仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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学校とデスゲームってベタだけどいいよね(´・ω・)

みんなも『突如授業中に異変が起こってクラスメイトがざわつく中、不適な笑みを浮かべる』練習はしておけよ


第29話 ユウリ様参上 上参様リウユ 話92第

 

 

「ッッ!!」

 

 

真司は目を開けると、しばらく呆けていたが、状況を思い出して慌てて飛び起きる。

ガイとあやせに負けた所までは覚えていた。

 

 

「それから……、どうなったんだっけ?」

 

 

頭をかいて周りを見る。

カフェの倉庫で魔女結界に突入したのだから倉庫にいる筈だ。

しかし周りは普通の部屋。特に目立ったものが無いシンプルな内装は、見覚えがあった。

 

 

「気がついたか」

 

「!」

 

 

扉を開けて入ってきたのは蓮。

そうだ、ここは蓮の部屋じゃないか。真司は飛び起きると、状況の説明を求めた。

 

 

「ああ、それは――」

 

 

蓮が言うには、あのカフェは立花の友人が経営している場所であり、アトリとも付き合いがあった場所だと言う。

蓮とも顔見知りだったため、友人である真司の姿も覚えていたようだ。

 

 

「お前が倉庫で倒れてるって電話があってな。引き取るコッチの身にもなれ」

 

「お、おお。悪かったな」

 

 

ため息をつく蓮。

 

 

「それで、何であそこにいた? 腹でも減ってたのか?」

 

「んな訳あるか! 襲われたんだよ参加者に!」

 

 

そこで真司と連の携帯電話が同時に音を立てる。

確認するとそこには手塚の名前が。どうやら同時送信のメールらしい。

"何か"ある時のために、蓮も渋々アドレスを交換しておいたらしい。

 

 

「どうやら、その"何か"が起こったようだな」

 

「え……?」

 

 

二人はすぐに内容を確認する。

そこに書いてあったのは、見滝原中学校がゲーム参加者によって魔女の要塞に変えられてしまったと言う事。かなり深刻な事態らしく、既に死人も出ているとか。

 

 

「た、大変だ!!」

 

「成る程。まさかこんな大胆な方法で一般人を巻き込んでくるとはな」

 

「今すぐ行かないと!」

 

 

真司は飛び起きてスクーターの鍵を探す。

同時に仕度を始める蓮、どうやら一緒に現場に向かう様だ。

 

 

「ちょうどいい、ナイトの力を試すか」

 

「おい! そんな言い方すんなよ!」

 

「安心しろ、俺も今回はお前らと戦おうとは思ってない」

 

 

ただ、蓮は鋭い目で見滝原中学校がある場所を睨む。

 

 

「調子に乗ってる奴には、おしおきが必要みたいだな」

 

「………」

 

 

蓮が何を考えているかはともかく。

関係ない人を巻き込む参加者には、真司としても強い怒りを覚えた。

しかしこれは、ゲームを止められない自分にも責任があるとも思う。

 

 

「と、とにかく一刻も早く学校に行って止めないと!」

 

「怪我はもういいのか?」

 

「こんなの全然平気だって」

 

 

真司はデッキを強く握り締め、蓮と共に学校を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの事態に気づいたのは真司達だけではない。

同じくして織莉子邸では織莉子とキリカが出発の準備を行う。

リュックサックにいっぱい荷物を詰め込んでいるキリカ、どうやら趣旨を完全に履き違えている様だ。

 

 

「織莉子~! おやつは何円までなのだろーか? バナナっておやつに入る?」

 

「キリカったら……」

 

 

織莉子は苦笑しながらも魔法少女の姿に変身。無数のオラクルの出現させて言葉を吹き込む。

彼女の魔法の一つである『レガーロ・オラクル』はメッセージをオラクルに記憶させて対象者に送る事ができる魔法だ。

 

どんな長文でも念じれば一瞬で記憶させる事ができる事に加え、指定した相手以外は言葉を聞く事ができないようにする事もできる。

つまり情報伝達に優れた魔法と言うわけだ。

織莉子はメッセージを入れたオラクルを佐野に向けて飛ばし、自分達は学校を目指すことに。

 

 

「!」

 

 

オラクルのスピードは速く、佐野の元にたどり着くのに時間はそうかからなかった。

今日も今日とて佐野についている百合絵。二人はどうやらデート中だった様だが――

 

 

「佐野さん?」

 

(マジかよ……!)

 

 

オラクルを手にした瞬間、佐野の脳に織莉子のメッセージが届く。

内容は芝浦淳と双樹あやせと言う参加者が学校を魔女の要塞に変えたと言う事。

そこで行われる殺人ゲーム、佐野はそれらの情報を一気に叩き込まれた。

 

 

「百合絵さん、ごめんっ!」

 

「え?」

 

「ちょーっと急用ができちゃって……! ま、また今度ね!」

 

「あ!」

 

 

仕方ない、お仕事だ。佐野は百合絵を振り切るようにして走り去る。

その背中を見つめる百合絵、悲しげに歯を食いしばって――、同時に決意のまなざしを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、嘘でしょ?」

 

 

魔女の結界に覆われた学校。

一般人から見れば学校と言う認識が消え、誰もが見滝原中学校など存在しなかったと言う記憶を刷り込まれる。

しかしゲーム参加者はそうでない。

 

 

「何よ、あれ」

 

 

北岡は車を道の脇に止めて外に出る。

たまたま見滝原中学校が見える場所を通りかかってみれば、そこにはもう見滝原中学校ではない物が建設されていた。

魔女結界に覆われた学校は、禍々しい城のようになっている。

魔女の巣窟としては合格点な建造物であろうが、北岡から見ればそれは悪趣味の一言につきる。

 

一体何が起こっているのか、北岡はジュゥべえを呼んでみる。

すると手塚同様、説明を行いにやって来るジュゥべえ。

 

 

『こういったイレギュラーが起きた場合は、ある程度執行者の邪魔にならない程度に説明をするぜ!』

 

 

魔法少女サイドでは同じくキュゥべえが説明を行っているところだろう。

北岡は事態を把握すると、ため息をついて車に戻る。

 

 

『ありゃ、放っておくのか?』

 

「当たり前でしょ。あんなの罠って言ってる様なもんだ」

 

『でも、あそこには美樹さやかの友達がいっぱいいるぜ?』

 

「だから? それ、俺と何の関係があるんだよ」

 

『お前、性格悪いな』

 

「どこが? リスク管理は人間の基本だろ」

 

 

北岡が笑うと、ジュゥべえは確かにと笑い返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『しかし驚いたよ、まさかグリーフシードをこんな風に使うなんてね』

 

「でしょ? 淳くんは天才なんだもーん♪」

 

 

校長室。

放送室と融合させたこの空間で、芝浦達は生徒の殺し合いをじっくりと堪能していた。

椅子にドッカリと偉そうに座る芝浦と、彼を後ろから抱きしめる様にしてモニターを見つめるあやせ。

立ち寄ったキュゥべえは、二人の発想に賞賛の言葉を述べていた。

 

 

「別に。魔女結界を同時に展開させるなんて、誰でも思いつく事でしょ。やろうとしないだけで」

 

『行う必要がないからね』

 

「おれには必要だった。見ろよ、また食い殺されてら。ははッ、グチャグチャだ」

 

「見て見て淳くぅん、また殺した人がいるよ☆」

 

 

声のトーンは冷めた様子だが、芝浦もあやせもその表情は本当に楽しそうである。

嬉々とした二人の雰囲気は、好きな玩具で遊ぶ子供と変わらない。

問題はその玩具が『他人の命』と言う事なのだが、二人には気にする素振りなど欠片とて無かった。

 

 

『ちなみに、本当に出口はあるのかい?』

 

「あたりまえじゃん。無かったらゲームにならないでしょ」

 

 

その辺りのフェアな精神も持ち合わせている様だ。

と言うよりも、芝浦は本当にゲーム感覚で楽しんでいるだけにしか過ぎない。

彼は大量虐殺がしたいだけではなく、生き残る方法がちゃんと存在するゲームを楽しんでいるのだ。

 

 

「面白いのはね、他人を殺したほうが生き残る確立が低いって事!」

 

『?』

 

 

あやせが嬉しそうに語る。

はてと首を傾げるキュゥべえ、三人殺した方が明らかに効率が言い様に思えるが?

