仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
【三日目】
『人間が革命を起こせるだけの力を持っているかどうかは置いておいて、その存在を軽視しないほうがいいというのがオイラたちの意見だ』
というのも、インキュベーターを以てしてでもわからないことがある。
どこからどう見ても、どう調べても、ただの人間ではあるがAという人間とBという人間で大きな差が生まれることがある。
『何が違うのか、なぜ違うのか、オイラたちにもわからない。だが本来はありえないことが起こっている。それをバグというのが正解なのか、あるいはもっと違う言い方があるのかは知らないがな』
たとえば概念。
神のルールで定めたはずなのに、それをすり抜ける人間がいる。
特異点とでもいえばいいのか。
『忘却は絶対ではないということさ。ボクは一度、その事例を目にしている』
確信がある。
その頃、鹿目タツヤは家にいた。
両親は旅行に行った。
だから家の風呂でゆまを沈めていた。
「……っ」
ボコボコと、泡が鳴る。
タツヤは目を細めた。湯気が白い。
『タツヤ、だめだよ』
まどかの声がした。
「!」
タツヤはそこで我に返った。
力を緩めると、すぐにゆまがお湯から顔を出した。
激しくせき込む。多くの水を飲んだようで、激しくせき込みながらお湯を吐き戻していた。
「千歳さんっ、ごめんなさい……! おれ!」
「いいのっ! ごホッ! がはッ! おぇ……!」
「でも!」
「大丈夫。だって、ほら、杏子が助けてくれたから」
「………」
タツヤは鏡を見た。
いつもは曇っているのに、今日はいつにもましてピカピカだった。
学校の鏡を思い出す。そこにはまどかがいたんだ、もしかしたらすぐそこにもまどかがいるかもしれない。
タツヤは浴槽から出ると鏡を見たが、そこには自分しかいなかった。
「うふふふ! あはははっ!」
「ふふ、ふふふ……! ふはははは!」
ゆまに釣られてタツヤはゲラゲラ笑った。
「お風呂で騒ぐなって。杏子とマミに怒られたの」
「でもまどかは怒らなかった」
タツヤは頭を押さえた。
みんなは忘れたが、タツヤだけは覚えていた。
魔法少女と騎士が戦っていた。あれはファンタジーなんかじゃない。
「魔法少女だったんだきっと。まどかも杏子もマミも」
「魔法少女?」
「そう。おれたちは異常者なんかじゃない。おれたちはもっと大きな……」
タツヤは言葉を止めた。
魔法があると知っても、タツヤには魔法なんて使えない。
ゆまの心も物にはできない。それはもしかしたらとても恐ろしいことなのではないだろうか。
だってここまで来たら、もうタツヤは人間じゃない。
魔法使いになれなかった者だ。
それはとても惨めな気がして、タツヤは何も言えなかった。
タツヤは湯舟に戻りお湯の中に沈んだ。
苦しくなったのですぐに頭を出した。
ゆまはそんな男の頭を撫でた。
「職場には来るんだな」
「貴方もね」
新聞販売店、ヤナギニュースペーパーで紘汰と鈴音は顔を合わせた。
「気を悪くしたなら謝る。嫌味じゃないんだ。ただその……、珍しいなって」
「私はここに住んでいるから」
「俺はなるべく普段通りの生活がしたいんだ。そう、生活、みんなだってそうだ! 今は情報が欲しいだろうし新聞を待ってる人がいる」
「他人のため? 理解できないわ」
「おかしいってか? 殺しあうよりは何億倍もマシだろ」
「………」
鈴音の脳裏に一瞬だけ戦闘の文字が浮かんだが、そこで同僚が入ってきた。
「スズっち、こたくん、おはよー」
ジャージ先輩を見て、鈴音は殺意を消した。
「ん? どした? 顔が怖いっスよ」
「あぁ、いや、なんでも……、ははは」
三人は新聞を仕分け、配達に向かおうとする。
「もう遅いわ。ゲームが始まる前からとっくに」
紘汰が出発しようとした時、鈴音が呟いた。
「貴方たちが殺してきた魔女は魔法少女の成れの果て、それは紛れもない、殺人よ」
「………」
「拭おうとしてもへばりつく、いまさら元には戻れない」
「……俺の両親は、魔女に殺された」
姉を迎えにいって、そのあとは家族で外食をしようと話していたら車が宙に浮きあがった。
見えたのは巨大な骸骨。目の部分が薔薇で、たくさんの触手があって。
「ガラスが割れて、それから魔女の姿が変わったんだ。俺は車外に放り出されて、あの和服を着た木みたいなヤツは炎で車に残っていた二人を焼き殺した……」
紘汰の手が震えてる。
思い出したくはない記憶だ。だから周りを見ていない。
鈴音が真っ青になったことには気づかない。
「でも誰かが助けてくれたんだ。パニックであんまり覚えてないけど逃げてって声が聴こえた気がする。幻聴だったのかもしれないけど、今ならあれは魔法少女だったんじゃないかって……」
その魔法少女がどうなったかは知らない。
いずれにせよインキュベーターがいうには世界中の魔法少女は今、ゲームに参加している者のみとなったらしい。
「俺は俺を助けてくれたその人のためにも、誰かを助けるために戦う。だからこんな下らないゲームに乗るわけにはいかないんだ……ッ!」
「………」
「もしもお前がゲームに乗るなら、俺は全力で止める。それだけだ」
そういって紘汰は出発した。
「髑髏に、薔薇……」
鈴音は新聞を落とした。
「見滝原?」
「そう、沢芽に変わる前の町の名前よ」
海香はかずみが差し出したミニ唐揚げを一口で頬張り、ズカズカと歩いていく。
作家の悪癖なのか、どうにもこの『ゲーム』というやり方がインキュベーターらしくないと引っかかっているようだ。
