仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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没にしたネタを今の情報でちょろっと手を加えてみました。
ダイジェスト気味なので、短編ではなくこちらに更新しました。

なのですいません。まどマギ要素ゼロです。
ただ全くの無関係でもなく。
F・G的にはもしかしたらちょっと関係ある、かも。

仮面ライダージオウ、小説版龍騎を見ていることを前提に描いてます。
ネタバレもありますので、どちらも見てない人は見ないでね(´・ω・)


超番外編 アテナの嘲笑

 

合わせ鏡が無限の世界を形作るように、現実における運命も一つではない。

 

同じなのは欲望だけ。

 

全ての人間が欲望を背負い、その為に戦っている。

 

その欲望が背負い切れないほど大きくなった時――、人は、ライダーになる。

 

ライダーの戦いが始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

・2019年

 

 

「ここまでなの……?」

 

 

ツクヨミは唇を震わせて、大きくうな垂れた。

隣では明光院ゲイツが白目をむいて気を失った所だった。せめてと――、ツクヨミはゲイツを庇うように這って移動する。

 

 

「ジオジオ~! 哀れな人間ジオ。非力な存在ジオ!」

 

 

無様な姿だと――、魔王が笑っている。

 

 

「せめて己の運命を決めて、散っていくジオ」

 

 

アンケートジオ! 先に死ぬのはゲイツかツクヨミか!

ゲイツが先に死んでほしい人はコッチの番号に!

ツクヨミが先に死んでほしい人はコッチの番号に電話してほしいジオ~!

 

 

「残念ジオ。消え去るジオ~」

 

「……ソウゴくん。どうしたの一体。熱?」

 

 

常磐順一郎は、ついに我慢できずに割り入った。

買い物から帰ってきたら、この有様だが、何がなにやらサッパリである。

すると魔王は100均ショップで買ったモンスターのお面を外して、常磐ソウゴに戻る。

ツクヨミもゲイツも、なんだか少し恥かしそうに立ち上がった。

 

 

「やだなおじさん。文化祭の劇の練習だよ」

 

「へ、へぇ。凄いエキセントリックな劇だね……」

 

 

ソファに寝転んでいた主水も同意する。体を起こすと、読んでいた台本を放った。

 

 

「とんでもない脚本だな。過去の文化祭ってのは皆こうなのか?」

 

「そうよ。恥かしいわ、こんなの。ゲイツもそう思うでしょ?」

 

「当たり前だ。それより、本当に練習に付き合えば俺と戦うんだろうな、ジオウ!」

 

 

未来人には受けが悪い。ソウゴは耳を塞いで、不満をシャットアウトする。

確かに無茶苦茶なストーリだ。ファンタジーで、魔王が活躍して、ビターで、スイートで、エキセントリック。

しかしソウゴはこの脚本から光るものを感じていた。王になったあかつきには、この脚本家を王の活躍を知らしめる作家に任命しようと思った。

 

 

「それに脚本とか関係なく、演じるのは面白いよ。違う自分になれたみたいで」

 

「違う自分か。いやいや、案外人間っていろんな顔を持ってるものだよ」

 

「そうなの? 叔父さんも?」

 

「まあ、そりゃあね。ソウゴくんだってそうでしょ?」

 

「うーん」

 

 

オーマジオウを思い出す。

 

 

「そうかも。悪い自分と、良い自分がいるっていうか」

 

「それが人間ってもんだよ。ほら、お昼にしよう。待ってて、すぐに用意するから。今日はチキン南蛮だよ」

 

 

なぜか主水が青くなって震えているが、ソウゴとツクヨミは期待に目を輝かせる。

しかしちょっとした問題が起こった。というのも、叔父さんがタルタルソースを作ろうとしたときに、マヨネーズを切らしている事に気づいたのだ。

まあコンビニは近くだ。特にやる事もないので、ソウゴがおつかいを引き受ける。

家を出て五分ほど歩けばコンビニだ。ソウゴはマヨネーズを買うと、さっさと帰路に着く。

 

 

「ん?」

 

 

ふと、足を止める。

なんだか耳鳴りが聞こえる。キィンキィンと、不思議な音だった。

言いようのない不快感、その時ソウゴは前の方で男の人がうずくまっているのを発見する。

そこで音が止まった。もしかしたらこれは耳鳴りではなく、騒音だったのかもしれない。

ソウゴはとりあえず、その男性のもとへ足を進めた。

 

 

「大丈夫? 気分でも悪い?」

 

「う、ぅうぅぁ」

 

「待ってて、今救急車を――」

 

 

ブッと、男性は何かを吐いた。

痰? 嘔吐? ソウゴがチラリと視線を移すと、地面に眼球が転がっていた。

 

 

「え?」

 

 

男は叫んだ。すると口から、目から、耳から、鼻から大量の糸が飛び出していく。

その勢いは凄まじく、眼球や歯、鼻毛を引きちぎりながら体外へ飛び出したのだ。

男性の体が浮き上がった。糸の先には化け物がおり、それが男性を引き上げたのだ。

 

 

「ヴぇ、ヴェヴェ!」

 

 

シアゴーストは、近くのアパートの屋上に立っていた。

糸を吸い取り、男性をキャッチすると、すばやく喉にかぶりついた。

メキュッと音が聞こえて、男性はそこで息を引き取った。シアゴーストは男性の首をもぎ取ると、顔面にかぶりつく。

皮が食いちぎられ、骨がバリガリと砕かれ、シアゴーストは順調に捕食を続けていた。

 

 

2()01()8()』『カメンッ! ライダー!』『ジ・オウ!』

 

 

しかしシアゴーストの頭部に蹴りが入った。

仮面ライダージオウはモンスターを蹴り飛ばすと、アパートの屋上に着地する。

 

 

「ヴェアアア!」

 

 

情けない叫び声をあげながらシアゴーストは地面に激突する。

ジオウは激しい怒りに包まれていた。この町に生きる人たちは、いずれ王の民となる存在。

それを守れなかったこと。死なせてしまったこと。ジオウは怒りに震える指で、スイッチを押す。

 

 

2016(エグゼイド)

『アーマァータァイム!』【レベルアーップ!】『エグゼィィィッド!』

 

 

高い跳躍力で空を舞い、ジオウは化け物を踏み潰すつもりだった。

しかし空に昇った炎。ジオウは空中で凄まじい熱と衝撃を感じ、黒煙を纏いながら墜落していく。

 

 

「うあ゛ッッ!!」

 

 

地面に激突したジオウは、そこで自分がシアゴーストと大きく離れている事に気づいた。

 

 

「なん――ッ、だよ!」

 

 

素早く立ち上がると、そこで気づく。

シアゴーストの傍に、新しい化け物が立っていることに。

 

 

「ッ!」

 

 

そこでジオウは、その化け物の体に数字が刻まれているのを見つけた。

間違いない、あれはアナザーライダーの特徴である。目を凝らすと、『2002』であると分かる。

 

 

「………」

 

 

赤いアナザーライダーは、右腕が龍の頭部になっていた。

それを突き出すと、龍の口から赤い炎が発射されて、ジオウ――、ではなくシアゴーストに直撃して爆散させた。

一撃。ジオウは怯む。シアゴーストを狙ったという事は、まさか味方なのか?

