仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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第4話 亡霊

悪霊。

旭は、現れた紳士をそう称した。

ひなのは唇の端を吊り上げ、まじまじと紳士を観察する。

 

「なるほど。たしかに人間にしか見えないが──」

 

そうしていると紳士はスーツの裏からカードデッキを取り出し、前にかざす。

おそらくインペラーのデッキかとは思われるが、紋章部分にもモザイクがかかっており、断言はできない。

 

「そもそもそのモザイクはなんだ? いやらしいものを隠しているのか? まったく!」

 

「まさか。本質ですよ」

 

「んん? どういう意味だ?」

 

「龍騎の世界は何度も何度も時間を繰り返し、殺し合いをしてきました。おっしゃる通り、我らは亡霊です。幾度となく繰り返されたライダーバトル、それだけの参加者が存在し、それだけの犠牲者が生まれる。その血肉こそが我々を創った元素なのですな」

 

そのとき、紳士の口にモザイクがかかった。

あの『一言』を隠したのである。騎士になるときに口にする――アーマードライダーになるときに口にする、私は今から変わりますという一言を。

 

「誰しもが、デッキを手にした。私はそのなかのたった一人」

 

紳士はデッキをVバックルへ装填。

鏡像が重なり、インペラーが姿を現すが、目の部分には変わらず緑色のモザイクがかかっていた。

 

「行け」

 

インペラーが指をさすと、メガゼールたちがとびかかっていく。

 

「面白い!」

 

緑色の一閃が見えた。

ひなのが魔法少女に変身すると同時に、飛び回し蹴りでメガゼールの頭部を打ったのだ。

 

ひなのは倒れたメガゼールの腹を踏みつけ、袖からエメラルドグリーンの液体が入った三角フラスコを取り出してそのまま下に落した。

ガラスが割れ、メガゼールに液体がかかると、炭酸水のようにパチパチと音を立てる。

直後、そのパチパチが爆発に変わり、メガゼールが消し飛んだ。

 

「魔女、魔獣ときて、お次は亡霊か! 科学の対ともいえるオカルトに出会えるとは光栄だ」

 

次の瞬間、壁や地面から無数の『手』が伸びていく。

それらは次々とメガゼールたちの足首や角を掴んでいき、動きを止めてみせた。

 

「だが残念!」

 

ひなのの背後にいた旭が、武器である銃剣を地面に突き刺している。

そこから魔法が伝わり、怨念の腕を召喚したのだ。

 

「もう見飽きてるんだなこれが!」

 

ひなのが指を鳴らすと、旭が頷いた。

殲滅(せんめつ)呪縛(じゅばく)。亡者たちの怨念を召喚する魔法技である。

紫色に淀んだ無数の腕が、ガゼルを引きちぎった。

肉片さえ離さず、腕はそのまま地面や壁に戻っていき、消えていく。

 

「これはこれは、恐ろしいことです」

 

「私も恐ろしくて震えてる。意味深に現れた侵入者がアホすぎてな。これだけライダーや魔法少女がいるのに向かってくるなんて正気か?」

 

「……フフフ」

 

インペラーは手を後ろに組んで立っている。そこには随分とわかりやすい余裕が見えた。

 

「私はただ挨拶に来ただけですよ。これよりあなた方が対峙する存在が、どのようなものであるかのね」

 

次の瞬間、硬い『拳』が天井を破って現れた。

そのままインペラーの角を掴み、壁に押し当てると、そのまま壁を破壊して外へ放り出す。

 

「なら観察する時間を与えないことが大切ね」

 

深海が、ぶちぬいた穴から下の様子を確認する。

インペラーが駐車場に落下し、倒れている。

 

「水城、さっさと処理してちょうだい」

 

後ろにいた水城は小さく頷くと前に出る。

いつのまにか手に持っていたのは、『Gバックル』。それを腰にもっていくと、自動でベルトが巻かれて装着が完了した。

水城はそのまま歩みを進め、壁の穴から落下する。

 

「えっ!?」

 

それを見ていた真司やまどかはヒヤリとしたが、どうやら水城は足を踏み外したわけではないようだ。

 

「変身」

 

淡々と口にした言葉を、バックルが受理。

音声認識が行われ、バックル中央部から、ひなのが開発したナノマシンが噴射されてスーツを形成していく。

 

「暁美博士の阿呆は、デカくすることが正しいと思っていたようだが逆だ逆」

 

