仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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更新しようとしたら廊下の方でガサゴソと聞こえてきました。
そうか、ついに私の家にも美少女幽霊がやって来たのだな。
と、思いました。

生きている私と、死んでいる彼女の甘く切ないボーイミーツガールが始まるのだな。
夜の間だけの短い恋物語が始まるのだな。
そう思い、わくわくしながら確認しに行きました。







ゴキちゃん、でした。


絶句して震える私の前でヤツはクロックアップで逃げていきました。
最悪です。はじめてです。最悪です。眠れません。

更新したら戦ってきます。

みなさん、今までどうもありがとう!





第36話 リーベエリス スリエベーリ 話63第

 

 

 

 

それはある日の事だった。

 

 

「城戸真司だな」

 

「え? ああはい、そうですけど……」

 

 

朝。真司の家には強面でスーツ姿の男たちがゾロゾロと。

一体なんなんだと怯んでしまう。気づいたのは外にパトカーが何台も停まっている事。

これはまさか――

 

 

「殺人容疑で逮捕する」

 

 

逮捕……。

 

 

た・い・ほ!?

 

 

「えええええええええええええええええ!!」

 

 

その言葉と共に男たちは真司を取り押さえて、腕に手錠をかける。

 

 

「待ってください! 誤解です! きっと編集長だ! あの人が悪いんだ!!」

 

 

とてつもなく失礼な事を叫んだが、仕方ない。

人間とはパニックになると冷静な判断ができなくなるものである。

ましてや真司は本当に身に覚えが無かった。

 

 

「分かった! 大砲だ! はっは! やだな! そう言ってくださいよ! いやあの俺って高校時代は大砲のモノマネが上手いって評判だったんですよ! じゃあ見ててくださいね、一発デカイのブチかましますよ! はい、どッッかーん! なんてね、ははは!!」

 

 

フレンドリーに話していたつもりだが、気づけば真司はパトカーの中にぶち込まれていく。

 

 

「はは、は……」

 

 

サイレンが鳴ってパトカーが発進した。

ひょっとするとこれは冗談じゃ済まないのではないか。

ようやく頭が回り始めてきた。一体どうしてこうなった? 真司は青ざめながら考える。

 

まず身に覚えは無い。少なくとも逮捕される事はしていないと神に誓える。

たしか警察は殺人容疑と言っていた。咄嗟に編集長のせいにもしてしまったが、真司は編集長を良く知っているし、ましてや尊敬している。そんな事をする人間ではないと、これまた神に誓えるのだ。

 

 

(マジかよッ、神様……!!)

 

 

結局何も分からず、真司はただパトカーの中でうな垂れるしかできなかった。

しかし本当にどうしてこうなったのか。

時間は大きく遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仲直り?」

 

「ええ。やっぱりいがみ合ったままで終わるのは悲しいわ」

 

「じょぉオオオオオオオオだんッッだロッッ!?」

 

「!?」

 

 

本を読んでいた上条は、絶叫に近い声を聞いて思わず肩を震わせた。

学校での一件が終わってから、織莉子陣営もまたしばらくは動きを潜めている。

と言うのも、芝浦達の死によって未来が書き換えられているのだ。

 

織莉子の計算では、芝浦たちに未来を大きく変える価値は無い。

変わる未来も、計算内に終わるだろう。

問題はやはり鹿目まどか、浅海サキ、立花かずみ、暁美ほむらの辺りだ。

 

オクタヴィアが死んだ時、大きな揺らぎを観測した。

普通に考えれば、さやかに近い魔法少女が絶望の魔女ではないかと思うのは当然である。一番気になるのは立花かずみ。何故か彼女がいると未来をうまく視れない、ノイズが掛かると言うのか。砂嵐になると言うのか。

 

まあ色々と気になる所はあるものの。今の織莉子は友を気遣う優しい少女だ。

織莉子はキリカに、パートナーの東條と仲直りをしたらどうなのかと持ちかけた。

だがキリカは既に『東』の文字を見るだけでも変なブツブツができるまでに酷い状況に。

 

 

「前にも言っただろ!? アイツは織莉子の考えを否定した糞馬鹿●●●野郎なんだぞーッッ!!」

 

「こ、言葉が汚いわ。落ち着いて!」

 

 

キリカは中指を立てて暴言を連呼している。

確かに織莉子とて、考えを否定されるのはいい気はしない。

しかしこの世にいる人間は、一人一人違う想いや、心を持っている。

だからこそ、人は人になり得たのだ。

気に食わないから拒絶するなんて、それこそ人としてはナンセンスだ。

 

 

「彼の気持ちも理解してあげて。ねえ? キリカ」

 

「嫌だよ織莉子! あんなヤツ本当は今すぐにでも八つ裂きにしたいんだ!!」

 

「そこをなんとか。私は気にしてないから」

 

「いやだい! いやだい! 仲直りなんて絶対に嫌だい!!」

 

 

キリカは床に倒れて、ダダをこねる様に暴れまわる。

 

 

「困ったわ……」

 

 

ため息をつく織莉子。

キリカがこう言い出すと、中々意思を曲げないのだ。

 

 

「どうしたんだい? さっきから」

 

「ええ、上条くん。実は――」

 

 

説明を行うと、上条は首をかしげる。

 

 

「本人がどうしても嫌なら、それでいいんじゃないかい?」

 

「そうかしら? でも……」

 

「この世には、どうあっても分かり合えない人達がいる。キリカと東條さんもそう言った類の間柄なんだろう」

 

「私は仲直りをしてほしいんですけど……」

 

「無理にそうさせても逆効果じゃないかな。関わらないと決めたら、距離を置いた方がいいと思うけど」

 

「私もそれは考えました。貴方と……、だいたい同じ意見ですわ」

 

 

しかし、キリカの事を想うとどうしても切り捨てられないのだ。

 

 

「キリカと東條さんは似ていると思うんです」

 

 

上条は耳を疑った。

達観したような。悪く言えば暗い東條と、常にハイテンションなキリカが似ている?

 

 

「何を見て、そう思うんだい?」

 

「ふふ。これでも会ったばかりの時は、別人みたいだったんですよ。キリカ」

 

 

織莉子はまだジタバタしているキリカを見ていた。

 

 

「上条くんは、美樹さんと喧嘩をした事は?」

 

「……あるよ。今にして思えばほとんど僕が悪かった。八つ当たりさ。けれどいつも先に謝ってきたのは彼女だった」

 

「つまり辛い時、美樹さんは貴方の支えになってくれたのですね?」

 

「そう、だね……。僕は愚かだったから彼女に甘えるだけで、傷つけてばかりだった」

 

 

今の自分があるのは、さやかがいたからこそだ。上条の声が震える。

織莉子はそこに大切なものを見出していた。

人は人によって支えられていく。人は一人じゃないから生きていける。

辛い時は誰かに甘え、悲しい時は誰かに助けられて、心を持ち直す。

 

 

「家族、幼馴染、そして友人。誰もが人との関わりの中に安らぎや安定を求めているわ」

 

 

人は人に縋って生きていく。

なのに今、キリカが縋れるのは恐らく織莉子だけ。

キリカは織莉子以外に友人がいない。過去に一人だけいたらしいが、喧嘩別れをしてしまったとか。

 

 

「家族は?」

 

「キリカの両親は、彼女が幼い頃に離婚しました。キリカは父親の方へついて行ったみたいですが……」

 

 

父は別の女性と再婚したらしい。

キリカへの愛情を失ったわけではないのだが、いかんせん相手の女性とはうまくいかなかった。どうにもばつが悪く、現在は家を飛び出して織莉子の家に住んでいるのだ。

 

 

「友人として、私はキリカにもっと幸せになってほしいんです」

 

「………」

 

 

目を細める上条。

織莉子は利口だ。きっと自分には見えていない物が見えているのだろう。

そんな織莉子が、切にキリカの幸せを願う。まるで今の状態が幸せでは無いと言う様に。

 

 

「……まあ僕も君には世話になっている。恩返しくらいはするよ」

 

「?」

 

 

上条はキリカの方へ近づくと、目線を合わせて肩を持つ。

 

 

「落ち着いて」

 

「はぁ。どーしたカミジョー」

 

 

織莉子のパートナーだからか、割とすんなり言う事を聞く。

 

 

「キリカ。東條さんは、誤解しているんじゃないだろうか?」

 

「ごかい?」

 

「ああ、織莉子は素晴らしい人間だ」

 

 

「そうだとも! 流石はカミジョー、話が分かる!」

 

 

キリカは何度も首を縦に振る。

織莉子の良さを理解できない東條は嫌い。そういう事だろう。

 

 

「だがもしも東條さんが、織莉子が素晴らしい人間だとは知らず、些細な勘違いから誤解しているとしたら?」

 

「???」

 

「どうだい? ここは一つ、僕と織莉子も協力するから。彼の誤解を解いてあげようじゃないか」

 

「む、むむむ!」

 

 

御免したい所だが、上条の提案は織莉子を否定しているようでどうにも気持ちが悪い。

 

 

「じゃ、じゃあ一回だけ……」

 

 

渋々退出していくキリカだが、話し合う事は決めてくれたらしい。

織莉子は上条にお礼を言って微笑んだ。

 

 

「ふふっ、キリカってば、上条くんに弱いみたいですね」

 

 

もしかしたら上条もキリカにとって良い友人か、あるいは理解者だったり――

 

 

「まあ最悪、東條が鹿目まどか達に嘘を吹き込まれたと言えばいいさ」

 

「……っ」

 

「そうすれば、キリカの怒りを上手くコントロールできる」

 

「そう――、ですね」

 

 

織莉子は自分を恥じた。

キリカにパートナーとの絆を大切にしてもらいたい理由は、織莉子自身絆を育めないからだ。上条はキリカを上手く利用しようと考えている。それは織莉子も同じではないか。

利用し合うなかで、仲良く絆だのと口にできる訳が無い。

 

ましてや上条は静かに、そして確実に狂いはじめている。

さやかの為なら、友人だった人間を簡単に殺してみせた。

 

果たして上条はありのままの美樹さやかを求めているのか?

それとも自分の事を受け入れてくれる、都合のいい美樹さやかを求めているのか?

それは織莉子には分からないし、特別興味も無かった。

だから本当のパートナーにはなれないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

手塚海之は目を丸くしていた。

学校が終わり、帰ろうと玄関に足を運んだならば東條の姿があった。

 

 

「キリカ達に呼ばれたんだ、一緒に来てくれないかな?」

 

「なら俺のパートナーに連絡するから待ってくれ」

 

「戦いじゃ、無いと思う。場所ファミレスだし」

 

「ファミレス? どういう用件なんだ?」

 

「ほら、これ、メール」

 

 

手塚は東條の携帯を覗き込む。

 

 

「仲直り?」

 

「そうなんだ。僕としたいって……」

 

 

キリカからのメッセージには、仲直りがしたいから帰り道にあるファミレスに来てくれとだけ書かれていた。

 

 

「喧嘩をしていたのか?」

 

「分からない。でも仲直りって言ってるんだから、してたんじゃないかな?」

 

「……ファミレスに行ったら、待ち伏せしていたオーディンに黒焦げにされるなんて事は?」

 

「人の集まる場所でそんな事をするのかな?」

 

 

織莉子は参戦派だが、無差別に殺すと言うことはしない。

絶望の魔女を狙うのだ。だからこそ、騎士である東條はそこまで危惧していなかった。

 

 

「でもやっぱり僕だけじゃ不安なんだ。ついて来てくれないかな?」

 

「……は?」

 

 

ここで最初に戻る。

そこからの行動は一方的だった。

東條は手塚の返答を待たずして、腕を掴むとファミレスを目指す。

手塚としては半信半疑だった。一応、自分達と織莉子は敵のはずだ。

サバイバルゲームの最中にレストランで会合なんて――

 

 

「ああ、こちらです」

 

「………」

 

 

普通にいた。

笑顔で手を振る織莉子。その隣ではキリカが目つきを悪くしてチョコレートパフェを貪っている。

 

いや、本当に目つきが鋭い。

滅茶苦茶口の周りを汚して東條を睨んでいる。

 

 

(しかしおかしい。仲直りをしにきたのに何でこんなに睨んでるんだアイツは……)

 

 

早速のラビリンス。

そうしていると、手塚たちも席につく。

 

 

「ありがとうございます。わざわざキリカの為に来てくれて」

 

「………」

 

 

東條が織莉子と会話している間に、手塚は周囲を確認する。

織莉子のパートナーらしき人物がいないかどうかを探るつもりだった。

 

 

「安心してください。今日は戦いに来たのではありません」

 

「!」

 

「仲直りです。それだけが目的です」

 

「……一応、俺達は敵同士でいいんだよな?」

 

「それは貴方たちの考え次第です」

 

 

手塚は何も言わなかった。

むしろチャンスかもしれない。何か情報を引き出せるかもしれないからだ。

 

 

「まあいい。それより仲直りと言うのは」

 

「ほら、キリカ。東條くんにアレを」

 

「むぅぅうぅ!」

 

 

キリカは不満そうに、東條へ綺麗に包装された小箱を渡す。

 

 

「なにこれ?」

 

 

東條が首をかしげると、キリカが歯切れ悪く言葉を並べる。

 

 

「前は……、ぃぃ言い過ぎたよぉ! だからコレ、お詫びの品!!」

 

「ありがとう……」

 

 

東條はキリカから箱を受け取ると、早速中身を確かめて見る。

 

 

「これって」

 

「夜なべして作った(わら)人形」

 

「ブッ!!」

 

 

水を零す手塚。

東條の写真が貼り付けてある藁人形がこんにちは。

おまけに、しっかりと釘まで刺してあるじゃないか。

もうブッスリと東條の頭部を貫通してらっしゃる。

 

え? 何? こいつら仲直りするんじゃないの?

手塚は困ったように視線を泳がせる。関係と言うよりも、存在に止めを刺している様にしか見えない。

 

 

「わざわざ僕のために……」

 

「え゛ッ!?」

 

 

嬉しいのか? 喜んでいる? 何で? 気づいてないのか? お前呪われているぞ!!

等と色々思うところはあるが、手塚は全ての言葉を飲み込んだ。

欠片とて理解できないが、東條は嬉しいらしい。

そういうペアなのだ。きっと。だから第三者が口を挟むものじゃない。

 

なので、手塚は自分のやるべき事に集中する。

わざわざ危険を承知でやってきたのは、織莉子と接触するためだ。

 

 

「美国織莉子。少しだけ、二人だけで話がしたい」

 

「……今日、私達は付き添いの立場です。主役はキリカと東條さんですよ」

 

「なら尚更、邪魔者は消えないとな」

 

 

織莉子は微笑み、無言で席を立つ。

ついていく手塚。二人は入り口近くの待合室にやって来る。

今日は客も少ない。そこには手塚と織莉子の二人だけ。

 

 

「美国織莉子。聞きたい事は二つだ。お前らは参戦派なのか? そして学校で俺たちに告げた言葉の意味を知りたい」

 

「このゲームの開始を告げたきっかけが何か、ご存知でしょうか」

 

「巴マミと須藤雅史の死だろう?」

 

「ええ。それは私達が仕組みました」

 

「!!」

 

 

あまりにもアッサリと言ってみせる。

織莉子は説明を続ける。まずは須藤に接触して、歪んだ正義感を刺激する事から初めた。

遅かれ早かれ、須藤が直接的に悪人を裁くことは視えていた。

だから、あの時は仲間だったユウリに指示を送り、須藤に接触を試みた。

 

ある時はいじめを苦にして自殺しようとしている少年を演じさせ、ある時は暴漢に家族を殺された未亡人として接触。

須藤に被害を訴え、善意が殺意に変わるように刺激を続けた。

 

 

「一つが崩れれば、連鎖が起こります。まんまとおびき寄せられた巴マミは、我々の仕組んだ罠にかかり、魔女になったのです」

 

 

魔法少女が絶望する事によって魔女になるというのは、織莉子は契約時から知っていた。

それを使えば仲間割れをはじめとして、いろいろ応用できるのではと思っていたところだ。

 

 

「結果はご存知のとおり、今に至る訳です」

 

「何故そんな事を――ッ」

 

「決まっています。私はこの腐ったゲームを否定し、世界を救う為に戦っています」

 

 

織莉子は少し妖艶な笑みを浮かべて手塚を見た。

その目には偽りなど感じない。信念の光が宿った目だ。

事実、織莉子に嘘はない。文字通り世界を救う為に戦っている。

 

 

「巴マミや美樹さやかに手を下した事さえ、世界を救う為だったと言うのか?」

 

「手塚さん。貴方は戦いを止めたいと思っていますか?」

 

「ああ、俺はその為に戦っているつもりなんだがな」

 

 

織莉子はそのまま手塚に問うた。

戦いを止めるとは一体どういう事を指すのか。

参加者を誰も犠牲にせず、かつワルプルギスの夜を倒す事を言うのか?

