仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
プロローグと一話まで公開していますが、二話の更新は未定です。
まだかなり先のこと(一年後とかになるかも)になるかもしれないので、あくまでもその点はご了承ください。
あくまで参加メンバーやルールを知っておいて貰えればなと(´・ω・)
注意点は本編と同じです。
・各原作のネタバレがあります。
・一部キャラクターの設定が変更されています。
・残酷な描写があります。それに伴い、一部キャラクターが崩壊しています。
・鎧武キャラ×マギカキャラのカップリングがあります。
・一部下ネタがあります。苦手な人は注意してください。
フールズゲーム本編・70話までのネタバレがありますので注意してください。
一応、軽く説明していますが、基本的に各原作を見ている前提で書いているので、その点もご了承ください。
※このお話は、実際の人物とは何の関係もありません。
プロローグ
虹色に光る宇宙の中を二つの存在が駆け巡る。
一つは光。一つは闇。それらは衝突し、弾きあい、激しい衝撃で周囲の星を粉々にしながら飛び回っていく。
なんだ――? この力は。互いが焦り、互いが消耗していく。
「ハアアアア!!」
乙女が振るう剣が蛇の体に入った。
闇が蠢く。蛇は血のように赤い眼で標的を睨みつける。
「おのれ――ッ! ゲームの領域外に何故このような存在が――?」
闇が散っていく。
黄金のリンゴがむき出しになり、闇は――、蟲は光に集まるように集合していく。
乙女は額に汗を浮かべていた。体からは大量の血液が流れている。
終わらせなければ。乙女は巨大な旗を生み出し、それを思い切り投げた。それは星を切り裂き、闇に直撃する。
悲鳴が聞こえた。
リンゴがどこかへ消えていく。
しかし光もまた徐々に弱くなっていくのだ。全ての力で放った一撃はそれだけのリスクがあった。
闇はそこを狙って、道連れを選ぶようだ。
「無駄だ。お前は――、何も止められない。既に我々の領域は世界を覆い尽くしている」
「そん……、な、申し訳ありません
手を伸ばす乙女。
しかし既にその腕すらも目視できないほど、周りは黒く染まっていた。
また同じ夢を見た。
父さん、母さん。そして――、姉さん。
「じゃあね、タツヤ。行ってきます」
おれに姉はいない。だからコレは夢なんだ。
それを自覚すると、いつも目が覚める。今日も同じような朝だった。同じような鳥の声と、同じような気だるさ。
カーテンを開けると空が見える。なんだか最近どうにも体が重い。空はいつも濁っている。
「………」
体を起こして部屋を出た。
夢で見た姉の部屋は物置になっていた。都合よく埋められたように。
「お姉ちゃんか……。欲しかった?」
「まさか」
リビングで母さんに聞いてみると、からかわれた。
それはそうか。この質問は多分――、三度目だ。
「パパもママも子育ては初心者だったからね。ほら、兄妹がいると愛情が偏っちゃうかもしれないって話を聞いてたから」
うちの家族は少し変わってる。
普通は母親が家にいて、父親が働きに行くんだろうけど、我が家は逆だった。
でもまあ、当人達が納得していれば、それでいいのではないか。
そういう意味では、おれは父さんに感謝してた。人はそれぞれ生き方を選ぶ事ができる。
父さんがいなかったら、俺は妥協も納得もできなかった筈だ。
「弟か妹なら作れるかもしれないけど。ねえ、知久」
「ちょっと。朝ごはん中だよ」
「あたしはもう食ったし」
母さんはそう言って立ち上がる。気づけばもう出かける時間だ。
「タツヤ。チューは?」
「やるわけないだろ。永遠にやらない」
「あーあ、反抗期だ」
「まさか。おれは真っ直ぐに育ってるよ」
母さんのノリは疲れる。
さっさとパンを口に詰め込むと、おれはリビングを足早に出て行った。
そう言えば、夢で見た父さんと母さんは若かった。姉さんはおそらく中学生。
だったらおれは――……。いや、何を考えてるんだ。あんなものはただの夢だ。
「え? 同じ夢を見る」
夢なのだが、やはり気になるものは気になる。
こう毎日毎日、同じ夢を見るとなると、本格的に脳に異常でもあるんじゃないかと心配になってしまう。
だからこんな……、学校で友人に下らない質問をしてしまうのだ。
「うーん。夢は人の心を映すって言うじゃない?」
下らない。あんな景色をおれは望んでいるのだろうか。
「いいんじゃないですか? 甘えたい年頃なのかも」
気持ち悪いヤツだと思われてるんだろうな。
いかん。どうにも心が痛くなってきた。やはりこんな話しは人にするものじゃない。
この学校が一貫性で助かった。もしも高校受験の面接で――
『趣味はありますか?』
なんて聞かれたら。
『はい! 架空の姉を妄想しています!』
今のおれなら本気で答えかねない。
するとおれはこの『天樹学園』じゃなく、アニメーション専門学校を笑顔で勧められてた筈だ。
いやいや、今のは別にアニメーション系の学校に通っている人をバカにしている訳ではなく――!
