仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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第三話 夢幻に消えて

 

 

「いやぁ、予想をはるかに超えた沈みっぷりだねぇ」

 

「……凌馬」

 

 

戦極凌馬は貴虎の向かいに座ると、空になったボトルを持ち上げて笑う。

 

 

「藤果くんのことは残念だった。私も同じ孤児院で育った仲だ。悲しくて悲しくて、今にも涙が零れそうだよ」

 

「思ってもいないことを」

 

「悲しいのは本当だよ。まさかあんな簡単に死ぬなんて期待外れで泣けてくる」

 

 

貴虎の目の色が変わった。

溢れんばかりの殺気を感じて、凌馬は呆れたようにため息をついた。

 

 

「嫉妬。おそらくそれが最も近い感情の名前だろう」

 

 

凌馬がテーブルに置いたリンゴロックシード。

回収していたようで、彼にとっても思い出深い代物ではある。

 

 

「黄金の果実という代物が存在しているのではないかというのは古くからあったことだ。私もそれを信じ、神話に登場する最も有名な果物であるリンゴを模した」

 

 

リンゴロックシードは一番はじめに凌馬が作ったロックシードだった。

気合を入れて作ったが故にあまりの出力で、操る者が壊れてしまうということで失敗作だと思っていたが……。

 

 

「藤果くんは見事にそれを使いこなしていた。それだけではなく彼女はキミの心まで支配した」

 

 

幼い貴虎が施設で育んだ絆は藤果だけではない。凌馬もそうだった。

 

 

「キミは世界の在り方をまるまま変えてしまうほどの力を持っていたと思っていたが、彼女がキミを凡人にしてしまったと思っているよ。そういう意味でも彼女に対して思うところがあったのは事実だ」

 

「買い被りすぎだ。お前は人を見限ったようで、どこかで諦めきれていない」

 

「かもしれないね。賞賛を送るのも人だ。観測者なき世界はそれはそれでつまらない」

 

 

そういって凌馬はジュラルミンケースを置いた。

それを開けると、そこにはゲネシスドライバーと新作のロックシードがあった。

 

 

「藤果くんがいなくなったことは実はそこまで悲観するものではないと思っている。キミを縛る枷はもうない。彼女は甦るんだよ貴虎、魔法少女を全滅させればね」

 

「……だが、光実が仲良くしている沙々という少女も参加している」

 

「――という苦悩を以前のキミなら抱いていただろう。だが私がキミを凡人と呼んだのは聞いてのとおりだ。人は皆、欲望を抱き、醜く生きている。キミも今となってはそのありふれた一人でしかない」

 

「どういう意味だ?」

 

「自らを優先させればいい。それが救済にも繋がる」

 

「………」

 

「青い恋だ。弟くんならすぐに新しい人が現れるよ」

 

 

そのためにと、凌馬は続ける。

 

 

「かつての友としての情けだ。優木沙々はユグドラシルが始末してあげるよ」

 

「………」

 

 

無言が答えだった。

 

 

「悪くないね。その目は、私が好きだった時のキミにそっくりだ」

 

 

 

 

あれだけの騒ぎであったにも関わらず、玄関を入ればいまだに多くの生徒がスマホのカメラを向けていた。

喜怒哀楽のわからない表情を浮かべて立っている。

シグルドはそんな生徒たちの視線が左に向いたのを理解した。

 

左の通路を走り、右に曲がると、長い廊下の先に麻衣の背中を見つける。

その間にも多くの生徒たちがスマホをもってどうしていいかわからずに思考を停止している。

 

 

「困ったガキ共だ。ほら道を開けろ! 開けなきゃ死ぬぜ!!」

 

 

ソニックアローの弦を引くと、光が集中していく。

ただごとではないと生徒たちもわかったのか、すぐに左右にはけていった。

そうすると飛んでいく光の矢。

 

シグルドは興味深く観察していた。

ただでさえ廊下という場所。今は他の生徒たちもいてより狭くなっている。

その状態では満足に刀を振るうことはできない筈だ。

それは麻衣もわかっていた。故に振り返らず、加速する。

 

 

「野次馬は感心しないな」

 

 

麻衣はそう言い残してつきあたりを曲がった。

矢は麻衣には刺さらず、曲がり角で固まっていた生徒たちに突き刺さる。

 

 

「ぎゃあああぁあ!」「ひぃいい!」「ぐげぇああ!」

 

 

汚い悲鳴が重なり、血をまき散らしながら倒れる生徒たち。

麻衣は止まらない。

シグルドも追いかけるために走り出した。

 

 

「伏せろ、死ぬぞ」

 

 

麻衣は淡々と口にしたため、聞き逃した生徒たちも多いだろう。

そういった生徒たちが呆けていると、窓の向こうから光の矢が飛んできた。

シグルドは中庭を挟んだ向かいの廊下に麻衣の姿を見つけたので、矢を連射したのだ。

ガラスを突き破った矢は麻衣には命中せずに、他の生徒の肩や鎖骨のあたりに突き刺さっていく。

 