 

 

「まあ、見てろって」

 

 

芝浦はモニタの一つを指差した。

そこに映っていたのは丁度今言った、生徒手帳を殺して奪った人物だ。

既に三つを手に入れたらしく、ココから出してくれと狂った様に叫んでいる。

 

 

「こっちの条件を満たした奴はさ、こうなるんだ」

 

 

光が迸り、その生徒を包み込んで消滅させる。

学校内の生徒達からしてみれば、学校から出られたのだと思っているのだろう。

しかし本当は違う。光に包まれた生徒は、最後のゲームを受けなければならないのだ。

 

 

「ルールは簡単、扉が二つある」

 

 

転送された生徒は、文字通り扉が二つある部屋に送られる。

そこからどちらかの扉を選んで先に進まなければならないのだ。その生徒は考えた末に、右の扉を選んだ。

 

 

「おお、正解!」

 

『なるほど、これで出られるんだね』

 

「ううん。人を殺しておいてそう簡単には出られないよ♪」

 

 

扉の向こうにはまた扉、今度は三つの扉が存在していた。

生徒は出られるものとばかり思い込んでいたために、発狂して再び右の扉を開く。

 

 

「ああ、残念」

 

『なるほど』

 

 

間違った扉を開けた場合、その向こうに待っているのはカエルの魔女『Gabriella(ガブリエラ)』だ。

非常にファンシーで、愛らしいデフォルメされたカエル。

そんなガブリエラが、大きな口を開けて待っててくれる。

 

 

『あ、食べられた』

 

「要するに生徒を殺して出ようと思った連中は、運試しにもクリアしないといけないのさ」

 

 

ちなみに運試しは計3回あり、次の扉の数は10個だと言う。

その中にある一つを選べた者が、外に出る事を許されるのだ。

 

 

「人を殺して出ようなんてさ、相当な悪党だよ」

 

「こうなって当然だね♪」

 

『………』

 

 

面白いだろ? 芝浦はキュゥべえに笑いかける。

対して冷めた様に首を振るキュゥべえ、面白いと言う感情は理解できない。

データを集めたいという興味深い思いはあるけれど。

 

 

『それに、面白いのかな? 世間的には悪趣味と言うんじゃないかい』

 

「むっ! 酷いなぁ」

 

 

あやせは頬を膨らませてキュゥべえを睨みつける。

 

 

『あくまでも人間が作った常識の範囲の事を言ったまでだよ』

 

 

キュゥべえは涼しい顔を浮かべている。

 

 

『それにしてもキミたちは命の尊さを日頃訴えている割には、命を軽視する行動しかとらないね』

 

「あんなのただの戯言だよ、馬鹿しか釣れないって。人間みんな平等とか言ってる馬鹿の気が知れないね」

 

 

芝浦はそう言ってモニタに写る死体を楽しそうに見ていた。

 

 

「人間ってのはさ、選ばれた奴とそうでない奴の二種類しかいないの」

 

『へぇ』

 

「で、おれは選ばれた側」

 

 

芝浦はニヤニヤと自分を指し示してみせる。

 

 

「そうじゃないゴミはさ、おれの玩具になるのがお似合いなんだよね」

 

『人間っていうのは、固体によって考え方が大きく違うものなんだね』

 

「それは違う。確かに人間を構成する思考は、一人一人が違うものかもしれないけど、根本は皆同じなんだ」

 

 

同時に大きく吹き出す芝浦。

使い魔を通して見ている映像が校長室には映し出されているのだが、何か面白い物を見つけたようだ。

 

 

「あははは! ほら、コイツ見てみろよ!!」

 

『?』

 

 

キュゥべえが見ると、そこには何か箱の様な物を武器にして生徒手帳を集めようとする女生徒の姿が見えた。

箱とはいえど角で思い切り殴りつけている様で、既に二人の人間を殺している。

 

つまり他人を犠牲にして生き残る方を選んだのだろうが、それだけならば別に笑うほどでは無い筈だ。キュゥべえは芝浦が大笑いする理由が未だ分からなかった。

 

 

「違うって、コイツ! ははは! コイツの持ってる箱だよ!」

 

『箱? ああ、そういう事かい』

 

 

女生徒が持っていた箱は、なんと"募金箱"である。

見滝原中学校に存在するクラブの一つであるボランティア部、彼女はその部長だった。

人を助ける為の箱で人を殺している。こんな滑稽な事はないと芝浦は腹を抱えて笑う。

 

 

「いっつも玄関で募金してくれとか気持ち悪い奴だったけど、結局他人に認められたかっただけでしょ」

 

 

本気で人を救う気なんて無かった、それがこの結果だと彼は言う。

 

 

「おれ大っ嫌いなんだよね、良い人ぶってる奴って」

 

 

次に芝浦が指差すのは、同じく他人を殺して生き残ろうとしている人物だった。

何とソレは相談室の先生である。人の悩みを理解してくれるなんて評判だったが、結局一番可愛いのは自分だったと。

 

 

「ウザイ奴ばっかだよ。要は良い事してる自分に酔ってるだけじゃん」

 

 

見返りが欲しくて偽善者ぶってるだけ。

相談者だとか、募金を送る相手を見下して自分は上の立場だと優越感に浸っているだけ。

そう言う人間の本性が露出されるのが、このマトリックスと言うゲームだと芝浦は笑う。

 

 

「んで、コッチを見てみな」

 

『?』

 

 

キュゥべえが視線を移すと、そこには見た目が派手な生徒が。

俗に言う不良と言う者だろう。普段から他人を見下している連中、しかし今は使い魔の恐怖に震えて情けない姿を晒している。

それを見て楽しそうに笑う芝浦とあやせ、一見自分は強いと、選ばれた者だと思っている馬鹿。

 

 

「でもそうじゃない、雑魚は何をしても――」

 

 

モニタに写る不良が使い魔に食い殺されていく。

ますます笑顔になる芝浦、本当に楽しそうだった。

 

 

「雑魚なんだよなぁ! あははは!!」

 

「ふふっ! あはは☆」

 

 

そこで芝浦は先ほどの言葉を繰り返す。

人間なんてだいたいが同じような物、そして自分達はそうじゃない。

 

 

「選ばれた存在って事」

 

『極端にも思えるけどね』

 

「んー?」

 

『人は恐怖でパニックになれば冷静さを失い、本来の自分ではない自分となってしまう。それならば生きたいと思う心が先行してしまい、愚行に出てしまうケースもある』

 

 

要するにキュゥべえは、生徒等の行動は芝浦によって強制的に引き出されたモノ。

これを本質と言うには少し違うのではないか?

しかし芝浦はそれをも否定する。

 

 

「要はこんな状況になったとしても善意を貫く奴が少なすぎる。結局人間なんて皆汚い思考を持ったゴミなわけ」

 

『じゃあ、キミ達がもし彼らと同じ状況になったらどうするんだい?』

 

「ならないんだよ。選ばれた奴はさ」

 

『ふーん。ボクには違いが分からないけどなぁ』

 

「は?」

 

 

芝浦はキュゥべえを見る。

そこには相変わらず無表情の彼が。

 

 

『ボクが【選ばれた者】として考えると、キミ達は【そうじゃない側】に思えるよ』

 

「………」

 

『まあいいや、頑張ってね』

 

 

そう言ってキュゥべえは二人の前から姿を消す。

 

 

「食えない奴だな。あの白いの」

 

「ほんとにね。なぁに考えてるのかサッパリ」

 

 

芝浦達は少し不満げに表情を歪ませるが、再びモニタに視線を移すとまた楽しそうに笑い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ッ! ハァっ!」

 

 

一方のほむら。一旦まどか達から離れて、ひたすらに出口を探していた。

まどか達は安全な場所にいるため、逆を言えば出口からは遠い筈。

 

 

『使い魔が多くて、かつ分かりやすい場所に出口はある』

 

 

と、先ほど芝浦から放送が入った。

だからこそほむらは必死に出口を探していたのだが、見える景色は凄惨な物だった。

 

 

(まさに地獄絵図ね)

 

 

殺しあう生徒達、逃げ惑う生徒達、既に死者は100を越えているだろうか。

なるべく使い魔を倒そうとは考えているが、元の魔女を倒さなければ話にならない。すぐに新しいのが出てきて終わりだ。

 

 

『聞こえるか暁美? そっちはどうだ』

 

『ええ、最悪だわ』

 

 

見つからない出口に、増える犠牲者。状況は悪くなる一方だった。

それを聞いて手塚はしばらく沈黙する。

 

 

『こういった場合は、最悪、結界を構築した者を倒す事を考慮しておいたほうがいいかもしれない』

 

『つまり芝浦を倒す事も考えておいたほうがいいと言う事ね』

 

『ああ、だが一番は出口を見つける事だ』

 

 

芝浦が学校内の様子を確認しているならば、当然ライアペアの様なゲーム参加者がいると言う事は知っているはず。

ましてや外部からさらに参加者がやって来る可能性だって十分に考えられえる。

 

 

『そうなると芝浦達も己の身を守るため、魔女を自分の周りに集中させるかもしれない』

 

