仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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第38話 最凶VS最狂 狂最SV凶最 話83第

 

「ミックスミキサー!」

 

 

ユウリがリベンジャーをシェイクすると、ガチャンと音がして『弾丸』が切り替わる。

赤色の弾丸・レッドホット。引き金を引くと、燃える弾丸が発射されていく。

 

 

「ステーキになれ! 佐倉杏子!」

 

「いやッ、おっそ! 蚊の方がまだ速いんじゃねーの?」

 

 

しかし杏子は槍を振るって何のこと無く弾丸を弾き返していく

レッドホットは連射性が落ちてしまう、これでは杏子を止められないらしい。

 

 

「あぁン……、ステーキはお嫌い?」

 

 

ユウリは舌打ちを行い、後ろへ跳んだ。

近接武器である槍と、遠距離武器である銃ならば、ユウリの方にアドバンテージがあると思うのだが、杏子に焦る様子は無い。

 

ユウリは銃弾を元に戻して連射していくが、杏子は槍を回転させて盾にしながら突っ込んでいく。

お粗末な盾であるため多少は銃弾を身に受ける事になるが、気にしない。

強引に距離を詰めると、槍を横に振っていく。

 

 

「お?」

 

 

しかし感触が無い。

ユウリがバク宙で後ろに跳んでいたのだ。

だが杏子は思い切り地面を踏みしめる。すると着地したユウリの足下が赤く光った。

 

 

「いやこれ知ってるから」

 

 

地面から槍が生えてくる魔法技、異端審問。

しかしユウリはそのルートを読み、全て的確に回避していく。

 

 

「なんでわざわざ地面赤く光らせるの? 馬鹿? 避けやすいんですけど?」

 

「………」

 

 

そうしないと生やせない。

杏子は口にしない。

 

 

「あれー? 杏子ちゃんってこんなに弱かったっけ? ユウリ様の前菜にすらならないかも」

 

「ハッ! 避けるのだけは上手いな。見習いたいね、そのチキンプレイ」

 

 

双方の額に青筋が浮かぶ。

安易な挑発だ。乗る方が馬鹿。乗る方がアホ。乗る方が愚か。

乗る方が――

 

 

((殺す!!))

 

 

双方、動いた。

杏子は前に、ユウリは後ろに。

 

 

「コルノフォルテ!!」

 

 

杏子の背後から牛の使い魔が出現し、突進していく。

不意打ちだ。自分に注意を引き付けて、背後からの一撃。

 

 

『ユニオン』『アドベント』

 

 

角が角を受け止めた。

杏子の背後から現れたのはベノゲラス。

巨体で突進を受け止めると、そのまま競り合いを始める。

 

 

「不意打ち! しかも失敗してるし! ァー、なんつうかさぁ見た目だけじゃなくて戦い方まで汚いねぇーッ!」

 

「ゲロゲー、臭そうなアンタに言われるとはユウリ様も堕ちたもんだ」

 

 

それを聞くと杏子はギョッとして自分の匂いを確認し始める。

 

 

「ふざけんな。アタシはこう見えて風呂にはちゃんと――」

 

 

ダン! と、銃声。

眉間に一発だ。杏子は仰け反って仰向けに倒れる。

 

 

「アーッハハハハ! 杏子ちゃんも女の子だねぇ、本気でプリティー! ヒハハハハ!!」

 

「……殺す」『ユニオン』『アドベント』

 

 

空間が割れ、ベノダイバーが飛び出して来た。

一瞬で加速、これにはユウリも笑顔を消して大きく右へ跳ぶ。

 

 

「あッぶ――ッ!」

 

 

そこで気づいた。地面が光っている。

 

 

「ないなァ!!」

 

 

さらに前転、伸びた槍を後ろに1本。

 

 

「ちゃんと当ててよ? アンタの太いのアタシのハートに」

 

「………」

 

「?」

 

 

杏子が無言で腕を伸ばしてきた。

ユウリはきょとんとして何かが来るのを待つ。

すると遠くの方でベノゲラスと戦闘していたコルノフォルテが鳴いた。

 

 

「お? お!?」

 

 

反射的に周囲を確認。右、左。そして後ろ。

 

 

「あ」

 

 

槍が伸びていた。

そして折れると、多節棍となって蛇のように変わる。

 

 

「うげ、忘れてた」

 

 

一瞬だった。蛇のような槍がユウリに迫ると、巻きついていく。

あっと言う間に胴体を縛られたユウリ。さらに別の槍が伸びてきて足首を縛る。

 

 

「うぐッ! し、縛られるとアタシ様の妖艶度がアップするけど……、いいの!?」

 

「いいぜ。もっと綺麗にしてやるよ」

 

 

すぐそこに杏子の膝があった。

飛び膝蹴り、このままだと顔面を粉砕される筈。

このまま、なら。

 

 

「浅いな佐倉杏子」

 

「うおッ! ウガガガガガ!!」

 

 

"ビンコットラッシュ"。

ユウリの魔法技の一つであるソレは、両肩の上にマシンガンを出現させるものだ。

宙に浮かんだ銃はユウリの意思一つで連射を行う攻撃ビットとなる。無数の弾丸を受けて杏子は墜落、火花を散らしてそのまま後ろへ転がっていく。

 

 

「浅すぎる。漬けて1分の浅漬けより浅い。定年退職したジジイが始める蕎麦屋くらい浅いッ。売れない役者がファミレス語る芝居論くらい浅いッッ!!」

 

 

ユウリは自分を縛る多節棍にも銃弾を当てて破壊。

バラバラになって落ちる鎖を見て、ニヤリと笑った。

 

 

「ユウリ様、危機一髪!」

 

 

しかし両手を広げて笑っていると、肩の上にあったマシンガンが二つとも破壊される。

赤い閃光が見えた。地面を転がりながらも、杏子が槍を投げて破壊したのだ。

 

 

「これでもうマシンガンは無い!」

 

 

立ち上がり様、さらに槍を二つ持って走る。

ユウリは一瞬迷ったが、笑みを崩さぬまま同じく前進してきた。

リベンジャーを発砲しながら走る。一方で杏子もそれを強引に突破してくる。

二人の距離が縮まった。ところで、またユウリは後ろに跳ぶ。

 

 

「魔力があればすぐにホラ!」

 

「!」

 

 

再びユウリの両肩上にマシンガンが現れる。

杏子がハッとした時にはもう遅い。大量の弾丸が迫り、再び地面を転がることに。

 

 

「アッハ! カップラーメンより早いでしょ? アホな杏子ちゃんは何も考えずに突っ込んできてくれる」

 

「ちくしょうがッッ!!」

 

 

杏子は立ち上がると槍を上に投げた。

ユウリは一瞬そちらを確認するが、分かっている。ちゃんと分かってる。

上の方に気を引かせて、本命は下だ。

地面を見ればほら、思ったとおり赤く転々と光ってる。

 

 

「もうやめときな。アンタじゃアタシ様には勝てないよ」『ユニオン』『ガードベント』

 

 

ユウリはブラックドラグシールドをサーフボードのようにして上に乗る。

突き上げられた槍はシールドを貫通することはなく、ユウリを持ち上げる結果に。

目線が高くなったユウリは、杏子を見下しながら笑っていた。

 

 

「って言うか手加減しないでー。いいよ? 固有魔法使っても」

 

「………」

 

「あれ? ん? あーッ、そっか! アンタってば固有魔法使えないんだ! なんでだっけ? うーん!」

 

