仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
そんなたいそうな話でもないのですが、あとがきにスタンスみたいなものを書いてますので、興味のある方は一つ。
「大丈夫か! 茉莉!」
ナックルが駆け付けたとほぼ同じタイミングでカオルと海香も到着した。
茉莉が発生させたSOS電波は、スマホのメッセージアプリをハッキングして、テレパシーで文字を送ることができる。
これで特定の人物にレスキューコールを送ったのだが、二人が駆け付けた時にはへたり込む茉莉と、その周りに無数の残骸が散らばっているだけだった。
「これッ、全部、茉莉が?」
「ううん。そうじゃなくて」
茉莉はつい先ほどの光景を思い出していた。
地面を突き破った無数のバナナ。それらがチューリップホッパーを粉砕し、さらに無数のマンゴー破片がダンデライナーを撃ち落とした。
へたり込む茉莉は、バロンをジッと見ている。
「戒斗、どうして……」
「俺は貴様に"強さ"を視たからチームバロンへ入れた。それがこんな無機質な道具に殺されるなど、つまらんにも程がある」
バロンは踵を返す。
「いい加減に戦え、茉莉」
「無理だよ。マツリは――」
「前を見ろ。貴様にはもう、それができるだろ」
「だからだよ」
「なに?」
「マツリが見つけた強さは、そんなんじゃないから」
「………」
「視力を手に入れていろいろなものを見たよ。それでわかったの。この世界にいる人たちは視力があって同じものを見ていても、時に違うように映る。あるいは、ぜんぜん形のないものを見ようとしてるから皆バラバラなんだよね」
「そうだ。だからそれを一つに纏めるものがいる。それが"力"――、強者というものだ」
「それが戒斗の正義なら、やっぱり茉莉とは視てるものが違うよ。助けてくれたことは本当に感謝してるけど、もしも戒斗がみんなを傷つけることが正解に視えたなら――」
茉莉は、バロンをまっすぐに見ていた。
「戒斗は王にはなれないよ」
バロンはそれを聞くと、何も言わずに去っていった。
「はぁ」
茉莉はへたり込み、そこでナックルたちが駆け付けたのだった。
「そうだ。沙々ちゃん! 大丈夫かな?」
「ああ、それならさっき連絡が来て、逃げ延びたそうだ」
「も、もしかしてさっきのアナウンス……」
「いや、それがどうやら狂人が騎士を殺したって」
「なんだって?」
「向こうは仲間割れが起きてるみたいだって沙々は言ってるんだけど」
ナックルは腕を組んで考えた。
もしや狂人が騎士を裏切る方向に動き出しているのか。
それともただの正当防衛に近い何か、だったのか。
「いずれにせよ厄介なことになりそうだぜ……」
とりあえずカオルは茉莉をナックルに任せて猛スピードで麻衣の道場に戻ったが、そこには気まずそうにしている海香が。
「ごめんなさい。二人は出ていったわ」
「……仕方ない。コッチも鈴音を探そう」
どうやら佳奈美も見失ってしまったようで、二手に分かれる。
海香はかずみと合流し、鈴音を探したが、そう簡単には見つからないものである。
「「「あ」」」
そんな最中、城之内の家の前で海香たちと紘汰は鉢合わせた。
「紘汰は仲が良かったの?」
「友達ってほどではなかったのかもしれない。けど、やっぱり同じビートライダーズとして踊ってた仲間だとは思ってる。二人はどうして?」
「かずみと出かけていて。本当は寄るつもりはなかったのだけれど。近くに来たから……」
紘汰としてはせめて仏壇に手を合わせたくて来たはいいが、家の前まで来て、彼の死体が蒸発したことを思い出した。
多くの人間が行方不明ということになっていた。城之内もその一人だ。
しかし海香が合い鍵を持っていたので入らせてもらえることに。
「よく家には?」
「持っていただけよ。両親は険悪な別れでもなかったそうだから、何かあったらって父がくれたの。とはいえほとんど会ってなかったけど」
「それは、どうして? 家族なんだろ?」
「なんとなく気まずくて。ただどんな生活をしていたのか、今更ちょっとだけ気になって寄ってみたわ。兄はほら、もういないことだし」
「……そっか」
「ところで一人でいても大丈夫なの? リーダーなのではなくて?」
「いや、それが……」
実はもう湊に組み伏せられて、ユグドラシルに連れていかれていた。
無理もない。紘汰が死ねば騎士は全滅だ。向こうは監禁するつもりではあったが、そこではヘラヘラとした笑顔が待っていた。
『いやぁ、申し訳ない。実はつい先ほど彼が来て』
『チャオ』
ジュゥべえは紘汰にリーダーとしての恩恵。
未覚醒のオレンジロックシードについて説明を行った。
それは簡単にいえば紘汰が戦わないと『熟さない』らしい。
『ということで我々の勝利のためにも是非、先陣で活躍してくれたまえ』
そう言って凌馬はチェリーエナジーロックシードを投げる。
紘汰はそれを受け取ると表情を変えた。ロックシードが血で汚れている。
『シドの形見だ』
凌馬は肩を竦めて、笑った。
「って、ことなんだけど」
「とはいえ護衛くらいはついてるかもね」
「ッ、そうか。だったらここにいるのは……!」
「少しくらいは大丈夫よ」
そういって海香は家の中を進む。
「こっちも大変でね。リーダーである天乃鈴音は貴方を勝たせようと必死」
「え?」
海香は事情を説明する。
椿という魔法少女。そして紘汰という少年。
椿の意思を貫くため、鈴音はリーダーでありながら全滅を望むのだ。
「そんな! まさか!」
「そのまさかみたい。困ったものだこと」
紘汰は俯き、顎を抑える。
あの木のような化け物が鈴音の大切な人だったと?