バックルにあるマウリッツエンジンからエネルギーが供給され、ナノマシンは範囲内であれば永久的に活動が可能となったのだ。

 

「小型化こそが進化の証明だ。小さいのは素晴らしいことなんだよ諸君」

 

硬い二本の足が地面にめり込んだ。

着地を完了させた仮面ライダーG4は、ゆっくりと顔を上げてインペラーを見た。

 

『アドベント』

 

インペラーが立ち上がると同時に周囲にメガゼールたちが出現していく。

それは離れた室内も同じである。龍騎をはじめとした騎士たちが変身した際に現れる鏡像が幾重も生まれ、それが重なり合うことで新しいメガゼールが召喚された。

先程ほとんどを始末したと思ったが、再び数えきれないほどの量が湧いて出てくる。

しかもそのうちの一体は、北條ルナのすぐそばに具現しており、すぐに彼女に向かって手を伸ばした。

 

「危ない!」

 

梨花が変身し、ルナを抱いて飛ぶ。

地面に倒れるところで反転し、梨花が先に背中から地面にぶつかった。

 

「ルナ! 大丈夫!?」

 

「ごめんね梨花……! ありがとう」

 

「平気だ――よッッ!」

 

自分をクッションにすることでルナを衝撃から守ったのだ。

さらにルナを抱き寄せながら武器であるコンパクトをメガゼールへ向けた。

鏡からは光弾が放たれ、メガゼールの頭部に直撃。後退していくなか、メガゼールは背中に硬いものが当たるのを感じた。

 

「汚い手で(ルナ)に触れるのはやめなさい!!」

 

銃口だ。

北條が引き金をひくと、銀色の弾丸が発射されてメガゼールの腹部を貫いた。

弾丸は意思を持ったかのように他のメガゼールたちも蹴散らすと、そのまま軌道を変えて北條の胸に着弾する。

これはひなのが作ったナノマシンの弾丸だ。

着弾と同時に液体のように体に広がっていき、強化スーツに変換。

北條は『V-1』へと変身を遂げ、持っていたピストルもナノマシンによって強化されて『V-1ショット』へと姿を変える。

 

「氷川くん。貴方たちも戦うのよ!」

 

「はい!」

 

氷川が横を見ると、『ネオブロッサム』の少女たちも頷き、一斉に変身していく。

まず、杖を振るったのは秋野かえでだ。

巨大なガーベラの花が現れ、中央部である花芯に氷川を乗せると、エレベーターのように下降させて地面に着地させる。

 

さらにかえでは、もう一度杖を振るう。

地面を突き破って無数の茎が出現していき、それらの先端には巨大なホオズキが実っていた。

赤い提灯の中にある果実が光り輝くと、パトランプのように回転し、ご丁寧にサイレン音まで聞こえてくる。

直後、提灯部分が開いてオレンジ色の丸い実が落下していき、そこで氷川はGバックルを装備した。

 

「変身!」

 

バックルが氷川の体形をサーチし、一瞬で肉体をインナージャケットで覆う。

同じくして、落下中のホオズキの実が割れた。

中に入っていたのはパワースーツの一部だ。それらは氷川をサーチすると、肉体めがけて飛んでいく。

胸部アーマーであるコンバーターラングが胸に。腕力を強化するパワーリストレシーバーや、ジュラルミン装甲のアーマーパッドが腕に。他にもヒップガードやレッグガードなどが次々と装着されていく。

最後に、氷川はマスクをキャッチして、顔に押し当てた。

仮面は既に氷川の頭部形状を記憶しており、髪の毛を巻き込まないように後ろ側が閉まると『仮面ライダーG3』が変身を完了させる。

 

「フッ! ハァ!」

 

G3は向かってきたメガゼールを殴り、蹴った。

この二発でメガゼールは吹き飛び、消し飛んだ。

これはチームメイトである広江ちはるの固有魔法の影響だ。

彼女の『正義魔法』は、相手の悪意に応じてG3の性能を上下させる。

つまり極端な話ではあるが、仮面ライダーG3は無垢なる赤子には勝てないが、世界を滅ぼそうとする邪悪な魔王には勝てるというわけだ。

この能力は肉体強化の他にも、相手がどういう存在なのかを察することにも使える。

このパワーから見ると──

 

「ろくな存在ではないようね!」

 

小沢が吠えた。一方で、装着したイヤホンから声が聴こえてくる。

 