だとすればソレは大きな勘違いをはらんでいると織莉子は言った。

 

なぜならば彼女もまた、手塚と同じ志を目指しているからだ。

織莉子もまた、戦いの終わりを望んでいる。

 

 

「二つ目の質問に答えましょう。私の力は未来予知です」

 

 

織莉子は一つの未来を提示する。

それは学校のホールでも示唆していた事だ。

同時にココが一番のポイントでもあると強調してみせる。

 

 

「それは全てに収束していく未来」

 

「ッ?」

 

「このままでは誰が勝っても、誰が生き残っても、世界は崩壊の未来を辿るでしょう」

 

 

確かに、戦い止めると言う考えは立派だ。

だが戦いを止めるとは、一体どういう意味を含んでいるのか?

そこをもう一度考えてほしいと織莉子は言う。

 

 

「目先の目標では、結局滅びを迎えるだけ。先を見た行動が望ましいとは思いませんか?」

 

 

ゲーム攻略の果てに、参加者達は生きることを望んでいる。

しかし考えても見て欲しい。ゲームだけをして生きる人生があるだろうか?

 

 

「手塚さん。貴方は戦いを止めてどうしたいのかしら?」

 

 

誰かを守るために戦う者。

死にたくないから協力し合う者。

いずれにせよこのままでは確実に死が訪れるのだ、それも近いうちに。

 

 

「結論を言いましょう手塚さん」

 

「結論?」

 

「はい、この戦いの本当の敵です」

 

 

それはデスゲームに参加する者達ではない。

ではこれを仕組んだ運営、つまりキュゥべえ達か?

違う。キュゥべえ達を殺す事は不可能。では何か? 一体何がこのゲームの裏にいるのか?

 

 

「答えは一つ。私達がやるべき事は絶望の魔女を殺す事です」

 

「絶望の魔女……?」

 

 

頷く織莉子。

全ての魔女を超越した存在。

それはワルプルギスを上回るかもしれない程の力を持つ混沌。

 

 

「ワルプルギスの夜は複数の魔女を合わせた合成獣(キメラ)だと情報を得ています」

 

 

無数の魔女の集合体なのだから、それは強いはずだ。

しかし絶望の魔女は一人の魔法少女から生み出される存在。

にも関わらずその力はワルプルギスを上回る。

 

 

「想像しただけでも恐ろしい……!」

 

 

現に織莉子は、その姿を未来予知を通して確認している。

なんと恐ろしい姿か、なんと恐ろしい力か。

思い出しただけでも震えてくる。

 

 

「命と言う命が、全てあの魔女によって壊されていく」

 

 

美しく、そして一瞬で。

思い出したのか、思わず織莉子は口を押さえた。

 

 

「生きとし生ける全てのものを消滅させる最悪の魔女。それが参加者の一人だと言うのですから、さらに驚きです」

 

「そんな――、まさか」

 

「信じられないのは分かります。しかし信じてほしい」

 

 

織莉子は頭を下げた。

マミやさやかを犠牲してまでも、その正体を知らなければならなかった。

幼いゆまを犠牲にしてまでも、勝てる環境を整えたかった。

 

 

「なんとしても排除しなければなりません。どれだけの命を犠牲にしても、ヤツだけはこの世に生み出してはいけない!」

 

「だが……!」

 

「ありがちな話ですが、天秤の上に乗せられた少量の命と大勢の命。犠牲にするなら、私は迷わず少量を選びます」

 

 

織莉子は命を悪戯に奪い合うゲームは反吐が出ると嫌悪感を示している。

しかしその先に絶望の魔女を倒すヒントがあるのなら、迷わず参加する。

多くの命を犠牲にしても絶望の魔女をを倒さなければ、人類に未来は無い。

 

 

「私を疑うのならばこの場で私を殺してください」

 

 

織莉子は自分のソウルジェムを手塚に渡した。

 

 

「お前には未来が視えてる」

 

「詳しく見えるわけじゃありません。貴方が握り潰す未来がそこにあるのかも」

 

「……俺は殺し合いを望んでいるわけじゃない」

 

 

手塚は織莉子にソウルジェムを返す。

織莉子のソウルジェムは欠片の濁りもない。手塚を疑うことすらしなかったようだ。

 

 

「賢明な判断です」

 

「だが気に入らないな。お前達の計画で人が死んでいる。それは許されない話だ」

 

「先程も言ったように、全ては世界を救うためです。我々には時間がない」

 

 

織莉子は手塚を睨む。

感情的な話をしたいんじゃない。ここは大人の話がしたいのだ。

全てを割り切った話が。

 

 

「……絶望の魔女を止める方法は優勝時の願いか。孵化前に母体を殺す事だけか?」

 

「ええ。絶望の魔女が覚醒すれば後は終わりです。いかなる未来も滅びを予知しています」

 

「つまり俺達は大きな爆弾を抱えた状態でゲームを行っているわけか」

 

「その通りです。勘違いしないで欲しいのは、絶望の魔女はワルプルギスよりも強い。今残っている参加者が全て手を組んだとしても勝てないでしょう?」

 

「そんなにか? 俺は何度か魔女と戦ったことがあるが……」

 

「詳細は私もまだはっきりとは。しかしこれは事実なんです」

 

 

いかなる選択も間違えられない。

もしも絶望の魔女が生まれればそれで終わり、世界は滅ぶのだ。

 

 

「一刻も早く絶望の魔女を殺す必要があるのだと言う事を、どうか理解していただきたい」

 

「だが――、俺は周りの人間を巻き込むやり方は」

 

「……手塚さん」

 

「ッ?」

 

「障害がいます」

 

「なに? どういう事だ?」

 

「貴方はそれを理解しているのでは?」

 

「意味が分からない、何を言って――」

 

「私は、もう絶望の魔女が誰なのかを把握しているつもりです」

 

「!」

 

「候補は二人ほど」

 

 

もちろん確証はないが、全くの当てずっぽうでもない。

織莉子はそこで立ち上がり、戻ろうとジェスチャーを行う。

 

 

「手塚さん、貴方はこの世界の未来を守りたいのですか?」

 

「……っ」

 

「それとも、一時の安定を求めたいのか。もう一度よく考えてほしいものですね」

 

 

織莉子はそれだけを言うと、柔らかな雰囲気に戻る。

 

 

「さあ戻りましょう。注文していたお料理がもう来ているかも」

 

「………」

 

 

ほむらと言い、織莉子と言い。とてもじゃないが中学生の出せる覇気ではない。

張り付く寒気はまだ残っている。ひょっとすると織莉子の気迫はほむらを超えているかもしれない。

それだけ彼女もまた、このゲームに自分の信念を持って挑んでいると言う事なのだろう。

力と勝利だけを求める王蛇ペアや、ガイペアとは違い、それはそれで厄介なものだ。

それに織莉子の言っている事が本当ならば、手塚にとっても見逃せない事になる。

 

 

「そうだ、そうだな。本当に厄介だ」

 

 

手塚はコインを弾いた。

占いの結果は、あまり良くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

キリカのもとへと戻った二人、

するとそこには――

 

 

「やっぱり君は英雄とは程遠いよ!」

 

「なっ! ぐぅぅぐッぅ!!」

 

 

キリカは悔しげに赤面して涙を浮かべていた。

 

 

「やっぱお前なんて嫌いだぁあああああああああ!!」

 

「あ! え!? ちょ、ちょっとキリカ!!」

 

 

走り去るキリカ。

織莉子はすぐに追いかけ、店を出て行った。

 

 

「おいおい、どうして仲直りをする筈がこんな事になっているんだ?」

 

 

手塚はムスッとしている東條に詳細を求めた。

 

 

「聞いてよ。彼女信じられないんだ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「フツーさ! から揚げにはレモン絞るだろぉおおおおおおおおお!!」

 

「………」

 

「あの腐れ英雄ジャンキーは勝手にレモンを絞るなって!! うおおおおおおおおお! それくらい許せぇえええええええええ!!」

 

 

キリカの声が屋敷中に響き渡る。

上条は呆れたように読んでいた本を閉じた。

いきなり戻ってきたので話を聞いてみれば、から揚げにレモンを絞った瞬間に英雄らしくないだのなんだの言われたらしい。

 

 

「なんで個人の好みが英雄らしく無いとか言われなければならないのかぁぁあっぁ!!」

 

 

ピリピリしていたキリカはイライラマックスってなものである。

 

 

「あんな奴ッッ! レモンの汁が目に入って苦しみ続ければいいんだーッッ!!」

 

 

織莉子の思想を巡る対立で始まったのに、気づけばからあげにレモンを絞るかどうかのラインに立っている。正直何を言っているのか意味不明である。

 

 

(どっちでもよくないか?)

 

 

上条はそんな事を思いつつも、口にはできない。

口にしたら多分、キリカに殴られる。それくらい今のキリカはテンションがおかしい。

 

 

「もう何を言っても駄目なのかもしれません。はぁ」

 

 

織莉子は頭を抑えてうな垂れる。

こんな筈じゃなかったのに。なんだったら出かける前より雰囲気が悪くなっているじゃないか。

 

 

「いや、諦めてはいけませんね! 次はスワンボート作戦でいきます!!」

 

「えッ? まだやる……ッ、いやまあいいか。がんばってくれ」

 

 

上条は投げやりに答えて席を外す。

面倒になったらしい。一方の織莉子はますます気合を入れて仲直りの作戦プランを立てていた。

 

 

「は?」

 

 

だから翌日、手塚は帰ろうとして東條に話しかけられる。

 

 

「だから、僕と一緒に見滝原公園まで来てほしいんだけど」

 

「また呉キリカからか……」

 

「そうなんだ。メールが来て」

 

「ちょっと見せてくれ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

死ばらくですね。いや昨日ぶりですか。

ねる時に考えたんですが、やはり他の人に確認しないでレモンはいけません。

お暇でしたら、今日の夕方に見滝原公園に来てくれませんか?

前回はうまくいきませんでしたが、仲直りがしたいです。

はやく関係が直したいな、一応私達はパートナーじゃないですか。

嫌いにならないでもらいたい。

いい関係であるといいですね、貴方はそう思いませんか?

だんだだん。

死かたないと思わないでくださいね。

ねる前に決めてほしい。

東へお日様が沈みます。

條……、條? んー、なんかあったっけ? まあとにかく明日。あと縦には読まないでね。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「………」

 

「ここまで言われたら行こうかなって」

 

「どっちの意味で?」

 

「え?」

 

「文に溢れ出てるぞ憎悪の感情が」

 

 

せめてもっとうまく隠せ。

一番最初の字くらいひらがなで良かっただろ。

あと後半もう考えるの面倒になったのか適当になってるじゃないか。

 

だんだだんって何だ、だんだだんって!

『だ』から始まる文が思いつかなかったからってそれはないだろ。

最後に至っては考えから諦めるまでの過程を文にしてる始末だし。

しかも本人は予防線のつもりか知らないが最後の最後で完全にネタバレしてる!

フラグか? これがフラグと言う奴なのか?

 

 

「コレは行かない方が良い……!」

 

「でもせっかく謝ってもらったし」

 

「まさか気づいてないのか! ココまであからさまにしておいて!!」

 

 

正直このまま公園に行ったら、東條が殺されるイメージしか湧かない。

と言うより東條の運勢を調べたがヤバイ、とにかくヤバイ。

今日死にますくらいのレベルなのだ。

 

 

「でもせっかくこうやって連絡して来てくれたんだし。断るのは悪いかも。嫌われたくないんだ」

 

「ッ」

 

「と言う訳でついてきてよ」

 

「え? あ、おい!」

 

 

東條は手塚の腕を掴んでズルズルと。

 

 

「一つ聞いてもいいか?」

 

「何かな」

 

 

手塚は折れたのか、結局東條と共に公園に向かう。

その途中、ずっと気になっていた事を聞いてみる。

 

 

「お前の言う英雄は、一体どんなモノなんだ?」

 

 

東條は自分の性質が分からなかったからミラーモンスターを生み出す事ができなかった。

ならばその性質はほぼ間違いなく『英雄』だろう。

しかし東條は英雄と言うものが何か分からない、だから分身が生み出せない。

とは言え、ブランク体でもないのだからあと一歩のところまでは来ているのではないか。

 

では東條が目指す英雄とは何か? 

東條の思う英雄とは一体なんなのか?

手塚はそれが気になってしまう。

 

 

「僕にも分からないよ」

 

 

でも、分かる事もある。

 

 

「皆から愛される存在だよ。英雄になれば、皆が僕の事を好きになってくれる」

 

「………」

 

 

東條悟の瞳の奥には、大きな闇が見えた。

それが寂しさから来るものだと言う事がやっと分かった。

 

東條は喋る時、その人を見ていない。

手塚が東條の目を見ても、東條は手塚の目を見ない。

目が合ったとしても、東條はその奥にある闇だけを見ているのだ。

 

 

「そうか」

 

「うん……」

 

 

選ばれたのは魔法少女だけじゃない。

騎士も皆、何かをジュゥべえに見出されてココにいる。

ジュゥべえは東條の中に何を見出したのか? そして彼の中にいるミラーモンスターはいつ目覚めるのか?

 

そんな事を考えている内に二人は公園にたどり着いた。

そこには白と黒の少女が既にスタンバイしている。

 

 

「ああ、どうも」

 

「………」

 

 

手を振る織莉子。

キリカもにっこりと笑うと、東條に中指を立てていた。

 

 

「こ、こらキリカ。いけないわそんな!」

 

 

織莉子がそれに気づいて慌てて指を元に戻そうとするが、ビィインと音がするが如くキリカの中指は天を指す。

分かっていたが、謝る気が欠片とてない。

手塚は冷や汗をかいて東條を見る。

 

 

「???」

 

 

東條は首をかしげている。

良かった。意味が分からない様だ。心が純粋で助かった。

 

 

「ところで今日は何を……」

 

「ええ。あれ、見てください」

 

 

そう言って織莉子は公園にある小さな湖のスワンボートを指差した。

 

 

「楽しそうじゃありませんか? ねえキリカ」

 

「う゛ん゛! だのじぞう!!」

 

 

全然楽しそうな言い方ではないが大丈夫なんだろうか? 手塚は訝しげな表情を浮かべる。

いくらパートナー同士が攻撃不可能と言うルールがあれど、あんな狭い場所に二人を入れたら乱闘の運命しか視えない。

 

 

「ねえ東條さん、キリカと一緒に乗ってあげてほしいんです」

 

「えー、僕にはあれが面白そうとは思えないけどなぁ」

 

 

お前も空気を読め! 手塚はビキビキと筋を立てていくキリカを見てそう思う。

ハッキリ言ってココでもしもキリカがブチ切れようものなら、確実に八つ当たりで狙われる気がしてならない。

 

 

(いや待て! まさかそれが狙いなのか!? キリカを激情させ、そして織莉子も便乗して俺を殺すのが狙いなのかッッ!?)

 

「あれ? どうしたんですか手塚さん。お顔が真っ青」

 

「いやッ、なんでもない……!」

 

 

考えすぎらしい

織莉子は手塚に目もくれず、必死に東條を説得していた。

その熱意に圧されたのか、東條はキリカと一緒にスワンボートに乗る事になった。

 

 

 

数分後。

 

 

「フンッ! フンッッ!!」

 

「………」

 

 

手塚と織莉子は、スワンボートに乗っているキリカ達を遠めに見守っていた。

確かに狭い場所に二人ならば、自ずと会話も生まれるだろう。

さらにスワンボートは二人の力があって進む物だ。

何か一つの事を二人でやれば仲も縮まる筈だろう。織莉子もコレを見越していたのだろう。手塚もそれは理解できる。

が、しかし――!