罪悪感が胸を刺す。当然それは紘汰のせいではないが、結果論としてもしも紘汰たちが襲われなければ椿は魔女にならずに済んだかもしれない。
(でも、まてよ……?)
紘汰には一つ、引っかかるものがあった。
(いやッでも鈴音が言うなら……、そうか、でもアレはじゃあ一体――)
そこで紘汰はふと、立ち止まる
気づけばもう城乃内の部屋の前だ。
「あー……」
「なに?」
「やッ、なんていうかほら。見られたらマズイものとか……」
「そんなもの残しておくほうが悪いのよ。私は本や映像は現物派だけど、デジタルも買うわ」
海香は兄の部屋の扉を蹴破った。部屋の中は、わざとらしいほどお洒落だった。
紘汰は、壁にチームインヴィットのグッズが飾ってあるのを見つけた。
初瀬と交換したのだろうか、レイドワイルドの物もある。
「少し前まで、一緒にダンスをしていたんだ……」
誰に言うでもなく、紘汰は弱弱しく呟いた。
「………」
海香は無表情だ。
部屋を少し見ただけで、兄の何かがわかる筈もない。
とはいえ、まったく情報がないわけでもなかった。
クローゼットにある自分の本を見つけたのだ。
しかも一冊ではない。一種類につき、三冊ほど買ってある。
「応援してくれてたんだね」
かずみがそっと海香の肩に触れる。
海香は複雑そうにため息をついた。
「まあ、悪くない兄だったわ」
海香は振り返り、紘汰を見る。
「帰ります」
「あ、ああ」
「紘汰さん。私は、生き残るわ」
「……ああ」
海香はかずみを連れて部屋を出た。
「ねえ海香。今のってどういう意味? 戦うとかじゃ……ないよね?」
「そうね。でも私は絶対に生き残る。それだと、いずれどうなるか? その行間は読んでほしいものね」
◇
子供たちが下校している。
この殺伐とした世界であっても、彼らははしゃぎ、笑いあっている。
小走りで橋を渡り、帰路につく。
その下に亜里紗と鈴音はいた。
「初瀬の弟が帰ってる。まだ小さくてね。初瀬がいなくなったら家族はバラバラ」
「なら、尚更、魔法少女は死ぬべきね」
「かもね。アンタはどう思う?」
亜里紗は呆れたように笑う。
初瀬はというと、怒っていた。
「知るか」
果し状なんてものは相当バカじゃないと出さないものだと思っていた。
しかし携帯にはそれが届いた。
「こんなモンでノコノコ来ると思ったのか? ナメんなよ」
「でも来たじゃん」
「ムカついたからな。バカにしやがって」
「バカじゃん」
「テメェもだろ!」
鈴音の表情は一切変わらない。淡々と初瀬の前に来て、そこで立ち止まるだけだ。
「殺せば終わる」
「知るか、どけ!」
「え?」
初瀬は鈴音の肩を掴んで横にどけた。
意味がわからない。鈴音は初瀬を見た。
初瀬は鈴音なんて一瞥もくれちゃいない。
ただ亜里紗とまっすぐ睨みあっている。
「どうして? 終わるのよ?」
「終わらねぇよ」
「なんで」
「果し状もらったんだぞ。お前を殺して何になる」
「亜里紗も死ぬわ」
「だろうな。だけどそういうことじゃねーんだよ。いいからテメェは黙ってろ!」
鈴音はワケが分からず沈黙するしかなかった。
そうしていると、亜里紗が笑う。
「アンタらしいわ」
「うるせぇぞ」
「まあいいか。それより一つだけハッキリさせたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「千里は自分で死んだんでしょ?」
「………」
「なんでわかったかって? そりゃわかるってば、なんとなく」
「嘘ついてんじゃねぇ」
「じゃあ違うの?」
「………」
「今更、罪悪感でも感じてんの? くだらない、本当にくだらないわ」
「そんなんじゃねぇ! ただ、なんていうか……」
信じてる。
あの日、あの時、千里に言われたことだ。
「わからねぇ。だから気持ち悪い」
確かに、交流があった。
だが仲が良かったのかはわからない。
亜里紗とはチームメンバーで、それなりにバカもやって、楽しくはやってた。
でも千里は亜里紗と友達で、友達の友達は……、どうなんだろうか。
「アイツはオレを知らない」