『小沢さん! 解析完了しました!』

 

別室にいる尾室(おむろ)だ。

普段は牛丼屋店長ではあるが、モンスターが現れた際には小沢共々『G3ユニット』としてサポートを行うのだ。

今もG3の視界カメラから一瞬でデータを読み取ったようで、インペラーの中にいる紳士が人間ではないことを確定させる。

 

「でかしたわ。情けは無用のようね」

 

小沢の声は、各魔法少女たちが耳の裏につけている通信シールから伝達可能である。

 

「春名さん、花を添えてあげて」

 

「了解です!」

 

このみが指を鳴らすと、G3の装甲が色とりどりの花で包まれた。

さらに桜の花びらがその姿を完全に覆い隠し、やがては風に乗って花吹雪が散っていく。

姿を見せたのは各装備が進化した強化形態、G3-X。

 

「こちらもよ」

 

深海の合図を受けて、旭が前に出る。

 

「了解であります。それでは! 水城少尉!」

 

「ああ。わかってる。来い……!」

 

G4は両手を広げ、背を向けた。

旭が銃剣を撃つと、銃口からはもちろんその周囲からも無数の怨霊たちが放たれる。

淀んだ闇を纏った髑髏たちは、大口を開け、まるで食らいかかるようにG4の背中に吸収されていった。

 

「ぐうぅううゥウウ……ッ!」

 

怨念がG4を完全に包み込んだ。

水城は雄たけびを上げ、闇を殴りつける。

黒い幕が破れた。同じく、各装備が強化された強化形態・G4-Z(ゼータ)が姿を現す。

ナノマシンの散布量が増え、それはまるで黒い霧のようにG4の周りを浮遊していた。その様はまさに悪霊にとりつかれているようだった。

 

「頼んだわよ。らんか」

 

『はーい』

 

ゲームが得意な魔法少女、『智珠(ちず)らんか』が通信に応えた。

アジトで待機していた彼女は、エナジードリンクを飲み干すと、缶を投げ捨ててパソコンモニタの映像をゲーム画面から、G4の視界映像に切り替える。

らんかは魔法少女に変身すると、武器であるコントローラーをPCに接続。カラフルに光るヘッドホンをつけて、ゲーミングチェアにもたれかかった。

ちなみに彼女がつけたのは、ただのゲーミングヘッドホンではない。

魔法少女の力をG4とシンクロさせる『MGヘッドギア』である。

 

「千手God knows」

 

ランカがボタンを押した瞬間、G4の体中から『腕』が映えた。

周囲にあったナノマシンが一瞬で腕状のパーツを形成したのだ。

それはG4の腕であったり、クレーンゲームのパワーアームであったり、大小さまざまなサイズやデザインのものが至る所から生えて、ハリセンボンのようなシルエットに変わる。

太腿や、顎。爪の部分や複眼部分からも伸びる腕。まさに異形の化け物だ。

さらにナノマシンが散布され、集合して銃の形になる。

 

らんかのプレイしているシューティングゲーム『バンバンシューティング・ヴァロペクスナイトトゥーン』に登場するものと同型だ。

中距離のアサルトライフル、近距離のハンドガンやショットガン、遠距離のスナイパーなど、ありとあらゆる種類の銃が生まれ、浮遊している。

無数の腕がそれらを掴み取り、銃口をターゲットに向けた。

 

「♪」

 

らんかが鼻歌を口ずさむ。好きなゲームのBGMだ。

G4の視点は、さながらFPSのゲーム画面だ。

いつのまにかゲーミングチェアからも無数のマジックハンドが生えており、その一つ一つが別のコントローラーを持っている。

 

これらは、らんかの意思で操作を行うことができ、G4から生えている腕を自由に操ることができるのだ。

らんかの指が激しくスティックを弾き、ボタンを押し込む。 

G4が持つ銃から、無数の弾丸が発射され、次々とメガゼールを撃ちぬき破壊していった。

 

一方、G3ユニット。

かえでが走っていた。

 

「こうしてっ!」

 

かえで杖を振るうと、地中から次々と太い蔓が伸びてメガゼールを縛り上げていく。

 

「いきます!」

 

