仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
「今日からここが君の部屋だ」
「うん……」
サキは複雑な笑みを、ゆまに向ける。
マミが死に、その存在が世界から抹消されるにあたって、当然マミの家も消滅する。
空室になっており、家具も全て消えていた。そこにゆまを住まわせる事は不可能だ。
話し合った結果、サキがゆまを引き取る事になった。
F・Gが始まった今、ゆまを一人にさせておくのは危険極まりない。
美穂にはまだF・Gの事は伝えていない。お願いはできなかった。
ゆまはペットではない。女の子を住まわせるなんて、どうやって親に説明すればいいのか。
だからこそ今現在、一人で住んでいるサキがゆまを引き取る事になったのだ。
「サキお姉ちゃん……」
「ん、大丈夫だよ。君は私が守るから」
ゆまの頬を涙が伝う。
マミが死んだ事は、当然ゆまの心に大きな傷を残した。
あれから少しは時間が経ったとは言え、悲しみが消える訳がない。
それはサキ達とて同じである、マミを死なせてしまった後悔や苦しみ。
自分達は誰を恨めばいいのか? 結果的原因を作ったのは須藤だが、彼もまた大切な仲間だった事に変わりはない。
それにマミの遺言とも言えるだろうあの言葉。
須藤を恨まないでと言われてしまったら、一体どこに怒りを向ければいいのか。
ましてやこれから始まるF・G。サキもゆまも、当然あの魔法少女集会には参加していた。
確実にゲームに乗っている人間がいる。
殺されるかもしれない。その負担は大きく、ゆまは定期的にパニックを起こして泣きじゃくっていた。
それを見てしまえば、サキも泣きたい気分になる。
「………」「………」
夜、食事を取る二人。
テレビではバラエティー番組が放送されているが、とても笑う気分にはなれなかった。
少しでも明るい気分になれたら――、とは思ったが、どうやら無駄らしい。
サキとゆま、二人だけの食事。料理もサキが作った様だ。
「おいしいかい?」
ゆまは頷いた。
しかし、ふと疑問が浮かぶ。サキの家はそれなりに大きい。
なのに――
「ねえ、サキお姉ちゃん」
「ん?」
「お母さんとお父さんは?」
「………」
サキの家にある物を見ていると、一人暮らしではない事がわかる。
だがどんなに時間が経ってもサキの親が姿を見せる事はなかった。
いや、だからこそサキはゆまを引き取れたのだ。
「少し、事情があって……」
「ふぅん。そうなんだ」
ゆまも幼心にこれ以上は聞いてはいけない気がして、押し黙った。
広いリビングに響くテレビの音が、やけに寂しかった。
「………」
サキはずっと考えていた。
これから学校はどうしよう? 下手に休めば怪しまれる可能性がある。魔法少女の平均年齢を考えるに、数人は見滝原中学校にいるのではないか。
F・G開幕と共に欠席者がでれば、そこが参加者として見られる可能性は高い。
ならば逆に学校に行くことは安全なのかもしれない。
もちろん、学校に攻めてくる可能性もあるが……。
(くそッ!)
サキは、もう戦いが始まる事が前提として物事を考えていた。
そんな自分自身に若干の嫌悪感を覚える。まだ、遅くはない筈だ。説得を重ねれば参戦派を諭す事が――。
(いや、いや……、できる訳が無い)
4番、3番、13番は殺人をゲーム感覚で楽しむつもりだ。
そんな連中に今更話が通じる訳がない。特に13番は、皆殺しを宣言する辺り、協力は望めない。
3番に至っては殺人が楽しそうなどと言っていた、恐らくコイツも説得は不可能。
4番はまだ話しこそできるかもしれないが、だからと言ってあの様子から見れば答えは明白だ。結局三人とも説得は意味を成さないと言うのがサキの答えだった。
とは言えこのまま防御側に回れば、やがて破綻するときがやってくる気がしてならなかった。
2番が言っていた通り、このゲームは何もしなくても疑心暗鬼がおきる可能性がある。そんな危険な状況下で、ワルプルギスとやらを倒す事ができるのか?
本当に協力派は正しいのだろうか? いっそ――
「ねえ、サキお姉ちゃんってば!!」
「えッ? あッ」
我に返るサキ。
どうやら、しきりにゆまに話しかけられていたようだ。
「すまない、ちょっと考え事をしてて。なんだい?」
「うん、あのね。あのお花は何ていうの?」
「……あれはスズランだよ」
ゆまが示したのはガラスケースに入ったスズランだった。
植木鉢に一輪だけ咲いているそれは、とても美しく見える。
「っ? でもね、ケースに入っているならどうやって水をあげるの?」
すると、サキは静かに笑って答えた。
その表情は、悲しみも喜びも、愛しさもすべてが混じった不思議なものだった。
「あの花には水をあげなくてもいいんだ」
「え? どうして? あっ! わかった! おもちゃなんだ!」
「ふふっ、ハズレ。あれは本物だよ」
「え? だったら、どうして……?」
「不思議かい? 水をあげなくても咲き続ける花、それはまるで奇跡のようだね。でも、この世界にはその奇跡が叶う方法がある」
サキは微笑み、ゆまの頭を撫でた。
成る程、少し難しい話だったかもしれない。もっと簡単に言ってみせる。
「あれが、私の願いなんだ」
「え?」
「あの花が、咲き続ける事が……、私の願い。魔法少女の宿命と引き換えに手に入れた奇跡なんだ」
夜がくる。
暗くなると思い出すのだろう、マミと一緒にすごした夜の事を。
ゆまはまた泣きじゃくり、そして疲れて寝てしまった。
サキは、ベランダに出ると、夜の景色を見回してみる。
「なあ、マミ……。私はどうすればいいんだ」
さっぱり分からなかった。
「答えてくれよ、美幸――」
どの選択が正しいんだ?
サキは大きくうな垂れ、歯を食いしばる。
殺しあう? ふざけている、そんな事ができる訳が無い。
だが何となく分かる。分かってしまう。望まずとも、いずれ見滝原には多くの血が流れるだろう。そして多くの悲しみと絶望がやってくるかもしれない。
いっそココから飛び降りて、終わりにできるなら、どれだけ楽だろうか。
だが、ゆまやまどか達。そしてなによりもパートナーの事が引っかかる。
まだ見つかっていないとは言え、騎士にも人生や負けられない理由がある筈だ。
自殺をしてしまえば、その人はどうなる? 圧倒的不利な状態でゲームに挑まなければならない。
「最悪だな……」
誰が考えたシステムなのかは知らないが、本当に最悪な事をしてくれる。
中途半端な罪悪感が、
なるほど、2番が言っていた通りかもしれない。
正直に生きていると馬鹿を見る。このままグズグズと中途半端にしていたら、もっと痛い目を見るかもしれない。
「それでも……、私には答えが見つからない」
ずっとそうだった。
いろいろな事から逃げていたのかもしれない。
それは――、今回も?
