたに違いない。

誓ったじゃないか、理解したじゃないか。

 

 

(そう、そうよね……)

 

 

ほむらは理解する。自分の甘さを。

そして『その音声』が、ほむらにより一層の決断を迫らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【シザースチーム完全敗退】【残り、24人・12組】

 

 

(私は――、誰の助けも借りないって言ったじゃない)

 

 

だから思い出した。

そんなに甘くないことを。

 

 

「残り――ッ、だと?」

 

 

サキは、最悪の事態を想像して思わず吐きそうになる。

頼む。止めてくれ。神に懇願するが、その願いはいとも簡単に踏みにじられる。

 

 

『やあ、聞こえているかい?』

 

 

その時、この場にいる全員の頭にキュゥべぇの声が響いた。

そして、知る。これから始まる――

 

 

地獄を。

 

 

やあ、聞こえているかい? ボクはキュゥべえ。

この声は、既に全員覚醒済みの魔法少女13人と、既に覚醒済みの騎士だけに向けた言葉なのでよく聞いてほしい。

 

ああ、あと騎士の『13人』は今現在デッキを持っている人間で決まりだから。

パートナーが覚醒していない人は、早く覚醒させた方がいいよ。

 

おっといけない。

マミと須藤は死んだんだったね。だったら12人ずつだ。

 

さて、アナウンスが流れたとおり、最初の一組が脱落したところさ。

とにかく、死者が出てくれたおかげでボク達の情報ロックが解除された。

だから今から説明するよ――

 

 

「なんだよコレ!?」

 

 

龍騎が叫ぶがキュゥべぇの声は止まらない。鮮明に頭に入り込んでくる。

それは逃げられない何よりの証拠だった。耳を塞ごうとも絶対に聞こえる情報。

そんな中、次はジュゥべえの声が聞こえる。

 

 

『騎士の連中には言ったよなぁ? 全ての戦いが終われば願いが叶うってよぉ。お前らはそれが魔女だと思ってたんじゃないか? いやいや、それは実は違うんだよ』

 

「ッ!?」

 

『敵は――、"お前ら"』

 

 

ジュゥべえの言葉がさらに混乱を加速させる。

 

 

『敵は、"魔法少女と騎士"なんだよなコレが! お前らには、今からあるゲームをやってもらうぜぇ?』

 

 

ゲーム? 皆、怯み、ただ話を黙って聞いていた。

すると次はキュゥべえの声が聞こえてくる。

 

 

『ルールは簡単だよ。普段どおりに生活してくれればいいだけさ。ただ、終了条件を選ぶ必要があるけどね』

 

 

終了条件――、その言葉でついに誰かが吐き出した。

それはまさに悪夢。

 

 

『終了条件は二つ。まず、"皆で殺しあって最後の一組になるまで生き残るか?"』

 

『それとも、いずれ見滝原にやってくる。"魔女・ワルプルギスの夜を倒すか"、だぜ?』

 

 

もちろん勝者には素敵な景品が用意されているとキュゥべえは付け足した。

最後の一組になるまで殺し合い、そして生き残った場合。

騎士が二つ、魔法少女は一つ、願い事を叶えられるのだ。

なんでもいい。どんな願いも妖精さんは叶えてくれるから。

 

 

『殺した人数でさらに増える可能性もある。もっと願いを叶えられるんだ。素晴らしいじゃないか』

 

 

次は、ジュゥべえが語る。

ワルプルギスの夜を倒した場合、もちろん殺しあう必要もないので皆生存できる可能性もある。

 

 

『ワルプルギスの夜を倒せたなら、生き残った者全員で一つの願いを叶える事ができるぜ。みんなで仲良く悪いヤツをぶっ飛ばした上に、願いまで叶えられるたぁハッピーだな!』

 

 

それはよく話し合って決めて欲しいと、ジュゥべえは言った。

極論を言えば――

 

・多くの願いを叶える為に他者を殺すか?

 

・皆と生き残るために願いを諦めるか?

 

 

『さあ、始めようか』

 

 

キュゥべぇの声が、始まりを告げる。

もう、逃げられないと分かっているのに――、とても怖かった。

 

 

『始めよう、神のゲームを――』

 

 

FOOLS(フールズ)GAME(ゲーム)をね。

 

 

『契約した皆は、願いを叶える為に潰しあってよ!』

 

 

キュゥべぇの明るい声と共に、絶望のゲームが始まりを告げる。

誰も、何も、逃げられはしない。せめて己の答えを示すまで愚かに回り続けろ――

 

 

 

 

 

愚者達よ

 

 

 

 

 

 





次回からタイトルとあらすじ変わります。
あとは番外編のお茶会も開始します。


まあいろいろ言いたい事はあるんですが――


この作品はハートフルな作品です(適当)
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