ブレード武器『デストロイヤー』を装備したG3が後を追って走る。

加速する途中、足裏が地面から浮き上がり、ホバー移動で一気に加速。縛られていたメガゼールたちを蔓ごと斬り裂いていく。

G3が回転しながら減速するなか、ちはるが頭上を飛び越えた。

彼女の手にあるのは小銃武器・スコーピオン。

ちはるは空中で反転。頭を地面に向けながら腕を伸ばし、下にいるメガゼールに向けて射撃する。

 

「コネクト!」

 

銃口から放たれたのは弾丸ではなく、『古銭』だった。

地面に落ちた際にチャリンチャリンとわざとらしい音が聞こえてくる。

それらは散らばり、地面に留まる。

 

少し離れたところでは、このみが武器である大きなハサミを振り回していた。

武器を振るった軌跡に花々のエネルギーが残り続け、そこに触れたメガゼールたちにダメージを与えていく。

 

「ストームブルーム!」

 

このみが手をかざすと、散らばっていた古銭がカラフルな花びら状のカッターに変わった。

花吹雪はメガゼールを包み込み、次々と爆発させていく。

 

「これはこれは、厄介ですな」『ファイナルベント』

 

静観していたインペラーが動いた。

またも大量のメガゼールが生まれ、一か所に集中していく。

できあがったガゼルを固めて作った巨大なボールだ。インペラーは飛びあがると、それを思い切り蹴り飛ばして、魔法少女やライダーたちを押しつぶそうと試みる。

 

必殺技(ウルト)きりまーす」

 

PC画面にあるゲージが満タンになり、発光しているのを確認。

らんかがスティックを押し込むと、必殺技が発動されるようになっているらしい。

G4から生えている無数の手が発光し、持っていたすべての銃や、G4の複眼から『ランカニカルビーム』と呼ばれる高エネルギー光線が発射される。

 

「あぶねぇ!!」

 

思わず鎧武が叫ぶ。

四方に飛んでいく攻撃はおかまいなしに味方や周囲をも巻き込むが、まどかが結界を張って味方や周辺の建物を保護していた。

その間に攻撃は加速する。G4は自身の両腕でミサイルランチャー・ギガントを構え、ケーブルをベルトの右側に接続。

左にあるボリュームを回し、バックルにあるマウリッツエンジンから電力を供給。

そのまま四つのミサイルを発射し、メガゼールの塊に直撃させた。

 

「ウギャアアアアアアアアアアア!!」

 

メガゼールたちの断末魔が聞こえてくる。

爆発に巻き込まれ、あとかたもなく消し飛んだようだ。

 

「フフフ、フハハハ! これはこれは!」

 

空中にいたインペラーは笑う。

G3が、GXランチャーを向けている。

さらに夏目かこが固有魔法である『再現』の力を使って、ランチャーを複製。

かこ、ちはる、このみ、かえで。ネオブロッサム全員がランチャーを構えていた。

アトリビュート・デルタと呼ばれる三角形の隊列を組み、インペラーを睨んでいる。

 

「楽しみですな。あなたたちが、死ぬのが」

 

ランチャー先端にある赤と黄色の『GX弾』が発射された。

合計で五つの弾丸がインペラーを捉えた。

陣形の影響で弾丸が強化されていたのか、爆発は大きな花火となって空を彩る。

面白いように吹き飛んだインペラーは、途中で変身が解除。

墜落した紳士は地面を転がっていく中で、まるで溶けるように肉体が崩れていった。

モザイクが全身を侵食していく。紳士は最期まで笑いながら、消滅していった。

 

 

警官や業者が壁に開いた穴を塞ごうとして悪戦苦闘している。

氷川や北條たちも頭を抱えており、その様子をひなのはジッと見ていた。

 

「困っている北條さんも素敵だぁ」

 

隣で座っていた深水はため息をつくと、ひなのの胸をつまむ。

 

「乳首をねじるな大尉! どういう注意の引き方だ!」

 

「敵はやはり、北條ルナを狙いに来たのかしら?」

 

「まあ確認しに来たのは間違いないだろう。ヤツは世界創生のキーマンなわけだし」

 

ひなのは、少し離れたところにあるベンチで並んで座っているルナと梨花をチラリとみる。

 

「あのッ、わたしもお話、聞いてもいいですか?」

 

すると、『圓かなめ』が話しかけてきた。

 

「話を? そりゃまあ、構わんが……」

 

「この世界のこと、知りたくて。それに、その……」

 

「?」

 

「実は、わ、わたしもで」

 

「???」

 

ひなのは最初、かなめがなにを言っているのか理解できなかったが、視線の先に梨花とルナがいることで察することができた。

 

