仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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第42話 種 種 話24第

 

 

 

「コルディア……。いえ、モモさん」

 

「はい」

 

 

ゆっくりと目をあけるモモ。その瞳には決意が見える。

何の決意? ユウリにはどうでもいいことだが、都合がいい事この上ない。

ユウリは適当にモモを労うと、仁美達の近くにまどか達がやってきた事を報告する。

 

なんと言う事だ!

あの悪魔達は進行を阻もうとする多くの家族を殺して仲間を助けにやって来た。

やつらの思惑通りにさせていいのか、そうすればもっと多くの人々が苦しむ事になる!

ユウリは適当に、けれども饒舌にそれらしい事を並べる。

 

しかしモモにとってはその言葉一つ一つが心に突き刺さる苦しいものであった。

救いたい、救いたい、ただ救いたいと言うそれだけの想いを訴えた。

 

 

「手を取って笑い合える世界を作りたかったのに……」

 

 

その夢と希望を乗せたリーベエリス本部は今ベットリと多くの血で溢れている。

もう嫌だ、もう駄目だ、もう耐えられない。これ以上愛する者達が苦しめられるのは見たくない。

モモはシルヴィスに懇願する。どうか自分に彼らを助ける手立てを与えてくれと。

絶望を齎す希望の力を授けてくれと縋りついた。

 

 

「お母様なら、その力があるのでしょう……!?」

 

「ええ。ですが力には相応の苦しみと苦痛が伴いますよ」

 

「構いません! 皆を! 家族を守れるのならばそれで!!」

 

 

では、と。シルヴィスは懐からそれを取り出した。

イーブルナッツ。芝浦にも渡していたソレ。

そもそもこのイーブルナッツとは何なのか? それはユウリが手にした技のデッキが生んだアイテムであった。

 

イーブルベント。

そのカードを使うとイーブルナッツが誕生する。

これは言わば肥料だ。使い魔にこれを与えると急成長を促し、すぐさま魔女となる事ができる。

これはイレギュラーの進化であるため、使い魔を生んだ魔女とは別固体になる可能性がある。

真司が初の変身を行ったゲルトルート戦では、この現象が見られた。

 

さらに芝浦が行った急成長。

グリーフシードにイーブルナッツを連結させて刺激を与えれば、互いが反応しあい魔女がすぐに孵化すると言うもの。

そしてそのイーブルナッツを使った人間の命令を聞くようにもなると言う事だ。

 

しかしこのイーブルナッツにはもう一つまだ能力があった。

人間を魔女に変える事だ。イーブルナッツを人間の体内に埋め込む様にすると魔女化が始まる。

マンティス、ビートル、バット。次々と現れた異形は、全てユウリが与えたイーブルナッツが原因である。

尤も魔女化してしまうとほとんどが自我を失うため、ユウリの命令を聞く訳ではない。

おまけに強制的に埋め込んでも、本人が魔女化を拒絶すればイーブルナッツは体外へ排出されてしまう。そのためにユウリは今までこの機能を使ってはこなかった。

 

だがどうだ?

今このリーベエリスのメンバー達はm全て自分の言う事を聞く駒ではないか?

だからこそユウリは実験を兼ねて、複数のメンバーにイーブルナッツを渡しておいた。

そして今、モモを魔女化させようと言うのだ。

 

 

モモは歪んでいるように見えるものの、救済を求める心はひたむきだ。

愛する者たちを守りたいと言う強い意志が、イーブルナッツを押さえ込むのではないか。

ユウリは期待している。

 

 

「さあ、貴女に力を」

 

「はい……!」

 

 

まず一つ、イーブルナッツをモモの額に押し当てる。

種は、ズブズブと容赦なく埋め込まれていく。

多少の苦しみがあるのか、モモは顔を歪めて声を漏らした。

 

 

「んぐ…ッ! くぅッ!」

 

「世界を救えるのは貴女、世界を愛で埋め尽くす事ができるのは貴女」

 

 

適当に励ますと、モモはにっこりと微笑んだ。

そこでユウリに黒い感情が芽生える。知的欲求だ、イーブルナッツを一つ埋め込めば立派な魔女になるが、その強さは一般的な魔女には劣ってしまう。

だったらもしも複数のイーブルナッツを埋め込んだらどうだろうか?