元々、魔法少女の願いという無限の可能性という題材は常に頭の中を巡っていた。
「裏を探ってしまいたくなるの。もしかしたらこの状況を打破できるヒントが掴めるかもしれないから」
「ふむふむ」
「見滝原から沢芽になろうとしたその時期に何かがあるんじゃないかって思ってるのだけれど」
目的地の扉を開く。
「おう、かずみに海香じゃねーか。なんか食ってくか?」
「うん! 食べ――」
「かずみ、メッ」
「あう!」
「あのね阪東さん、今日はお茶をしに来たのではなくってよ」
「え? じゃあ何を……」
「こう呼んだほうがいいかしら? 由良吾郎さん」
阪東の目の色が、確かに変わった。
五分後、店の奥の席で阪東とかずみたちは顔を合わせていた。
普段の明るい表情ではなく、沈んだ顔で阪東はアップルティーを見つめている。
「信じてもらえないかもしれないが、自分でもマジでわからないんだよ」
記憶喪失、おそらくそれが最も適切な言葉であると思っている。
新しい名前と、それを証明する複雑な書類が目の前に置いてあった。
おそらく『よくない物』なのだとは思っている。
法律にやたら詳しい人間が用意してくれたのだろう。
阪東は、それを受け入れた。
由良吾郎という名前を捨てて、過去を詮索せず、まったく新しい人間として生きようと決めたのだ。
「どうして?」
「信じるべきものがココにあった。この状況はきっと悪いものじゃないんだって……、言葉にならない何かがあったんだよ」
阪東はそう言って胸を掴んだ。
海香は目を丸くする。名前を変える人間なんて何かあるに決まっているだろうが、とにかく彼は本当に何も覚えていないようだし。
そうなると望む答えは得られそうにない。
「せっかく調べたのに……」
「拍子抜けか? わりぃな。あぁ、でもそういえば」
「?」
「一度だけ声をかけられたことがあるんだ。どうやら由良吾郎としての俺を知ってるみたいだったけど……」
当時、見滝原でニュースサイトを経営していた大久保という男だったらしい。
同僚の島田という人が『行方不明』になったらしく、探しているのだとか。
「パソコンに青い蝶の画像だけが残されてたらしいんだけど、何せ俺も記憶を失ってるし、なんのことかはサッパリだった」
それで大久保と別れてからはそれっきりで連絡を取り合うなんてこともなかった。
とはいえ『人が消えた』という事実は記憶喪失の阪東と通ずるものもある。
どうやらそのタイミングも近いものだというし。
「何かがあったんだ。きっと。それが何なのかはわからねぇけど」
海香とかずみは顔を見合わせて頷きあった。
一方その頃、シャルモンでは貴虎の姿があった。
「まさか、スイーツ店の店主にこんな過去があったとはな」
貴虎が持ってきた写真には、軍服を着た凰蓮がナイフを構えていた。
「軍人としての貴様に依頼がしたい。魔法少女を殺してくれ」
「……残念ね。普通なら、とても好みのタイプなのだけれど」
「断るというのか」
「軍人だからよ」
「?」
「さあ帰って頂戴。まだ仕込みが残っているの」
「軍人だからか。ここでシェアハウスを始めた理由と関係があるのか?」
「そうね、それは――」
凰蓮は言葉を止めた。貴虎と共に店の外を睨む。
「向こうは違うようだ」
「そういうものよ。子供ってのはだいたいがワガママなんだから」
二人はため息をついて店の外に出た。
みらいと麻衣が肩を並べている。
「昨日は邪魔があったから。今日は潰しちゃうよ」
そういってみらいがステッキを構えた時だ。
『よお、参加者共』
声が脳を支配した。
リーダーとは!
つまりはその陣営のトップ。
言い方を変えるならばそれは『心臓』である。
『今から各陣営のリーダーを発表する。まず騎士は葛葉紘汰だ! そして魔法少女は天乃鈴音! この二人をリーダーとする!』
――理由は、特にない。
ただなんとなく神が決めたといえばそれで終わりだ。
しかし選ばれたことは事実、当然その責任の重さが発生する。
『それが『リーダーアサルト』。このルールはかなり重要だ。なにせ各陣営のリーダーが死ねば、同じくして同陣営が全て全滅してしまうからな。ガーデンシリーズのように抜け道なんて存在しない、このルールによる死は絶対と刻め!』
魔法少女は天乃鈴音、騎士は葛葉紘汰が死ねばその時点で敗北決定だ。
たとえ騎士が10人生き残って、あとは天乃鈴音だけだったとしても、そこで鈴音が紘汰を殺せば一気に逆転してゲームは魔法少女の勝ちで終わる。
『ちなみにリーダーには自傷行為が封印されている。自らの命を絶つことはできないという簡易的な制限がかけられているが……』
ジュゥべえはあえて続きを口にしない。
すぐにわかることだ。主に、みらいと麻衣が目撃するだろう。
だから今は何も言わなくてもいい。
『とはいえ恩恵もあるぜ。リーダーには頂点に相応しい力が与えられるってもんよ』
それを証明するように鈴音の武器に変化が起きた。彼女の魔法が強化されたのだ。
同じく紘汰には、やけに角ばったオレンジが与えられた。
これが時間とともに熟れれば強力なロックシードになるらしい。
そして、最後にキルリーダーというシステム。
『黄金の果実による世界創成は失った命を取り戻すこともできるが、対抗陣営は無理だ。そして同陣営であっても蘇生させるプロセスは異なる』
以前、一つの願いで三人まで蘇生させることができるとあったが、正確には願いではなく『蘇生チケット』を使用するのだ。
参加者は12人いるため、もしもリーダー以外が死亡した場合は四枚獲得しなければ全員を取り戻すことができない。