「………」

 

「思い出した、それはアンタが――」

 

 

槍が、ユウリの肩に刺さった。

 

 

「……あれ?」

 

 

杏子がニヤリと笑う。

 

 

「上が本命だよ。クソ女」

 

「ぐッッ! ガアァァアアァア!!」

 

 

赤い雨が降ってきた。

槍を上に投げて、異端審問を発動。下からの攻撃がやってくるが、それは囮だ。

本命は上に投げた槍。それが分裂して、刃を下にして降ってくる。

 

ドラグシールドに乗っていたユウリは、下の槍は防げても上からの槍は防げなかった。

ましてや仰け反り、前のめりになってしまったため、肩や背中に槍が突き刺さっている。

 

 

「うぐッ! ガハゥッ!!」

 

 

咳き込むと、血が出てきた。

それを見て杏子は満足そうに笑う。

 

 

「あ? ここだっけ、ハリネズミの展示場。あぁー、思ってたのよりは可愛くないなー」

 

「テンメェエエ……!!」

 

 

ユウリが体を起こすと、さらに四本の槍が飛んできた。

二本はマシンガンを破壊。もう二本は両肩にそれぞれ突き刺さる。

 

 

「うごッ!」

 

 

衝撃で後ろへ倒れる。するとどうだ、そこには地面から生えている無数の槍が。

 

 

「ギャアアアアアア!!」

 

「ハハハハッッ! いい声してるねアンタ」

 

「イル――ッ!!」

 

「?」

 

 

その時、巨大な三角形の魔法陣がユウリを中心に展開する。

 

 

「トリアンッゴロ!!」

 

 

魔法陣が爆発。

踏みとどまる杏子。

 

 

「ユウリ様の華麗なジャーンプ!」

 

「……ッ!」

 

 

爆風を抜けて飛び出してきたのは当然ユウリだ。

爆発で自らを突き刺す槍を全て吹き飛ばしたのだろう。

自分の魔法技のため、ユウリ自身は爆発のダメージを受けていないようだ。

 

ユウリは華麗に舞い、着地を決める。

しかし止血をしたとは言え、体には槍を受けた痕がしっかりと残っていた。

 

 

「……杏子様特性のサンドイッチはどうだい?」

 

 

ポッキーを咥える杏子。

 

 

「とってもスパイシー。ビリビリ痛すぎ! 杏子ちゃんッ、アタシもう壊れちゃう!」

 

「ッ! これは――ッ!」

 

「お・か・わ・り!!」

 

 

杏子を中心として巨大な三角形の魔法陣が展開される。

過剰に魔力を供給していたのか、魔法陣に文字が描かれていくスピードが桁違いに速い。

先ほどみた魔法陣と同じではないか。杏子はすぐに後ろへ下がるが、魔法陣は点滅を開始している。

 

 

「イル・トリアンゴロ!」

 

 

強力な磁場フィールドに巻き起こる爆発。

ユウリは唇を吊り上げた。杏子がまだ結果以内にいたのを確かに見ていたのだ。

つまり、直撃。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「チッ! ゴキブリ女が!」

 

 

予想通りと言うか、予想外と言うか。

爆風の中から杏子は槍を構えて飛び出してきた。

出血の痕や、服の一部がボロボロになっているのを見るに、ダメージは受けてくれた様だが想像以上に動けている。

ユウリは舌打ちを一発。そしてリベンジャーを構えて同じく走り出した。

 

 

「どうした? まだまだアタシは退屈だぜッ!!」

 

「アホが! 一生独りで遊んでろッ!!」

 

 

杏子が突き出した槍がユウリを貫通する。

いや、違う。そう見えただけで、ユウリは刃をしっかりと回避していた。

その後、脇で槍を挟んだのだ。

 

グッと力を込める両者。普通なら杏子が勝つ。

だがユウリは右手に持っていたリベンジャーで杏子の左足の甲に銃弾撃ちこんでいた。

足に走る痛みと衝撃。杏子が表情を歪めたところで腹部を蹴る。

 

 

「うォ!」

 

 

衝撃で杏子は槍を放した。

ユウリは脇ではさんでいた槍を適当な場所に投げ捨てると、少し動きが鈍った所で槍を反対方向に放り投げて武器を封じる。

そしてそのままの勢いで体を旋回させて杏子の首を掻っ切る様な回し蹴りを行った。

カポエイラのメーアルーアジコンパッソに近い。地面に手をついて、脚は思い切り上に伸ばす。

 

 

「だから遅せぇよ雑魚が!!」

 

 

しかしその回し蹴りを杏子は片腕でガードしてみせる。

 

 

「ハッ、間抜けな姿」

 

 

確かに今のユウリは足を伸ばして、杏子にお尻を向けている状態。

屈辱的なものがあったのか、ユウリの表情が歪むい。

だがしっかりと笑みも浮かべた。

 

 

「フェイクだよ糞女ァ!」

 

「!」

 

 

ジャキっと音がして、ユウリの靴から銃身が伸びてきた。

 

 

「は?」

 

「ミソ、ブチまけろ」

 

 

発砲。

靴から銃弾が発射されて杏子の頭部を狙う。

が、しかし、杏子は頭を思い切り反らしてそれを回避する。

 

 

「あぶね!」

 

「なにッ!?」

 

 

早い。まさかアレに反応してくるとは。

作戦変更。ユウリは回転しながら地面に倒れると、二つのリベンジャーを杏子へ向ける。

倒れるまでに既にミックスミキサーは発動していた。

赤色の弾丸。レッドホットが発射されて、炎塊が飛んでいく。

 

 

「オラァッッ!!」

 

「ハァア!?」

 

 

だが杏子は頭突きで炎弾を真っ向から受け止め、そして打ち破る。

 

 

(銃弾を頭突きで相殺した? なんだよソレ!!)

 

 

次の瞬間、ユウリは思い切り蹴り飛ばされて空中を飛んでいた。

きりもみ上に回転しながら、血を吐き出す。

 

ああ、嫌だ。

なんだか凄く嫌な気持ちになった。

今の一撃は完璧だった。なのに頭突き。頭突きって。

そもそも槍で銃弾を弾くのだってナンセンスだ。映画じゃよくあるけど、ここはリアルですよ。

 

ああ、なんだか嫌な気持ち。

例えるなら出汁とかに拘って頑張って作った料理にいきなりマヨネーズかけられた気持ち。

頑張ってカレー作ったのに、今日はラーメンの気分って言われたときの気持ち。

ユウリが立てたプランを、杏子は雑に突破してくる。

 

 

「やっぱアンタ、超最高にムカつく!!」

 

 

そこでユウリは地面に激突した。

聞こえてくる。ほら、楽しそうに笑う杏子の声が。

 

 

「いいねぇ! やっぱ戦いってのはこうでなくちゃ!!」

 

 

命を奪い合う高揚感。

そして相手を傷つける事で実感できる自分の力。

 

 

「興奮する――!」

 

「ド変態が、アンタ性癖おかしいんじゃない?」

 

「相変わらず下品な女だな。その口、二度と喋れない様にしてやるよ」

 

「言ってくれる!」

 

 

ユウリは気だるげに立ち上がると、カードデッキを取り出した。

 

 

「ッ」

 

「フフフ、本気で行こうか?」

 

 

カードを一枚、ゆっくり抜き取ると、それを上に投げた。

そしてすぐにリベンジャーを抜き、カードを撃ちぬく。

 