もしもココでモモが壊れたらそれはそれで。ユウリがまどかの所に行けばいいだけだ。

 

 

「モモ、耐えるのです。そうすれば貴女は救世主になれる!」

 

「う、嬉しい……っ! 嬉しいですお母様――ッ!」

 

 

ユウリはモモの右手を掴むと、その甲にイーブルナッツを押し当てる。

さらに左手に追加。様子はどうだ? 確かに辛そうではあるが、モモはまだ意識を保っていた。

 

 

「あぐッァ! ぎひぃうぅ!」

 

「耐えなさい! 苦痛は、やがて力へと変わります!」

 

「は、はい……ッ!」

 

 

ユウリは右足、左足へと種を埋め込む。

さすがにもう止めておくか。そう思い、モモから離れていく。

 

 

「さあ、解き放ちなさい」

 

「あ――ッ! ああああああああああああああああ!!」

 

 

激しいエネルギーがモモの身体を駆け巡った。

そして文字通り、モモの背中に美しい白き翼が生えていく。

 

 

(へぇ。意外と耐えたな)

 

 

まさにその姿は全てを赦し、全てを裁く天使の様ではないか。

名前は『エンジェル』。モモは五つのイーブルナッツによって救済の使徒へと変わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仁美ちゃん!」

 

「まどかさん!!」

 

 

牢とは言っても、所詮は元々ある施設に手を加えただけのものだ。

ニコの案内に従って、龍騎達は見張りを気絶させて仁美たちのところへとやってくる。

牢屋は龍騎が破壊し、仁美とまどかはお互いが無事である事を確かめていた。

 

 

「無事で良かった……! 本当によかった! タツヤも――ッ!」

 

 

声を震わせるまどか。

その手を、仁美が優しく包み込む。

 

 

「まどかさんも城戸さんも……、助けに来てくれるって信じてましたわ」

 

 

頷くまどかと龍騎。

タツヤは何故姉が泣いているのかが分かっていない様だ。

それよりも目の前にいる龍騎の姿のほうが気になるようで、近づくとペタペタ触り始める。

 

 

「かっこいいー!」

 

「え? あ、あははは」

 

 

龍騎はタツヤを抱きかかえると、ポンポンと背中を叩く。

見れば、どこも怪我などはしていない様だ。仁美は暴徒達から抵抗した際に引っ掻かれたような傷があったが、逆を言えばそれだけだった。

しかし再開を喜ぶのもいいが、とにかくココを脱出する事が先だ。

北岡の心配もあるし、魔女化したキリカの事もある。

 

 

「どうしよう真司さん……」

 

「一旦、蓮達と合流しよう! 行こうタツヤくん、仁美ちゃ――」

 

 

龍騎が吹き飛んだ。

巨大な『手』が、仁美とタツヤを掴む。

 

 

「え?」

 

 

仁美は戸惑っていた。急に足が地面から離れ、体が宙に浮いていたのだから。

隣を見るとタツヤが手の中にいた。そうだ、手だ。

白く神々しい巨大な手が二人を鷲づかみにしていた。

 

 

「ッッ!!」

 

 

刹那、部屋に轟音が響く。

巨大な頭が床を突き破ってきたのだ。

神々しいといえばいいのか。それは目を閉じた女性の頭部だった。

いつか美術館や彫刻で見た事のあるような形状だ。頭上には金の装飾に包まれた『天使の輪』まで備えてある。

床が崩れ、壁が崩壊し、天井が落ちてくる。

まどかは何とか結界を構築し、自分や仁美達を守った。

エンジェル。モモが変身した魔女もどきは、さらに部屋を粉砕していく。

 

 

『裁きを』

 

「!?」

 

 