「………」
サキはため息をついて、拳を握り締める。
どうしようもなく悔しくて、どうしようもなく怖かった。
「大変な事になったな……」
「ええ、そうね」
手塚はデッキを見つめて呟く。
ほむらの家で二人はこれからの事を考えていた。
ほむらは目を細める。
とりあえずゲームに乗った奴を殺すと脅しておいたが、どうやらそれで抑制できると思っていた自分が馬鹿だった。
参戦派は全く怯んでいない。戦いは必須だろう。
気づけば魔法少女同士のテレパシー会話も使えなくなっていた。
キュゥべえたちがそう設定したのだろうが……。本格的に干渉してくるらしい。
「しかし、愚者達のゲームか。嘗められたものだな」
手塚はタロットの札から
様々な意味があるが、文字通りの意味とみていいだろう。
「誰が仕掛けたゲームかは知らないが、他人の運命を勝手に左右させるのは許されざる行為だ」
手塚は静かな怒りを覚える。
「俺は必ずこのゲームを止める」
どうやら手塚は協力派らしい。
「……? どうした?」
「え?」
手塚は、鏡越しにほむらの表情を確認する。
穏やかなものではない。何かに焦り、何かに怯え、何かに恐怖しているように見えた。
占い師を目指すゆえ、観察眼には長けているつもりだ。ほむらが焦っているのは、どうにもゲームに巻き込まれたからと言う理由ではないように感じた。
「……なんでもないわ」
「そうか。ならいい」
ほむらは目線を逸らし、呟いた。
そもそも事情を聞いても絶対に教えてくれないだろう。
手塚としては、もはや何も聞くことはない。
「とにかく、ワルプルギスがやって来るまで、なるべく戦いは避けたいの」
「分かった。様子見をしつつ、今までどおりの生活で行くか」
「ええ。なるべく一緒に行動しましょう」
了解する手塚。
と言うのも、パートナーとの絆でカードが増えるからだ。
ほむらは既に一度、キュゥべぇから情報をもらっていた。
今になって、それが『ルール』の一つだと言う事が分かったが、なかなか有力な情報ではある。
【パートナーと過ごした時間が多いほどカードが増える。また、時間が少なくても絆が深まればカードは増える】
それがルールの一つ、騎士の強化についての項目だった。
だから今までほむら達は一緒に行動していたのである。
既に何枚ものカードが生成されている。これからもこの調子で増やしておきたいものだ。
「時間が経てば、エリアが限定される。そこからが本番ね」
いずれ主な戦いの場所が見滝原になる。
とりあえず今はまだ余裕はあるが、だからと言って安心はできない。
参戦派は既に他の参加者を探し回っている事だろうから。
「………」
なにより、ほむらが気になるのはジュゥべえの言葉だった。
『次は、たぶん無いんだからよぉ』
次が無い。
こんなイレギュラーが起こって、その言葉を言われれば焦るのは当然だった。
(まさか、そんな筈は……。でももし本当に力に制約が加わったのなら――)
もう、今回しかチャンスが無いと言う事になる。
「………ッッ」
震える手、足。心。
馬鹿な、そんな事があっていい訳がない。そんなルールがあっていい訳がない。
今は試す事ができないが、もし、『あの力』が発動できないのなら――
(このゲームに、絶対勝たなくちゃいけないッ)
救う為に、共に生きるために――。
(なら、どんな事をしてでも、生きなければ。勝たなければ――ッ!)
落ち着け、冷静になれ、ほむらは自分に言い聞かせる。
(いくら制限があったとしても、私の力があれば勝利は目指せる)
あとはうまく立ち回れるかだ。
一つ一つの選択肢を間違えないようにしなければ。
「どうした? 顔色が悪いぞ」
「平気よ、構わないで」
ほむらは心配してくれたであろうパートナーを見た。
手塚海之、彼とはいいパートナーになれる。かも――、しれなかった。
でも、ごめんなさい。ほむらは心の中で手塚に謝罪する。
(もう状況が変わったの。貴方は何が何でもF・Gに参戦しないみたいだけれど――。私は、状況が状況なら参戦するわ)
ほむらは、心の中でもう一度手塚に謝罪する。
場合によっては――
(貴方を、利用させてもらう)
いくらパートナーと言えど、ほむらと手塚の間にある絆など微々たるものだ。
それこそまだ互いに知らない事が多い。ましてや教える気もない。
だから、ほむらとしては手塚を利用しても心がそれほど痛まないのは事実だった。
ほむらはもう一度手塚を見る。
それでも『真っ直ぐ』に見る事はできなかった。
できる事なら手塚も生きて欲しい、この気持ちに嘘は無い。
(でも、そう上手くいきそうにないかもね)
そう思い、ほむらはうな垂れた。
だってもうゲームは始まっているのだから。
最悪の場合は――、彼の命を、この手で奪う事もあるかもしれない。
だから、ほむらは、手塚を見なかった。
そう。ゲームは始まっている。
範囲指定がされていないだけであって、F・Gは――、殺し合いはもう始まっているのだ。
美国織莉子はその事を理解していた。そして勝利への一歩を踏み出す。
「みんな、お疲れ様。あなたたちのお陰で他の参加者を揺さぶる事ができたわ」
織莉子の背後には三つの人影が見えた。
マミ同じく、織莉子もまたチームを組んでいたのだ。
そして、あの魔法少女集会で手を打った。
「協力が不可能と知れば、甘い考えを持った連中はパニックに陥るでしょう」
そして勝手に疑心暗鬼になって潰しあう。
それだけじゃない、織莉子にはどうしても殺したい魔法少女がいる。
その参加者の命を奪う布石にもなるのだ。
「特に、ええ。貴女の演技には助けられたわ。13番さん」
その言葉と同時にシルエット一つがニヤリと笑った。
あの集会において皆殺し宣言をした13番。彼女は実は織莉子の仲間だった。
13番が口にした『皆殺し』発言は、織莉子がそう言ってほしいと頼んでいたものだ。
参戦派がいるとしれば、他の参加者を戦いへと向かわせるだろう。
もちろんその結果、多くの血が流れるかもしれない。
自衛であれ、なんであれ、殺し合うとはそういう事だ。
だが織莉子にとっては必要犠牲だった。そこは目を瞑ろうじゃないか。
「あー! ずるいずるい! 私も褒めて欲しいいぃぃいぃ!!」
影の一つが、悔しそうに呻き始めた。
その少女は魔法少女集会では9番を与えられていた。
織莉子は困った様に笑うと、9番の頭を撫でてやさしく微笑む。
「あなたもよくやってくれたね」
「う、うん……! えへへ、もちろんだよ織莉子」
9番の少女は照れた様にもじもじと頷いた。
「それで、次の作戦は?」
最後の影は、声を聞くに男性だろう。それも、まだ若い。
青年の問いかけに織莉子は頷くと、ある映像を見せた。
「へぇ、これが……」
映像にあったのは数名の魔法少女だ。
織莉子はその中の一人を指し示して、やさしく微笑む。
「彼女を――」
優しくだ。
だが、次の言葉は少々不釣合いなものだった。
「潰す」
その言葉に少し反応が起きたものの、誰も何も言わなかった。
無言の了解だ。織莉子が見ている魔法少女を殺す。それだけなのだ。
「分かったよ織莉子。じゃあ私がすぐにバラバラに――」
9番はそう言って笑う。
だが、織莉子は目を閉じてゆっくりと首を振った。
「ッ」
9番は気づいていないようだが、青年や13番は理解した。
狂気、歪んだ決意。織莉子は口こそ吊り上げているが、目は欠片も笑っていない。
オーラが違う。織莉子の実力が桁違いだと言う事を全身で感じる。
美国織莉子。
彼女は一体何者なのか?
