仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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すいません。
この更新を最後に、しばらく間があくと思います。
なるべく早くしようとは思いますが、おそらく来月になるでしょう。



第四話 この世は無常

 

 

「仕留め損なった! お前らのせいだ!」

 

 

学校でみらいは憤っていた。

カオルと茉莉が騎士サイドを助けるような立ち回りを続けたせいで誰も殺せなかったばかりか千里を失うはめになったのだ。

 

 

「でもっ、だってそれが普通でしょ!? マツリは嫌だよみんなで傷つけあうなんて……!」

 

「まだそんなことを言うか!」

 

 

みらいは噛みつかんとの勢いだったが、それを麻衣が抑える。

 

 

「気持ちはわかるが……、果たして理想だけを追いかけていけるものだろうか?」

 

 

麻衣の視線を受けて海香が手を挙げた。

 

 

「一応、なんとかできないかは調べているわ。私の魔法は情報を集めることだから」

 

「結果は?」

 

「ハッキリ言うと全然ね。このゲームはきっとインキュベーターのみで行われているのではないと思っているけれど……」

 

 

可能性があったのはやはり『魔法少女X』の存在だ。

キュゥべえたちのやり方があまりにも今までとは違っている。

何者かが『願い』の力を使ってゲームのフィールドを作ったとなれば説明はつくだろう。

 

 

「しかしインキュベーターは宇宙の使者なんだろ? 貴重なエネルギー源が減るという願いを容認するものだろうか?」

 

「でも現にスカラーキャノンは魔法少女を殺していてよ? たとえば殺害した魔法少女たちから得られるだろうエネルギーの総計を、このゲームを通して得られるエネルギーが勝っていたとしたら……」

 

 

あるいは――、海香はそう続ける。

 

 

「たとえば魔法少女よりももっと大きな存在が絡んでいるだとか」

 

 

海香は昨日の夜に千里の解除魔法や、茉莉の把握魔法でXを探知しようとしたが無理だった。

そんな存在はいないか、あるいは魔法を超える力を持った何かがいるのか。

 

 

「気になったのはガーデンシリーズね。あれをインキュベーター用意したとは思えない」

 

「宇宙人みたいなもんだし! 宇宙船の一つや二つあってもおかしくなくない? そこでロボとか作れるっしょ!」

 

「そうだけれど、参加者をランダムに減らすかもしれない戦闘マシーンだなんて、やけに感情的な装置だと思わない? そもそもこの戦いに名付けられたゲームという部分が引っかかるわ」

 

「確かに。感情がない連中が仕掛けるものとは思えないな」

 

「ジュゥべえも感情があるように見えて、疑似的なもの、つまりは偽りだからな」

 

「そういえば、ジュゥべえといたサガラってのは?」

 

「そちらも調べたけど、サガラはユグドラシルの社員らしいわ。向こうはしばらくインキュベーターと繋がっていたらしいから」

 

 

海香はもう一つ、黄金の果実という存在が気になるという。

 

 

「キュゥべえならもっと直接的な方法で願いを叶えられるのではなくて?」

 

「だが、第三者の介入があったとして、どうやってそれを止める」

 

「それは……」

 

「思考停止と言われても仕方ないが、向こうが宣戦布告をしてきた以上、戦いは続く。協力ができればいいが、初めに手を出したのはコチラだ」

 

 

茉莉はビクッと肩を震わせた。

 

 

「平行線だ。キミたちも、いずれ答えは一つしかないと気付くさ」

 

 

そういって麻衣は踵を返した。

みらいも一瞥して同じように歩いていく。

そうすると屋上から亜里紗が降ってきた。着地を決めるやいなやズカズカと歩きだす。

 

 

「亜里紗……」

 

 

亜里紗は茉莉の前で停止する。

 

 

「ひっ!」

 

 

茉莉は肩を竦めた。

叩かれると思ったが、意外にも亜里紗が取った行動はハグであった。

つまり亜里紗は茉莉を抱きしめて、頭を撫でたのだ。

 

 

「ごめん。茉莉」

 

「……え?」

 

「血がのぼってた。止めてくれてサンキューね。カオルも」

 

「あ、ああ」

 

 

亜里紗は複雑な表情をしていた。

千里が死んで悲しいし、もちろん彼女を殺した初瀬に対する凄まじい怒りもあった。

しかしそれでも彼女はなんだか曖昧な表情で、それ以上のことを語ろうとはしなかった。

 

 

 

 

 

 

茉莉(アレ)、ウザくない?」

 

「そう怒るな。せっかくの食事が不味くなる。あ、ありがとうございます」

 

 

カウンター席。麻衣の前に味噌ラーメンセットが置かれた。

隣にいるみらいには、にんにくチャーシュー鬼盛セット・ギョーザ付きが置かれる。

みらいはさっそくチャーシューをおかずに白飯をガツガツと貪り始めた。

 

一方、二人から三席離れたところに、鈴音が座っていた。

他に客はいない。

麻衣に話があると呼び出された。深刻な表情だったのでついてきてみればラーメン屋である。

 

 

「みらい様のおごりだから、何でも食えよ! ボクと一緒にする?」

 

「じゃあそれに野菜抜き、ニンニク抜き、チャーシュー抜き、麺抜きで」

 

「それの何が美味いんだよ!」

 

 

鈴音はスープに浸かったメンマを口に運び始めた。

 

 

「確かに、何も食べなくても生きていけるが、魔力を消費するだろ」

 

「大した消費量じゃないわ。0時には回復もする。むしろ体が重くなって戦いの邪魔」

 

「それは、そうだが……」

 

 

麻衣は汗を浮かべていた。追加注文した豚キムチとからあげが届いたばかりである。

 

 

「からあげ……、たべるか?」

 

「マジ? 食べる食べる!」

 

 

麻衣がからあげを差し出すと、みらいは躊躇なく口に放り込んでいった。

 

 

「うめーッ!」

 

「それはよかった。どうだ、体調は?」

 

「え? べつに、なんともないけど」

 

「精神的な面というのか」

 

「ああ、そっち」

 

 

みらいは構わず麺をズルズル啜っていた。

 

 

「ムカツク奴は死んでもなんとも思わないよ。学校はそんなヤツばっかりだったし、そうじゃないのはちょい気持ち悪いけど……、よくわかんない」

 

 

チームレイドワイルドは悪くなかった。

でも本当の意味で、心の奥にあるものを刺激していたのだろうか?

