仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
八月はちょっとリアルの都合で更新できそうにないんで、この次の話まではかなり間があくと思います(´・ω・)
廃ボウリング場。
行き場を無くした人間たちで結成した『ネフィリム』というグループのアジトであり、ここが十七夜の家だった。
あかつき村。
それが彼女の出身地だが、『村民同士が殺し合う』という謎の事件が起きてから廃村状態となり、生き残ったものたちは散り散りになって暮らしている。
今もたまにオカルト系の
あの日なにがあったのか、まだハッキリとしたことはわかっていない。
いつもと違ったことがあったとすれば、綺麗な蝶が飛んでいたことだけはなんとなく覚えているが、それ以外はまったくいつもどおりの一日だったはずだ。
なのに夕暮れ時には、川が真っ赤に染まっていた。
臓物や首が流れていたのを覚えている。
塩屋の娘だった友人はもちろん、弟ともろくに連絡はとれていない。
救いは警察関係者に一人生き残りがいたことと、友人だったバイトリーダーマナティー先輩こと
この二人の人脈で、順調に生き残りの話はつかめてはいる。
なんでも村長の娘はエジプトにタイムスリップしていたらしい。
そんなの十七夜一人では見つけられるわけがない。
この調子ならば、というところだろう。
ちなみにボウリング場には最低限の電気や、トイレやシャワールームなどは知り合いが使えるようにしてくれたため、それなりに快適な暮らしはできているようだ。
今日も何人かが修理されたボウリングで遊んでいた。
みんな十七夜を見ると深々と頭を下げて挨拶をする。
しかし今日はそれよりも早く、かりんに釘付けとなっていた。
それは奥の方でジュースを飲んでいたチームメイトの
「なにそれー! やばー!」
「なの……」
「本気バブちゃんじゃん!」
「なの……!」
かりんが抱いていたのは赤ん坊だった。
先ほど薄明光線に乗って天から降りてきたのだ。
裸の状態だったので、今は十七夜が買ってきたバスタオルを巻いている。
「かわじゃん。ボーイなん? ガールなん?」
「女の子だが……ん?」
十七夜は訝し気に目を細める。
「画伯。ちょっといいか?」
「どうしたの?」
「この子、髪の毛……生えていただろうか?」
現在、かりんが抱いている女の子は一歳くらいに思われるが、空からキャッチした時はもっと小さかったような気がしたのだ。
「え? 覚えてないの……でも……」
かりんの言いたいことはわかる。見たままが全てではないのかと。
「とにかくママかパパに会わせてあげたいの。きっと向こうも赤ちゃんがいなくなって悲しがってるに違いないの……!」
「それなー……ってあれ? なにこれ?」
そこで衣美里が赤ん坊の手の甲に黒い円を見つける。
軽くこすってみたがとれない。汚れでもなければ、マジックかなにかで描いたものでもないようだ。
「タトゥーとか?」
「まさかなの!」
「ふむ。しかし輪の形をしているため、ホクロではなさそうだ。もし仮にタトゥーなのだとしたらこんな赤ん坊に彫ろうとする親が心配だな。虐待から逃れてきた可能性もある。慎重にこれからを決めたいが……画伯、どうする?」
「とりあえず、おまわりさんたちのところに行こうと思うの!」
「ほえー、アッシーとりかっぺもさ、さっき警察行ったんだよねぇ」
アッシーとりかっぺ。
チームメイトのあだ名のようだ。
「え!? リーダー逮捕されちゃったの!?」
「あはは! だよね、うける。あーしも最初はそう思ったんだけど違うらしくてさー。なんか今、世界やばいっぽくて。カフェオレみたいになってんだって。うけるよねー!」
「世界が? そういえばさっき、大きなタワーが見えたな。たしかユグドラシルタワーだったか」
「ぜんぜん気づかなかったの!」
十七夜は腕を組んで唸った。
「自分が知らない技術か……あるいは魔法少女の力で一瞬で建設されたのかと思ったが、どうやらそういうわけではなさそうだな。もしかしたらこの赤ん坊もそれが原因かもしれない」
「ほえ? なんでー? 世界がやばくなんのと、バブちゃん参上が繋がってるってこと?」
「薄明光線の中で、この子は落ちてきたというよりは、ゆっくりと下降してきた。こんなことは普通に考えてありえない。なにかが起こっていると考えるべきだろう」