「アタシは結構……、話してたけど。ほらいじめられてたチームメイトのお礼しにいったこととか」
亜里紗はため息をついた。勝手に話していいものかと思ったが、勝手に死んだバツだ。
千里の過去を話し始めた。
なぜ彼女が魔法少女になったのかを。
千里の父は絵本作家だった。
夢を与える話を書きたいと常々口にしており、千里も父の描く個性豊かなキャラクターたちが大好きだった。
しかし父の情熱とは対照的に、本の売り上げは伸び悩んでいた。
夢なんてどうでもいい。マーケティングこそが正義であると口にした編集者と対立した日から父には仕事が来なくなった。
夢が負ける筈がない。父はそう口にしながら酒を飲んだ。
毎日お酒を飲み、視えない何かを探して、またお酒を飲む。
そうすると少しの希望の果てに、今を知る。父は声を荒げて世界を呪った。
今までいくつも優しい言葉を描いていた筈なのに、口を開けば母を口汚く罵り、グラスを投げてガラスを割った。
母は、いつか元の優しい父に戻ってくれると何度も千里に言って家計を支えるために朝早くから夜遅くまで働いた。
しかし無理がたたって体を壊し、ほどなくして亡くなった。
父は妻の死に動揺し、そのストレスからさらに酒の量は増えて、ついには千里を殴るようになった。
『父を更生させて』
それが彼女の願いである。
「でも、千里はずっと心残りだったって」
父は『別人』のように変わってしまったと、何度か口にしていた。
そこに後ろめたさを。なによりも、悔しさを感じていたのだろう。
「本当は自分が助けたかった。だから今度はどんな手を使っても初瀬、アンタを救おうって思ってたんでしょ」
「余計なお世話だ」
「アタシもそう思う」
むろん初瀬は変わらなかった。今までも、ゲームが始まってからもだ。
仕方ないと、諦めることができればよかったが、千里はどうしても割り切ることができなかった。
千里は父を変えてしまったことをずっと後悔していた。
あのやり方は更生ではない。
反省も何もない。ただの『殺人』だと思っている。
そしてそんな願いの代償によって自分たちは魔女になるという。
そもそも、魔女を殺してきた。
それは千里が描いていた未来とはあまりにもかけ離れたものだ。
だから止めなければならない。
そうでなければ何の意味もなくなってしまう。
しかし初瀬は覚悟を固めていた。
もしもそんな彼の心に何かを届けられるなら、それはきっと――
命だ。
千里は自らが死ぬことで初瀬に思い留まってほしかった。
初瀬にこれは違うのだと踏みとどまって、更生してほしかった。
自分の想いで、自分自身の考えで。
「千里は冷静に見えた。でも違う。親しい遥香が死んで、自分が魔女になるってわかって、動揺しない筈がない!」
それが、ラインを超えさせる決断をさせてしまったと。
「そうだ。テメェの言うとおりだ。オレは止まっちまったんだ」
行き過ぎた自己犠牲。
千里を前に動きが止まった黒影を見て、千里はその決意を固めた。
初瀬は自分を殺せなかった。良心がある。
それを、信じてる。
だから千里は自分の手で影松を掴んで自分の胸へ刃を入れたのだ。
「いずれにせよ千里がアンタを選んだのは事実よ! それってかなり……、ムカつく話」
「………」
「アタシはもう強いから必要ないとでも思ったんでしょ? わかってない。友達って、そういうものじゃないのに」
「……お前が死ぬところは、見たくないんだってよ」
「え?」
「言ってたぜ。亜里紗に笑われるから、かっこよく死なせてって」
「それで死なせたの」
「オレはそっちを選んだからな」
「馬鹿なヤツ」
「お前ほどじゃねーよ」
気だるい会話だった。
しかし二人は対照的に目にもとまらぬスピードで走りだし、変身を完了させて組み合った。
腕と腕がX状に重なる。
睨みあう二人だが、亜里紗はそこで殺意を瞳にはらんだまま、鈴音を見た。
「なんでココに呼んだかわかる!?」
「……わからない」
「見せるためよ! 説明するのは柄じゃない!」
亜里紗は黒影の腹を蹴った。