 

 

「ボク、昔はエグいくらいの陰キャでさ。今の自分が見たら殺したくなるくらい、ボソボソ喋るゴミ女だったんだよね」

 

 

でも魔法少女になって、テディベアの博物館を造って、強くなって。

初瀬たちと出会って、ダンスをして……。

少しずつ自分の中にあるモヤモヤが発散されていったような気がしていた。

その筈なのに殺し合いってわかった時も、どこか心は冷えていた。

 

 

「悲しいはずなのに涙は出ない。狂ったように叫んでゲームを止めたいって思えない」

 

「………」

 

「そっちはどうなのさ?」

 

「楽ではない。当然だ」

 

「ふーん」

 

 

麻衣は目を丸くした。皿の上に餃子が置かれたのだ。

 

 

「あげる」

 

「ああ。ありがとう」

 

「嫌いじゃないよ。スカッとしてるし、ウジウジしてるヤツよりよっぽどいい」

 

 

そこでみらいは鈴音を睨んだ。

 

 

「でも、お前はいくらなんでも暗すぎ」

 

「………」

 

「無視ですか。くぁー、やだやだ。やな女」

 

「まあまあ。鈴音だったな? いくつか質問してもいいかな」

 

「………」

 

「キミは一応、参戦派(コッチ)の側とみてもいいんだよな?」

 

「今のところは」

 

「この戦いが始まる前からキミは魔法少女を……、だろ? それはなぜ」

 

「正しいことだから」

 

「一理ある。しかし楽なことではないし、キミが背負うものでもなかったはずだ。ある種の自己犠牲の果てに望むものがあったのか?」

 

「………」

 

「お前にとって、今、一番大切なものはなんだ?」

 

 

鈴音は少し間を置いた。

麻衣は答えが返ってこないものと思っていたが、やがて鈴音は口を開いた。

 

 

「一番大切だった人は、もう死んだわ」

 

「……そうか。参加者だったのか?」

 

「意外に、お喋りね。朱音麻衣」

 

「知りたいんだ。何がその人間の強さとなるのかを」

 

「それが貴女の理由?」

 

「友人がいた。リナ、京、美緒、双葉という。スカラーキャノンでみんな死んだがな」

 

 

麻衣は泣かなかった。泣けなかった。

 

 

「誰も守ることができなかったのは私が弱かったからだ。だったら今まで私が追求してきたものが間違っていたのか? これがなかなか……、認めたくない」

 

 

今、立っているところより、さらに上にいく強さの理由(ワケ)を知ることができたなら、何かが変わるかもしれない。

そしてその先に待っているのはきっと――

 

 

「言葉を信じるなら、確かなことがある」

 

「?」

 

「騎士を全員殺せばリナたちは甦る。そして鈴音、キミの大切な人もだ」

 

 

鈴音は無言だったが、確かに頷いた。

 

 

「新世界へ行こう。共に」

 

 

鈴音はその時、みらいが傍に立っていることに気づいた。

 

 

「チャーシュー、あげる」

 

 

ポチャンと、ラーメンスープの中に肉が一枚。

 

 

「……抜いたの、聞いてたでしょ」

 

「やれやれ、そこは受け取るのが粋、というものなんだがな」

 

 

麻衣は困ったように笑い、鈴音の代わりにみらいのチャーシューを食べた。

 

 

 

 

 

「わざわざ宣戦布告することもなかったのに」

 

ユグドラシルコーポレーション。凌馬の部屋に、貴虎たちはいた。

 

 

「魔法少女づてに沙々くんの耳に入ったら面倒だ」

 

「許せ。一つの矜持だ」

 

「ノブレスオブリージュとやらかい? エゴを通すのも凡人の証だよ、貴虎」

 

 

不意打ちで少女たちを殺していくやり方は性に合わないということなのだろう。

 

 

「だが悪くない。戦いが加速してくれるのはコチラとしても助かる。そもそも茉莉という少女が藤果くんを殺したとは思えないが……」

 

「あら、女は役者よ。プロフェッサー」

 

 

そこでスーツを着た女性、(みなと)耀子(ようこ)がニヤリと笑った。

彼女の意見を聞いて、凌馬はなるほどと肩を竦める。

 

 

「だそうだ。しかしいずれにせよ真犯人も魔法少女だろう。全滅すればそれで藤果くんの仇は取れるさ」

 

 

そうしていると騒がしい声が聞こえてきた。

部屋に入るシド。その後ろに紘汰が続き、さらにザック、初瀬、戒斗と続いた。

 

 

「そう怒んなよ。生徒の皆様には最高の治療ができる病院を紹介したし、一生遊んで暮らせる慰謝料もつけといたんだから」

 

「そういう問題じゃねぇだろ……ッ! 腕が斬り落とされたヤツまでいるんだぞ!」

 

「お礼を言われたぜ? 父親の店が倒産したばかりで、路頭に迷わずに済んだって」

 

「ッッ!」

 

「腕一本の値段だよ。そら、当然だわな」

 

 

紘汰は黙った。

しかし初瀬と戒斗の口は閉じない。

紘汰とは違う要求があったからだ。

 

 

「そういうのはな、俺じゃなくてプロフェッサー凌馬に頼めって」

 

 

シドが丸投げしたことで初瀬と戒斗の視線が凌馬に向けられる。

 

 

「アンタが戦極ドライバーを作ったんだってな」

 

「ああ。あの電子音とか、なかなかだろう?」

 

「ンなこたァ、どーでもいい! もっと強いロックシードをくれ!」

 

「同感だ。ビートライダーズの戦いがなくなった今、ロックシードをしぶる理由はないだろ」

 

「……フム、戦極ドライバーで使用するロックシードにももちろんランクはあるが、やはり一気に強化したいとなればコチラのほうがいい」

 

 

そういって凌馬は二つ、ゲネシスドライバーを置いた。

 

 

「ただしオススメはできない。私たちはあくまでもゲネシスの性能についてこれるだけの肉体を手に入れてから使用している。なんの訓練も受けていないキミたちでは――」

 

「うるせぇ! なんだっていい! つべこべ言わずに寄こしやがれ!!」

 

 

初瀬はゲネシスドライバーを奪うように手にすると、すぐに装着してみせた。

するとバチバチとエネルギーが迸り、絶叫しながら転げまわった。

やがてゲネシスドライバーが強制的に分離すると、糸が切れたように大人しくなる。

その中で何度もせき込み、やがては吐血にまで至る。

 

 

「あーあー、だから言ったのに」

 

「ハァ! ハァ! うるッ、せェ! なんのこれしき――ッ!」

 

 