「この世界を創った理由が『愛』だって聞いたんです……けど……」

 

「あ、ああ……なるほど。そうだな、まあ教えてもいいか」

 

月のエル。それが北條ルナの別名だった。

ミラクルワールドは奇跡の世界だ。文字通り、通常の運命では得られない奇跡から派生するIFの世界である。

数多くの並行世界で連続殺人犯だった男も、ここでは正義のために戦う戦士になっているかもしれない。

それが、奇跡というものだからである。

つまり、いかなる常識も、関係も、存在も、結末も関係ない。

ここでは、すべてが許される。

 

「かつて綾野梨花は、幼馴染だったルナに恋心を抱いていたが、ルナは彼女の気持ちに気づかず恋人をつくってしまったんだ。それがきっかけで梨花はルナの心を手にするために魔法少女となったわけだが……願いの力で心変わりをさせて寝取ったことに罪悪感を抱いてしまってな。結局ルナを諦めてもともとの恋人とうまくいくように修正を行ったわけだ」

 

しかし梨花も予想していなかったことが起こる。

 

「ルナが、賢者の石を拾ったんだ」

 

「なんですかそれ?」

 

「万能の宝石とでもいえばいいか。それを手にしたルナには知識が与えられた。魔法少女のことや梨花の想い、それらを知って、ルナは梨花に願いで与えられた恋心ではなく、本当の恋心を抱いてしまったんだな」

 

ルナは思った。梨花を手に入れたい。

その願いを叶えるために天使を呼んだ。

 

「ルナはそれをキュゥべえだと思ったが、違った。オーバーロードテオス。その上位存在は梨花の願いを叶えるためにエルロードの位を与えて天使に変えたんだ」

 

そうやって誕生した月のエルは、梨花と結ばれるIFの世界を想像し、創造した。

それがミラクルワールドなのである。

 

「つまりこのアタシが北條さんとお付き合いできる世界線でもあるってわけだ。なんだかんだあのタイプは気づいたら小沢と結婚してそうだがそうはいくものか! この世界ではアタシが……ふ、ふふふはは!」

 

「あらいいじゃない。小沢さんは私が引き取るわ」

 

深水は、そう言いながら笑っていたが、すぐに訝しげな表情を浮かべた。

 

「でも、ひなのさん。ルナさんは今、所詮『でがらし』でしょう?」

 

「そう。もはや月のエルにそこまでの力はない。所詮は生まれたて、世界創造なんて大それたことをやってのけたはいいが、そこで力のほとんどを使い果たしてしまったし、賢者の石も扱いきれなかったために今は持っていない」

 

賢者の石は現在、津上翔一のオルタリングの内部にあるようだ。

ひなのはしっかりと見ていたが、襲撃の際に翔一も変身してメガゼールを抑えていた。

当然、それをインペラーも確認していたはず。しかしルナを見ても、アギトを見ても、リアクションは薄かった。探しているものを見つけたという様子ではない。

 

「むろん、そう振舞っている説もあるが……おそらく本命じゃないんだろうな」

 

「どうしてわかるんですか?」

 

「賢者の石は複数ある。もっと高性能なものがあるって話だ」

 

アギトに変身することは素晴らしいが、スケールは小さい。

それより、もっと大きなことを成し遂げるものがある。であればそちらを狙うのは自然なことだ。

 

「さっき、それとないタレコミがあってな。一応仲間を向かわせたが……どうなることやら」

 

一番強力なものは、ひなのたちにもどこにあるかがわからないという。

そちらを先に見つけられるのは避けたいが、相当強力な守護者がいるのはわかっているので、そう簡単には手に入れられないはずだと思いたい。

 

「逆に言えば、それを突破するだけの力を持っていたら厄介だな。それに、ただ手に入れるだけならばまだしも『使い方』を理解されていたら本当にマズイ」

 

ゲーム盤、未来世界、ミラクルワールド。

三つの世界はミルフィーユやマトリョーシカのように重なり合っていた。

世界構造を理解しているものであれば、繋げることは可能だろう。

そのなにものかが万能の石を手に入れれば、文字通り世界を自由に操れるようになる。

 

「屈辱だわ。国家防衛こそが私の使命なのに。また後手後手なのね」

 

深海は憂いのため息をついて、頭を抑えた。

 

 

 

 

北岡法律事務所。

 