よろけ、しりもちをつくが、そこで突き出した影松の先が亜里紗の喉元に突き付けられた。
「本当にバカなヤツ!」
亜里紗は鎌を生み出すと湾曲した刃で槍の柄を絡め、そのまま黒影の手から弾いてみせた。
そのままの勢いで振り下ろす。
刃が黒影の肩に当たり、火花が散った。
黒影は叫んだ。刃をものともせず、体を前に出す。
亜里紗から目は逸らさない。瞳を逸らしたら負けになる。最後の最後まで、睨んで、進んで。
だから二人は思い切り額と額を打ち付けた。
「!」
亜里紗が魔法を使ったのだろう。
黒影の仮面が砕けて初瀬の顔がさらけ出された。
あっけにとられている間に、亜里紗は足をあげて思い切り腹を蹴った。
黒影は呻きながら地面に倒れ、そのまま回転して、川の間際まで進む。
「バカなりに!」
「あッ!」
「前に進まないといけないんだろうが!」『ドングリアームズ!』『ネバーギブアーップ!』
城之内の形見を初瀬は拾っていた。
ドングリアームズに変わった黒影はドンカチを振るって亜里紗の顔を打つ。
すさまじい衝撃によって体はよろけて、そのまま腕から地面に倒れる。
黒影は前に出た。
殺すということの痛みを教えて、踏みとどまってもらおうと考えたのだろうが……、やはり彼女は上手くいかなかった。
黒影はこう考えている。
もう、後には退けないのだと。
「!」
黒影は全力を込めてハンマーを振り下ろしたつもりだった。
しかし亜里紗はそれを両手でしっかりと受け止めている。
迸るエネルギー、身体強化の魔法をフルパワーで使用しているようだ。
「それは友情――ッ!?」
「かもな! アイツは! 城之内は――! まあそれなりに良い奴だった! 死んでみたら割と、結構ショックだったからな!」
「だったら……!」
「ッ?」
「だったら! わかるでしょッ!?」
「!!」
「アタシの気持ちがァアッ!!」
亜里紗の拳が黒影の腹を打った。
「千里は、アタシの親友だった!」
「グッ! ゥウァアア……ッ」
「はりさけそうよ!!」
黒影はうめき声をあげながら後退していき、やがては水しぶきを上げる。
一方で亜里紗の表情も険しい。
フルブーストとは文字通り最大強化。
魔力の消費が激しく、体を動かせばそれだけ反動が襲い掛かる。
しかしそれでも亜里紗はコレを使わねばなるまいと思っていた。自分のため、千里のため、そして黒影のためにだ。
「鈴音、どう思う? どう思ってる?」
「何が?」
「意味不明なことしてるでしょ。でも、それが必要なの。アタシは千里の友達だったから」
「弔いのつもりなの? でも今の会話が本当なら、詩音千里は初瀬を助けようとしていた。その人間を貴女は殺すというの?」
「はは、バカね。何も殺すだなんて言っちゃいないわよ。でもほら、やっぱりそこは全力で、殺すつもりで殴らないと」
「理解できないわ」
「アイツは馬鹿だから千里のメッセージに気付かなかった。だから全力で殴ってやんのよ。アイツが見落としたものを少しでもわかってもらうために」
この拳の重さは、千里の命の重さでもある。
気づいているかどうかは知らないが、初瀬もなんとなくの意味くらいは分かるはずだ。
でなければドングリのロックシードなんて使わない。
「まあ説明は無理。そんなに頭は良くないし。でもね、きっとたぶんIQ高くても言葉は見つからないのよ、ハートだもん」
だからダンスを踊っていた。
きっとあったんだ。あの踊りでしか表現できないものが。
だから今も同じだ。ビートライダーズの時と何も変わらない。
「くだらない」
「なんですって?」
「あなた達の気持ちなんて関係ない。リーダーはこの私、私の感情こそが全て。そしてそれは椿の感情よ」
「もしもまだアンタが騎士のために死ぬって思ってるなら、その椿ってのはさぞつまらない人間だったのね」
「……ッ、今、なんて?」
「アンタを見ればわかるわ。くだらないのはそっちのほう!」
鈴音は不快感を露にしながら立ち上がった黒影の前に立つ。
「さっさと殺しなさい!」
「どけ! 邪魔だっつってんだろうが!」
