仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

129 / 138
第七話 炎の夜

 

「ねえ、ちょっといい?」

 

「どうした?」

 

 

みらいに呼び止められので、麻衣は振り返る。

すると軽い衝撃を感じた。みらいが麻衣の胸に顔を埋めている。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「なんとなく。ダメ?」

 

「ダメっていうか……、なんというか。反応に困るな」

 

「震えてるかどうか気になった。心臓の鼓動はどうなってるか、気になった」

 

「そうか」

 

「殺したいヤツはたくさんいたけど……、殺したことはないから、どんな気分?」

 

 

麻衣は震えていない。心臓も特別ドキドキはしていなかった。

 

 

「できることなら味わわないほうがいい感情だ」

 

「ふーん」

 

 

みらいは麻衣の胸に頭を何度もバウンドさせる。

 

「お、おいおい」

 

「ダメ?」

 

「ダメっていうか……」

 

「これ、おもろい。亜里紗はケチだからさせてくれなかった」

 

「すまないな」

 

「なにが?」

 

「初瀬はリーダーだったんだろ?」

 

「まあ、でも、逆に有りだけど。だってアイツが死んだらなんかもう騎士はどうでもいい」

 

 

ポフッと、みらいは麻衣の胸に顔を埋めたまま固まる。

 

 

「っていうかさっきから背中をポンポンしてくるの何? 子供扱いしてないだろーなっ!」

 

「え? あぁ、嫌だったか?」

 

「べつに。ただ、なんでかなって」

 

「落ち着くと思ったんだ。京とか……私の友人が落ち込んでいるとよくやってた。そしたら喜んでくれてたし」

 

「なんか、それ、ムカつく」

 

「???」

 

「光栄だぞ朱音麻衣! このみらい様が自分から友達になりたいって思ったのは貴様がはじめてじゃ!」

 

「は、ははーッ!」

 

「ダメ?」

 

「いや? ありがとう」

 

「いいの?」

 

「ああ」

 

「ふーん。ふーん」

 

 

みらいはまた麻衣の胸で頭をバウンドさせる。

 

 

「あの、さっきからそれはなんなんだ?」

 

「おっぱいトランポリン」

 

「下品だなぁ……」

 

「どっか行こ?」

 

「あんみつでも食いに行くか?」

 

「えー、それってババアが食ってそうなヤツでしょ?」

 

「友達減るぞ」

 

「ケーキ食いに行こうよ! シャルモン!」

 

「いや、あんみつだ」

 

「チッ、まあいいけど……」

 

「食べたら美味いさ。黒蜜が最高なんだ」

 

「手、繋いでもいい?」

 

「う、うーん」

 

「ダメ?」

 

「そういうのは嫌いなタイプだと思ってたが」

 

「ボクだってやってみたさは……、ある。亜里紗は全然そういうのやらせてくれなかったから。なんていうかそういうのに嫌悪するのって、あらかたやりつくした後とか、一度経験した後なんじゃないの?」

 

「じゃあ……、いいけど」

 

 

みらいと麻衣は手をつないで、お茶屋を目指した。

一方、二人が行くのをやめたシャルモンは、今日も今日とて多くのお客があふれている。

 

 

「とても素晴らしいスイーツの数々だったわ」

 

「メルシー」

 

 

パティシエを呼んでほしいと言われたので、凰蓮はその客の前に来た。

人形のように美しい黒髪の女性は、かつて軍にいたことがあるらしい。その中で凰蓮のうわさを聞きつけてきたようだ。

 

 

「どうしてフランス軍に?」

 

「国籍を得るために」

 

「やはり向こうのスイーツはこちらとは違うかしら?」

 

「ええ、やはり一流の店が多いので」

 

「マカロンやカヌレ、フォンダンショコラなど流行のスイーツはフランスにありと言われていると聞いたわ」

 

 

そこで女性はプッと吹き出す。

 

 

「お菓子の中に美を追求するという精神はとても高尚なものに思えるわ。獣ではそうはいかないもの。でもね、私はさらにその先にある答えを見つけたの」

 

 

女性は一つだけ残していたマカロンを持つと、それを握りつぶす。

 

 

「どれだけ装飾したところで食べれば同じなの。もっと言えば死ねば、終わり」

 

 

凰蓮はその時、後ろに飛んで床の上を転がった。

同時に拡散する炎。

客たちの悲鳴が聞こえ、激しい熱が襲い掛かる。

 

 

「うぁああぁっ!」

 

 

窓ガラスを破ってブラーボが店外に放り出される。

なんとか変身に成功したからよかったものの、もう少し遅れていたら、そこで終わりだった。

現に、店からは火だるまになった人間たちが飛び出してくる。

助けを求める声すらも出せぬまま彼らは倒れ、そのまま尚も激しく燃えていく。

 

 

「なんてことを……ッ! 私の大切なお客様たちに!」

 

『仕方のないことよ。だって――』

 

 

既に女は、『人間』の姿ではなかった。

シルエットは女性だとわかるが、その無機質なパーツで構成された姿はどう見てもロボットだ。

 

体はシンプルなデザインだが、その右腕には凝った装飾のトカゲの頭部型のガントレットがある。

この機体の名は、サラマンダー。

 

 

『ナイトフェイズよ。参加者の一人を殺すわ』

 

 