「……疲れた」
「???」
それでいい、おれがおかしいだけだ。おれが異常なだけだ。
おれは最近どうにも生き辛い性格なのだと自覚するようになっていた。周りや両親は優しい子だと言ってくれるが、そんな事はない。
俺はただ、ただ……。
なんだろう?
「それよりタツヤ。考えてくれた?」
「え? あぁ、ゴメン。なんだっけ?」
「ほら、チーム鎧武のこと」
「ああ、ダンスの」
「紘汰さんもタツヤが入ってくれると助かるって」
「悪いけど、おれ、放課後は……。ほら前にも言っただろ?」
「そっか……。うん、そうだね、ゴメン」
「いやいや、コッチこそゴメン」
そこでチャイムが鳴って先生が入ってきた。
「突然だけど皆、目玉焼きは半熟がいいか、固焼きがいいか。分かるか?」
ポツリポツリと答えが聞こえてくるが、先生は遠い目をしていた。
「正解はな、どっちでもいいんだ。恋人でも奥さんでも友達でも何でもいい。相手が食べたいものに自分が合わせる! そうする事で円滑なコミュニケーションが――」
みんなは志筑先生を情けないだの、頼りないだの、優柔不断だの、婿養子だのとからかっているが、おれは先生が好きだった。
昔、保健室の先生に同じ夢を見ることを相談したが、適当にあしらわれた。
他の先生にそれとなく相談しても子供相談ダイアルの電話番号を渡されるくらいだったが、志筑先生だけは真剣に聞いてくれた。
「分かる。分かるよ。うん、なんとなくだけど俺もそういう経験があるんだ」
「本当ですか?」
「夢と言うよりはデジャブ。既視感みたいなものによく襲われるんだ。もしかしたら前世なのか、はたまたパラレルワールドなのか。ほら、ラノベ読んでる? 最近異世界ものが流行ってるじゃない?」
先生はそう言って笑ったが、おれには分かった。
あれはただの笑顔じゃない。なにか悲しい事があったんだ。
そういう顔だった。そういう目だった。
「でも……、悪い事ばかりじゃないよ。先生はその幻視のおかげで今の奥さんとも結婚できたし」
「そうなんですか」
「彼女もキミと似たような事を言ってた。だからそれが繋がりになって……。じゃなかったらあんな綺麗な人と結婚なんてムリムリ」
前に一度だけ見かけた事があったが、確かに先生のお嫁さんはとても綺麗な人だった。
なんでもあのユグドラシルコーポレーションの研究部門で働いているらしいし。
「でも俺は……、何もしてあげられなかったな」
「え?」
「適当な言葉で適当に埋め合わせして。彼女もきっと他に何も無かったから、たぶん俺で妥協したのかも。でもそれはきっと悪い事じゃなくて……、あぁゴメンゴメン。困るよなこんな話。何でもないんだ」
「はぁ」
「タツヤくんの夢は、悪夢じゃないんだろ?」
「ええ、まあ……」
「だったら良いんじゃない? 夢日記をしたためるのも良いかもね。そうすれば何か些細な違いに気づくかもしれない」
先生のアドバイスどおり、俺は夢の記憶をつけ始めた。
そうすると違いに気づいた。夢はいつもおれが目覚めて、姉さんが学校に向かうところで終わる。
けれども朝食中の会話の内容が違っていた。
つまりループじゃない。毎朝の日常だったのだ。
もちろんそれに気づいたから何になる訳でもないが……。
そうだ。何にもならない。言ってしまえば別にこんな夢、人生には何の影響も齎さない。
おれは夢では何故か喋れなかったから、姉とコミュニケーションをとる事もできない。