黒影は鈴音を突き飛ばし、亜里紗の前に立つ。
「なぜ!」
鈴音の問いに答えたのは亜里紗だった。
「アタシは変わった! 千里に出会えて少しはまともになったけど、アンタはそうじゃない! 椿って人を言い訳にして変化を拒絶してる!」
「それは、違う……」
「違わない。椿は何のためにアンタを助けたの? 人殺しにして、最終的には自分を殺して、魔法少女を皆殺しにする化け物にするため!? そうだとしたらそんなヤツどこが素敵なのよ? 屑も屑でしょうが!」
こういう言い回しはあまり好きではなかったが、今ならわかるというものだ。
「椿って人はそんなこと望んでない!」
「そんなのッ! 何がわかるの!?」
「むしろアタシでもわかる簡単なことがどうしてわかんないわけ!? その人が死んだ時からアンタは止まったままなのよ!」
亜里紗は鈴音の襟を掴み、叫ぶ。
「椿のために生きろ! 椿はアンタを生かしてくれたんだろうが!」
「それは紘汰のような人間を守るため!」
「アンタを愛してた! そんなことも読み取れなかったのか!」
「どの道……ッ、もう戻れない! 私は何人もの魔法少女を既に殺してる!」
「罪を償うことはできる! それに、その人たちを蘇生させることだって!」
「やっとわかった」
最後の言葉は黒影だ。
「くだらねぇ、確かにくだらねぇよ」
「なんですって?」
「言葉なんてガラじゃねぇ。オレたちは馬鹿なんだから説明なんてできない」
「ムカつく……!」
「だが踊れた。それでも踊れた。なんでかっていうとそれは……」
「説明できないんでしょ」
「そうだ。だがわかりやすくすることはできる。それは単純なことだった」
「?」
「亜里紗。一つだ。千里を蘇らせるには騎士を殺せばいい」
「………」
「勝てばいい。それですべてが終わるし、変えていける。そうだろ? きっとそうだ。ゴチャゴチャつまらない言葉を並べる必要はない。オレたちはそうだった。そこにつまらないものを引きずる必要もねぇ。千里の――、アイツのやったことが正しいとか間違いだとか、そんなどうでもいいことを決めに来たんじゃねぇ。なあそうだろ?」
「……かもね」
「ほしいものがある。それだけだ。オレは千里に試されてる気がして気に入らなかったんだ。でも違ぇよそれは。なぜかというと試すのはアイツじゃなくてこのオレだからだ。だからつまりこれを単純に言うと――」
ドンカチを向ける。
「本気で来やがれ。そしたらきっと、オレたちはたどり着ける筈だ」
「そう来なくっちゃ!」
亜里紗は跳ねた。
スキップをするように軽やかな足取りで黒影に切りかかっていく。
激しく交差する武器と拳。
入れ替わり、足同士がぶつかり合う。
鈴音はそれをジッと見ていた。
「椿」
掌を見る。
微かなぬくもりを思い出した。
彼女と手を繋いで帰った、あの日のことだ。
(私は……)
鈴音はハッとして、前を見る。
風が裂けた。
黒影の背中から大量の火花が飛び散っていた。
「死も超えられないのか、お前らは」
朱音麻衣はよろけた黒影の背中に蹴りを入れて怯ませた後、斬撃を三度とその体に刻みつけていった。
黒影は何とか踏みとどまると、振り返りハンマーを振るうが、感触はない。
麻衣は屈みながら体を回転させていた。
振るわれた踵が黒影の足を払い、黒影はそのまま仰向けに倒れる。
水しぶきが舞う。
麻衣は刀を思いきり下へ突き刺していた。
しかし黒影も何とか体を回転させて、それを回避する。
そのやり取りが三回ほど続いたところで麻衣の動きが止まった。
亜里紗に羽交い絞めにされている。
「やめろ! これはアタシら勝負な――」
亜里紗の視界が反転した。
気づけば、背負い投げで地面に倒されている。
「語るなら、せめて手の震えを止めてからにしろ」
「え……? あ」
そこで亜里紗は自らの『動揺』に気が付いた。
「く――ッ!」
激しい悔しさを覚える。
まだ足りなかったのか、覚悟が。
チームリーダーを殺そうと思い、戦い、それでもまだ迷いがあったのか。
(千里のせいよ。アンタがいなかったらこんなヤツぶっ殺してた……ッ!)