再び初瀬はゲネシスドライバーに手を伸ばし、腰に装着したが、同じような流れの後にゲネシスドライバーは体からはじかれて床に落ちた。

初瀬は再び血を吐いて崩れ落ちる。

 

 

「お、おい! 大丈夫か初瀬!!」

 

「ちぐじょうッッ、なんなんだごれ……ッッ!!」

 

 

初瀬は再びゲネシスドライバーに手を伸ばすが、ザックが慌てて奪い取った。

 

 

「やめとけ! これ以上はマジでヤバいぞ!」

 

「黙れザック! 魔法少女どもをぶっ潰すには、ソイツが必要なんだよ……ッ!」

 

「だったら尚更、渡すわけには――」

 

 

と、思ったが、ザックの手からゲネシスドライバーがすっぽ抜けた。

戒斗が奪ったのだ。ザックが口を開く前に、戒斗はそれを腰へ持っていく。

迸るエネルギー。バチバチと音を立て、戒斗もわずかに表情を歪ませた。

しかし初瀬の時と違っていたのは、戒斗は立ったままだということ。

やがて彼は目をゆっくりと開き、ポカンとしている一同を睨む。

その腰には、未だにゲネシスドライバーがあった。

 

 

「これでいいのか?」

 

「ほお! こいつぁ、驚いた!」

 

「そんなまさか!」

 

 

シドや湊は、わかりやすい驚愕の表情を浮かべている。

貴虎も少し表情を変えた。戒斗のやったことがいかに珍しいかは、ゲネシスに適応するために訓練を受けた者が一番わかるということなのだろう。

最先端の機械を使ったこともある。

そうやって長期間、肉体を作って、ようやっと適応できたというのに戒斗は一瞬でそれをものにして見せたのだ。

これには凌馬も自然と拍手を送っていた。

 

 

「素晴らしいねぇまさかこんな逸材がいたとは。私たちの時よりは多少改良してリジェクションを抑えたとはいえ、いやはや……!」

 

「つまらん世辞などいらん。俺が欲しいのは強者たる証明! さっさとロックシードを貰おうか」

 

 

凌馬は頷くと、デスクからレモンのエナジーロックシードを取り出して戒斗へ投げた。

 

 

「使い方は湊くんから聞いてくれ」

 

「………」

 

「湊くん?」

 

「失礼しました。さあ来なさい駆紋戒斗。ドライバーとソニックアローの使い方を教えるわ」

 

「必要ない。もう見て覚えた」

 

「そう言わないで。さあ来て」

 

「おい!」

 

 

湊は戒斗の腕をつかむと、強引に引っ張って部屋を出ていく。

 

 

「本当に驚いたわ。まさかいきなりゲネシスドライバーに適応するなんて」

 

「……フン」

 

「普段から運動はしているの? どれくらい? 何分、何時間? 好きなものはある?」

 

「なんだと?」

 

「好きな言葉はある? どんなものを普段は見ているのかしら? 学校にはちゃんと行っていたの?」

 

「なんだ貴様は! なぜそんなことを答える必要がある!」

 

「興味があるのよ、貴方にね。好きな人間のタイプは? どんなメスを孕ませたいと思う?」

 

 

湊の目がギンギンに見開いている。

その後も質問攻めは続くのだが、場面は凌馬たちのところに戻る。

 

 

「さて。予想外の流れにはなったが、正直、初瀬くんのほうが正しい状況ともいえる」

 

 

そういうと凌馬は別のアイテムを取り出した。

 

 

「それは……?」

 

「ゲネシスコア。戦極ドライバーでもエナジーロックシードの力を使うことができるコネクタースロットだよ。性能は落ちてしまうが代わりにリジェクションがない。一応人数分は用意してあるが……、初瀬くんは無理そうだね」

 

 

凌馬が連絡を入れると、すぐに社員が担架で彼を医務室に運んでいった。

凌馬は、紘汰たちにレモンのエナジーロックシードを渡して、使い方や効果の説明を行っているが、ちょうどそこで警報が鳴った。

 

 

「沢芽に散らばらせている社員にガーデンシリーズ見かけたら至急連絡を入れるようにと伝えてある。これがその合図だ」

 

「つまり――」

 

「そう、ナイトフェイズの開幕」

 

 

 

 

 

 

「ただいまぁ」

 

かずみは弱弱しく呟いた。

夕食を軽くとってからチームガイムのアジトにいって荷物を抱えて帰ってきたのだ。

隣にはチームメイトの佳奈美もおり、その後ろにはカオルと海香の姿もあった。

 

 

bon retour(おかえりなさい)、かずみ! みんなも!」

 

 

凰蓮の力強い返事が聞こえてきた。どうやらケーキを焼いていたらしく、甘い香りが一同を出迎える。

 

 

「いろいろあったでしょう? ほら、お食べなさい!」

 

「いいの!?」

 

「あたりまえよ。子供なんてね、ちょっと甘いのを口に入れたらそれで調子が良くなるんだから」

 

「手を洗ってくるね!」

 

 

そう言ってかずみは洗面所のほうへ駆け出していくが、やはりカオルたちの表情は重たい。

 

 

「いいのか? 凰蓮さん」

 

「………」

 

 

凰蓮はため息をついた。

 

 

「いいも何も。貴女たちはこの家に住んでいるのと同時に私の客でもあるわ。佳奈美だって家には住んでいないけど、何度もワテクシが作ったお菓子を買ってくれたわよね。パティシエがお客を傷つけるなんて言語道断ではなくて?」

 

「それは……」

 

「そうね、ありがとう凰蓮さん。カオル、佳奈美、ありがたく頂きましょう」

 

「うんっ! そうだね、スイートポテトはあるのかなぁ?」

 

 

一瞬、和やかな雰囲気にはなったが、凰蓮はすぐに目を光らせる。

 

 

「貴女もどうかしら! それとも、ケーキはお嫌い?」

 

「………」

 

 

天乃鈴音は無言で歩き、変身して剣を構える。

 

 

「よせ! 鈴音!」

 

 

カオルはすぐに鈴音の前に立ち、両手を広げるが――

 

 

「戦う気がないのならそこで見ていて」

 

 

陽炎。

幻のように消え失せ、カオルの背後で実体化する。

 

 

「カオル! ここはお願い! 私は念のために!」

 

 

海香も変身して、すぐにかずみを守りに走る。

同時に鈴音も走った。カオルも追いかけるが、おそらく間に合わない。

 

 

「とんだ悪ガキがいたものだわ。教育してさしあげましょうか」『ドリアン!』

 

 