「いやぁ困るよねぇ。世界が融合しちゃったらしいじゃない。そうなるとさぁ裁判も大変なわけよ」

 

「はぁ」

 

「いろいろ連絡とらないところとかあってねぇ、吾郎ちゃんとめぐみがそっちらへんは対応してくれてるんだけど……」

 

「はぁ」

 

「おまけに化け物も出たみたいで。さやかに呼ばれてるんだけど……俺も忙しくてさぁ」

 

上条恭介はじっとりとした目で、棚を見た。

なぎさの力で病気が抑えられたからなのか。楽しそうにアウトドアをしている北岡の写真がたくさん並んでいる。

一番右には、北岡と吾郎とめぐみとさやかがサングラスをかけてピースをしている写真があった。

上条は目を細める。改めて、間抜けな笑顔でピースをしている幼馴染をジッと見つめる。

ちなみに壁にあるカレンダー、本日の日付には、『ダイビング』と書いてあった。

 

「忙しい……ですか」

 

上条の目線の先には浮き輪がある。

吾郎は気づいたのか、そそくさとしまっていた。

肘で近くにいためぐみを小突くが、まったく気づいていないのか、彼女は水中メガネを外さない。

 

「残念ですが、僕も今日はヴァイオリンのレッスンがありますので。有名な方で、無事を確かめないと」

 

「それが終わってからでいいよ。あっちもまだなーんにもつかめてなさそうだから」

 

「はぁ」

 

「もちろんお礼はするさ。ほら、あれ見てよ」

 

北岡が顎で示したのは、事務所の入り口に置こうとしている自販機だった。

 

「吾郎ちゃんの餃子が絶品なのよ。もう城戸のなんて目じゃないからさぁ、今度冷凍して売ろうと思ってるんだけど……試作品でよければ持ってってよ」

 

「はぁ」

 

促され、自販機の前に立つ。

ボタンを押そうとすると、吾郎が来て「お願いします」と一言。

 

(タダじゃないのか……)

 

上条は千円を入れてボタンを押して餃子をゲットした。

 

(普通こういうのタダだけどな……)

 

「油を引いて、お湯を入れて蓋をして、蒸し焼きにしてください。詳しくは書いてありますから」

 

「はぁ」(タダだけどな……まあいいか)

 

「小さい男でしょう?」

 

めぐみは、青色のブルーハワイを飲みながら笑っている。

 

「秀一は貴方に嫉妬しているのよ上条くん。だって秀一ってば、ヴァイオリン習ってたけど本当に普通なんですもん」

 

「めぐみ。黙って」

 

「自分以外の男が天才だって世間からモテてるのが気に入らないのよ。たとえそれが中学生でもね」

 

「めーぐみ」

 

「でも上条くんだって悪い話じゃないでしょ。美樹さんに会う口実になるんだもん。ドライアイスをたっぷり入れてあげるからその餃子、彼女と一緒に頂きなさいな。なんなら私の冷凍ラーメンもつけてあげるから。もちろんタダでいいわよ?」

 

「口実って……べつに僕らは……」

 

「あら、いけないのね。美樹さん愚痴ってたわよ。上条くんってば全然情熱的じゃないんだものって。演奏者がそれじゃあダメダメね」

 

「情熱的……ですか」

 

「ええ。吾郎くんを見習ってほしいわね。彼ったら毎日熱い抱擁や口づけを私に与えてくれるの。ね、吾郎。そうでしょう?」

 

「初耳です」

 

「ふふふ、またまた、恋人じゃない私たち」

 

「恋人ではないです」

 

「まあ、照れちゃって」

 

「めぐみさん。記憶の捏造はやめてくださいとあれほど……」

 

「御覧なさい上条くん。こういう可愛さはありなの。奥手とは違うのよ」

 

「………」

 

「な? 天才くん。見たらわかるだろ? 女ってのはたまにこういう無敵の化け物がいるんだよ。なるべく素性が知れた相手とうまくいったほうがいい。幼馴染とかな」

 

「はぁ」

 

「なになに、その表情。あれ? さやかと付き合ってないんだっけ?」

 

「いや、なんていうか……」

 

気まずさを覚え、視線を泳がせていると、床に変なものがおいてあるのが見えた。

なんのオブジェかと気になっていると、北岡が答えを教えてれる。

 