『………』

 

 

ほむらは疑問に思う。

芝浦が何らかの形で魔女を使役しているようだが、一体どれだけの数なのかは見当もつかない。

ましてや、そもそも魔女を操ることができるとは驚きだった。

そんな事を考えながら辺りを探るほむら。すると誰の大声が聞こえてくる。

 

 

「出口があったぞぉおッッ!!」

 

「!!」

 

 

声がした方向に生徒達が雪崩のように押しかけていく。

そのあまりの勢いに、ほむらは思わず気圧される。

廊下は普段の学校より広くなっているが、我を忘れている生徒達で押し合いとなっている。

倒れる者、踏まれる者、踏んでいく者。

 

 

「落ち着いて! まだ出口と決まった訳じゃ――」

 

 

ほむらは叫ぶが、悲鳴と使い魔達の笑い声がその音をかき消してしまう。

 

 

「出口……」

 

 

本当ならば一刻も早く脱出したい所である。

ほむらは舌打ち混じりに『魔法』を使い、まどか達の所へ戻ることに。

途中、助けを求めていそうな生徒や、血まみれの生徒がいたが全て無視した。

若干の罪悪感を感じたが、ソコはしっかりと割り切る事に。

 

自分は人助けをしたくて魔法少女になった訳ではない。

そう心に言い聞かせて、ほむらは走る。

 

 

「ほむらちゃん!」

 

「ほむら! 出口があったって!!」

 

 

既にまどか、かずみも、その情報を聞いていた。合流した一同は、これからの事を考える。

 

 

「みんなを避難させる方がいいと思う……!」

 

 

まどかは、廊下の隅でうずくまる仁美達を見る。

こうしている間にも逃げている生徒達がいるのだ。使い魔を倒しつつ、出口を目指すのがいいと。

 

 

「待って。向こうがこのまま簡単に私達を逃がすと思う?」

 

「それは……」

 

 

ほむらはそれが気になっていた。

芝浦は自分達をゲームの駒としか見ていない。

つまり通常の考えを持った人間ではないのだ。そんな人間が魔法少女たちを逃がすだろうか?

それはない。だからこそ、他の生徒と一緒に出口に行けば、それこそ周りが危険に晒される可能性はあった。

 

 

「わたし、芝浦を止めるよ」

 

「かずみちゃん!?」

 

 

かずみは十字架を握り締める。

 

 

「ココでもしみわたし達が逃げたとして、魔女の城はこのままだし、残された生徒もいる」

 

 

それは結局問題を引き伸ばしただけで何も解決はしてない。

むしろ放置された芝浦は、また同じような事を仕掛けてくるかもしれない。

 

 

「だとしたら戦えるわたしが止めないと!」

 

 

確かにと、ほむらも頷いた。

 

 

「まどかとほむらは皆を逃がして!」

 

「あ、危ないよ一人なんて!」

 

「大丈夫、もうすぐ騎士の皆も来てくれるでしょ!」

 

 

それに結構わたし強いから。

そう言ってエッヘンと笑うかずみだが、まどかとしては了承できない提案である。

いくらかずみが強いからとは言え相手が悪すぎる。どこかにいるだろうサキや美穂と合流できればまだしも。

 

一方で、そんなまどか達の話し合いを、中沢と下宮はしっかりと見ていた。

 

 

「お、俺は……、夢を見てるんだろうか?」

 

「彼女達はッ、一体何者なんだ?」

 

 

隣では同じく言葉を失っている仁美がいる。

親友だと思っていたまどかに、全く知らない一面があった。

その部分に戸惑いがあるのだろう。

 

 

「………」

 

 

そして上条恭介。腕を組んで周りの生徒達を見ている。

ふと、話し合いを行うまどか達を見て、少しだけ唇を吊り上げた。

 

 

(やはり、彼女達は魔法少女だったって訳か)

 

 

見たところゲームに乗っている様子は無い。

上条としても、さやかを絶望させた原因とは思えなかった。

 

 

(そもそも彼女達はさやかの友人だった。いや待て、だとしたら彼女が絶望に染まっていくのを何の対処もせずに見ていたと――?)

 

 

それは良くない。

苦しむさやかを見捨てたと言う事ならば、殺してやりたい気持ちはあった。

しかし上条とてまどかの性格はよく知っている。

よく言えば優しい。悪く言えば愚直で弱弱しい。とにかくまどかがさやかを陥れたり、見捨てたりするとは思えないのだ。

 

 

(暁美ほむら。それに立花かずみ、か)

 

 

転校生二人は全く素性が分からないが、鹿目まどかの友人である以上、やはりさやかが魔女になった原因とは考えにくい。

それが上条の考えだった。

 

 

(とはいえ――)

 

 

まどか、かずみ、ほむら。この中に絶望の魔法少女と呼ばれる者がいてもおかしくはない。

織莉子から聞いた話だが、魔女になってしまえば元がどんな人間だろうと絶望を振りまく存在になる。

 

優しい性格だとしても、魔女になれば殺戮を繰り返すキラーモンスターになると言うわけだ。

ある程度は『性質』によって行動方針が決まるらしいが、人間である以上、どんな者にだって心に闇はある筈。

 

 

(まあ、その判断は織莉子に任せようか……)

 

 

そうしている内に、まどか達三人は答えを出したらしい。

とりあえずは先ほど通り、かずみが芝浦を倒すために上層に向かう。まどかとほむらが仁美達を保護して、出口を目指すと言う事に落ち着いた。

仁美達を逃がした後で、かずみに合流すると言う約束で、まどかも渋々納得した様だった。

 

 

「じゃあ気をつけてね、かずみちゃん……!」

 

「うん、そっちもね」

 

 

そう言ってかずみは黒いマントを翻して走り去る。

さあ、そうと決まればモタモタはしていられない。

ほむらは銃を構え、校内の様子を確認。そして中沢達に立ち上がるよう促した。

 

 

「行きましょう。ココを出るわよ」

 

「あ、ああ」

 

「仁美ちゃんも、はい!」

 

 

まどかは仁美の手を持つと、ニッコリと微笑んでみせる。

もちろんそれは作り笑いだ。まどかだってこの凄惨な状況に怯えているのだが、力を持つ自分がパニックになれば仁美達はより怖いはずだ。

だから無理やりに笑顔を貼り付け、元気を装う。

 

 

「行こう。仁美ちゃん」

 

「まどかさん……ッ、そ、そのお姿はなんですの?」

 

「っ、ごめん。今は話せないんだ」

 

 

仁美はそれを聞くと、不安そうな表情を浮かべながらもまどかの手をしっかりと握った。

しかしタイミング悪くプンペの群れが襲来。牙を向けてまどか達を標的とする。

 

 

「しつこいわね……」

 

 

一瞬の沈黙。

気がつけば、追ってきたプンペ達の眉間に一発ずつ銃弾が打ち込まれていた。

いつの間に? そう、これは暁美ほむらの魔法、『時間操作』の賜物だった。

 

ほむらは文字通り時間を操る魔法少女なのだ。

盾にある砂時計のギミックを起動させると、それは発動される。

主に使用するのは、時を『停止』させる事。ほむら以外の時間が止まり、魔女も人も魔法少女も皆ピクリとも動かなくなる。

 

この時間停止中にほむらは銃弾をプンペに向けて撃っていたのだ。

停止中は『ほむらが触れているものは動く』ので、銃弾は発射されて、少しだけ進んだところで停止する。

 

魔女の群れに銃弾を撃ち、そして時間停止を解除する。

すると一勢に弾丸は動き出し、プンペの眉間を貫いたのだ。

時間が止まっていたまどか達にとっては、一瞬で魔女の眉間に穴が開いたように見えただろう。プンペ達はそのまま、風船がしぼむ様にして倒れていく。

 

 

「さあ今のうちに――」

 

 

走り出す一同、しかし同時に倒れたプンペ達が一勢に動き始める。

魔女達は腕に空気を吹き込み、頭を風船のように膨れ上がらせた。

一瞬で元の状態に戻るプンペ。ほむらは舌打ちを行い、再び魔法を発動させる。

 

動きが止まった隙に盾から武器を取り出すのだが、次はハンドガンではなくマシンガン。

無数の銃弾はプンペの原型を留めない程の威力を見せた。

 

 

「!」

 

 

液状となり消し飛ぶプンペ達。

終わったかと息をつくが、何と液体となったプンペ達は一つに混ざり合い巨大なシルエットを形成していく。

 

新しく姿を見せたのは無数のプンペが一つになった巨大な魔女だった。

第二形態――、いや、コレが魔女の真の姿である。

 

(くっ! 銃が効かない……ッ?)

 

 

だったら爆弾ならどうだ?