だが、動いていたのは凰蓮も同じだった。

ロックシードを起動すると、すでに装着していた戦極ドライバーへセットする。

 

 

「変身」『<<<♪>>>』『ドリアンアームズ!』『ミスタァー・デンジャラース!』

 

 

騎士(アーマードライダー)、ブラーボ。

ドリノコと呼ばれる双剣を取り出すと、一礼を行う。

 

 

「さあ、始めますわよ! 破壊と暴力のパジェントを!!」

 

 

店を飛び出したブラーボ。同時に鈴音は加速した。

スピードに乗せて突きを放つが、そこで聞こえるヒラリという声。

 

 

「!」

 

 

避けられた。鈴音はもう一度、ブラーボの心臓を狙って剣を突き出す。

 

 

「ヒラッ!」

 

 

舌打ちとともにもう一度。

 

 

「ヒラッ! ヒラヒラ! ヒラーリッ!」

 

 

ブラーボはわずかなステップと最小限の身のこなしで鈴音の剣を回避していく。

それだけではなく、その中に交えたカウンター。

気づけば体の傷は鈴音のほうが上だった。

 

 

「陽炎」

 

 

鈴音が消える。

ブラーボは手の甲で背後を叩く。

すると鈴音がうめき声と共に後退していった。

 

 

「………」

 

 

鈴音は表情を歪めた。

未来予知の類ではない。鈴音が消えてから現れ、剣を振るうまでの僅かな時間でブラーボは鈴音にカウンターを仕掛けたのだ。

 

 

「炎舞」

 

 

鈴音が呟くと、周囲に炎の剣が浮かび上がり、それらが一斉にブラーボに向かっていく。

 

 

「凰蓮さん!」

 

 

カオルが叫んだ。

炎の剣が次々にブラーボへ刺さっていくのだ。

しかしよく見ればどうだ。刺さったのは剣先だけであって、アーマーを貫通するには至っていない。

 

 

「あら、お勉強が足りないわね」『<<<♪>>>』『ドリアンスカッシュ!』

 

 

ブラーボが剣を振るうと、衝撃波で炎の剣が消し飛ぶ。

 

 

「刃物を持つにはまだまだ子供すぎるわ!」

 

 

ブラーボはドリノコを投げた。

それが鈴音の近くに落ちると、大爆発。

予想外の攻撃。さらには凄まじい衝撃に、かずみは剣を盾にしたまま固まった。

爆煙で何も見えない。そうしていると聞こえるギターの音。

 

 

『<<<♪>>>』『ドリアンスパーキング!!!』

 

 

ブラーボの鎧が閉じていき、巨大なドリアンを被るところまで戻る。

その状態でドリアンが頭から分離して、猛スピードで飛んでいった。

巨大なドリアンは高速回転をしながら鈴音に直撃。足が地面を離れ、鈴音は思い切り後ろへ吹っ飛んでいく。

 

 

「ぐッ!」

 

 

鎧はブラーボへ戻り、再び展開。

一方で鈴音も停止するが、背中を地面にぶつけてだ。

苦悶の表情で起き上がると、カオルたちを睨む。

 

 

「何をしているの。手伝って」

 

「馬鹿を言え! 剣を下ろせ! それが無理なら撤退しろ!」

 

「馬鹿の一つ覚えね。貴女はどうなの、穂香佳奈美」

 

「えっ、あ……」

 

「時間は過ぎていくわ」

 

 

鈴音は佳奈美を睨んだ。

佳奈美はゾッとして、反射的に変身する。

 

 

「モタモタしてると、死ぬわよ」

 

「そ、それはッ」

 

 

佳奈美は思わず短剣を持ってブラーボを見てしまった。

すぐにカオルと海香の声が飛んでくる。

 

 

「「佳奈美!」」

 

「そ、そうだよね! わたしってば、なんてこと……!」

 

 

佳奈美はぎこちない笑みを浮かべて変身を解除した。

 

 

「惑わされないで! 戦うことは間違いではないわ!」

 

「あッ、あっ、あ……!」

 

「今日の脱落者アナウンスを知らないわけじゃないでしょ!」

 

 

鈴音に怒鳴られ、佳奈美は変身して短剣を構える。

 

 

「よせ佳奈美!」

 

「う、うん!」

 

「佳奈美、騎士は殺す気なのよ」

 

「うん……」

 

「佳奈美! 戦いは連鎖する! 止めるには武器を下ろさないと!」

 

「う……」

 

「佳奈美!」

 

「わ、わかんないよぅ!」

 

 

佳奈美は武器を落として頭を抱える。

その時、風が吹いた。

 

 

「見極めろ。正義はコチラにある」

 

「うぐぉぉあ!」

 

 

ブラーボが火花を散らしながら倒れる。

そして鈴音の前に麻衣が着地した。

 

 

「食後の運動にはちょうどいい」

 

 

麻衣が走った。

刀を振るいながら前進。ブラーボは次々に襲い掛かる斬撃を防御することしかできない。

そうしていると麻衣が射程に入ったので、ブラーボは両手に持ったドリノコを真横に振るって胴体を狙う。

しかし麻衣は膝を地面につけて滑りながら、通り抜きざまにブラーボの胴体を斬る。

 

そこで地面が爆発した。

ブラーボがドリノコを地面に叩きつけたのだ。

敷かれていたレンガがはじけ、白煙が視界を隠す。衝撃で麻衣の体が浮き上がり、彼女は一回転した後に着地した。

 

ヌッと、腕が伸びてくる。

麻衣はそれをかわそうとするが、手首を掴まれた。

次の瞬間、麻衣の視界が反転する。

 

 

「なにッ!」

 

「悪く思わないで――」

 

 

ブラーボが麻衣を倒して腕を拘束していた。「ね」、で骨が折られる。

そう理解したが、それよりも早く聞こえた鈴音の声。

 

 

「蛍」

 

 

炎弾がブラーボに直撃。

さらにその炎の球体が消えぬ内に鈴音は距離詰めて炎弾ごとブラーボを斬った。

剣を打ち付けたことで爆発が起き、ブラーボが横に転がっていく。

 

 

「気をつけろ鈴音。あのパティシエ、どうやら素人ではないようだ」

 

 

麻衣は立ち上がる。

一瞬の組合いの中でブラーボの『正体』を察したようだった。

 

 

「関係ないわ」

 

 

鈴音が剣を構える。

 

 

「所詮、人間よ」

 

 

炎の斬撃が右のドリノコを弾いた。

 

 

「うッ!」

 

 

続いて飛んできた麻衣の斬撃が左のドリノコを弾いた。

 

 