チケットを獲得できる方法は――
・対抗陣営を四人殺害するたびに一枚。
・後述するフォックスを殺した陣営に二枚。
・後述する狂人が生存した場合、対抗陣営に一枚。
と、あるのだが。
リーダーがリーダーを殺した場合、勝利陣営のリーダーが自陣営を好きに蘇生させることができる。
『そして先のとおり役職はリーダーだけではない』
続いてジュゥべえは『狂人』の説明に入った。
この称号を与えられた者はそれぞれの陣営にひとりずつ。
今頃、脳裏に『あなたが狂人です』と信号が送られているはずだ。
『この役職を簡単に言えば、裏切り者よ』
仮に、『海香』を狂人とした場合で説明させてもらうぜ。
対抗陣営の勝利が狂人の勝利条件となるため、海香は騎士が勝利すれば勝ちとなる。
狂人のみ自陣営のメンバーを殺害することができるため、海香は魔法少女たちを殺して騎士の勝利に貢献できるわけだ。
さらに紘汰が死んでしまい、リーダーアサルトによる全滅が行われる際も、狂人である海香は生存する。
この場合は、後で詳しく説明するが投票において生死が確定する。
一方で、絶対的な裏切り者というわけでもなく。
たとえば海香が死亡しているうえで、魔法少女陣営が勝ったとする。
狂人である海香は騎士陣営を勝利に導かなければならないため敗北となるのだが、そこでも『投票』が行われるわけだ。
投票とは、ゲーム終了時点で生存している魔法少女内で海香が『有罪』か『無罪』の投票が行われ、全員から『無罪』を受け取ることができれば蘇生されるってシステムよ。
つまり、無理に対抗勢力に加勢する選択肢を取る必要はない。
反対に海香が死亡しているうえで騎士陣営が勝利した場合は、問答無用で海香が蘇生される。
ちなみに狂人は自ら狂人であると宣言することはできない。
そう告げようとすると、ルールにより言葉が止められるのだ。
『もう一つ。攻撃有効タイミングについて説明する』
海香がカオルを殺そうと攻撃した場合、まずは同陣営では傷つけられないというルールが適応される。
しかし定のダメージ値を超えた時点で、海香の攻撃がカオルに有効になる。
同時にその時、カオルの攻撃も海香に通るようになるから注意な。
つまり殺そうとすると、殺される危険性があるということだ。
『そして、最後に第三勢力であるフォックスだ』
実はこのゲームは、魔法少女陣営VS騎士陣営VSフォックスの三つ巴であった。
フォックスは両陣営を合わせてたった一人。
騎士の中にいるかもしれないし、魔法少女の誰かかもしれない。
『フォックスはゲーム終了時まで生き残っていた場合、ひとり勝ちとなる』
するとフォックス以外の参加者すべてが死亡してゲームが終了、黄金の果実を独り占めにできるのだ。
当然、黄金の果実やチケットで他の参加者を蘇らせることはできない。
あとは他の参加者と同じだ。
狂人のように自陣営を殺すことはできないし、リーダーアサルトには巻き込まれる。
『そしてその重圧から逃げ出せば重いペナルティが待っているぜ。自殺した場合は親族全員が死亡し、現在総人口の半分が死ぬ。めちゃくちゃだろ? 悪いなガチで』
さらに現状、フォックスは自分がフォックスであるということがわかっていない。
判明するのは一定の参加者が死んだ時か、五日目のナイトフェイズ以降だ。
『一つだけヒントをくれてやるなら葛葉紘汰と天乃鈴音は狂人でもないしフォックスでもない。このゲームに役職被りは存在しないんだ。いろいろ言ったが覚えたよな? まあほどほど頑張ってくれや。チャオ』
「………」
そこでジュゥべえからの説明が終わり、状況が戻る。
みらいと麻衣は沈黙していた。
ルールはわかったが、一つわからないことがある。
奇襲を仕掛けてもらうためにスタンバイをしていた天乃鈴音が姿を見せて、スタスタと歩いてきたことだ。
「ちょい! 何してる!?」
みらいが問いかけたが、鈴音は何も答えない。
代わりに魔法少女の変身を解いて、両手を広げた。
「おい」
これは、麻衣。
鈴音は無表情で立っていた。
「おいおい」
これは、みらい。
貴虎が走った。しかし同じく気づいていた凰蓮に腕を掴まれて止められる。
「凌馬」
空間が歪む。
透明になっていた騎士・デュークがソニックアローにエネルギーを集中させていた。
「意図はわからないが、助かったよ」
「おいおいおいおいおいぃいいいいいいい!」
みらいが走り、麻衣も続く。
間違いない。鈴音は――
「キミたちの犠牲は、忘れるまで忘れないとも」【レモンエナジー!】
鈴音は、死ぬつもりなのだ。
「グッッ! ガぁアアァァア!!」
光が弾けた。
シャルモンの二階から飛びだしたカオルが鈴音の前に着地して、デュークの矢を背中で受け止めたのだ。
硬質化を発動していたものの、皮膚や肉が弾けて背骨がむき出しになる。
「シャワーあがりに血まみれか。洒落にならないぞ……!」
「………」
「せめてちょっとは申し訳なさそうな顔してほしいけど……。みらい! 麻衣!」
麻衣が鈴音とカオルを抱きかかえ、みらいが大量のテディベアで視界を覆い隠した。
再び矢が直撃していくが、破壊されたのはぬいぐるみだけで、魔法少女たちの姿はそこにはもうなかった。
幼い鈴音が何をしているのかを問うと、椿はそれがおまじないであることを教えてくれた。
「亡くなってしまった人の名前をこの紙に書いてお守りの中に入れておくと、ずっと忘れずに一緒にいられる。そう思ってるんです」
「ふぅん」
鈴音はニコリと微笑んだ。
「ねえ、私のも書いたらずっと一緒にいられるかな?」