薄ら寒い気配を感じて、青年たちは曖昧な笑みを浮かべた。
「ただ殺すだけじゃ駄目よ。苦しめて、後悔させて、絶望させて脱落させないと意味ないわ」
生まれてきた事を後悔させてあげないと。
そう言って織莉子は微笑んだ。その目はただ一点に、標的の魔法少女を見るだけだ。
「必ず絶望のどん底に突き落とす」
「ふぅん、意外と辛口だ」
「必要な事ですから」
織莉子はそう呟くと、他の三人に向かって頭を下げた。
「じゃあ、お願いします。私と一緒に――」
顔を上げる。やはりその表情には『決意』が視えた。
「救世を」
三つのシルエットはそれぞれ頷くと、作戦を実行する為に動き出した。
次の日のアトリ。
真司は美穂達にゲームの事を告げる事を決めた。
殺し合いが始まろうとしている、逃げられはしない。
なによりも範囲制限がある以上、見滝原外にいる会いたい人に会っておかなければ、
やりたい事をしておかなければならない。
真司には心当たりがあった。だからこそ告げるのだ。
「ど、どういう事よ、それ」
「だからッ、今話した通りだよ……! F・Gが始まって、マミちゃんと須藤さんが死んだ」
「ハァ? 変な冗談言うなよ! からかってんの? 真司のクセに!」
ガタッ、と大きな音を立て美穂は立ち上がった。
そのまま真司に掴みかからんとばかりの勢いだったが、美穂はどうする事もできずまたその場に座り込むだけだった。
蓮も真司の話を冷や汗を浮かべながら聞いていた。
無言だったので、を考えているのかは分からないが、疑う事は無かった様だ。
既にデッキの事もあるし、実際に魔法少女も見ている。
それに、真司の性格から言って、冗談でもこんな事は言わない筈だ。それは美穂も分かっている。
それはつまり、本当に殺し合いのゲームが始まると言う事だった。
「じゃ、じゃあなに? 私達は参加者って事?」
美穂の言葉に真司は頷く。
今現在覚醒していない二人、当然マミや須藤の記憶も消失しているが、キュゥべぇ曰く変身した瞬間に戻ると言う事らしい。
そしてF・Gの基本的ルールが脳内に叩き込まれる。
「早く変身した方がいいって事だよ」
パートナーも見つかっていない二人だが、もしかしたらかずみ達の中にパートナーがいる可能性はある。
「ちょっと待ってよ。アンタ自分が何言ってるか分かってんの?」
「え?」
真司は言葉を止める。
今にして思えば、少し感覚が麻痺していたのかもしれない。
魔女と戦って、須藤達の死を見て――、やはり鈍っていたのだろう。
でも、美穂達は違う。
今まで普通に生活してきて、それでいきなりこんな事を言われれば怯むに決まっていた。
「み、美穂……」
美穂はデッキをテーブルに叩きつけると、真司を睨みつける。
「アンタ、なんでそんなに冷めてんのよ――ッ!」
「別に冷めてるわけじゃない」
「嘘。変身しろ? 嫌に決まってんじゃん!! 私達に殺し合えってのッ!?」
「そ、そんなつもりじゃないって。別に殺しあわなくても、ワルプルギスの夜さえ倒せばみんな生き残れるんだ!」
だからそう悲観する必要は無いと思っていた。
でも、それも戦えるからこそ言える言葉だ。
美穂達は変身できないし、変身しなくても構わない生活を送っているのだ。
真司は仕方なく変身した。
あの状況で変身しなければ死んでいたからだ。
しかし美穂達は違う、自らの意思で命を賭けた戦いに参加しなければならない。
そこが茨の道と知りながらも、足を進めなければならない。
たとえばコレが復讐でもなんでも、大義名分――、戦う理由があれば美穂だって騎士になれただろう。
だが生憎、今の美穂にはそんな志はない。
就職して、安定した暮らしを求めていた彼女が、どうして命を懸けて戦わねばならないのか。
「そんな戦い本当に無理ッ! 怖いし! だいたい、どうしてアンタはそんな普通でいられるのよ!!」
「俺だって怖いさ! でも……!」
もう逃げられない。真司は理解していた。
まどかから連絡があり、魔法少女集会が開かれて『参戦派』がいると言う事実を知った。
真司もちろん他の参加者を傷つけるつもりは無いが、どうすればいいのかも分からなかった。
「だからこそ、二人には決断してもらいたいんだ」
それが真司の――、美穂と蓮の友人としての意見だった。
「それに俺はまどかちゃんのパートナーだから。あの娘の為にも、逃げる訳にはいかないんだ」
「ッ!」
その時、美穂の顔色が変わる。
「ふぅん。アンタは、まどかちゃんがそんなに大切なんだ」
「当たり前だろ、パートナーなんだから」
「命を賭けれるほどなの?」
美穂の言葉に一瞬、真司の動きが止まった。
が、すぐに力強く頷く。
まどかを守る、それが城戸真司の出した答えである事には変わりない。
「まどかちゃん達、魔法少女はまだ中学生なんだぞ。そんな子が殺し合いに巻き込まれるなんておかしいだろ」
そもそも変身した時に願った『勇気』を思い出せ。
あの小さな背中を守るために龍騎になったのだ。だからこそ真司はまどかを守るために戦う、その想いは揺ぎなかった。
「へー、へー! へーッッ!!」
「な、なんだよ。屁なら我慢せずにしてもいいんだぞ」
「ンな訳ないだろ馬鹿ッ! 大馬鹿! 死ね!」
「酷すぎだろ! どうしたんだよ!」
「分かった、分かったわよ! じゃあアンタはまどかちゃんを守る為に頑張ればぁ!?」
「はぁ!?」
「私達に構わないで、どーぞ! まどかちゃんと一緒にいればいいじゃん!!」
「何でそうなるんだよ!! お前おかしいぞ!?」
「知るか!!」
美穂はそう言って立ち上がると、逃げ出すように駆けて行く。
すぐに追いかけようと立ち上がる真司だが、そこで蓮に肩を掴まれた。
「落ち着け城戸。アイツは放っておけばいい」
「で、でもよ蓮!」
「昔からそうだ、都合が悪くなるとすぐにヒステリーを起こす。最低な女だ、畜生だ」
「……ひどい」
「事実だ。いずれにせよ、霧島はパニックになって乱心しているだけだ。しばらく時間が経てば元に戻る」
渋る真司だったが、蓮の気迫は凄まじく、つい圧されてしまう。
結局、真司が折れてその場に座ってしまった。
「城戸……」
「な、なんだよ」
蓮の雰囲気がいつもと違う、真司はそこに嫌な何かを感じていた。
「F・Gの勝利条件を、もう一度詳しく教えてくれ」
「あ、ああ。だから――」
真司は少し怯みながらも、蓮に勝利条件を詳しく説明する。