勉強の一つでも教えてもらえば、もっと有意義に過ごせるのかもしれないが、夢の内容はおれになんの成長も与えなかった。
けれども、それでも、おれが夢に拘る理由があるとするならば――……。
『彼女もキミと似たような事を言ってた。だからそれが繋がりになって……』
だから俺は志筑先生が好きなんだと思う。
他の教師じゃ、絶対にそんな事は教えてくれなかった。
放課後。光実がダンスの練習に向かう中、おれはマンションに向かっていた。
ただのマンションじゃない。それはユグドラシルコーポレーションが管理する特別支援擁護施設の一部だった。
身寄りの無い人や、生活保護を受給している人、ホームレス、あるいは精神が参ってしまって普通に生きられない人々が、社会復帰するまでココで暮らしている。
部屋番号『315』番。それが彼女の部屋、彼女の病室だった。
「こんにちは」
「わぁ、また来てくれたんだ!」
「約束しましたから。迷惑……、でしたか?」
「そんな事ないよ。むしろ嬉しい」
千歳さんはそう言っておれを部屋の中にいれてくれた。
甘い香りがする部屋だった。おれはこの匂いが大好きだった。
おれ達は以前、学校の授業で、この施設が開くお祭りの手伝いをする事になった。その際におれの班についてくれたのが千歳さんだった。
はじめは彼女が患者側だとは思わなかった。千歳さんはそんな風には見えなかったし、みんなが気味悪がっていた障がい児の子にも笑顔で接していたし。
不慣れだったおれ達を気遣って、積極的に声をかけてくれたりもしたっけ。
あとは……、なんだろう。強いて言えば姉に――、まどかに似てる気がした。
それはただ髪型だけなんだろうけど、それで十分だった。おれは彼女の事が知りたいと思った。
「これ、貰いものなの。ハーブティ。私はあんまり口に合わなかったんだけどタツヤくんはどうかな?」
「いいんですか? 頂きます」
「美味しくなかったら無理せずに言ってね。すぐに捨てちゃうから」
千歳ゆま。19歳。どうやら精神状態に難があるらしい。
「へぇ、本当だ。ちょっと独特の香りですね」
「本当にね。私、舌がおこちゃまだから、コーラの方が美味しいって思っちゃう」
「あ。おれコーラ買って来ました」
「ほんとう!? わあ! タツヤくんやるぅ!」
彼女は駅前のラブホテルで保護された。
発見当時、床には彼女の髪の毛や歯が散乱していたと言う。
顎の骨が砕け、体の至る所に青黒い痣が出来ていた。
ガリガリの体だから分かりやすく浮き上がった肋骨も、何本かは折れていたらしい。
彼女は……、クソッッ! 千歳さんはインターネットの掲示板で、自分を殴ってくれる人を募集していた。
彼女を殴ったのは色白の坊主頭の細目の――……。ダメだ。精神がよくない。
思い出しただけでも……、殺したくなる。そうだ。殺す。あいつは殺す。
殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺――……。
「あははッ!」
「えへ。どうしたのタツヤくん。急に笑って」
「いや別に。ちょっと思い出し笑いしちゃって」
「そっか。じゃあグラス持って来るね」
我ながら単純な思考回路だ。
でも問題ない。犯人はもう死んだ。なんでも殺されたらしい。きっと天罰が下ったんだ。
悪い事は忘れたほうがいい。思い出してワーッとなるのは良くない。
それにおれは最近考え方を変えてきた。先生や父さんの教えを受けて、間違っているのが世界ではなく、おれ達だと言うことに気づき始めてきた。