ほむらは盾の中に手を入れて爆弾を掴むが、すぐに否定する。

爆弾は威力こそあれど、周りを確実に巻き込んでしまう。

 

例えばまどかのスターライトアローや、かずみのリーミティエステールニなどは、彼女達自身の魔法技である為に、他人を巻き込まない様に威力を『設定』する事ができる。

しかしほむらは既存の武器を魔力で強化しているだけ。手加減こそできるが、どれだけ魔力を下げても元の殺傷能力に戻るだけだ。

 

 

「くっ!」

 

 

今は逃げるしかない。

ほむら達は、全速力で出口の方向を目指す事に。

途中、何度も銃弾を撃ち込んでいく為にプンペの動きは大きく鈍る。

倒すことこそはできなかったが、足止めには十分だった。

 

そのうちに見えてくるのは巨大な門。

どうやらあれが出口と言う事か?

やけに分かりやすい場所に用意してある事に違和感を感じる。

 

 

「なんだよアレ……!」

 

「嘘――ッ」

 

 

ほむらや下宮は何となく分かっていたが、入り口と呼ばれる場所には既に別の魔女の姿があった。

キリンの魔女『Karin(カーリン)』、スカートを履いた少女の下半身に、上半身は文字通りキリンの首の魔女だ。

適当なデザインにも思えるが、逆にそれが異常性を引き立たせている。

 

不気味なコラージュ。

さらに巨大な姿がより恐怖を増加させていく。

カーリンは長い首を振り回して、出口を目指す生徒達を弾き飛ばし、倒れた所を次々に捕食していく。

長い首を振り子の様に動かして人を食らう魔女、最悪な程にグロテスクで悪趣味だった。

 

 

『ははは! ほらほらどうした? 早く魔女から逃げないと死んじゃうよー!』

 

『頑張ってねー☆』

 

 

生徒の悲鳴をバックに、楽しげな放送が聞こえてくる。

歯を食いしばるほむら。何て最低な連中なんだ。

あんなのが自分と同じゲーム参加者だなんて吐き気がする。

今までいろいろな魔女と戦ってきたが、それ以上の殺意を人に抱くなんて。

 

 

「なんだよ魔女って? 訳分かんないよ!!」

 

 

中沢は目に涙を浮かべてカーリンを見る。

すぐに目に映る生徒達に結界を施すまどか。

ほむらもバズーカーでカーリンの頭部を射撃し、大きく怯ませた。

 

効果はある様だが、生徒達が周りにいるため連射はできない。

もしも一発でも外してしまえば生徒に直撃するからだ。

 

 

「暁美さん! 鹿目さん!」

 

「!」「!」

 

 

下宮が後ろを見ながら叫ぶ。

迫ってくるのはプンペ。このままなら魔女に挟まれる事になってしまう。

誰もがそれを理解し、ますますパニックになる出口前。

 

 

「ほむら……ッ、ちゃん――ッッ!」

 

 

展開する結界が多ければ多いほどに、まどかの負担も大きくなる。

ほむらも本気を出したいが、生徒達が多ければ多いほどに動きは制限されてしまう。

そして何より気になるのはあの扉。アレは本当に出口なのか?

 

 

「うわぁあああああああああああ!!」

 

「「!?」」

 

 

そして、その時だった。

ガラスが砕ける音。プンペの頭上から降り注ぐ大量のガラス破片。

ほむらが上を向くとステンドグラスの一つが粉々に砕けている。

その向こうに見えたのは空、しかし青ではなく有り得ない紫色だったが。

 

 

「空?」

 

 

ここは一階のはず、学校は三階建てだから――

 

 

「!?」

 

 

何故空が見える?

もしかしたら結界が融合した際に空間さえも捻じ曲げられてしまったのか。

そして空から降ってきたのは――

 

 

「真司さん! 蓮さん!」

 

「おい蓮! もっと優しくおろせよ!!」

 

 

地面に落とされた龍騎と、ゆっくりと翼を広げて降りてくるナイト。

龍騎は尻を打ったのか、悶えている。

そうこうしている間に魔女達は、二人に狙いを定めていたが――。

ナイトは既にカードを発動していた。

 

 

『ナスティベント』

 

 

ダークウイングが辺りを飛び回り、超音波攻撃ソニックブレイカーを発動。

生徒達やまどか達には影響は無いが、魔女達は悲鳴を上げてのた打ち回る。

その隙にナイトは龍騎を引き起こす。

 

 

「俺はあの悪趣味なキリンを倒す」

 

「お、おしッ! じゃあ俺はあのふわふわしてる方を」

 

 

背中合わせとなり構える二人。

ソニックブレイカーの終了と共に二人は動き出す。

まず先に動いたのはナイトだ。デッキからカードを抜き取り、バイザーへセットする。

 

 

「ハァァァ……ッッ!!」『シュートベント』

 

 

ダークバイザーに纏わり着く疾風。ナイトはそのまま何度も剣を振るう。

すると発射される斬撃。風の刃・ウインドカッターは幾度と無くカーリンの長い首を切り裂いていった。

 

悲鳴を上げながら後退していくカーリン。

ナイトはその隙にダークウイングと合体して空に舞い上がる。

 

黒い翼を広げ、ナイトは空を疾走。カーリンを何度も切りつける。

カーリンはイライラしたように首を振り回し、纏わりつくナイトを吹き飛ばそうとするが、それは叶わなかった。

 

さらにそこで銃弾の雨がカーリンの脚に直撃する。

ほむらのアシストだ。衝撃を足に受け、カーリンの動きが鈍った。

 

 

「上出来だ」『ファイナルベント!』

 

 

マントがナイトを包み込み、巨大な槍に変わった。

 

 

「ハァアアア!!」

 

「!」

 

 

カーリンが目視した時には、もう飛翔斬が身体を貫いていた。

もともとほむらの攻撃でダメージも受けていたため、体に風穴が開いた魔女はそのまま崩れるように消滅していった。

浮かび上がるエネルギーはしっかりとダークウイングが捕食。これでナイトが強化されたと言う事なのだろう。

いずれにせよ、完全な勝利だった。

 

そして一方の龍騎。

プンペは銃弾や斬撃を無効化する強力な魔女だったが、唯一の弱点があった。

龍騎はそれをまるで理解していなかったが、幸いにも龍騎はその弱点を突く力を持っている。

 

 

「まどかちゃん! 決めるからッ、結界をお願い!」

 

「はい!」

 

 

龍騎に言われ、まどかは防御に集中する。

一方で龍騎は早々に勝負を決めるため、自身の紋章が書かれたカードをセットする。

 

 

「フッ! ハァァァア……ッッ!!」『ファイナルベント』

 

 

龍騎が手を激しく旋回させると、それに合わせる様にドラグレッダーも周りを飛び回る。

それは龍騎の盾となり、噛み付こうとしたプンペを逆に弾き飛ばした。

そのまま跳び上がる龍騎。空中で一回転した後に飛び蹴りの構えを取る。

同時に後ろにいたドラグレッダーから放たれる炎。それは龍騎に合わさり一つとなった。

 

 

「ダアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「ピギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

炎を纏ってミサイルのように突撃していくドラゴンライダーキック。

プンペはそれに反応する隙もなく直撃。全身に炎が広がり、一瞬で消滅していった。

どうやら魔女は『炎』に弱いらしい。たまたまではあったが、龍騎にとって相性のいい魔女だった様だ。

 

 

「よし、これで魔女は倒せたな」

 

 

魔女が死んだ事で、使い魔も大幅に減る。

とりあえず龍騎はパニックになる生徒を落ち着ける事に。

まず伝えたいのはあの巨大な扉の向こうは出口などでは無いと言う事だった。

 

 

「え!? そ、そうなんですか!」

 

 

頷く龍騎。

実は扉の向こうは地面など無く、崖になっているダミー。

要するに扉を開けて駆け出していく生徒を殺すトラップだという事だった。

 

二人は空を飛ぶ方法を持っていたため、崖を越えて学校に来る事ができたが、一般の生徒達ではココを抜ける事は不可能だ。

それを聞いて生徒達は疲れたように腰を抜かしていく。

 

 

「蓮さん! かずみちゃんが――」

 

 

そんな中、まどかは真っ先にナイトへ事情を伝える。

かずみが芝浦を止める為に奥の方へ向かったという事。

それを聞くとナイトは頷いて足を進める。どうやら、かずみと同じ考えだったようだ。

 

 

「俺も芝浦には話がある。ついでだ、かずみと合流するのも悪くない」

 

「俺は皆を助けてから向かうよ。アイツは一発ぶん殴らないと気がすまない!」

 

「……好きにしろ」

 

 

ナイトはそう言い残すとさっさと走り去ってしまう。

何だかんだでかずみが心配なのだろうか?