 

 

「アンタは、一体……?」

 

 

アナザーライダーは何も答えない。

代わりにどこからともなく剣を取り出すと、ジオウに向かって走っていく。

 

 

「え? ちょ、ちょっと!」

 

 

間違いなく狙われている。ジオウは地面を蹴ると、エグゼイドアーマーの力で空へ舞い上がる。

下を見れば、先程まで自分がいたところを剣が通過していた。

やはり味方ではない。それを証明するように、アナザーライダーは龍の口から炎弾を連射してジオウを狙った。

一つ、二つ、三つ。次々と迫る炎を的確にガードしていくが、威力が高い。ついには防御が崩れてジオウは炎に包まれる。

 

 

「うわぁぁあ!」

 

 

吹き飛び、再び墜落。

立ち上がると、アナザーライダーは炎が纏わりついた刃を思い切り振るった。すると三日月状の斬撃が発射されて飛んでいく。

再びジオウの悲鳴が聞こえた。斬撃が命中して大爆発を起こしたのだ。爆炎の中に消えていくジオウ。炎が晴れると、そこには誰もいない。

何も残っていなかった。

 

 

「………」

 

 

アナザーライダーは踵を返して、淡々とその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かい? 我が魔王」「うん。ありがとウォズ」

 

 

爆炎の中に消えたジオウだが、実際は炎が命中する瞬間に黒ウォズがマフラーを伸ばして守っていたようだ。

とはいえ、戦闘面では不利と見て、撤退を選んだようだ。ソウゴとウォズは路地裏で先程のアナザーライダーの事について話し合っていた。

 

 

「あのアナザーライダー、なんなんだろう」

 

「あれは龍騎だよ。我が魔王」

 

「龍騎?」

 

「ああ。鏡の中の仮面ライダーさ。無限の象徴」

 

「へぇ。2002年に行けば、何か分かるかな?」

 

 

ソウゴはツクヨミとゲイツに連絡を入れ、タイムマジーンで至急2002年へと向かった。

 

 

・2002年

 

 

とりあえず、まずは聞き込みだ。

ソウゴと、ゲイツ達は何かおかしな事が無かったかを聞いてまわったが、誰も何も知らないという。

とはいえ収穫が無かったわけではない。街ではここ最近、行方不明事件が多発しているらしい。

アナザーライダーが関わっていると睨むが――、やはり情報を持っている人間はいなかった。

 

 

「私、別の場所探してみる」「ああ」

 

 

ゲイツはツクヨミと別れ、さらに街を歩く。すると喫茶店を見つけた。

 

 

(悪くないな。人が集まる場所なら、何か分かるかもしれん)

 

 

ゲイツは喫茶店の中に入る。しかし、中には誰もいなかった。

ハズレか。そうは思うが、何も注文せずに出て行くのは少々、申し訳ない。

流石にゲイツもそれくらいの常識くらいは持ち合わせている。それに、聞き込みで歩いた。少しくらい休憩するのも悪くないだろう。

 

 

「コーヒーをくれ」

 

 

そう言って座る。すると店員が水を持ってきた。

 

 

「………」

 

 

ダン! と置かれる水。雑。とても雑だ。

 

 

「コーヒーはない。紅茶だけだ」

 

 

しかもタメ口。ゲイツは少々ムッとしながら店員を睨む。

 

 

「………」「………」

 

 

鏡があると思った。

いや、違う。人だった。ゲイツと秋山蓮は、しばし沈黙して、お互いを睨みつけていた。

 

 

「わ、ごめんッ」

 

 

一方、聞き込みをしていたソウゴだが、道を曲がったところで衝撃を感じた。

茶色い髪にセルリアンブルーのダウンジャケット。赤いセーター。

城戸真司と名乗った青年は、OREジャーナルというインターネット配信会社に勤めているらしい。

どうやらその聞き込みの途中だったようだ。

 

 

「最近、この辺りで行方不明事件があって。それ、調べてるんだよ」

 

「あ。おれもそれ探してるんだ。お兄さん、何か知らないかな?」

 

 

そういうと真司はメモ帳を取り出して得意げにめくる。

 

 

「実は、結構アツい情報があって。鏡の中に変なものが映ってるって言ってる人がいたんだ」

 

「鏡……」

 

 

ソウゴはふと、左を見る。

そこはショーウインドー。ガラスは、ソウゴの顔を映していた。ソウゴは立ち止まり、目を細めた。

 

 

「ねえ真司。変なのって、例えばあんなの?」

 

「え?」

 

 

真司もガラスを見る。そこには、カニの化け物が立って、コチラを睨んでいた。

 

 

「そうそう。ああいうの――、って、へ?」

 

 

不快な耳鳴りが聞こえた。間違いない。あの時の音だ。ソウゴは素早く真司を突き飛ばす。

 

 

「うわぁぁお!」

 

 

真司はマヌケな声をあげながら吹き飛ぶ。

とはいえ、そのおかげで襲い掛かるハサミを回避する事ができた。

ガラスから伸びてきた腕。ボルキャンサーは獲物を逃がしたと知るやいなや、ガラスから飛び出してきて現実世界へ降り立つ。

 

 

「変身!」

 

 

文字が飛び、ボルキャンサーを打つ。

ジとオとウが仮面に張り付き、ジオウは剣を振るった。しかし刃がボルキャンサーにぶつかった時に感じる感覚。

硬い。ジオウはもう一歩踏み込んで剣を振るうが、ボルキャンサーにダメージが入っている感覚はない。

 

 

「だったら!」『2017(ビルド)

 

 

アーマータイム。ビルドの装甲がジオウに装着される。

強力なドリルの一撃。それはボルキャンサーの装甲を貫き、火花を散らす。

いける。ジオウはそう思うが、その時、またもガラスが揺らめいた。

 

 

「危ない!」

 

「!」

 

 

真司の声に反応し、ジオウは神経を研ぎ澄ませる。

すると気配を、殺気を感じた。振り返ると、またもガラスから何かが飛び出してくる。

シザース。腕に装備したカニのハサミを振るい、ジオウの装甲を傷つける。

 

 

「見つけました。ライダー!」

 

「え? ちょっと、うわぁッッ!」

 

 

シザースが喋るものだから、つい怯んでしまった。

すると胴体に蹴りを受け、ジオウは地面を転がった。

 

 

「見かけない顔ですが、まあいいでしょう。この私の勝利を証明するための――」

 

 

シザースが意気揚々と叫んだのはいいのだが、そこで全身から火花があがって、シザースはうめき声をあげて後退していく。

聞こえたのは銃声だ。どうやらジオウを狙う際に生まれた隙を突かれたらしい。

 

 

「もッ、なに!? なんなの! さっきから!」

 

 

なにがなにやら。ジオウが混乱していると、すぐにギョッとして立ち上がった。

思わず全身がこわばる。というのも、銃を撃った人間を見つけたからだ。

門矢士は、ニヤリと笑い、ネオディケイドライバーを構えた。

 

 

「面白い事をしてるな。魔王様」『カメンライド――』『ディケイド!』

 

 

ディケイドは走り、さらにカードを抜き取る。

 

 

「少しはできるようになったか? 試してやる」『カメンライド・フォーゼ』

 

 

スリー、ツー、ワン。電子音が流れ、スチームが巻き起こる。

フォーゼに変身したディケイドは、右手にビリーザロッド。左手にヒーハックガンを構えて、走った。

無数の炎弾が飛んでくる。ジオウは腕をクロスさせて、まずは防御に徹する。

すると何かが跳ねた。ディケイドだ。ホッピングモジュールを使用して大ジャンプ。さらに空中で体を捻ると、両足にランチャーとガトリングが装備されてジオウを狙う。

 

 

「うぁぁあぁあッ!」

 

 

着地を決めたディケイドは、ロッドを思い切りジオウへ突き入れ、電流を流し込む。

怯んだとこへ足裏をぶつけ、ジオウを吹き飛ばした。ディケイドはそれを確認すると、ロッドを投げ捨ててカードをドライバーへ放り投げる。

 

 

『ファイナルアタックライド』『フォフォフォフォーゼ!』

 

 

銃口に集中していく炎。

ディケイドは狙いを定めると、淡々と引き金をひいた。

解き放たれる火炎。それはジオウが倒れているところへ直撃する。

 

 

「あっつッッ!!」

 

 

悲鳴を上げるジオウ。真司も熱に叫びながら離れていった。

それを見て、ディケイドは呆れたように鼻を鳴らしてみせる。

一方で、シザースはそれを見てディケイドのほうへ駆け寄っていく。

 

 

「貴方は一体……? 貴方もライダーなんですか?」

 

「ああ。俺は通りすがりの仮面ライダー。世界の――」『カメンライド』

 

「!」

 

「破壊者」『ブレイド!』『ターン・アップ』

 

 

ディケイドはブレイラウザーを振るい、問答無用でシザースに切りかかっていく。

異質なディケイドに怯んだのか、シザースはたまらずボルキャンサーを動かすが――

 

 

「ハァアアア!」『ファイナルアタックライド! ブブブブレイド!』

 

 

電撃が、光が、ディケイドの拳に集中する。

ビートとメタル、サンダーの力を集めたパンチが、ボルキャンサーを一撃で吹き飛ばした。

 

 

「くッ! なんなんだ一体ッ!」

 

 

シザースはボルキャンサーを消滅させると、ヨロヨロと歩き、ガラスの中に消えていった。ガラスには水面のように波紋が広がっていく。

ディケイドはそれを見ると、ブレイラウザーの刃を撫でる。

 

 

「便利な力だな。お前もそう思うだろ? 魔王」

 

 

そういうと、ディケイドはシザースを追いかけるようにしてガラスの中に入っていった。

 

 

「ッ???」

 

 

立ち上がったジオウは、ふらつく足取りでディケイド達が消えていったガラスの前に立つ。

しかし当然、それはガラスなので通り抜けるなんて事はできない。

掌を押し当ててみるが、それだけだ。抵抗感を感じて終わり。

 

 

「――ッ」

 

 

しかし、ピンと来た。

ジオウはディケイドのライドウォッチを取り出すと、さっそく起動してみる。

 

 

『アーマァータァイム!』【カメンライド】

 

<wow!!