 

『アドベント』

 

 

エルザマリアを召喚。ユウリを背後から抱きしめるようにすると、エルザマリアがマントに変わる。

黒が広がっていき、シルエットが翼に変わった。

するとユウリの体が浮き上がり、空へと舞い上がる。

 

 

「影よ!!」

 

「!」

 

「広がれェエ!!」

 

 

広げた翼から無数の影が発射される。

それは黒い触手だ。無数の線が杏子に襲い掛かり、皮膚を破ろうとしてくる。

 

 

「ウグッ!」『ユニオン』『アドベント』

 

 

しかしすぐにアドベントを発動。

アドベントの再生成は『なつき度』によって早くなる。

きちんと餌を与えていたためか、ベノダイバーはすぐに駆けつけ、ユウリへ突進を仕掛けた。

 

 

「おっと!」

 

 

マントで自分を包み、突進を受け止める。

だがベノダイバーはそこでスパークを巻き起こした。

激しい電流がユウリに伝わり、これには表情を歪める。

 

 

「ア――ッ! うぐぅうッ!」

 

「へッ! いい声で鳴くじゃん」

 

「悪いけど! テメェとSMプレイに興じるつもりは無いッ!」

 

 

ユウリは再びカードを投げた。

銃声、発動。現れたのはドラグブラッカー、全てを呑みこむ黒き絶望だ。

 

 

「来い!」『ユニオン』『アドベント』

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

杏子は追加でベノスネーカーを召喚。

全てを飲み込む黒い絶望? ならばそれを破壊するのは圧倒的な力だ。

杏子には自信があった。と言うのも、基本的なスペックはドラグブラッカーが圧倒しているが、王蛇のミラーモンスターはここ最近であまりにも人を食いすぎた。

故に、それだけ力も上がっている。

 

だがそれはユウリとて理解している事だ。

エリーを通して杏子の暴走はちゃんと見ている。

だからこそ技のデッキを存分に使っていくのだ。

 

 

「バージニア! シャルロッテ! ウアマン!」『『『『アドベント』』』』

 

 

ユウリの周りに次々と現れていく魔女達。

それらは一勢にベノスネーカー達の方へと突進していく。

いくら力があっても、それを上回る数で攻めれば問題ない。

 

 

「チッ! どうすっかな!」

 

 

ドラグブラッカーと巻きつき、攻撃をしかけているベノスネーカー。

しかしまもなく魔女が加勢に入る。ベノダイバーを加勢させるか。

それとも一旦アドベントを解除するか。

それを考えていると、杏子の頭部に拳が抉り刺さる。

 

 

「余所見とかナメてんの?」

 

 

地面を滑っていく杏子。

ユウリは勝利を確信する。ただのパンチじゃない。拳にはエルザマリアを纏わせている。

それだけ力も上がっていく。確実に頭蓋骨は粉砕され、なんだったら脳みそをブチまけているところだろう。

そうなれば動きも止まる。ソウルジェムで肉体を回復する前に、細切れにすればいい。

 

 

「そっちもバラバラにしてやれ!!」

 

 

ユウリはドラグブラッカーを見る。

その時、ユウリの頬に拳が叩き込まれた。

 

 

「!?!?!?」

 

「おい、余所見とかナメてんのか?」

 

 

気がつけばユウリは血を吐きながら空中を回転していた。

地面に墜落し、二回ほどバウンドして止まった。

普通の人間ならば今の一撃で二回は死んでいる。

ユウリが体を起こすと、そこには当然佐倉杏子が。

 

 

(最悪)

 

 

佐倉杏子が固有魔法を捨てて。魔力を肉体強化に割り振っているのは知っていたが、まさかこれほどとは。

いや、違うのか。このリーベエリスの一件を介して、杏子もまたパワーアップを果たしていたと言う事かもしれない。心の傷を刺激するトラウマも、強い憎しみを生み出し、感情エネルギーは魔力を膨れ上げていく。

 

鹿目まどかが他者を守りたいと想い、魔女を解放させると言う決意を抱いたように、どんな感情であれ強いものであれば、それだけエネルギーは大きくなっていく。

 

 

「ヒヒヒッ!」

 

 

ゾクゾクする。悪くは無かった。

 

 

「そうじゃないとコッチも殺し甲斐ってもんが無い」

 

 

魔法少女同士の戦いにおいて、完全なる勝利は相手を殺す事ではない。

ユウリはそう確信していた。

 

 

「問題です杏子ちゃん」

 

「あン?」

 

 

ユウリは両手両足を広げて、大の字に。

一見すれば諦めた様にも取れるが、そんな筈は無い。

まだまだ、殺すつもりだった。

 

 

「さっきのアドベント。何重音声だったでしょーか?」

 

「………」

 

 

ユウリは先ほどアドベントを複数使用して魔女を召喚した。

重なっていた音は四つだ。しかし呼び出された魔女は

だったらあと一体は――

 

 

「!」

 

 

地面を突き破り、無数の触手が杏子の四肢を捕らえた。

 

 

「クリフォニア」

 

 

地面の中に一体。

触手を操る魔女が潜んでいた。

 

 

「ぐッ!」

 

「コルノフォルテぇえええええええ!!」

 

「――ッ! がぁぁアアアッッ!!」

 

 

ベノエゲラスと戦っていたコルノフォルテが消滅、すると杏子の背後に出現する。

ワープだ。巨大な角を持った牛はそのまま全速力で杏子の背中に突撃する。

海老反りになる杏子の体。しかも背中の骨が砕ける音がして、かつ呼吸が停止する。

二つの角は刺さる事は無かったが、杏子の脇に入り、ガッチリと体を固定した。

 

 

「が――ッ!」

 

「アホの杏子ちゃんには少し難しかったかしら? 今日からおちゃかな食べて頭良くちまちょーね!」

 

 

杏子はユウリのもとへ運ばれていく。

コルノフォルテのスピードとパワーは、杏子の抵抗を一切許さない。

ましてや体を支える骨は、コルノフォルテによって粉々にされた。

 

 

「単純に突っ込むだけの力技じゃ――」

 

「!!」

 

 

ユウリはラリアットで杏子を叩き落す。

仰向けに倒れる杏子。空の前に、銃口があった。

 

 

「"技"を司るアタシには勝てない」

 

 

パンパンッ! 軽快な二発の銃声音。

同時に杏子は小さな悲鳴を上げる。ユウリは杏子の両目に一発ずつ銃弾を撃ち込んでいた。

どんなに防御力を上げたとしても急所は急所だ。杏子は目を押さえ、苦痛の声を漏らしている。

 

 

「ホラホラホラァ! だらしなくッ、可愛くッ、無様に! みっともなくちょっぴりセクシーに命乞いでもしてみてよ!」

 

「グッ!」

 

 

ユウリは杏子の頭部を足で思い切り踏みつける。

さらに足を捻って、徹底的な屈辱を刷り込んでいく。

 

 

「育ちの悪い佐倉杏子は、ユウリ様の様な上流階級のお方に勝てる訳ありませんでした! とか何とかさ!」

 

 

ベノスネーカーも魔女や邪龍に囲まれ、地面に叩きつけられている。

 

 

「靴でも舐めてもらおうか? アハハハ! お前が貧乏時代に食ってた飯よりは美味いかも!!」

 

 

コルノフォルテが意外に強いのか、ベノゲラスもまた地面に倒れて動かなくなった。

 

 

「―――」

 

 

そのときだ、杏子が何かを呟いた。

ニヤリと歯を見せるユウリ。きっと杏子は今頃ビクビクビクビク怯えてる筈。

自分が最強だとかほざいていたけど、結局はこの程度の雑魚!