「あれが気になるのか? あれは金だよ。金塊だ。俺、金転がしておくの好きなんだよ。ゴージャスだし、貧乏人がいちいち釘付けになるの面白いだろ?」

 

「………」

 

「金投資の面もあるけど、純粋に俺は金が好きなのよ」

 

上条は肩を竦める。

はて、金? そこでふと、さやかに言われたことを思い出す。

 

『黄金が似合う男になりなよ』

 

大きくため息をついて、直後、微笑んだ。

 

「ま、今回は手伝ってあげますよ」

 

「んん?」

 

「僕は最強の騎士ですからね。当然、ゾルダよりも」

 

「……ふぅん、言うねぇ。まあ、ガキはそれくらいがいいんじゃない?」

 

北岡も、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

こうして、用事を済ませた後、上条は警察に向かうことにした。

途中、中沢くんから連絡が来て合流する。

仁美からインペラーに襲われたと報告を受けたらしい。

 

「ところで、なんで餃子なんて持ってんの?」

 

中沢に質問され、上条は事務所でのうんぬんかんぬんを伝える。

 

「かぁー、呆れた!」

 

「えぇ?」

 

「付き合ってるって言われたときに言い返せなかっただぁ? 情けないぜ上条」

 

「いや、だって……なんだかそういうのって恥ずかしいだろ? 違う?」

 

「ダメだってそんなの。最近はさぁ、もっとストレートに愛を伝えた方がいいんだって! 俺が見てるマギチューバ―もそう言ってたよ? ほら、このチャンネルを見てお前も女心を勉強したほうがいいな!」

 

中沢はスマホを取りだし『よし坊とみけちゃん』というカップルチャンネルを表示した。

 

「よし坊はな、毎日みけちゃんに大好きだって伝えるんだ。そういう情熱的なのが大事なんだよ。ほら、今日も動画をアップしてる。なんだろうな? 二人とも珍しくスーツ姿だ。でもまあよし坊ってのは、本当に十秒に一回は好きって言ってるからさ、どんな動画であろうと見てろよ、どこを飛ばしてみても、だいたいみけちゃんとラブラブなところが――」

 

『そういった、よしくんの愛の連呼が日々、重たく感じるようになっていって……私の中でプレッシャーになっていきました。私たちはお別れしますが、今日まで応援してくれた方た──』

 

中沢はスマホの画面を切ると、ポケットにしまって空を見る。

 

「今日はいい天気だよな。最近は晴れてるからな。まあたまにはそういうのもあるよな。うん。でもほら、俺は違うから。見とけよ上条、俺はお前にほとんどのことは勝てないけど、ラブアンドパッションなら遥か上を──」

 

そうしていると警察についたので、中沢はそそくさと会議室に向かい、扉を開けた。

 

「仁美さん! 大丈夫だった!?」

 

「……中沢くん?」

 

「はい! あなたの中沢が馳せ参じました! 無事でしたか!?」

 

「え、ええ」

 

「いやぁ、そんなことより! 仁美さんってば今日もお変わらず美しい!」

 

「え? あ、ありがとうございますわ……?」

 

「安心して、俺が来たからにはもう危険な目には合わせません。騎士・中沢、仁美さんをお守りすることこそが幸せでございます!!」

 

どうだ上条。これくらい言ってみるもんだ。中沢は振り返りウインクを放つ。

 

「そうですか。『変わらず』……ですのね」

 

「へ?」

 

仁美の声が聞こえてきたので、仁美から視線をそらして左側を見ると、そこには仁美がいた。

 

「えええ!? な、なんで仁美さんが二人!?」

 

「………」

 

「あれ? なんかっ、あれ? なんか怒ってる?」

 

「あーあー、中沢やっちゃったねぇ」

 

仁美の隣にはケラケラと笑うさやかがいた。

 

「あれ? さやか?」

 

「よっす恭介。センセーの代わりで来てくれたんだって。ごくろーさま!」

 

「うん。べつにいいんだけど……」

 

そこで、さやかの隣にいたまどかが、上条達に事情を説明する。

 

「じゃあこの人は仁美さんじゃなくて、しづきさん?」

 

「ええ。初めまして」

 

「あ、あー! なるほど! どうりで少し印象が違ったわけだ。ははは、ねえ仁美さん!」

 

「………」

 

「あれ? 仁美さん? おーい」

 

「………」

 

「はは、おかしいな。あっち見てる。俺が話しかけてるのにあっち向いてる。仁美さーん!?