もちろん、勝利した後の賞品もだ。
参戦し、勝てば多くの願いを叶える事ができる。
正確にはワルプルギスを倒しても願い叶えられるが、その数はたったの『1』。
しかも全員での話だ。
「つまり個人的な願いを叶えるためには、最後の一組になるしかないのか」
「そりゃあ、まあ。でも話し合えばなんとかなるかも」
「………」
蓮は、それを深刻な表情で聞いていた。
頷くわけでも、相槌を打つ訳でもない。ただひたすらに耳を傾けているだけだ。
だが、確実に理解はした。F・Gに勝てば願いを叶えられる。どんな、願いもだ。
文字通り、奇跡を手にする事ができるのだ。
「おい、ちょっと待てよ蓮。お前まさか!」
「落ち着け。俺は大丈夫だ」
「お、おお。ならいいけど……」
「城戸。お前は、ワルプルギスを倒すんだな?」
「当たり前だろ。いきなりで悪いとは思うけど、お前も協力してほしいんだ。蓮」
蓮は、静かに頷いた。
瞬時テンションが上がる真司、こういう時の蓮は昔から頼りになった。
「おぉ! サンキュー! やっぱ持つべきものは友達だよなぁ!」
真司は笑い、蓮の肩を叩いた。
「じゃあ俺は美穂を探してくるから! またな!」
慌てて出て行く真司を見て、蓮は俯く。
真司はひとつ勘違いをしていた。蓮は先ほど『頷いた』のではない、うな垂れたのだ。
(城戸。俺は――)
俺の、選択は――……。
「……!」
美穂は公園に立っていた。
ジッと立っていた。すると背中に気配を感じたので、ゆっくりと頷く。
「真司。来てくれたんだね……」
分かる。分かるよ。大丈夫、それは普通のことだよ。
こんな美少女が逃げ出したんだもの。そりゃ追いかけるよね。
用件は? 分かってる。みなまで言わずとも美穂ちゃんは分かってるよ。
恋しいんだね。あたしが愛しいんだね。
逃げ出した私を見て、己の罪に気づいたんだね。大丈夫だよ真司、魅力的な女性に惹かれるのは男としては何も間違っちゃいない。正常だよ。
大丈夫だよ真司。
美穂さんはもう怒ってないから。ただやっぱり怖くて、混乱してるから。まずは鞄を買って? そしたら落ち着くから。
その後は、飲みに行こう。今日は高い焼肉にしよう。それを真司が奢るの。
そしたら美穂さんは一回落ち着くから。
「ね? 真司」
美穂はアヒル口で振り返る。
そこにいたのは野良猫だった。愚かなヤツを見る目をしていた。
美穂が固まっていると、野良猫は興味をなくしたのか、あくびをしながら歩き去った。
「ちくしょうが!」
美穂は石ころを蹴ると、大きく舌打ちを鳴らす。
「ちぇー! なんで追いかけてこないんだよ!!」
美穂は公園のベンチにドカっと座り込む。
せっかく美穂さんが飛び出したのにアイツってば呼び止めにすらこないなんて!
どっかおかしいんじゃねぇか?
EDにでもなったか?
脳みそまたどっかに落っことしちゃったのか?
などといろいろな罵声を浴びせていく。
「はぁ……」
だが、最後には大きなため息。
分かってる。自分が悪い。酷すぎるって事くらい。
真司だって無理やり参加させられた事に変わりは無い。
「なら、それに適応できてる真司は私よりずっと立派だな……」
でも怖いし嫌なのは事実だ。
命を狙われるかもしれないんだ。そんな事に恐怖を感じない人間はいないだろう。
特に、まだ変身できていないのだ。自衛の手段が無い。
だから、つい真司に当たってしまった。
それに、若干の嫉妬もあったかもしれない。まどかの事を本当に大切に思っている姿を見て、つい馬鹿な態度をとってしまった。
「くぁー! 中学生に嫉妬か霧島美穂ォ、私も落ちに落ちたなぁ!」
そもそも、美穂だってまどかの事はよく知ってる。
いい子だ。優しいし、礼儀正しいし、可愛いし、仕事も嫌な顔ひとつせずに手伝ってくれるし。
美穂もまどかが大好きだった。
あんな子が殺人ゲームに巻き込まれるんだ。
そりゃあ、美穂だって守ってあげたくなる。
だだ、だからと言って、命までは――。
「お姉さん。どうしたの? そんなに暗い顔をして」
「わッ! え!?」
急に気配を感じて、美穂は顔をあげる。すると見知らぬ少女が傍に立っていた。
いきなり話しかけられたものだから、ついどうしていいか分からずに固まってしまう。
「まあ知らない人に話しかけられればそうなるよね」
「えっと……、誰?」
「私、怪しいものじゃありません。伊沙子《いさこ》って言います」
「はぁ」
伊沙子と言う少女は、なんでも公園を通っていたときにやけに元気の無い
「お姉さん超疲れた顔してたよ。大丈夫?」
「え? あ、ああ大丈夫、大丈夫!」
「本当に? よければ相談にのるけど?」
伊沙子は無邪気に笑ってみせる。
「私、実はカウンセラーを目指してるんです! 悩んでいる時は、人に話すのが一番なんですよ!」
「うーん。そりゃあ、まあね」
「自慢じゃないですけど、結構いいアドバイスしてくれるって、言われるんですよ」
「へー」
美穂としても、自分の心にあるグチャグチャな思いを少しは共有してほしかった。
少しはぐらかして言ってみるのも悪くないか。美穂にそんな考えが過ぎる。
「じゃあちょっとだけ聞いてもらえる?」
そう言って美穂は、伊沙子に胸の内を少しだけ打ち明けた。
真司とまどか、そしてF・Gの事をうやむやにして話してみる。
別にいい答えを望んでいる訳じゃない。ただ、何となく話せたら楽になれる気がしたのだ。
「――って、事なんだけど」
「それは簡単だね。その男の人はパートナーの女の子が好きなんだ。異性としてね!」
伊沙子はビシっと美穂を指差し、笑う。
「マジ? いやッ、それはさすがに……」
先ほどは同じようなニュアンスで真司を煽ったが、流石の美穂も本気でそんな事は考えていなかった。
「それに、その子まだ中学生だよ?」
「甘いよお姉さん! 愛に年齢なんて関係ないんだよ!」
「そ、そんなもん?」
「そうそう! もうその男の人はパートナーさんの事が大好きなんだよ。じゃなきゃ危ない目にあってまで守るなんて言わないもん!」
(……まあ確かにまどかちゃんはいい娘だからな)
それに真っ直ぐな性格だからどこか真司と共通する点があるのかもしれない。
美穂の心の中で焦りが確証に変わっていく。なぜだか、やけに伊沙子の声が鮮明に脳に届いた。
「もしお姉さんがどうしてもその男の人が気になるならさ」
「ん……?」
「いっそ、パートナーの娘を殺しちゃえば?」
「え?」
殺す?