麻衣は姿勢を低くして走る。

窓の下に身を隠しながら移動するが、やがて行き止まりにやってきた。

道は左にある階段のみ。それがわかっているのか、シグルドもロックシードをソニックアローに装填して意識を集中させる。

階段を上ろうとしたところを撃つ。あるいは踊り場付近に矢を放っても強化された状態ならばある程度のダメージを与えることができるだろう。

窓から頭を出した時がチャンスだ。だから狙いを定める。

 

 

「甘いな」

 

 

麻衣は、笑った。

なぜかはわからない。言い訳か、鎮めるためか、超えるためか。

一つだけわかることがあるなら、体のほうが先に動いていた。

屈んだまま振り返る。

握りしめたのは鞘と、柄。

 

 

「覚悟は既に固めている」

 

 

魔力を、込めた。

 

 

「お前に魔法を見せてやろう」

 

 

麻衣は刀を抜いた。

居合切り。その斬撃はシグルドの両足首に直撃した。

 

 

「うがぁぁあ!」

 

 

焼けるような痛みを覚え、シグルドは思わずその場に倒れた。

装甲から煙が上がっている。シグルドは響きわたる悲鳴の中で、感心したように頷いた。

 

 

「はぁ」

 

 

気だるそうに体を起こす。

床についていた手を見ると、べっとりとついた血があった。

シグルドのものではない。周りにいた生徒たちのものだ。

たくさんの人間が足首から下を失って地面に倒れている。

 

 

「やるねぇ」

 

 

しかも、麻衣は居合切りと同時に立ち上がり、窓を突き破って中庭を走っていた。

シグルドが立ち上がったと同時に首を刈り取るつもりだったのだ。

狙いはよかったが、間に合わなかったのは無数の弾丸が襲い掛かってきて急ブレーキをかけたからだ。

ダンデライナーに乗ったバロンが到着したのだ。

麻衣は刀を左手に持って前に出した。れだけでは弾丸を抑えきれないが、そこで麻衣は右手を思いきり振るう。

 

その時、バロンは激しい抵抗感を感じた。

麻衣がさらに力を込めると、バロンがダンデライナーのシートから落ちた。

範囲拡大により、『掴み』のリーチを伸ばしたのだ。

 

バロンが墜落して地面に叩きつけられたのと同じくして、麻衣は跳躍でダンデライナーのシートに跨った。

見よう見まねではあったが機体前方を上にあげてアクセルグリップを捻ると、機体は斜め上に直進する。

そこで麻衣は飛び降りる。

ダンデライナーはどこかに飛んでいき、一方で麻衣はバロンの胴体に着地して、そのまま跳ねた。

 

 

「おいバナナ」

 

 

麻衣は地面に着地すると倒れているバロンを見て、笑った。

 

 

「強者の意味を教えてもらっていいか?」

 

「貴様ァァ……ッ! ナメるなよ!!」

 

「舐める? バナナは齧る派だ。お前も素早く食べられて助かる」

 

「戯言を!」

 

 

バロンは立ち上がろうとするが、そこで屈んでろと声が飛んできた。

言われた通り不動のバロン。その頭上をシグルドが放った矢が通過していく。

麻衣は右足で思いきり地面を踏みつけた。

すると畳型のシールドが出現して矢を受け止めていく。

 

さらに抜刀、畳を切り裂いた斬撃がシグルドに直撃する。

麻衣は返しに刀を下から上に振り上げた。地を伝う斬撃がバロンに直撃して、さらに後ろへ転がしていく。

 

 

「甘い!」

 

 

シグルドはバロンを飛び越えて前に出た。

斬撃をガードしていたようだ。前宙で一気に距離を縮めると、そのままの勢いで切りかかる。

麻衣は刀を横にしてそれを止めた。

二人は武器を何度も振り回し、ぶつけ合う音を響かせていく。

 

 

「オメェは今のままでも十分魔女だよ!」

 

 

シグルドは刃を合わせたまま移動。

火花を散らしながら一旦、背中合わせとなり、すぐにまた振り返りながら斬りあった。

 

 

「人類のために狩り殺さなきゃ、みなさまが安心して眠れねぇ!」

 

 

はじき合った衝撃で麻衣は側宙で後ろに飛んでいた。

 

 

「それでは足りない」

 

 

シグルドはそこにしっかりと矢を合わせていた。

直撃する。普通ならば。

 

 

「私は修羅になる」

 

 

麻衣は手を伸ばした。

範囲拡大。地面の感触がある。肘を曲げ、伸ばしたら麻衣の体が跳ね上がるように上昇した。

だから矢は彼女の真下を通過して後ろにある壁を破壊し、その向こうにいる生徒たちが悲鳴をあげる。

着地した麻衣は刀を思いきり振るった。

 