ガーデンシリーズの襲来。

ブラーボはすぐに双剣を構えるが、少なくとも今の自分では勝ち目はない。

試しに剣の一つを投げてみるが、サラマンダーはなんおことはなくそれを弾いて見せる。

しかしその剣が地面に落ちた瞬間に爆発。

白煙が巻き起こり、衝撃が襲い掛かった。

 

 

「ハァア!」

 

 

ブラーボは駆け、もう一方の剣を振り下ろしてサラマンダーの肩に直撃させた。

 

 

『愚かなものね。何にも痛くないわ』

 

 

サラマンダーの目が光ると、ブラーボの傍で爆発が起き、動きが止まった。

そこへ突き出されたガントレット。

トカゲの口がブラーボの腹にヒットして、そのまま火炎放射が放たれる。

ブラーボは炎に包まれると、悲鳴を上げながら地面を転がった。

 

そのおかげでなんとか火は消えたのだが、サラマンダーは既に二発目を用意していた。

しかしブラーボはそれを体を反らして回避する。

前にもこんなことがあったと既視感を覚える中で、店の一部が吹き飛んだ。

当然だ。避ければ、後ろにあるものに当たる。

 

 

「……!」

 

『ショックなの? 呆れたものだわ』

 

「ええ、まったく。最低な気分だわ。機械のあなたたちにはわからないでしょうね!」

 

『そうでもないわよ? 私だって元は人間だもの』

 

「なんですって?」

 

『一部のガーデンシリーズには特定の人間の記憶がAIのモデルとなって埋め込まれてる。それはまさに転生と言ったほうがいい。人の肉体を捨て、機械の体として永遠を生きる。それはとても素晴らしいことなの!』

 

 

サラマンダーの中には、ガーデンシリーズを製作した女の記憶が入っていた。

記憶は機体を支配し、その人間のクローンに成り代わる。既に本体は死んでいるが、精神は未来永劫生き続けるのだ。

もっといえば外装――、つまり見た目の再現は完ぺきだった。

表情の再現性や、各種部位の質感は、いわゆる『不気味の谷』を超えており、凰蓮も彼女がロボットだったとは気づかなかった。

永遠の若さを保ったままでいられることは、サラマンダーにとっても重要なことである。

 

 

etresurpris(あきれるわ)、そんなことになんの意味があるというの?」

 

『凡人には理解できないものよ。ウフフフ……!』

 

 

天啓があった。今にして思えば。

ヒラリ、ヒラリと、蒼く煌めく『蝶』を追いかけ、指を動かした。

掴むようにキーボードを打つ。

それを繰り返し、やがてはこうなった。

 

 

「だったら!」

 

『!』

 

「理解できなくて結構だ!」

 

 

声がする。

空を切り裂き、猛スピードで突っ込んできたのはダンデライナーに乗ったナックルと、その腰にしがみつく茉莉だった。

二人は最高速度のままにシートから飛び降りると、機体はそのままサラマンダーに直撃して後方へ吹っ飛ばす。

一方で地面を転がったナックルは、立ち上がりざまにロックシードを起動してゲネシスコアをセット。ジンバーレモンに変身を完了させた。

 

 

「助かったわ!」

 

「ああ。シャルモンに設置してある監視カメラに異常が出てから、すぐに指示があったんだ」

 

 

戦極凌馬は、見かけた騎士たちへ小型のイヤホンを配っていた。

彼は本社に腰をおいて、町中に設置している監視カメラを確認しつつ、ナイトフェイズが始まればその情報をもとにガーデンシリーズがどこに現れたのかを迅速に報告するのだ。

ちなみにこれは茉莉にも配られている。

凌馬は『笑顔』で茉莉にこれを渡した。

 

 

『私も戦いには胸を痛めていてねぇー。茉莉くんのような魔法少女がいることは希望だよ。ぜひ、ザックくんと共に戦いを止めてくれたまえ。私も応援しているよ』

 

 

茉莉は笑顔でありがとうと言っていたが、ザックは苦虫を噛み潰したしたような顔をずっとしていた。

凌馬がこれを渡したのは確実に茉莉をガーデンシリーズが出る現場に向かわせて『囮』にするためだ。

とはいえ、茉莉はやる気のようなので、引っ込めるのもザックとしては心苦しい。

ゆえに、あえて連れていく。

それに茉莉は弱いわけじゃない。共に戦える仲間なのだから。

 

 

「ハアアア!」

 

 

茉莉は掌から衝撃波を発生させて、飛んできた炎弾をかき消した。

その向こうには立ち上がったサラマンダーがいる。

やはりというべきなのか、ダンデライナーの直撃程度では傷一つついていない。

だがその一方で、ナックルが放った光の矢を掌で止めたが、そこで爆発が起きて後退していく。

 

 

『チッ!』

 

 

掌からは煙が上がり、サラマンダーも自覚しているだろう。

やはりジンバーレモンが発生させるエネルギーが防御力を減少させているのだ。

ルールとしての役割である以上、対策されているかとも思ったが、どうやらまだ攻撃は有効らしい。

運営はガーデンシリーズを絶対的な存在ではなく、超えることも可能な存在のほうが『面白い』と判断したようだ。

 

 

「凰蓮さん! クソ、どうなってんだコレ!」

 

 

炎を見て、海香、カオル、かずみも駆け付けた。

既にシャルモンが炎上しているということはニュースになっている。

茶屋にいた麻衣も携帯でそれを確認した。

したのだが――

 