「なーんてね! そんな事しちゃ犯罪だよ!」
「あ、ああ。当たり前じゃん」
「でもねお姉さん。たまに思わない?」
伊沙子は両手を広げ、天を仰ぐ。
「全部さ、壊したくなる時とかあるよね。ルールとかさ、秩序とかさ。目障りなもの全て吹き飛ばしたくなる時とかあるよね」
「ん……」
「そういう時さ。力があればいいなって思うの。力があったら全てうまくいく。自分の思い通りになる。そんな力があったら素敵だよ?」
美穂はなんだか眠くなってきた。
ウトウトとしながらも、なぜだか言葉だけは鮮明に脳に入ってくる。
「じゃあもう私は行くね」
「え?」
ふと気がつけば、伊沙子は手を振っていた。
「元気出してね、おねーさん」
伊沙子はそそくさと帰っていった。美穂はその背中をただ見つめるだけ。
やけに胸の鼓動が強く感じる。殺す? そんなの犯罪じゃないか! 駄目に決まってる。
それに自分はまどかの事が好きだ。彼女はいい娘で、優しくて思いやりがあって――
真司の、パートナーで……。
「………」
その時、美穂の手にデッキが触れる。
過ぎるルール、死んだ参加者は世界から存在を抹消される。
そしてこのゲーム。
状況が状況だけに、命を奪ったとしても正当防衛としてみなされるんじゃないか?
つまり、簡単に言えば殺しても犯罪にならない。このルールがあるから殺しても攻められない! だったら――
「!!」
美穂は一瞬その考えが浮かんでしまい、大きく首を振った。
(ッぶねー……! 何考えてんのよ私ッ!)
ありえない。美穂は薄ら笑いを浮かべると、立ち上がって公園を後にする事にした。
きっと混乱しているだけだ。少し休めばまた正常に戻れる、美穂はそう自分に言い聞かせながら足を速めるのだった。
「………」
伊沙子は、美穂が公園を後にするのを木に隠れてジッと見ていた。
伊沙子、いさこ、【い】ち、【さ】ん。13。
偽名にしたって適当だったか? 13番はニヤリと唇を吊り上げた。
(おいおい大丈夫? そんなんでさぁ? ゲームはもう始まってるんだ、気をつけた方がいいよお姉さん。甘いねぇ、プリンみたいに甘い。そんなに甘いと――)
すぐに死ぬことになる。
13番のはるか頭上に、ハコの魔女が見えた気がする。
「さあ殺意の種は植え込んだ。後は、芽が出てくれる事を祈るだけってね」
愛と金は人を狂わせる一番の要素とかなんとか、聞いた事がある。
それを欲する心は誰もが持っているものだ。それを少し、刺激してあげた。
その力が13番にはある。
ちょうど、何か小さな球体が13番の近くにやってきた。
13番はそれを取ると、報告を球体の中に『吹き込んで』いく。
『………』
その時、近づいてくる気配。
13番が振り返ると、見えたのは最愛のパートナーではないか。すぐに両手を広げて彼を迎え入れる。
しかし騎士はそれを難なくスルーすると、13番の足元に大量のグリーフシードを投げる。
「くはッ! 流石は相棒、いい働きをしてくれる!」
13番はそこに『カード』をかざす。
すると全てのグリーフシードが一枚のカードの中に収束していった。
「さぁて、狂ってくれれば星三つ。変身を抑制できれば星二つってところ?」
13は先ほど美穂に向けた笑顔とは間逆と言える、邪悪な笑みを浮かべた。
美穂にはまだ動いてほしくない。だからこそ蓋をしたのだ。
いらぬ葛藤で時間を稼いでくれれば、それでよかった。
13番は踵を返して歩き出す。
パートナーの騎士もまた、13番の後ろをついていった。
翌日の事だった。蓮が姿をくらませたのは。
ゲームの事が関係しているのだろう。まもなく見滝原以外には行けなくなる、だから蓮も何かやり残した事がある筈だ。
そう信じるしかなかった。
蓮は真司にも美穂にも。あろう事か、立花にも告げずに姿をくらませたのだ。
混乱と狂気に満ちたF・Gの開幕。それは確実に参加者たちを狂わせる事になる。
一方で須藤が死んだ所で見滝原の連続殺人が終わることはなかった。今度はコンビニ店員の死体が発見され、それが原因で『犯罪者を狙っている』と言う説も薄れ始める。
結局、須藤がした正義の審判も、無意味なものとなりつつあったのだ。
殺人の法則も、新たなる殺人が塗り消していき、見滝原は再び恐怖で包まれる。
「おはよ……、まどか、サキさん」
「おはようございます、まどかさん、浅海先輩」
「う、うん。おはようさやかちゃん、仁美ちゃん」
「ああ。おはよう」
あれだけにぎやかだった朝も今はとても寂しく感じる。
ほむらはゲームの様子が見たいと言って学校をしばらく休む事にした。かずみも同じ。
サキはゆまを一人にはしておけないと思っていたが、やはりゲーム開始直後に休むのは危険と思い、学校に行く事にしたようだ。
ゆまにも家から一歩も出るなと言ってあるので、まだ安全だろう。
空は晴れているのに彼女達の心は曇天だった。
いるべき人達がいない、それは何よりも心に重くのしかかる。
そんな事を知る由もない仁美は楽しそうに話題を振ってくるが、さやか達はとても談笑を楽しむ程の余裕は無かった。
むしろ少し苛立ってしまうほど。
いけないと分かっている、仁美は事態を知る由もないので当然なのだが……
「ねぇ、まどか」
「何? さやかちゃん」
昼休み。学校の屋上で、さやかとまどかは空を見ていた。
二人共疲れ切った表情だが、特にさやかは酷い。とてもじゃないが勉強なんてしている余裕はなかった。
ましてや放課後はバイトもある。自分からやりたいと言った以上、勝手に辞めるのは罪悪感もあった。とは言え、北岡の嫌味を笑って流せる気がしない。
「……キツイ」
普段から口にしていた言葉だが、今日は重さが違った。
さやかはジッと自分の掌を見つめる。その手にはまだ『感触』があった。
その手で須藤を殺し、その腕の中でマミは死んだ。
それが、さやかの精神を激しく蝕んでいく。
今日もあまり眠れなかった。
少しでも寝てしまうと、夢であの光景が鮮明に浮かんできてしまう。
「あいつ等、ゲームに乗るって――ッ!」
さやかは8番だった。
まどかもさやかも、協力こそが正義と信じ――、そして否定された。
自分達の『正義』があんな簡単に否定されるなんて、須藤もあんな気持ちだったのだろうか?