それは分からないが、とにかく今は生徒達を救出するのが先だ。

 

ドラグレッダーならば生徒達を背中に乗せて外へ連れて行く事もできるだろう。

龍騎は早速その事を一同に伝える。

助かる? よく分からないが、その事実を盲目的に信じて安堵する生徒達。

中沢たちは未だにポカンとして事態が受け入れられない様だが。

 

 

「でも、どうやってこんな城を作ったんだろ?」

 

「芝浦が何らかの力を使って、魔女を一気に成長させたと考えるべきね」

 

 

ほむらはそこで沈黙する。果たしてそんな事が芝浦達にできるのだろうか?

少なくとも何らかの特殊能力を使ったことは明白だ。

しかしあやせの魔法は炎を操る事だった筈。とてもじゃないがこんな事ができるとは思えない。

 

だとすれば他の何者かが芝浦にその技術を渡した? あるいは協力関係にあるのかもしれない。

思えばさやかの時だって一度倒した筈のゲルトルートが現れたり、魔女が自分達だけを集中的に狙ってきたりとおかしな点が多々あったじゃないか。

もしかすると、魔女を操作できる参加者が――

 

 

「ああん、そんな簡単に出ようなんてダ・メ!」

 

「「「!!」」」

 

 

その時、突如聞こえてきた声。

 

 

「イル・トリアンゴロ!」

 

 

一瞬だった。一瞬で扉前のホールに刻まれる巨大な三角形の魔方陣。

それらは龍騎達を捕らえると、次々に魔方陣の絵柄を追加していく。

同時に強くなっていく光。それに真っ先に反応したのはほむらだ。

 

 

「まどか! 結界を張って!」

 

 

かつ魔方陣から抜けられる物は今すぐに走れと。

しかしいきなりの事で、誰も動くことができず、ただ困惑するだけだった。

 

「ッッ!!」

 

 

仕方ない、ほむらは魔法を発動。

盾に仕込まれた砂時計を操作すると、時間が停止する。

ほむらが触れた物は動く事ができるので、魔方陣に入っている一部の生徒や仲間に触って外に連れ出していく。

 

 

「ねえ! これってどういう事なの! 何かの冗談なんでしょ!!」

 

 

パニックになる生徒達の声は全て無視するしかない。

ほむらとしても何と声をかけていいのか全く分からなかったのだ。

そして魔方陣の中には誰もいなくなった後、時間を戻す。

すると魔法陣が凄まじい爆発を起こした。もしも中にいたのなら、消し炭になっていただろう。

 

 

「な、何だッ!」

 

 

叫ぶ龍騎。

その言葉に反応して、跳び上がる影がひとつ。

 

 

「ヘイッッ! このユウリ様の事が、気になるご様子で!!」

 

「!?」

 

 

飛び上がった影は爆発の中でしっかりと笑っていた。

それもその筈、先ほどの魔法は彼女が仕掛けた攻撃なのだから。

コートを脱ぎ捨てて、その影は扉の上に立つ。

 

 

「おはよう諸君! この血にまみれた凄惨で素敵な朝に、運命の神はアタシ達をめぐり合わせてくれた!!」

 

「!?」

 

「今回は運悪くゲームに巻き込まれてしまった諸君。本当に残念だと思う。しかしこれもまた一つの!!」

 

 

奇跡――!

 

 

演劇の様に饒舌に話すのはユウリ。

 

 

「このユウリ! 魔法少女集会では13番だった!」

 

 

早々に打ち明ける。

目の色を変えるほむらとまどか、13番と言えば皆殺しを宣言した危険人物ではないか。

 

 

「皆逃げて!!」

 

 

まどかが叫ぶ。

訳も分からない生徒達だが、彼女の言う事が直接脳に命令された。

爆発に巻き込まれていれば死んでいた。そしてその爆発を起こした人物が目の前にいる。

それだけ理解できれば十分だ。生徒達はまたも悲鳴をあげて、やって来た道を逆戻り。

 

 

「フッ! 雑魚共が!」

 

 

ユウリは笑うだけで、特に生徒達を追いかける事はしなかった。

 

 

「仁美ちゃん達も下がってて」

 

「は、はい……!」

 

 

まどかも仁美たちを下がらせ、そこでユウリと対峙した。

 

 

「貴女、もしかして芝浦に協力しているの?」

 

 

ほむらの言葉を聞いて、ニヤリと笑うユウリ。

 

 

「正解とは言えないが、間違ってもないよね」

 

「?」

 

「アタシは環境とアイテムを芝浦に提供しただけ。調理したのは芝浦達であって、アタシは関係ない」

 

「だ、だからって、どうしてそんな事!」

 

「どうして? 決まってる」

 

 

ユウリは一瞬でリベンジャーを出現させ、右の銃で地面を撃つ。

そこには既にアドベントカードが置かれており、銃弾に当たる事で効果が発動された。

同時に左の銃の引き金を引くユウリ、発射されるのは黒い炎だ。

 

 

「アンタ等みたいな馬鹿を殺す為だろうが!!」

 

「!!」

 

 

それは単発の銃弾ではなく、火炎放射の様に繋がった物。

ユウリはそれを左右に振る事で、炎のカーテンをほむら達へ発射した。

 

 

「クッ!」

 

 

まどかは結界、龍騎はドラグシールド、ほむらは盾で炎を防ぐのだが――

 

 

「!?」

 

 

炎を受けた部分がみるみる石に変わっていくじゃないか。

まどかは結界が。龍騎はドラグシールドが。そしてほむらは盾が。

そこで思い出すのはオクタヴィア戦のホール。

あの時も突如飛んできた炎に能力を封じられてしまった、と言う事は――

 

 

「あの時の――ッ!!」

 

「あははッ! 今更気づくなんて遅い遅い! まーた同じ手受けちゃってさぁ、ほむらちゃんってばドジっ娘なんだね! ウェヒヒヒヒッッ!!」

 

 

誰かの声真似をしながら、ユウリは完全にほむらを見下した表情で笑い続ける。

 

 

「アンタの能力って最高に厄介だからさ! 盾をまずは封じないと!」

 

「!?」

 

 

ほむらは目を見開く。

やはり間違いない。ユウリは完全に時間停止の能力を把握している。

魔法は盾の砂時計を操作する事で発動できるが、石化してしまった今、それを発動する事は叶わない。

まして盾は武器庫の役割を持っているため、ココを封じられるという事は暁美ほむらの戦術を完全に封じた事にもなる。

 

 

「くッ!」

 

 

やられた! 一度ならず二度までも。ほむらは悔しさからグッと歯を食い縛る。

しかし危険なのはこれからだ。ユウリは能力が消えたほむらに銃口を合わせると、躊躇なく引き金を引いた。

 

リベンジャーから放たれる銃弾。

盾は石化したが、盾の役割を失ったわけじゃない。

ほむらは舌打ちを行いながら、銃弾を盾で防いだり、軽やかな動きでそれをかわして行く。

そうしている内にまどかがほむらを庇う様に立った。

 

 

「やめて!」

 

「わお素敵! 反吐が出るくらい素敵な友情!! でも嫌っ! ピンクと黒の食材なんてアタシは思わず吐いちゃうもん!」

 

「……っ???」

 

 

そこで初めてしっかりと目を合わせるユウリとまどか。

先に口を開いたのはまどかだった。震える声だったが、その目はユウリから反れる事は無い。

 

 

「ユウリちゃん、だよね? ユウリちゃんはどうしてこんな事するの?」

 

「……へ?」

 

 

ハテナマークを浮かべるユウリ。

 

 

「どうして? 何が?」

 

 

まどかは少し不安げながらも、笑みを浮かべる。

 

 

「戦う理由を聞きたいの。ユウリちゃんは、その……、戦う人でしょ?」

 

「もちろん。魔法少女集会の事を覚えててくれて、嬉しい」

 

「願いのためだよね? だったら協力できるのなら、一緒に問題を解決したいな」

 

「んー? あ、なるほど。アタシが叶えたい願いをゲーム中に叶えられれば、戦う理由はなくなると」

 

「うん、わたしは戦いたくないから――」

 

 

大げさに頷いていくユウリ。すると、まどかを見る目を徐々に潤ませていく。

 

 

「優しいね、あなた」

 

 

苦悶の表情を浮かべるほむら。

拳を握り締めて立ち尽くす龍騎。

動こうとする二人をまどかは制止させる。まどかは敵意をむき出しにしては、敵意しか返ってこないと思っていた。

こうやって真摯に話し合う姿勢を見せれば、向こうだって応えてくれると。

 

 

「じゃあ教えてあげる。でも、他の人に聞かれたくないから……」

 

 