すると椿は少し悲しそうに微笑んで、直後鈴音を優しく抱きしめた。
「大丈夫。そんなことをしなくても、ずっと一緒です」
「……本当?」
「本当です」
それが二人の約束だった。
鈴音は紘汰と同じだった。両親を魔女に殺され、次は鈴音というところで椿に助けられた。
椿は鈴音と一緒に住むようになり、彼女の姉代わりとしてたくさんの愛を注いだ。
「私、椿みたいな魔法少女になりたい」
生きるため、椿を助けるため、鈴音もまた魔法少女になった。
倒した魔女の力を吸収して、自らの力として使うことができる固有魔法で何体もの魔女を倒した。
鈴音は椿が大好きだった。
幼いながらに、この存在がキラキラとしたスーパーヒロインではないのだろうと察することができた。
それだけいろいろな魔法少女がいたからだ。
しかし椿はその中であっても凛として優しく、他者のために働く姿はとても美しかった。
鈴音は彼女に憧れていた。
椿ともっと一緒にいたい。ずっと一緒にいたい。
だから強くなりたい。
そう思った日、椿は魔女を斬った。
目が薔薇になっている骸骨、そして無数の触手を持ったクリフォニアという魔女だった。
「間に合わなかったね」
「そう、ですね……」
そういう時もある。
車に乗っていた運転手と、助手席にいた女性は、頭や心臓を触手で貫かれて絶命していた。
「守れなかった……ッ、魔法少女なのに、守れなかった」
「だいじょうぶ? 椿、辛そう……」
椿もまた、魔女に家族を殺されていた。
だからこそ同じような境遇の人間を助けたいという強い願いがあるのだろう。
そこで椿は後ろにいた少年が生きていることに気づいた。気絶しているようだが、目立った傷はない。
「よかったね」
「何もよくないですよ」
「え?」
「だって、この子はこれから両親がいない人生を歩まないといけない。それがどんなに大変なことかはわかるでしょう? だってこの子は男の子だから魔法少女なれな……な、な」
椿はそこで言葉を止めた。
一度、俯き、そして顔を上げれば笑顔であった。
「鈴音、一つ、約束してくれますか?」
「なぁに?」
「私たちのような、そしてこの子のような人たちはこれからもたくさん現れると思います。だから私がそうしてもらったように、私がそうしたように、どうかあなたも皆が独りぼっちにならないようにたくさんの愛を……、向けて、あげて」
椿はお守りを鈴音に渡した。
「どうか、彼らを、守って……、あげて」
「う、うん」
「約束……、ですよ」
「あのっ、椿? すごく辛そうだよ。大丈夫?」
『運が悪かったね』
キュゥべえがいた。
『さきほどの魔女はグリーフシードを落とさなかった』
「え? あ……、うん。そうだね」
『いつも弱いキミを庇って戦い、グリーフシードもキミに譲っていた。汚れたソウルジェムであれば精神状態は不安定になる。同じような境遇の人間を見て、過去の記憶がフラッシュバックしたんだろう。それがより大きな心の傷を生み出した』
わかりやすくいえば、限界なのである。
『椿が魔女になる』
衝撃が迸った。
鈴音は転がり、車も転がり、中にいた少年が放り出される。
彼はその衝撃で目を覚ました。
たくさんの椿の花を咲かせた木が着物を身に着けている魔女カルメンは、少年の両親の死体を焼き尽くすと、その標的を少年に定める。
それを見た鈴音の手が震えていた。
「キュゥべえ! 椿を元に戻してよ!」
『無理だ。魔法少女と魔女は不可逆なんだ』
鈴音にできることは二つしかない。
椿を倒すか。
逃がすか。
『どのみち、彼女はずっと呪いを振りまくことになるけれど』
「……ッッ」
手が震えていた。
「うぅううぅ」
鈴音は前に出る。
『いいのかい?』
「だって、だって……!」
震える。
「だって!!」
魔女が、少年を焼き殺そうとした。
「だって! 椿とやくそくっ、したから!!」
その瞬間、鈴音の目から涙が溢れた。
「私の系譜魔法は倒した魔女の……、魔法少女の力を手に入れることができる」
今、現在。鈴音は手にしたお守りを見つめながら説明していた。
お守りの中には椿の名前が書かれた紙が眠っている。
「私の炎は、椿の炎。これを使うたびにあの日のことを思い出す」
魔女は人を殺す。
なによりも魔法少女そのものを殺してしまうだろう。
あれだけ優しかった椿が椿でなくなってしまったように、それはきっと死ぬことと同じくらい辛いことだ。
「魔法少女はやがて必ず魔女になる。だからせめてその前に綺麗なままで眠らせてあげたかった。なによりもあんな苦しみと痛みの連鎖を止めたかった」
それはなにも死だけが齎すものではない。
だからこそ黄金の果実で魔法少女の呪縛から解放される未来があるのなら。
そしてさらにそこに椿という命を蘇生できるかもしれないという希望があるのなら、魔法少女陣営としての勝利も悪くないと思ったまでだ。
だがそれは少し違った。
覚悟の日でもあったが、思い出したくない日でもあった。
幼い心が蓋をしていたから、目を背けたまま生きていた。
あの子のような存在を作らないでというあの約束は、大好きな椿との思い出なのだ。
だから鈴音にはそれを守る義務がある。
それが鈴音が今、生きている唯一の理由なのだから。
「椿は葛葉紘汰を助けるために戦った」
「だから……?」
「椿が守る筈の紘汰を守らなければならない」
「だから――ッ!?」
「つまり椿が守ろうとしていた紘汰を殺すことはできない」
「だから!!」
「だから、私は騎士を勝たせるわ」
(はあああああ!? ふざけんなよゴミカス女ァアアア!)