「まあ空からやってきた時点でやばいよねー。なんだろー、宇宙人とかかなぁ? それか……えーっと、なんだっけアレ? なんか鳥みたいなのが運ぶってテレビで見たことあったけど」
「鳥さんなの?」
「うん。あれ? それともキャベツだっけなー? トンカツだっけなー?」
「あ! わたしも聞いたことあるの! コウノトリさんっていうのが赤ちゃんを……」
「どうした? 画伯」
「忘れちゃったの……どうしてコウノトリさんなんだっけ……なの」
「だよねー、あーしも忘れちゃったぁ! てかさ、赤ちゃんってどうやってできんだっけ?」
「え? それは……なんていうか……もにょもにょしたら、できるの……」
「え!? なにそれ!」
「神(※衣美里のあだ名)は、保健体育の授業を受けていなかったのか?」
「バリサボってたんだよねー。なぎたんは知ってんの? おせーておせーて!」
「む、むぅ……」
「あー、そのリアクション! さては、なぎたんもサボってた感じ? おけー、ちっと待ってねぇ。あ、もしもし、りかっぺ? うん、おつー、あのさ赤ちゃんてさー、どやってできんの? うん、うん、ん? あはは! なにそれうける。なんか照れてるっぽい」
『んなことも知らんのか! 種付け本気セッ●スに決まってるだろ!!』
『こら、みやこさん何を言ってるの。あとでお説教よ』
『わあ! やめろー! 本当のことを言って何が悪い―!』
なんだか向こうで聞こえてきたような気がするが、十七夜たちが触れることはなかった。
「てかさー、その子、マジかりに超なついてるよねー」
たしかに先ほどから赤ちゃんは一度も泣いていなかった。
かりんのほっぺたやらを触りながら、キャッキャと笑っている。
「安心するの。あなたはわたしが絶対に守ってあげるの! 約束なの!」
かりんはとてもとても小さな小指に触れ、にこりと微笑んだ。
◆
「どうぞ」
警視庁・二階会議室。『MPD SAUL』の文字と、桜の大紋が描かれたバッジを付けた『
このみは高校生だが、警察の制服を着ている。
同じような少女たちが他にもいて、
三人とも壁際に並んで立っており、一番端にはこのチーム『警視庁未確認生命体対策班・ネオブロッサム』のリーダーである
「ありがとう」
「でもかわいそう。警察はまだ女性にお茶くみなんてことをさせているのね」
「望んでやってますから」
「そうよ。想像力が乏しいわね。だいたい本気で気の毒に思うなら自分で淹れればいいじゃない。上っ面だけの同情で内心は見下してる感が性格の悪さを象徴しているわ」
深海は一瞬だけムッとしたように表情を硬くするが、すぐにニヤリとほほ笑む。
「あら手厳しい。けれどそういうところもチャーミングなのよね。流石は私の親友ですこと」
「親友? 誰が! 気持ちの悪い……!」
「喧嘩なら後にしてくれ」
ネフィリムのリーダーである
「降ろせ!」
水城が力を緩めると、ひなのはストンと落ちた。
ストンと、落ちた。
つまり水城に抱えられると足裏が床から浮いていたということ。
故に、ひなのは、舌打ちをひとつ。
まあそれはいいとして。
白衣には『G』の文字の下にアギトのクロスホーンような翼が描かれているワッペンをつけている。
ネオブロッサムのように『Gフォース』というチームを組んでいる証であった。
「先ほどは失礼! 無学なアホギャルどもに生命誕生の仕組みを教えてやったが、多少不適切な言い回しがあったことは認めよう。正しくは種付け本気ではなく、着床確定ラブラブ――」
「水城、ひなのさんをつまみだして」
「よせやめろ! わかった謝る!」
ひなのは一度咳ばらいをし、スマホを確認した。
電波は通っているので連絡はできるし、ネットも問題なくできている。
そもそも世界が繋がったことは、ニュースにすらなっていない。
「まるで、もともとそうだったかのように街の人間は記憶を改変されてるみたいだな。ゲームのシステムに組み込まれた者たちと似ているわけだが、肝心のインキュベーター共には連絡つかず。まったく、無能な運営どもだ!」
ひなのは不機嫌そうに歩みを進め、部屋の中央に浮かぶホログラムモニタの前に移動する。
「各々、モニタか近くにあるタブレットを見ろ。一旦状況を整理するぞ」
ひなのの指の動きに合わせてモニタが映像を変えていく。