いや、それでもさやかは須藤を殺した事は後悔していない。
結局誰も救えなかった事が突き刺さってはいるが、ああしなければならなかったのも事実だ。
「13番と、4番、3番は特に気をつけなきゃ……」
全員を殺す宣言を行った13。
完全にゲームに乗るつもりでいた4――、杏子。
最後に殺し合いが楽しみだと言った3。
こんな連中がいる事が腹立たしいものだった。
「魔法少女の中には自分の利益の為だけに動くヤツらがいるってマミさんから聞いてたけど、まさかココまでとはね」
さやかは屋上の手すりを軽く殴り、遠くを見る。
「……ごめん、まどか。あたしも必要とあらば参戦しているヤツを殺すかもしれない」
「ッ! 駄目だよッ、そんなこと!!」
まどかはまだ信じていた、きっと話し合えば分かってくれると。
しかし、さやかにそんな希望はない。殺さなきゃ殺される、それがこのゲームの真意であると彼女は理解したのだ。
さやかはまどかの手を振り払うと、少し声を強めて言う。
「もしも戦わなきゃあたしが、まどかがッ! 皆が危ないんだよ!? そりゃ、まどかの気持ちも分かるけど! もうそんな甘い事言ってられないんだよ!」
「さやかちゃ――ッ!! ご、ごめん……」
さやかの気迫に怯むまどか。
その様子を見て、さやかもばつが悪そうに肩を竦めた。
「ごめん、強く言うつもりは無かったんだけど……」
しばらく沈黙が続いた。
ふと、まどかは気づく。地面に転々として雫の跡が見えたのだ。
それは涙。
さやかは、いろいろな思いを背負いすぎて自分でもよく分からなくなっていた。
それが苦しいから涙を流す。もう限界だった。まどかはさやかを抱きしめると、自らも涙を流す。
「大丈夫だよさやかちゃん、大丈夫だからッ」
「まどかぁ……! ごめんね……ッッ、ごめん――ッッ!」
二人は寄り添い、涙を流し続けた。
泣くしかない。泣くしかできない。しかしその弱い姿がさやかの心に火を灯す。
そうだ、泣いてばかりはいられない。まどかを、仲間を守らなければ。
「まどか、もう大丈夫。もう大丈夫だから」
「うん。また何かあったら、いつでも言ってね」
「おーけー! やっぱアンタは最高の友達だわ」
そう言って二人は少しだけ笑う。
結局、その日は特に何も起こらなかった。
しかし相手の出方が分からない以上、下手に外を出歩くのは危険だ。
まどかは念の為にさやかを家まで送り届けると、そこからは真司が迎えにきてくれたので一緒に帰る事に。
「あのさ、まどかちゃん。実は――」
「?」
真司はまどかに、蓮がいなくなった事を告げる。
親友の失踪、それはやはりゲームと何か関連しているのだろう。
電話はつながらず、アトリの方にも戻っていないらしい。
「だからッ、ごめんまどかちゃん。もしかしたら俺、しばらく蓮を捜しに行く事になるかも。そうなったらまた連絡するからさ」
「うん。大丈夫だよ真司さん。大切なお友達のことだもん」
まどかだって真司の立場になったらそうするだろう。
別行動になってしまうが、まどかにはサキや、さやかがついている。
「だから気にしないで」
「ごめん、本当に……」
「ううん、いいんです。蓮さんが無事だといいんだけど――」
真司はもう一度まどかに謝罪すると、そのまま無事に家へ送り届けた。
これでよし。真司は押してきたスクーターに跨ると、アクセルグリップを捻る。
(まどかちゃんは巻き込めない……! 俺がなんとかしないと――ッ)
焦っているのは真司も同じだった。
「………」
さやかは、北岡法律事務所の前でため息をついた。
理由は手に持っている宝石だ。ソウルジェム、魔法少女の力の源であるソレは、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
(やっぱり……)
最近いろいろな事があったせいで、すっかりジェムが汚れてしまっていたのだ。
パートナーがいるまどかは、使い魔や魔女を倒すことでジェムの穢れが少し晴れるようになっている。
だが、さやかはそうじゃない。
まだ未熟なさやかは、戦う時のセーブが聞かなかったりと、魔力の消費が大きかった。
さらにソウルジェムの穢れは、精神状態に左右される。
やはり須藤を手にかけた事、マミの死に直面した事が、大きな要因だろう。
さやかは悩む。
このままではジェムは穢れてしまい、自分は魔法少女として戦えなくなる。
(どうなるんだろう? 魔法が使えなくなるのかな?)
ゲームが始まった以上、それは避けたかった。
みんなのお荷物になるのは、絶対に嫌だった。
だから一刻も早くパートナーを見つけるか、魔女を見つけてグリーフシードを奪わねば。
「ちょっとちょっと」
「!」
「そんなトコで突っ立って何がしたいのよ。早く雑用してもらわないと」
「あ……」
事務所の扉がガチャリと開いて、不機嫌そうな北岡が現れる。
さやかは困ったようにデヘヘと笑うと、事務所の中に入っていくのだった。
いくらこういう状況だからといって、日常を犠牲にはしたくない。
さやかはまどかとの会話で切にそう願った。
怖いから学校にも行きたくないし、このバイトにだって行きたくないのが本音である。
でもだからこそ取り戻したい。純粋な気持ちで毎日を過ごしていたほんの少し前に戻りたかった。
そしてふと上条の事が頭に浮かぶ。この恋だって、いつか、きっと。
「いで!」
そんな事を考えていたら、本を取り損ねて頭にぶつけてしまう。
背後から聞こえる北岡の愚痴る声。
ああ、やっぱり無理かも。さやかは三回目となるため息をついた。
「あ゛ー、づかれだ」
バイトが終わった後、さやかは帰路についていた。
もう辺りは暗く、人の気配も少ない。こんな時は早く帰るにかぎる。
さやかは少し早足になりながら進んでいった。
『ブゥゥウウウウウン!!』
「!!」
さやかの耳が、異形の声を捉える。
気づけば、さやかは駆け出していた。
(魔女――ッ! グリーフシードを落とせば、ソウルジェムの穢れを祓える!)
何よりも人を危険に晒す異形を放っておく訳にはいかない。
こんな状況だが、さやかは今までどおり魔女達を倒す事を決めていた。
それが正しいと信じているから。自分はマミの弟子だから。
『ブゥゥウウン! ぶぶうぅぅうううん!!』
さやかの視界に入ったのは魔女ではなく、使い魔・『アーニャ』だった。
一見すれば車の玩具に乗った女の子なのだが、その姿はまるで落書きだ。
カラフルだがぐちゃぐちゃ。いずれせよ危険である事には変わりない。
さやかはソウルジェムを取り出して変身を済ませると、サーベルを構えて走りだした。
しかしアーニャもさやかに気づいたか、逃走を開始する。
人気のない路地で追いかけっこが始まった。
アーニャは素早く、さやかも加速する為に足に力を込める。
ある程度なら剣を投げれば差は埋まる。
さやかを見て即逃げ出したあたり、戦闘能力は低いと見て間違いないだろう。
さやかは早期決着をつけるために、スピードを上げようとした。
「みーつけた」
「えッ!?」
さやかの目に飛び込んできた。
赤。
「ッッ!!」
さやかは、足を止めた。
そうしなければ止めなければ刃が脳天に突き刺さっていた事だろう。