シグルドはサイドステップで斬撃を回避する。

巨大な鎌鼬は後ろある壁を越えて生徒たちの体を切り裂いた。

 

シグルドは麻衣を狙って矢を放つ。

麻衣がそれを避けると一拍おいて後ろから悲鳴が聞こえてきた。

 

麻衣は刀を二回降る。

シグルドは捉えられない。代わりに二回悲鳴が聞こえて血が中庭に飛んできた。

 

二人は位置を変える。シグルドがソニックアローを振るうと斬撃が発射されて麻衣の首を狙うが、側宙で回避されたため、校舎を突き破って生徒たちを掠めた。

だがまだソニックアローから発射された強化アローがいくつか襲い掛かる。麻衣はそれをすべて刀で切り弾いた。

軌道が変わった矢は二階に当たり、教室を荒らす。

別の矢は三階の壁を突き破り、見知らぬ誰かが悲鳴を上げた。

 

二人は位置を変える。

麻衣の斬撃をシグルドは回避し、斬撃は壁を越えて生徒たちの皮膚を割いて鮮血を噴出させた。

 

 

「先生ェエエエエ!」

 

 

一見すれば間抜けなトーンの叫び声。しかしそこにいた志筑昴はまったく笑えなかった。

野球部のエース、彼の手首の断面を見たからだ。

 

 

「大丈夫だ! とにかく止血を!」

 

 

先生。先生。先生。いつぶりだろうかこれほどの生徒に囲まれたのは。

しかし笑顔は一つもない。口から出る言葉はだいたい同じ。助けて。苦しい。痛い。

女生徒の一人が耳を持ってやってきた。志筑は大丈夫だと叫ぶしかできない。

しかしパニックになっている生徒たちがほとんどのこの状況下でなぜか志筑はどこかで冷静だった。それはきっとこの光景に既視感を覚えているからだ。

 

 

(なんだ……? 何が起こってる!?)

 

 

志筑の視線の先には、倒れている生徒たちに謎の光を当てている海香が見える。

視線は自然と動いていた。彼女と同じく謎のステッキから光を放ち、止血を行っているカオルを見る。里美、亜里紗、茉莉を見る。

知らない筈の少女が、なぜか『わかる』気がする。

あまりにも不思議な光景が不思議じゃないように思えてしまう。

それは二階のトイレにいる鹿目タツヤも同じだった。

気分が悪くなって水で顔を洗っていると、ふと、タツヤは顔を上げた。

 

 

「まどか……?」

 

 

鹿目まどかがそこにいた。

ゾッとしたが、タツヤはすぐにそれが見間違いであることに気づいた。

目をこすり、水を拭うと、鏡の中にいたのは自分だった。

似ているから見間違えたのか? それが、なんだか癪だった。

 

 

「誰なんだお前は……」

 

 

とはいえ、鹿目まどかは、微笑んだまま。

 

 

「!」

 

 

爆発音と悲鳴。

タツヤが慌ててトイレから出ると、壁に穴が開いていて、何人かの生徒たちが血を出しながら倒れていた。

死んでいるのかと息をのんだが、どうやらそうではないようだ。

たとえ肉体の一部が吹き飛んでいたとしても、最速で止血が行われていたため、まだ息があったのだ。

 

血を止めたのは銀色の髪をした少女だった。

天乃鈴音。彼女は何も言わず、ただ中庭で戦う麻衣たちを見つめながらながら作業的に倒れている人間を治療していく。

 

 

「魔法、少女」

 

 

タツヤは無意識に口にしていたため、その存在がなんであるか理解することはできなかった。

 

 

 

 

 

「ハァアアアア!!」

 

場面は中庭に戻る。

バロンが槍を突き出していた。シグルドに気を取られていた麻衣に向けた一撃。

完璧なタイミングではあったが、麻衣の反射神経がそれを凌駕した。

槍の先を掴んだのだ。バロンが力を込めても槍はそこから先に進んでくれない。

 

そうしてると麻衣が頭を前に振った。

範囲拡大にて頭突きがバロンの頭を打つ。

衝撃でバロンは槍から手を離した。

麻衣は素早く槍を持ち直すと、踏み込み、それをシグルドへ投げつける。

 

 

「チッ!」

 

 

シグルドは横に転がり槍を回避したが、それこそが麻衣の狙いだった。

 

 

「グアァアッ!」

 

 

シグルドが槍に気を取られているほんのわずかの隙をついて麻衣は距離を詰めていた。

全力を込めて打ち込んだ突き。

さらにそこで魔法が発動して、文字通り『刀が伸びた』。

剣先はシグルドを押していき、校舎の壁に叩きつけてさらにその奥へと吹き飛ばしていく。

 

 

「どうした! こんなものかアーマードライダー! 私は退屈を感じている!」

 

「黙れ! 俺が屈しない限り、貴様が勝ったわけではない!」『マンゴー!』

 