沙々は思わず立ち上がった。
なんとか言葉を飲み込んだが、幸いなことに同じようなことをみらいが叫んでいたのでボロは出ずにすむ
魔法少女集会、集まった少女たちはみんな信じられないという表情を鈴音に向けていた。
「ちょっと待って。貴女、意味がわかっていて……?」
海香が手を挙げた。もちろん殺しあうのは反対だが、かといって死にたいわけではない。
鈴音がわざと騎士に殺されれば、その時点で魔法少女たちは全滅なのだから。
「確かに約束を守ることは大切かもしれないが、それこそ椿さんを蘇生させればいいだけの話じゃないのか?」
麻衣が鈴音に詰め寄った。流石の彼女も焦りがあるようだ。
「何がお前の願いなんだ? それを見間違うな。私には一択にしか思えない!」
「……椿は私が少しでも苦しくないように、痛い思いをしないように頑張ってくれていた」
体も、心もだ。だから孤独になった鈴音の傍にいてくれた。
椿にはきっとその痛みがわかっているからだ。
「今の貴女たちは痛くないの?」
「なに?」
「椿は素晴らしい人よ。もしもデスゲームの果てに蘇生されたと知ればきっと彼女は苦しむ。今まで倒してきた魔女が魔法少女と知れば、きっと心の痛みを感じる」
「それを超えて生きていくこともまた! 私たちに与えられた宿命じゃないのか……?」
「私は椿にそんな想いをしてほしくない」
「それは椿さんが決めることだ」
「椿ならきっと蘇生させてほしくはないと言うわ」
「あ、あのっ! いいですかぁ?」
沙々が手を挙げる。
「黄金の果実があれば、蘇生させた椿さんの記憶をいいように弄ることができるんじゃないでしょうか? いえっ、そればかりかわたしたちの記憶だって改変させて罪悪感を消すことだってできますよ?」
「………」
鈴音の表情は全く明るくならない。
「あのゲームを仕掛けた奴らが、大人しく引き下がるの?」
「え?」
「それに、生きるということは、いつかは死ぬということよ」
「ほへぇ」(あ? なに言ってんだコイツ)
「……私はまた椿の死を見なければならない。私の死を椿に見せなければならない」
「と、いうことは」
「これは私のエゴ。ごめんなさい。魔法少女は死ぬべきよ」
静寂。そして、壁を殴る音。
「なんだそれ? うじうじうじうじ! ウジウジウジウジィイイッ!」
みらいは走り、鈴音を殴った。
しかし同陣営は傷つけあうことはできない。
鈴音は何も表情を変えることなく、不動のままだった。
「狂人出てこい! 鈴音を黙らせろ!」
狂人なら鈴音に攻撃が通る。
だったら大人しくさせる――、それこそ両手両足を切断して閉じ込めておけばリーダーアサルトの危険性は下げることができる。
しかし魔法少女たちは視線を交差させるだけで、誰も動こうとはしない。
出てこないということは鈴音を傷つけたくないか、あるいはもしや騎士側についているのか。
「だがこのままだと確実に私たちは全滅だ! とりあえず抑えるだけは抑えるぞ!」
さすがのカオルや海香や佳奈美も頷き、走る。
おろおろとしている茉莉をよそに魔法少女たちの手が鈴音に伸びた。
しかし何も掴めない。陽炎で後ろに回ったのだ。
「!」
だが鈴音は首を掴まれる。
亜里紗だ。バチバチと迸るエネルギー。
身体強化の魔法を発動させて、鈴音を掴んだまま飛び上がった。
道場の天井をブチ破ると、そのままどこかに消えていく。
「か――ッ! 私の道場だぞ……!」
麻衣は真っ青になって、空を見ている。
「黄金の果実があればすぐ直るって。それよりアイツどこ行ったの?」
みらいの問いかけに答えるものは誰もいなかった。わからないからだ。
「佳奈美、追跡を頼める?」
「う、うん! おっけー!」
佳奈美が駆け出し、亜里紗たちを追いかける。
「一人で抑えるよりは複数のほうがいいってのに!」
「しかし本当に問題だぞ。こっちのリーダーがあれでは……」
それを聞いて沙々は顎を触る。
一つ思いついたのが、彼女の固有魔法である『洗脳』だ。
鈴音にかけることができたならなんとかなりそうだが、かといって他の魔法少女たちには創造魔法であると嘘をついている状況。
ここで洗脳でしたと明かせば、茉莉を使って藤果を殺したことがバレてしまう。
「貴虎がこちらを全滅させるつもりだからな。心臓をさらし続けるのはマズイ」
ふと、そんな声が聴こえた。
「ん? ほえ? どういうことです?」
「沙々は学校にはいなかったな。実は――」
そこで斬月が魔法少女の皆殺しを宣言したことを教えられた。
(げぇえええ! やべぇじゃねぇかマジでそれは!)