 

『ディケイディケイド! ディーケェーイードォオオオオ!』

 

 

ジオウはガラスに手を触れる。体が沈む感覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 

「6万だ」「………」

 

 

ゲイツは無言で、まっすぐ、ただまっすぐにひたむきに鮮明に艶やかに真剣に蓮を睨みつけていた。

紅茶、一杯、6万円。ゲイツは無言で立ち尽くしてた。

この男は冗談を言っているのだろうか。過去のジョークセンスを学ぶべきだったのだろうか。

もちろん、そんな大金は持っていない。

 

 

「何をさっきから黙ってる。算数もできないのか」

 

「いや、何。つまらん冗談だと思ってな」

 

「冗談じゃないさ。茶葉に拘ってる」

 

 

ゲイツはカウンターの奥を見た。スーパーで売っている一番安い紅茶が見えた。

 

 

「付きあってられるか」

 

 

ゲイツはポケットから500円玉を取り出すと、乱暴に放り投げて店を出ようとする。

しかしその時、肩を掴まれる感触を覚えた。ゲイツが振り返ると、そこには拳。

 

 

「いいからさっさと金を置いて消えろ」

 

「なるほどな。ただのチンピラか」

 

 

蓮の拳を、ゲイツは掌で受け止める。

 

 

「くだらん! 怪我をしたくなければ今すぐ拳を下ろせ」

 

「こっちの台詞だ。金がないなら知り合いにでも借りて集めてこい」

 

 

組合い、にらみ合う蓮とゲイツ。

するとカランカランと音が聞こえてきた。見れば、一人の女性が腕を組んでゲイツ達を呆れた様子で見ていた。

 

 

「なに? 弟?」

 

 

蓮はため息をつくと、店に入ってきた美穂を睨みつける。

 

 

「なんのようだ?」

 

「一つしかないでしょ。ライダーよ」

 

 

蓮は鼻を鳴らすと、ゲイツを無視して店を飛び出していった。

美穂も無言で後を追いかけ、ゲイツは一人取り残される。

 

 

「なんなんだ一体」

 

「やあ、我が救世主。彼らのことが知りたいのかい?」

 

 

ヌッと出てきた白ウォズに、ゲイツはギョッとしたように距離をとった。

 

 

「何がどうなっている。奴らは……、ライダーと言っていたが」

 

「あれは仮面ライダーナイト。そして仮面ライダーファム」

 

「今回のアナザーライダーと関係があるのか」

 

「もちろんだとも。今、2019年に現れているのはアナザー龍騎だ」

 

「そこまで分かっているなら話は早い。龍騎のライドウォッチを手に入れれば事は解決する。そういう訳だな」

 

「まあ、そうだね。そうだけど……」

 

「なんだ。お茶を濁すな」

 

「――、まあ、龍騎はキミにも関係なくはないか」

 

「???」

 

 

白ウォズは仮面ライダー龍騎の歴史を語り始める。

ライダー同士が戦い、最後の一人になるまで殺しあう。

そして最後の一人になったものには――……。

 

 

「我が救世主。キミには他者を犠牲にしてまで叶えたい願いがあるかな?」

 

「なに?」

 

 

ゲイツの脳裏にふと、ソウゴの姿が過ぎった。

王様になりたい。王様になる。それは立派な夢であり、目標であり、『願い』だ。

一方でゲイツはどうか? 最悪の未来を変えたいというのは確かに願いだ。しかし平和のために他者を殺すことにゲイツは最近、迷いを抱いている。

 

 

「我が救世主。キミは本当に願いを叶える気があるのかな」

 

「なんだと? どういう意味だ!」

 

「信用していない訳ではないが、キミはやがてジオウを『殺』すんだ。それを、忘れないでくれよ?」

 

「……ッ、とにかく、今はアナザーライダーの始末だ」

 

 

ゲイツは白ウォズを突き飛ばすと、蓮達を追いかけた。

既にミラーワールドの話は聞いている。ゲイツは近くに駐車していた車の前に立つと、ライドウォッチを構える。

 

 

「変身ッ!」

 

 

ウィザードアーマーに変身したゲイツは、魔法の力で鏡の中の世界に足を踏み入れた。

ゲイツはそこで、ジオウの姿を確認する。

 

 

「――ッ」

 

 

お互い、気づき、そして戦慄する。

ゲイツ達の視線の果て、そこにはジオウが追いかけたシザースがいた。

首だけのシザースだ。その頭部を掴んでいるのは間違いない。アナザー龍騎であった。

 

 

「ジオウ! あれがアナザーライダーか!」

 

「え? あ……、うん」

 

 

そこでゲイツは気づいた。すぐ近くに死体が有る。

ゾルダ。ライア。タイガ。皆、死んでいた。遠くで爆発の音が聞こえた。ガイ、アビスもまた死んでいた。

死が間近にある。ジオウは何かをかみ締めるように沈黙していた。

 

一方で笑い声が聞こえてきた。

ゲイツが声をした方向を見ると、そこにはまた別のライダーが暴れまわっているところだった。

仮面ライダー王蛇は、ベノサーベルでファムを打ちのめし、蹴り飛ばしていた。

切りかかってきたナイトを殴り飛ばし、また大きな笑い声をあげる。

彼の間近にはボロボロになった仮面ライダーインペラーが転がっていた。既に息はなかった。

 

 

「いいぞ! もっと! もっとだ! もっと俺を楽しませろォオ!」

 

 

王蛇は次の狙いをゲイツに定めたようだ。

王蛇の中身は凶悪犯。確かに今まで相当な場数は踏んできただろう。

しかしゲイツは修羅を生きてきた。明日死ぬかもしれないという環境の中で戦ったゲイツの実力は、まさに時代が違う。

人が死ぬことが当たり前の時代に生まれたが故、ゲイツは王蛇の動きが手に取るように分かった。

荒い獣のような拳を蹴りはじき、飛んできたサーベルを斧で迎撃する。

 

 

『ストライク! タイムバースト!』

 

 

ゲイツの燃え滾る蹴りが王蛇の胴体を打った。

王蛇は悲鳴を上げながら吹き飛び、装甲が砕け散って変身が解除された。

これでいい。ゲイツはそう思ったが、そこでアナザー龍騎が走った。

 

 

「やめろ!」

 

 

ジオウが腕を伸ばし、アナザー龍騎を止める。

王は、時に罪人に死刑判決を下す。だがそれではない。それは違う。ジオウは何かに気づいたように剣を振った。

アナザー龍騎はすぐにその刃に自らの刃を合わせていく。

 

強い。

しかしディケイドアーマーはそれを凌駕していた。

破壊の力がアナザー龍騎の装甲をガリガリと削り、鏡の破片が四散していく。

しかし、ジオウは甘かった。環境は既に殺意を拡散している。

 

ゲイツは息を呑む。

戦慄が走った。あまりにも早すぎて間に合わなかった。ナイトが倒れた王蛇――、浅倉の喉に刃をつき立てたのだ。

剣は喉を、首を貫通していた。浅倉は真っ赤な血を吹き出しながらも楽しそうに笑い、そして死んでいった。

 

 

「貴様――ッ!」

 

 

前のめりになるゲイツ。そこでナイトは、ゲイツの中身に気づいたようだ。

 

 

「お前もライダーだったのか」

 

「そうだッ、貴様ッ、一体なにを――ッ!」

 

「何を? 馬鹿か? ライダーになったら分かるだろ」

 

 