 

 

「フンッ! フゥウンッッ!!」

 

 

スワンボートから聞こえるのは、キリカが息を荒げる音だけだった。

理由は簡単。まず今日残っていたボートが四人乗りだった事。

そして何故か東條はキリカの隣ではなく後ろに座った。

操縦するのは前二人のため、キリカは現在一人でボートを漕いでいる。

 

 

「重いっ! ヘビー! そして何故手・伝・わ・な・い!?」

 

 

キリカは汗だくになりながらも必死にボートを漕いでいる。

対して東條はボケーっとしながら外の景色を見ているだけ。

二人の間に会話は無い。織莉子は頭を抱え、崩れ落ちる様に柵にもたれ掛かっていた。

 

 

「……美国、提案があるんだがいいか?」

 

「……何でしょう?」

 

 

手塚のトーンがゲームの事を言っている。

織莉子は表情を険しく変えて言葉を待った。

手塚は織莉子から話を聞いて、自分なりの考えを出したつもりだ。

 

 

「俺たちと協力しないか?」

 

「………」

 

「俺達もお前達も、やり方は違えどゲームを終わりを望んでいる筈だ」

 

 

確かにマミや須藤、さやか達を苦しめた事には怒りを感じる。

しかしほむらの話を聞くに、ワルプルギスの夜は非常に強力な化け物だ、

仲間は多い方がいい。そして願いを使い、絶望の魔女を生み出す要因を消せばそれで上手くいくのではないかと。

 

 

「もちろん私達も悪戯に命を奪いたくはありません。目指すべき勝利は、貴方たちと同じくワルプルギスの死です」

 

 

そう言った点では、ワルプルギス戦では協力は惜しまないと告げる。

しかしだからと言って手塚の頼みをそうですねと答える訳には行かなかった。

 

まず上条の問題がある。

織莉子がそれを手塚に言う事は無いが、もしもゲーム中にさやかが蘇生しなければ、願いでさやかを蘇生させる必要がある。

 

でなければ後々面倒な事になる気がしてならない。

織莉子はキュゥべえ達と接触した時にある情報をもらった。

それはゲーム終了後も、騎士の力は継続すると言う事だ。

もしもさやかが蘇生しないと上条が暴走してキリカ達に危害を加える可能性が高い。

 

かと言ってさやかを殺さなければ、上条は使い物にならず、杏子達に殺される未来しか見えなかった。つまり織莉子はなんとしてもさやかを蘇生させる必要があるのだ。

それがうまく行く可能性は、まだ何とも言えない位置にある。

 

人の死が未来を変える。今後もまだ死者はでるだろう。

それが復活できる可能性を持っていたとしても、未来は変わるのだ。

いや復活できるからこそ、ノイズが頻繁に起こる。

本来は死んだ人は生き返らない。しかしキュゥべえ達が用意した常識を超越した力により、世界は一種のバグを起こしている。

 

未来予知はより不安定な物に。

かと言って常に発動すれば、みるみる魔力が減って魔女になってしまう。

 

 

「あと一つ、大きな障害があります」

 

「?」

 

 

手塚が言う事くらい、織莉子も考えていた。

ワルプルギスを倒し、絶望の魔女を内に秘めた魔法少女を呪いから解放すると言う事。

 

 

「しかし手塚さん、絶望の魔女を生み出す魔法少女はキュゥべえ達に何よりの資源です」

 

 

言い方を変えれば極上の餌だ。

あの恍惚な妖精達がそれをみすみす手放す訳がない。

多くの歴史の中で人間を見てきたインキュベーターは、必ずどんな手を使っても餌を獲得するだろう。

例えば呪縛から解き放たれた少女を狙い、強制的に再び契約を結ばせる事だってできるのだから。

 

 

「そもそも、このゲームの舞台を完成させたのはインキュベーター達です」

 

「成る程……」

 

 

キュゥべえもそれくらいは気づいているのではないか?

だとすればまだ何か特殊ルールをまだ隠している可能性はある。

そんな怪しい存在を放置はできなかった。

 

 

「あのハイエナ達を黙らせるには、魔法少女に死んでいただくしかありません」

 

 

永遠に手の届かない場所で眠ってもらうしかない。それが織莉子の考えである。

宇宙の寿命を延ばす事は大切である事は分かる。だがそれが地球滅亡に繋がるのなら、何が何でも止めなければならない。

 

気になる事はまだある。

織莉子もまた参加者以外を強制絶望させたキュゥべえ達の話は聞いている。

では、何故そんな力がありながらキュゥべえ達はみすみす絶望の魔女を見逃しているのか。

 

餌を早く回収すればいいだけなのに、どうしてこんなゲームを続けるのか?

そこが織莉子には全く理解できなかった。今まで感情を否定し、理論や効率を重視してきたインキュベーターには似ても似つかわしくない。

そこまでしてゲームに拘る理由は何だ? それはまだ分からない。

 

 

「……本音を言えば、魔法少女は皆死ぬべきだと思うのです」

 

 

それは織莉子自分自身を含めてだ。

 

 

「私たちは生きてはいけない存在。この世を乱す魔女として生まれるべきなら、今ココでソウルジェムを砕いた方が遥かに世界を守るためになる」

 

「悲しすぎるだろ……、そんな事を」

 

「それが魔法少女の運命なんですよ」

 

 

同時に責任がある。

魔法少女になった事で世界を壊してしまうのなら、それを全力で止めなければならない責任がだ。

だからこそ織莉子は何が何でも絶望の魔女を覚醒させる事を止めたかった。

 

 

「その為なら、私は悪魔にも魂を売りましょう」

 

「……ッ」

 

「手塚海之さん。私からもお願いがあります」

 

 

場に静寂が訪れる。手塚は迷っていた。

 

 

「改めて、絶望の魔女を生み出す魔法少女の名はおそらく――」

 

「ッ!」

 

 

その名を手塚は知っている。

 

 

「手塚さん。貴方は世界を守りたいのか、それとも僅かな時を守りたいのか……?」

 

「俺は――ッ」

 

「私は、父が愛したこの世界を守りたいんです。誰も傷つけない方法があればよかったんですが、私にはコレしか思いつかなかった」

 

「ッ」

 

「私は意志を曲げるつもりはありません」

 

 

必ず、必ず彼女を殺す。

 

 

「私は魔法少女になって世界を守りたかった。憎しみに満ちた世界を変えたかった」

 

 

だがそれが叶わないと知り。

自らが世界を汚す魔女と知った時から、道は決まっていたのだろう。

 

 

「私は、罪で罪を壊します」

 

 

その言葉と共に、湖に大きな水しぶきが巻き起こった。

見れば真っ二つになったスワンボートが沈没していく。

水面から顔を出す東條とキリカ。特にキリカは魔法少女の姿で大声を上げていた。

 

 

「おおおおお! ファッキン! 東條ファッキン!!」

 

「まあキリカったら、あんなにはしゃいで! きっと仲直りがうまくいったんですね!!」

 

「………」

 

 

え?

 

 

仲直りって、何だっけ?

手塚は引きつった笑みで平泳ぎをしている二人を見ているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあお嬢ちゃん、最近この辺りは物騒だから早めに帰ったほうが良いよ」

 

 

街の中。

一人で歩く少女に声をかける三人の男女が。

年齢や服装はバラバラで、皆共通のバッジをつけている。

どうやら何かのボランティアの様だ。彼らは優しげに少女に声をかけていく。

慈愛に満ちた笑みを浮かべて。

 

 

「失せろ」

 

 

三人いたが、細切れになるのは一瞬だった。自分が死んだとも気づかぬまま、中身や血液をぶちまけて息絶えたのだろう。

佐倉杏子が返り血で赤く染まるのは今日で三回目だった。

先ほども同じように自分に声を掛けてくれた人物をサイコロにした所だ。

 

頬についた血を舐めると、変身を解除して何事も無かったかのように立ち去っていく。

死体はミラーモンスター達が処理してくれるから何の問題も無い。

返り血も魔法少女の衣装に付けば、変身を解除したら元に戻る。

杏子は地面に落ちたバッジを拾い上げると、表情を歪ませた。

 

 

「おいおい、コレ……」

 

 

ああそうか、そう言う事か。

だから最近こんなにムカつくって訳だ。

杏子は歩きながら、蛇の様な目であたりを見回す。

いるわ、いるわ、イラつかせる連中ばっかりだ。

全員殺すのも悪くは無いが、ココにいると吐き気がする。

杏子は手に持っていたたい焼きを乱暴に貪るとひたすら足を進めていった。

 

 

「アイツやば過ぎだろ。何とかしてよポリスメン」

 

 

一連の流れをビルの屋上から確認していたのは神那ニコだ。

がっしりとキュゥべえの頭部を握り締め、先ほどの光景に震えを覚えた。

 

 

「あの娘。最近殺しすぎじゃね? あんな自由にしてていいの? あんな横暴許されるの?」

 

『確かに最近の杏子は浅倉以上に荒れているね。でもいいんじゃないかな? ゲームの一環として考えれば』

 

「ハァ。お前さんに聞いたのが間違いだった」

 

 

最近の杏子は荒れている。人を超越した力とは言え、あまりにも殺しすぎだ。

餌を与える為に殺していたのが、殺した後ついでに餌にしているイメージがある。

 

 

「見滝原呪われすぎワロタ、見滝原でまた行方不明、見滝原は死の町」

 

『何だいそれ?』

 

「ここ最近、掲示板で立てられるスレの名前」

 

 

シザースといい王蛇といい、何より芝浦が行ったテロ事件。

しまいには蘇生させる為の50人殺しといい、見滝原周辺は最近死の町として有名だ。

ネット上では『世紀末都市見滝原』、『魔境見滝原』などと書かれているいる始末。

SNSでは見滝原に潜入して生きて帰ってきたなどとツイートも目立つ。

 

要するにゲーム中に行われる『一般人殺し』は世間にも影響を与え始めてきたと言う事だ。

既に見滝原から引っ越していく者たちも珍しくは無い。

最近は街中にパトロールをする警官を多く見るし。ニコとしては息が詰まって仕方が無い。

 

 

「変なのも現れるし」

 

『変なの?』

 

「そ。なんか慈善ボランティア集団ってのが増えてきた」

 

 

忙しい警察の代わりにパトロール、幼稚園の送り向かい、その他様々なボランティアを行う集団だった。団体が作った『見滝原を安全に』と言うポスターもチラホラと見る。しまいには『本部』と言われる大きな建物もできたし、なんだかうさんくさい。

 

 

『キミの心が捻くれてる証拠じゃないかい?』

 

「おぬし意外とひどいな」

 

 

怒ったのかニコは乱暴にキュゥべえを放り投げる。

 

 

「さて、今回は何の情報をもらおうかな?」

 

 

ニコは舌ペロリと出して笑った。

実はもう決めていた事がある。それは少し前にジュゥべえに教えてもらった事だ。

参加者以外の魔法少女は一勢に絶望してもらったとかなんとか。

 

 

「それは間違いは無いん?」

 

『ああ、本当だよ』

 

「おいおい。否定しろよ」

 

 

ニコもまた、汗を浮かべてその話を聞いていた。

世界中にいた魔法少女たちを邪魔だからと言う理由で一勢に排除した。

流石にこの行動には参加者全員が疑問を持つだろう。ニコもまた例外ではない。

インキュベーターが行った『矛盾』ともいえる行動。違和感はある。

 

 

「どうしてそんな事を?」

 

『いらないからさ。邪魔されるのは困るし、それに見滝原から出られない君たちへのサービスだよ。魔女は多い方がいいだろ?』

 

「……ゾッとするね」

 

『なにがだい?』

 

「今までは放牧だったってわけ? お前らは結局餌を自分達を育ててきただけにしか過ぎないと?」

 

魚の養殖みたいなものだ。

結局は魔法少女達はただの餌でしかなかった。キュゥべえは消えそうと思えばいつでも消せたわけだ。それはニコとしては気持ちが悪い。まるで見えない首輪があるようだ。

 

 

『どういう事だい?』

 

「だから。べえやん(ジュゥべえ)とか、べえちゃん(キュゥべえ)はさ、私らを好きなタイミングで絶望させられるってか?」

 

『少し違う。ボクらは君たちを絶望させる事はできない。まあ他の娘達はすんなりと絶望したけれど』

 

「どゆこと?」

 

『そうだな。映像があるから、見てみるかい?』

 

「見たい。見せんかいワレ」

 

『じゃあ、キトリー』

 

 

上空から針の魔女が飛来して、キュゥべえの隣に舞い降りる。

針の魔女キトリー。黒いコートにキュゥべえの顔の着ぐるみと言う奇抜な格好だ。

それだけでなく彼女はインキュベーターを崇拝して、命令を忠実に聞く僕となっている。

 

 

『キトリー、彼女に見せてあげてほしい』

 

『キキキ!』

 

『彼女は現場にいたからね。よく覚えてるんだ』

 

 

キトリーはコートを広げてニコを包み込む。

一瞬攻撃されたかと思って焦ったが、目の前に広がる景色を見て理解した。

これがキトリーが記憶していた光景なのだ。

 

 

コレが、絶望へ至る過程だった。

 

 

『嫌です! ――は絶望なんかしたくないのですっ!!』

 

 

まだ幼い魔法少女は、その目に涙をいっぱい浮かべて震えている。

その表情にあるのは恐怖。そして何よりも絶望のソレだった。

彼女はニコを見て震えていた。

 

 

(なるほど、魔女の視点か)

 

 

『ああッ! 嫌あぁッッ!!』

 

 

白い糸の様なモノがなぎさの頬を、体を、腕を打つ。

ワイヤー、それとも鞭? とにかく白い糸の様なモノは、少女の体を次々に打ちつけ、切り傷を作っていった。

女であろうとも容赦はない。顔や体を傷つけて大きな傷を作っていく。

 

 

『あぐあぁああぁあ!!』

 

 

糸は少女のひとさし指に絡みつくと、万力の様にギリギリと締め上げる。

美しく可愛らしい、小さい指が濁った色に変色していくのをニコは黙って見ているだけしかできない。

絶望を盛り上げるBGMは助けを求める声、必死に命乞いをする声。

とにかく最悪なモノだった。

 

 

『だずげでぇ! パパぁ! ママっっ!!』

 

 

懇願する声を聞けば、思わず耳を塞ぎたくなる。

しかしそこに混じる笑い声。そうだ、傷つける側は笑っているのだ。

 

 

「!!」

 

 

その瞬間、ニコの表情が変わった。

 

 

(待て、コレは――ッ!)

 

 

キ ト リ ー の 笑 い 声 で は な い?

 

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 

「!」

 

 

我に返るニコ。

少女が苦痛の悲鳴を上げると同時に、耳障りな音をあげて指が分離した。

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになる顔。少女はもう止めてくれと懇願して助けを求める。

しかし非情にも糸は次の指を狙って巻きついていくだけ。

 

そうか、忘れていた。これは絶望させるためか。

苦しめることで魔女にする。

ああ、簡単ではないか。

 

 

「もういい! もう分かった。元に戻せ!」

 

『おや? もうすぐ絶望の瞬間だけど、見なくていいのかい?』

 

「ああ、もう十分だ……ッ!」

 

 

すると景色が拷問の現場から元の屋上へと戻る。

ニコはため息をつくと、そのままキュゥべえの首を掴んで思い切り睨みつけた。

ギリギリと音を立ててキュゥべえの首は歪になっていく。

 

 

『苦しいよ、離してくれないかい?』

 

「インキュベーターには感情だけじゃなく、心ってモンが無いのか?」

 

『あの映像の事を言っているだとしたら、勝手にも程があるよ。見せてほしいって言ったのは君じゃないか』

 

 

沈黙するニコ。確かにその通りだ。

 

 

『それに君は参戦派だろう?』

 

「おいおい、私が純粋に殺人を楽しむサイコ女だと思ってもらっちゃ困るよ」

 

『じゃあ君は、自分の意思で彼女が可哀想だと思うのかい?』

 

「………」

 

『高見沢が協力派だったら君は協力派になった。じゃあ高見沢が何も決めなかったら、キミはどんな意見を今、振りかざしていたんだろう?』

 

「……いいね。中々痛い所を突いてくるね。確かにソレを言われちゃ黙るしかない」

 

 

ましてニコは思った。

あの立場にならなくて本当に良かったと。13人に選ばれてラッキー。

そうだ、だからこそココに立っている。絶望せずにチャンスを与えられているのだ。

分かった事は、直接ソウルジェムを操作した訳では無いと言うことだ。

精神汚染の類ではなく、直接手を下してきた。

 

 

「しかしそうすると、一人一人を絶望させるには遅くないか?」

 

『そこはシークレットだね』

 

「シークレット?」

 

『君達がゲームを行う上では関係の無い情報だ。混乱させるのも申し訳ない』

 

「ハッ!」

 

 

ニコは目を逸らしながら爪を噛む。

 

 

「最後に一つ聞いていい?」

 

『なにかな?』

 

「べえちゃんは自分の意思で魔法少女を絶望させたのか?」

 

『……質問の意味が分からないよ』

 

 

キュゥべえは首をかしげる。

 