世界は常に正しい。逆を言えば常に間違っている。そこにいちいち理由を求めるのは言い訳だ。人は自分で生き方を決めることができる生き物だ。
千歳さんは殴られたい。傷つきたい。そうすれば『杏子』が見えるからだ。
傷つけば、痛くなれば、杏子が助けてくれるらしい。杏子が来ないのは千歳さんが痛くないかららしい。
俺はそれを否定しない、更生させようとしているユグドラシルとは違う。おれが、おれだけが千歳さんを理解してやればいい。
そうすれば千歳さんはおれに微笑んでくれる。おれに優しくしてくれる。こうして部屋に呼んでくれる。
「おいしいね」
「はい。おれもこっちの方が好きです。千歳さんが好きな方がいいです」
千歳さんのグラスを持つ手が震えていた。
以前手首を切った際に神経を傷つけたんだろう。千歳さんは傷を隠していなかった。
周りの人間はアレを気持ち悪いと言うだろうが、おれはあの傷が好きだった。
それでいい、あの傷はおれだけに見せてくれる傷だ。おれはあの傷が愛おしくてたまらない。
「千歳さん。また、まどかの夢を見ました」
「ほんとう!? 実は私も杏子の夢を見たの!」
「一緒ですね」
「一緒だね」
彼女は嬉しそうに笑って飛びついてきた。優しい甘い匂いがおれは好きだった。
でもその匂いは千歳さんが元々持っている体臭なのか。本当に近づかないと分からないし、感じてもすぐに消えてしまう。
「まどかは――」
おれが鹿目まどかの夢を見るようになったのは、千歳さんに出会ってからだ。
それは千歳さんも同じらしい。
初めてだと言ってくれた、殴られる以外で杏子が来てくれたのは。
「杏子はね!」
杏子、杏子、杏子杏子杏子。千歳さんは杏子の事が大好きらしい。
彼女は知らないんだろうな。おれは、杏子が世界で一番嫌いだった。
ほら。今もまた。千歳さんは杏子の話をいつまででもおれに聞かせようとする。できるなら今すぐに目の前にいる、この女を殴って黙らせたかった。
千歳さんが崩れていく恐怖があった。彼女は彼女の筈なのに、杏子の事を話す千歳ゆまは、少なくともおれの知らない千歳ゆまになる。
それでもおれは笑顔を浮かべ、しきりに相槌をうった。杏子を悪く言うのは千歳さんが最も嫌がることだ。
俺は絶対にそれをしない。先生も言っていた。相手を尊重すること、それが愛を育んでくれる。
それに彼女は笑ってくれるんだ。
「夢が見たいの。ダメかな?」
「いいに決まってるじゃないですか。それよりおれの方こそ――」
千歳さんは、おれを抱きしめた。おれに触れてくれた。
おれの身長は千歳さんよりずっと低い。みぞおちに埋まった顔、千歳さんは胸が大きいから俺は自ずと腰が引けてしまう。
たぶん、最高に間抜けな格好なんだろう。
彼女は強引なところがある。おれを引っ張っていくと、ベッドの上に倒れこんだ。スプリングがギシギシミシミシと壊れそうな音を立てる。
おれは彼女の目を見ようとしたが、その前に唇へ触れる熱に戸惑う。
全身が熱くなって、全身が冷えていく。
「んむッ」
おれは彼女の目を探した。おれはこのキスが大嫌いだった。
こんなものは媚でしかない。繰り返す中で彼女が覚えた、ただのご機嫌取りだ。
俺が離れないように、俺が来てくれるように気を遣ってくれているだけでしかない。
違う。おれが欲しいのはこんなんじゃない。でもおれは彼女を振り払おうとしない。
それがおれの弱さだ。我ながら気持ち悪すぎてゾワゾワしてくる。でも、それでも俺は彼女を抱きしめたかった。