ユウリは耳を済ませて杏子の言葉を――

 

 

「寝言は寝て言え、カス女」

 

 

プっと杏子が吐き出したのは謝罪どころか煽りの言葉。

ついでに血を吐いて、ユウリの頬にぶつけたではないか。

ユウリの中で何かがキレた。リベンジャーを向けて、ソウルジェムを狙う。

 

 

「死ねよ糞がぁアアアアアアアアアアアア!!」

 

「――ハッ!」

 

 

だがその時、杏子がニヤリと笑って、さも当然の様に飛び起きた。

バク転で足を振り上げて、銃を弾くと、そのまま後ろに跳んでいく。

 

 

「驚いた! まさかもう粉々になった骨を再生して傷を癒合していたなんて!」

 

 

だがそれだけだ。

回復したところで攻撃面が弱いのでは話しにならない。

 

 

「佐倉杏子ォ! お前とは戦力が違う。手にした運が! 力が違う!!」

 

 

技のデッキに勝てるのは力のデッキ以外にはありえない。

確かにはじめこそ技のデッキは他のものと大差ない性能かもしれないが、今は無数の魔女の力が味方している。

魔女狩りのユウリ。魔女を操りし力は、優勝候補の名に相応しい。

 

 

「さあ! フィナーレと行こうかな!!」

 

 

適当にカードを引き抜き、次々と召喚していく。

数十体の魔女がユウリを守るようにして現れていった。

中には使い魔から進化させたのか、同型の物も少なくは無い。

 

 

「ねえ綺麗に食べて骨は残しておいてよ。アタシが踏み潰すんだから」

 

 

ユウリはドラグブラッカーの背中に腰掛け、ニヤニヤと笑う。

魔女達が杏子をむさぼり殺す所を高みの見物と行こうじゃないか。

すぐに魔女達は移動を開始。杏子は諦めたのか、全く動こうとしなかった。

 

 

「はいはい、降参ってわけね」

 

 

復活チャンスは二回ある。

ここは素直に殺されようと言うのだろう。

 

 

『ユニオン』

 

 

「あれ? まだ何かする気? やめとけば、盛りすぎは汚く見えるよ」

 

 

その時、ベノスネーカー、ベノダイバー、ベノゲラスの三体が粉々に消し飛ぶ。

 

 

「ほら、もうモンスターも諦め――」

 

 

『ユナイトベント』

 

 

巨大な『黒』が見えた。

そこへ、魔女が次々と吸い込まれていく。

実力の高い魔女ならばすぐに逃げ出しただろう。だが次々と禍々しくも美しい槍が降り注ぎ、一瞬で全ての魔女を絶命させた。

 

 

「ば、馬鹿なッ! なんだアレ!?」

 

「技のデッキ? おいおい、甘えてんじゃねぇよ」

 

「ッ!!」

 

 

佐倉杏子が、そこにいた。

ジェノサイダーをイメージする衣装を身に纏った杏子が立っていた。

 

 

「……趣味がSMとコスプレなんて、ユウリちゃんドン引き」

 

「意外と似合ってるだろ?」

 

「全然、まず露出が全然足りない。ってな訳で0点」

 

「ハッ!」

 

 

特定の存在を融合させる『ユナイトベント』のカード。

杏子は三体のミラーモンスターと自分を融合させたのだ。

 

 

「ッ! やばい!!」

 

 

ユウリは自分の真下が光り輝くのを確認する。

すぐにドラグブラッカーを消滅させて全力ダッシュだ。

するとやはりと言うか、異端審問が発動。今までは地面から槍が生えていたのだが、杏子が強化されたからか、槍が次々と空に打ち上がっていく。

 

 

「ぐッ!?」

 

 

ダッシュで範囲から逃げたわけだが、空中に留まった槍は自動的にユウリを追尾していく。

 

 

「う、ウオォオオオオオオ!!」

 

 

エルザマリアを翻して、無数の触手を発射する。

これでいくつかの槍を撃ち落し、残りの槍は再びダッシュで回避した。

 

 

「!?!?!」

 

 

だが地面に突き刺さった槍はひとりでに爆発。

小さなブラックホールを生み出し、引力でユウリの動きを鈍らせる。

杏子は踏ん張っているユウリを見つめながら、同時に自分の槍を見た。

 

 

「ロンギヌス」

 

「はッ?」

 

「神殺しの槍。皮肉だろ? 神に仕えていたアタシの武器にしちゃ」

 

 

神の生死を確かめる為に、わき腹に刺したと言われる槍。

それが強化された杏子の武器の名だった。

杏子はそれを構えるとゆっくりとユウリに向かって足を進める。

 

 

「くぉおおッ!」

 

「おいおいどうした? 余裕が消えてるぜ」

 

 

ユウリは試しにリベンジャーを撃ってみるが、杏子はそれを手で払うようにして弾いた。

成程、確かにこれは凄まじいプレッシャーだ。

あの融合、ユナイトベントの力があれば、杏子達も『技のデッキ』と対等に張り合う事ができる。

巧みに練られた技を打ち破るのは、やはり全て凌駕する力なのか。

 

 

「認めるかッ! 来いッ! リュウガァア!!」

 

「!」

 

 

しかしユウリは知っている。

杏子が浅倉と行っているゲームをだ。

だからこそパートナーの騎士であるリュウガを呼ぶ。

空間が割れ、黒い騎士は簡単にフィールドに降り立った。

 

それを見て杏子は不満げに攻撃を中断する。

浅倉とのゲーム、『騎士にはなるべく攻撃しない』。それをユウリは分かっている。ここからリュウガを盾にしながら立ち回れば、杏子は終わりだ。

 

 

「えーっと、こうするんだっけな?」

 

「あ?」

 

 

杏子が手をかざすと、そこに『ホワイトホール』が出現する。

 

 

「穴は一つじゃない」

 

「下ネタ? よして、食事中の人もいるかも」

 

「死ねよ。あぁ、いや、アタシが殺すのか」

 

 

そこで気づいた。

ホワイトホールの中から、唸り声が聞こえてきた。

そうだ、穴は一つじゃない。黒い穴は入り口。そして白い穴は出口。

 

 

「成る程、便利だな、これは」

 

「だろ? これでお互いが獲物を見つければすぐに駆けつけられる」

 

 

中から姿を見せたのは、杏子のパートナーである浅倉だった。

どうやらブラックホールとホワイトホールを使用して空間の行き来ができる様になったらしい。

杏子はリュウガを攻撃できないが、浅倉ならば何の問題も無い。

すでに変身を完了させており、王蛇はリュウガの姿を見つけると仮面の下でニヤリと笑う。

獲物がいた。それだけで王蛇が動く理由としては十分すぎる。

 

 

「浅倉、アイツ邪魔なんだよ。引き剥がしてくんない?」

 

「いいぜ。俺も近くにガキがいると邪魔だからな」

 

 

ユウリはうんざりした様にうな垂れた。

できればリュウガと共に行動をしたいが、まあここは王蛇を殺せるチャンスが増えたと考えようではないか。

 

 

「リュウガ、王蛇は任せた」

 

「………」

 

 