 

立ち上がったバロンはロックシードを交換してブレードを倒す。

 

 

『カモン!』『マンゴーアームズ!』『ファイト・オブ・ハンマーァ!』

 

 

マンゴーパニッシャーと呼ばれるメイスを引きずってバロンは麻衣のもとへ歩いていく。

数々の斬撃が飛んできたが、バロンはわずかに減速するだけで構わず前に出た。

 

 

「強がりだな!」

 

「試してみるか!」

 

 

麻衣が再び刀を振るったとき、目を見開く。

マンゴーが飛んできた。斬撃を突破して向かってくる。

 

 

「くっ!」

 

 

麻衣は刀でメイスをはじいたが、手がビリビリと痺れるほどの衝撃を感じた。

一方でバロンは走り、はじかれたメイスをキャッチして再び振るい上げる。

そして踏み込み、思いきり振り下ろした。麻衣は刀でそれをガードするが、威力に押し負けて膝をつく。

判断はすぐだ。麻衣は刀を捨てて後ろに飛んだ。

しかしバロンもそこでカッティングブレードを二回倒した。

 

 

『カモン!』『マンゴーオーレ!』

 

 

バロンは武器を持って高速回転。

やがて踏み込むとエネルギーをまとったメイスを思いきり投げ飛ばした。

狙いはいいが、それが麻衣に当たることはない。

前宙で飛んできたカオルがそれを蹴り飛ばして軌道をズラしたからだ。

 

 

「お前らどうかしてる! どうかしてるぞ! 戒斗! 麻衣! 周りを見てみろ!」

 

「見えているさ! そうだろ、バロン!」

 

「当たり前のことを聞くな! 牧、俺たちの目を疑っているのか!」

 

「~~~ッッ!!」

 

 

カオルは歯を食いしばると、振り返り、麻衣を見ると両手を広げる。

 

 

「ならもうやめろ! 洒落にならない!」

 

「だろうな。しかし我々が紡ごうとしているのは喜劇ではない。悲劇なのだから!」

 

 

麻衣はバックステップでカオルから距離を取ると手を伸ばした。

離れたところにある刀を掴み、手元へ引き寄せる。

そして腰を落とすと居合の構えを取った。

 

 

「ハァアアア!」

 

 

声が聞こえ、麻衣は真横を切った。

感触がある。はじかれたのはイチゴの装飾があるクナイだ。

 

 

「邪魔させてもらうぜ!」

 

 

鎧武、イチゴアームズが麻衣に飛び掛かった。

一方でバロンを連打するクルミ型のエネルギー。ナックルが走ってきた。

 

 

「そういうことだ! 大人しくしろ、戒斗!」

 

 

同じ陣営は傷つけ合えずとも衝撃で怯ませることや、掴みかかって拘束することはできる。

ナックルはバロンに殴り掛かり、バロンもそれを防ぐために応戦を開始した。

 

鎧武もバク宙をしながら麻衣のほうに飛び掛かっていく。

その際にクナイを二つ投げており、麻衣はそれを弾きながら鎧武を切り落とそうと狙いを定めた。

しかしイチゴアームズの動きは軽快だ。

斬撃を回避すると、さらにクナイを麻衣の傍に突き刺す。

このクナイはただの刃物ではなく、爆発するようになっており次々と赤い炎が弾けていった。

 

しかし麻衣も既に見切ったのか、クナイを的確にかわしながら距離を詰めてくる。

鎧武がカッティングブレードに手を触れた際、麻衣は急ブレーキをかけた。

 

 

「ッ?」

 

 

麻衣が後ろに飛んで距離をあける。

どうして? 鎧武が疑問に思って周囲を確認したとき、意味を理解した。

上から何かが降ってくる。

クマだ。それは巨大なクマのぬいぐるみだった。

 

 

「よく聞け一同!」

 

 

着地したクマの頭に乗っていたみらいが叫んだ。

クマが剛腕を振るうと、直撃した鎧武がギャグみたいに吹っ飛んで三階の壁を突き破った。

 

 

「うがぁあぁあああ!」

 

 

机や椅子を巻き込みながら鎧武は尚も吹き飛んでいく

教室の壁を粉砕し、さらには向かいの壁も突き破り、校舎の外に放り出されたところでようやっと減速して地面に墜落していった。

 

 

「再確認しておけよ!!」

 

 

クマが腕を振るった。

 

 

「おいおいおいおい!」

 

 

ナックルはクマの腕を両手で止めようとしてみるが、なんのことはなく鎧武と同じようにブッ飛ばされて見えなくなった。

 

 

「このみらい様が! 一番強いんだってこと!」

 

「面白い! 強者というのならば――」

 

 

プチッと音がした。気がする。

バロンがクマに踏みつぶされた。

足を退けてみると倒れたまま沈黙しているので、クマはバロンを掴んで思いきり空の彼方に投げ飛ばす。

彼方にまで吹っ飛ばすつもりだったが、ダンデライナーが猛スピードで突っ込んできた。

乗っていたシグルドはバロンをキャッチすると、ため息をついて飛んでいった。

 