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
突如、上空から女の子が降ってきたのだ。おまけに槍を構えて。
突き出された刃は地面に突き刺さり、槍を直立させる。刃と反対方向の先端、『石突』に足をおいて、少女は立っていたのだ。
赤を基調としたドレス。
ポニーテールの少女は、涼しい顔でポッキーを咥えていた。
全身にゾワゾワとした嫌な感覚を感じ、さやかは大きく後ろへ跳ぶ。
「あッ!!」
だがそこで気づく。このままではアーニャを逃がしてしまうではないか。
さやかは大きく横に出て、サーベルを赤い少女に当たらないように投げた。
いける! さやかはそう確信をするが――
「おいおい、ちょっとちょっと! 何やってのんさアンタ!」
「なッ!!」
あまりにも一瞬で、何が起こったのか理解できなかった。
赤い少女が乗っていた槍が変形したのだ。
どうやら『多節棍』型の槍らしい。複数の棍棒を鎖で繋いでおり、その先端に刃がある。
そうだ、魔法の多節棍。『節』の数は自由に変えることができ、槍自体も伸張させることができる。
赤い少女は、槍から降りると、それを振り回しサーベルを弾き飛ばした。
おかげでアーニャに当たる筈だった剣は、地面へ落ちる。
もうアーニャの姿は見えない、どうやら完全に逃がしてしまった様だ。
それを確認すると、赤い少女は槍を消滅させてポッキーをもう一本。
「な、何すんのよ」
そこで、さやかは理解する。この力は間違いなく魔法少女の物だ。
つまり、ゲームの参加者なのだ。
「ありゃ使い魔だよ。かまうだけ無駄。グリーフシードが欲しいなら魔女になるのを待ちなって」
そう言って赤い魔法少女・佐倉杏子はさやかに向かって笑いかけた。
攻撃してこない点を見ると、参戦派ではないのか? さやかは安心感を覚え、だが同時に不快感を覚える。
「魔女になるのを待つって……、使い魔がどうやって魔女になるのか知ってるの?」
「少しばかり人を喰わせりゃいいんだろ? 何? 知らなかったのか?」
「なッ! そう言う問題じゃないでしょ!」
さやかは声を荒げて杏子に詰め寄った。
何でそう言う事を当たり前の様に言えるのか、理解できなかった。
使い魔が魔女になると言う事は杏子が言ったとおり、それ相応の犠牲者が出ると言う事だ。
「使い魔に襲われる人を見殺しにしろっての? そんな事できる訳ない!」
「………」
杏子はそれを無表情で聞いていた。
そしてどこから出したのか、たい焼きをかじりながら口を開く。
「アンタ、何言ってんの?」
「ッ!?」
「食物連鎖って知ってるか?」
虫が草を食らい。
より大きな虫が小さな虫を食らう。
その大きな虫は魚に食われ、魚は鳥に食われる。
「アタシは焼き鳥が大好きだ。ハハハ!」
強者が弱者を食らい、成り立つこの世のルール。
そう、それは『ルール』なのだ。連鎖の頂点に今現在存在しているのは何か? 普通の人間は『自分達』だと答えるだろう。
だが違う。
人の上に立つのは、人を超越し、人を喰らう魔女なのだ。
そしてその魔女を喰らうのは誰か? 食物連鎖の頂点に立つのは誰か?
答えは簡単だ。
「アタシら、魔法少女なんだよ」
「そんなッ!」
「まあ、アンタの言いたい事も分かるよ。アイツに襲われるのが自分《テメェ》の大切な人間だってんなら、守りたいって気持ちは理解できる」
だけど、そうじゃない人間ならどうだっていいじゃないか。
そう言って杏子はたい焼きを齧った。
「どうでもいいなら、見殺しにするのが賢い判断だろ」
それが食物連鎖における当然の仕組み、ルールだからだ。
「なんてヤツ――ッ!」
「ん? あれ? アンタまさか――、やれ人助けだ、やれ正義だってふざけた理由で魔法少女になったクチか?」
目の色が変わる杏子。
しかしさやかは怯まずに言い放つ。
「だったら悪いかッ!」
「………」
杏子はそれを聞いて舌打ちを放つ。
さやかは少しだけ怯んだが、変わらずに杏子を睨みつけていた。
杏子はたい焼きを一気に口の中に入れると、数回租借した後に飲み込む。
そして再び槍を出現させ、それをさやかに向けた。
「ちょっと止めてくれない? そう言うの、本当にムカつくんだけど」
「はぁ?」
「気に入らないんだよ」
まるで蛇の様な眼光だった。
杏子の雰囲気に呑まれ、さやかは思わず後ろへ足を動かした。
この眼はおかしい。危険だ、おかしい。
さやかの本能が、杏子の危険性を警告している。
「でもまあいいか。どうせ全員殺すんだし」
「……ッッ!」
その発言を聞いて一気に嫌な汗が吹き出てくる。
間違いない、この魔法少女は――
「あんたまさか――ッ!」
「参戦派だよ! アンタはどうせ協力派とか言うクソつまんねぇグループだろ? 丁度いいや、協力派のヤツをブッ殺したくてウズウズしてたんだ」
杏子はニヤリと笑って槍を振り上げた。
瞬間、地面を蹴る。爆発的な加速力で杏子は、さやかの前に立った。
「だからさぁ、死ねよ!」
槍を振り下ろす。
「ぅぐッ!」
さやかは反射的に剣を前に出し、それを盾にすることで槍を受け止めた。
「へえ、反射神経は悪くないじゃん」
杏子はどこか楽しそうだった。
さやかはその様子に激しい不快感と恐怖を感じる。
その時、呼吸が止まった。
「でも防御面は甘い」
さやかは一撃を受け止めただけで安心してしまった。
だが攻撃とは一回で終わりではない。杏子は、がら空きになったわき腹に蹴りを打ち込み、さやかを吹き飛ばしたのだ。
襲い掛かる衝撃。
痛み共に、さやかの視界がグチャグチャになる。
二転、三転、さやかは平衡感覚を忘れるほど地面を転がった後に壁にたたきつけられた。いや、正確には杏子が仕掛けた魔法結界にぶつかったのだ。
どうやら退路を断たれているらしい。
まずい、立たないと、さやかは歯を食いしばり、なんとか体を起こそうと力をこめる。
そこで見えた赤い閃光。杏子が投げた三つの槍が、さやかのマントに突き刺さった。
「しまった! くそッ!」
槍はマントを貫通し、そのまま地面に突き刺さっている。
それがさやかを磔にしているのだ。そして動けなくなったところに、もう一本槍が迫る。
すぐに悲鳴があがった。さやかの体に槍が直撃したのだ。
「ッ、へえ!!」
そこで杏子は目を輝かせる。
槍が肉体を貫通するとばかり思っていたが、そうじゃない。
さやかは確かに痛みに叫んだ。が、しかし刃は僅かに肌に沈むだけで、あとは弾かれて地面に落ちた。
「意外と硬いねアンタ。いいよ、悪くない……!」
「ふざ――ッ、けんな!!」
さやかは意識を集中させる。
魔法少女の衣装も、結局は魔法の鎧だ。つまりそれは主人の想いによって呼応するもの。
さやかはマントを切りはなし、そのまま全速力で走り出した。
目を見開く杏子。
速い。気づけば、すぐそこに美樹さやかが見えるじゃないか。
だから――、笑った。槍と剣が交差し、激しくぶつかり合っていく。
「あー、悪くない。ただの雑魚じゃないみたいだね」
「ナメんなよ、ちくしょうッ!!」
「でも――!」
さやかが剣を振るい上げた、まさにその時だった。