叶えたい願いのためだ。それ以外にナイトがライダーになった理由などない。

ナイトの――、蓮の恋人は病院で眠っていた。どうやら脳に異常が見つかったらしい。眠ったままで、もう何年も経つ。

結婚の約束をしていた。愛し合った事もある。誕生日には少し背伸びをして高いレストランで食事をした。

彼女は孤独で、頼れる人はいなかった。だからこそ入院や治療にかかる金は、蓮が用意しなければならなかった。

 

ウィザードアーマーの力が無意識に働いたのか。

ミラーワールドに反射する鏡に、蓮の過去が、アンダーワールドが映った。

 

ゲイツはそれを視る。

少し高めのレストランが病院の食堂でゴムみたいな蕎麦になった時。

恥かしがりやの彼女が汚物を垂れながすものになった時。渡した指輪が棚の上の置物になった時、蓮はライダーになる事を決めた。

 

苦しげに呻く美穂の過去が鏡に映った。

家族旅行をプレゼントした。それほど高くない温泉旅行だ。しかし美穂はインフルエンザになってしまった。

家族を巻き込むのは申し訳ないと思い、美穂は留守番で家族を送り出した。

家族が帰って来る事はなかった。旅館に行く最中、悪質なドライバーと口論になり、持っていたハンマーで撲殺された。

犯人は何を狙っているのか、殺害理由をポロプロン星からの指令と説明した。それを聞いて、美穂はライダーになった。ライダーになって犯人を殺した。

後に、それは全て北岡――、仮面ライダーゾルダの仕業だと分かった。なので犯人を無罪にした北岡を、美穂は殺す為に戦い続けた。

 

 

「お前もライダーになったなら、分かる筈だ」

 

 

ナイトに言われて、ゲイツは何も答えられなかった。

そうしていると轟音が聞こえる。ゴーストの力を得たジオウがヘイセイバーでアナザー龍騎を両断しているのが見えたのだ。

激しい爆発が巻き起こる。アナザー龍騎の装甲が砕け散り、中身がさらけ出される。

OREジャーナル編集長・大久保大輔は、青白い顔で地面を殴りつけた。

 

 

 

それはノイズに塗れた過去だった。

二人の男が肩を組み合ってはしゃいでいる。どうやら酒が入っているようだ。真司と大久保は先輩と後輩の関係であった。

 

 

『俺はOREジャーナルってのを作ろうと思う。世界で一番のニュースサイトにしてみせるぜ!』

 

『本当ですか! 俺も入れてくださいよ! 副編集長で!』

 

『調子のいいヤツだな。駄目に決まってるだろ馬鹿!』

 

 

とは言いつつ、大久保は嬉しそうに笑っていた。

 

 

「――ッ!」

 

 

時は経ち、ある日、大久保はOREジャーナルを飛び出した。

それは仮面ライダーについての記事をまとめ終わった後のことだった。

街に現れたトンボの化け物の事は既に耳に入っている。そして戦う仮面ライダーたちがいたとの情報もだ。

声をかけた少女が、男の人に助けられたと教えてくれた。

大久保は走った。そして、真司の死体を見つけた。

 

 

「あぁぁぁあぁああ!」

 

 

情けなく叫び、駆け寄るしかできなかった。

救急車を呼んでとりあえず心臓マッサージ。

戻ってこい。死ぬな真司。おい聞いてるのか馬鹿。給料減らすぞ。聞いてるのか真司。おきろ。ねるな。ばか。しぬな。

 

だが一番の馬鹿は自分であると大久保は気づいていた。

真司はもう死んでいる。誰がどう見ても分かることだった。呼吸もしていないし、冷たい。

ただの死体の胸に掌を当てて上下運動を繰り返している自分の姿は酷く滑稽なものだろう。大久保はそれに気づいていた。

 

 

「かわいそうだねぇ」

 

 

そこで、時間が止まった。

 

 

「お友達が死ぬのは悲しいことさ。でもね、ボクと契約すれば、その運命を変えることができる」

 

 

当たり前の感情だった。ただの人間、真司の先輩、大久保大輔の当たり前の感情だった。

真司が哀れで、不憫で仕方なかった。このまま彼が死んでしまうのは悲しいので、大久保は腕を伸ばした。

真司はライダー同士の協力を望み、そして断られた。苦しんで、悩んで、そして死ぬのは申し訳ないので、龍騎でなければもっとマシな人生になる筈だと思った。

 

だから大久保が龍騎になった。

龍騎になって全てのライダーを殺せば、永遠の命が手に入って、真司が生き永らえる。

優衣が消えた。士郎が消えた。ライダー達は残った。ミラーワールドは消えなかった。

 

 

「おめでとう。今日からキミが、仮面ライダー龍騎だ」

 

 

ウールはニヤリと笑い、目の前に立っているアナザー龍騎を祝福した。

 

 

 

 

 

「な、なんなんだよ一体ッ!」

 

 

ミラーワールドの外にいた真司は困惑していた。

ガラスの向こうでは何かが見えるのだが、よく分からない。

ガラスに顔を押し付けていると、そこで真司は自分を呼ぶ『声』に気づいた。

 

 

「シザース」

 

「え?」

 

「ライア、ガイ、ベルデ、タイガ、インペラー、ゾルダ、王蛇、アビス、ファム、ナイト。そしてアナザー龍騎。願いのために戦うライダー達だ」

 

 

真司は困惑していた。ガラスに映った自分が、ひとりでに喋っている。

 

 

「違うよな。お前は知っている筈だ。忘れてるなら、俺が教えてやるよ」

 

 

鏡の中の真司はニヤリと笑った。

 

 

・2019年

 

 

 

『ファッション・パッション・クエスチョン!』

 

「変身!」『クイズ!』

 

 

クイズはハイキックでシアゴーストを蹴り飛ばすと、続いて足払いで背後に迫っていた別のシアゴーストを地面に倒す。

第一問。お前らは次の蹴りで地面に倒れる。○か×か。

そもそも、シアゴーストは喋られない。回答不可能。回答拒否。シアゴースト達は次々と電流によって麻痺していく。

クイズは胸にある×マークを拳で叩く。すると額のマークが『?』から『×』に変わり、体が青く染まる。

さらに手には十字型の剣が現れた。

 

 

『ブッブーレード!』

 

 

なぎ払い、切り刻み、シアゴースト達は爆散していく。

だがまだ終わらない。車のミラーから湧いて出てきた正体不明のモンスターたち。

クイズは元に戻ると、次は○のマークを叩く。すると額のマークも同じく○になり、体が赤く染まった。

 

 

『ピンポンブレイカー!』

 

 

卓球のラケット型の武器を振るうと、光弾が発射されてモンスター達を打ち抜いていく。

次々と爆散していくモンスターたち。クイズは基本形態に戻ると、シンボリックモードに変えたクイズトッパーをベルトへ装填した。

 

 

『ファイナルクイズフラッシュ!』

 

 

モンスターの発生源は鏡。○か×か。クエスチョンキックが○のゲートをぶち抜き、車を破壊した。

 

 

「申し訳ないが、これでモンスターは生まれないだろう」

 

 

主水はハットを整えた。すると炎上する車に、誰かが近づいてくる。

 

 

「お、おわーッッ! お、俺の車! ど、どうしてこんな事に!」

 

 

主水は目を逸らして沈黙した。

幸い男は主水が車を破壊したことには気づいていないようだ。黙っていよう。主水は小さく頷いた。

しかしそれはそれ、これはこれだ。このまま立ち去るのも後味が悪い。

 

 

「アンタ急ぎか? 俺のバイクが近くにあるから、なんだったら乗せてやるけど」

 

「いや――、いや、いいんだけど……」

 

 

黒髪の男は、ボックスチェックのコートに赤いセーターを着ていた。

 

 

「いや――、うん。いいんだ。うん。これでいい」

 

「???」

 

 

男は納得しているようだが、主水としてはよく分からない。

クイズマニア故に、分からない問題があるのは気持ちが悪かった。それとなく、男の事情を聞いてみる。

すると男は何かを思い出すように、ポツリポツリと言葉を漏らす。

 

 

「探し物があったんだ。でも、何を探していたのか、忘れてしまった。車があった方が良かったんだけど、無くてもたぶんいいから、だから大丈夫なんだ」

 

「よく分からない。変わった人だなアンタ」

 

「よく言われるよ」

 