起き上がろうとするも、そこで亜里紗は悲鳴をあげる。
フルブーストの制御がうまくいかず、リジェクションが起きたのだ。
血を吐き、うつぶせに倒れてからは体が動かない。
滅多に使わない技だったため、コントロールが上手くいかなかったのだ。
「………」
クマを使うまでもなかったかと、橋の上にいたみらいは動きを止める。
手すりに座り、下にいる黒影を見た。
「悪いねリーダー、みらい様は先に行くよ。でもそういうもんだろ? 下が上を超える。それを容認するのがリーダーの役目ってもんだ」
黒影はハンマーを振るうが、パワーは互角、それならリーチの差がものをいう。
刀がハンマーをはじき、さらに麻衣は踏み込んで二回、打ち込むように刀を当てた。
さらに体を捻って足を伸ばした。蹴りが黒影の腹に入り、さらに追撃の斬撃が直撃する。
「ズッ! がぁああ!」
斬撃はまだ終わらない。
幾重もの閃光。
黒影の手からドンカチが弾かれた。
「クソッ! ッたれえええェエ! 」
カッティングブレードに手を伸ばしたが、そこで気づく。
激しい抵抗力。
小刀が下に降りない。
どうして? なんで? 黒影は下を見る。
するとカッティングブレードが途中で止まっていた。
ハッとして前を見ると、麻衣が人差し指と中指をまっすぐに伸ばしている。
その指から垂れる血。カッティングブレードの刃が触れているからだ。
麻衣は、範囲拡大魔法で触れられるリーチを伸ばして、ブレードを止めていたのだ。
それに気付くのが遅れた。
黒影に衝撃が走る。距離を詰めた麻衣の肘が胴に入ったからだ。
バランスが崩れる。麻衣が踏み込む。水しぶきが舞う。
黒影の腰、戦極ドライバーの中央に麻衣の刀が深々と突き刺さっていた。
侵入した刃は機器を破壊していき、黒影は苦痛の声をあげながら初瀬に戻る。
「形見に意味はない。想いが込められただけで、何の力も上乗せされない」
「ぐッ! おぉおお……ッ!」
「思い出もそうだ。意味があるようで、何もない。虚無を脚色はできるが、それは所詮、夢幻でしかない」
麻衣は、目を細めた。
「力こそが現実だ」
「オオオオオオオオオオオオオオオ!」
初瀬は麻衣に殴りかかった。
しかしその拳が届くことはない。
初瀬の体の中央に一本、まっすぐな線が入る。
血しぶきが舞った。
初瀬の体が右と左に分離したのだ。
「初瀬ェエ!!」
亜里紗は目を見開いたが、体は動かない。
だから声を出そうとするが、うまくしゃべれなかった。
唇が重いのはあるが、なによりも――
「誰もがみんな、負けられない戦いがある」
麻衣は亜里紗を見たが、なによりも鈴音を睨みつける。
「攻める資格はないぞ。お前が放棄しようとしたものなのだから」
「私は……」
「亜里紗。お前もそうだ。本気じゃあなかった」
「何が!」
「怯えてる」
「ッッ!」
「思っていたんじゃないか? たとえ死んでも、それはそれで。なんてこと」
「そ、それは……」
「詩音千里のところへ行けると思えば割り切れるか? だが私はそうじゃない。私たちはそうじゃない。仲間が欠けることは魔法少女陣営の勝利に大きな影響を及ぼす行為だ」
亜里紗は何も言えなかった。
それが弱さなのだと、自覚する。
「死ぬ覚悟はあるのに、生きる覚悟は固められないのか?」
「えッ」
「それは倫理があるからか? 摂理に反するからか? 違うな。生きることは死ぬよりも遥かに大きな責任を背負うことになるからだ」
「……ッ」
「臆するな。私たちは生き物を食らい、虫を殺している。それが人になっただけだ。私たちは常に何かを奪いながら生きている」
亜里紗は消えゆく初瀬の死体を見つめ、そのまま地面にへたり込む。
もしかしたら鈴音を連れ去って訴えたのは、亜里紗の中にある『鈴音のように考えること』を消し去りたかったからなのかもしれない。
なによりも――
「千里がそうだったように、アイツだって、友達だった……!」
「なら逃げるな。向き合い、生きろ」
「なんですって……?」