リュウガは無言で頷くと王蛇に向かって足を進めていく。

ユウリは舌打ちをしながら銃を連射、杏子を牽制しながら騎士たちから離れていく。

 

 

「イライラしてたんだ。暇つぶしに遊んでくれよ」

 

「………」

 

 

両手を広げて歩く王蛇。

一方でリュウガは無言で立ち尽くしている。

殴り合いはすぐに始まった。荒々しく拳を振るう王蛇が『動』とするならば、的確に弾いてみせるリュウガは『静』と言った所か。

 

王蛇の攻撃はパワーもあり、動きの割には狙いも的確だ。

しかしリュウガはそれを上回るスピードで攻撃を防ぎ、弾いていく。

そして生まれたほんの僅かな隙を見て攻撃を打ち込んでいった。

 

 

「ウゥウ゛ン!」

 

 

背中を殴られ、王蛇は仰向けに倒れる。

立ち上がり様に、ベノバイザーを呼び出した。

しかし王蛇もいろいろな喧嘩はしてきたが、リュウガの動きは確実に素人ではない。

 

 

『ソードベント』

 

 

王蛇はベノサーベルを装備。それを見ると、リュウガもデッキからカードを引き抜く。

 

 

『ソードベント』

 

 

濁った音声と共に、ブラックドラグセイバーが装備される。

しかしそこで王蛇が動いた。持っていた剣を地面に落とすと、別のカードを発動した。

 

 

『スチールベント』

 

「!」

 

 

リュウガの手にあったドラグセイバーが消失し、代わりに王蛇の手に移動する。

相手の武器を奪うカードだ。王蛇は黒い剣をしばらく観察すると、やがて二刀流でリュウガに切りかかっていく。

リュウガも最初こそは王蛇の攻撃をかわしていたが、ふとした瞬間に足を払われて膝をついた。

 

 

「ウラァアア!!」

 

「!」

 

 

リュウガは腕をクロスさせて二本の剣を受け止める。

王蛇は叩き割るつもりで剣を思い切り振り下ろしたのだが、リュウガは無言だ。反応が無い。

痛みを感じていないのか? 複眼も発光しておらず、その動きはどこか機械的なモノを感じた。

王蛇でさえ、強烈な違和感を感じるというもの。

 

 

「お前、誰だ?」

 

「………」

 

「音声が濁ってるのは――、技のデッキってヤツか? それにしてもどうして龍騎に似てる?」

 

 

リュウガは何も答えない。

代わりに、なんの事なく立ち上がると、腕を払って剣を弾く。

 

 

「!」

 

 

バランスを崩した王蛇の胴体に拳を強く打ち込む。

怯んだところに回し蹴り。狙うのはドラグセイバーを持っていた左腕だ。

王蛇は衝撃から思わずドラグセイバーを落としてしまう。リュウガはすぐに地面にあったドラグセイバーを蹴り上げて自らの手に戻す。

 

そしてすぐに斬りつけた。

王蛇は装甲から火花を散らし、後ろへ下がっていく。

しかし今ダメージこそ受けたが、王蛇は仮面の下で確かな笑みを浮かべていた。

 

傷つけ、傷つきあう事で実感する生への渇望。

相手を痛めつける事により得られる高揚感。

自分が死ぬかもしれないと言う僅かな不安はあるのかもしれない。自覚しているかは置いておいて。

そして相手を殺せば、その相手を完全に超えたと言う事実。

 

 

「楽しいな。戦いは最高に楽しいぜ」

 

 

しかし感じるモノもある。

 

 

「だが、お前を見てると無性に腹が立つ」

 

 

龍騎とほぼ同じ姿なのに、なぜか龍騎よりもずっとイライラする。

理由は説明できない、強いて言うならば直感。インスピレーション?

過去に何かあったわけでも無いのに、やけにイライラする。

 

 

「………」

 

 

そこで初めて、リュウガの複眼が光った。

 

 

「どうだって良い」

 

 

初めて口にした言葉、その声は誰よりも冷たく、何よりも心が篭っていない。

 

 

「そうだな」

 

 

王蛇も納得する。

今ココにデスゲームに参加しているプレイヤー同士が存在している。

それだけで戦う理由として十分すぎる。

 

 

「オオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

王蛇は獣の様な咆哮をあげて走り出す。

リュウガは冷静にデッキに手をかけた。取り出すのはアドベントのカードだ。

しかしすかさず王蛇が一つのカードを発動させる。

 

 

『ベノムベント』

 

 

王蛇を中心として紫色のエネルギーが迸る。

リュウガはガードの体勢に入るが、何故か何も起きないし、痛みも全く感じない。

引っ掛かる点もあったが、王蛇は尚もコチラに向かってきている。

結果、リュウガはそのままカードをバイザーにセットした。

 

 

『ベノム』

 

 

なぜか音声が違う。アドベントを入れたのに、ベノムとコールされた。

するとブラックドラグバイザーから紫色の光があふれ出し、直後火花があがる。

バイザーは爆発を続け、ついには融解する程に。

リュウガは気づいていなかった。王蛇が発動したベノムベントの効果に。

 

カードを発動するとまず紫色のエネルギー『ベノムオーラ』が放出される。

それに触れたものはカードに毒が注入されてしまう。

そして一定時間内にその毒に侵されたカードをバイザーに入れると、毒がバイザーに回り、融解。

一定時間封印されてしまうと言う訳だ。

 

つまり相手は、しばらくの間カードを発動する事ができなくなる。

しかしこれにはデメリットもあり、発動に成功した場合、王蛇もまたカードを使用できない。

もしも王蛇がカードを発動すればその瞬間相手のバイザーも元に戻ると言うものだった。

 

だがそうしなければ、ココからはまさに殴り合い。

決め手になるファイナルベントも使えない。

時間が来るのか、その前にどちらかが殴り殺されるかの二択なのだ。

 

 

「………」

 

 

リュウガもそれ理解したのか、すかさず王蛇に向かって拳を振るう。

そこからはまさに一歩も引かぬ殴り合いだった。

お互いにどう相手の拳を避けるのか、どう相手に拳をぶつけるのか。

それしか考えず。相手を傷つける為に全力を出す。

 

 

「ハハハハハハッ! ハハハハハハハ!!」

 

 

楽しい。王蛇にとってはそれが全てだった。

つまらないまま終わる世界だった。イライラしたまま終わる世界だった。

だがF・Gには戦いがある。

リュウガも何を考えているのかは知らないが、恐れや焦りなどは欠片とて感じられない。

人は恐怖するからこそ、痛みを知るからこそ行動の範囲を制限する事ができる。殴る重みを知る事ができる。

しかしそれが分からぬ彼らは、よもや人ではない。

野獣と同じだ、ただ相手を狩る事しか考えていない。

 

 

「………!」

 

 

王蛇の拳がリュウガの仮面をえぐった。

だが丁度地面に倒れた時、リュウガのバイザーが復元された。

ベノムの時間が終わったのだ。つまりカードを使用する事ができる。

リュウガはすぐにファイナルベントのカードを抜き取り――

 

 

『アドベント』

 

「………」

 

 

それよりも早く、王蛇がカードを発動していた。

リュウガの背後に現れるベノスネーカー。すかさず毒液を発射して、妨害する。

しかしリュウガは地面を転がってそれを回避。転がる中で、バイザーにカードを装填していた。

 

 

『ファイナルベント』

 

 