「知ってのとおり、我々はそう簡単には出会えないが、今はここにいる。たとえばゲーム盤。円環の理が襲撃され、魔法少女やライダーのデータを『再構成』して創られた世界だ」
部屋には城戸真司や鹿目まどか、さやかと仁美がいる。
「続いて未来世界」
葛葉紘汰や天乃鈴音。ダンスチームのメンバーである佳奈美と光実も同席していた。
運営がゲーム発展のために『追加要素』として、ゲームが終了しても最初に巻き戻さなかった世界を創った。
それが未来世界である。
「最後に我らがふるさと、ミラクルワールド」
津上翔一とタルトも話を聞いていた。
葦原涼の隣には、ついてきた
円環の理が襲撃された際、タルトに連れられたまどかが、魔法少女のデータを僅かに掴んで逃げた。
それは些細なもので、すぐに消滅するはずだったが、ある『奇跡』が起こって生まれた世界がある。
それがミラクルワールドだった。
ここで、ひなのが咳ばらいを一つ。
「もともと、それぞれの世界は因子継承者によって橋ができていたわけだが……」
真司が現在のゲーム、フールズゲーム・ジ・アンサーを始めた際に、翔一たちは覚醒した。
翔一は、もともとホストである『ショウさん』に入れ替わる形となり、他にも小沢澄子が裁判長としてゲーム盤で働いていたり。
それだけではなく、未来世界では過去の偉人として存在していたタルトも、ミラクルワールドではまなかたちと同じ時代を生きる学生として存在していた。
つまり翔一やタルトは、複数の世界に同時に存在していたのである。
これが因子継承者。
所謂、『橋』の役割を持つ者たちだった。
今は完全に融合しており、その橋の役割は『ウォールナッツ』というまなかのレストランになっている。
店を介して、それぞれの世界に繋がれるようにはなったのだが……
「ここまで溶け合うように混じり合うとは、珍しい」
窓からは未来世界のシンボルであるユグドラシルタワーが見える。
いつもはウォールナッツの窓からでしか見えない景色だったのに。
それを聞くと、紘汰は肩を竦めた。
「あー……俺たち、ここにいて平気なのか? 何かしたら未来に影響が出ちゃうんじゃ……」
バタフライエフェクトという用語は聞いたことがある。
ちょっと物に触れただけでも、世界に大きな影響を与えてしまうのではないかと臆しているようだ。
「未来とはあるが、所詮魔獣が用意した別々の舞台だ。今は切り離されているため、パラドックス云々の心配はないだろうよ」
「それを聞いて安心したぜ。このみちゃん、お茶頂くよ」
「はい! どうぞ! 私たちが作ったハーブが入ってるんです!」
ひなのは既にディケイドの話を聞いているらしい。
世界を破壊し、修復した際に、近くにあった龍騎世界とまどか世界が繋がってしまったことが全てのはじまりともされる。
「似た世界は惹かれ合う」
事実、のちに黄金の果実の影響で、魔法少女たちに吸い寄せられて鎧武世界までが融合したとされている。
一方で、アギト世界は少し特殊だった。
もともと龍騎の世界に翔一たちが存在していたのだ。
真司と美穂が足を運んだタイ料理屋の店主が、アギト世界を呼び起こし、同化した。
「再構成。リ・イマジネーションと言ったか」
真司は現在、辰巳シンジという青年とコンタクトが取れる。
この辰巳シンジもまた『仮面ライダー龍騎』である。
これは龍騎のデッキが二つ存在しているなんていう話ではない。
「最近じゃマルチバースなんて用語をよく映画なんかで耳にするが、あれと近い。パラレルワールドや並行世界など、定義は各媒体で異なるかもしれないが、同じような意味でつかわれたりもするだろう?」
もう一つの龍騎。確固たる概念の確立。
城戸真司も、辰巳シンジも、どちらも本物の龍騎なのだ。
しかし辰巳は城戸真司がいなければ生まれなかっただろうとされているため、再構成であろうとされていた。
「まあ、そもそもアタシら全員がフールズゲーム用に『再構成』されてるんだから、リイマジみたいなもんだが……」
ひなのは虚空を睨む。
「クソ忌々しい暁美ほむらも、ゲーム盤じゃアタシの知っているほむらではないみたいだったしな。ウォールナッツが具現したのはそもそもアイツのアライブ覚醒も原因の一部らしいが。まったく! がるるるる!」
ミラクルワールドに住むほむらは『博士』という個体だが、なにやらマウリッツエンジンというエネルギー絡みで、ひなのの恨みをかっているらしい。