 

 

 

「うッ、ぐぉおぁ……ッ!」

 

 

屋上で黒影は目を抑えていた。騎士の仮面があったとしてもまだ目が痛む。

その痛みがかつてない苛立ちを覚えさせた。こんな筈ではない。

なにもかも。

 

 

「クソッ!」

 

 

黒影は地面を殴った。

まだ足りず、もう一発全力で殴った。固いところに拳を打ち付けているにも関わらず痛みはない。

むしろ地面のほうに亀裂が走り、これを続けていればやがて穴も開くだろう。

地味なことかもしれないが、それで人間を超えた力を手に入れたとわかる。

なのになんで人間の時と同じようなことを繰り返しているのか。

 

 

「初瀬くん」

 

 

黒影は肩をビクっと震わせて後ろを見た。

詩音千里が心配そうな表情をして立っているが、その慈愛があまりにも恐ろしく思えた。

 

 

「大丈夫?」

 

 

彼女は不安そうに黒影を見つめている。

なぜこの状況でそんなことが言えるのか本気で理解できなかった。彼女が得体のしれない何かに見える。

あるいは、だからこそ黒影が未だに燻っている原因なのか。

 

 

「弟がいる。妹もだ……ッ!」

 

 

黒影は槍を持って立ち上がった。

初瀬の家にはまだ小さな弟たちや妹たちがいて、今日も彼の帰りを待っている。

母親が亡くなり、父親も病気で入院している今、初瀬がいなくなれば弟たちはバラバラになってしまう。

そんなのは良くないと、思ってる。

 

もちろん魔法少女たちの死を経てまでかと言われると――、わからない。

だがもう城乃内はいない。

遥香もいない。

 

 

「もう戻れねぇんだよ! わかってんだろ、お前だって本当は!」

 

「ッッ」

 

「どうすりゃいい? あんのか!? 元に戻れる都合いい魔法がよ!」

 

「………」

 

 

千里は何も言えなかった。

あると言えればいいが、おそらくきっとそんなものはない。この世にはそういうどうしようもないことが確かに存在しているのだ。

この今が。フールズゲームがきっとそうだ。

いつかあの日、感じた時のように。

 

 

「初瀬くんって結構、単純よね」

 

 

そう、思ってた。

亜里紗がレイドワイルドに入ったのだってゲームセンターで初瀬と喧嘩したからだ。

格闘ゲームが原因らしい。

リアルファイトにまで発展したということだったが、千里が止めてから五分後、初瀬と亜里紗は腕を組んで海賊の乾杯みたいなやり方でコーラを飲んでいた。

 

初瀬は絵にかいたような不良少年だった。

授業はよくサボるし、態度は悪いし、千里としては苦手なタイプだった。

そんなある日、大雨の日にずぶ濡れになっている初瀬を見つけた。

傘は持っていたはずだが? 不思議に思った千里が聞いてみると、子犬が捨てられていて濡れると可哀そうので傘を置いてきたという。

お腹がすいている筈だから今からミルクと毛布を買って戻るのだという(城乃内の金でだが。本人はゲームセンターで使いすぎたらしい)

 

 

「子犬にやさしい不良って。なにそれ、昭和? 笑っちゃう」

 

 

クスっと、千里は笑った。

案の定、ミルクを与えた後はどうするか考えていなかったので、千里も一緒に引き取ってくれる人を探した。

別の日には初瀬が亜里紗とみらいを引き連れて他校の生徒と喧嘩をしたと聞いた。初瀬と亜里紗が暴れて散らして、みらいが誰かの頭に噛みついたのだという。

なんでそんなことをしたのかと理由を聞いたら、同じチームの仲間がやられたからだという。

だからって暴力はいけない。

千里は劣化のごとく彼らを叱ったのを覚えている。

 

 

「あれは覚えてる?」

 

 

ある日の挨拶運動で、高等部の上級生を注意したら逆ギレされた。

こんなことをしても意味がないと少しキツめに言われたのだが、そのとき後ろから初瀬の声が飛んできたのだ。

 

 

『そんなことねーぞ』

 

 

初瀬はそう言ってその生徒を睨みつけた。あれだけ着崩していた制服をかっちり固めて。

千里は感動したが、翌日になると初瀬は制服を着崩してアホ面で登校してきたものだから、叱ったのを覚えている。

 

 

「バカね。その日だけ直せばいいってものじゃないのに」

 

 

千里は、両耳のピアスを潰した。

二つのソウルジェムが破壊されたことにより、魂の場所が肉体へ戻る。

それだけではなく、わかりやすいように変身を解除した。

そうやってただの弱い人間である千里は槍を向けている黒影に微笑みかける。

 

 

「初瀬くん」

 