「だが気に入った。俺は堂安主水。帰るまでまだ時間もあるし、アンタの探し物を手伝ってやるよ」

 

「ありがとう。俺は――……、城戸真司」

 

 

・2002年

 

 

「ありがとうございます編集長。でも、もういいんです。もう俺、分かりましたから」

 

 

それはあまりにも残酷な言葉だった。

大久保は何かを察したのか、何十年ぶりかの悔し涙を流した。

ミラーワールドに城戸真司が立っていた。倒れた大久保のほうへと歩いていく。

 

 

「よせよ真司ッ! おぅ、おまッ、お前なぁ! もう無駄なんだよ!!」

 

 

声を震わせながら大久保は真司の方へと駆け寄った。

しかし真司の瞳の中の世界に大久保が映っていないことを改めて知ったとき、大久保は声をあげて泣き始めた。

 

もはや、先輩と後輩の関係は終わっていた。

 

城戸真司の中にそのような平穏など、とうの昔に消え去っていたのだ。

いや、それだけではない。全てが逆効果だったのかもしれない。

大久保が龍騎になったことで、ミラーワールドは新たなループを開始した。

そもそも神崎兄妹など所詮、ひとつのターゲットでしかない。二人が申請を行い、戦いは一旦終了を迎えたが、新しいループを望むものが現れれば戦いはまた続いていく。

 

それが、無限というものだ。

だがいずれにせよ、真司は分かっていた。自分のせいでまた戦いが起こった。そして大久保にいらぬ苦労を背負わせてしまった。

リュウガは全てを教えてくれた。真司はそれを視て、つくづく嫌になった。

改めて思う。いや思わなければ、考えなければならなかった。

ライダー同士協力なんてできなかったのに。それをいつまでも望むのは『馬鹿』のやることだ。

その馬鹿が他者を傷つけてしまったのなら、それはもう許されることではない。

 

 

「お前は馬鹿のままで良かったんだよ! 賢くなんてなるなよ! なあ真司ィィイイィ!」

 

 

大久保が何かを叫んだようだが、真司には聞こえなかった。

あの時も、あの時も、あの時だって。もっと早く決断するべきだった。

 

 

「編集長。後は、俺がやります」

 

 

ジオウはそこで、なぜこの時代のアナザー龍騎が『灰色』だったのかを、なんとなく理解した。

2019年で戦ったアナザー龍騎は赤色だった。中身が、違っていたのか。

 

 

2002(リュウキ)

 

 

濁った音声だった。

真司がアナザーウォッチを起動して自分の体内に入れる。

龍の咆哮が聞こえた。アナザー龍騎はブランク体から、完全体へと変身を完了させる。

 

 

「ふははは! そうだ! それでいい! それでこそ俺の影だ!」

 

 

アナザー龍騎の体から何かが飛び出してきた。仮面ライダーリュウガは、赤い複眼を光らせてアナザー龍騎へ襲い掛かる。

城戸真司が変身した事で、鏡に映るものもまた、変身が可能になる。

リュウガはブラックドラグセイバーを躊躇無く振り下ろすが、アナザー龍騎もまた迷わずにそれを受け止めた。

 

 

「何ッ?」

 

 

リュウガは何度も剣を振るうが、アナザー龍騎はそれを全て防いでいく。

全てのループ。才能があった。城戸真司は人を殺す才能があった。

それを妨げていたのはただ一つ。中途半端な迷いだけ。

 

 

「消えろ」

 

 

昇竜突破。無数の炎弾がリュウガを撃ち捉え、焼き焦がした。

悲鳴が聞こえる。リュウガはバラバラに砕け散ると、それらの破片がアナザー龍騎へと吸収されていく。

あまりにも淡々としたリュウガの始末。フィールドは静寂に包まれていた。

 

 

「蓮、美穂。俺は戦う。俺の生存がこのループの終了条件だ」

 

 

真司の声は冷たかった。

ナイトも、美穂も、ただ息を呑むだけだった。

 

 

「だから、お前らは俺が殺す」

 

「真司……」

 

「俺が、戦いを終わらせるんだ」

 

 

世界が砕け散った。ソウゴ、ツクヨミ、ゲイツは2019年で目を覚ました。

 

 

・2019年

 

 

「一体何がどうなっている!? 意味が分からんッ!」

 

 

ここはクジゴジ堂。ゲイツの言うことは尤もだ。

ソウゴもツクヨミも何が起こったのか理解できず、ただ固まっていた。

しかし丁度そこへ白ウォズがフラリと顔を見せた。

 

 

「我々は時間という絶対的概念のもとで戦ってきた。しかし龍騎の歴史は違う。彼らの不確かなものを支えてきたのは、願い。それだけだとも」

 

「どういう事だ?」

 

「つまり、我が救世主。これはね、複雑だけど簡単なことなんだ」

 

 

龍騎の歴史に『時間』などない。

あるのは概念。『無限』という存在なのだ。

 

 

「時間が無い? 馬鹿な!」

 

「正確にはそれがアナザー龍騎の力とも言える」

 

 

まるでそれはメビウスの輪。いくつもの時間を繰り返す。

 

 

「もちろん深くは考えなくていいとも。アナザー龍騎が作り出した概念の下にいるのだから、アナザー龍騎を始末すればいい」

 

 

白ウォズはソウゴを指差して、ヒラヒラと手を振りながら帰っていった。

ソウゴは懐から、ジオウライドウォッチ2を取り出して見つめる。

確かに、これを使えば龍騎ライドウォッチを手に入れずとも戦える。しかしソウゴの胸には願いの文字がグルグルと渦巻いていた。

もちろんそれはゲイツにも言えることだ。

 

 

「願いか……」

 

 

一方、主水は真司と共に探し物を見つけようと街を歩いていた。

 

 

「しかし忘れちまったってのは、その程度の物ってことなんじゃないのか?」

 

「いや、とても大切なものなんだ。でも――、うまく思い出せないんだ」

 

「人か?」

 

「分からない」

 

「物か?」

 

「分からない」

 

「分かった。思い出の景色とか、建物とかだろ」

 

「……分からない」

 

「おいおい。なんだそりゃ」

 

 

しかし主水はハッと表情を変えた。

もしかしたら真司は記憶に関する病を患っているのかもしれない。だとすればココまでの会話はなんとなく理解できる。

そう言われてみれば真司は酷くやつれているようにも見えた。疲労しているというべきか。何かに追われているような焦りも見える。

 

 

「真司、ここにいたの」

 

 

名前を呼ばれた。二人が振り返ると、杖をついた女性が立っていた。

 

 

「どちらさんだ?」

 

「妻よ。一応、彼の」

 

 

真司の奥さんらしいが、主水は思わず身構える。

というのも、その女性は左腕が無かった。それだけではなく、右目には眼帯をつけ、顔には大きな傷も見える。

ちなみに主水には分からなかったが、足も片方義足であった。

 

 

「どうしたの? あぁ、コレ。コレね。コレちょっと化け物にやられたの」

 

「はぁ……」

 

 

彼女はメンヘラ。○か――

 

 

「!」

 

 

そこで主水は、あの嫌な耳鳴りを聞いた。

 

 

「おい、ちょっとアンタら、離れてろ」

 

 

クイズドライバーを出現させ、主水はクイズトッパーをベルトへ装填する。

丁度そこで近くにあったカーブミラーからシアゴーストが飛び出してきたが、問題ない。

○と×のエフェクトが乱舞し、それがモンスターに直撃して怯ませる。

 

 

「救えよ世界! 答えよ正解! 仮面ライダークイズ!」

 

 

そこで真司は目を見開いた。

 

 

「アンタ、ライダーだったのか」

 

「ああ。ん? なんでアンタがそれを――」

 

『2002』

 

 

クイズが振り返ると、先程まで真司が立っていた場所にアナザー龍騎が立っていた。

 

 

「ライダーは、俺が全て殺さないといけないんだ」

 

「何……?」

 

 

その様子を見て、美穂はがっかりしたようにため息をついた。

 

 

「あーあ。思い出しちゃった」

 

 

アナザー龍騎は刀を構え、一心不乱に走り出した。

全てはライダーの排除。ライダーの抹殺。クイズを殺すために。

ライダー同士が戦闘を開始したため、シアゴーストは立ち尽くしている美穂を狙いに走った。

ため息だ。次は欠損で済めばいいのだが。

 

 

『ッッッウォズ!!!!』

 

 

待機音。

変身。凄い、時代、未来。

仮面ライダーウォズは槍でシアゴーストを貫き、美穂の前に立つ。

 

 

「何が起こっているのか――、キミは知っている」

 

「………」

 

「だんまりか。だがコチラも既になんとなく理解はしているとも」

 

 

ウォズはノート型端末に向かって声を投げる。

突如現れたウォズのキックにより、アナザー龍騎は爆散する。

ビヨンドザタイム。美穂はやめてと叫んだが、ウォズは止まらない。後退してきたクイズを押しのけると、地面を蹴って捻りながらの回転蹴りをおみまいする。

 

足裏がアナザー龍騎の腹部にめり込んだ。

手足をバタつかせながら吹き飛んでいき、地面に撃ちつけられると共に爆散する。全ては未来が示すとおり。

しかしその時だった。まるで蜃気楼のように、アナザー龍騎の幻影が現れると、爆炎が粒子化して、幻影のアナザー龍騎こそが真実へと昇華する。

変わりに聞こえたのは、鏡が砕ける音だ。先程爆散したアナザー龍騎が撒き散らしたものなのだろうか?