「やだ!」

 

 

最後に飛んできたクロスの斬撃をブラーボは体で受け止める。

 

 

「ノォオオオオ!」

 

 

直撃したが、ブラーボは倒れない。

とはいえダメージはしっかりと受けたようで呼吸がやや荒くなっていた。

 

 

『ナイトフェイズです』

 

 

その時、無機質な声が耳を貫いた。

上空にガーデン・スコーピオンが浮かんでいるではないか。

 

 

「集合すれば、それだけ危険性が上がる」

 

 

麻衣が小さく呟いた。

鈴音たちはそれがわかっていた。

わかっていて、ここに来たのだ。

 

 

「陽炎」

 

 

鈴音が麻衣と共に消えた。

 

 

「アイツら……!」

 

 

カオルは真っ青になって走り出す。

目が語っていたような気がする。

同陣営ならば新世界で蘇生できるから、なんてアイコンタクトを。

 

 

「めちゃくちゃだって……! くそッッ! こっちだ!」

 

「カオル!」

 

 

海香が止めるように叫ぶが、カオルは止まらない。

大声を出して、大手を振ってスコーピオンに己をアピールする。

 

 

『参加者を一名、殺害します』

 

 

スーパーロボットがモノアイを光らせた。

足裏から火を噴射してカオルを追跡する。

 

 

「海香! わたしのことはいいから!」

 

「ッ、でも……!」

 

「わたしは参加者じゃないから大丈夫! だからお願い!」

 

「わかった。わかったわ。佳奈美もほら! 助けるためなら走れるでしょ!」

 

「う、うんっ! 了解!」

 

 

佳奈美の固有魔法は高速移動だ。

踏み込み、地面を蹴ると一瞬でカオルたちに追いついた。

短剣を振るうと斬撃が発射されてスコーピオンを撃つ。

しかしやはりというべきか、その体にはなんの傷もついていないように思えた。

 

 

『殺害します』

 

 

胸部が開き、小型ミサイルが大量に発射されていく。

 

 

「逃げろ佳奈美!」

 

 

佳奈美は頷く。素早く距離を取るが、カオルはそうもいかない。

しかし彼女はそれでよかった。佳奈美が狙われるくらいならばと腕をクロスさせる。

固有魔法である硬質化が発動されて鋼となった彼女に降り注いでいく大量のミサイル。

次々と爆発が起き、さらに赤い直線状のビームや、緑の螺旋状のビームが襲い掛かっていく。

圧倒的防御力を超えて襲い掛かってくる衝撃、次第にカオルの体から血が飛び散っていった。

 

 

「うッ!」

 

 

遅れて到着した海香は思わず足を止めてしまう。

超兵器を見て、腹に風穴を開けて死んだ兄を思い出した。

 

 

「海香ちゃん!」

 

「!!」

 

 

佳奈美に言われて、ようやっと我に返る。

すぐにシールドをカオルの前に張るが、時間稼ぎにすらならぬほど一瞬で破壊されてしまった。

もちろん手を抜いてなどはいない。海香はすぐにシールドを張りなおすが、すかさず砕け散る音が聞こえてきた。

もう一度、海香は腕を伸ばした。

その腕がひしゃげる。本来は曲がることのない方向に何度も曲がり、骨は皮膚を突き破った。

 

 

「うぁぁッ!」

 

 

すぐにソウルジェムに命令を送り痛覚を遮断する。

腕が折れたのは衝撃波のせいだ。

海香は目を見開いた。光球がすぐそこにある。

 

 

「おどきなさい!」

 

 

衝撃。みればそこにブラーボ。

 

 

「凰蓮さん!!」

 

 

かろうじて回復魔法をかけたが、エネルギー弾を真正面から受けたブラーボは面白いように吹き飛び、そのまま変身が解除されて気絶した。

さらにスコーピオンは尾を振るう。奇襲を仕掛けてきた佳奈美を同じように吹き飛ばし、そのまま倒れているカオルたちを見てしっぽの先端を光らせた。

 

 

『ソリッドスパークのチャージを開始します。チャージ完了後に放たれる光線が参加者の一人を殺害します。尚、その際に他の参加者が巻き込まれた場合は複数人が死亡します。翌日のナイトフェイズも予定通りの時刻に行われ、参加者の一人を殺害します』

 

 

集中していく光。

 

 

『………』

 

 

ガン! と、音がした。

わずかに動いた頭部。スコーピオンが見たのは切り分けられたオレンジ。

ではなく、大橙丸。

 

 

「ふざけんな……! 何が予定通りに殺害しますだ。人の命をなんだと思ってる!!」

 

 

鎧武は前のめりに走っていた。

途中でこけそうになるほど無我夢中で走った。

勢いあまって地面に手をついた。数々の光線が身を撃ったが、鎧武は止まらなかった。

 

 

『命を奪う。それがルールです』

 

 

あの耳障りな音声を止めるため、鎧武はひた走る。

 

 

「うがああぁあアアッ!」

 

 

だがもう少しで届くというところで尾が腰を叩いた。

吹き飛び、地面を転がる中で次々と着弾していく小型ミサイル。

あまりの衝撃でロックシードがベルトから外れて変身が解除されてしまい、血だらけの紘汰がなおも転がっていった。

 

しかしトドメを刺そうとしたところでスコーピオンは上を見た。

巨大なサクランボ、メロン、モモが浮遊している。

直後そこから光の矢が雨のように降り注ぎ、スコーピオンの全身に浴びせられていく。

 

 

「魔法少女の皆様! ここはいっちょ、協力といきましょうや!」

 

 

シグルド、斬月、マリカが肩を並べて歩いていた。

ゲネシスライダーたち足止めをしている間に『彼ら』が動いた。

抜き取るバックル横のフェイスプレート、かわりに差し込んだゲネシスコア。

なによりも、装着するゲネシスドライバー。

 

 

「何がルールだ! 何がゲームだ!」

 

 

紘汰は額の血を拭いながら立ち上がった。

 

 

「全部名ばかりのふざけた殺人じゃねぇか! そんなもんがルールだっていうなら!!」『オレンジ!』【レモンエナジー】『ロック・オン!』【ロック・オン】

 

 

ロックシードを順にセットしていき、カッティングブレードを倒す。

同じくして後ろにいた戒斗も、ザックもそれに続いた。

 

 

「俺がブッ壊してやる! 変身!!」【ミックス!】

 

 

上空に浮かぶ二つの鎧が交わり、一つになる。

それが鎧武に装着され、展開していくなかで風が吹いた。

 

 

『オレンジアームズ! 花道・オン・ステージ!』

 

 

風が吹けば、花びらが舞う。

桜の筈だが、今はまだその季節ではなかった筈だ。

だったら、どうして?