「……ッッ」

 

「信じてる」

 

「ぉお……ッ! オオオオオオオオオオオオ!」

 

 

黒影は耳障りなものを消すために走り出した。

 

 

「………」

 

 

亜里紗は屋上にやって来た。

 

 

「………」

 

 

真顔で立っている。

 

 

「ハァ! ハァッ! ぐ……ッッ! ゼェ! ゼェ!」

 

 

黒影が肩で息をしていた。両手でガッチリと槍の柄を掴んでいる。

マツボックリの装飾の先にある刃からはボタボタと血が垂れていた。

それは亜里紗の視線の先、倒れていた千里の胸から流れ出たものだ。

まさか。亜里紗は一瞬そう思ったが、そんな馬鹿な話はありえないので、ありえない筈だった。

 

 

【詩音千里・死亡】

【魔法少女陣営:残り10人】【騎士陣営:残り10人】

 

 

気が付けば亜里紗は走っていた。

走って、跳んで、膝を出す。

当たった感触。着地すると同時に全力で黒影を殴った。

 

 

「初瀬ェエエェエエエッッ!!」

 

 

亜里紗は柵にぶつかった黒影の首をつかんで引き戻すと、地面に引き倒す。

そして馬乗りになるとありったけの力を込めて殴り続けた。

 

 

「どんな気持ちでッッ、千里がアンタのことをォオ!」

 

「グッ! ガァア!」

 

「それを! アンタはァアア!」

 

 

亜里紗は黒影の仮面を叩き割るつもりで拳に力を込めた。

 

一方、中庭のほうでは茉莉がみらいに取り押さえられていた。

よくないことをしようとしたからだ。

しかし茉莉は手を伸ばした。

 

 

「カオル!」

 

 

同じチームだったためか、カオルとアイコンタクトで意思疎通が取れた。

茉莉が手のひらから発射した光球を、カオルが空に向かって蹴り飛ばす。

それは猛スピードで空に昇ると、やがては爆発して大きな花火が学校を照らした。

 

むろん、これは魔法の発動するために準備でしかない。

光が場所を、人を照らす。

すると茉莉の頭にあったお団子型のレーダーが作動して捜し人がどこにいるのかを把握することができた。

 

 

「ザック! 屋上!」

 

 

茉莉が全力で叫ぶと、それに応える声が聞こえた。

ナックルがダンデライナーに乗って屋上へ向かう。

クマに投げ飛ばされた彼は、茉莉が受け止めていた。さらにそこへシグルドが通りかかり、もう一機ダンデライナーのロックシードを譲ったのだ。

それに乗って屋上へ飛び込み、ナックルは機体から飛び降りて亜里紗に掌底を打ち当てた。

彼女が怯んで後退していく隙に黒影の腕をつかむと、再びダンデライナーに戻って二人乗りで学校を後にした。

 

 

「裏切りものが!」

 

 

みらいは茉莉を蹴り飛ばす。

 

 

「よせ! みらい!」

 

「どうして庇う! アイツ、騎士を助けるようなことしやがって!」

 

「それが普通だろ! 違うか!?」

 

「しかし騎士は詩音を殺した。違うか?」

 

「それは――ッ! でも……ッッ!!」

 

 

カオルが目をそらした。その先に疲労している海香が見える。

 

 

「言い争っている暇があるのなら治療を手伝ってちょうだい。さっき鈴音と里美に会って手伝ってもらったけど、まだ足りないわ」

 

 

奇跡のような話だが、どうやら死人は出ていないようだ。

海香が広範囲にわたる回復魔法をかけたというのもある。

とはいえ肉体の一部を欠損したものや重傷のものがいるのは事実だ。

既に救急車や、ユグドラシルの救護班も到着しているが見捨てて帰ることはできない。

 

 

「詩音の死体を見ていかなくていいのか? 交流があったんだろう?」

 

 

海香は眼鏡を整える。兄の死が脳裏によぎった。

 

 

「……もう、消えてるわ」

 

 

その通りであった。

千里は亜里紗の腕の中で粒子化した。

先ほどは頬に落ちていた涙の粒が屋上の床に落ちる。

 

 

「千里ぉ……」

 

 

亜里紗は泣いていた。

あの時、魔法少女になる前もずっと泣いていた。

いじめられていた彼女は、いつも独りぼっちで泣いていた。

そんな彼女を見つけたキュゥべえが語りかける。魔法少女にならないか? と。

だから亜里紗は『もっと強くなりたい』と願い、契約を成立させたのだ。

 

そこからの彼女は傍若無人の一言に尽きる。

魔法少女となった彼女は無敵だった。

誰も彼女に逆らえない。好き勝手やっても誰にも文句を言われない。

そうやって暴君となり、優越感に浸っている時に千里と出会った。

 