いずれにせよ、それらは地面に落ちると、形を変えて、シアゴーストへと変化する。

 

 

「何ッ? 化け物が増えた!?」

 

 

驚くクイズだが、ウォズはだいたいを察したらしい。

 

 

「最近、あの白い化け物が現れているとの噂は聞いていたが、その発生源はどうやらアナザー龍騎だったようだね」

 

 

時の牢獄。合わせ鏡。仮面ライダー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あるのは紅茶だけだ」

 

 

ゲイツは目を見開いていた。

アナザー龍騎を探している最中、デジャブを感じて初めて見る喫茶店に入った。

カウンターの向こうに、秋山蓮が立っていた。その隣には恵里が愛想よく笑っていた。

蓮もまた、ゲイツに気づいたらしい。2002年のあの時から、姿の変わっていないゲイツを見て、なんとなく蓮は事情を把握したようだ。

 

 

「17年ぶりか。ベルトの形が違っていたな。それが何かあるのか?」

 

「なぜ記憶が――……」

 

 

アナザー龍騎が生まれているのに、蓮はあの時のことを忘れずに覚えていた。

しかし話を聞くと、全て夢で見たようだ。リアルな夢だった。空は、青ではなく、七色の虹だった。

ゲイツは、既に白ウォズから大まかな事を聞かされていた。

 

街で暴れているシアゴーストは、アナザー龍騎の力により生まれるものだ。

城戸真司がたまたまこの町を訪れていたため、犠牲者も生まれた。

彼の傍にいた美穂は、頻繁にシアゴーストを目にしていたため、襲われる機会も多かった。

同じように襲われていた人を守ったのか? いずれにせよ、腕を食われ、足を食われ、目を抉られた。

それでもまだ彼女は真司の傍にいたようだ。

 

 

「馬鹿な女だ。同情と愛情か」

 

 

恵里は向こうで『コーヒー』を作っている。一番最初の言葉は蓮の嘘だった。

蓮は今、カウンターに座ったゲイツに話しかけていた。

 

 

「まあ仕方ない。アイツは昔、真司を捨てたからな。その時の後悔が少なからずあるんだろう」

 

「昔?」

 

「ああ、そうか。違うな。そんな世界も夢で見た」

 

「お前は全てを知っている。そうだな」

 

「ああ。夢で見た。鏡に映っていた」

 

「なら教えろ。何がどうなっている? アナザー龍騎とはなんなんだ?」

 

「形が違うだけで、ただの龍騎に変わりない」

 

 

蓮は一粒、また一粒落ちていくコーヒーの雫を見つめていた。

 

 

「17年、城戸のヤツから逃げてきた。霧島はもう変身する道具を失った。だから残っているのは俺とヤツの二人だけだ」

 

 

蓮はニヤリと笑った。

 

 

「お前、俺と似てるな」

 

「何ッ?」

 

 

ゲイツは罰が悪そうに視線を逸らす。確かに――、少しそう思った。

 

 

「顔じゃない」

 

 

蓮はふと、ジオウの姿を思い出す。

 

 

「アイツとは、どんな関係だ?」

 

「倒すべき敵だ」

 

「そうか。でも一緒にいた」

 

「今はな」

 

「いつまでだ」

 

「ヤツが魔王になる。その前に決着はつける」

 

 

蓮は鼻を鳴らした。達観したような表情だった。若い時の自分を見るような。

悪い意味ではない。蓮にはできなかった事だ。だから燃えるゲイツを見て、賞賛や賛辞、応援の意味もある。

 

 

「だが――……、そうだな」

 

 

蓮は鏡に映る自分の顔を見た。

それほど変わっていないように見えるが、やはり歳は取っている。当たり前か、なにせもうあれから17年だ。

蓮は全てを知っていた。鏡が教えてくれたのだ。真司は今も、ずっとライダーを求めてさ迷っている。最後の一人になるまで、彼は戦い続けるだろう。

それを知りながら蓮は逃げ続けた。だが今ゲイツに会ってみて、かつての自分を思い出した。

もっと、あの時は――……。

 

 

「龍騎を倒すのか」

 

「当たり前だ。アナザーライダーは潰す」

 

「それはお前の願いにどう関係がある?」

 

 

ゲイツはしばし沈黙した。

分かる。彼もまた、少しの迷いがある。

それはおそらく蓮が抱いていたものと同じ類ものであると。

 

 

「俺は仮面ライダーだ。今は、それだけでいい」

 

 

ゲイツはそう言って店を出た。

蓮は虚空を見つめ、やがて、恵里に愛していると言った。

 

 

 

 

 

 

「ハァアアア!」『ファイナルアタックライド・キキキキバ!』

 

「うッ、ズッゥ!」

 

 

鎖が飛び散る。鎌を盾にしていたとはいえ、衝撃でウォズは大きく地面を滑っていった。

突如現れたディケイドが、アナザー龍騎の味方をする。ウォズを抑え、そのアナザー龍騎はクイズに刃を撃ちつけていた。

よろけるクイズ。強い。だが、しかし、何かが響かない。

 

 

「問題を出す」

 

「ッ?」

 

「アンタは逃げている。○か、×かッ!」

 

「………」

 

 

アナザー龍騎の攻撃は激しく、鋭利だ。

しかしどこか手加減をしているようにも感じた。

どうにもそれがクイズには引っかかる。腹が立つとでも言えばいいのか。まるでやる気を感じられない。

それが染み付いている甘さなのか。輪廻なのか。いずれにせよ何も終わらないし、何も始まらないような戦いをするのはクイズとしてはゴメンだった。

時間は動くからこそ意味のあるものだ。止まった時計は、何がなんでも動かさなければならない。

 

 

「――ォオオオオオオ!」

 

 

龍騎は叫び、ドラゴンの頭部を突き出した。

お前に何が分かる。そんな意思と共に放たれた無数の火炎弾がクイズに直撃していき、大きな爆発を巻き起こす。

吹き飛ぶクイズ。変身が解除され、主水は地面に伏せる。

ライダーは、殺さなければならない。アナザー龍騎はそう叫び、走り出した。

 

 

『カメンライダァー……!』『ゲイツ――!』

 

 

だが、『ら』、『い』、『だー』が飛んできてアナザー龍騎に直撃する。

その文字が仮面に収まったとき、仮面ライダーゲイツは、ディケイドに向かって飛び蹴りを命中させていた。

 

 

「よぉ、また会ったな」

 

「そこをどけ門矢士。アナザー龍騎は俺が倒す」

 

「ライドウォッチは持っているのか?」

 

「いや。だが倒す。ウォズ、手伝え! ディケイドをまずは倒す」

 

「馬鹿なヤツだ。呆れるぜ」『カメンライド・ビルド』

 

 

ビルドへカメンライドしたディケイドは、4コマ忍法刀で分身を作り出してゲイツとウォズに向かわせた。

ファイズアーマーを装着するゲイツ。赤い光を撒き散らしながら戦いの場へと走る。

 

 

「俺の目的はただ一つ! 何も変わってなどいない!」

 

 

もがく戦士は叫び、拳をディケイドへ撃ち当てる。

 

 