「もとより、騎士と魔法少女が共存する未来などない」
麻衣の眼は、見透かしたような瞳だった。
「生き抜け」
「………」
「勝ち残り、千里を蘇らせろ。椿さんを取り戻せ」
亜里紗も鈴音も何も言わず、ただ麻衣を見るだけだった。
「私が気に入らないのなら、ゲームが終わった後で相手になってやる」
麻衣は、笑う。
そして踵を返して歩き出した。
「新世界で待ってるぞ」
彼女はそのまま、みらいと共に去っていった。
【初瀬亮二・死亡】
【魔法少女陣営:残り9人】【騎士陣営:残り8人】
こういう話はなるべくしたくないのですが、今回は私の考えをここに記しておこうと思います。
ちょっと長くなる&ふんわりした書き方で申し訳ないんですが。
まあ簡単に言いますと――
現実世界ではいろいろあっても、私が更新できそうならば、なるべくそうした話題には触れずに更新していきたい。ということです。
どういうことなのかといいますと
私としてはなるべく創作というのはフラットな気持ちで楽しんでほしいと思ってます。
とはいえ、コロナにはじまり、戦争だったり不祥事だったり訃報だったり事件だったりと、なかなか悲しいニュースは無くなってくれないもので。
そうしたものが創作とリンクしてしまうということは珍しくはないと思います。
それでなくとも私は露悪的というか。
今回の話もそうですが、人が傷つく話をたくさん書いておりますので、何かしらいろいろなフラッシュバックを起こしてしまうこともあるかもしれません。
それは申し訳ないなとは思いますが、どうかフィクションはフィクションなのだと割り切って頂きたいのです。
まあ触れないは触れないで変な感じになってしまうケースもあるとは思います。
実際それを思って、触れてしまった件もあります。
ただしやっぱりそれは僕の思う創作の向き合い方とは違ってきてしまうというか。
たとえば何か、やらかした人がいて。
さんざんニュースでやった後に、その人が出る映画が公開されたら、それってもうキャラクターの名前よりも、その人が前に出てきてしまう気がするんですよね。
そしたらその映画の本来の評価というか、鮮度がブレてしまう。
アニメなんかでもそうですね。
何かしらの問題で声優さんが変わったら、どうしてもそのキャラクターを見る度に、新たな声を聞く度に、不祥事とか問題のほうが頭に強く浮かんでくる人は絶対にいると思います。
私はそういうのがあまり好きではありません。
とはいえ、仕方ないところもあり、だったらどうすれば少しでもフラットになるのかを考えたら、やはり触れないことだと思います。
よくも悪くも次々と新しい何かが起きる社会ですから。
創作は残りますから、少し時間をおいて触れる人もいます。
あるいは忘れたり。そういう割り切りが終わったり。
でもその後に、またあとがきであの時はどうたらこうたらと書いていたらフラッシュバックしてしまうかもしれない。
あるいはまったく知らなかったのに、私が触れてるものだから調べてしまって、変に傷つくかもしれない。
そういうのはよくないと思いますので。
私はなるべく触れない方向性で行きたいと思ってます。
まあ、プラスなことだけだったら触れてもいいのかなとは思いますが……
本当に今回だけあえて一つ触れるとするならば『僕はレッドアイズとかデーモンが好きで~』みたいなことならまあ、いつ読んでもって感じなんですけど。
わざわざ悲しい部分に触れる必要はないのかなぁとは思いますね。
それこそ思い出してしまうというのか。
あとまあこれは完全に私の悪い部分なんですけど。
そもそも個人的にご冥福をお祈りしますって言葉を使うことに、実は一つ抵抗がありましてね。
まあもちろん大切な言葉ですし、僕もご冥福をお祈りするんですけども……
なにかこう打ち切りの言葉に思えてしまうというのか。
間違ってたらアレなんですけど、これって確か死後の世界で幸せに暮らせますようにみたいな意味でしたよね?