おもむろにエンジェルの閉じていた目が開眼する。

まどかと龍騎が立っていた場所が爆発。二人は白い爆炎の中に包まれる事に。

どうやら目で見た場所を指定すれば、そこに爆発を起こせるらしい。

 

 

「まどかさ――」

 

 

友の名を呼ぶ仁美だが、視界にはすぐに空が広がった。

仁美達を掴んだエンジェルは、翼を広げて空を翔る。

目指すのはリーベエリスで一番大きい大聖堂であった。

 

 

「ま、まどかちゃん! 大丈夫!?」

 

「う、うん……! でも仁美ちゃんとタツヤが!!」

 

 

まどかは翼を羽ばたかせて爆炎を振り払う。

龍騎はドラグレッダーを呼び出すと、背中に乗ってエンジェルを追いかけた。

 

 

「……ッ」

 

 

そこでエンジェルの全貌が確認できた。

そのシルエットは天使を名乗るだけあって限りなく人間に近い。

とは言え細部を見ればやはり異形の存在である事が分かる。

身体には複雑な模様が刻まれており、所々には神々しさを強調する金色の鎧や装飾品が装備されていた。さらに肩や膝の関節連結部は巨大な球体になっており、腕はパイプの様な細長いパーツになっており、手首から上にあたる部分は楕円の球体がついている。

 

さらに、巨大な人の手が『二つ』存在していた。

空中に浮かぶ光の手が、現在仁美とタツヤを掴んでいる。

能力で生み出されたものだろうか?

 

足は装飾こそ派手だが、特にこれといった特徴は無く、人間のものと変わりないように思える。

そして背中にはエンジェルと名が示すとおり、六つの翼が存在していた。

これも光の手と同じく、身体から直接生えているわけではなく、背中の周りに浮遊している。

そして頭上には天使の輪が一つ。これがエンジェルの全てだった。

 

 

「お前ッ! 仁美ちゃん達を離せよ!!」

 

 

追いついた龍騎とまどか。龍騎が指をさして吼える。

エンジェルは目を見開いたまま龍騎達を視界に捉える。

その瞳の奥には光の本流がいくつも見えた。

 

 

『なりません』

 

「!」

 

 

エンジェルは口を開かずに言葉を放つ。

おそらくキュゥべえ達と同じく頭に直接語りかける方法なのだろう。

モモの声に加えて、いくつもの女性の声が重なっている。

 

 

『罪、裁かれる者。これは救済でもあり、罪を償う行為でもあります』

 

 

エンジェルの目が光ると、背後に二つの十字架が出現する。

光の手が動き、仁美とタツヤを十字架の中心に押し当てる。

するとどういう原理か知らないが、仁美とタツヤは十字架に磔となり、固定される。

魔法が働いているのか、タツヤは気絶してしまったようだ。

目を閉じてダランと顔を下げるタツヤの姿を見て、まどかは涙を浮かべて懇願を。

 

 

「お願いします! 二人は関係ないんです!」

 

 

もちろんそれは自分達もだ。

何か誤解があるのなら説明すると、まどかも龍騎も必死だった。

何故何もしていない自分たちが。何もしていない仁美達が巻き込まれるのか――、と。

 

 

『もう、これは誤解ではありませんよ』

 

 

エンジェルは語る。

たとえ龍騎が無実だったとしても、もう関係ない。

積み上げられた恐怖と悲しみ。大切な者を殺された怒りや復讐心は、簡単に消えるものではない。

リーベエリスのメンバーは今、龍騎達を残虐な殺人鬼として認識している。

 

 

『実は勘違いでした。などと、終わらせる事なんてできません』

 

「な、なんでだよ! 何言ってんだアンタ!」

 

『では聞きましょう。仮に貴方達の言うとおり誤解が生じているとして、貴方達は真犯人を連れて来られるのですか?』

 

「そ、それは――!」

 

 