「最悪の未来を変えるためだ!」

 

 

凄まじい一撃に、初めてディケイドから焦りのうめき声がもれた。ゲイツはさらに叫ぶ。

 

 

「むろん! 願いを叶えるだけが人間ではない。 その先にある。未来をッ、最善の未来の時間を描けずに、何が強い意思だ!」

 

 

それは酷く青い一撃ではあったが――、その愚直な叫びは、誰かの心に焔を灯したようだ。だからこそ秋山蓮は、この戦いの場に姿を現したのかもしれない。

ディケイドは自らの体に刻まれたΦのマークを消し飛ばすと、灰色のオーロラを出現させて消えていった。

 

霧島美穂は、秋山蓮を見て立ち尽くしていた。

その表情には『怒り』が見える。なぜ、ここに来たのか。その意味が分かっているのか? 美穂は悔しげに唇を噛んだ。

そうだ。ライダーが来たのならば、戦わなければならない。

それがいつの時間においても、『(リュウキ)(ナイト)』というものだった。

 

 

「ナイト……!」

 

 

アナザー龍騎は肩を震わせ、蓮の事をナイトと呼んだ。

龍騎に時間はない。タイムベント、その理さえも破壊する力によって、因果が纏わりつく。

アナザー龍騎は繰り返す象徴。彼がいればシアゴーストが生まれ、世界の崩壊が進む。

 

そもそもアナザー龍騎は大久保が真司を助けたいと願い、生まれたライダーだ。

彼の願いをミラーワールドが承認し、再びライダーバトルが繰り返された。

それを止めるため、真司はアナザーライダーの力を大久保から奪い、自らがアナザーライダーになった。

 

アナザーライダーが生まれると、本来のライダーは力を失い、記憶も消えていく。

真司にもそれが見られた。なぜならば真司は真司であって、真司ではない。ループ周回における『自分』など酷く曖昧な存在でしかないのだ。

たとえば一週目の真司と、二週目の真司は別人とも言える。

 

だからなのか。

彼は自らがアナザーライダーである事を忘れ、目の前に仮面ライダーが現れると自らの役割を思い出す。

しかしもはやそれが何なのかも、この世界においてはあやふやになってしまった。全てのライダーを殺すとはどういう事なのか。それはもう分からない。

だが何故、今、美穂や蓮もライダーの事を覚えているのだろうか? それは龍騎の時間が一つではないから。

それと何よりも――……。

 

 

「17年も迷った。何故だか分かるか?」

 

「ッ」

 

「お前が俺の、友人だからだ」

 

 

蓮はエンブレムを取り出し、心の中で念じた。

変身――、と。

蓮はナイトになった。それはライダーではない。仮面ライダーナイトではない。

 

仮面契約者ナイト。

 

つまり龍騎は仮面ライダーであり、仮面ライダーではない。

それでも彼らは願いのために戦った。繰り返したのだ。

 

 

1.契約者は最後のひとりになるまで戦わなければならない。

 

2.最終勝利者はどんな願いでも叶えることができる。

 

3.契約者は与えられたエンブレムをシンボルとするミラーモンスターと契約を結ぶものとする。契約者はミラーモンスターの力を得て変身する。

 

4.契約したモンスターには120時間に一度、餌を与えなければならない。餌となるのは他のミラーモンスターか、あるいは他の契約者の命である。

 

5.第4条を実行できない場合、契約者自身が契約したモンスターの餌となる。

 

6.バトルを希望する契約者は変身してミラーワールドに行くことで、その意思を他の契約者に伝える事ができる。

 

7.契約者がミラーワールドで存在できる時間は五分である。それを過ぎると契約者の肉体は消滅する。ただし、一度現実世界に帰還すれば、再び五分間の生存が可能となる。これは24時間のうちに、三度、繰り返すことができる。

 

8.人間時の戦いは禁止とする。バトルはあくまでもミラーワールドで行わなければならない。

 

9.契約者が望めば契約を解約することができる。ただし、その場合、契約を受け継ぐ他の人間を見つけなければならない。

 

 

ミラーワールドは現実の概念を映した世界だ。

真司が大久保からライドウォッチを奪ったとき、新たなループが始まった。

それはライダーではない。龍騎だが龍騎ではない。龍騎など別にどうでもいい。ただそこに形があるから準じただけで、別に違うならそれでも良かった。

 

彼らは戦い、そして残ったのは真司と蓮だった。

真司はリンゴの木の下で皆と出会いたかった。蓮は真司を殺した。恵里が目を覚ました。

しかしそこで真司はよみがえった。何故ならば彼はアナザーライダーだったからだ。やる事があるのだ。

ミラーワールドは真司もまた勝利者の一人であると判断した。一番初めに美穂が蘇った。そこで真司はアナザーライダーの記憶を失った。

 

他の人たちは蘇らなかった。

美穂は自分が真司を裏切ったことを思い出した。あの時、真司の傍にいたのならば結果は違っていたのかもしれない。

美穂は贖罪のために真司の傍にいた。

ナイトは恵里を連れて逃げた。全てから逃げ出したかった。17年間逃げた。だがゲイツを見て思った。

 

このままではいけない。

かつて、真司は戦うことを拒み、狂った。

かつて、真司は戦うことを決意し、立ち向かった。

彼にできたのならば、自分にもできるはずだ。

仮面ライダーではない。仮面契約者ナイトはエンブレムを握り締めた。金色に輝く光が、彼をサバイブに変えた。

 

 

「命を奪ったら、もう後には引けなくなる」

 

 

どっちが口にした言葉なのやら。

その時、ナイトサバイブの剣と、アナザー龍騎の剣が交差した。

 

 

「!」

 

 

ゲイツは思い知らされた。アレが迷いのない刃なのかと。

かつて戒斗に言われた言葉を思い出し、ゲイツは胸を――、改めて心臓を抑えた。

その間もナイト達はひたすらに剣を打ち付けあった。遥か遠くにある約束を守るため。或いは、遥か向こうにある誓いを果たすため。

 

 

「疾風断!!」

 

 

ナイトが叫び、マントが龍騎を貫いた。それは何も特別なことではなかった。

 

 

「これは――」「茶番だよ」

 

 

意味の無い事なのかもしれない。

ウォズが言いかけたことを突如現れたウールが続けた。倒れている真司へ、再びアナザー龍騎のウォッチを埋め込む。

すると真司は再びアナザーライダーとなり立ち上がった。

困惑するナイトへ昇竜突破を撃ちこむ。ナイトは爆炎に包まれ、変身が解除された。それを見てウールはニヤリと笑う。

 

 

「ライダーであれ何であれ、キミ達は死の運命からは逃れられない」

 

「じゃあ、おれが終わらせるよ」

 

「え?」

 

 

あっけらかんとした声が聞こえた。常磐ソウゴが笑みを保ったまま歩いてくる。

どこに行っていたのか? 怒鳴ろうとするゲイツの肩をつかみ、ソウゴはグイっと前に出る。黒ウォズが星の本棚に導いてくれた。

そしてソウゴは全てを閲覧した。

 

 

「ただ倒すのは簡単だよ」

 

 

言ってのける。しかしそれでは、何も変わらないと思った。それくらい若いソウゴでも分かる。

いや、まだ蓮たちも進んでいないのかもしれない。あの時から、時間は進んでいないのかもしれない。

 

 

「おれ、やっぱり決めたよ」

 

 

龍騎の時間を見て思った。人は死ぬ。

その理由は重いのかもしれないし、軽いのかもしれない。

特別なことじゃないんだ。どんな人間も死ぬし。死に方は選べない。

別にほら、モンスターに食われるのも、熊に食われるのも、癌細胞に食われるのもそれほど大きな違いは無いのかもしれない。

他人を殺すことも、それはいけない事だが、言い方を変えればそれは他人を蹴落として前に進むということだ。それは別におかしな話ではない。

誰かが言った。人間は皆――……。

 

 

「おれも、また」

 

 

ソウゴはジクウドライバーを身に着けた。

 

 

「おれが王様になったら法律を作るよ。壁に人を埋めちゃいけない。人が人を殺しちゃいけない絶対的なルールを作るよ」

 

 

それだけじゃない。薬学担当にどんな病気も治す薬を作ってもらう。

たとえば、幸せになりたい人を幸せする。英雄を作ろう。詐欺まがいな事をしなくても人を愛せるように。

戦うよりももっと面白いゲームを作ろう。エグゼイドの力があれば何とかできるかも。

 