宗教感覚っていったらアレなんですけど、私はどこか心の中で、死んだらもう何もないと思ってるところがあります。
例えるなら、眠ってる時って記憶がないじゃないですか。
あれと同じになるような気がしていて。
やっぱりそれはひどい言い方をすれば無なんですよ。
だから我々は死後の世界に夢を見ず、生きてる間に少しでも悔いのないように生きるべきであると。
やりたいことは少しでもやったほうがいいし、食べたいものは食べたほうがいいし、気になるゲームはプレイしといたほうがいい。
だから寿命以外で亡くなった人に、何か言葉をかけることそのものに言いようのない悔しさを覚えてしまう。
本当はもっとやりたいことがあっただろうにと。
まあもちろんそんな意味じゃないのは分かっています。
それに他人の考えなんてその人にしかわからないものです。
だいたい毎日ダラダラダラダラ上手くもないスプラトゥーンで時間を消費している私がいうことじゃないのかもしれません……。
が、しかし。いやだからこそ、何か願いや祈りがあるのかもしれません。
まあ、それと似たような話で。
これは実はかなり昔になんとなく聞かれて、その時は「まあいいんじゃないですかねぇ」みたいな感じで適当にはぐらかしたんですが、これもあえて触れます。
というのも、創作する人間が政治的な発言をすることはアリか、ナシかです。
これはもうハッキリ言いますが、僕はナシだと思います。
これは別に政治に興味を持つなという話ではなく。
そして何も政治だけに限った話ではなく。
あるユーチューバーさんが言ってたんですけど、否定的な発言そのものをあまりするべきではないなということです。
その方はチョコミント否定したら、めちゃくちゃがっかりですとかコメント来て燃えたらしんですが……、まあでもわかる話でもあるなと。
結局これってファンがいるからだと思うんですよね。
いうて、これはもうほぼ受け売りなんですけど。
やっぱり人間って好きな人と意見が一緒だと嬉しいんですよ。
例えば私にファンがいるという前提で話しますけど(さ、さすがにいてくれるよな……?)
きのこ派か、たけのこ派かってなってる時に、僕はきのこ好きですと言ったら、たけのこ派のファンは絶対ちょっとがっかりするんですよ。
それだけならまだしも、じゃあ私がたけのこ派だったとして。
きのこなんて毒があるから最低だ~みたいな感じでディスったら、絶対にきのこ派は悲しい筈なんですよ。
でも今まで僕の作品を見て楽しんでくれたり、支えてくれたり、応援してる人の中にはきのこ派がいたんですよ。
だから、まあ燃える話題には触れないほうがいいかなと思います。
そもそも言いたいなら、別に他のアカウント作っても言えますしね。
それとか、まあどうしても立場とかで苦しくて、それを変えたいがために何か言いたいときは、少しフォローを入れてあげると優しいなと思います。
まあ人間やっぱり好みはあって当然ですから。
私も好きなライダー映画と好みじゃないライダー映画とかありますし。
てかなんだったら今度それについて触れようと思ってますし。
だからまあ言っときましょか?
少なくとも私は、今これを見てくれてる『あなた』が何が好きで、何を応援していても気にしません。
もしかしたら私の好みじゃないものを好きなのかもしれませんが、それで僕があなたを嫌いになることはないです。
ただなんかシンウルトラマンがテカテカしてて興奮しましたとか言ってきたら、きもいなとは思います。
思いますが、嫌いにはならないです。
ウルトラマン以外のてかてかならまあ、私もわかりますゆえ。
ただ一つだけ!
モラルだけは守ってください……!
これは自戒でもありますが、きっとあなたのためにもなります。
人として、人であれと。道徳というか、倫理というか。
別にまあ批判くらいはしてもいいですよ。
ただし、ラインは超えなさんなと。
そしたらたぶん、何かはうまくいくかもしれませんので。
まあこれらを言える一つとしては、私が皆様とネットだけの付き合いってのもあるのかもしれまえん。
だから僕はツイッターとかやらないのかもしれません。
やっぱりね深く関わるとトラブルも増えますから。
これくらいの距離感のほうが上手くいくところは上手くいきますよ。
なのですまんな、キミとはスプラトゥーンはできないわ。
ちなみに3が9月くらいにでるので、楽しみにしております。へへへ
とまあ、いろいろと書きましたが。
とにかく私としては、これからも暗いニュースや悲しい出来事は起こってしまうでしょうけれども……!
皆様が少しでもそれを忘れられるように激熱なものを書ければなと思っておりますので!
よろしくお願いしやす(´・ω・)b
ちなみに僕は、メイジのリッチキャラメルチョコサンド派です。
ごめんなさい。リッチなんで。
リッチってついているお菓子が美味しくないわけがないので。
リッチマウントで気を悪くしたのならごめんなさい。
でも、リッチなんで。
ええ。
たまに買うと、美味すぎてペロリやで(´・ω・)