いつも通りボコボコにしてやると意気込んだが、逆にボコボコにされてしまった。

その時、亜里紗はまた泣いた。

殺されると思ったからだ。こんな悪い人間は地獄に落ちるのがふさわしいと思った。

しかし千里は亜里紗を傷つけることはなく、むしろ手を差し伸べてきた。

 

 

『一緒に、力の使い方を学びましょう? ね?』

 

 

亜里紗は笑顔でその手を取った。

千里がいたから今の自分がいると思っている。

彼女は親友だった。

 

 

「……え?」

 

 

千里は素晴らしい人間だった。

弱っている人を見つけて、声をかけてくれる。

 

 

「えぇ?」

 

 

亜里紗だけではない。

彼女も同じだった。

彼女は苦しみ、怖がっていたから。

 

 

『みんなきっと私を疑ってる……ッ!』

 

 

そうやって震えていると、千里は声をかけた。

 

 

『そんなことないわ。少なくとも私はそんなこと欠片も思ってないわ』

 

『ほ、ほんとう……?』

 

『当たり前じゃない! 不安なの? ふふふ、可愛いわねっ』

 

『だって不安にもなる! 奏先輩があんな――』

 

 

ボロボロと泣いていたら、千里は優しく抱きしめてくれた。

 

 

『大丈夫。大丈夫だから。絶対に大丈夫。不安なら私が守るから』

 

『ほん、とう?』

 

『もちろん。だから困ったらいつでも私を頼ってね』

 

 

頼ってね。

 

頼る。縋る。傍にいる。

 

頼る。

 

頼ってって。

 

頼りたいから頼ろうと思ってたよららららあららあぁららら

 

 

「あえぇ?」

 

 

"里美"は、首を傾げた。

彼女が今日、この学校に来たのは千里が誘ってくれたからだった。

本当は怖くて引きこもっていたかったが、ナイトフェイズもあるからと千里が迎えに来てくれたからだった。

千里がいればと里美は了解したのに。

じゃあ、ほら、千里はどこ?

 

 

「頼ってって……、言ったじゃなぃ」

 

 

うそつき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピィイイイイイイイイイイ!』

 

ホイッスルの音が煩い。

茉莉と海香が防御魔法を張らなければ生徒たちの鼓膜は破れていただろう。

生徒たちがパニックになって逃げていく。ちょうどそこで魔女結解が中庭を包みこんだ。

 

 

「里美よ!」

 

 

亜里紗が着地する。

カオルや海香は青ざめて魔女・『ワイニーアーマー』を見た。

ドレスを着た頭がホイッスルの魔女である。右手が鞭になっており、さっそくそれを振るって魔法少女たちを殺そうとしてくる。

 

 

「里美……ッ」

 

 

みらいは目を細めた。

迫る鞭がバラバラになった。そこには麻衣が立っている。

 

 

「諦めろ。残念だがもう助からない」

 

「そんな……ッ! ちくしょう!!」

 

 

カオルは諦めきれずワイニーに飛びついて説得を試みる。

あきらめるな。声が聞こえるか? 魔女に乗っ取られるな。

そんな言葉を並べてみたが、帰って来たのは爆音の衝撃波だった。

 

 

「ぐあぁぁあ!」

 

 

カオルが地面を転がっていく。

彼女に駆け寄る者と、魔女に向き合う者。

麻衣は腰を落とし、居合の構えをとった。

 

 

「!!」

 

 

しかし麻衣は攻撃を中断するとすぐに後ろに飛んで距離をとった。

光の矢が魔女に直撃して爆発を起こしたのだ。

麻衣は目を細める。視線の先にはたった一人で歩いてくる騎士がいた。

 

 

「………」

 

 

斬月・真。

ソニックアローの弦を引いて手を離すと、(やじり)の部分から幾重ものレーザーが発射されて魔女に直撃していく。

 

 

『ビィィイイイイ!』

 

 

魔女が苦しげな声をあげた。

カオルは思わず助けに走ろうとするが、そこで麻衣に腕を掴まれる。

 

 

「さっきも言ったが、もう間に合わない」

 

「でも!」

 

「任せよう。我々には魔力がある」

 

 

既に魔法少女たちには伝えられている特殊ルール。

ゲーム開催中は、グリーフシードを使用せずとも0時を迎えると同時にそれまでに蓄積された穢れは全て払われるようになっていた。

しかしナイトフェイズも控えているため魔力は温存しておきたい。

それぞれ、生徒の止血にかなり魔力を割いてしまっている筈だ。

 

 

「なにより、覚えておけ」

 

「え……?」

 

「おそらく、ヤツが騎士の中で一番強い」

 

 

ワイニーが斬月のほうを向いた。

鞭を再生させて振るうが、わかっていたこととはいえ、斬月に触れる前にバラバラになる。

それだけではない。気づけばワイニーの腕が体から分離して地面に落ちていた。これでは鞭を再生させることができない。

 

ワイニーは恐怖した。

故に、猫の形をした使い魔が大量に生み出される。

それらは一斉に斬月へとびかかり、爪や牙で鎧ごと粉々にしようとするが――

 