 

「けぷ!」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ぐるじぃ……!」

 

 

あんみつと、お団子の食べ過ぎて、みらいは膨れた腹をむき出しにして寝転がっていた。

 

 

「ナイトフェイズもあるから、食べ過ぎるなって言ったのに……!」

 

「だって、美味しかったから……!」

 

「それは、まあ」

 

「麻衣が紹介してくれた店だし。友達と一緒にスイーツ食べるなんて、なかなか無かったし」

 

「え?」

 

「亜里紗はだいたい千里といたし、かずみは海香とカオル、里見は遥香にべっとりで……」

 

「わかったわかった。ほら、あまり喋るとよくないぞ。それより前に何かで見たが、寝るよりも立ったほうが楽になるのが早いって」

 

「じゃあ立たせて……! あとお腹もさすって」

 

「しょうがないなぁ」

 

 

 

 

 

一方、シャルモンでは海香が声を張り上げた。

 

 

「かずみ! 離れてて!」

 

「了解!」

 

 

全速力で逃げ出すかずみ。

海香は屈み、タイミングを伺う。

そんな中で、カオルがスライディングで地面を滑った。

 

 

「オラァア!」

 

 

そこで足を振り、サラマンダーの足を狙う。

しかし直撃はしたものの、ビクともしない。

そうしているとトカゲの口が、カオルに向けられた。

口内が赤く発行する。ギョッとしたが、そこで幾重もの光がサラマンダーに直撃して後退させた。

 

飛び掛かったナックルは、アローを振るって刃を向ける。

しかしサラマンダーはそれを回避すると、ガントレットから炎のレーザーを発射した。

ナックルはステップでそれを回避。続けざまに矢を放つが、サラマンダーも体を捻ってそれを避ける。

 

両者、走り出した。

走りながら炎弾を、矢を放ち合う。

爆発、延焼、熱の中を駆け巡り、陽炎が視界を歪ませる。

黒煙が空を染めていくが、直後、煙が吹き飛んだ。

茉莉が両手を思いきり叩いたのだ。その際に発生した衝撃波がビリビリと伝わっていく。

サラマンダーは不動だったが、ナックルに命中する筈の炎弾が消える。

 

 

【レモンエナジースカッシュ!】

 

 

ナックルはエネルギーが纏わりついている状態のアローを投げた。

それは回転しながらサラマンダーの肩に突き刺さり、動きを止める。

そこで踏み込み、ナックルは一瞬でサラマンダーの前に迫ると、果汁が纏わりついた右ストレートをお見舞いした。

果汁が弾け、水音と共にサラマンダーは地面を転がる。

 

一方でナックルは肩から落ちたアローをキャッチしていた。

弦を引き絞るが、そこでサラマンダーもガントレットから特殊な炎弾を発射する。

まるで花火だ。炎弾は空に上がると爆発して拡散、小さな炎の塊が無数に動き、追尾弾として一斉に茉莉を狙う。

 

 

「危ない!」

 

 

ナックルが茉莉を抱きしめ、背中でそれらを受けていった。

爆発が起き、ナックルは歯を食いしばるが、同じくして茉莉は両手を思いきり振っていた。

こうすることでパワーがチャージされるのだ。

そこでナックルは体を回転させながら横に移動した。炎弾を避けながら、茉莉を前に出す。

 

 

「えーいッッ!」

 

 

両手を重ねた茉莉。

そこでパワーアームが分離して飛んで行った。

ロケットパンチ、サラマンダーは腕を払い、裏拳でそれを吹き飛ばす。

しかしその脇に、ナックルが放った矢が直撃した。

 

 

「フ――ッ!」

 

 

それだけではない。

怯むサラマンダーの背後に宙を舞っている者がいた。

鎧武だ。既にジンバーレモンに変身している。

 

 

「ハァアア!」

 

 

着地と共にアローを振るい、その軌跡に扇のエネルギーエフェクトが重なる。

巻き込まれたサラマンダーは火花をあげながら後退していき、そこへ矢が直撃していく。

 

 

「そこッ!」

 

 

海香が走り、サラマンダーの背をとった。

踏み込み、本を押し付けて、それを殴る。

魔法を発動すると、ハンコを押すようにサマランダーの情報が本の中に記載されていく。

瞬く間に本は赤く染まり、タイトルもガーデンシリーズと書き込まれていった。

運営と繋がっているであろう存在から情報を得られれば、何かがわかるかもしれないと思っていたのだ。

しかし海香は目を見開き、本を放る。

地面に落ちた本は瞬く間に燃えてしまい、中身を確認する前に炭となった。

 

 

(流石にそう上手くはいってくれないわけね……)

 

 

サラマンダーの回し蹴りを避けて、海香は後ろへ下がっていく。

そこで気づいた。

いつの間にか、サラマンダーの手にあったガントレットが無くなっている。

それは腕から離れ、飛んでいたのだ。

トカゲの頭が鎧武へ食らいかかる。

 

 

「陽炎」

 

 

しかし、鎧武の前に鈴音が現れ、剣でトカゲを受け止めた。

 

 

「ザック!」

 

「任せろ!」

 

 

ナックルが放った矢がトカゲの頭部を吹き飛ばす。

改めて、鎧武は鈴音を見る。

 

 

「悪い! 助かった!」

 

「ええ」

 