ユウリは手に持っていたリベンジャーを投げ捨て、手招きを行う。

 

 

「来て、まどか」

 

「!」

 

「まどか!」

 

 

ユウリの様子がおかしい。

ほむらはまどかを行かせない様に叫ぶが、それをまどかが否定する。

戦いを止める為には当然ながら参加者同士が手と手を取り合わなければならない。

その為には疑うと言う気持ちを捨てなければいけないのだ。

それは難しい事かもしれないが実践しなければ前には進めぬと。

 

 

「それに、ユウリちゃんは武器を捨ててくれた」

 

 

まどかも弓を地面に置くと、ユウリのもとへ歩く。

 

 

「聞いてくれるの? まどか」

 

「うん、解決できそうなら、わたし全力で協力するよ」

 

 

笑顔で頷くユウリ。

そのまま、まどかの耳元に口を近づける。

 

 

「ごめんね。アタシ……、誰も信用できなくて戦ってたけど、貴女なら信用できそう」

 

「皆いい人だよ。わたし達はきっと協力できるもん」

 

「そうだね」

 

 

笑顔で頷くユウリ。

 

 

「あのね、まどか。アタシが戦う理由はね――」

 

「うん」

 

「復讐なの」

 

「え?」

 

 

物凄い衝撃がまどかの腹部を襲う。

まどかの呼吸を止めて、言葉を失わせるには十分だった。

ユウリは笑顔を浮かべたまま、まどかに膝蹴りを浴びせたのだ。

 

 

「え? ぐッ、つ――! ゆ、ユウリちゃん……?」

 

 

苦しいのか、涙を浮かべて膝を着くまどか。

見上げたとき、そこにいたのは下卑た笑みを浮かべたユウリの姿だった。

 

 

「お前ホントにゴミだな」

 

 

ユウリが指を鳴らすと、地面に落ちていたリベンジャーが消滅。

次の瞬間には、ユウリの手に収まっていた。

ユウリはまず、踵をまどかの肩に落とす。

 

 

「アタシは、魔法少女も騎士も大ッッ嫌いなんだよ!!」

 

「そ……ん――な」

 

 

まどかの瞳から涙が溢れる。

痛みのせいでもあるが、何よりもユウリから受けた攻撃に原因があった。

せっかく分かり合えると思っていたのに。ユウリには最初からそんな気持ちはなかったと?

 

 

「鹿目まどか。お前本当に馬鹿なプレイヤーだ。いい加減無理だって気づけ。バカか? アホか? イライラするよ本当」

 

 

ユウリはリベンジャーの引き金に指を伸ばす。

 

 

「ウオオオオオオオッッ!!」

 

「!!」

 

 

だがその時、龍騎がユウリにタックルを決めた。

ユウリの体が大きく移動し、放たれた弾丸がまどかに当たる事はない。

しかしユウリは地面に倒れるとすぐに照準を龍騎に変更。無数の銃声と共に、龍騎の体からシャワーのように火花が散る。

 

 

「うッ! グゥゥ!」

 

「何すんの、女の子に」

 

 

跳ね起きるユウリ。

龍騎は仮面の奥で表情を歪め、痛みを放つ胴を抑えた。

 

 

「お前ッ! 最低だぞ!!」

 

「アハッ! アハハハハ! サンキュー!!」

 

 

ユウリは笑いながら指を鳴らす。

すると彼女の隣に鏡像が出現して重なり合った。それは騎士となり、赤い複眼を光らせる。

 

 

「え?」

 

 

龍騎は思わず声をあげる。現れた騎士は自分と同じ姿をしているからだ。

真っ黒な龍騎。しかし複眼の形は異なり、真っ赤に光っている。

何だ? 誰だ? 一同が言葉を失う中で、ユウリの笑い声だけが辺りを包む。

 

 

「マイ、ベストパートナーのリュウガくん! 仲良くしてやってよ、オ・リ・ジ・ナ・ル!」

 

「ッ!?」

 

 

戸惑う龍騎。

オリジナル? 意味が分からなかった。

リュウガが同じ姿をしているのは偶然なのか、それとも何か理由があるのか?

 

 

「………」

 

 

リュウガは何も言わずに一歩、また一歩と足を進める。

声をかける龍騎を無視して、リュウガはデッキから一枚のカードを抜き取った。

それは無言の殺意。どうやら戦うつもりのようだ。

 

 

「お、おい! お前誰だよ!?」

 

「………」『ソードベント』

 

 

バイザーも龍騎と同じ形の、『ブラックドラグバイザー』。

そこに装填されるのは、龍騎と同じソードベントのカード。

唯一異なる点があるとすれば、リュウガのバイザーからは酷く濁った様な音声が流れるという事だ。

 

これは他の騎士にもないリュウガだけの音声。

現れたブラックドラグセイバーを握り締め、尚も足を進める。

 

 

「まどかちゃん、逃げて!」

 

「え……! でも!」

 

「いいから!」『ソードベント』

 

 

ドラグセイバーを構える龍騎。そこで銃声、ユウリが発砲したのだ。

 

 

「うッ、ツッ!!」

 

 

刃を盾にして銃弾を防ぐ。

剣を戻すと、目の前にリュウガが迫っていた。

 

 

「うわッッ!!」

 

 

リュウガの振り下ろした剣を、何とか剣で受け止める龍騎。

目の前には自分と同じ顔というのが何とも不気味である。

鏡を見ている様な、けれども完全には同じじゃない顔。

今も釣り上がった赤い瞳が龍騎の姿をしっかりと捉えていた。

 

 

「お前……ッ! どうして――ッッ! って言うか誰なんだよ!」

 

「………」

 

 

何を問い掛けてもリュウガは無言だった。

しかし逆に攻撃は激しさを増していくばかり。

龍騎は何度も攻撃を中止する様に叫ぶが、リュウガがそれを聞く事は無い。

一方でユウリは銃を構えてほむらとまどかを狙う。

 

 

「お願いユウリちゃん! 戦いなんて止めようよ!!」

 

「お断りだねクソ女! お前って本当にマズそうな意見ばっか! うんざりするよクソピンク!」

 

 

銃を交差させながら撃ちまくるユウリ。

まどかはほむらを庇うように立ち、ひたすらに結界を構築していく。

しかし防戦一方では圧倒的に分が悪い事など明白だ。反撃なき防御など、崩壊するのを待つだけではないか。

 

対してさらにユウリは連射のスピードを上げる。

踊るように、舞うように、銃を連射していった。

 

 

「ほらほらぁ、どうしたの? 結界が、バリア壊れるよー! 壊れちゃうよぉ! アハハハハ!!」

 

「うっっ! くぅぅッッ!!」

 

「駄目駄目、壊れちゃうぅう! らめぇええ! 的な事叫んだら、世の中の男はアンタの虜かも! うふ! あははは!」

 

 

 

抵抗するまどかをあざ笑う様なユウリ。

庇われるだけのほむらは、殺意の形相を浮かべて歯を食いしばっていた。

純粋なまどかの気持ちを裏切ったユウリ。許すわけにはいかないが、盾が石化していてはどうする事もできない。

 

一方で二人の様子を確認する龍騎。

このままではまどか達の身が危ない。龍騎は仕方ないと、手に力を込める。

 

 

「アンタ、許せよ!」

 

「!」

 

 

龍騎の動きが変わった。自分が燻っていては守れる者も守れない。

リュウガの剣を弾き返すと、ドラグセイバーに炎を纏わせて斬撃を発射する。

"龍舞斬"。使い魔ならば確実に倒せる威力だが、リュウガはそれを叩き切る様にして無効化する。

 

 

「!」

 

 

そしてまどか達を助けに行こうとした龍騎の肩を掴み、無理やりに引き倒す。

地面についた龍騎へ容赦なく浴びせていく剣や蹴り。

龍騎はそれを必死に耐えると、地面を転がって何とか距離を離した。

 

 

「しま――ッ!!」

 

 

だがそんな龍騎の前にはクロスの斬撃が。

リュウガも同じく『龍舞斬』を発動していた。

龍騎は何とか剣でそれを受け止めるが、威力が高すぎて防ぎきる事ができない。

黒い炎を身に受けると、苦痛の声をあげながら地面に倒れる。

 

 

「ア……、グッ!」

 

 

仰向けに倒れた龍騎。すぐに立ち上がろうとするが、既にリュウガが距離を詰めていた。

龍騎の胴体を踏みつけて動きを止める。抵抗するものの、どれだけ脚を掴んだり、殴りつけてもリュウガは怯む素振りを見せない。

 

そうしている間にもユウリはまどか達を攻め立てていく。

かなり危険な状況だった。このままだといずれまどかが限界を迎えるだろう。

その思いに龍騎が胸を抉られた時、異変は起こった。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「!」

 