本来は科学者であるひなのの父親が発見したのだが、同時期に発見したほむらが先に発表したのだ。
「なんて
ひなのは、自嘲気味に笑った。
「……とにかくだ! 異なる運命をたどった
ひなのは大きく咳ばらいをする。
「アタシが言いたいのはだ。つまりリイマジの人間にはいくつか種類があるとわかっているってことだ。それこそ、ほむらと博士みたく些細な差があるものとか、はたまたタイ料理屋店主だった津上翔一のようにかぎりなく
一同の視線が、『三人の魔法少女』に向けられる。
まどか、さやか、仁美。
「あたしらも、そうってわけね」
「そういうことだ。お前は名前法則も違っていたな」
「あたしは、
正確には、まどか、さやか、仁美と同じ顔、同じ声をした『別人』に。
◆
みき。
水色の髪を右のサイドテールにした少女はそう名乗った。
彼女こそ、カッシーンたちと龍騎が戦っている最中に現れた助っ人であった。
「わたしは、
桃色の髪を左のサイドテールにした少女がそう名乗った。
逃げたカッシーンを仕留めたのは、かなめだった。
二人は魔法少女ではあるが、衣装のデザインがさやかたちとは違っている。
どちらかといえば騎士のような恰好のさやかと違い、みきは侍のような和を彷彿とさせる格好で、かなめも袴姿と、こちらも和テイストであった。
「
緑色の髪をポニーテールにした、仁美と同じ顔の少女も座っていた。
しづきは、ひなのたちが街を歩いているところを見つけたらしい。
「三人のリ・イマジネーションが他世界からやってきたわけだな」
「んー? ちょい待ち。あたしのほうがオリジナル、オリジンかもしれなくない?」
みきが言う。なんだか偽物のように言われることは気分のいいものではない。
「たしかにその可能性もあるが、それを論ずることが今必要なことかと言われると違うはずだ。ここはスムーズな事態解決のため、お前らがあくまでもお客さんということにしておいてくれ」
「だってさ、みきちゃん」
かなめがほほ笑むと、みきは釣られたように苦笑した。
どうやら関係性は、まどかとさやかとほとんど同じようだ。
「おっけー了解。みきさん大人になりまーす。ま、そもそも、あたしはあたしだし?」
「うんうん。みきちゃん偉い偉い」
かなめがみきの頭を撫でていた。ひなのは何度か頷く。
「そうだ。それでいい。ちなみに、みきとかなめは同じ世界の出だが、しづきは二人とは別世界から来ているようだな」
「えっ? そんなことまでわかるのか?」
真司の問いに、ひなのは頷いた。
一つ、そもそも本人たちがそう言っている。
まどかたちのように、いつも三人組だったそうだが──
「あたしとかなめ、もう一人は仁美だった」
みきは三人組の内訳を語った。
そしてしづきも──「私の友人は、さやかさんとまどかさんですわ」と口にする。
「彼女らが口にしたまどかや仁美ってのは、みきの世界の、しづきの世界のってことなんだが、理解したか?」
「……ああ」
嘘だ。全員がそう思ったし、事実、真司も理解していないが、馬鹿だと思われるのがイヤだったので適当に頷いただけである。
「難しい話じゃない。同じ顔や声をした、同じ名前の人間が他世界にもゴロゴロいるってだけさ」
もう一つ。
みきかなめペアと、しづきが別世界の人間であることがわかったのは、ひなののチームメイトの能力のおかげだった。
合図を受けて、その少女が前に出る。
「Gストーム所属、
「怪しい宗教じゃないからな。ガチだぞガチ。とにかく旭に調べてもらった結果――」
守護霊と言っても、人間や動物などモチーフがあるわけではなく、言ってしまえば色のついた『
これは真司やまどか、紘汰や鈴音、翔一やタルト、すべてに共通していた。
なのに、かなめたちの守護霊は靄状ではなく泡のような形をしていたらしい。
こんなパターンは見たことがない。
つまり、この世界の人間ではないと考えることができるわけだ。
そしてしづきの背後には炎のように揺らめく守護霊が見えている。
これも、彼女にしかないパターンである。
「それだけじゃないぞ。アタシの『化学魔法』でも調べたが、鹿目まどかと、圓かなめは99%本人判定が出た。そしてこの残り1%に、人間の構造の微妙な違いを見出した。我々がAパターンとするならば、かなめとみきはB、しづきはCになる」
ここで、かなめが手を挙げる。
再構成というシステムはわかった。