「椿さんのことッ、聞いたよ……」

 

「何も気にする必要はない。椿が貴方を守ったように、私も貴方を守る」

 

「でもそれはッ、なんていうか、正しいのか……?」

 

「椿は間違わない」

 

「そうじゃなくて!」

 

 

そうしているとトカゲのガントレットがサラマンダーの手に戻る。

矢を回避しながら、炎弾を発射した。

鈴音は両手を広げて立つ。

武器は当然地面に落ちる。

 

 

「よせ! 鈴音!」

 

 

鎧武は鈴音の肩を掴むが、その手に感触はない。

陽炎によって、鈴音はさらに前に位置をとった。

炎弾はすぐそこだ。

 

 

「しま――ッ!」

 

 

時が止まる。

終わったと、一部の魔法少女は思ったかもしれない。

しかしその刹那の中を動けるものがいた。

佳奈美だ。高速魔法を使って一瞬でシャルモンに到達すると、状況を判断。そのまま全速力で鈴音のところまで走り、彼女を抱いて倒れた。

頭上スレスレを炎が通過する。佳奈美は青ざめながらも、そのまま鈴音を見た。

 

 

「危ないよ? 鈴音ちゃん」

 

 

ニコリと、ほほ笑んで。

 

 

「!」

 

 

拍手の音が聞こえてきた。

サラマンダーがガントレットを消滅させて、人間のような手を叩き合わせている。

 

 

『なかなかやるものね。予想外であると同時に、ひどく恐ろしいわ』

 

「なんだって……?」

 

『ガーデンシリーズを作ったのは国家防衛のためよ。わからないのかしら自らの危うさが。魔法少女に騎士、共に大きな爆弾を中学生や高校生が抱えているようなものなのよ?』

 

「そんなもん決めつけんな! そもそもお前らがふざけたことを始め――」

 

 

そこで後ろのほうに隠れていたブラーボは立ち上がり、前のめりになってその光景を眼に焼き付けた。

 

 

「あぁ……!」

 

 

消え入りそうな声が漏れる。

天から落ちてきた巨大な『鉄塊』によってシャルモンが押しつぶされ、崩壊していった。

 

 

「なんてことなの……」

 

『あら、軍人の貴方がお菓子屋さんだなんてそもそもがおかしい話だったのよ。牙を抜かれた哀れな狼、所詮、脆弱な人間の一つということね』

 

 

サラマンダーが指を鳴らす。

すると鉄球から手足が伸び、変形していく。

 

 

『I am Destroyer』

 

 

電子音が名を告げた。

できあがったのは巨大兵器、ガーデンシリーズの一体である『デストロイヤー』だ。

巨人をモチーフにしており、頭部中央にあるモノアイがギラリと発光する。

 

 

『executed』

 

 

目から放たれた衝撃波。

それは地面に直撃すると、ドーム状に広がり、鎧武たちをまとめて吹き飛ばす。

 

 

「ッ、一体ずつじゃないのか……ッ!」

 

『あなた達は強くなりすぎたのよ。スコーピオンを倒したのだから、埋め合わせはしないと』

 

「グッ!」

 

 

鎧武やナックルは倒れながらもアローを構えて矢を発射する。

しかしそれはデストロイヤーに命中するものの、効いているようには思えない。

それだけ向こうの装甲が強力ということだ。

あくまでもジンバーレモンならばダメージを与えられるというだけに過ぎないのだから。

 

 

『break』

 

 

デストロイヤーの肩が開き、ミサイルがむき出しになる。

ギガント。右に二発、左に二発、合わせて四つのミサイルが発射されて周囲に落ちる。

爆発、爆風、衝撃、鎧武や鈴音たちはかろうじて防御を行うが、それでもある者は壁に叩きつけられ、ある者は面白いように地面を転がっていく。

 

 

『フフフ、まあこのまま任せてもいいのだけど、ちょっといいかしら?』

 

 

サラマンダーが指を鳴らすとデストロイヤーの胸部アーマーが開いた。

そこにあるものを見て、一同はアッと声を漏らす。

そこには気絶したかずみが磔にされていたのだ。

 

 

「まさか!」

 

『そう、人質よ。これが一番楽な方法なのだから仕方ないわね』

 

「ふざけんなァッ! 汚ぇぞ!」

 

 

乗り出す鎧武だが、サラマンダーは人差し指を立てて前に出した。

たったそれだけのジェスチャーが今の状況では圧倒的な静止力になる。

もちろんそれをわかっていて、サラマンダーは逃げたかずみを捕まえたのだから。

 

 

『変身を解除しなさい。スマートにいきたいものだわ』

 

「……!」

 

『聞こえなかったの? 変身を解除しなさい。全員ね』

 

 

鎧武たちは視線を動かすが、誰もが首を横に振った。

どうあっても何かをするまでに、かずみは殺されてしまう。

騎士はアクションの際に、ロックシードをはじめとした各種ギミックをいじる時間があるし、魔法少女はガーデンシリーズの防御力を突破する手段がない。

佳奈美ならばなんとかかずみまでは近づけるだろうが、かずみは四肢を機械の拘束具で固定されていた。

ここにいるのは、鎧武、ナックル、茉莉、海香、カオル、ブラーボ、佳奈美だけ。

幸か不幸か、迷わず動き出しそうな麻衣もみらいもいない。

結果として、一同は全員、変身を解除しようとする。

 