 

アドベントを発動していないにも関わらずドラグレッダーが現れ、リュウガに突進をしかけた。

これは予想していなかったか。リュウガは背後からぶつかるドラグレッダーに対処できず、吹き飛ばされる。

転がるリュウガ。気絶したのだろうか、うつ伏せになったまま動かなくなる。

 

 

「サンキュー! ドラグレッダー」

 

 

龍騎は立ち上がり、すぐにまどかを助けようとユウリを睨む。

しかし停止するリュウガは、しっかりとデッキからカードを抜き取っていた。

真っ黒な龍が描かれたカードを。

 

 

「………」『アドベント』

 

 

それは、走る龍騎を遮る様にして現れた。

血の様な色をした目、そして真っ黒な体、ドラグレッダーの色違いとも言える存在。

ドラグブラッカーは、先ほどのドラグレッダーと同じく龍騎に突進をしかけて吹き飛ばす。

 

 

「グアアアアアッッ!!」

 

 

倒れる龍騎と、濁った咆哮を上げるドラグブラッカー。

その性質は『絶望』、全ての飲み込む邪悪なる闇の化身。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グゴォオォオオォォオォオオオオッッ!!」

 

 

互いに激しい咆哮をあげて威嚇しあうドラグレッダーとドラグブラッカー。

互いの姿が気に入らんとばかりに二体の龍は激しく吼える。

そして同時に立ち上がる龍騎とリュウガ、同じくして双方の龍から放たれる赤と黒の炎弾。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオッッ!!」『ストライクベント』

 

「………」『ストライクベント』

 

 

炎弾がぶつかり合い、激しい炎を散らす中。

龍騎とリュウガはそれぞれドラグクローと、ブラックドラグクローを装備して互いに拳をぶつけ合った。

 

打ち合いは均衡? いや、決着はすぐに訪れた。

打ち合いに負けて吹き飛んだのは龍騎だった。

二つのドラグクローをぶつけ合ったときに、リュウガだけ同時に炎を発射していたのだ。

戦闘センス、それが足りなかった龍騎は黒い炎を纏いながら地面を転がっていくだけ。

 

ドラグレッダーとドラグブラッカーの攻め合いも、後者が有利と言った様子だ。

どうやらスペックその物がリュウガ側に味方しているらしい。

 

さらにその間にも、ユウリは容赦ない攻撃でまどかの結界を破壊していた。

その度に新しい結界を構築するまどか。既に体からは出血が見られるが、それでも尚まどかはユウリを説得していた。

 

 

「お、おい何か……、やばくないか?」

 

 

ホールの端にいた中沢達は状況を見て、まどかたちの不利を察する。

 

 

「本当に夢を見ている様だ……」

 

「………」

 

 

焦る中沢と、汗を浮かべる下宮。尚も無表情で龍騎達を見ている上条。

そしてその背後では唇をかんでいる仁美がいた。

何が何だか全く分からない状況だ、しかし確実に分かる事といえば、友達が危険な目にあっていると言う事。

それは仁美にとって耐え難い状況である。

 

 

「私、助けに行きます!」

 

「えっ! やめておいたほうがいいよ! 危ないって!!」

 

「でも! まどかさん達が!!」

 

 

仁美は落ちたガラス片を掴んで走り出そうとする。

それを止める中沢。いくら何でも無謀すぎる。相手は確実に人間を超えた力を持っていて、ましてや銃を持っているじゃないか。

仁美が向かった所で何の力にもなれず殺されるのがオチだ。

中沢は仁美の腕を掴んで止めるが、彼女は納得できない様だった。

 

 

「このままじゃ私の大切な友達が死んでしまいますわ!!」

 

「!」

 

「もう……、もうこれ以上! 友達がいなくなるなんて嫌ッッ!!」

 

 

涙を流しながら訴えかける仁美に、中沢は何も言えなかった。

腕を掴む力も弱くなっていく。このままじゃ仁美が死ににいく様なものだ。しかし仁美の気迫に中沢は押し負けてしまった。

結果、仁美は中沢の手を振り払い足を進めようとする。

だがその時だ。新たな手が伸びたのは。

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「グあっ!!」

 

 

それは突然だった。

ユウリが大きく仰け反って攻撃を中断したのは。

聞こえたのは銃声。そしてまた一発。後退していくユウリと、その足もとに落ちた『弾丸』。

 

 

「誰? 素敵なパーティを邪魔する屑は!」

 

 

ユウリは歪な笑みを浮かべて、足下の銃弾を蹴り飛ばす。

 

 

 

「パーティ? 残念。あいにく俺は女の子を苛めて楽しむ変態じゃないんでね」『ミラージュベント』

 

「き、北岡さん!」

 

 

立っていたのはマグナバイザーを構えた騎士、ゾルダだった。

仁美を引き戻した後、ユウリ達の前に姿を現したのだ。

ゾルダはバイザーを連射してユウリをまどか達から引き離す。

同時にデッキから抜き取るカード。シュートベントだ。

 

 

「ハッ!」

 

「おっと!!」

 

 

装備されたギガランチャー。

契約モンスターのマグナギガの腕を模したランチャー砲から放たれる弾丸は、非常に速く強力だ。

しかしユウリは超反応で旋回してその弾丸を回避する。

ヒュウと口笛を吹いて汗を浮かべるユウリ。あれは中々威力がありそうだと。

 

 

「ちょっと待ってよ。女の子苛める趣味は無いんじゃないの? あんなの当たったらお腹に風穴開いちゃうよから」

 

「お前、タイプじゃないのよね。十年後も期待できなさそうだわ」

 

「あらやだ。セクハラですよ」

 

 

それに――、ゾルダは指をふる。

 

 

「安心していいのかな?」

 

「何……?」

 

 

眉を潜めるユウリ。

そういえば最初に別のカードを発動させていた様な。

 

 

「グゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「!!」

 

 

その時ドラグブラッカーに起こる爆発。

 

 

「なんだ!?」

 

「………!」

 

 

その隙がチャンスと、龍騎はリュウガにタックルを仕掛け、ドラグレッダーも尾で追撃を仕掛ける。

吹き飛ぶリュウガ。その隙に龍騎はまどかを守る為に走り出した。

 

 

「チッ!!」

 

 

龍騎を止めようと銃を構えるユウリ。

そこで気づく、背後に巨大な『鏡』があった。

厚い鏡はマグナギガを模している。つまりゾルダが生み出したモニュメントと言うわけだ。

 

 

「ムンッ!」

 

「ウッ!」

 

 

再びギガランチャーから放たれる弾丸。

ユウリは地面を転がってそれを回避するが、弾丸は背後にあった巨大な鏡『ギガミラー』に直撃すると、弾丸を弾き返して背後からユウリを狙う。

 

 

「あッぶ――!」

 

 

反応し、サイドステップを行うユウリ。

すると突如前方にもう一枚ギガミラーが地面から生えてきた。

弾丸は例外なくぶつかり、再度反射を行う。

 

が、しかし、既に一度目の反射でリュウガが動いていた。

デッキからカードを抜き取ると、それを空中へ投げていた。

ユウリもまたリベンジャーを撃ち、カードを貫く。

 

 

「ねー……!!」『アドベント』

 

 

蛸の魔女・マリレーナがユウリの前に現れ、弾丸を弾き返して無効化する。

しかしこれで先ほどのカラクリが完全に理解できた。

ギガミラーに当たった銃弾は文字通り反射されるわけだ。

これでゾルダはユウリを狙いつつ、反射した銃弾でドラグブラッカーを狙うようにミラーを調節していたのだろう。

 

 

「二段構えとは! いい、いいね! 凄くいい! 殺したくなる!」

 

 

ユウリが腕を天に向けて伸ばすと、リュウガのデッキが光り、一瞬でカードがユウリの手に収まった。

そのままカードを投げると、リベンジャーを乱射していく。

 

 

『アドベント』『アドベント』『アドベント』

『アドベント』『アドベント』『アドベント』

 

 

次々に魔女を召喚していくユウリ。

オランダの魔女、暗闇の魔女、犬の魔女、落書きの魔女……。

あっという間にホールを埋め尽くす魔女の群れ。

不安そうにまどかは表情を固くするが、ゾルダに焦る素振りは無かった。

 

 

「虫は光が好きだ。そして俺は光、群がりたいのは分かる」

 

「?」

 

「でも俺は虫が嫌いだ」

 

 

そう言ってゾルダが取り出すのは自身の紋章が刻まれたカード。

それをバイザーに装填すると、音声が流れる。

 

 

『ファイナルベント』

 

 

ゾルダの目の前、地面から現れるのはマグナギガ。

その性質は『均衡』。全てを平等に裁く存在であり、同時に北岡が悪として判決を下した者を『処刑』する役目を担っている。

 