彼女のぬくもりを身近に感じられるこの瞬間、離れられない。離れたくない。
「キョーコ……!」
千歳さんはおれと出会ってから眠るのを止めたらしい。
少しでも眠くなるとカフェインを過剰に摂取し、タバスコをまるごと口にして眠気を殺す。
しかしそんな事では人間壊れてしまう。だから千歳さんだってちゃんと眠る。
それが、おれと会った時だ。おれに触れて、おれを近くに感じるとき、彼女は夢を見る。
佐倉杏子の夢だ。
「………」
唇を離した時、彼女はもう夢の中だった。
だからおれは彼女に会う。会わなければならない。千歳さんに睡眠を与えるために。
もしも俺が一週間、彼女に会わなければ、彼女は一週間不眠を貫こうとする。ありとあらゆる手を使って。たとえそれが自傷であったとしてもだ。
そうまでして杏子に会いたいのだ。
「―――ッ」
おれは、この、今――ッ、目の前で幸せそうに寝息を立てている女を殴り殺したかった。
どうしようもない。だから声を震わせて泣く。
おれは中学三年生にもなって、声を震わせて泣く事しかできなかった。
だって千歳さんは一度もおれの事を見てくれない。千歳さんにとって、おれはただ佐倉杏子を感じ取るために使う映写機みたいなものでしかないじゃないか。
噂に聞いた程度だが、彼女は過去に虐待を受けていたらしい。
もしかしたら杏子と言うのは彼女が作りだしたイマジナリーフレンドなのではないか?
辛い時に、それを身代わりになってくれる都合のいい存在なのではないか? おれは図書館やネットで必死に調べた。
どうすれば過去に大きな傷を負った人の傍に入られるのか。どうすればおれを感じてくれるのか?
そして、どうすれば佐倉杏子を殺せるのかを。
千歳さんはどうして気づかないんだろう。
仮に杏子がいたとしても『今』はどこにもそんな女はいないじゃないか。
今、貴女の近くにいるのはおれなんだ。おれ以外の誰も千歳さんを理解してあげようとはしていない。
なのに……、なのにどうして彼女はおれを見てくれないんだ。
おれが子供だからか? 頼りないからか? だったらなんで唇なんて押し付ける?
彼女はきっと分かってる。だから媚を売るんだ。だから押し付けがましい性を押し付ける。確かにおれはあの日、彼女が純潔の証を見せてくれた時、安心したさ。
「いつも頼ってばかりでゴメンね」
異常な空間だったと思う。
彼女は泣きながら服を脱ぎ、傷だらけの体を見せてくれた。
それは彼女の自傷行為でできたものなのか。それとも誰かにつけられたものなのか。それは分からないし、別にどうでもいい。
でもおれは別にそんな姿をさらけ出して欲しいなんて思っていなかった。おれはただ、心をさらけ出してほしかっただけだ。
おれが何度断っても、何度拒んでも彼女はおれにキスをした。
自分の全てを見せて、汗と汗を繋ごうとした。
でもおれは――ッ、そんなものが欲しくて貴女に近づいた訳じゃない。
ただ手を引いて、遊園地に行きたいと言ってくれれば、おれはそれで良かった。杏子と一緒にいかないで欲しかっただけだ。
おれは貴女に触れた。けれどもッ、その先にはいってない。それがおれの答えだと貴女はきっと理解してくれた筈だ。
なのにどうして、どうしてッ、まだおれを見てくれない……ッ!?
悪いと思う心があって、どうして返事ひとつしてくれないんだ。
こんなに近くにいるのに、貴女はいつも杏子を見てる。杏子があなたに微笑んでくれたか? 話しかけてくれたか? 貴女の好きな炭酸飲料を持ってきてくれるのか?