 

「インキュベーターはルールの具現化なのか、それとも純粋な宇宙を守る使者なのかって事さ」

 

『シークレットだね。言う必要は無いよ、ゲームには関係の無いことだ』

 

「あ、そう」

 

 

ニコは納得したのかキュゥべえに背を向ける。

 

 

「まあどうでもいい。どうでもいいけど、どうでも良くないこともある」

 

『?』

 

「やっぱあと一つ質問。勝ち残れば本当に何でも願いを叶えてくれるん?」

 

『そのつもりだよ』

 

「どんな願いも?」

 

『ああ』

 

「ならばよし!」

 

 

ニコは頷くと、レジーナアイを起動して他の参加者の動きを探った。

ここから少し歩けば気になるあの娘のお家じゃないか。

想像しただけでドキドキわくわく。

 

 

「まこうなると俄然やる気出てくるよ。私は選ばれた13人の魔法少女が一人って訳なんだろ?」

 

『そうだね。期待しているよ神那ニコ』

 

「おっけー、まあ期待してて。優勝者の立ち振る舞いってのをさ」

 

 

ニコはそのままスキップしながら姿を消す。

残されたキュゥべえはジッと虚空を見つめていた。

誰に言うでもなく、そっと呟く。

 

 

『賢くいてもらいたいね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、本当にゴメンねまどか。知久もメガネが曇るほど謝ってたよ」

 

「ううん、いいんだよママ。パパにもそう伝えてね」

 

 

数日前、まどかの父である知久が階段から落ちてしまい、脚を骨折してしまった。

折れ方がマズかったらしく、しばらく入院を余儀なくされてしまったようだ。

そしてそのタイミングでまどかの母である詢子に出張の予定が。

 

大事な仕事が絡んでいる為に断るわけにもいかず。

結局まどかと弟のタツヤは、一週間サキの家でお世話になる事に。

 

 

「悪いねサキちゃん、今度焼肉おごるからさ」

 

「それは楽しみだ。とにかく留守の間は任せてください」

 

「まろかー!」

 

「わ!」

 

 

タツヤも両親が不在になる事に怖がっては無いようだ。

一週間は少し長いかもしれないが、サキやまどかが一緒ともあってか元気なものである。

むしろ不安そうなのは詢子の方だ。しかしもう出発しなければ。

 

 

「あーん、ママは心配だよ」

 

 

いつもの調子に見えるが、詢子とて最近の出来事で大きく参っている筈だ。

学校の件で亡くなった早乙女先生は詢子の友人だった。とは言え死体は出てこない、行方不明として世には処理されている。

まどかは真相を知っているだけに、いろいろと苦しいものがある。

 

 

「わたし達は大丈夫だよ。いってらっしゃいママ」

 

「ん! 行って来ます」

 

 

詢子はタツヤとまどかの頬にキスをすると、手を振って駅に向かっていった。

しばらくはタツヤとサキとの三人暮らしだ。

タツヤもサキには慣れているのか、早速駆け寄っていく。

 

 

「サキねえちゃ!!」

 

「あはは。会う度に大きくなってる気がするよ」

 

 

その後はしばらく三人で色々なことをして遊んだ。

夕方には仁美とほむらが食材を持ってくる事になっており、皆で食事をしようと言う事になっている。かずみも誘ったのだが、店が忙しいと言う理由で来れない様だ。

 

 

「まろかぁ、つかない!」

 

「え? あ、ほんとだ」

 

 

そんな中、タツヤ持っていた光る玩具が壊れてしまった。

と言うよりも電池が切れただけらしい。

 

 

「お姉ちゃん。電池ある?」

 

「えーっとそこの棚にあったような……」

 

 

しかし見つけたのは単三電池だけ。タツヤの玩具は単四電池でなければ動かない。

 

 

「わたし買ってくるね」

 

「私が行こうか?」

 

「ううん。タツヤのだし、悪いよ。それにちょっとしたお菓子も買いたいし」

 

 

コンビニも近いし、外はまだ明るい。

夕焼けに照らされる公園を歩き、まどかはコンビニで必要なモノを一通り揃える。

 

 

「こんにちは」

 

「?」

 

 

帰路についている途中、声を掛けられた。

まどかが振り返ると、そこにはバンダナの少女が立っている。

少女は黄緑色の髪の毛を揺らしながらニコリと笑った。釣られてまどかも笑みを浮かべる。

 

 

「ちょっと道に迷ってしまって。駅までの道を教えてもらいたい」

 

「あ! そうなんですか、いいですよ」

 

 

まどかは少女に駅までの道を詳しく教えてあげた。

杏子戦で覚醒を果たしたものの、まどかの根本は何も変わらない。

近づいてきた少女を疑う事もせず、話を続けている。

 

 

「ん、サンキュー。おかげで野垂れ死には避けられそうだ」

 

 

少女は持っていた袋から、にくまんを一つ取り出すると、そのまま投げる。

まどかは慌ててにくまんをキャッチ。もう少しで落としそうだった。

それを見て、再びバンダナの少女は笑みを浮かべた。

 

 

「それ、お礼。一緒に食べないかい?」

 

 

数分後。

コンビニ近くの公園のベンチで、まどかと少女は肩を並べてにくまんをほお張っていた。

 

 

「結構大胆に喰うね、キミ」

 

「ほへっ!?」

 

 

にくまんを口いっぱいに詰め込んでいたまどか。

自分の姿を客観視したのか、恥ずかしそうに赤面しながらもぐもぐ口を動かしていた。

だってお礼と言われたら嬉しいじゃないか。まどかはそのまま気まずそうに咀嚼を繰り返し、やがてゴクンと勢いよく飲み込む。

 

 

「私、今度コッチに引っ越してくるんだ。よろしく」

 

「あ! そうなんだ、よろしくねニコちゃん!」

 

 

既に自己紹介は終わっている様だ。

神那ニコは、見滝原に引っ越してくるから下見に来たのだと言った。

もちろん嘘であるが、まどかがソレを疑う事は欠片とてない。

本気でニコと友達になれると思っている様だ。

 

 

「ニコちゃんは前はどこに住んでたの?」

 

「アメリカ」

 

「本当に!? すごいね!!」

 

「おやおや、照れるぞな」

 

 

大人しいとは言え、まどかは意外とコミュニケーション能力が高い。

少し話しただけですっかりニコとは打ち解けた様だ。

尤もまどかは気づいていないが、ニコの目は濁っていて、まどかを視てはいないのだが。

笑顔だって貼り付けたような。そう、まさに仮面の様だ。

 

 

「でも実際どうなん?」

 

「え? どうって?」

 

「ほら。最近ニュースであるじゃん」

 

 

呪いの街、殺人都市、今週の行方不明。

SNSでは関係ない人々が、事件を面白がってネタを投下する。

流石にまどかもそれには気づいていた。ある意味仕方ないのは言え、自分の住んでいる町がからかわれるのは悲しい事だ。

 

ただ結局のところ悪いのは止められない自分ではないか。

早く何とかしたいとは思えど、目の前にある安らぎを求めてしまうのも事実。

まどかは考えれば考えるほど苦悩していく。

 

 

「怖い……、よね?」

 

「ま、でも、面白そうっちゃ面白そうだけど」

 

「え?」

 

「スリルがあって良い。そういう映画は大好きだ」

 

 

この前も面白いヤツがあったと、まどかに内容を告げる。

 

 

「13人だか15人だかの男女が集められてさ、殺し合いさせられるのよ」

 

「!」

 

「生き残るのは一人だけ、それが終わるまで皆戦い続ける」

 

 

でも生き残れば想像もつかないほどの大金が手に入る。

生き残りを賭けたデスゲーム、バトルロワイアル。

集められるのは金を欲している奴らばかり。中には主人公の知り合いもいて、戦わなければ生き残れない。

 

 

「キミ、そういうのはお嫌い?」

 

「う、うーん。あんまり見ないかな?」

 

「そんなを顔しておる」

 

「え? そうかな?」

 

「ウサギか子リスが主役のアニメーションが好きって感じ」

 

 

まどかは、かわれているような気がして赤面する。

ニコは構わず『その映画』の話を続けていった。

皆が仕方ないと殺し合いを始める中で、主人公だけは戦いを止める為に奮闘していく。

 

 

「争いは何も生み出さない? 争いの果てにある幸福に意味は無い? とんだ綺麗事だ、反吐が出る」

 

「ッ」

 

「君ならどうする? 環境やルールが犯罪を肯定する世界なら、殺しあうかい?」

 

「………」

 

 

まどかは真面目な顔をして首を振った。

ニコの目は相変わらず濁っている。

 

 

「わたしだったら、戦いを止めたいな」

 

「どうして?」

 

 

ニコはすぐに理由を聞いた。

まどかがこの答えを選ぶ事は分かっていた。

ニコにはレジーナアイで参加者の情報を全て掌握してきたつもりだ。

 

しかしその中でも理解できない事がある。

それこそが目の前にいる『鹿目まどか』だ。

ニコもレジーナアイを通してまどかのパワーアップは確認している。

てっきり闇墜ちしてからの覚醒かと思ったが、蓋を開けてみればコレだ。

感情が未曾有のエネルギーを生み出すことは理解している。まどかにも何か、心の中の爆発があったに違いない。そう思っていた。

しかし以前チラリと見かけたときと変わっていないように思う。

何がまどかの魔力を跳ね上げたのか――? ニコはそれが気になるのだ。

 

 

「どうしてって……、わたしは主人公さんの気持ちが分かるから」

 

 

人を殺して願いを叶える。

人を殺して得る幸福。

それは本当に正しい幸福なんだろうか?

 

 

「わたしは、やっぱり最後まで戦いを止めようって叫びたいよ」

 

「誰も聞いてくれない。そして殺されても?」

 

「うん、それが"わたし"らしいし」

 

 

ニコは沈黙する。

無表情でただ口を閉じるだけだ。

しかし心には明確な苛立ちがあった。

 

 

「みんな覚悟を決めてる。やっぱり誰も君の言葉は聞かない筈」

 

「人を殺す覚悟って、なんなのかな」

 

「んん?」

 

 

みんな、歯を食いしばって。己の心をズタズタに傷つけても叶えたい願いがある。助けたい人がいる。それを叶えるためにはたとえ他人を、知り合いを殺してまでと思うだろう。

まどかだってその気持ちが分からない訳じゃない。

しかしそれでも戦いを止める。止めたい。それは本心だった。

 

 

「もし君の大切な人が……、お父さんやお母さんが理不尽に殺されたり、死んだとしよう。それでも君は戦わないと?」

 

 

それを口にした時、ニコはハッと目を開く。

失言だった。話に挙げた映画は大金を手に入れるだけ、願いを叶えられるとは言っていない。

人の蘇生などできる訳が無い。ニコは焦ったが、まどかがソレに気づく事はなかった。

 

 

「自信は無いけど……、ううん! やっぱり絶対にわたしは戦いを止めたいな!」

 

 

だってそうだろ?

戦う覚悟を決められたなら、人を殺す覚悟を持てたのなら――

 

 

「願いを、諦める覚悟だって固められるはずだよ」

 

「!!」

 

 

しばし、沈黙が続いた。

 

 

「諦める覚悟?」

 

 

ニコは思わずまどかの顔を見る。

 

 

「うん。その人達が本当に固めなきゃいけない覚悟は、殺さない覚悟なんじゃないかな?」

 

 

目の前にある餌に喰いつかない覚悟。

 

 

「……へぇ、意外と残酷な事を言うね。キミ」

 

「え? そうかな……、そうかもしれない」

 

 

まどかは眉を八の字に落として俯いた。

でも、それでも、血に塗れた幸福の中で生きていくのは、いつか辛い現実を再び引き寄せる事になる気がして。

 

 

「でもその映画じゃ必ず戦わなきゃいけないルールがある。理想じゃ掟は超えられない」

 

 

F・Gはワルプルギスを倒す抜け道があるが、所詮はおまけのようなものだ。

たいていの場合は殺しあって一人が生き残るまで続くのがセオリーだろう。

ルールと環境が違う中でも鹿目まどかは戦いを止めようというのか?

 

 

「うん、わたしはそうするよ。せめて逃げ出す道を皆で探したい」

 

 

まどかは、どうせ死ぬなら協力する中で死にたいと言った。

それに、そもそも鹿目まどかが戦いを止めたい理由はもう一つある。

 

 

「わたしね……、自分に自身がなくて。でもある時に変われた気がしたの」

 

 

魔法少女の話だろう、ニコは確信する。

何を願ったのかまでは流石にレジーナアイじゃ分からないが、まどかの性格ならば何となく想像はつくと言う物だ。

 

 

「自分に自信が持てた、自分を好きになれた」

 

 

人を守る為に戦う魔法少女。

誰かを助けたい、それが願い。

 

 

「わたしは、そんなわたしで在り続けたいから」

 

「ッッ!!」

 

 

守ると決めた皆の為に。

 

 

「そして自分のために」

 

 

だから人を傷つける選択を取りたくは無い。それが鹿目まどかの思いだった。

もちろんそれは真司だって近いものを持ってくれている筈だ。

だから自分達はFOOLS,GAMEを否定し続ける。

たとえ最後の一人になったとしても。たとえその中で命を落とす事になったとしても。

 

 

「わたしはわたしであり続けたいか……」

 

 

ニコはフッと笑って俯いた。

 

 

「君の言葉は、ココロにくるね」

 

 

同時に、ニコは明確な殺意を抱いた。

どうやら主催側はとんだジョーカーを忍ばせていた様だ。

ただの雑魚かと思い放置しておけば、後々とんでもない事をしてくれる筈。

ならば今ココで死んでもらった方がいい。

 

それになにより、まどかは眩しかった。

眩しいと前がよく見えない。それは困るのだ。

 

 

(気に入らないな、気に入らないよ)

 

 

まどかの首を狙う。

ニコは他の魔法少女に比べて攻撃力は低いが、相手のソウルジェムを強制排出させる即死魔法とも言える技を持っている。

トッコ・デル・マーレ、相手に触れさえすれば発動できるニコの切り札だ。

ニコはまどかに気づかれないように触れようと試みる。

 

 

(死ね、鹿目まど――)

 

「あ、ほむらちゃん!」

 

「!!」

 

 

ニコは腕を引っ込めて立ち上がった。

まどかの視線の先には、袋を持ったほむらと仁美が。

どうやら長話をしている間に時間が経っていた様だ。

ほむら達が通りかかり、まどかを見つけてしまった。

 

 

「こちらニコちゃん。今度ね――」

 

 

まどかはニコの事をほむらと仁美にも説明を。

 

 

「あら、初めまして。私達見滝原中学校にいますの」

 

「へー、それはよろしく」

 

 

仁美と握手を行うニコ。

続いてほむらに向かって手を出した。

 

 

「ッ?」

 

 

ほむらもニコの雰囲気に少し引っかかるモノを感じたが、流石に参加者とは思わない。

何の疑いもなく握手を行う事に。

 

 

「よろしく」

 

「ええ」

 

「………」

 

 

ニコはそこで少し表情を変える。

 

 

「なんだか、似てるね」

 

「え?」

 

「何となく、私達。そう思わない?」

 

 

似ている? ほむらはよく分からなかった。

顔も雰囲気も違う様に思えるが。

 

 

「なんて、冗談」

 

 

確かに、全然似てない。

どうしてあんな事を言ったのか、ニコにすら分からない様だった。

 

 

「じゃ、ま、さよならだぞ」

 

 

そう言ってニコはさっさと三人の前から姿を消した。

ただ一つ、言葉をまどかに残して。

それは先ほどまで続けてきた映画のお話。ニコは主人公が戦いを止める為に振舞ってきたと言って来た。しかし映画には当然エンディングがあるもの。

 

 

「最後は、ヒロインを殺された主人公が覚醒して参加者全員を殺す終わりだったよ」

 

「!」

 

「じゃ、そういう事で。駅まで教えてくれてあんがとさん」

 

 

囁き、去っていく。

ほむらは複雑な表情を浮かべているまどかに気づいた。

心配になって声を掛けてみる。

 

 

「何の話をしていたの?」

 

「うん。映画のお話だよ……。行こっか」

 

「え、ええ」

 

 

大丈夫。きっと大丈夫だと、まどかは自分に言い聞かせてサキの家に帰るのだった。

しかしそれにしても何故か仁美とほむらの距離が近い気が……。

 

 

「暁美さんって……、素敵ですのよ」

 

「……危険を感じるわ」

 

 

ピンクのオーラを出す仁美。

あれ? 仁美ちゃんそっちの人!?