こうなっては弟のミッチがどうとか言っている場合ではない。
今すぐに彼を切って新しい立ち回りに切り替えるべきだろう。
そんなことを考えていると揉める声が聞こえてきた。
はじまりは麻衣がカオルたちに紘汰の殺害を提案したことだった。
「鈴音があんな状態である以上、早めに決着をつけるしかない! 全員で葛葉紘汰を狙うんだ」
「ダメだ! 紘汰は……ッ、友達なんだ」
「だから我々に犠牲になれと? お前の友情のためには死ねない」
「それは……」
沈黙が訪れる。
背中の傷はふさがったとはいえ、まだ痛むのか、カオルは弱弱しくへたり込んだ。
そこで沙々が手を挙げる。
「お取込み中のところ申し訳ないんですがっ! 一人になるのが怖いので誰かしばらく一緒にいてくれませんか?」
沙々としてはナイトフェイズのこともあるため、あまり集まりたくはなかったが囮に使える分、そちらのほうがマシと割り切った。
「相部屋でいいなら」
「ありがとうございますぅ! 着替えとか持ってきたいので、今から一緒に家に来てくれるとありがたいんですけど……」
カオルは頷こうとしたが、首を止める。
麻衣とみらいを睨んだ。もしもここから立ち去れば、きっと二人は紘汰を殺しにいくのだろう。
「悪いけど茉莉、一緒に行ってやってくれ。海香はアタシとここに残ってほしい」
「う、うん。じゃあ、いこっか沙々ちゃん」
こうして、二人は沙々のアパートを目指した。
「沙々ちゃんはどんな色が好き? マツリはねぇ、やっぱり緑色とかなぁ」
「ほぇー」(え? なんだそのゴミみてぇな質問)
その後も茉莉はいろいろ質問をしてくれるが、沙々は適当な相槌で受け流した。
茉莉としては少しでも沙々に安心してほしいから声をかけたというところがある。
そして記憶こそないが、朱里を殺してしまったことは事実だ。だから沙々が警戒して怖がらないように自分をさらけ出そうという意図があった。
まさかその沙々のせいとは知る由もない。
「そこを曲がればアパートで――」
曲がる。気づく。
アパートが、ない。
「くわぁっす!?」
沙々から変な声が出た。
アパートが丸ごとなくなっているのだ。
とはいえ多少の『残骸』はあった。急いで駆け寄ってみると、どうやら全焼したような形跡があった。
「これは……、まさか――ッ!」
「あぶない! 沙々ちゃん!」
「ホゲータ!!」
変な声が出た。
というのも、沙々のすぐ傍に光の矢が着弾したのだ。
茉莉の警告がなければ間違いなく直撃していただろう。
「ありゃ、外しちまった」
「な、な、な!」
空だ。
見上げれば、ダンデライナーに乗ったシグルドがソニックアローを構えていた。
アパートを破壊したのは殺すためだ。凌馬が貴虎のために沙々を殺すといい、それをシグルドが実行するというだけの話。
そしてアパートにはいなかったが、この沢芽には治安維持のため多くの監視カメラが設置されている。
そのデータをユグドラシルはいつでも確認できた。
だからこうしてシグルドが沙々の前にいるのだ。
「にゃおはぁーっ!」
変な声が出た。
またもや矢が何本も飛んできて沙々を貫こうとしてくる。
変身して走るが、なにせシグルドは空に浮いているし、沙々にまともな飛び道具はない。
というのも彼女の本質は洗脳だ。戦闘スタイルは魔女を魔法で操ってというものだが、いかんせん手持ちの魔女が小さいもの一体しかいないのだ。
補充する前にゲームが始まってしまい、それから新しい魔女に出会えていないものだからコンディションとしては最低なのである。
となれば、取る方法はたった一つ。
「茉莉さんたすけてぇー! なんか狙われてますゅーッ!」
他・力・本・願! あざす。
「待ってて!」
茉莉が手をかざすと、沙々がバリアに包まれる。
さらに茉莉はパワーアームから光弾を発射してシグルドを狙った。
「ここはマツリに任せて沙々ちゃんは逃げて!」
「デ、デモ、ソンナコトデキナイヨー」
「マツリは大丈夫だから!」
「じゃあ頼みますね! ご無事で!」
沙々は一度も振り返ることなく全速力で逃げ出した。
大きく手を振りながら疾走。途中でよぎる茉莉の死。
考えてみれば――、実はかなりのチャンスかもしれない。
茉莉が死んでくれれば藤果殺害を茉莉の仕業にしやすくなる。
(頼む! 死んでくれぇええええええ!!)
と、神に祈ってみる。
すると空からシグルドが降ってきて、沙々の前に着地した。
「ほぴゃあああああああああ! なんでぇええ!?」
「驚いたか? コイツだよ」
そういってシグルドは『S』と書かれたロックシードを見せる。
"シドロックシード"は、複数のロックビークルを脳波で自在に操ることができるようになる代物だ。
これにより現在、茉莉は大量のチューリップホッパーと、空に浮かび機関銃を乱射するダンデライナーたちに足止めを受けていた。
(あンのゴミ女つかえねぇーィ!!)
こうなったら直接シグルドを殺すしかない。
沙々はさっそく、魔力を全開にして洗脳魔法を発動するが――
(だめだ、騎士はどうもアーマーを通さねぇ!)