エンジェルは言う。

無理だとしたら、誤解は真実のまま通すしかない。そうしなければ誰も救われない。

家族を失った悲しみ、恋人を失った苦しみ、その怒りを誰かにぶつけなければ人は生きられない。

 

 

「真犯人が明るみに出ない以上、この私はリーベエリスの長として貴方たちを裁かなければならない」

 

「て事は、アンタ――ッ!」

 

 

龍騎はコルディアの顔を思い出す。

 

 

「なんでキミが……!」

 

『残念です城戸さん。貴方はいい人だと思っていたのに』

 

「ち、違う! 聞いてくれ! 他人に変身できるヤツがいるんだ! ソイツが俺達の姿を借りているとしたら!」

 

『なりません』

 

「え!?」

 

『もう全てが遅い。貴方たちが無実だとして、その力は真実です』

 

「!」

 

『人を超越せし力。それは神を冒涜する力ではありませんか』

 

 

赤い龍を乗り回し、かたやどこでも自在に壁を作れる。

これは神に与えられた人の器を遥かに超えている行為ではないか。

そんな馬鹿な事を、そんなふざけた事を赦す事はできない。

 

 

『今回は誤解でも、次は貴方達がその力を悪用する可能性があります』

 

「そ、それは――ッ!」

 

「だからって仁美ちゃん達は関係無いじゃないですか!!」

 

 

首を振るエンジェル。悪魔の血を根絶させるのが自分に課せられた使命。

そして支配者としての役割なのだからと。

 

 

「支配者……!?」

 

『その通り。リーベエリス――、我らが愛は、やがて全ての世界を包み込む事でしょう』

 

 

リーベエリスの"リーベ"とは愛を意味する言葉だ。

 

 

『その支配の過程に、貴方達の存在は邪魔なのです。人を傷つける愚かな力がこの世界に存在すると思うだけで腹が立つ』

 

「な、何言ってるんだよ! 支配とか今はどうでもいいだろ!」

 

 

傷ついて震えている子供達がいるんだ。

彼らの為にも真実を教えてあげなければならない。真実を証明しなければならない。

確かに龍騎達の力は人を超えているものかもしれない。

だけどきっと助け合えば狂う事は無い筈だ。だから今は仁美達を助けて欲しいと言うが――。

 

 

『なりません。これは処刑なのです』

 

 

人を蝕む不安は削除しなければならない。人の心にチラつかせてはならない。

龍騎と言う存在。騎士と魔法少女と言う存在がいるから、人は恐怖する。

 

 

『怯え、不安になるのだからいっそ無くしてしまえばいい』

 

「……!!」

 

 

龍騎とまどかは、自分達を見て震えている子供達を思い出した。

きっと彼らは龍騎達の疑いが晴れたとしても、騎士と言う存在に、魔法少女と言う存在に、怯え続けるのだろう。

現に王蛇達は本当に大量殺人を行っているし、何よりこの誤解を生んだのも魔法少女(ユウリ)だ。

 

 

「……ッッ」

 

 

言葉に詰まる龍騎。

手にしたのは守る事にも使えるが、人を傷つけて殺す事もできる巨大な力だ。

力はいつだって争いの火種になる。それを求めようとする者。それに溺れる者。

力が原因で人は傷つけあう。現に今もFOOLS,GAMEがある。

 

 

「でもッ! そういう……! そういうアンタはどうなんだよ!!」

 

 

かろうじて言葉を返す龍騎。

力が罪だと言うのならば、今モモが振るっている力は一体何なのか。

 

 

『これは力ではありません。神です』

 

「な!?」

 

 

リーベエリスのリーベとは愛を意味する言葉だが、"エリス"は何を意味するのだろうか?