 

「……どうしますか? プロフェッサー」

 

 

少し離れたところにあるマンションの屋上でマリカがソニックアローを構えていた。

 

 

『んー、まあいいんじゃない? もちろん葛葉紘汰の守護が最優先だけど。この調子なら大丈夫そうだ』

 

 

そう。大丈夫。

というのも、一人だけ変身を解除して前に出たものがいた。

 

 

「ワテクシを殺しなさい」

 

 

凰蓮は、自らが犠牲になると言い出した。

 

 

「それで、本当にかずみは解放してくれるのね?」

 

『もちろん。これはゲームのルールだもの』

 

「ダメだ! そんなのダメだ!」

 

 

カオルが前に出る。

先延ばしにはなってしまうが、今、凰蓮を失うよりは――

 

 

「あたしが――!」

 

 

しかしそこで鈴音が前に出た。

 

 

「かまわない。私が犠牲になるわ」

 

 

カオルはギョッとするが、いずれにしても凰蓮は首を振る。

静寂が訪れた。

燃える音だけが聞こえる。その中で、凰蓮は鈴音を見た。

 

 

「最期に一つだけ。貴女のことはカオルから聞いてるわ」

 

「………」

 

「海香。お願い」

 

 

海香は嫌そうな顔をして視線をそらしたが、わずかな時間で何がベストなのかを考えたのだろう。

結論として、一冊の本を取り出した。

カオルから鈴音のことを聞いていた凰蓮は、事前に海香へある『提案』をしていた。

なんのことはない、ただなんとなく、過去を見せたかった。

海香は魔法を発動する。本からページがはがれ、舞う。

そこには凰蓮の過去が記載されており、その映像が一同の頭の中に流れ込んでいった。

 

 

 

あの日、凰蓮が傭兵として戦場に来たのにはいくつか理由がある。

一つは、従軍当時からの仲間であるレイモンドの頼みであったということ。

一つは、金のため。

そしてもう一つは――

 

戦場では人間の命は簡単に失われる。

あるいは目をそらしたくなることが頻繁に行われるというのも、残念ながら事実であると。

秩序をなくした場所には、美は存在しておらず。

 

だからこそ戦地から戻ってきた後に触れるものは全てが新鮮に見え、全てが美しい。

戦場では嗅覚や味覚が鈍る。火薬、砂煙、あるいは爆風で散った泥が唇にへばりつく。

それから飛行機に乗って、シャワーを浴びて、街に戻れば、逆に味覚が研ぎ澄まされて、100円のハンバーガーですら涙を流したくなるほどに美味く思えた。

 

凡人が味わうことのない感覚の動き。

凰蓮は美術館に赴き、彫刻を見た。

涙が出てきた。それは信じられないことだったが、やはりどう考えても美しいから泣けたのだ。

それが凰蓮の拠り所だったのかもしれない。

 

 

きっかけは昔、戦いが激しい戦地に赴いた時が始まりだったと思う。

多くの死体を見たし、多くの死体を生み出した。

夜、凰蓮は鳥や虫の声に交じって男の野太いうなり声が聞こえるのに気づいた。

仲間に聞くと、ニヤニヤとしながら、気になるなら見に行けばいいと言われた。

実際に気になったので凰蓮が木々の向こうから聞こえるそれを見に行くと、そこには屈強な兵士と兵士が肌を重ねているのが見えた。

戦場では珍しくない。

仲間の男はニヤニヤしながら粉末状にしたクスリを鼻から吸っていた。

 

 

戦場(ここ)じゃ、こんなことでもしてないと、やっていられない」

 

 

なるほど、そうやって正気を保つのかと凰蓮は思った。

 

 

 

凰蓮も一つ、拠り所を作ってみた。

参考にしたのはかつてフランス軍の兵士たちが行った『13歳の少女』というものだ。

捕虜となった兵士たちが一つ空席を作り、そこに少女が存在するという事実を空想したのだ。

 

食事の際にはみんなの分から少しずつとりわけ、少女のぶんの食事を作る。

着替えの際には少女に裸体を見せぬように目隠しを作る。少女に誇れぬ振る舞いをしたものは、少女に向かって謝罪する。

夢幻の少女がほほ笑めば、兵士たちは癒しを覚えた。

 

いつしか誰もが少女の存在を信じ、他の捕虜たちが衰弱で死亡したり精神を病んだりするなかで、そのグループだけは生き延びたという逸話だ。

凰蓮は美の女神を想像した。それはこの世のどんなものより美しい。

女神がほほ笑む。

凰蓮は時に女神を憑依させ、美の体現者となる。

 

 

「それなぁに?」

 

 

ある日、凰蓮は難民キャンプで一人の男の子と出会った。

アロという少年だった。

人懐っこく、凰蓮の仲間たち、レイモンド、サイス、アイザックと一緒にサッカーをして遊んだ。

アロはサッカーを知らなかったので、とても楽しいとはしゃいでいた。

凰蓮は知っているJリーガーの名前を言った。

 

アロはいつかサッカー選手になりたいと笑った。

凰蓮はポケットの中にあったチョコレートを彼にあげた。

それを食べるのも初めてだったようで、アロは口の周りをベトベトにさせながらベロベロ舐めていた。

チョコまみれの手でアイザックのズボンを触った。

ファックと叫ぶ。みんなが笑った。

 