濁った音声が告げる必殺技。

リュウガに直接噛みかかろうとしていたベノスネーカーを、ドラグブラッカーが突進で吹き飛ばす。

しかし王蛇はその瞬間――、まさにその瞬間を待っていた。

 

 

『ユナイトベント』

 

「……!」

 

 

ベノスネーカーの体から閃光が迸り、またドラグブラッカーからも同様のものがみられた。

すると二体のモンスターは引き寄せ合うかのように移動していくではないか。

成程、そう言う事か。リュウガは意味を理解してドラグブラッカーから距離をとる。

そしてベノスネーカーとドラグブラッカーが重なり合い――

 

 

「グジャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

現れたのは黒いベノスネーカーだった。

ただ色が変わっただけでなく、体にはドラグブラッカーの鎧、頭にはドラグブラッカーの角がある。

その名は"ヨルムンガンド"。濁った咆哮をあげると、真っ赤な目でリュウガを睨んだ。

 

 

「……やってくれる」

 

「良いカードだろ? あげないぜ」

 

 

ユナイトベントは相手の許可を得る必要などない。

特定の存在を融合する事がカードの効果であり、強制的に相手のモンスターの力を奪う事だって可能である。

 

 

「アァァ……! 終わりだ」『ファイナルベント』

 

 

王蛇を旋回しながら吼えるヨルムンガンド。

そして走り出す王蛇。飛び上がると、ヨルムンガンドが炎を纏った毒液を発射して、王蛇に力を与える。

毒液の飛まつと、火の粉を散らしながら繰り出す連続キック。

それが『ブレイジングダスタード』だ。ベノクラッシュよりも威力とスピードがあるのだが――

 

 

「………」

 

「!?」

 

 

リュウガは鼻で笑った。

すると彼の体が鏡の様に割れて、存在ごと消滅したではないか。

当然空を切る王蛇の攻撃。着地してすぐに周りを確認するが、リュウガの姿はどこにも無い。

気配すら無かった。

 

 

「チィッ! どいつもコイツもイラつくぜェ!」

 

 

変身を解除する浅倉。どうにも逃げられるケースが多い。

それにムカつくのは、リュウガは本気じゃなかった。

冷静に考えてみれば遊ばれていたのはコチラだと言う事なのか?

それにしてもあのリュウガの異様な雰囲気。それは浅倉も戦いの中でしっかりと感じている事だ。

 

 

(ただの人間じゃない。成程、主催者側も面白い事をしてくれる)

 

 

浅倉は笑みを浮かべると、杏子の無事を確認せずにリーベエリス本部の方へ足を進めていった。

どうやらあそこにいけば退屈はしなさそうだと信じて。

 

 

 

 

一方、杏子とユウリ。

王蛇がベノスネーカーを召喚した事で、杏子の体からベノスネーカー分のエネルギーが消失したが、それでもユウリと渡り合うには十分なモノだった。

ユウリはステップを踏みながら銃弾を連射していくが、杏子にとってそれは随分と遅く見える。すぐにロンギヌスで弾き返し接近していく。

 

 

「イル・トリアンゴロ!」

 

 

三角形の魔法陣が、右のリベンジャーの銃口を中心に展開していく。

銃口サイズの魔法陣には、時間と共にエネルギーが密集していくのだ。

これがもう一つの使い方だった。範囲内に相手を入れて爆発で攻撃する以外にも、銃に使用することで強力な磁力弾を放つ事ができる。

 

しかしそれには相応のチャージが必要だ。

ユウリは逃げながら、左のリベンジャーを乱射して杏子を近づけまいと動いた。

それにチャージが完了したとして、杏子を倒すには銃弾をしっかりと命中させなければならない。

弾速も軌道も普通、威力のみが高い弾丸をどう当てるかだ。

 

 

「あれ? 大口叩いてた割には逃げてるだけってか?」

 

「黙れクソブス! お前、マジで殺すから!」

 

「ハッ! いいじゃん、楽しいねぇ」

 

 

杏子は異端審問を発動。

ユウリが逃げようとした先のルートに光の群れを配置する。

飛び出してくる槍を見て、思わず動きを止めるユウリ。

そこへ杏子の多節棍が振り下ろされる。

 

 

「ぐがぁぁッッ!!」

 

「はいあたりぃ!」

 

 

膝をついたユウリの背に再び打ち付けられる槍。

倒れたところで、杏子に首を掴まれた。

 

 

「やっと捕まえた」

 

 

杏子はユウリを持ち上げると、すぐにヘッドバッドを繰り出す。

 

 

「ゴッ!」

 

「へへへッ!」

 

 

次は腹部に膝蹴りを。

 

 

「ガハァッ!!」

 

「ハハハハハ! 楽しいねぇ! 最っ高!」

 

 

杏子はユウリを投げ飛ばすと、槍先の刃を向ける。

露出された肌に刃を突き入れたら、ユウリはきっと苦しんで死んでくれる筈だ。

想像しただけで気分がスッキリする。杏子は大きな高揚感を感じながらユウリへと足を進めた。

 

ユウリは蹲っているため、表情は確認できないが、きっと悔しくて悔しくてたまらない筈だろう。

しかしそれはユウリが弱いからだ。強いヤツが勝つ、弱者は死ぬ。当然じゃないか。

 

 

「結局最後に笑うのは、力のある者なんだ」

 

 

槍を構え、トドメを刺そうと決めた。

 

 

「――いたい」

 

「あ?」

 

 

高い声が、杏子の耳を貫く。

思わず杏子は腕を止めてしまった。今のは――、ユウリの声じゃない。

そして、うつむいていたユウリが顔を上げた時、杏子は思わずロンギヌスを地面に落としてしまった。

 

 

「痛いよぉ、おねえちゃん!!」

 

「モモ――……!?」

 

 

そこにいたのはユウリではなく、たった一人の妹だった"佐倉桃子"だった。

杏子は何が起こったのか分からず、ただ目の前にいる妹をジッと見つめるだけ。

最後に別れてからどれだけ時間がたったろうか?

シルヴィスの件も露呈したが故、ちゃんとした場所でちゃんとした暮らしているとばかり思っていたが、違うのか?

 

 

「何で……、アンタがココに? ユウリは――?」

 

「分からないッ、わたしね、施設で暮らしてたらユウリって人に襲われて!」

 

「襲われた!?」

 

「うん、気がついたらユウリさんの体の中にいたの……」

 

「体の中にって……! ほ、本当なのか!?」

 

「分からない。もう何も分からないよ。怖かった……! お姉ちゃん!!」

 

 

モモは涙を浮かべ、両手を広げて姉に向かっていく。

杏子は少し戸惑いながらもモモを拒絶する事なく抱きしめた。

幸せに暮らしていると思って、モモの事を考えないようにしていたが……。

 

 

「お姉ちゃんどこ行ってたの!? モモ、寂しかったんだよッ!!」

 

「いや、それは……ッ」

 

「もう、どこにもいかないよね!?」

 

「モモ。ゴメン、アタシは――ッ!!」

 

 

ドン!

そんな音が、杏子の耳に届いた。

呼吸が止まる。杏子はゆっくりと違和感を感じた部分を見る。

 

 

「ァ」

 

 

腹部に風穴が開いているじゃないか。

文字通り穴だ。向こう側がハッキリと見えるくらいの穴。

後ろを見ると、大きな弾丸が飛んでいくのが見えた。

 

 

「な――」

 

 

喋ろうとしたら口から大量の血が溢れてきて、声にならなかった。

背後には飛び出した臓器があるのだろうか? それとも臓器ごと消し飛んだのだろうか?