紘汰は頭の中に一瞬だけ浮かんだ女性に問いかけた。"彼女"は少し悲しげに笑って、その花の名前を教えてくれた。

 

 

『それは、時の華』

 

 

どんな時代であっても、どんな時空であっても、変わらずに咲いて、変わらずに散る。

 

 

【ジンバーッ! レモン!】『【ハハーッ!』】

 

 

不変の答え、なのだと。

 

 

「変身」【ソーォダァ……】【ファイトpower! ファイトpower! ファイファイファイファイファファファファファイッ!!】

 

「変身」【ソーォダァ……】【ファイトpower! ファイトpower! ファイファイファイファイファファファファファイッ!!】

 

「変身ッッ!」【ジンバーッ! レモン!】『【ハハーッ!』】

 

 

戒斗と凌馬、そしてザックも同じロックシードで変身する。

鎧武とナックルが変身したのは陣羽織を模したアーマーの中にレモンの輪切りがいくつも模様のようにして並んでいる強化形態、ジンバーレモン。

 

戒斗はゲネシスドライバーを使ってバロン・レモンエナジーアームズへ。

そして凌馬もまた、ゲネシスドライバーでデューク・レモンエナジーアームズへと変身を遂げた。

 

騎士たちの変身を見て、シグルドたちが道を開ける。

一斉に構えたソニックアロー。

そこから黄色に光る矢が連射されていき、スコーピオンを目指した。

 

 

『参加者の攻撃は私には通用しませんよ』

 

 

スコーピオンがシールドを張った次の瞬間、全ての矢がシールドを突き破ってスコーピオンに突き刺さった。

衝撃でスコーピオンが倒れる。

すぐにブーストで体勢を整えて立ち上がるが――

 

 

「しゃあオラァア!」

 

 

鎧武がソニックアローを縦に振って切りかかる。

スコーピオンはそれを受け止め、続いて突き出されたリムの一撃を受けて後退していく。

追撃の矢が突き刺さり、火花が散った。

左右に切り抜けるバロンとナックル。そして追撃の矢で動きが止まる。

 

 

『攻撃が――、通用。攻撃が、ガガガガガ……エラーを検知しました。エラーを検知しました』

 

 

衝撃波が発生。ナックルはそれで吹き飛ぶが、その中をバロンは走った。

逆手に持ったソニックアローを存分に振るい、黄色い斬撃波が次々に装甲を削り散らしていく。

 

 

「この力、悪くない! 手に馴染む!」【レモンエナジースカッシュ!】

 

 

バロンが高速回転を行いながらソニックアローを振るう。

レモンの輪切りのようなエフェクトが発生し、刃を刻むたびに飛び散った大量の果汁はまるで血液のように思えた。

そしてバロンは攻撃をやめて地面を転がる。

後ろにいたのはデュークだ。弦を引くと集中していく光、そして手を離せば黄色いレーザーがソニックアローから発射されてスコーピオンに直撃する。

 

 

『アーマー、および内部システムに損傷を多数確認。重大なエラーを検知』

 

「エラーではないよ。現実だ」

 

 

胸部アーマーが展開し、ミサイルが縦横無尽に放たれる。

鎧武は後ろに、ナックルは右に、バロンは左に、デュークは不動のままソニックアローをスコーピオンに向けた。

放たれる矢がスコーピオンを撃つ。

ミサイルの着弾。そしてスコーピオンの体から爆発が起き、爆音と衝撃が拡散する。

 

 

『おいおいおい! どうなってやがる!』

 

 

ジュゥべえが現れ、しきりにスコーピオンを確認していた。

しかしやはりというべきなのか、どう考えてもスコーピオンは『損傷』している。

 

 

『魔法少女の攻撃も騎士の攻撃も効かねぇ無敵に設定してる筈なのに!』

 

「すまない」

 

『あ?』

 

 

ジュゥべえはデュークを見る。

 

 

「天才なんだ」

 

『それは、どういうこった……?』

 

「前回の襲撃時にデータを取らせてもらっていてね。レモンエナジーの果汁状エネルギーエフェクトに、対ガーデン用の機能を追加したんだ」

 

 

クェイサーアシッドシステム。

レモンエナジーは身体能力を上昇させるだけでなく、ガーデンシリーズの装甲を融解させることに特化したエネルギーが纏わりついているのだ。

つまり、溶ける。レモンエナジーの攻撃なら。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 

ナックルの右ストレートがスコーピオンの頭部に叩きこまれた。

吹っ飛び、倒れる中で音声が切れた。このイレギュラーに対処するプログラムは存在していなかったらしい。

しかしあくまでもガーデンは処刑人。その役割を放棄することはない。尾の先端に光を集め、その最中に先端部分を尾から引きちぎった。

まだチャージが甘い状態だが、先端を参加者たちに向けて大技を行使しようとする。

 

 

『さささ殺ガいいいイいシまス』

 

「いや! 誰も死なない!」『ソイヤ!』

 

 

鎧武の声がしたから鎧武のほうを見た。

横に回転しながら飛び上がっていた鎧武はソニックアローからエネルギーを発射。

オレンジとレモンの輪切り状エネルギーがいくつも生まれて、スコーピオンとの距離を繋いだ。

 

 

『ソリッドスパーク、発射』

 

 

スコーピオンは鎧武を狙ってレーザーを発射した。

同じくして鎧武もまた、右足を突き出してオレンジとレモンの道を突き進む。

 

足裏に当たる光線の感覚。

そこで鎧武は持てる力の全てを右足に込めた。

散布されていく果汁がレーザーさえも融解させていき、そして――

 

 

「セイッハーッッ!」【ジンバーレモンスカッシュ!】

 

 

無頼キック。

鎧武の飛び蹴りがスコーピオンの胸に直撃するやいなや吹き飛び、地面に倒したまま後方へ滑らせていく。

 

 

『重大なエラーをかかかかかか……、撤退します』

 

 

スコーピオンは立ち上がると同時に、足裏から火を噴いて飛び上がった。

どうやら撤退するらしい。

鎧武たちは素早くソニックアローを構えるが、そこでバロンだけは下を見る。

 

 

「牧! いつまで無様な姿を晒している!」

 

「!」

 

 

カオルはハッとして、直後、笑った。

 

 

「冗談……! 冗談言え!」

 

 

カオルは跳ね起き、手足をブラブラさせてストレッチをはじめた。

 