ほむらは身震いし、まどかは困ったように笑った。

 

そこからサキ達と一緒に夕飯を作り、皆で食べる事に。

 

 

「華に囲まれているタツヤがうらやましいものだ」

 

 

サキはからかうように笑っていたが、タツヤは料理に夢中で話を聞いていなかった。

笑うまどか、それを見てほむらや仁美も嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「ん?」

 

 

サキはふと、テレビに視線を移す。

そこには最近よく見かける様になったCMが映っていた。

見滝原だけに流れているモノらしく、ここ最近は頻繁に目にする。

なんだったらもう二桁を軽く超えるかもしれない。

時期は、芝浦達の事件があってからだろうか?

 

 

『え、え、えーりーすー!』

 

 

テレビの中では、子供達が手を繋いで笑顔で団体の名前を口にしている。

そうしていると大人達も現れて、手を繋ぎ。動物達現れてが手を繋ぎ。

最終的には一つの輪になっていく。すると団体の活動が紹介されていった。

ゴミ拾い、パトロール、忙しい親に代わっての送り迎え。施設での支援サービス。

 

 

『見滝原の皆さんの暮らし、安全は、私達が守ります』

 

 

団体のロゴが最後に映し出された。

 

 

『私達人間は、みんな家族なんですから』

 

『リーベエリスは、皆様の暮らしを応援しております』

 

 

そこでCMは終わった。

テロが行われたと言う事。行方不明者が多いと言うこと。

日々増える事件に、慈善団体が立ち上がったと言うわけだ。

彼らのおかげで壊れた学校も修復されていき、街では毎日の様にバッジを付けたメンバーの姿を見かける。

 

 

「いい人ばかりで助かりますわ。やっぱり怖いですものね」

 

「そうだな、今は大変な時だから皆が手を取り合う必要があるのかもしれない」

 

 

組織の名前は『リーベエリス』。略してエリス

日本中に拠点を構え、見滝原だけでなく災害が起こればそこへ慈善事業を行いに向かう団体だった。

その支援活動には多くの人が感謝し、同時に共感して団体へ入りたいと願う若者が後を絶たない。

リーベエリスもそう言った人間を拒むことは無く。職業や年齢に関係なく入る事が可能であった。

 

 

「こういう人達ばかりならいいのにね……」

 

 

まどかもエリスの評判は聞いている。

父である知久の入院も手伝ってもらった故に、エリスの仕事を手伝いたいと思うほどだ。

善意の輪が広がるのはいい事ではないか。

きっと世界は良くなる。まどかはそう信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方高見沢邸。

ニコは今日あった事をありのままに伝えていた。

ステルスを貫こうと思っていたベルデペアの計画をニコは簡単に崩してしまった。

当然それは謝って済む問題ではない。

 

 

「はぁ!? 参加者と接触しただァッ!?」

 

「悪い、スマンかった」

 

 

机を叩く高見沢。

これは命を賭けたデスゲームだ。軽率な行動が招く事態を、ニコが頭に入れていなかった訳じゃない筈だ。

にも関わらず他の参加者に接触して、話をしたと言う事になる。

しかも偽名すら使わず名前まで名乗って。

 

 

「どいつに会ってきたッ!?」

 

「鹿目まどか。あと結果的に暁美ほむらにも姿見られた」

 

「アホかオメェ!!」

 

 

高見沢は大きく舌打ちを放つと、しばらく無言で考え、椅子を回す。

知られたのはマズイが、バレている訳ではないし、まどか程度ならば大丈夫か?

危険度を考えればまだ……。

 

 

「チッ! 次は絶対に気をつけろ。下手なミスしたらブッ殺すぞ」

 

「お、意外と許してくれるのね。ツンデレかな?」

 

「ざけんな、ココまでのお前の働きを評価してだ。調子にのんなよ」

 

 

しかし逆を言えば、ココまでニコは軽率な行動には走らなかった。

高見沢の命令や指令は基本的に守ってきたのに、何故ココに来て勝手な行動を?

そして多くの参加者がいる中で、何故鹿目まどか一人に狙いを絞ったのか。

理由を聞くと、ニコは小さなため息を漏らす。

 

 

「さあ? 何でだろう」

 

「あぁ?」

 

「私でもよく分からん。ただ何となく、鹿目まどかの考えを聞きたかった」

 

 

理解できないから知りたいと思うのは当然だろう? ニコの笑みに高見沢は表情を濁した。

思えば高見沢はニコのことを何も知らない。初めて出会ったのも、ニコがレジーナアイで高見沢を訪ねてきた。

 

願いも知らないし、前に住んでいた所で何をしているのかも知らない。

家族の事もだ。ニコが言うには一人もいないと言っていたが、何が起こってそうなったのかは分からない。

 

 

「知りたいのかい? 私の事が」

 

「俺に関係ない話なら、しなくて良い」

 

「それは助かる。私もペラペラとお喋りは嫌いなんだ」

 

 

可愛くないガキだ。

高見沢はつくづくそう思う。

子供と言うのは、適当にゲームや漫画を読んで馬鹿みたいに笑っていればいい。

生産性の無い生産性とでも言えばいいのか。それが結果的に社会を回す。

 

当然ニコだって、多めに与えた小遣いを使ってそれをしている。

寝転がって漫画を読み、お菓子を食べる。

しかし高見沢視点、その時のニコには楽しんでいると言う思いが感じられない。

 

仮面の様にずっと同じ笑みを貼り付けて、少し前にはバラエティを無表情でジッと見ていた。

何をするにも、何をやるにも演技的だ。

唯一食事くらいだろうか? まともな興味を示すのは。しかしどこかわざとらしささえある。

 

何が楽しいんだか分からない。

それに自分で言っておいてなんだが、高見沢には一つ気になる事があった。

 

 

「ニコ」

 

「ん?」

 

「お前、俺が参戦派になるって言わなかったら、どうしてた?」

 

「はじめに言ったろう? 私はお前の意見に合わせるつもりだった」

 

 

何故? 合わせるとはいえ、ゲームに乗る乗らないの判断は大きい。

人を殺せるか否か。それをニコは簡単に受け入れて既に多くの参加者を殺害している。

その覚悟はどこからくるのか? 何を根底に動いているのか?

 

 

「別に、なんとなく」

 

「ハッ、じゃあお前はもし願いを叶えられるとしたら何を願う?」

 

「………」

 

 

ニコは言葉を詰まらせて唸る。

いつも適当な返事で返す彼女も、この質問には困った様だ。

だが最終的に出した答えは普段どおりだった。濁った目で口にする適当な答えだ。

 

 

「地球平和」

 

「……可愛くないガキだぜお前は本当に」

 

 

笑うニコ。

これは本当の笑みなのか、このタイミングで笑えばいいと思っているのか。

どっちなのだろうか?

 

 

「たかみー。お前ぇ、目腐ってるよ」

 

 

願いなど、欲望があって初めて湧き上がる物だ。

人は、欲望があるからこそ人に成り得たのだ。

では欲望の無い人間は、人に非ず。人になれる資格も無い。

だから私は、人じゃない。

 

 

「ま、いいや。そんなニコちゃんから一つのお話が」

 

「おいまだ何かあるのか」

 

「いや、これはあくまでも私の勘だぞい!」

 

 

ニコがまどかに言った映画の話は、別にニコの作り話ではない。

今日日複数の人間が集められ、最後の一人になるまで殺しあうジャンルは珍しくは無いのだ。

バトルロワイアル、その手のゲームには共通する存在が。

 

 

「それは、明確な終了時間」

 

「……成る程な」

 

 

ワルプルギスの夜が来ればゲームは急速に展開していくだろう。

しかし逆を言えば何故明確にその存在を提示しないのか。

ステルスを貫くプレイヤーが出てくるから? いや違う、そうじゃない。

ニコはある可能性を視ていた。キュゥべえ達がワルプルギスの出現情報を隠していたのは、ゲーム演出の一環ではないかと。

 

 

「つまりワルプルギスの夜は、インキュベーターが望むタイミングで出現する筈」

 

「マジか?」

 

「もちろんコレは私の勘。だけどたぶん正解」

 

 

ゲームには期限がつき物だ。

しかしインキュベーターはそこを濁すだけで、明確にはしていなかった。

 

 

「奴らはゲームが進む中でエリアが狭くなると言った。それがワルプルギスの力によるものだとしたら?」

 

「なるほどな。何も知らないならゲームエリアを狭くするのはおかしいわな」

 

 

キュゥべえたちがワルプルギスがいつ現れるのかを知らなければ、エリア外から攻撃されると言う事態が起こる。

それはフェアじゃない。キュゥべえたちもそれくらいは分かっている筈だ。

 

 

「ワルプルギスの夜はラスボスだ。インキュベーターがその存在をちゃんと把握していなければ、ゲームとしては成り立たない。きっと何かトリガーがある筈なんだ」

 

「いずれにせよそれが分からない以上、俺たちがステルスを通せば良い」

 

「ああ……」

 

 

気になる事はまだある。

まだ漠然としているが、何か引っ掛かりがあるのだ。

これはゲーム、ゲームは何が必要?

舞台(みたきはら)参加者(プレイヤー)、そして――?

なんだ?

 

 

「………」

 

 

ニコは笑みを浮かべる。

 

 

「わくわくするね――、悪い意味で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

見滝原中学校の生徒達は、リーベエリスの本部に収集される事になった。

テロの事件があってから学校が使えなくなり、生徒達のショックも大きいだろうと言う事で休校になっていた訳だが、そんな中でエリスの面々が立ち上がったのだ。

 

とにかく一度集まってほしいと言われた。

しかし強制参加ではなく、タツヤの事もある為、まどかは残る事に。

 

 

「仁美たちは行くらしい。タツヤの事は私に任せて、キミも行って来るといい」

 

「え? でも」

 

「なるべく仁美と一緒に過ごしてやってくれ」

 

 

そう言われては仕方ない。

まどかは仁美たちと現地で待ち合わせることにして、玄関に向かう。

 

 

「じゃあ行ってくるねお姉ちゃん。タツヤも良い子にしてるんだよ」

 

「ああ、気をつけて」

 

「行ってらっしゃぃ!」

 

 

エリス本部は、最近見滝原にできた大きな建物だ。

ここからはバスを使って行けばいい。まどかは早速近くのバス停に向かい、エリス目指すことに。

その途中、同じくバスに乗ってきた者が。

 

 

「かずみちゃん!」

 

「おお! まどか!」

 

 

かずみはまどかの姿を見つけると、嬉しそうに手を振って隣に座った。

 

 

「リーベエリスに?」

 

「うん、まどかもでしょ? 一緒にいこーッ!」

 

 

ふと、まどかはバスの中を見回す。

人が少ない。皆怖がって外に出ないからだろうか?

街ではエリスのメンバーが殺される事件も多発している。

 

今や見滝原は外を歩けば必ず警察を見かける事態にまで発展している。

キュゥべえはゲームの演出にもなると言っていたが、現状は異常であると言えよう。

そんな中で二人はバスに揺られて目的地に向かう。

 

 

「ごめんね、昨日は行けなくて」

 

「ううん、気にしないで。忙しかったのにゴメンね」

 

 

かずみの表情が重く、暗く、迷いを孕んだ物に変わっていく。

 

 

「ねえ、かずみちゃん」

 

「ん?」

 

 

勘違いだったら、自分が赤面すれば良い。

 

 

「もしもね……、あ! これはわたしの考えだから違ってたらゴメン」

 

「うん?」

 

 

かずみは良くまどか達の誘いを断る様になってきた。

本当に店が忙しいだけなのかもしれないが、それにしては見かける度に苦しそうだ。

 

 

「もし、ね? 戦いの事でかずみちゃんがわたし達に何かを感じてくれているなら、その気持ちは嬉しいと思う」

 

「!」

 

 

かずみから感じる距離感は、やはり彼女が中立の立場にいるからだろう。

まどか達が協力を唱える中で、かずみの立場は酷く曖昧だ。

今はたまたま協力関係にあるかもしれないが、やがて参戦派になる可能性を十分に持っている。

 

そしてかずみはその未来が来ることを悟っている。

だから距離を詰めてはいけないと、色々感じるところがあるのだろう。

今もこうやってまどかの隣には座っているが、距離はやや空いている。

それはいずれ敵になる自分達が関わりを持つ事を良しとしていないから。

まどかにとっても、かずみにとっても。

 

 

「わたしはね、かずみちゃんがどんな答えを出しても……、友達でいたい」

 

「!!」

 

「だからね、お願いがあるの」

 

 

まどかはニッコリと微笑んでかずみを見る。

かずみから見ればソレは何とも温かく、何と儚げな笑顔だろうか。

 

 

「かずみちゃんもね。わたしと戦う事になったとしても……、友達でいてほしい」

 

「まどか……」

 

「あ! もちろん戦う事になったら全力で止めるから!」

 

 

まどかは舌を出して笑う。

 

 

「わたし、結構強くなったんだよ」

 

「あはは、まいっちゃうなもう」

 

 

かずみは笑顔に戻ると、まどかとの距離を詰めてそのまま抱きしめる。

突然のハグに結局まどかは赤面する事に。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

「わたしの親友がね。嬉しい事があったら全身で喜べって! ありがとまどか、わたし本当に嬉しい!」

 

「えへへ」

 

 

だが同時に思ってしまう。

どうしてかずみはそんなに苦しんでまで、戦いのラインを行き来するのか。

 

 

「確かに秋山さんの願いは大切かもしれないけど、かずみちゃんだっても戦いたくないのならパートナーとして意見してみたら?」

 

 

するとかずみは、悲しげな表情を浮かべた。

 

 

「わたし自身ね、迷ってる部分があるんだ」

 

 

確かにまどか達とは戦いたくない。

サキと、ほむらと、騎士達と協力してワルプルギスを倒せればなんて思ってしまう。

しかし同時にどうしても叶えたい願いがあるのだ。そこもまた譲れぬ部分がある。

 

 

「かずみちゃんの叶えたい願いって……」

 

 

聞けない。

まどかは口を閉じるが、そこまで言えば聞いているのと同じだ。

かずみは複雑な笑みを浮かべて、ゆっくりと口を開いた。

 

全てを言う訳ではない。それは許されない。

でもだからこそ。まどかに少しでも理解できてもらえたなら、それはきっと……。

 

 

「わたしね。命よりも大切な人が二人いたの」

 

「え?」

 

 

親友よりも大切な二人が。

 

 

「でもね……、二人とも」

 

 

苦しそうに言葉を詰まらせる。

言いたいのに言えなかった。口にしようとすると、どうしても思い出してしまう。

 

 

「いいよかずみちゃん、言わなくても……!」

 

「ありがとう。ごめんッ」

 

 

願い事の詳細は分からずとも。

かずみが蓮に一方的に協力的な理由が分からずとも。

それでも、かずみが本気だということは分かった。

 

 

「大切な人……」

 

「うん。わたしの――」

 

 

バスが止まった。目的地についたのだ。

 

 

「行かないと。ね?」

 

「う、うん」

 

 

かずみの戦うの理由を知りうる事はできなかった。

だがかずみは、立ち上がり様にまどかへ手を差し伸べる。

どうやら友達でいたいと言うまどかの想い汲み取ってくれたみたいだった。

 

 

「行こ! まどか!!」

 

「うん!!」

 

 

まどかはかずみの手を持って立ち上がる。

そのまま二人は手を繋いだままバスを降りていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「へぇ、凄いね……!」

 

「うん、何かちょっと空気が変だけど」

 

 

かずみのアホ毛は魔法少女や魔女を捉えるセンサーなのだが、それがなんだかピクピクしている。

ハッキリと反応は示していないため魔女がいるわけではないのだろうが、どうしてなんだろう?

 

神聖な雰囲気がだからだろうか?

エリス本部はステンドグラスを多用しており、屋根の上部には大きな十字架のモニュメントもある。

もちろん本当の教会ではなく、あくまでもチャリティー活動をメインとした集団であるが。

 

 

「あ、ほむらちゃん! 仁美ちゃん!」

 

「あらまどかさん、それに立花さんも!」

 

 

先に到着していたほむらと仁美は、ロビーの椅子に座っていた。

手を繋いでいるまどか達を見て、何故かほむらは少しムッとする。

しかしすぐに咳払いをして奥へ向かう事に。

 

本部にはエリスのバッジを付けた人間達が多く見えた。

そんな人達の挨拶を受けつつ、四人は第一ホールに案内されていく。

そこには他の生徒の姿もチラホラと見えた。

 

一体ココで何が行われるのだろうか?