分からない。何故だ。どうしてこうなった?

杏子は血にまみれた手で抱きしめている妹に目を移す。

 

 

(モモは、無事か?)

 

「――ゃはは」

 

「モ……、モ?」

 

 

喋れるのが不思議だった。おそらく魔法の力なのだろうが。

それよりも杏子が気になったのは目の前にいるモモである。

どうして彼女は――、そんなに笑顔なんだろう?

 

 

「ヒャハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「……ぁ」

 

「ヒヒヒ! ハハッ! アハハハハハハッッ!!」

 

 

腹を抱えて笑いながら、モモは杏子から少しずつ離れていく。

ショックで混乱しているのだろうか? 杏子は本気でそう思った。

ならば妹を落ち着けなければ。モモが気の毒だと本気で考えた。

 

 

「マジぃ? アンタマジなの!? ウヒャハハハハ! む、無理! お腹痛いィィ! アハハハハハハッッ!!」

 

 

杏子は気づくのが遅れてしまった。

この状態、自分の腹部に風穴を開けたのがモモだったと言う事に。

いや、それは少し言い方がおかしいか。

 

 

「おいおいおいおいおいッ! どうした? 佐倉杏子! 嘘でしょッ!?」

 

 

正確には、モモに変身したユウリに全く気がつかなかった。

いくら外見は完璧にコピーしたとして、言い分がおかしいとは思わなかったのだろうか?

警戒はしなかったのだろうか?

 

 

「ユウリぃい……! テンメェエエッ」

 

 

掠れた声で足を進める杏子。

しかしダメージは想像以上だ。すぐに膝をついて嘔吐する様に血を吐きだしていく。

仕方ない。腹にぽっかりと穴が開いている。全身の血が面白いように流れていった。

 

 

「まさか皆殺しだの何だの言ってた杏子ちゃんがシスコンだったとは! こんなッ、想像以上に信じてくれちゃって! ハハハハ!」

 

「――――」

 

 

モモは杏子に向かって全力の回し蹴りを打った。

首が折れる程の力で吹き飛ばされる杏子。倒れたらば、何とかして立ち上がろうとする訳だが、流した血が多すぎて力が入らない。

 

早く回復しなければ。

意識をソウルジェムに集中するが、それでも時間は掛かる。

そもそも不意打ちゆえに、魔力を防御に回し切れていなかった。

杏子は悔しさに歯を思い切り食いしばる。まさか、まさか、あんな方法にしてやられるとは。

 

 

「そっかぁ、杏子ちゃんは知らなかったなぁ、アタシのま・ほ・う……」

 

 

指を鳴らすと姿がモモからユウリにチェンジする。

ゆっくりと歩きながらデッキを取り出すと、一枚、カードを抜いて地面に落とした。

そして歩き、ふいに銃で落ちたカードを撃つ。

 

 

『ソードベント』

 

 

ユウリはブラックドラグセイバーを逆手に構えると、杏子の傍に立った。

そして力を込め、刃を肩に突き刺した。

杏子の悲鳴が聞こえ、剣は肩を貫いて地面に突き刺さる。

 

 

「フフフ! ハハハハハ!!」

 

 

エリーで過去のトラウマを調べれば、その人間に影響を与えた人物を調べる事だってできる。

結果、ユウリはモモに目をつけた。妹と言う存在、狙い通り油断してくれた。

まさに大成功。ユウリはニヤニヤと、杏子の苦痛に歪む表情を楽しんだ。

 

 

「意外とお優しい部分もあるのね、佐倉さん」

 

「!」

 

「マミちゃん感動!」

 

 

ユウリはマミに変身してみせる。

杏子の怒りに見開く目が、表情が、ユウリにとっては快感だった。

 

 

「笑えるな。まだ妹と巴マミだけには信頼と安らぎをおいていたのか」

 

「ッッッ」

 

「コレがお前の弱さだ佐倉杏子!」

 

 

柄を掴み、グルグルとかき混ぜるように動かした。

刃が肉を抉り、杏子はより表情を歪ませる。

ソウルジェムにより痛覚は遮断したが、それを上回る怒りと苛立ちが身を突き刺した。

 

 

「お友達に殺されちゃう気分はどうかしら佐倉さん」

 

「うる……せぇ、戻れよ……! 殺すぞ――……ッ!」

 

「まあ、強がっちゃって! かわいいんだからぁぁあ!!」

 

「うる――ッッ! せぇえええええええええ!!」

 

 

杏子は血を吐きながらも叫び、立ち上がろうとする。

しかし剣が邪魔でうまく立てない。それにその足を、胸を、手を、目を、ユウリのリベンジャーが撃つ。

 

 

「いい加減現実を理解しろ佐倉杏子! 今のお前は虫ケラと同じだ!」

 

「ぐぁっ! グググッ!」

 

「ヒヒヒヒヒ! ハハハハハハ!! ブラボーッ! 駄目だなぁ、ちゃんと考えて行動しないと!」

 

 

ユウリはマミの姿で杏子を踏みにじった。

気分がいい。このまま終わらせようではないか。銃を降って、弾丸を赤色に変える。

 

 

「ソウルジェムごと焼き尽くしてくれる!」

 

 

銃口を杏子に向ける。

すると桃色の閃光がほとばしり、ユウリのリベンジャーを弾いた。

 

 

「ん!?」

 

 

駆け抜ける光。杏子の前に広がる翼。

ユウリはそれを確認したところで衝撃に吹き飛ばされる。

 

 

「な、なんだ?」

 

 

混乱するユウリは受身を取るのも忘れて地面に倒れてしまう。

だが、しかと見た。翼を広げて杏子を守る鹿目まどかの姿を。

 

 

「あらあら、コレはコレは! 誰かと思えば。素敵な偽善者の鹿目まどか!」

 

「………」

 

 

ディフェンデレハホヤーで駆けつけたのだろう。まどかの背中には巨大な翼が見える。

マミの姿からユウリに戻ると、やれやれと首を振った。

 

 

「何? 今いい所だから、空気読んでよ。それとも鹿目さんは他人を守ってあげる快感に目覚めちゃった?」

 

「わたしは、ただ止めたいだけだよ」

 

「止めたい? 何を? 何か勘違いしてるのでは?」

 

 

まどかはどうも自分達がゲームに乗って殺し合いをしていると思っている様だ。

いや、それは間違いないのだが、その根本を考えてみてほしいとユウリは言う。

 

 

「これ、正当防衛。当然の事なんだ」

 

「っ?」

 

「ゲームを止めたいとか、戦いを止めたいとか、もう止めないか?」

 

 

ユウリは一つ、例をあげる。

 

 

「ゲームに勝つために殺すのと、生き残るために殺すの。そこに何の違いが?」

 

「それは――」

 

「貴女が戦わないのは勝手だ。でも、そこにいる女はアタシらを殺そうとする。だったらコッチも生きる為に戦うのは当然だろ?」

 

 

確かにユウリの言っている事は一理ある。

戦いたくないと喚き続けても、戦わなければならない現実。

まどか達だって何度と無く、そういった状況には陥ってきた。

 

 

「だからさ、もういいじゃん。委員長ごっこは終わり。ソイツ殺そう?」

 

「………」

 

「なんならこのユウリ様と手を組む? 織莉子とかブッ殺そうじゃない」

 

「ごめんユウリちゃん。わたしはそれでも、戦いたくないの」

 