同じような存在が他にもいたというのは驚きだが、みきが言う通り自分は自分だ。今更アイデンティティが揺らぐということはなかった。
であれば、問題はもっと根本的なことにあると。
「わたしたち、どうしてこの世界に来たのかがわからなくて……」
それは、しづきも同じようなものだという。気づけばこの世界にやってきていたと。
「灰色のオーロラが目撃されたことはわかっている。あれには世界を移動する力があるらしいから、それが原因とみてまず間違いないだろう」
ひなのは以前、水城が夢で『王』に会ったという話を思い出した。
名は、オーマジオウ。
彼は黄金の『輪』を背に、水城へ警告じみた言葉を送ったそうだ。
『ライダーは運命を繰り返す』
まるで神託だ。
それがなにを意味していたのかはわからないし、本当にただの夢だった可能性もある。
だが龍騎世界の話を知ると、あながち間違いでもないように思えた。
フールズゲームにおける佐野の死に方は、非常にオリジンと酷似していた。
他にも北岡が東條に向けて英雄の何たるかを説くシーンは幾度となく繰り返されたという。
「似た運命を繰り返す。なら、もしかしたらリ・イマジネーションされたフールズゲームも広い宇宙のどこかにはあるのかもな」
それを聞いて光実が目を細める。
心当たりがあるようだ。鎧武の世界の記憶と、彼が味わったフールズゲームでの立ち回りのことは覚えている。
どうやら同じような選択をして、同じような苦しみを味わったらしい。
「つまり、参加者を拉致しようとしている最中だった……?」
どこぞのライダー世界の何者かが、フールズゲームおなじく別世界のまどかを拉致して殺し合いでも行おうとしているのではないか。
その最中に何かが起こって、この世界にやってきたのではないか? そういうことだった。
「だったらそっちも助けてあげないと!」
真司は声をあげるが、ひなのはフムと唸る。
「……言っておいてなんだが、果たしてそんな単純な話で終わるものだろうか?」
「失礼します」
「!」
そこで会議室の扉が開き、
後ろからは彼の妹である『北條ルナ』がついてきている。
青髪のロングで切りそろえた前髪、清楚なイメージを受ける少女だ。
「……!」
ルナは梨花と目が合うと、小さく手を振った。
梨花も嬉しそうに微笑み、小さく手を振り返した。
「話はだいたい聞いています。外部からの侵略者が原因、ということですね」
「あっ、は、はいっ!」
なにやら、ひなのの様子がおかしい。呼吸が荒くなり、顔も真っ赤だ。
だがまわりは特に触れることはなく、北條も会話を続ける。
「目撃されたヘルハウンド、オルトロスゴールド、オルトロスシルバー。三体のモンスターに加えて、謎の男であるルーク。魔獣でも魔女でもないらしいじゃないですか。おそらくは三つの世界とはべつの世界の要因……おそらくライダー側でしょうが、いずれにせよ我々は他世界のごたごたに巻き込まれたわけだ。とにかく大切なのは、世界が繋がったということ。ゲームどころではないでしょうね」
「そ、その通りですっ! さ、さすがは北條さん。えへ、へへへ……!」
「都さん。あなた頭はいいみたいだけど、男の趣味が最悪ね」
小沢はピクリとも表情を変えず、北條を見ていた。
「意気揚々と入ってきたわりに内容が薄いのね。氷がたっぷり入ったハイボールを二時間放置していたくらいの薄さだわ。つまり最低ってこと。だから私はビール派なのよ」
「なんですかそのたとえは! なにを言っているんですかあなたは!」
「世界が交わって大変なことが起ころうとしているだなんて、今までの話を聞いていれば誰でもわかることよ。ましてやあなた、もう終わった話もしているわ。なのにそれを得意げにベラベラと恥ずかしくないのかしら。そんなことだから北岡秀一に何度も負けてるのよ」
「あ、相変わらず口の減らない人だ……! そもそもあれは貴方が北岡弁護士に甘いのが原因であって」
「牛が好きなのよ」
「えこひいきだ!」
「嘘に決まってるじゃない。貴方が純粋に負けてるだけなのよ。人のせいにする暇があるなら──」
言い合いは終わらない。いつものことだ。
小沢や北條は警察関係者ではあるが、かなり特殊な立ち位置だった。
というのも、小沢は裁判長、北條は検事といったように、別の仕事をしているのだ。