まどか達は良く分からずに首を傾げるだけ。

そうしているうちに時間が来たのか、ホールの電気が徐々に暗くなっていく。

どうやら話が行われる様だ。一同は席について何かが始まるのを待った。

 

 

「皆さん。今日はお忙しい中、お集まり頂いてありがとうございます」

 

 

ホール先にあるステージの教壇に、赤い髪の少女が立った。

しかし司会にしては幼すぎる気がする。年齢は小学生くらいにしか見えない。

さらに進行役しては着ている服が気になった。金色の装飾にゆったりとしたローブの様な衣装は、少なくとも他の役員とは位が違うように感じた。

 

 

「はじめまして。リーベエリス、リーダーの"ディス・コルディア"と申します」

 

「!?」

 

 

目を見張るまどか。

まさかあんな小さい女の子が、このとてつもなく巨大な集団の頂点に立つ存在だと言うのか?

とてもじゃないが信じられない。それはほむらや仁美達だって同じように思っただろう。

 

しかし幹部や、エリスのメンバー達は実際にディスコルディアと言う少女に頭を下げていた。

そうすると仰々しい服装にも納得だ。なによりもそんな嘘をつく必要がない。

 

 

「気軽に、コルディアと呼んでくださいね」

 

 

それにまどか達は知らないだろうが、公式サイトにはしっかりと彼女の紹介ページもある。

 

 

「え……?」

 

 

そこでまどかは間抜けな声を上げてしまった。

薄暗い部屋。ライトで照らされたコルディア。

彼女がまず最初に行ったのは、涙を流す事だった。

闇の中で光を放ちながら涙を流すコルディアは、まるで女神の様だった。

 

 

「皆さんの心の痛みが、私には良く分かります」

 

 

声を震わせ、大粒の涙を流して生徒達を見る。

怖かったろう、辛かったろう、悲しかったろう。

友を失い、学び屋を失い、そして自らの命をもが危険になる状況での恐怖。

 

 

「想像するだけで、辛い……!」

 

 

何人かは既にグッと心を掴まれていただろう。

それほどまでにコルディアは美しかった。

それは容姿の事を言っているのではない。いや、もちろん可愛らしい顔立ちではあるが、なによりもその雰囲気が美しかったのだ。

 

 

「気持ちは分かります。私も過去に大切な人を亡くしました。父、母、そして姉を」

 

 

コルディアは熱弁する。

自分が今、ここいる意味は何か?

必死に考えた。そうすれば自ずと答えは出ていた。

それは同じような苦しみを人に背負わせない事。苦痛を背負うのは自分だけでいい。

 

 

「私は皆さんの苦しみを背負います。家族よりも深く愛します。そうです! 私達は今日から家族になったのです!」

 

 

コルディアは満面の笑みを浮かべて、手を差し伸べるジェスチャーをとった。

スポットライトが強くなる。まるで曙光のように、後光のように。

生徒達は慈愛に満ちたコルディアの姿に釘付けになっていた。

コルディアの力になりたいと集まった人間達がいるもの頷けるというものだ。儚げな彼女の力になってあげたいと、小さな『種』が生まれたのではないだろうか。

 

 

「リーベエリスは皆様に学問を学ぶ環境を整えます」

 

 

そして本題はコレだった。

学校が使えなくなったまどか達の為に、無償でリーベエリスが勉強を教えてくれる。

要するに仮設学校を設けてくれると言うのだ。

本部にある一室を教室として、教科書も無料で用意してくれると言う。

 

 

「我々のメンバーには教員免許を持っている者や、元教師の人達もいます」

 

 

中には現役の教員もいるとか。

 

 

「安全な環境で、安全に勉強をしてほしい。それが私の願いであると皆さんに知ってほしい」

 

 

コルディアは必死に訴えた。

最近はエリスのメンバーも女子供関係なく惨殺される事件が多発してきた。

 

 

「しかし我々は決して悪意には屈しない!」

 

 

叫ぶ。強く、強く。

そこには先ほどの儚さはなく、強い眼差しの戦士がいた。

 

 

「善意の輪は広がり続け! やがて闇をも消し去るだろう! 私はそれを信じてます」

 

 

そこで再び柔らかい笑顔に戻る。

 

 

「手続きは下のロビーでお願いします。期限は設けません、お好きなタイミングで自由に来てもらっても結構です。このエリス本部は皆さんのもう一つの家なのですから」

 

 

その言葉を最後にして、今回の話し合いは終了した。

どうやら仮の学校を作ると言う事がメインだったらしい。

コルディアは笑顔で手を振り、退出していった。

ホールは再び明るくなり、今日は解散と言う事になる。

 

 

「随分と素敵な方でしたわね」

 

 

たしかにそうだ。まどかもソレは思っていた。

自分よりも小さいのに随分としっかりしていて、綺麗で、そして品がある。

理由は大まかなものだったが、家族を失ったのに賢明に今を生きるコルディアに、まどかは尊敬さえ覚えていたかもしれない。

 

 

「でも学校を作ってくれるのはありがたいよね、行かないかもだけど」

 

 

舌を出して笑うかずみ。

自由にいける学校なんて素晴らしいじゃないか。

同時進行でエリスのメンバーが学校の復旧を手伝っているらしいし。

 

それにしても先ほども話しに出ていたが、本当にエリスのメンバーには凄い人が多い。

学校を直しているのだから、建築関係はもちろん、思い返せばまどかがよく行っているコンビニの店長も先日エリスメンバーに入っていた。

 

参加条件は『人の役に立つことを苦と思わず、弱きものに手を差し伸べる事を願う者』らしい。

つまり善意のある人間ならば誰でも入れるのだ。

面倒な手続きも存在しないと言うのが拍車をかけているのかもしれない。

 

 

「すごいね、まだ設立してそんなに時間も経ってないんでしょ?」

 

 

入り口のロビーにあった紹介のパネルにそんな事が書いてあった。

その短期間の間にここまで大きくなったのはコルディアの努力があるのだろう。

現在は『見滝原に潜む闇を倒す』と言うスローガンを抱え、警察と協力して犯人を追っているらしい。

 

そんな善意の意に溢れたリーベエリス。

多くの人に歓迎されているが、中にはその存在を良しとしない者もいる。

 

それはまどか達がリーベエリスから帰る途中だった。

ほむら達別れ、かずみと共に帰っていたまどかは、イライラしている様子の北岡を発見する。

 

 

「北岡さん!」

 

「ん、確か……」

 

「まどかです! 鹿目まどか!」

 

「かずみだよ!」

 

「あぁ、はいはい。なるほどね」

 

 

そこで北岡は呆れたように苦笑いを浮かべる。

 

 

「あのさ、俺一応敵なんだから、注意した方がいいんじゃない?」

 

「え、でも……」

 

 

複雑な表情のまどか。

そこで――

 

 

グルルルルルルルゥ

 

 

「「!?」」

 

 

目を丸くするまどかと北岡。

隣では顔を赤くしてお腹をさすっているかずみが。

 

 

「でへへ、お腹空いちゃったね」

 

「……はぁ」

 

 

なんて緊張感の無い。

北岡はもう一度頭を抑えて、がっくりとうな垂れた。

 

 

「え! これ食べていいの!?」

 

「女性には優しく接するのが俺のルールなんだ、まあ食べな」

 

「ありがと先生ー!」

 

 

かずみは目の前にあるパフェにかぶりつく。

あれから三人は近くにあった喫茶店に移動していた。

まどかもケーキと紅茶をごちそうしてもらった。嬉しそうにフォークを持つと、そこで北岡の腕が伸びる。

 

 

「今日のことはできれば城戸のヤツに伝えておいてくれ」

 

「え?」

 

「そして城戸のヤツには令子さんに俺の優しさを伝えるように言ってくれ。是非。是非な」

 

「???」

 

 

よく分からないが、とりあえず頷いておく。

 

 

「ところで北岡さん。どうしてあんな顔してたんですか? もしかして……、ゲーム?」

 

「え? ああ、俺が苛立ってるのはアイツらさ」

 

「?」

 

 

北岡が指差したのはテレビ。

そこには今日も今日とて例外なくリーベエリスのCMが流れている。

 

 

「貴方たちは家族です、広げよう善意の輪、ああ反吐が出る」

 

「そ、そうですか? 素敵だと思いますけどぉ……」

 

「冗談キツイよまどかちゃん。アイツら本当にふざけてる」

 

 

北岡が言うにはリーベエリスには弁護士のメンバーもいて、本部に行けば無料で悩み事を相談してくれると言う。

さらに驚くべきは小さな事件程度ならば無償で法廷まで付き合ってくれるとの事だ。

 

 

「あいつ等イカレてるとしか思えない! おかげで俺の仕事がどんだけ減ったと思ってるのよ。弁護士としてのレベルはコチラが圧倒してる。向こうは雑魚、カス、屑レベルの連中!」

 

「言いすぎですよ……」

 

「いいんだよ! なのに人は無料の魔力に圧倒されるものなんだ!」

 

 

相談料に金が掛かる北岡の事務所にはすっかり人がいなくなってしまった。

 

 

「じゃああんな連中の為に料金設定を変更しろと? 冗談じゃあない、弁護士軽く見られたら終わりだ!」

 

「確かにお仕事してる人は困るよね、立花さんもぼやいてたよ」

 

 

リーベエリスの本部にある喫茶店は広く、そして全てのメニューが無料である。

 

 

『家族からお金を取る事などおかしいでしょう?』

 

 

それがエリス側の言い分なのだが、やはりそちらに流れてしまうのだから他の店からしてみれば大迷惑である。それに飲食だけではなく、他の施設等も完備してある徹底振りだ。

何か困った事があればリーベエリス本部に向かえばだいたいは相談に乗って解決してくれる。

 

 

「………」

 

 

周りを見回すまどか。

この喫茶店は特に看板メニューもなく、本部から近い事もあってか、お客がいない。

 

 

「ムカつたからさ、ちょっと文句言いに行ったんだよ」

 

「え! そうなんですか?」

 

「ああ。お前らがいると商売にならないって。そしたら何て言われたと思う?」

 

 

『困っている人からお金を取るなど考えられません、それは善意からかけ離れている愚かな行為です』

 

『金銭など、家族の間には不要なモノ。それにそんなものなら望めば腐る程湧き出ます』

 

『お金がほしいなら、いくらかは差し上げます。だから困っている人を悪戯に混乱させるのは止めてください』

 

 

「だぜ!? アイツら本当にムカつくよ――ッ!」

 

「へー、すごいね」

 

 

かずみは口の端についていたクリームをペロリと舐めとった。

多くのことを無料で行ってくれる施設は皆が幸せになるものと思っていたが、見方をひとつ変えれば迷惑の塊だったと言うことか。

 

 

「でも、あの、一つ聞いてもいいですか?」

 

「?」

 

「北岡さんの事務所はどうしてあんなに……、その、小さいんですか?」

 

 

北岡ならもっと大きな事務所でもおかしくは無い筈だ。

なのにたった一人で。よく分からない。

 

 

 

「ずっと一人でやってきたんですか……?」

 

「ああ、いや――」

 

 

北岡は複雑そうに顔をしかめた。

 

 

「過去には秘書がいたさ」

 

 

由良吾郎と言う優秀な秘書が。

しかし今現在北岡は一人である。

どういうことなのか……?

 

 

「死んだよ、ゴロちゃんは」

 

「えッ? あッ、ごめんなさい」

 

「いや――……、俺は恨みを買いやすいからさ」

 

 

忘れる訳が無い。ある日北岡が事務所に帰ってくると、吾郎の死体が転がっていた。

吾郎は強い。必死に抵抗したのか、事務所には争った跡がいくつも残されていた。

だが結果として彼は殺された。その体に何本もの矢を受けて。

 

 

「おそらくは俺を狙ったんだろうけどさ。いなかったから……、代わりに」

 

 

この時代に矢で殺しにくるなんてどうかしている。

結局犯人は今も分かっていないが、相当な変わり者だったのだろう。

どこぞの『組』の者か。それとも浅倉のように過去に何かしたものか。

 

 

「候補が多すぎるから考えるだけ面倒になってさ」

 

 

それから北岡は事務所を小さくして一人で活動を続けてきた。

その後も何人か秘書は雇ったが続く者はおらず、今に至る訳だ。

 

 

「俺は運がいいから、助かった」

 

「そんな言い方ひどいよ、由良さんは先生を守ったのに」

 

「………」

 

 

北岡は無言で笑みを浮かべるだけだった。

 

 

「北岡さん」

 

「ん?」

 

「さやかちゃんは……?」

 

 

そんな質問に北岡は吹き出す様に笑った。

 

 

「馬鹿な奴だったよ、仕事もできないし」

 

「………」

 

「ただ、馬鹿の方が賢い奴よりずっと良い」

 

 

北岡はそれだけを言い残すと二人に別れを告げた。

 

 

「………」

 

 

北岡はさやかを蘇生できる立場にある。

しかしそれを行う気配はない。

それは人としての葛藤なのか――?

それとも、彼の弱さなのか。

 

 

 

 

翌日、BOKUジャーナルでは真司がせっせと仕事に励んでいた。

平和な事は一番だが、事件が多ければ多いほど仕事が増えると言うのが複雑な職業である。

連続する行方不明事件。殺人事件。そしてテロ事件。見

滝原が何故この短期間でココまでの危険な街となってしまったのか?

 

それを解明する為にBOKUジャーナルも総力を結集していた。

とは言え真司からしてみれば理由が分かってしまっている以上、何とも言えない現状である。

 

 

「真司くん……」

 

「どわっ! どうしたんすか島田さん!!」

 

 

死んだ魚の様な目をしながら、島田がヨロヨロと近づいてくる。

どうやらココ最近まともに寝ていないらしい。ただでさえ人がすくないネット配信社だ。

それだけ労力も増えると言うもの。

 

 

「編集長から伝言――……」

 

「は、はあ」

 

 

15分後、真司は話題のリーベエリス本部の中にいた。

ココ最近エリスの話題はSNSを通して爆発的に加速している。

慈善活動、チャリティー、数々の支援、ほぼ無料のボランティア。

一部では偽善集団と叩く者もいるが、多くの場合は褒め称えるコメントで溢れている。

 

何故彼らはここまでするのか。何を収入としているのか。

まだまだ謎が多いエリスを取材して来いとの指令だったのだ。

アポはとっておいた為、真司が受付を済ませるとすぐに一つの部屋に案内される。

 

 

「………」

 

 

真司は誰もいなくなった部屋で辺りを見回してみる。

ステンドグラスに囲まれた部屋はなんだか日本にいる気がしない。

それに天使の絵が自分を見つめている気がしてなんだか落ち着かない。

なんだか罪を咎められる視線だった。

そうしていると、扉が開く。

 

 

「お待たせして申し訳ありません」

 

「ああいや――、ッて、え!?」

 

 

思わず声を上げて固まる。

なぜなら目の前に現れた担当者は、エリスで一番偉い位置にいる人だからだ。

コルディア。しかし事前に情報を得ていたとはいえ、改めて見るとやはり不思議なものである。

まどかよりも小さい女の子が、こんな集団をまとめあげるリーダーなんて。

 

 

「ど、どうも! BOKUジャーナルの城戸真司です」

 

「はじめまして。リーベエリスのコルディアです」

 

 

ネットの一部では、その行動や振る舞い、そして美しさから天使と呼ばれているらしい。

まさか直々に現れるとは思わなかった。真司はポカンとしながら握手を交わす。

 

 

「時間がある時には、来客の対応は私が行っているんです」

 

「はぁ、そうなんですか……」

 

「人の話を直接聞かなければ痛みは分かりませんから。その人を理解する事、理解してもらう事が大切なんですよ」

 

コルディアは直接人と対面する事の重要さを説いた。

コレは真司としてもありがたい事だ。直接トップの人間にインタビューできれば、人となりも見える筈。

 

 

「えっとじゃあ、早速取材の方を」

 

「ええ、どうぞ」

 

「まずはどうしてこう言った活動を?」

 

 

リーベエリスはコルディアが立ち上げたのではないと言う。

元々あった団体が名前を変えて、コルディアがトップになった途端に話題になっているだけ。

はっきり言ってたまたまだと言う。

 

 

「最近はSNS文化ですから。話題にしてくれる人が多くなったのでしょう」

 

「なるほど」

 

「けれど、私自身の想いと言うモノがあります」

 

「それはどういう……?」

 

 

その言葉にコルディアは涙を流す。

 

 

「私は両親を事故で失い、最愛の姉も行方不明となりました」

 

「あぁ、それはなんて言っていいか……、すいません」

 

「いいんです。それが私の道を決めた事ですから」

 

 

弱さや悲しみが自分の道を決めた。コルディアはそう言って微笑んだ。

成る程。真司も何故彼女が天使と呼ばれているのかが分かった気がする。

辛い境遇でありながらも、必死に生きて、そして人の為に努力を惜しまない姿はある種最大の自己犠牲ではないか?