シグルドは沙々の命令を無視して弓を構えている。
こうなったら力業だ。
沙々は飛んでくる矢を華麗にかわしながら一気にシグルドへ距離を詰めた。
「やるねぇ!」
「どうも!」
ソニックアローと杖がぶつかり合う。
その衝撃でバキンと音がして杖が折れた。
「すぅぅ……」
真っ青になる沙々。
直後、腹に蹴りが入り、後方へ吹き飛ぶ。
「ほげぇえ!」
背中で地面を擦る。
そのすきにシグルドは弦を思いきり引っ張り、エネルギーを鏃に集中させた。
「んん?」
前にあったのは、DOGEZA。
土・下・座。
優木沙々、百万点の頭下げである。
「ずびばぜんでじだぁあぁ!!」
「はァ?」
「調子に乗って申し訳ありませんでしたぁ~! ごろざないでぇえぇえぇえ!」
顔をあげた沙々は涙と鼻水でぐちゃぐちゃである。
「えぐっ! えぐ! ひぐっ! はぐっ!」
「悪いなお嬢ちゃん。アンタに恨みはないが、これは仕事なんだ」
「ぞごをなんどがぁ!」
「ゲームのこともある。諦めるんだな」
「病気のお祖母ちゃんがいるんですッ! 私に会えるのだけを生きる糧にしてぇえ、私が死んだらショックで心臓がぁあ! お祖母ちゃんまで殺すんですかこの人でなしィィ」
「……おかしいな。テメェのことは調べたが、祖母はとっくにお陀仏してるだろ」
「え?」
「は?」
「ん?」
「お?」
「あー、いやッ、叔母! 叔母ーちゃんがいてぇええ! 遠方の病院で一人寂しく難病と闘っているんですぅう! 私と会えることだけが生きがいで! 私はまだ死ぬわけにはいかないんですぅぅう! それだけじゃありません! それだけじゃないんです! えっと、えーっと、なんか、えーっと。んー、あ! そう! そうです! その病院で知り合った病弱な少女と約束したんですぅぅ! 私がなんかあのー……モルックの大会的なヤツで優勝したら手術を受けてくれるって。だから私が生きてモルックで優勝しないと若き命がぁあ」
「……モルックってなんだ?」
「え? あ……」
「………」
「あの……、いっぱい食べると……気持ち悪くなる、ヤツ」
シグルドは無言でスマホを取り出すと、ポチポチとワードを打ち込む。
そして、検索終了。
「お前は死んどけ」
「ぎゃあああああああああ!」
「だいたい涙がとっくにひっこんでるんだよ」
「待って! 待ってください!」
待つつもりはなかった。なかったが――
「ッ!」
シグルドは手を止めた。
「お前……」
沙々が、笑っていたのだ。
口が三日月のように吊り上がっている。
なにも無策でクオリティの低い命乞いをしていたわけではない。
沙々がそうやって時間を稼いでいる間、沙々は『投げて』いたスマホを、使役した魔女に拾わせていた。
肉球に手足が生えたような魔女である通称・『チビ』は、路地裏にスマホを持っていき、沙々からのテレパシーを受けて文字を打ち込んだ。
そしてそれを送信したのだ。
その結果がシグルドの背後に見えた。
だから沙々は笑ったのだ。
「やめろ!」
そういって龍玄は発砲した。
沙々はチビを使って光実に『助けて!』というメッセージと今いる場所を送ったのだ。
「おいおい坊ちゃん。これまた奇遇なこって」
「沙々さんを襲っていたのか!」
シグルドは迷う。凌馬から光実にはバレるなと釘を刺されていたのだ。
「たすけてぇえ! 光実くんッッ!!」
「んお!?」
シグルドの脇を通り抜けて走っていく沙々。
やられたと思う。
変身を解除した沙々は、自分で洋服やスカートをビリビリに破いていた。
半裸の彼女は龍玄にしがみつき、潤んだ瞳で助けを求める。
「あの人が! あの人がぁあぁ!」
「沙々さん! シド! 貴様ァ……!」
「おいおいおい待て待て待て! 坊ちゃん、そりゃ誤解だって!」
「黙れ! お前だけは許さないッッ!!」
龍玄は沙々を庇うように立つ。
沙々は素早く龍玄の背後に隠れると、顔だけ覗かせてシグルドに向けて舌を出した。
「呉島は女運がねぇなー。クソ不味いアップルパイ女に性悪ときた」
「沙々さんの侮辱は許さないぞ!!」
「だいたい、俺がそんなことをするヤツに見えるってか?」
「悪そうな顔なのは確かでしょ」
「……クソガキが!」
シグルドが地面を蹴った。
龍玄は銃を連射するが、シグルドはソニックアローを盾にして突っ込んでくる。
「くッ!」『キウイ!』
龍玄は振るわれたソニックアローを飛び越えながらロックシードを起動する。
振り向きざまに再び振るわれた刃。
しかし同じくしてキウイ型のアーマーも展開する。
『キウイアームズ!』『撃・輪・セイッ! ヤッ! ハッ!』
円形状の大きな切断武器、キウイ逆輪でソニックアローを受け止める。
さらに龍玄は回転しながら飛び上がり、両手に持っていた輪を投げた。
激しく回転し、エネルギーをまといながら武器はシグルドへ向かう。
「フンッ!」
一投目。シグルドは弓でそれを弾くと、追撃の矢で撃墜する。
「ハァアアア!」
二投目。シグルドは飛び上がり、輪をかわすと矢を発射して輪を落とす。
しかし龍玄が手をかざすと、落ちていた二つの輪が再び手に戻る。
「ハァアア!」『ハイーッ!』『キウイスカッシュ!』
「ハァ、くだらねぇ」
飛んだ来た輪をシグルドは真っ向から受けた。
ルールにより同陣営が傷つけあうことはできない。