 

「ほら! さっさと寄こせよ戒斗! パスだ!!」

 

「いいだろう!」【ロック・オン!】

 

 

ソニックアローにレモンエナジーロックシードを装填。

その状態で弦を引くと、かつてないほどのエネルギーが集中していく。

やがてバロンは指を離した。

すると巨大なレモンがまるごと一個、カオルに向けて発射される。

 

 

「失望させるなよ!」【レモンエナジー!】

 

「誰に言ってる! 口の利き方に気をつけろよ!」

 

 

カオルはレモンを蹴り上げた。

そして自らもひねりを加えて飛び上がる。

 

 

「アタシは、強者だ! パラ・ディ・キャノーネ!」

 

 

オーバーヘッド。硬質化した脚でレモンをさらに蹴り飛ばした。

既に放たれていたソニックアローの矢を置き去りにして、レモンは猛スピードで飛んでいく。

 

スコーピオンが振り返った。

シールドを張ったようだが、レモンはそれを一瞬で蒸発させると、そのままスコーピオンの体に直撃する。

 

 

『エラー、エラー、エラー、エエエエエエエ――』

 

 

手足が、取れた。

さらに肉体がはじけ、大爆発が起こる。

最後に頭部が吹き飛び、それもまた内側からの爆発で粉々に砕け散った。

 

 

「素晴らしい」

 

 

デュークは唸る。

 

 

「私の発明は、もはや宇宙を凌駕した」

 

「とにかく、これでナイトフェイズは――」

 

『なーに勘違いしてやがる』

 

 

一同はジュゥべえを見た。

そして、空から降ってきた何者かを見る。

 

 

「まさか……!」

 

『ああ、そのまさかだ』

 

 

それが、喋った。

次の瞬間、参加者たちは吹き飛び、地面を転がっていく。

 

 

「うぐあぁあ……ッ!」

 

 

鎧武は体の痺れを感じた。

見れば全身が帯電している。攻撃の正体は電撃を纏った『斬撃』。

 

 

『ガーデンシリーズ。文字通り、一体じゃないんだな、これが』

 

 

"GA-04 アンタレス"。より人のシルエットに近いロボットがそこにいた。

さらにスーツにネクタイと服を着て、人間の真似をしている。

とはいえスコーピオンのように尾があり、その先には鞘が繋がっていた。

アンタレスの手には日本刀が握られており、名は、雷切(らいきり)という。

 

 

『心配するな、今日はちょっとした挨拶だ。スコーピオンを殺したことに免じて見逃してやる』

 

『は? おい、なんだそりゃ! 勝手に決めんな! 殺せよ!』

 

『そいつは無理な話だ。俺がよくても、この雷切が納得しない』

 

『んだそりゃあ!? ロッカーみてぇなこと言いやがって! ナイトフェイズ執行がお前らの役目だろ!』

 

『たしかに。だが、俺の中にあるものが乗ってくれないのさ』

 

『………』

 

 

ジュゥべえは何も言わない。たしかにそういう実験をしている。

AIのモデルにした人間がいた。

別世界だからココで詳しく語ることはないと思うが、とにかくその人間のポリシーに反する行いを機械人形は実行しない。

 

 

『今日の戦いは終わりだ。これ以上、暴れたいヤツがいるってんなら、いつでも俺が愛してやる』

 

 

回りくどいが、警告のメッセージであることを誰もが理解した。

 

 

『それでいい。楽しみにしてるぜ。俺が出る日を』

 

 

そう言ってアンタレスは飛んで行った。

ジュゥべえも無言のまま消えていく。

参加者たちも、また。

 

 

 

 

 

「――って、ことがあったんだよ」

 

「そうなんだ。大変だったね……」

 

 

茉莉は頬をピンク色に染めていた。

目の前には服を脱いだザックが座っている。

 

 

「はい。できたよ」

 

「おお、サンキュー!」

 

 

ザックは体の調子を確かめている。

 

 

「動かしやすいでしょ? ニチアサ巻きっていうんだよ」

 

「へぇ、たしかに! 体が楽だ!」

 

「死にそうになったら水に飛び込んでみるのもありなんだって! マツリ知らなかった!」

 

「……あんまりネットの情報を鵜呑みにしちゃダメだぜ」

 

「そうなのっ!?」

 

「でも、ありがとな本当に。オレたちは治りが遅いから……、困ったもんだぜ」

 

「また怪我したらいつでも言ってね。茉莉がオーキューショチ、するから!」

 

 

茉莉の家は大きい。茉莉の部屋も広い。

テレビも大きい。茉莉はテレビが好きだった。だから父親にお願いして大きくしてもらったのだ。

画面の中では今日の学校で行われたことが報道されている。

 

とはいえ、ネットやSNSを見ても魔法少女たちの映像はない。

ユグドラシルの力もあるが、ほとんどインキュベーターによるものだ。

みんなスマホを向けていたが、なぜだか録画のボタンを押すのを『忘』れていた。

怪我をしたものも、なんで自分が傷を負ったのかを『忘』れた。

不都合なことが忘却されていく。ありがたいと思う反面、それだけの存在がゲームの裏にいるということだ。

 

 

「みんな」

 

 

ザックの背中に温かな感触があった。

茉莉がザックの背にもたれかかり、背中合わせで座っている。

 

 

「戦い、やめてくれないね」

 

「困ったもんだよなぁ」

 

「でもね、マツリはやっぱり……、諦めたくない」

 

「ああ、オレもだ」

 

「うん。よかった」

 

 

茉莉は自分の掌を見る。

 

 

「マツリね、ほんの少しだけ後悔しちゃったんだ。こんなことになるならずっと何も見えないままで良かったのにって……」

 

 

そして、茉莉は拳を握りしめた。

 

 

「でもね、そんな時に頭を過るの。今まで見てきたたくさんの素敵なもの」

 

「へぇ、たとえばどんな?」

 

「いろいろあるよ。でもね、やっぱり笑顔かな」

 

 

思い出すだけで釣られて笑顔になる。

 

 

「マツリ、またみんなで踊りたい」

 

 

みんな、心の底から悔しがって、怒って、笑って、くすぶって、焦って、浸って。

そういうものがビートライダーズの時にはたくさんあった。

 

 

「ザックは覚えてる? ゴールデンウィークにさ、Bパートの振り付けができなくて付き合ってくれたでしょ?」

 

「ああ、あの時の茉莉はとっても頑張ってた。メラメラ燃えてたぜ」

 