 

自らの幸せよりも、コルディアは他人の幸せの方が嬉しいのだと告げた。

その感覚は良い意味でも悪い意味でも変わっている。

だからこそコルディアは同じ『人』であると言う感覚を薄めているのだ。

それが天使と呼ばれる理由だと真司は確信する。

 

 

「この世界には、まだまだ痛みが満ち溢れています」

 

 

悪意や恐怖、ねたみ、恨み、それらは人を狂わせて幸福を逃す悪意となる。

 

 

「そんな全ての存在を消し去りたい、それが私の切なる願いです」

 

 

それが叶うのならば例えこの身が傷つこうとも構わない。自らが血を流したとしても構わない。

 

 

「いつか世界中の人々が手を取り合い、笑い合える未来を願って、私達は行動を行っているのです」

 

 

凄い人だ。真司はつくづくそう思う。

コルディアくらいの年齢の時には、ろくな考えも無く遊んでいたものだが、彼女の小さな背中には今とてつもない責任が乗っている。

 

環境や考え方、それが違うと人はこうまで成長するのか。

真司は若干の恐怖すら覚えていたかもしれない。

 

 

「でも、ちょっと気になる事があるんですけど」

 

「はい?」

 

 

本当にコルディアはこんな生活を望んでいるのだろうか?

確かに活動は立派だが、本当は歳の近い少女達と遊ぶ方が――?

まあ尤も、そんな事は聞けるわけも無く。真司はジャーナリストとしての質問を続けていく。

 

 

「やっぱり無償と言うのが特徴的ですよね。この中にある自販機とか、レストランとか全部無料ですし。変な話し、資金とか、収入と言うのは?」

 

「そうですね、メンバーの方の寄付や、スポンサー様の寄付にて成り立っています」

 

「なるほど。スポンサーですか」

 

「ええ。企業から商品等を提供してくださると、我々も宣伝活動をお手伝いしています」

 

 

確かに現在、リーベエリスの好感度は高い。

そこに協力していると名が付けば、宣伝効果は高いかもしれない。イメージアップにも繋がる。

 

 

「中には、資産家の方が遺産をまるまま寄付してくださったこともあります」

 

「す、凄いですね」

 

「お金じゃ買えない価値があると見てくださったのでしょうか。ありがたい話です」

 

 

おかげで最初は小さなものではあったが、今にはそこそこ立派なものになったとコルディアは言っていた。

 

 

「コレもまた善意の輪、人が人を助けたいと思う気持ちが資産をつくってくれる。私達はコレを善意の錬金術と呼んでいます」

 

「は、はあ……」

 

 

聞こえは良いとは言えないが、気のせいだろうか?

だがとにかくコルディアたちの行動に共感や感動した人達が『あしながおじさん』になってくれる訳だ。何をするにも金がいる世の中では珍しい。

 

 

「おわかりいただけたでしょうか?」

 

「あ、はい! ばっちりです」

 

 

他にも真司は色々な質問をぶつけていく。

例えばリーベエリスのメンバー数や、メンバーにはどんな人がいるのかと言う事だ。

ネットでも軽く触れてあったが、とにかく人数が多い。世界中から行動に共感した人が本部には集まっている。

中にはエリスの行動に集中したくて会社を辞める人までいるそうだ。

 

集まるメンバーも職業や年齢はバラバラである。

とにかく入りたいと思えば入れる為、職業も大工、先生、弁護士、医者、まさに多種に渡るもの。

 

 

「城戸さんもいかがですか?」

 

「え?」

 

「もちろん無理にとは言いません。私達と家族なりたいのなら、いつでもいいですよ」

 

「はぁ、あははは」

 

 

頭をかく真司。何かを思い出していた様だ。

その後も他愛ない質問を繰り返していき、そうやってインタビューは終了した。

知りたい事はだいたい分かったし、十分な仕事はできただろう。

二人はなごやかな雰囲気で別れを告げると、そのまま別れていく。

 

その後真司はBOKUジャーナルに戻り、記事を纏めた。

驚くべきは編集長が出来上がった記事にすんなりOKを出すと、そのまま掲載を始めたことだ。

そして瞬く間にアクセス数が上昇していく。

世間の興味は今それだけリーベエリスに集中していると言う事だった。

 

 

「人間は興味のない話題でも流行ってれば気になって食いついてくる。そしてそれだけ話題に興味を持っていき、同時に嫉妬して否定したりする」

 

 

情報は新たな情報を生み出す泉だ。

人はリーベエリスの情報を見て、さらに深いところを知りたいと思うようになる。

編集長が言うには、しばらくコレで勝負していけそうだとの事だ。

つまりコレは目玉。誰もが興味を示す最大の餌と言う事にもなる。

 

 

「うーん」

 

 

そんなに凄いものなのか?

確かに行動は立派だと思うし、凄い集団だとは思うが、真司はそこまで興味はそそられなかった。

尊敬して、ハイ終わりってなモノである。

しかしコメント欄を見てみれば悪い噂を流すものは、実は世界を征服しようとしているなんて突拍子も無いものまでチラホラと。

 

 

「よく分からないなぁ」

 

「それでいい」

 

 

編集長いわく、記者にとって自分の意見を掲載する事は大事かもしれないが、一番大切なのは中間の立場にたって物事を見る事だと言う。

なので真司は無難なコメントを乗せて終了する。

 

 

「編集長はどう思ってるんですか?」

 

「別に。ただまあ、SNSでのコメントも理解は出来るさ。いろいろ考えられる集団だからな、あやしさもあるし、胡散臭さとか? でもまあ輝きもある」

 

 

日々何かしらのスレッドは立てられている。

行動を褒め称えるスレ、偽善者集団だとののしるスレ、コルディアの美しさを褒めるスレ。

まあどれもこれもリーベエリスだ。テレビをつければ必ずCMを目にし、ネット見ればエリス関係のスレッドが見え、そしてフリーペーパーの雑誌にも載っている。

 

要するに今見滝原はどこを見ても、どこにいてもリーベエリスの話題がついてくる。

少し大げさかもしれないが、見滝原にいる人間ならば誰でもリーベエリスを知っている筈だ。

メンバーになっている人も多いのだとか。

 

 

「でもまあ、こう言うのはブームだ。いずれは他の話題が出てくる。だから今のうちにしっかり取材しておけよ」

 

「はあ、そういうもんですか」

 

「ウーパールーパーとかレッサーパンダとか、パンダみたいなモンなんだよ」

 

 

真司は適当に頷きながら一日の仕事を終えた。

 

 

 

 

 

「今日は、そういう事があってさ」

 

「出たよ、出ましたリーベエリス。まあうっさん臭いよね」

 

「お、おい! そんな事言うなよ!」

 

「もう見飽きた、はっきり言って目障りだな」

 

「あのな! お前もなんて事言うんだよ!」

 

 

居酒屋のカウンター席。

真司を中心として、右には蓮。左には美穂の姿があった。

三人はビールジョッキを片手に、ブツブツ卑屈な表情で酒を流し込む。

見るからにダメな大人である。

 

 

「かぁー! やっぱ働いた後はうまいよな!」

 

「……おい」

 

「ん? どうしたんだよ蓮」

 

「嫌味な奴になったね真司は。私は悲しいよ」

 

「なんだよ美穂まで……って、あ!」

 

 

よく考えてみれば、この二人にしてみればエリスは邪魔でしかない。

 

 

「ご、ごめん」

 

「連中が来てからコッチの店の客がだいぶ取られた」

 

「私なんて学校そのものが無くなったのよ!? もう本当にどうしていいかぁあぁん……!」

 

 

美穂はとりあえず心に大きな傷を負ったということで、実習をまるまま放棄して休んでいるらしい。

蓮としても常連はともかく、新規の客は全て取られたと言ってもいい。

どちらも職業柄、良い思いはしていないのだ。

 

もちろん学校を直してくれている事や、子供達を守ってくれている事には何も言うつもりはない。

しかしそれはそれ、これはこれである。人間余裕が無いとイライラしてしまう。

そうなってくると、何かに八つ当たりしたくなるのだ。困ったものである。

 

 

「はい、焼き鳥おまたせしました!」

 

「ああ、どうも」

 

 

真司が注文した焼き鳥が届く。

 

 

「ムシャムシャムシャ!!」

 

「う゛おいッッ!!」

 

 

五本入っていた焼き鳥から速攻で三本のバードが消え去った。

美穂が怒りに任せて奪い取った串。

さらに見れば蓮も一本を奪っているじゃないか。

 

 

「ふざけんなよ! 食いたきゃ自分で注文しろっての!!」

 

「うるへー! 仕事順調なんだからこれくらい許せよ!」

 

 

ハムスターのように頬を膨らませた美穂に睨まれた。

真司は涙目になりながら自分の焼き鳥を守る様に構える。

 

 

「獣がいる前で餌を堂々と見せる方が悪い」

 

「お前も取ってるだろ! あとそんなすぐに守れるかッッ! っておいちょっと待て! 俺の大好きなねぎまちゃんが消えてる!」

 

 

どこ!?

ねぎまちゃんはどこ!?

そんな真司をあざ笑う様にして、美穂は自分の腹を指差した。

 

 

「ここ!」

 

「おまッ! お前ぇぇ! くぅぅウウ!!」

 

「ふん、レディファーストよレディファースト!」

 

「レディなんてどこにいるんだよ!!」

 

 

ムッとした表情を浮かべる美穂。

彼女は大きく体を反らして、胸を強調してみせる。

 

 

「ほら、何なら近くのホテルで確かめて見る?」

 

「ブッ!!」

 

 

真っ赤になって仰け反る真司。それを見て美穂はニヤニヤと笑っていた。

 

 

「知ってるんだよ。本当は真司が私のデッキにファイナルベントしたいんだよね?」

 

「ななな何言ってんだよ! お前本当に最ッ低だな!!」

 

「下品でうるさい奴らだ。酒が不味くなる」

 

「おいちょっと待て蓮、何で最後の焼き鳥まで食べてんだよ! 俺一本も食べてないんだぞ!!」

 

 

なんでこんな疲れなければならないのか。真司はガックリとうな垂れてため息をついた

しかし考えてみれば、確かに胡散臭いと言うか、真司視点でもリーベエリスは少し特殊な雰囲気を感じる。なんというか、普通のチャリティー集団とは少し違う位置にいると言えばいいか。

まあ捻くれている美穂達の言う事なのだから、気にする事はないのかもしれないが。

 

 

「あ、そういえば蓮」

 

「ん?」

 

「前に頼まれたヤツ、あれゴメン、うまくいかなかった」

 

「そうか。ならいい」

 

 

美穂が謝るが、蓮は別にどうでもいいと言うリアクションだった。

 

 

「あれ? なんだよ。何かあるなら俺も協力してやろっか?」

 

「いや……、もういい」

 

「ねえ蓮、別に真司に言ってもいいでしょ?」

 

「ああ、隠すつもりは無いからな。かずみの事だ」

 

「え? かずみちゃん?」

 

「少し気になってな」

 

 

かずみは立花の親戚で、蓮を知っていると近づいてきた

しかし蓮はかずみは知らないし、協力的な理由が分からない。

ましてやかずみは参戦派になる事を悩んでいる。そんな人間が、何故いつまでも傍にいるのか。

 

 

「だいたい近づいてきたアイツがパートナーなんてのは、偶然にしてはできすぎてる」

 

「あぁ、まあそれは確かに?」

 

「だから霧島に頼んで、個人情報を調べてもらった」

 

 

せめて自宅の場所さえ分かれば、両親に話を聞けるかもしれないからだ。

だが学校に提出した住所はアトリのもので、保護者も立花の名前になっている。

つまりかずみが元々いた場所については何の手がかりも無かったのだ。

ましてや他の情報は滅茶苦茶だ。にも関わらず、学校は疑問を持たない。

 

 

「多分魔法使ってる。洗脳系のヤツかな。教科書とかそれで手に入れたっぽい」

 

「いやッ、って言うかかずみちゃんに直接聞けばいいじゃないか」

 

「アホかお前は。もう聞いた」

 

 

しかし何度問いかけても、うやむやな答えを示すばかりで無駄だった。

立花についても同じだ。聞いても答えてくれない。

だからこうして美穂に頼んだのだ。

 

 

「本当に覚えてないの? かずみちゃんはアンタを知ってるんだから、どっかで会ってるのよ」

 

「全く覚えてない」

 

「あッ、もしかしてかずみちゃん、お前が好きなんじゃ……」

 

「ハァ、真司……、あんたマジで真――ッ、はぁぁぁ!」

 

「なんだよ! その軽蔑しきったようなため息は!」

 

「あのね、かずみちゃんの目を見れば分かるの。あの眼差しはそういうんじゃないんだよ?」

 

 

かずみの好意は男女の間に生まれる愛ではなく、友愛や憧れのそれに近いと美穂は熱弁する。

 

 

「目を見ただけで分かるのかよ!」

 

「分かるよ。女の勘もあるけど」

 

「なんだよそれ……」

 

「もう童貞の真司には分からないんだから、黙っててよ!」

 

「な、なななななんだよ!!」

 

 

真司は氷水を大量に摂取し、一旦クールダウン。

 

 

「でも意外だよ、蓮がそこまで他人に興味を示すなんて」

 

「ああ、確かにそれは分かる」

 

「……なにがだ。気味が悪いから調べるのは当然だろう?」

 

「いや、まあそうなんだけどさ」

 

 

蓮は友人が少ない。それこそ真司と美穂だけだ。あとは恋人の恵里だけか。

それはやはり近づきにくいオーラと言うか。無愛想で、ソリッドな空気と言うのか。

 

しかしかずみはそれを気にすることなく近づいてくる。

まあ言ってしまえば真司と近いタイプなのだ。だから蓮もかずみにはなんだかんだと優しくしている。それが新鮮だった。パートナーという補正はあるのかもしれないが。

 

 

「それにかずみちゃんってちょっと恵里に似てるよな。笑ったときの雰囲気って言うのかな」

 

「分かる。笑ったときの子供っぽい感じ、柔らかいって言うのかな?」

 

「………」

 

 

蓮は何も言わなかった。否定をしないと言うことだ。

 

 

「ねえ真司、私の笑顔はどう? キュートでしょ?」

 

「汚い」

 

 

掴みかかる美穂と、振りほどこうともがく真司。

バカな光景だ。蓮はつくづく思う。

だが嫌いじゃない。

 

嫌いじゃないが――、何が一番好きなのか? それを改めて自問する。

得体の知れないかずみに甘いのは、真司達の言うとおりだ。

少し雰囲気が近いからと言う理由でかずみに甘くなる。

 

それだけ恵里の事が大切なのだ。

 

 

蓮は奇跡を信じるタイプではなかった。

 

 

「恵里はいつ急変してもおかしくない。明日にはもう、いないかもしれない」

 

 

あれだけ騒いでいたのに、真司と美穂は一瞬で言葉を止めた。

 

 

「許せ。戦う時は、本気で殺すぞ」

 

「……ああ、いいさ。俺も本気でお前を止めるからな」

 

「やり過ぎるんなら、両方のケツに蹴りを入れてあげるね」

 

 

三人は同時に吹き出した。

おかしな会話だった。いずれ敵になりうる筈なのに昔の雰囲気とまるで同じじゃないか。

ナイトとの殺し合いは、あくまでも友情の延長線になるのだろう。

真司はため息をついて、すっかり温くなったビールに口をつける。

その味はいつもより、余程苦く感じた。

 

 

 

 

 

 

夜。リーベエリス本部にあるコルディアの部屋。

さらにその奥にある隠し部屋。コルディアは跪き、女性の靴にキスをしている。

それは絶対なる忠誠の証。コルディアの上に立つ人物がそこには存在していた。

 

 

「報告は以上です。お母様」

 

「ええ、ありがとうございます。今日も一日大変でしたね」

 

「いえ。私が疲労する中で他の人達が幸福を得られる可能性が広がるのならば」

 

 

そう言ってコルディアはいつもと変わらない笑みを、『お母様』と呼ばれた女性に向ける。

しかしコルディアは彼女は事故で両親を失っていると言った。その言葉に偽りは無い。

つまり今、彼女の前にいる女性は義理の母親と言う事になる。

もっと言ってしまえば母親代わりの女性なのだ。

 

 

「しかし城戸真司ですか……。まさか彼がこんな所に潜んでいたとは」

 

「っ? あの記者様を知っているのですか?」

 

 

女性は表情を歪め、顔色を真っ青に変えた。

 

 

「知っているもなにもお! 彼は悪意の具現化ですよ。ああ恐ろしい……っ!」

 

「え!」

 

 

打ちのめされた表情を浮かべるコルディア。

 

 

「まさか! 無害そうな人でした」

 

「それが彼の恐ろしいところなのです。あの雰囲気にだまされ、多くの人が命を失いました」

 

「そんな……! で、では私は裏切られたのですか?」

 

「そうなりますね」

 

 

コルディアは崩れ落ちると、おうおうと涙を流す。

 

 

「コルディア。よく聞いて。今この見滝原には多くの悪意と殺意が蠢いています」

 

 

母と呼ばれた淑女は、コルディアにUSBメモリを渡した。

 

 

「これは?」

 

「後で幹部と一緒に見てちょうだい。そこに映っている悪意こそ、我々が本当の意味で戦うべき相手なのです」

 

「つまり私の道ですか?」

 

「ええ。しかし気をつけて。それは恐ろしく、おぞましい映像です。気をしっかり持って、正義の心を身に宿して見てください」

 

「分かりました、お母様……」

 

 

その後もチラホラと会話を繰り返す。

その間にコルディアは何度涙を流しただろうか?