凰蓮はいう。

世界にはもっとたくさんの甘いもの、スイーツがある。

世界がよくなれば、アロもそれを食べられるさと。

 

翌日、敵兵によって難民キャンプが爆撃された。

凰蓮が駆け付けると、血まみれのアロを見つけた。

駆け寄ると、かろうじて息があることがわかった。

しかしどうあっても助からない。

凰蓮が戸惑っていると、アロが口を開いた。

最後のお願いがあるそうだ。凰蓮はそれを聞き逃してはいけないと、耳をアロの唇のすぐそばまで持っていった。

 

 

スイーツを食べてみたい。消え入りそうな声がそう言った。

 

 

両親にも食べさせてあげたい、友達にも食べさせてあげたい、弟にも、妹にも

そして、敵兵にも。

こんなにおいしいものがあるなら、きっと攻撃なんてしない。

みんなでチョコレートを食べれば、戦争なんてしない。

甘いものが食べたい。

アロはそう言って、死んだ。

だから戦いが終わり、凰蓮は銃を捨てた。

パティシエになるために。

 

 

「不思議なことではないわ。これもまた、お菓子を作ることと変わりないのだから」

 

 

そう言って凰蓮は前に出る。

 

 

「さあ! ワテクシの心臓を射抜きなさい! それがこの凰蓮・ピエール・アルフォンゾの示す美というものよ!」

 

「やめろ! シャルモンのおっさん!」

 

「そうだ! 凰蓮さん! あたしはそんなの認められない!」

 

「お黙りなさい! みずがめ座の坊や! カオル!」

 

 

凰蓮は鍛え抜かれた上腕二頭筋が目立つ太い腕を組んで、困ったようにため息をついた。

 

 

「……子供は難しいことは気にせず、大人に甘えていればいいのよ」

 

「!!」

 

 

それを聞いた時、鈴音の前に一瞬で違う景色が広がった。

 

 

「凰蓮さんッッ!!」

 

 

カオルの悲痛な叫びを耳にして、鈴音は我に返った。

赤いレーザーが凰蓮の胸を貫き、凰蓮はバタリと倒れる。

カオルは駆け寄ったが、無情にも凰蓮の体は瞬く間に炎に包まれて物言わぬ炎塊となる。

 

 

「ぐ――ッ!」

 

 

カオルは歯を食いしばり、拳をギュッと握りしめた。

掌から血が垂れる。

 

 

【凰蓮ピエールアルフォンゾ・死亡】

【魔法少女陣営:残り9人】【騎士陣営:残り7人】

 

 

一方で海香は空を見た。

というのも、デストロイヤーの胸部がけたたましい音をあげてスチームを噴射したかと思うと、拘束されていたかずみが『射出』されたのだ。

空高く打ち上げられたかずみは人間だ。当然、墜落すれば命はない。

皆、一斉にかずみを助けようと構えるが、同じくしてサラマンダーがガントレットを立ち尽くしているカオルへ向けた。

 

 

『スコーピオンを倒した夜は一人も犠牲者が出ていないんだから、もう一人殺しておかなくっちゃね』

 

 

炎弾が発射された。

それはカオルに向かって飛んでいき、爆発する。

 

 

『あら』

 

 

爆炎が収束する。

剣がそれを吸い込んでいく。

天乃鈴音は、カオルを庇い、立っていた。

 

 

「茉莉!」

 

「う、うんっ!」

 

 

その隙に茉莉は海香をつかむと、体を捻って思いきり投げ飛ばす。

コントロールはいい。海香はかずみをキャッチすると、青い球体状のバリアを張って落ちていく。

衝撃はあるが、バリアのおかげで二人に怪我はない。

 

 

「鈴音……」

 

 

カオルは鈴音を見る。

しかし鈴音はカオルを見ることができなかった。

自分でも、なぜカオルを助けたのかわからなかった。

ヒントがあるとすれば、それは記憶だ。

椿が笑っている記憶がある。あの時の彼女は凰蓮と同じようなことを言っていた気がする。

 

 

『師匠をはじめ、面倒を見てくれた親戚の方々。たくさんの大人たちに助けられ、守られて私は大人になりました』

 

「だから鈴音も……」

 

『だから鈴音も、甘えていいんですよ?』

 

 

椿は写真を見て笑っていた。

そこには子供の頃の椿と、彼女の母親になってくれた『師匠』と、親友兼ライバルが写っている。

 

 

『いつか鈴音にも、そんな人たちができます』

 

『ほんと?』

 

『はい。そしたら、私はとても幸せです』

 

 

冗談交じりに椿は舌を出した。

 

 

『私が死んでも、安心ですね』

 

 

鈴音はそんなことは冗談でも言ってほしくないと怒ったが、椿としては本音も交じっていたのだ。

 

 

「危ない!」

 

 

その時、鈴音は佳奈美に押されて地面に倒れた。

先ほどまで立っていたところを炎弾が通過していく。

 

 

「ねえ」

 

「え?」

 

 

立ち上がりながら、弱弱しく呟く。

 

 

「ともだちって、なぁに?」

 

「ほしいの?」

 

「?」

 

「じゃあ、なるよ! 私!」

 

 

鈴音はしばらくポカンとしていたが、やがて表情を変えた。

鬼気迫るものに。

陽炎、それで一気にサラマンダーの前に来る。

 

 

「私は!」

 

『!』

 

「私はァア!」

 