そんな事してくれないじゃないか。いや、してくれているんだろう。夢の中では。
でもそれはニセモノだ。あんたが空想してるだけで何の『確か』もないのにどうして、どうして、どうして――ッッ!
「千歳さんっ、おれは……!」
「ゆまって、呼んで」
「ゆまさんッ、どうかお願いです。お願いですからもう――」
「なぁに? キョーコ」
「!!」
「キョーコはゆまが守るからね。だからゆまの事、置いていかないでね」
おれは、千歳ゆまを愛していた。
軽い言葉に聞こえるだろう。おれだってバカじゃない。中学三年生で愛を語るなんざ、アホのやる事だ。
でも、それでも、おれは彼女が好きだった。愛おしいと思ったんだ。
別に特別なことなんて期待してなかった。ただ笑って欲しいと思っただけだ。おれの方を向いて微笑んでくれれば、ただそれだけで……。
「ゆま」
「ん?」
「ありがとう」
「えへへ、どういたしましてぇ」
だからおれは、佐倉杏子でいいと思った。
佐倉杏子がいいと思った。
笑うおれは酷く惨めで、それこそ死んでしまいたくなるほどにバカらしい。
「志筑くん。最近調子はどうかな? お子さんの予定は?」
「いえ。しばらくは夫婦二人だけの時間を楽しもうと約束しておりますの」
「それはいい事だ。しかし、そうすると
「確かに、ええ。ですが夫も理解してくれていますわ」
「フム。それはいい事だ」
「……どういう風の吹き回しでしょうか? プロフェッサーがそんな事を聞くなんて気味が悪いですわ」
「心外だね。と、言いたい所だが……、流石は志筑くん。実は貴虎に怒られてね。私はもっと周りとコミュニケーションを取った方がいいらしい」
「ですが、あからさまに興味がないという雰囲気で話しかけられても」
「ハハハ。これは失礼したよ。事実――、そうだね。キミの家庭の話はとてもとても興味が無い。私としては、むしろキミがふいに話す夢の話のほうが聞きたいんだ」
戦極凌馬はデスクの上に置かれた戦極ドライバーを見てニヤリと笑った。
志筑仁美はコーヒーを持ったまま立ち上がると、窓の外を見つめる。眼下に広がる町は、おぼろげな夢とは重ならない。
「かつて沢芽は、見滝原と呼ばれていました」
「おいおい、いくら私がテレビを見ないからって。それくらい知っているよ。最近の話じゃないか」
「失礼しました。では理由はご存知でしょうか? 都市を発展させるため? いえ、違いますわ。忘れようとしているんです。世界が彼女達を」
「鹿目まどかだったかな? キミのドリームフレンズは」
「あれは幻ではありませんわ。夫も同じ夢を見ていますの。だから私達は――……」
結婚指輪を撫でる。同情も、いつかは愛情に変わるだろう。
依存かもしれないが……、仁美は呆れたように笑う。
「私はリンゴを視ましたわ」
「……残夢ではない事を祈るよ」
仁美はそう言ってスケッチブックを凌馬に手渡した。
デザイン担当は彼女だ。友人が――、まどかが絵が上手かったから。仁美も勉強した。
そうしたらいつか彼女と再会できた時に、話も弾む。
むしろ絵を学べば彼女が戻ってきてくれるかもしれないと思ったから。
「うん。いいデザインだ。オレンジと武者が見事にマッチしている。モチーフは?」
「伊達政宗から少し」
「ふーん。了解だよ。すぐにこのデザインデータで鎧武の製作に取り掛かろうじゃないか」
タツヤのくだりは井上敏樹的な作風(小説版龍騎)を意識しました。
ただ僕はRT龍騎の二話を見て、あの人を何にも理解していなかったのだと思いました。
マジでアレみた後、熱出て寝込みましたからね僕。
奥が深いお人やでぇ(´・ω・)