それほどまでに心に突き刺さる内容だったのだ。

 

 

「さあもう今日は遅い。早く休みなさい」

 

「分かりました。おやすみなさい、お母様」

 

 

コルディアは頷くと自室に戻る。

しかれどもまだ幼いゆえの好奇心か。それとも覚悟の表れなのか。

パソコンに先ほどのメモリを挿し、中の映像を確認してみる。

 

 

「―――――」

 

 

叫んでいた。

それは大いなる嘆き。

コルディアは渡された映像を見て、気が狂いそうになるのを必死に抑えた。

命がけで記録したと母は言っていた。それほどまでに凄惨な映像があったのだ。

 

 

「あぁ! ぁぁあああぁああぁぁああぁ!!」

 

 

嘔吐し、泣き続けるコルディア。

彼女はすぐに服を脱ぎ捨て、全身にカッターナイフの歯を押し当てる。

沈む刃、流れる血。それでよかった。コルディアは少しでも映像の向こうにいる被害者達の恐怖や痛みを受け止めるため、自傷行為を繰り返す。

見ればコルディアの体中には傷があった。救済の自傷は今回が初めてではない。

 

 

 

「なんて事っ! なんて事なの!!」

 

 

こんな事をしている場合じゃない。

彼女はすぐにエリス幹部を収集して緊急集会を開いた。

ちなみにコルディアの『母』を知っているのは本当にごく一部の幹部だけだ。

他のメンバーはコルディアの自室に隠し扉があるなどと言う事を知る由もない。

 

 

「皆さん! 勇気あるエリスのメンバーが、見滝原に潜む絶望の姿を捉える事に成功しました」

 

 

ザワつく部屋の中、コルディアは唇を噛むと早速スクリーンに映像を映しだしていく。

見滝原の中にある強大な悪意、恐怖、絶望。その全てを集め、具現化した存在がこの街に潜んでいる。

 

 

「何としてもその存在を排除しなければなりません!!」

 

 

コルディアは念を押してメンバーたちに助けを求める。

 

 

「これが、悪意です!」

 

 

肉が引きちぎれる音、骨が砕かれる音、何かが破れる音。多くの悲鳴が映像の中にはあった。

携帯のビデオで撮影していたのか、画面は大きく揺れている。

 

 

「こ、コルディア様……! これは一体!?」

 

 

こんな残酷な映像は一体何なのか。

しかもよく見れば殺されている人達は皆リーベエリスのバッジをつけているじゃないか。

家族を殺されているのと同じだ、彼らはコルディア同じく涙を流したり、自傷行為に走り始める。

 

 

「あぁ! あれは何なの!?」

 

 

映像の中に犯人の姿が映し出された。

おぞましい。金属バットで命乞いをするメンバーを次々に殴り殺していた。

かとも思えば映像が切り替わり、銃で眉間を撃ち抜いていく者もいる。

 

つまり犯人は一人ではなかった。

一人、また一人、悪意の集団がエリスのメンバーを惨殺していく。

誰だ? こんな非道な事を行う者は。幹部達は犯人の姿を脳へ焼き付けていく。

 

 

「一見すれば普通の青年や少女に見えますが油断しないでください。彼らは――、悪魔です!!」

 

 

コルディアは犯人の名を次々に口にしてく。

ちょうど最初の人物が映し出された。

 

 

「城戸ッ、真司!」

 

 

真司は手に持った武器で楽しそうに人を殺しまわっている。

かと思えば映像は切り替わり、北岡と言う人間がハンマーで人を殴りまわっている。

映像は次々に切り替わり秋山蓮、霧島美穂、手塚海之、そして浅倉威。

 

 

「それだけではありません。一見すれば我らが守るべき者たちも――」

 

 

ざわつく一同、

次に映し出されたのは、まだあどけない少女だった。

しかし銃を構えて逃げ回る人達を殺して回る。

 

 

「おぞましい光景です! あんな猟奇的な殺人をこんな少女が行っているなどと……!」

 

 

さらに映像は切り替わっていく。犯人は一人ではない。

 

 

「浅海サキ、立花かずみ、暁美ほむら――!」

 

 

杏子とニコ以外の名前が告げられていく。

そして最後の犯人が見えた。

 

 

「外道、その名は鹿目まどかッ」

 

 

コルディアは机を叩き、幹部達を鼓舞する。

 

 

「彼女たちを止めなければ! 我々に真の平和は齎されない!! 私は神の言葉を聞いた!!」

 

 

コルディアは母を『神』と称して教えを説いた。

母は言った。彼らを倒すには生贄を神に捧げればいい。

 

 

「鹿目まどかの弟、鹿目タツヤを生贄にしましょう!」

 

 

悪魔の弟を神に捧げ、絶望の連鎖を止める。

賛成していく幹部達。メンバーにこの事を伝え、秘密裏に行動を起こすと告げていった。

警察だけには任せておけない。自分達の手で家族の敵討ちだと、復讐を行うと。

 

 

「皆さん、私達の為に、そして何よりも世界の平和の為に彼らを殺しましょう!!」

 

 

よもや外道は人ではない。リーベエリスが守るのは『人』だ。

よってメンバーを殺すまどか達には何の慈悲も与えはしない。

殺された同胞たちと同じ苦しみを与え、殺す。

 

 

「善意の輪は我らにきっと助けを与えてくれる筈です!」

 

 

皆さん、見滝原を守る為に戦いましょう。

コルディアの言葉に幹部達は大きく頷いた。

彼女の言葉は絶対だ。それは日々の行いが生んだ忠誠心からくるものなのか?

 

いずれにせよ、どちらも普通ではなかった。

この見滝原にて行われているゲームも、それに踊らされるコルディアたちも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母様、報告が終わりました」

 

「ええ、ありがとうコルディア。こんなに夜遅く」

 

 

部屋に戻ったコルディアは、早速母に報告していく。

それを聞いた母は、コルディアを優しく抱きしめると感謝の言葉をかけた。

 

 

「お母様に励まされると、報われた気持ちです」

 

「お休みなさいモモ、悪夢は必ず晴れるものですよ」

 

「はい、シルヴィスお母様」

 

 

コルディアとは、言ってしまえば称号である。

彼女の本当の名は"佐倉桃子"、そして母と慕う淑女の名は"シルヴィス・ジェリー"。

どちらも佐倉杏子にとって大きな影響を与えていた人物である。

あの日杏子はモモを置いて、偽りの福祉施設であるリーベを抜け出した。

 

だがそれから時は流れ、リーベはリーベエリスとして生まれ変わったのだ。

その長に君臨するのがモモとは何と皮肉な事なのだろうか?

運命の悪戯と言う言葉が一番相応しい。神は随分と皮肉な事をする。

 

報告が終わるとモモは自分の部屋に戻っていった。

シルヴィスは椅子に持たれかかり、『通話』を行う。

 

 

『それで、人数の方はどうなんだ?』

 

「ええ、問題はありませんよ。担当のものがしっかりと手配を」

 

『なら問題ない。金は用意してある。部下を通してソッチに送らせよう』

 

「助かりますわ」

 

 

皆、モモを天使と言うまでに心酔している。

しかしどれだけ善意の仮面で取り繕っても、その裏の顔は消えることは無い。

リーベが何をしていたのか? それを考えれば、リーベエリスもまた同じ顔を持っていると結論に至るのは難しくない話だった。

 

今現在、シルヴィスが話している人物は、見滝原の外れに拠点を構える暴力団が一派『射太興業』。

表向きは大人しいものの、裏では武器の取引や人身売買に手を出す程の組織だった。

 

 

「そう言えば、無くした拳銃や日本刀は見つかったのですか?」

 

『その話はしないでくれ。親父のブチ切れた顔が今でも思い浮かぶ』

 

 

射太興業はリーベエリスと協力関係にあった。

ましてやリーベエリスはモモが『コルディア』としてリーダーになっているが、真の支配者はリーベ設立者であるシルヴィスのままである。

 

モモは杏子と別れてから組織の幹部によって完全なマインドコントロールを施された。

現在はリーベエリスに絶対的な信仰を抱いている。

そしてそこに現れた偽りの母。偽りの教祖。偽りの愛。

そして偽りの善意に誰もが心を奪われる。

 

モモは真司に巨大なスポンサーがいるといった。

そのスポンサーこそが暴力団や闇社会に精通する組織だったのだ。

 

エリス側も、心酔している信者から無作為に生贄を選出する。

人身売買や奴隷として売られる彼らは一つも嫌な顔をしない。

シルヴィスやモモが生贄に選ばれる事は非常に素晴らしい事であると、教えを叩き込んでいるからだ。それもまたマインドコントロールの一環である。

 

 

「嘘をつく時、真実を少しだけ混ぜておけば信憑性が増す様に、ありったけの悪意の中に善意をチラつかせれば人は疑うのを止める」

 

『残酷だね、アンタも』

 

 

シルヴィスはニヤリと笑った。

 

 

「騙される方が悪いんですよ」

 

『成る程。まあコッチはやる事さえやってもらえればいい』

 

 

報酬の一部を渡す。立派なビジネスだ。

要するにコレもまた善意の一環である。皆が幸せになる為には、一部の人間が犠牲になってくれればいい。

 

 

『信者を三人ほどくれ。ヤク絡みでちょっと使いたい』

 

「分かりました。幹部に手続きを頼みます」

 

 

エリスは既に無数の信者を獲得する事ができた。

彼らはエリスが絶対の『正義』と信じて疑わない。だから鹿目タツヤを生贄に捧げる行為も何の疑問も持たずに行うだろう。

それが善意の輪を広げる行為だと本気で信じている。

そしてその思いを踏みにじるシルヴィスは、本当の外道と言えるかもしれない。

 

 

だがちょっと待ってほしい。

赤い記憶を確かめた人物ならば分かるかもしれないが、シルヴィス既に死んでいる筈だ。

 

佐倉杏子を利用したため、その報いを受けて死んだ。杏子の手によって殺されたのだ。

しかし今、シルヴィスは何事も無かったかのようにココに存在している。

切り取られた腕もしっかりと体にくっついている。

 

おまけにシルヴィスがモモに渡した映像。

真司や蓮。さらに絶対に人を傷つけないだろう、鹿目まどかでさえエリスメンバー殺していた。

あれは一体なんなのか? あの映像はまさに百聞は一見。疑いようの無い証拠に、皆は怒りを燃やしていた。

 

普通に考えてありえない映像だ。

しかしこの世にはあり得ない力が存在している。

それは魔法。奇跡を具現させる力。

 

 

「ああ、可哀想に……」

 

 

暴力団との会話を終了させたシルヴィス。

携帯電話を使っていたのではない。もっと便利な魔女を使っている。

箱の魔女・エリー。そんな事ができる人物は一人しか存在しない。

 

 

「あはっ! あははは! ハハハハハハハッッ!!」

 

 

シルヴィスが指を鳴らすと、体が一瞬でユウリの姿へと戻った。

 

 

「いいねぇ。いいよぉ……! じっくり煮込むのは好き」

 

 

舌なめずりを行って、椅子にドッカリと座り直す。

誰も見ていないのにユウリは変身を繰り返す。

真司に、蓮に、まどかに、サキに、ほむらに次々に変わっていった。

 

運が良いとは思う。

オクタヴィア戦のホールで杏子を見かけた時、ユウリはしっかりとエリーに記憶させていた。

そして杏子の記憶を覗いてみればこれだ。

 

ユウリはエリーにもっとリーベを調べさせた。

シルヴィス亡き後も組織が解体される事は無く、リーベはシルヴィスの代わりを作る事にした。

それに選ばれたのが佐倉桃子だった。とは言え以後は停滞していた組織であったが、そこを狙ったのがユウリである。

 

変身魔法でシルヴィスをコピーすると、早速モモたちに接触した。

 

 

『私は神の力で蘇った』

 

 

その一言は非常に強力だった。

そこに魔女の力を加えれば、モモや幹部を洗脳させることは難しくなかった。

元々マインドコントロールを中心としていた組織だ。騙すのは非常に簡単だったと言えよう。

 

手はずとしては、まずはモモを見滝原に呼んだ。

もちろん認めなかった連中も多いが、偽者だと言ってくる取り巻きは皆リュウガに始末させた。

それを『裁き』とすることで、より信仰を高めた。

 

一旦リーベに戻ったモモは、シルヴィスが生存していたことを強く訴えてくれた。

見滝原から出られなかったのは煩わしい事であったが、そこはエリーを通しての会話で何とか乗り切った。

 

同時期に芝浦をチラつかせて行動を起こさせる。

ユウリとしてはどこでも良かった。

とにかく何かデカイ事さえしてくれれば便乗して破壊活動を行えるからだ。

 

 

結果、芝浦は学校を選んだ。

学校を破壊したのは王蛇ペアだけでなく、リュウガもまた同じだったのだ。

爆発を起こし、学校を破壊して、テロが起こったと世間に認識させる。

 

後はモモを焚きつければ終わりだった。

 

 

『助けて、あなた達の力が必要です』

 

 

シルヴィスを妄信していたモモはすぐに見滝原に幹部達を連れて見滝原にやって来たと言うわけだ。

 

 

「しかし……」

 

 

不思議な事もある。今時珍しい悪の組織がいたものだ。

それにシルヴィスと言う老淑女の存在感。モモは彼女の姿を見た途端、異常なほどに忠誠心を見せて来た。

 

 

「こんなのただのババアじゃん!」

 

 

シルヴィスに変身してクルリと回るユウリ。

どうやら相当マインドコントロールが上手かったようだ。幹部の信者たちも面白いように言う事を聞いている。

 

 

「まあどうでもいいか」

 

 

とにかくユウリは変身魔法を使って、忠実な下僕を手に入れる事ができた。

後は他の参加者に変身して、エリスメンバーを殺害して、それをエリーに撮影させればハイできあがり。

 

 

「クヒヒヒヒヒ! さあ、魔女狩りの始まりさ!」

 

 

信者達は完全に暴走。

城戸真司たちを狙ってくれるだろう。

 

 

「見滝原ごと滅茶苦茶にしてやる。チマチマ進めるゲームはもう飽きた」

 

 

もっとスパイシーに殺しあいたい。

どいつもこいつも巻き込んで、パーティタイムと行こうじゃないか!

ユウリは最後の『隠し味』を入れるため、名前も知らない女子高生に変身する。

 

 

「あ、もしもし警察ですか!」

 

 

慌てた様な演技。

エリーを介して繋ぐのは警察だ。

 

 

「私、変な映像見つけて! もしかしたら最近流行ってるエリスの人達を殺した犯人の手がかりかもしれないんです」

 

 

震える声とは裏腹に、表情は歪な笑顔であった。

 

 

 

 

 





今年の24時間テレビは石ノ森先生のドラマをやるみたいですね。

なんか昔聞いたんですけど、先生はお姉ちゃんがとても良い人で、漫画家になるのを応援してくれたり、励ましてくれたり、とにかくとても大切な人だったらしいです。


だからライダーとかだと『姉』って言う存在は、主人公の成長に関わったりする事が多いとかなんとか。
そう考えると、ゼクロスとか、平成だと電王や鎧武もそうですね(´・ω・)
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