杏子は槍を真横に放り投げたのだ。攻撃? いや違う。ただ単に捨てただけ。
次の瞬間、鮮血が飛び散る。
「は?」
さやかは青ざめる。
つくづく理解できない。杏子は笑ってた。
刃が右肩から進入し、鎖骨で止まる。けれどもやはりしっかりと刃は入っていた。
血が流れる、肉が散る。けれども杏子は笑っていた。
「痛い! ハハハ! 悪くないな! 結構イテェや!!」
「な、なんなの……、アンタ」
「言っただろ? 足りないんだよお前には。殺す覚悟がさ、全然足りないのさ」
さやかは呆然としていて、動けない。
そうしていると、杏子がさやかの剣を掴んだ。
「フールズゲームは楽しいお遊戯じゃない。
「……あんた、本気で殺し合いなんて馬鹿な真似考えてんの?」
「もちろん。魔法少女集会来てたか? アタシは4番だ」
「……おかしい、普通じゃないよッ」
「あー、うっぜぇ! アンタみたいなヤツがいるから、ブッ殺したくなるんだってのッ!」
その言葉が、さやかの怒りを爆発させる。
黙れ、うるさい。叫び、そして剣を生み出す。
「アンタみたいなヤツがいるからッッ!!」
さやかは杏子と同じ事を言って、武器を振るった。
だがそれよりも先に杏子のストレートがさやかの、みぞおちを打つ。
衝撃で思考が止まった。大きくよろけて、後退していく体。
そして次に気づいたときには、ジャラジャラと鎖が擦れる音。
「ァ」
いつのまにか多節棍が、さやかの腰に巻きついていた。
杏子は肩にサーベルが入ったまま、手を引いて多節棍を引き戻す。
すると巻きついていたさやかも一緒に戻ってきた。
さやかの首に衝撃が走る。杏子のラリアットが決まったのだ。
「ハハッ! やっぱり戦いは面白いわ。アンタみたいな雑魚相手でもイライラが消えてくれるんだから――ッ、さぁッッ!!」
「うがッ!」
杏子は仰向けに倒れたさやかの胸を踏みつけ、怯ませる。
そしてサッカーボールを蹴るようにして、さやかを吹き飛ばした。
宙を舞うさやか、しかし鎖は巻きついたままだ。
杏子は笑いながら背負い投げのモーションを取る。
すると鎖がしなり、繋がれていたさやかは杏子の前に叩き落される。
「うぐッッ!!」
「まあ初戦にしちゃこんなもんかな。そこそこ楽しかったよ」
杏子は自らを抉る剣を引き抜くと、投げ捨てた。
そして再び多節棍を振るい、さやかを壁に叩きつける。
衝撃でさやかは剣を落としてしまった。まずい、そう思ったときには再び宙を舞っている。
多節棍によって雁字搦めに縛られたのだ。
さやかは必死に抜け出そうとするが、うまくいかない。鎖の強度は高く、引きちぎれないし。
剣を出そうとしたら壁や地面に叩きつけられる。
その攻撃がしばらく続いた後、杏子は飽きたのか、さやかを地面に叩きつけてループを終了させた。
杏子にとってはなんてことのない攻撃の一つ。
だが、さやかにとっては違った様だ。
「あれ? アンタまさか」
「……ッッ!」
杏子はさやかの足が震えているのを見て黒い笑みを浮かべた。
どうやら先ほどの攻撃はさやかの心に大きなダメージを与えたらしい。
解放されたからよかったものの、もしあの攻撃をずっと続けられていたら、どうなっていたのだろうか。
もしかしたら死ぬまで壁に叩き付けられ続けたのか?
さやかはそれを想像してしまって完全に恐怖に呑まれてしまったのだ。
それでも杏子にそれを悟られたくないと、さやかは必死に睨みをきかして立ち上がろうとする。
しかし、それが杏子のサディステックな一面を刺激してしまった。
「あはは! アンタまだ全然魔法少女としての力を使いこなせてないのか。ますます面白くなってきた!」
「な、なに……ッ! なんなのよ!!」
「だからさ、もう少しサンドバックになってもらおうかなって話だよ」
「ふざけッ!」
勝てない、コイツは危険だ。
さやかは逃げようと足に力を込める。しかし無情にも、足に多節棍が巻きついて動きが封じられてしまった。
杏子はさやかをコマの様に回転させて、また地面へと倒す。
「さあ、アンタの悲鳴が聞かせてくれよ。そうすれば、イライラが収まるかも」
そう言って杏子は笑いながら槍をさやかに向けたのだった。
「くふぃー! やっぱ最っ高だね! 戦いってのはさ!」
10分後。杏子は満面の笑みで大きく伸びを行っていた。
どこからかポッキーの箱を取り出すと、さっそく一本口に咥える。
「アンタも食う? あぁ、まあ食えねぇか」
杏子は地面に倒れて動かなくなった、さやかを見て笑う。
ボロボロだ。服は汚れ、髪はボサボサになり、切り傷や痣が目立つ。
「ま、今回は見逃してあげるよ。見たところ自分の能力についても認識が甘いし、服のどこを見てもパートナーの紋章がない」
グリーフシードを求めていた所を見るに、本調子で無かった事も容易に想像できる。
つまり今回の戦いは、さやかがハンデを背負っていた事が明らかだった。
そんな相手を殺しても、浅倉とのゲームには有利がつくが、どこかつまらない点がある。
「暇つぶしの礼だ、命は助けてやる」
杏子は懐からグリーフシードを投げつける。
「やるよ。それ使ってソウルジェムを浄化しな」
さやかは無言だった。聞いているのか、聞こえていないのか。
「で、次は本気で戦ってもらうよ。じゃないとマジで殺すから」
さやかは、ぼんやりと聞いていた。
全身が痛い。どこも折れていない様だが、それが不思議で仕方ない程。
あれから杏子には蹴られ殴られ吹き飛ばされ、完全な敗北を教えられた。
「大事な顔を狙わなかっただけ感謝してもらいたいよね。って言うか他のヤツはそうじゃないかもしれないんだから、気をつけなよ」
もしかしたら二度と外に出られない程にされるかもしれないんだから。
そう言って杏子はまた楽しそうに笑う。
「勝つのは気分がいいな。イライラがすっかり消えた、最高の気分だよ」
杏子は饒舌に語り、さやかの周りを歩いてる
勝者は敗者を見下す。これが戦いにおけるあるべき姿だろう。
「アンタ仲間がいるんだろ? そいつ等もいずれ殺す事になるからさ、そう伝えておいてよ」
杏子は踵を返し、歩き出す。
「じゃあね。最後に教えてあげるよ。おそらくアンタの魔法は回復だ」
「ッ」
「結構本気で殴ったけど骨も折れてない。雑魚がタフってお似合いの能力じゃん。せいぜいもっと磨いて立派なサンドバッグになってくれよ」
さやかも自分の魔法が回復と言うのは何となくは知っていた。
しかしまさか今日初めてあった杏子にバレるなんて――。
そのまま消えていく杏子。
残されたさやかはゆっくり身体を起こす。
まだ全身が痛い、目の前にはグリーフシードがある。
ポタリと、地面に雫が落ちた。
「うぅ……ッ! ううぅうッッ!!」
負けた。それも完全に。
「あんなヤツにッッ! ちくしょう……! ちくしょうッッ!!」
さやかの声は虚しく闇に溶けていくだけだった。
杏子ちゃんって、PSPのゲームの発言から、さやか達よりも年上疑惑あるんですよね。
ただ、まあ何にも考えてなかった可能性もありますわな(´・ω・)
まどマギも現在はいろんな人が脚本担当してますし。
書き手によってキャラクターに結構違うが出るのが面白いところだったりしますな。