それは同名の女神から取った言葉なのだ。モモはその神の意味を知らずに、ただ神という事を強調されて育てられた。

 

故にモモは女神が神聖なる意味を持ち、それが平和を願うものの象徴だと思い、今に至る。

そして今変身している姿も、天使――。

いや実は違う。モモが変身しているのは天使ではなく、女神『エリス』をイメージしていた。

神話に登場する女神、エリス。彼女が司る物は――

 

 

不和と争い。

 

 

『私が女神エリスとなり、貴方達を神の元へと返しましょう』

 

「!」

 

 

エンジェル――、本当の名を『エリス』は目を再び光らせた。

すると聖堂の天井の一部が消滅。エリスはそこから中に入り、二つの十字架ステンドグラスへ貼り付ける。すると十字架は、神が描かれているステンドグラスの中に埋め込まれていく。

 

 

「えッ!?」

 

 

埋め込まれたのは十字架だけじゃない。そこへ磔になっている仁美とタツヤもだ。

すると仁美の足元がステンドグラスと一体化をはじめたではないか。

タツヤは身長が低いためか、まだ何も変化は起きていないが、おそらく時間と共に同化していくのは変わらないだろう。

自分の足がガラスになっていくのを見て、仁美は恐怖で顔を歪ませた。

 

 

『痛みはありません。貴女達は神の御許に仕えるのです』

 

「仁美ちゃん!!」

 

 

助けなければ!

龍騎とまどかは顔を見合わせて頷く。

同じく聖堂の中に入り、まどかが腕を天へ突き上げた。

 

 

「輝け! 天上の星々ハマリエル!!」

 

 

光の球体がいくつも出現していき、それらはおとめ座の並びを作り出す。

 

 

「煌け、純白なるヴァルゴ!」

 

 

まどかは弦を思い切り振り絞ると、狙いを定める。

 

 

「呪いを砕く穢れ祓いし慈愛の光よ。万物を癒す救済の矢と変わり、我を照らしたまえ!」

 

 

矢についている蕾のギミックが展開する。

照準は仁美とタツヤに。

 

 

「救え、乙女! スターライトアロー!!」

 

 

弦を放すと、美しい女性の形をした天使が発射された。

平和の天使ハマリエル。その力は攻撃ではなく救済だ。

呪いの力を振り払うそれは、ステンドグラスにされていく仁美達を助けるには十分な技だった。

おそらくエリスを倒した場合も仁美達を助ける事はできるだろうが、その前にステンドグラス化が完了してしまえばどうかは分からない。

ハマリエルのスピードならば一気に二人を救い出す事ができると踏んだのだ。

 

 

『消えなさいッ!』

 

「!」

 

 

しかしエリスの翼が巨大化し、仁美とハマリエルの間に差し込まれる。

翼にぶつかったハマリエルは小競り合いの後に消滅してしまった。

どうやらただの翼と言う訳ではない様だ。

 

 

『これが真の救済なのです。邪魔をする事は許されません!』

 

「ふざけんな! 何が救済だよ!!」

 

 

スターライトアローは呼び出す天使によって消費される魔力が異なるが、どれも決して軽いものではない。魔力の量が多いまどかではあるが、悪戯にソウルジェム濁らせるのは危険だった。

こうなればエリスを倒して解決するか、大きな隙を作らせるしかない。

龍騎はいろいろな雑念を振り払い、まずは仁美達を助ける事に集中する。

 

 

「ドラグレッダー!」

 

 

乗っていたドラグレッダーは、龍騎の言葉を受けて口から紅蓮の火球を発射する。

使い魔ならば一撃で葬り去る威力だろうが、エリスは光の手を広げると火球を掌で受け止めて消滅させる。

どうやらあの光の手が主な武器らしい。

さらに盾の役割を持つ翼や、ギロチンとなる頭上の輪も。

 

 

「うおっ! あぶなッ!!」

 

 

さらにエリスそのもののアームからは光の弾丸が発射されると来た。

女神と言いつつ、全身が武器の様なものだ。

エリスはステンドグラスを守るようにして立ち振る舞っている。

豊富な飛び道具は、相手を近づかせない為の手段だろう。

 

しかしコチラも負けてはいられない。

龍騎は両肩にドラグシールドを装備、さらに左手にドラグクロー、右手にドラグセイバー。

そして背中にドラグアローと、フル装備で戦いに挑む。

 

 