 

一閃。火の粉が飛び散り、鈴音はそれに身を隠して倒れた。

反撃の拳を避けて、鈴音はそのまま魔力を込める。

すると鈴音の持っていた剣が変化していく。

まずは色が『青色』になった。

さらにカッターのようなブレードが縮み、柄の位置がスライドしてフォルムが『銃』のように変わる。

 

いや、これは銃なのだ。

トリガーが追加されて鈴音はそれを引く。

その際に剣の中央にあるプレートのマークが、桜のようなものに変わり、五つの小さな玉のうちの一つが光った。

 

 

戒拿(かいな)!」

 

 

すると剣先から銃声と共に手錠型のエネルギーが発射される。

リングはサラマンダーの両足を拘束するだけではなく、鎖がつながっており、鈴音はそれを引いて引き倒そうと試みる。

しかしサラマンダーは踏みとどまると、力を込めてリングを破壊した。

だが向こうがガントレットを構える前に、再び引き金をひいている。

 

 

「紫陽花!」

 

 

青白い光の粒が無数に発射され、それが爆発して紫陽花の花のようになる。

なかなかの衝撃ではあったが、ガーデンシリーズを倒すまでには至らない。

サラマンダーは光の中を走り、鈴音を狙う。

一方で鈴音も走った。剣の色が淡い紫に変わり、蛇腹剣となってしなり、伸びる。

それはサラマンダーの胴体を縛るが、力を込められればすぐに引きちぎられてしまう。だからこそ鈴音はその前にプレートの球体を光らせた。

 

 

(かんざし)!」

 

 

鈴音の背後に魔法で作られた巨大な猫が姿を見せる。

猫はシオマネキのように肥大化した右手を振るい、三本の斬撃をサラマンダーへ直撃させる。

もちろんこれはただの足止めだ。次のプレートが光り、『(ふじ)』が発動される。

すると無数の鉄の棒が降ってきて、あっという間にサラマンダーは檻の中に閉じ込められた。

直後、檻が吹き飛ぶ。

飛んできた炎弾を、鈴音はいつもの緋色の剣で受け止めた。

 

 

「ぐぅうううぅッ!」

 

 

踏みとどまるが、やがて足が崩れ、そして爆発が起きる。

 

 

『残念ね。リーダーが死んだからこれで終わ――』

 

 

その時、炎の向こうに見えたシルエット。

 

 

『!』

 

 

機械の身でありなが、サラマンダーは激しい昂ぶりを感じた。

重大なエラー。

だがそれほどまでに、天乃鈴音は『美しい』のだ。

鈴音の服が消え、一糸纏わぬ姿の彼女がサラマンダーを見ていた。

そのあまりにも美しい肌を焦がしていいものなのか。迷い、躊躇する。

 

ちなみに、鈴音の剣は黄色い。

サラマンダーの様子がおかしいのは、『色者(いろもの)』という魔法技のせいだった。

魅了の力は機械には聞かないものだと思っていたが、人間の精神をコピーしたが故にシステムに魔法を食い込ませることができたのだろう。

実際の鈴音は服を着ている。

 

 

『あ』

 

 

サラマンダーの前に、鈴音はいた。

女神が来てくれたのだと錯覚しそうになるが、違う。

鈴音は剣を、サラマンダーの腹部に刺し入れていた。

 

 

『な――、なぜ!? どうしてお前の攻撃が私に!』

 

「たしかに、魔法じゃ傷をつけることはできなかったでしょうね」

 

『まさか!』

 

 

炎弾を打った時、鈴音は剣を盾にして受け止めた。

その際、鈴音は炎のエネルギーを吸収していたようだ。

今、刃に纏わりつく炎は魔法少女のものではなく、ガーデンシリーズが放ったエネルギーであった。

 

 

「賭けのようなものだったけど、成功ね」

 

 

相手のエネルギーを上乗せした一撃で、剣先だけではあるものの、確かに一撃が入った。

あとはもう簡単だった。

鈴音は剣を銃に変える。銃口は刺さったままだ。

 

 

『が、ガガガガがガガガ』

 

「自らの炎で焼け死になさい」

 

 

外部装甲の耐熱性能が高いようだが、内部はそうでもない。

トリガーを引くと銃口から噴射される火炎。それがサラマンダーを焼き尽くし、鈴音がバックステップで距離をとったと同じタイミングで爆散した。

魔法少女陣営のリーダーの恩恵、"強化システム"。鈴音は死んでいった魔法少女たちの力をすべて使うことができるようになったのだ。

 

 

 

 

 

「紘汰さん!」

 

鈴音がサラマンダーと戦っている時、龍玄がダンデライナーを飛ばして駆け付けた。

後ろには沙々も乗っており、龍玄が前を見ているのをいいことに、非常に嫌そうな表情を浮かべていた。

 

 

(わざわざ戦場に来るこたねぇですのにぃぃ!)