「でしょー? それでさ、踊れるようになってさ。あのとき見た夕焼けは忘れられないよ。沈んでいくお日様、その光を受けて輝く雲、まだ青いままの東の空。たくさんの色が混じっててとっても綺麗だったなぁ」

 

「踊れたことの嬉しさとか、清々しさも相まってたんだろうな」

 

「かもね。だから、そう。今はみんな悲しい顔ばっかりだから……」

 

「………」

 

「戒斗は、マツリたちのこと、嫌いになっちゃったのかな?」

 

「いや、きっとアイツにはアイツなりの何かがあるんだろ」

 

 

でなければ、先ほどだって、カオルを鼓舞するようなことを言うものか。

 

 

「中学の時、クラスメイトが自殺したんだ」

 

「えっ?」

 

「元々、あんまり学校には来てなくて。来てもすぐに早退したり……。だからクラスの女子とかは泣いてるやつもいたけど、オレにはピンとこなかった。悲しいとか、ショックとか、多少はあったかもしれないけど、なにせ交流がなかったんでな」

 

 

なんで死んだのか理由もわからなかった。

噂では家庭環境が悪かったとか、陰でいじめられてたとか、他校の生徒に脅迫されてたとか、将来の不安があったとか……。

とにかくいろいろ噂された。でもそういうものだとザックも思っていた。みんないろいろある。

テレビでだって、誰かが自殺したとかはそれほど珍しい報道でもない。

 

だから誰もが『何となく』わかっていた。

いろいろあるから、いろいろが原因で死んだのだ。

それ以上の感情はない。

哀れみとか、同情とか……、それくらい。

 

 

「でも戒斗だけは違ってた。アイツだけは怒ってた」

 

「怒る?」

 

「ああ。怒りだ。アイツは何かにブチ切れてた」

 

 

ザックは戒斗の過去を知っていた。

戒斗の父は腕のいい職人として沢芽で町工場を営んでいたが、都市開発の影響で工場を手放した。

喪失感から酒に溺れ、家族に暴力を振るい、あげくには大金を騙し取られて自殺した。

きっと戒斗はそれが原因で怒っていたのだと思っていた。

重ねたのか、思い出したのかはわからないが、そういうことで怒っているのだとばかり。

でも、もしかしたら、そんな単純な話でもなかったのかもしれない。

 

 

「戒斗は常に怒ってた。アイツの怒りを真に理解できてなかったのかもな……」

 

「仕方ないよ。戒斗、あんまり自分のこと教えてくれなかったし」

 

「戦ってたんだ。きっとアイツは、自分の中にある怒りと。それはきっと今もそうだ」

 

 

きっと今も見えない何かと戦って、見えない何かに勝とうとしている。

それはもしかしたらとても単純なものかもしれないし、千年を経てもわからない複雑なものなのかもしれない。

それは最後の最後、最期までわからないんだ。

 

 

「……悪い。暗い話だったな!」

 

 

そういうとザックは茉莉の脇腹を突っついて、くすぐり始める。

 

 

「えへへへへ、くすぐったいよ」

 

「いいんだ。茉莉、お前に悲しい顔は似合わねぇ!」

 

「……ザックってば意外とキザだよね」

 

「んん? なんか言ったか?」

 

「ううん。なんにも! それより、一つお願いがあるんだけどいいかな?」

 

「おお! なんでも言ってみろ!」

 

「パパは出張で、お手伝いさんも明日はお休みだから今日はマツリ一人なの。マツリは夜も好きだよ。いろいろ綺麗だし、明かる時とは景色も全然変わるから。でもやっぱり、どうしても不安にはなっちゃうから……」

 

 

茉莉は俯いて、呟いた。

 

 

「今日は、一緒にいてほしいな……」

 

「なんだよそんなことか。いいぜ、オレでよければいくらでも一緒にいてやるよ」

 

「本当!?」(やったぁ!)

 

 

茉莉は跳ねると、そのまま天蓋つきのダブルベッドに倒れこむ。

 

 

「じゃあ今日はパジャマパーティしよ! ザックはこっちね」

 

 

そう言って茉莉は左側をポンポンと叩いた。

 

 

「え、オレも一緒に寝るのか……?」

 

「そうだよ」

 

「………」

 

 

ザックは黙り、何かを考えこむ。

 

 

「あれ、どうしたの? マツリ変なこと言っちゃった……?」

 

「いやッ! ややや! やろう! やってやろうじゃねぇかパーティの一つや二つ!」

 

 

一応、自戒のため、ザックは己の手で己の頬をはたく。

 

 

「ベットの上でお菓子も食べていいんだよ!」

 

「なにッ! 本当か!? 夜にお菓子なんてそんな罪深いこと!」

 

「ふっふっふー、これでザックもワルの仲間入りだね!」

 

 

そしてお喋りして、たくさんお喋りをして、飽きるくらいまで、それで、そして――

 

 

「そして、そしたら……、そのあとは一緒にお星さま、見てくれる?」

 

「ああ」

 

「ありがとう。そして、眠たくなったら寝るの」

 

「いいな。たまにはそういうのも」

 

 

茉莉は微笑み、頷いた。

その夜、二人は肩を並べて、ぐこぐこ、いびきをかいて眠った。

 

 

 





失礼な話ではありますが
正直、最初鎧武ライダーのデザイン見たときは
仮面ライダー終わったわ! 東映もどうかしちまった! バナナつけてはるわ、肩に! はいはい、わかったわかったもう終わり終わり!
今までありがとな仮面ライダー!
とか、思っちゃったけど、いうて動けばかっこいいし。
ジンバーレモンとソニックアローかっこよすぎて、この時期からはもう普通に少年の目で見てましたね。

あとちょっと話は変わりますが、今ドンブラザーズやってますけど、めちゃくちゃ面白いんでね、まだ見てない人はアマプラとかでも見れるんでぜひ見てみてください。
井上敏樹さんなんでね。スーパー戦隊ではあるんですが、どちらかというと平成ライダー臭がするところも多いので。
でもそれでいうと、ドンブラザーズで一番好きなシーンが犬にイチゴあげるシーンだったんですけど、あれって井上さんじゃなくて監督のアイディアらしいですね。
これも結構特撮の面白いところかなって思いました。
龍騎もね、リレー小説みたいなものだったらしいですから。

特撮といえば今日からシンウルトラマンらしいですね。
仮面ライダーばっか書いてますけど、ウルトラマンもガチで好きなんで、ちょっとまだいけそうにはありませんが再来週くらいには行きたいと思うております。
それが終わればシン仮面ライダーもありますさかい。
楽しみでんな(´・ω・)b
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