 

【メロンエナジースカッシュ!】

 

 

オレンジ色の光があった。

回転切りから発生する斬撃がすべての使い魔を蒸発させる。

エネルギーはまだソニックアローのリムに纏わりついている。

斬月が弓を振るうと、斬撃が発射されてワイニーの体をバラバラに切断した。

 

ホイッスルの頭部が落ちる。

同時に、『檻』になっていたスカートの部分が開いた。

そこにいたのは魔女の本体である里美の面影を残した小動物だ。

涙目でブルブルと震えており、斬月を見るやいなや脱兎のごとく逃げ出した。

 

 

「少女ではない」

 

 

カオルは目を見開いた。

一瞬でワイニーが首と胴にわかれた。

次の瞬間、二つになった体にそれぞれ一本ずつ、光の矢が突き刺さる。

 

 

「薄汚い、魔女だ」

 

 

ワイニーは断末魔と共に爆発して砕け散った。

魔女結解が取り払われていき、元の学校に戻る。

 

 

「私は、貴様らを根絶やしにする」

 

 

それは紛れもない、宣戦布告。

その瞬間、麻衣の体がブルっと震えた。

恐怖ではない。きっと。

恐怖ならば頬を紅潮させるものか。

 

 

「面白い……!」

 

 

麻衣は、確かに笑みを浮かべていた。

自分でもすぐに言葉選びを間違えたと思う。

しかし麻衣はあの時あの瞬間、魔法少女になるための願いを思い出した。

強い者と戦いたい。

そうか、ようやく叶うのかと彼女は期待を抱く。

 

 

「がぁああ! うっざい! 今ここで死ねッッ!」

 

 

みらいは大剣を構えて走っていくが、斬月は矢を上に放った。

すると巨大なメロン型のエネルギーが出現し、それが割れて矢の雨が降り注ぐ。

みらいは舌打ちと共に立ち止まった。

矢の雨の向こうで斬月は踵を返し、消えていった。

 

 

 

沢芽パーク。

休憩所で光実はブドウジュースを飲み、沙々はソフトクリームを食べていた。

 

 

(他人の金で食うソフトクリームが一番うめぇ! おら! 見ろッ! 露骨な私の舌技を見よ!)

 

 

沙々がチョコソフトをベロリンベロリン舐めていると千里死亡のアナウンスが流れてくる。

 

 

(げッ、マジかよ。味方が逝っちまった。なんだよ使えねぇ! 千里……? あぁあのケツ女か)

 

 

とはいえ、これはチャンスでもある。

沙々は一気にコーンを頬張ると光実の背後にまわって背中を摩る。

 

 

「大丈夫? 光実くん」

 

「う、うん。ありがとう……」

 

「わたし、怖い、です」

 

「わかっていたこととはいえ、やっぱり誰かが戦ってるんだね」

 

「だいじょうぶ。わたしが傍にいますから。だからお願い」

 

「え? あ……」

 

 

沙々は光実を後ろからギュッと抱きしめた。

 

 

「傍にいてください」

 

「……うん」

 

「二人で一緒に震えれば、怖いけど、怖くないと思うから」

 

 

二人はしばらくそのまま動かなかった。

 

 

「!」

 

 

だがやがて、沙々が後ろを見る。

 

 

「あれ?」

 

「どうしたの、沙々さん」

 

「いえ、あのっ、ちょっと今、蝶々が視界の端に入った気がして」

 

 

光実も後ろを見るが、それらしきものは見当たらない。

 

 

「いないね」

 

「はい。青くて綺麗な蝶だったから、光実くんにも見てほしかったなぁ」

 

 

気のせいだったのか?

少し違和感を感じたが、特に気に留めることはなかった。

だが沙々は見間違えてはいない。蝶は確かに存在していたのだ。

 

 

「みんな頑張っててお姉さんとーっても嬉しいっ!(*'▽'*)」

 

 

観覧車の一番上のゴンドラの上に、その女は座っていた。

女は常に頂点にいて、座っていた。

水色と黒の派手な服を着て、髪にも水色のメッシュがあった。

 

 

【宇佐木里美・死亡】

【魔法少女陣営:残り9人】【騎士陣営:残り10人】

 

 

やがて、そのアナウンスが流れた時、女は唇の端を吊り上げた。

 

 

「えーん。魔法少女ちゃんが死んじゃいましたぁ。しくしくっ! しくしくっ!(´;ω;`)」

 

 

蝶がいる。

蝶はいない。

それは、胡蝶の夢なのか。

 

 

「フールズゲームはとーっても大変だけど肩の力を抜いて頑張ってねっ! 生きるも死ぬも、すべては最初から決まっていることなんだから」

 

 

スマートレディは足を組み変えると優しく微笑んだ。

 

参加者へ。

 

世界へ向けて。

 

 

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