ゾルダはマグナバイザーをマグナギガの背中にセットした。

するとマグナギガが有している全ての兵器部分が展開していく。

胸部アーマーは大量のミサイルが格納されており、脚部分からはキャノン砲が展開。腕や頭部にある銃口には光が収束し、エネルギーが膨れ上がっていく。

 

 

「おいおいおい……! マジかッ!」

 

 

表情を変えるユウリ。

すぐにマリレーナを戻して逃げようと走り出すが、仮面の奥でゾルダはしっかりと笑みを浮かべていた。

 

 

「じゃ、そういう事で」

 

 

引き金を引くゾルダ。

放たれるのはマグナギガに搭載されている全ての兵器だ。

一勢に放たれるビームやミサイル、ガトリング弾。全ての武力は一つになり、広範囲を破壊しつくす裁きの雨となる。

 

次々に魔女の群れへ着弾していく武力。

爆発の連鎖が魔女を次々に焼き尽し、衝撃で空間が震えた。

魔女の断末魔が木霊していく光景はまさに悲鳴合唱団。それは世界の終わりとも言える光景ではないか。

 

 

「うォオオオオオッッ!?」

 

 

爆炎の中に消えていくユウリ。

『エンド・オブ・ワールド』、ゾルダのファイナルベントはユウリが出現させた魔女を全て焼き尽くす。

圧倒的広範囲攻撃。爆風はフィールドに広がっていき、龍騎達をも巻き込む。

 

 

「うわぁあああああ!!」

 

 

衝撃で吹き飛んでいく龍騎。

リュウガはすぐに、ドラグシールドを出現させていたため、何とか踏みとどまっているが、それが限界のようだ。

まどかは結界を広げて、爆風からほむらや仁美たちを守り、ゾルダもマグナギガが盾になっている為ダメージは0である。

 

 

「ちぃいッ! まさかあんなふざけた攻撃があるとは――……!」

 

 

爆風に揉まれたユウリは焦げた前髪に息を吹きかけている。

さらにその時、地面が揺らめき、そこから巨大な白鳥が現れた。

何だ? 先ほどから目まぐるしく変化する状況に、ユウリはついていけない。

 

 

「皆! コッチ!!」

 

「ッ! 美穂!?」

 

「逃げるぞ! 真司!」

 

 

走ってきたのはファムだ。ブランウイングに合図を出すと、羽ばたきで強力な突風を発生させる。

吹き飛ばされぬように力を入れるユウリとリュウガ。その隙を狙って、ファムは仁美達をブランウイングに乗せる。

 

 

「逃げるつもりか! させるかよ!!」

 

 

ユウリは舌打ち交じりにリベンジャーを向ける。

だがそこでサキが前宙で一気にユウリの前に着地する。

 

「うォ!!」

 

「やらせんぞ!」

 

 

サキは踏み込み、右足でハイキックを行う。

それに合わせるようにユウリもまた右足のハイキックを繰り出した。

交差する脚。次は左足で同じ動きが行われる。弾かれる足と足。

先に動いたのはサキだった。右の拳でユウリを狙う。

 

 

「チッ!」

 

 

ユウリは腕をクロスにしてそれをガード。

しかしすぐにサキの左足が飛んできた。ユウリはそれもガードするが、そこで気づく。ただの蹴りじゃない。サキは足裏に魔法の電気を纏わせていた。

まるで心臓マッサージのように着弾と共に衝撃が一気に襲い掛かってきた。

気づけばクロスに組んでいた腕が解けてしまう。

 

 

「フッ!!」

 

「うごォ!」

 

 

サキは踏み込んで体を捻り、右足の裏でユウリの胴を打つ。

衝撃で後退していくユウリ。止まろうとしても、後ろに傾きすぎて上手くいかない。

ユウリは舌打ちを行い、持っていた二つの銃を後ろへ放り投げた。

そのまま倒れ――、いや倒れない。片手を地面につくとバク転を行いながら反動で後ろへ跳ぶ。

 

一気に斜め後ろへ跳ぶと、空中にあった銃をキャッチ。落下しながらサキを狙う。

しかしサキも魔法を発動。成長魔法で、動体視力を強化。銃弾の動きを見極め、最小の動きで回避していく。

それだけじゃない。サキは鞭を出現させると、それを伸ばしてユウリの胴体を絡め取る。

 

 

「うッッ!!」

 

「来い!」

 

 

サキは鞭を引き戻してユウリを強制的に前まで引き寄せると、腹部に掌底を叩き込む。

帯電しながら吹き飛ぶユウリ。地面に墜落すると、帯電しながらリベンジャーを落とす。

 

 

「グッ! が――ッッ!!」

 

 

麻痺しているようだ。さらに追撃を叩き込むため走り出すサキ。

 

 

「バーカ」

 

「うっ! ヅッゥ!!」

 

 

しかしユウリの周囲に二つのマシンガンが出現すると、自動で弾丸を発射。

無数の銃弾はサキに直撃していき、血が飛び散っていく。

 

 

「サキ! 引こう!」

 

「了解した」『ユニオン』『ソードベント』

 

 

ファムが名を呼ぶと、サキはウイングスラッシャーを手にする。

尚も迫る銃弾を耐えながら、力を込める。

すると長刀の刃に雷のエネルギーが集中していき――

 

 

「ハァアア!!」

 

 

長刀を思い切り振るうと、雷のカーテンがユウリの前に。

激しい音と光に、ユウリは思わず目を覆う

 

 

「………」

 

 

光が晴れると、そこには誰もいなかった。

ユウリはため息をつくと、立ち上がる。

 

 

「逃げられたが――、まあいいか」

 

 

今回の目的はまた別にある。その目的は――、達成できた。

リュウガもゆっくりとユウリの隣にやってくる。リュウガとしては何か不満が残るのか、拳を握り締めていた。

尤も、言葉を発する事は無かったが。

 

 

「ご苦労、戻っていい」

 

「………」

 

 

ユウリが合図を出すと、リュウガは鏡が割れるようにして消滅する。

 

 

「さて、用件は済んだし今回は引き上げるか」

 

 

ユウリが踵を返した時――

 

 

「……?」

 

 

足音が聞こえる。

ユウリは立ち止まり、耳を澄ませた。

足音は徐々に大きくなっていき、ついにはユウリの前に。

 

 

「あれ? 逃げたんじゃないの?」

 

「………」

 

「さっきまで隠れて震えていたはずの人間が、何故ココに?」

 

 

ユウリは訝しげな表情を浮かべて首を傾げる。

 

 

「恐怖でおかしくなったのか? あは、そりゃあ笑えることで」

 

「………」

 

「それとも、わざわざ死にに来たのかな?」

 

「………」

 

「ちょっとぉ、無視しないでよ」

 

 

少年は何も答えない。

ただ無言でユウリに向かって足を進めるだけだ。

その目には光がある様にも見えるし、逆に虚ろにも見える。

 

 

「なに? アタシに会いたくて残ったの? だったら最期にいい物見せてあげようか? アハ!」

 

 

ユウリは露出の多い身体を強調する様なポーズを取る。

申し訳程度に胸を隠している布をはだけさせ、少年を煽る。

対して、そこで初めて声をあげる少年。

 

 

「ああ。会いたかったよ。ユウリ」

 

「わお、これは熱烈なラブコール! うっとり、ゆでだこユウリ様になっちゃいそう」

 

 

そこでユウリはリベンジャーを少年に向けた。

 

 

「でも残念、好みじゃないの。せめて死体になった後にキスしてあげる」

 

「………」

 

「その後にドラグブラッカーに捕食させればずっと一緒にいられるわ、それで良いよね?」

 

 

殺害宣言。

しかし少年には焦りの一つも、まして恐怖すら感じられない。

 

 

「気が合うね。僕もお前のような下品な屑はタイプじゃない」

 

「は?」

 

「それに死ぬのはお前のほうさ」

 

 

上条恭介はポケットからデッキを取り出す。

目を細めるユウリ、それを見れば察する事は可能だった。

 

 

「……まさかステルスを通していた参加者がいたとは」

 

 

ユウリはふいに銃弾を一発、上条に向けて発射する。

変身前に殺せればと思ったが、やはり無駄だった。

上条を守るようにして現れたのは黄金の翼を持った不死鳥・ゴルトフェニックス。

そのあまりの神々しさに思わず言葉を失うユウリ。そして手で無限のマークを描いた上条。

 

 

「お前まさか――」

 

「変身」

 

「ッ!」

 

 

デッキをセットする上条。

すると鏡像が重なり合い彼の姿を騎士の物へと変化させる。

黄金の騎士、オーディンへと。

 

 

 

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