 

 

とはいえ、凌馬が直々に連絡を入れたのだ。

はじめは光実も通話のボタンをタップするか迷ったが、ナイトフェイズの情報もある。

なによりも狂人である彼は魔法少女陣営ではあるものの、騎士たちに無関心なわけでもない。

光実は紘汰を尊敬していた。死なないでほしかった。

 

だから迷いながらも、携帯を手に取り、ナイトフェイズがシャルモンで行われていると知ればやって来たのだ。

目にするのは巨大なガーデン。

ならばと龍玄は一つのロックシードを投げた。

皮肉にも、紘汰を助けたいと願いながらシドを殺したロックシードを投げたのだ。

 

 

「それ、使ってください! 兄さんからもらった強力なものなんです」

 

「おお! ミッチ、サンキュー!」

 

 

そこで鎧武のイヤホンから凌馬の声がした。

使い方講座だ。

レモンエナジーを外さなければガーデンシリーズに有効となるエネルギー(クェイサーアシッド)を付与できると。

なので鎧武は言われたとおりにロックシードを装填する。

 

 

『ロック・オン!』

 

 

デストロイヤーは大きくよろけた。

というのも空から巨大な『スイカ』が降ってきて、直撃したからだ。

大玉なスイカはそのままバウンドすると、鎧武のほうを狙って降ってくる。

 

 

「うッ、うわぁあああああ!」

 

 

ドンッ、と音がして鎧武はスイカに押し潰された。

一瞬ヒヤリとしたが、これでいい。

スイカにはきちんと使用者が通れるように穴が開いているのだから。

 

 

『スイカアームズ!』『大玉! ビッグバン!』

 

 

スイカが変形し、人型の巨大なパワードスーツとなる。

スイカアームズ、鎧モード。

使用者によって武器が自動で生成されるようで。

鎧武は上下に巨大な刃がついた薙刀、『スイカ双刃刀』を装備する。

 

 

「ハアアアアアアアアア!」

 

 

雄たけびを上げて鎧武はデストロイヤーに切りかかった。

相手も剛腕を前にしてその一撃を受け止めるが、ここでゲネシスコアにセットしていたレモンエナジーロックシードがエネルギーを供給する。

スイカアームズのカラーリングが変化し、赤い部分だったところが黄色く染まる。

 

 

「し、知ってる沙々さん。スイカはもともと黄色だったんだけど品種改良で赤くなったんだ。トマトとかに多く含まれてるリコピンが、赤くしてるんだって……!」

 

「へぇそうなんだぁ! 光実くん賢いですっ! 尊敬!」(今する話かそれ)

 

 

そこで黄色の一閃が迸る。

大きな音と上げて噴射する火花のシャワー。

バチバチと音を立てている、デストロイヤーの右腕の断面。

 

 

『kill you』

 

 

デストロイヤーは後ろに跳ぶと、前面のアーマーを開き、中にあった巨大なエネルギープレートを露出する。

そこに光が集中すると、巨大なレーザーが発射された。

しかしそこで鳴る電子音。

大玉モードに変わった鎧武は、文字通り巨大なスイカのままにゴロゴロと転がってレーザーをかき消しながら突き進んでいく。

対して、デストロイヤーもエネルギーを注ぎ込む。

レーザーはさらに太くなり、スイカの動きが完全に止まった。

 

 

『ソイヤ!』『スイカオーレー!!』

 

 

大玉が発光。

強化されたおかげで、再び前に進んでいく。

その競り合い、しばらく続いたが、やがてエネルギーが暴発して爆発が起きた。

 

 

『ジャイロモード!』

 

 

爆煙を突き破って鎧武が空に舞い上がる。

飛行形態となったスイカアームズは、搭乗者の鎧武がむき出しになる代わりに、遠距離の攻撃に特化する。

五本の指先、両手合わせて十個の砲口からスイカの種を模した弾丸が連射され、デストロイヤーの装甲を穴ぼこにしていく。

そうしながら鎧武は猛スピードで前進、途中で鎧モードに変わり、双刃刀を構える。

 

 

『ソイヤ!』『スイカスカッシュ!』

 

 

巨大なスイカ状のエネルギーが発射された。

デストロイヤーに直撃すると、その中に閉じ込めて拘束する。

一方で光り輝く双刃刀。鎧武は叫び、それを振り上げた。

 

 

「よくもシャルモンのおっさんを! 絶対に許さねぇ!」

 

『!』

 

「輪切りにしてやるぜッ!」

 

 

スイカアームズの手首が回転し、まるで扇風機のように双刃刀が回る。

 

 

「セイハーッ!」

 

 

無数の黄色い線が縦横無尽にスイカを駆ける。

 

 

『FUC――ccccc……』

 

 

スイカが乱切りになり、細切れになる。

同じくして中にいたデストロイヤーも黄色い果汁と共にあたりに散布し、そのまま蒸発するように消えていった。

 

 

(わ、輪切りじゃねぇ……!)

 

 

沙々は、なんとも言えない表情でそれを見ている。

 

 

 

 

戦いが終わり、ユグドラシルが呼んだ消化部隊によってシャルモンの炎上は収まった。

とはいえ、建物は跡形もなく崩壊しており、もちろんそこに住んでいたかずみたちの荷も、全て炎の中に消え去った。

海香は気絶したかずみを膝枕にしている。

見たところ外傷はなく、無事のようだ。

 

 

「鈴音……」

 

 

変身を解除した紘汰は、鈴音を見る。

彼女は戦った。もしかしたら何かが起きて、心情の変化が起こったのかもしれない。

それが知りたかったが、彼女はバツが悪そうにしながらフラフラとシャルモンを去っていくだけだった。

 

 






ちょっと次の更新は日が開いてしまうかもしれません。
申し訳ありませんが、またやったら、よろしくお願いします。
へへ(´・ω・)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。