 

「知りませんわ! ふん!」

 

真っ青になっている中沢を見てみんな笑っていた。

そうしていると、夏目かこがファイルを持ってやってきた。

 

「まどかさーん」

 

「かこちゃん!」

 

二人は手を繋いではしゃぎ合っている。

同じ小説が好きという繋がりがあるらしく、なかなか会える機会もないのでテンションが上がっているようだ。

とはいえ、今は仕事中。かこはそうだったとファイルを見せる。

 

「かなめさんたちの滞在場所を用意したので確認をと思ったんですけど……あれ?」

 

かなめとみきの姿がない。いつのまにか消えている。

 

「二人ならさっき廊下で見たよ」

 

上条が部屋から出ていくところを見たようだ。

みきが鬼気迫る表情で、かなめの手を引いていたのだという。

 

「どうしたんだろう……」

 

心配だ。まどかとさやかは、かなめたちを探しに行くことに。

奥の方に向かっていたらしいので、心当たりといえばトイレくらいだった。

中に入ると個室が一つ閉まっていたのだが、なんだか辛そうな呻き声のようなものが聞こえている。

 

「ちょ! さやかだけど、どうかした? 具合悪い?」

 

さやかがノックをするが、返事はない。

だが扉の向こうからは激しい呼吸の音と、うめき声がしてくる。

それだけではなく、扉の下からは血が流れてきた。

 

「は!? ちょッ、大丈夫!?」

 

さやかはすぐに変身すると、扉の上を飛び越えて中に入る。

 

「ぎゃあああああああっ!」

 

「!?」

 

扉を破るような勢いでさやかが飛び出してきた。

様子がおかしい。

まどかも変身しようと構えながら、個室の中を見たが──

 

「!?」

 

わけが、わからない。

とにかく、それほどまでに――とんでもない。

壁や床は血まみれで、だが見たところ中にいた二人に傷はない。

むしろ、半裸の二人の表情は恍惚だった。

かなめと、みきが、触れあっていた唇を離す。

二人の口からは大量の血液が溢れてきた。

 

 






すんません
今月も更新は少なめになりそうです(´;ω;`)

でもみなさん。朗報です。
新しく始まった仮面ライダーガヴ、これめちゃくちゃおもろいです。
今まだ二話しかやってなくてたぶんyoutubeで見れると思うんですけど、今のところ令和1あります。

あとラストマイル観にいくために見始めたアンナチュラルとMIU404もおもろいですわ。
アンナチュラルはまだティーバーで無料配信してる前半しか見てないんですけど、どっちもED流れるタイミングがめっちゃいいんですよね。
ガッチャードとかドンブラもそうですけど、歌流すのやっぱいいですよねぇ
ただ、これ他の作品にもありますけど「〇〇見てなくても面白いよ」みたいな進め方って、あんま好きじゃなくて。
なんかそういうのって結局、絶対見といたほうがいいに決まってるだろみたいなのばっかなんで、そういう意味では視聴ハードルは高めなのは良くも悪くも……みたいなところはありますか。
ちなみになんですけど、僕はMIU1話見てからアンナチュラル2話まで見て、その後にMIU最終話まで見て、アンナチュラル3話以降見てるんですけど、これ、かなり気持ちいいです(´・ω・)b

それでいうと上の理由で渋ってたんですけど、スパイダーバースをようやく見たんですけど死ぬほど面白かったですわ。
今から信じられないこといいますけど、みなさん、これスパイダーマン詳しくなくても面白いです。
いやまあ、僕はなんだかんだ実写版はほとんど見ていたんですけれども。
もっとコア向けなもんかと思っていましたが、普通に独立したスパイダーマンの物語として楽しめました。
特にね、二作目アクロスザスパイダーバースのラスト。
これはマジで本当に魂が震えましたね。
あんな風なかっこよくて燃える場面を書けるようになりたいなと思いました(´・ω・)b

あとさらにさらにそれでいうと金曜にテレビでやってたベイマックス見たんですけど、これも死ぬほど面白かったです。D系の作品では一番好きかもしれません。
いい意味でのおもてたんと違う感。マーベルなんでかなり王道なヒーローものというか、要素の使い方も上手いしかなり良かったですね。
ヒロとゴーゴーのおねショタはどこに行けば……見れますか?(死亡)

まあ今あげた作品でも見ながら、気長に待ってもらえると嬉しいどすえ(´;ω;`)

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