衝撃は来るが、ゲネシスドライバーの力があれば戦極ドライバーの出力するパワーなど恐れるに値しない。
しばらくして龍玄の手元に戻ってくる二つの輪。
龍玄はさらにカッティングブレードを倒す。
『ハイーッ!』『キウイオーレ!!』
輪の片面に半分にしたキウイのエネルギーが現れる。
輪と輪を重ねることで、一つのキウイになった。
龍玄はそれを発射してシグルドに直撃させる。
「!!」
シグルドはそれを真正面から受け止め、そして吹き飛んだ。
地面に倒れ、煙を上げるアーマー。
それを見て、シグルドは意味を察した。
「ははあ、なるほどね。お前が狂人ってわけだ」
シグルドは跳ね起きる。
一方で龍玄はゲネシスコアを戦極ドライバーに取り付けた。
【ドラゴンフルーツエナジー!】
【ミックス!】【ジンバードラゴンフルーツ!】
『【ハハーッ!』】
強化フォームとなった龍玄はブドウ龍砲の銃身にソニックアローを連結させる。
こうして、二つの武器が合体したボウガンが生まれた。
「やれやれ、呉島主任は過保護だね。弟に良い玩具を与えすぎだ」
「シドォオッッ!!」
龍玄は躊躇なく引き金をひいた。
ボウガンから赤く輝く光の矢が連射されてシグルドを狙う。
だがシグルドは臆することなく走り、前に向かった。
飛んできた矢をソニックアローで弾き、ステップを踏んで加速する。
「おっと!」
間一髪でかわした矢。シグルドは倒れつつレバーを押した。
【ソーォダァ……】【チェリーエナジースカッシュ!】
ソニックアローの刃が赤く発光し、シグルドはそれを思い切り投げて地面を滑らせる。
龍玄は向かってくるソニックアローを見て、ギリギリのところで跳んで回避した。
だがソニックアローを見すぎた。
着地して顔を上げると、そこにシグルドの拳がある。
「グアぁあ!」
殴られ、龍玄は後ろに下がっていく。
そこでシグルドはレバーを二回押して飛び上がった。
「うッ!」
龍玄が踏み込もうとするが、間に合わない。
そうしているとシグルドの飛び蹴りが間近に迫る。
【チェリーエナジースパーキング!!】
シグルドは赤い球体状のエネルギーを纏った状態で、飛び蹴りを龍玄の胸に直撃させた。
するとそこで動きが停止する。
そうすると背後に、もう一つの紅球が現れた。
そこにあるのは巨大なサクランボだ。
後ろにあるエネルギーボールが『ニュートンのゆりかご』のように、シグルドがいるエネルギーボールがぶつかって、その際に生まれた衝撃が一気に龍玄へと流れ込む。
「ぐあぁあああ!」
龍玄は吹き飛び、そこで変身が解除された。
「やれやれ」
シグルドは、倒れた光実に向かってソニックアローを向ける。
「言い訳は後で考えるか」
「――ッ!」
光実の目が恐怖に染まった。
だから彼は反射的に内ポケットから『それ』を取り出し、起動させる。
「なにッ!?」
そこで凄まじい衝撃が巻き起こった。
「………」
僅かに時間をおいて、もう一度、衝撃が走る。
シグルドが倒れていた。
ドライバーとロックシードが破損しており、そのせいで変身が解除される。
「バカな……!」
シドは立ち上がれない。全身の骨が砕けている。
「なんでお前が"それ"を――!」
「兄さんがお守りに持たせてくれたのさ」
「えこひいきが過ぎるぜ。ったく……」
龍玄はブドウアームズに変身する。
そして、ブドウ龍砲をシドに向けた。
「よせ――ッ! 覚悟もないヤツが中途半端にやることじゃない……」
「黙れ! 覚悟ならある! 僕は……ッ、僕は沙々さんのことを本気でッッ!!」
そこで、背中を押す声が聞こえた。
「お願い! もう酷いことされたくないよぉ!」
シドはニヤリと笑った。
「悪い女だぜ……!」
銃声が聞こえた。
シドの頭が弾けた。
「ォオオオオオオオオオオ!」
龍玄は何度も引き金をひいてシドの体を破壊していく。
ふと、我に返る。
もう死んでる。龍玄は変身を解除した。
「お前みたいなクズは、生きてちゃいけないんだ……」
足が、ガクガクと震えていた。
けれどもこれは武者震いなんだ。光実はそう言い聞かせて背後を見る。
沙々が走ってきた。彼女は光実を抱きしめ、顔を胸に埋める。
「守ってくれて、ありがとう! 怖かった……っ!」
「大丈夫だよ沙々さん。僕がついてるから」
前言撤回。光実はまだ切らない。
まさか彼がそうだったとは。
これは大きな収穫である。
「あなたは、わたしのヒーローです! ふえぇええ!」
【シド・死亡】
【魔法少女陣営:残り9人】【騎士陣営:残り9人】
たぶん六月の更新はこれでラストだと思います。
許して、許して、おくれやし……(´;ω;`)
とはいえね皆さん。
今はニチアサが熱いということでね。
アマプラでドンブラザーズが見れるので、こいつを浴びてください。
井上敏樹さんはまだまだとんでもないものを提供してくれるようで、毎週楽しみにしてます(´・ω・)b
あと、なんだろうな。
最近は話題のサロメお嬢様も好きですね。
ウマ娘でもマックイーンとか、カワカミとか、特にブライトがめちゃくちゃ好きなんでね。
マギレコでいうと前になんでもないガチャで、ゆうなが来てくれたりとね。
さらにいえば、まどマギ診断みたいなヤツ今までに二種類やったことあるんですけど、結果ぜんぶ仁美ちゃんだったんでね。
つまり私がお嬢様ですわ(まっすぐな瞳)