 

「民を安心させる占い師がいるな。欲望を正しく導く社長なんかもいるかもしれない」

 

『2018』

 

「おれがいれば、愛する人は眠らせない」『ライダァー・タァイム』

 

 

洒落た言葉だろうとソウゴはニヤリ。

そうだ。ソウゴは決めていた。龍騎の力を貰おう。

真司はもう、龍騎じゃなくていい。ナイトももう、いらないだろう。

城戸真司たちが欲していたのは、死刑宣告をしてくれる王様だったのではないか? ソウゴはそう思ったので、笑ったのである。

 

 

「城戸真司! アンタはもう終わりだ! 絶対的な王がいれば戦いは起きない!」『カメンッ! ライダー!』『ジ・オウ!』

 

 

仮面ライダージオウの仮面に、ライダーの文字が刻まれる。

仮面ライダー『Z』I-O。Zとは、全ての終わりである。

ジオウとはライダーの終わりを司るもの。

 

 

「ライダーバトルは今日をもって終わりにする! 未来の王の宣言だ! これは絶対的な発言である! 耳ではなく、心で聞け!!」

 

 

いけそうな気がする。

 

 

「龍騎の時代は終わりだ。おれは仮面ライダージオウ! 2018年の仮面ライダー! そしてッ、最善最高の魔王になる男だ!!」

 

 

アナザー龍騎は動きを止めた。

そしてゆっくりと、呟く。仮面の裏にある表情がジオウには見える気がした。

 

 

「……へぇ、ジオウか。今はいっぱい違うライダーがいるんだな」

 

「うん。たくさんいるよ。ライダーは」

 

「そのライダーは……、そのライダー達はどれくらい他のライダーを殺したんだ?」

 

「違うよ」

 

「え?」

 

「――助け合ってる」『2010(オーズ)

 

 

アーマータイム。タカトラバッタ。

 

 

「時代を駆け抜けた平成ライダー達。今、その力が未来へと受け継がれる!」

 

 

ヌッと現れた黒ウォズが叫ぶ。

 

 

「祝え! 新たなる王の誕生を!」

 

 

オーズアーマーを装着したジオウは、トラクローZでアナザー龍騎を切りつけた。

火花が散る。龍騎はふと、言葉を飲み込んだ。

 

 

『その時代に生まれたかったよ』

 

 

それは別に言わなくていいと思ったし、言わないことに意味があると思った。

体には、まだ蓮に切られた痛みがある。

アナザー龍騎は――、城戸真司はそれがとても価値のあるものだと思ったので、言葉を飲み込んだ。

スキャニングタイムブレークがアナザー龍騎を吹き飛ばした。そこで蓮は、ジオウのもとへやって来る。

 

 

「これを使え」

 

 

蓮は龍騎ライドウォッチをジオウへ渡した。

 

 

「貰うよ。でも、どうして?」

 

 

どうしてお前が持っているのか? 蓮は、かみ締めるように頷いた。

 

 

「俺もまた……、かつては龍騎だった」

 

「そっか。じゃあ遠慮なく」『ライダァー・タァイム』『カメンッ! ライダー!』『ジ・オウ!』『アーマァータァイム!』【アドベント】『リュウッ・キィイイイイイイイ!』

 

 

祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え過去と未来をしろしめす時の王者!

黒ウォズの祝福を受け、ジオウはまっすぐアナザー龍騎を睨んでいた。

 

 

「その名も仮面ライダージオウ・龍騎アーマー。また一つ、ライダーの力を継承した瞬間である!」

 

 

 

ジオウは地面を蹴った。

アナザー龍騎もまた、つまらないとは知りつつも、プライドのために走り出した。

拳がぶつかり合う。吹き飛ばされたのはアナザー龍騎だった。

龍騎アーマーの肩部分にあるドラグレッダーの頭部を模した部分が伸び、炎弾を連射する。激しい爆発がアナザー龍騎を包み、悲鳴が聞こえた。

 

 

『フィニッシュタァーイム!』『リュウキ!』『ファイナル! タァイムブレーッイク!』

 

 

ドラグレッダーが現れ、ジオウの周りを激しく旋回する。

次にジオウは地面を蹴り、ドラグレッダーと共に空に舞い上がった。

そして空中で旋回。ドラグレッダーがジオウの前に構える。

 

 

「ハァアアアアアアアアア!!」

 

 

ジオウの仮面。口の部分から炎が発射され、ドラグレッダーに燃え移る。

焔の龍は、轟々と激しく燃えながら、そのままアナザー龍騎へ突っ込んだ。

 

 

「ウァアアアアアアアア!!」

 

 

爆発が巻き起こる。鎧が砕け、真司が地面へ倒れた。

終わった? いや、まだだ。そもそも何故、大久保がブランク状態だったのか。それは龍騎ライドウォッチには積み重なった因果が存在していたからだ。

いわばそれはライドウォッチに意思があると言ってもいい。ウォッチが大久保を選ばなかったというわけだ。

それを証明するように、砕けたウォッチから巨大な龍が現れた。

 

禍々しい赤龍だ。

これの名は、アナザードラグレッダーと名づけよう。

空に舞い上がったドラゴンは全てを葬り去るつもりだった。そうすればまた、新しい世界が見えると思ったのだろう。

大量のレイドラグーンもまた生まれ、空に舞い上がっていく。

終焉を彷彿とさせる光景だが、ジオウは怯まなかった。アーマーを解除すると、別のライドウォッチを取り出す。

 

 

「今こそ輪廻に、因果に終止符を!」『ジオウ!』『2(ツーッッ)!!』

 

『ジォォォ……』【ジォォォ……】

 

『ライダァー・タァイム』【ライダァー・タァイム】

 

『カメンライダァーッ!』【ライダーッ!】

 

『ジオウ?』【ジオウ!】

『ジッォオオオオオオ――』【ジオオオオオオ!!】

 

【『ツーゥッッ!!】』

 

 

タイムマジーンに乗り込んだジオウ。

龍騎ライドウォッチがタイムマジーンの顔になった時、無数のドラグレッダーが現れた。

ドラグレッダーの群れは互いに絡まり、一本の綱のように変わる。そこへ飛び乗るタイムマジーン。

龍の群れは炎を発射しながら空へ昇っていく。レイドラグーンを焼き焦がし、あっという間にアナザードラグレッダーに追いついた。

異形の龍が吼える。アナザードラグレッダーの口から凄まじい大きさの火炎弾が発射され、タイムマジーンを狙う。

だが既にジオウは飛び出していた。手にはサイキョージカンギレードが握られている。

 

 

「たとえどんなに時間を繰り返しても! 変わらないものがある!」

 

 

それを今、証明しよう。

 

 

「王の前にひれ伏せ!」

 

 

ジオウ、サイキョウ。

それだけだ。言葉だけがあればいい。

天をも貫く光の刃が、アナザードラグレッダーを一刀両断にしてみせた。

強すぎる。最強すぎる。全ての城戸真司が負けを認めた。

 

 

 

 

「………」

 

 

真司が目をあけると、美穂の顔が見えた。

膝枕をされていたらしい。

 

 

「じゃあ、また」

 

「ああ、また」

 

 

ノイズがほとばしる。美穂は消えた。真司も消えた。

真司は笑っていた。蓮にも心の中で別れを告げた。顔は合わせなかったが、別にいい。

そういうヤツだ。いても、そっぽを向かれるだろうから。

 

 

「はぁー、知らない間に終わってたわ」

 

 

ツクヨミはコーヒーを啜りながらボケーッと窓の外を見ていた。

 

 

「まあ、いいじゃん。アナザーライダーも倒せたし」

 

「……それもそっか。そうよね」

 

 

ソウゴは星の本棚で閲覧した龍騎の情報を語る。

なにやら彼らもまた、今のソウゴたちと同じような環境だったらしい。

真司、蓮、優衣。ソウゴ、ゲイツ、ツクヨミ。

 

 

「アイツらはアイツらだ。俺達とは何の関係も無い」

 

 

ゲイツは淡々と言った。確かにそうだ。それでいい。

真司は真司。ソウゴはソウゴなのだから。

 

 

城戸真司達がどうなったのか、誰も、知る由も無い。

 

 

 

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