なぜなら彼女らが対応するのは人間の犯罪者ではなく『魔女』をはじめとしたモンスター。それに対抗できる力に触れるが故に、同僚や容疑者、あるいは己に対して真の公平性を保てるのかという話である。
神に近づきすぎてはいけない。これは本郷警視総監の意向である。
故に小沢たちは潜入捜査の名目で違う職を与えられて、必要に応じて権限を与えられる立場となった。
特別と言えばいいが、クビともいえる。
唯一、氷川だけは警察に留まることを許されたが、それは彼を支える魔法少女たちが奮闘してくれたからであり、氷川自身も力を持つことの危うさを理解しているつもりであった。
深海と水城も同じようなものだ。国のためならば何をしてもいいというマキャヴェリズムをこじらせた結果、軍を追放された。
ただそれは表向きであり、裏では支援を続けられているのが現状ではあるが……
「べ、勉強でも復習は大切だ! 状況を見直すこともまた新たな閃きの元となる。は、はは! ですよね、北條さん?」
「ええ。流石はひなのさん。あなたはわかっている人だ」
「え、えへへ、へへっ!」
「モンスターの行動パターンを比べてみるとゴールドだけパターンが違います。ミラクルワールドに向こうが狙っている何かがあったのではないでしょうか」
「す、すごい! そこに気づくなんてなんて聡明なんだろうか。か、かっこいい……! 付き合いたい……ッ!」
「ん? なんですか? 最後の方が小さくて聞き取れませんでした」
「い、いえ! なんでも! ど、ど、どうぞ話を続けてください!」
「情報が薄いというのならば、今ここで濃くすればいいだけのこと。かなめさん、みきさん、しづきさん、なんでもいいんです。なにか変わったことや、気づいたことはありませんでしたか?」
「んー……そういえば、オーロラが見えたときに大悪魔がどうとかって聞こえた気がする。それから一瞬でこっちに来たような」
その言葉を聞くと、真司やまどかたちゲーム盤世界の住人の顔色が変わる。
「悪魔……? ほむらちゃんは、そうだけど……」
「そういえばオーロラ使える
とはいえ、わざわざ『大悪魔』と強調されている点も気になる。
「いずれにせよ──」
ひなのが手を挙げる。
「ミラクルワールドにしかないものに注目したいところだな。まだこっちが知らない何かがある可能性もあるわけだが……」
となると。翔一や深海の視線が、北條の妹である『ルナ』に向けられる。
「!」
その時だった。廊下の方から悲鳴が聞こえてきたのは。
「なんだ!?」
真司たちが慌てて外に飛び出ると、逃げ惑う人々に混じってメガゼールたちが見えた。
一瞬、佐野のことが過るが、どうにもおかしいと感じる。
メガゼールたちの『目』がおかしい。
「彼女が……創造主様ですかな?」
曲がり角から歩いてきたのは、茶色のスーツとハットに身を包んだ紳士だった。
彼が只者ではないことはすぐにわかった。目の部分に、緑とオレンジのモザイクがかかっているのだ。
同じものがメガゼールたちにもある。
つまり──、顔が、わからない。
「ルナ、下がって」
「う、うん。ありがとう梨花……」
梨花が誰よりも早く、ルナを庇うようにして前に立った。
それを見て紳士は笑う。
なつかしむように。憐れむように。馬鹿にするように。
「かわりませんね、人間は。グレゴリーの予言の通りだ」
最後は、嬉しそうに。
男は心の底から思った。
私は間違っていなかった。あの日、あの時、デッキを手にして変身したあの瞬間からずっと思っていた。
正しくなかったから、死んだのか?
いや違う。デッキを破壊され、脱落したのは『たまたま』だった。
梨花とルナの間にあるものはなんだ? 特別な絆じゃない。ありふれ、濁った、ただの泥。
「我々は欲望の中で生きています。正当化したい欲望には耳障りのよい綺麗な名をつけ、貶したい相手のそれには汚い名をつける。私は傲慢ではない、傑出していたのです」
「なにをブツブツとわけのわからんことを。うるさいオッサンだ!」
ひなのが舌打ちを零す。すると、後ろにいた旭が叫んだ。
「気をつけるであります!」
彼岸魔法が異変を探知したようだ。
「なんと禍々しい……ッ! ヤツらは怨念の集合体であります」
「お、怨念!?」
聞きなれない言葉に怯み、真司は後ろに下がる。
「あの紳士、人間の形をしているでありますが、それは見かけのみ。実際は数多の死が重なって生まれた概念的存在……! 悪霊であります!!」