 

ピクリと眉を動かすユウリ。

やはりまどかの答えはそれだった。予想していた事ではあったが。

 

 

「だぁかぁらぁああ!!」

 

「わたしはユウリちゃんとお友達にはなりたいと思うけど。傷つけあいたいって絶対思わないから」

 

 

それは杏子にも言える事だ。

確かに殺られる前に殺れと言うのは、このゲームの本質かもしれない。

両手を広げて相手を受け入れるつもりの考えでは、傷つけられるだけかもしれない。

 

 

「それでも、お互いが武器を捨てれば――!」

 

「いやいやッ、できると思ってるの?」

 

「うん」

 

「相変わらず脳みそがお花畑! それを摘んでハーブティーにしたいレベル!」

 

 

ユウリはわざとらしくリベンジャーを見せ付ける。

 

 

「そもそもこのアタシ様が武器を捨てない! どうするの? 委員長!」

 

「じゃあ分かってもらうまで、わたしは食い下がる」

 

 

まどかは凛とした目でユウリを見つめていた。

 

 

(下手に力をつけた分、それが自信に回っていると言う訳か)

 

 

ユウリは鼻を鳴らしてまどかを睨む。

二人の視線がぶつかり合い、お互いは全く動じる気配を見せない。

 

 

「貴女が戦いたいなら、わたしだって相手になる」

 

 

でも殺さない。

傷つけあう事になったとしても、武器を落とす為に戦う。

 

 

「なんの想いを抱こうが、相手を殺せば結果は同じだ」

 

「わたしは守るために傷つけるかもしれない。でも、絶対に命は奪わない」

 

「それは、お凄い! へし折りたくなるなァ!」

 

「………」

 

 

まどかは何も言わず、杏子の肩に刺さっていた剣を引き抜く。

すぐに止血をすると、杏子を抱きかかえて翼を広げた。

ユウリは、何もしない。こうしてまどかは飛び去っていった。

 

 

「フン」

 

 

誰もいなくなったフィールドに、ユウリは一人佇む。

杏子を仕留めきれなかったのは残念だが、『弱点』が分かっただけでもこの戦いに価値はあった。

どうせまた本部にやってくる筈だ。ユウリは踵を返してリーベエリス本部へと戻っていく。

 

 

「鹿目まどか。思ってたよりウザいなアイツ」

 

 

でも楽しみだ。あんな事を言っていたまどか。ぜひとも彼女の目の前で弟を殺したい。

そうすれきっと闇に落ちる。憎悪を解放させる。

傷つけない? 殺しあわない? それは知らないからだ。本当の憎悪と言うものを。

 

ぬるい世界で生きてきたお嬢ちゃんに、激しい憎悪が宿れば、きっとそれはより強く燃え上がる炎になる。その時にまた同じ事が言えるだろうか?

ユウリは唇を吊り上げ、本部へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

暖かい。

杏子はゆっくりと目を開けた。いつの間にか気絶していた様だ。

それにしても清清しい気分である。それは傷が大分回復しているからであろうか?

完全に貫通していた腹部も今はもうすっかり元通りだ。

 

杏子は腹部を擦る。

至るところに包帯が巻かれており、魔法だけの治癒でない事が分かった。

周りを見ればそこは大きな公園の一角。人がこない様な散歩道の、さらに端。

 

 

「ごめんね、こんな所で」

 

「アンタは……」

 

 

鹿目まどかは優しい笑みを浮かべて杏子に回復魔法をかけていた。

 

 

「……どうしてあの場に?」

 

「リーベエリスに向かう途中で見かけて」

 

「ふぅん」

 

 

杏子は非常に危険な状況ではあったが、ソウルジェムが無事ならば魔法少女に完全な死は訪れない。

それにまどかにはパトリシアがドロップしていたグリーフシードがあった。

魔力が確保できるのだから、回復には専念できる。

それだけじゃない、グリーフシードを全て使用して、まどかは杏子のソウルジェムを浄化した。

 

 

「もういい」

 

「あ!」

 

 

杏子は起き上がると、改めて自分の体を確認する。

ご丁寧に敷物をして、包帯や絆創膏まで。

 

 

「これは?」

 

「あ、うん。近くの薬局で買ったの」

 

 

そこでハッとするまどか。

少し顔を赤くして、もじもじと。

 

 

「なんだよ?」

 

「あ、あのね。包帯を巻かなきゃと思って……、あの、その」

 

「ああ。別に今更、裸なんて誰に見られたって構やしないよ」

 

「わ! わ! ご、ごめん」

 

 

杏子はまどかの前で包帯を乱暴に引き剥がしていく。

思わず赤面したまま後ろを向くまどか。

 

 

「服、取ってくんない?」

 

「う、うん」

 

 

まどかは丁寧にたたまれた服を渡す。

杏子は何も言わずにそれを受け取ると、もう一度自分の体を少し見回してみる。

それほど時間は経っていない筈だ。にも関わらず穴が塞がっている。

まどかの固有魔法は回復ではないのに、たいした治癒能力ではないか。

 

 

「杏子ちゃんはさ……、し、下着とかしないの?」

 

「上な。何か面倒でさ」

 

「だ、駄目だよ……! 女の子なんだから!」

 

「いいよ別に。誰も見やしないし。それに締め付けられるって言うか」

 

「体に合ってないだけだよ。もし良かったら、あの、一緒に見に行く?」

 

 

杏子はうんざりしたようにため息をついた。

 

 

「アンタ、フールズゲームって知ってる?」

 

「それは……、分かってるけど」

 

「分かってないッつーの! だって――」

 

 

杏子はバツが悪そうに頭をかくと、何度か頷いて座り込んだ。

 

 

「悪い……、その、何て言うかさ。助かったよ」

 

「うん、いいよ」

 

 

まどかは友達に向ける笑みと変わらぬモノを杏子に向けた。

それを見て、杏子は気まずそうに目を逸らす。

 

 

「ありが――、とう」

 

 

小さくつぶやいた言葉。まどかは何も言わずに頷くだけだった。

だがその時、杏子の脳裏にフラッシュバックしていく記憶。

過去にも何度、『ありがとう』と笑顔で口にしただろうか?

父親に、マミに、そしてシルヴィスに。その結果どうなった。

 

 

『人を惑わす薄汚い魔女め!』

 

『所詮化け物がッ!!』

 

「………」

 

 

歯を食いしばる杏子。

ユウリに頭を踏まれた感触が残っていた。

言葉にすれば思い出す。行動にすれば結果が伴う。杏子の目から徐々に光が消えていく。

そうだ。何をしていたのか。優しさの果てにあるのは結局弱さだったではないか。

モモ、マミ、そしてまどか。また間違えていた様だ。

 

 

「鹿目、だったよな?」

 

「うん、まどかって呼んで」

 

「オーケー、了解さ、まどか」

 

 

杏子は立ち上がるとソウルジェムを取り出して魔法少女の姿へと変身する。

 

 

「杏子ちゃん……?」

 

「まどか。助けてくれた礼に、天国へ送ってやるよ」

 

 

 

 

 







実際、俺が一番最初にまどあんの可能性に気づいていたって言う話は何回もしたと思う。
質の高いマギカリストなら、気づいていたとは思うんだけど。
うーん。試されてるって言うのかな?
でも皆も分かってる筈だと思う。


( ^ω^ )当然だよね。









( ^ω^ )当然だよね(適当)
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