「行こうまどかちゃん!!」

 

「うんッ!」

 

 

まどかは腕を前にして、エリスの前後左右、さらに頭上に結界を張ってみせた。

壁で囲むと、さらに結界を自分の方へと引き寄せる。こうすればエリスの距離をステンドグラスから離しつつ、拘束できると思ったのだろう。

 

 

「そんな……!」

 

 

しかしエリスが翼を広げると、結界は簡単に崩れてしまった。

さらにカウンターが飛んでくる。エリスの頭上にあった天使の輪が、回転しながらまどかに向かってきたのだ。

まさにギロチン、おそらく並みの結界ならば真っ二つにされてしまうだろう。

 

 

「アイギスアカヤー!」

 

 

まどかの前に巨大な盾を構えた天使が現れる。

通常の結界は簡単に打ち破られたが、魔法技のこれならばそう簡単には破れない筈だ。

それにアイギスアカヤーは、まどかの結界の中でも一番硬い。

 

 

『――!』

 

 

エリスの目が光った。

すると直線の軌道で飛んでいた天使の輪が、急激に旋回を行い、盾を避けて横からまどかを狙う。

 

 

「ッ! きゃああああああああああ!!」

 

「まどかちゃん!」

 

「まどかさん!!」

 

 

反応が遅れながらも何とか横に結界を張るまどか、しかし輪はそれを打ち破るとまどかに着弾する。

まどかも輪が当たる前に地面を蹴って後ろに跳んでいた為、直撃こそは避けられたが足にかすってしまった。そこから血が飛び散り、赤が舞う。

 

 

「んくっ!」

 

 

倒れるまどか。

顔を上げると、天使の輪が再び自分を狙ってくる。

どうやらエリスの意思で自由に軌道を変えられるらしい。そうなると、一点を守るアイギスアカヤーでは先ほどの二の舞になってしまう。

強度を落としても広範囲を守れる結界に切り替えなければ。

 

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

「!」

 

 

ドラグレッダーから飛び降りる龍騎。

その手にはガードベント・ドラグケープがあった。

エリス本体の行動は制限をするのが難しいが、『輪』に対してなら指定が有効だった。

どんなにエリスがまどかを狙おうとも、輪は吸い寄せられるように龍騎の咆哮へと向かう。

 

 

「いっくぞぉぉ……ッ!」

 

 

龍騎は一旦ドラグセイバーを地面に突き立てると、背中にあるドラグアローに手をかけた。弓を振り絞り、輪に狙いを定める。

 

 

『させません!』「させない!」

 

 

同時に動いたエリスとまどかだ。

まずはエリスが輪の動きを操作する。ドラグケープの効果は分かった。ならばここは龍騎を先に排除すればいいだけだ。輪を縦横無尽に動かし、相殺されるのを防ぐ。

 

 

「あぁ!」

 

 

龍騎の情けない声が聞こえてきた。

彼の放った矢はジグザグに動く輪を捉える事はできなかった。

しかし、まどかはそれを踏まえた上で詠唱を行っていた。

 

 

「ッ! 撃ち抜け射手よ!」

 

 

まどかは地面に倒れながらも、弓でエリスを狙う。

スターライトアロー。選んだのはサジタリウスだ。

巨大化した光の矢が、真っ直ぐにエリスを狙う。本体がダメージを受ければ輪の操作も中断されるだろうと思っていたのだ。

 

 

『抗ってはいけません』

 

「!」

 

 

しかし待機していた光の手が動き、両手でまどかの矢を受け止めてみせた。

 

 

『フフ、どうしました? こんなもので――』

 

 

そこで爆発音が聞こえる。

炎に塗れていたのは、エリスの投げた輪だ。

 

 

『これは……!』

 

 

エリスはまどかの手に注目する。

まどかが持っていたのは自分の弓じゃない。龍騎のドラグアローだ。

サジタリウスの矢は囮である。見るからに高威力の矢なのだから、相手も注意するはずだ。

だからこそ矢を放ってすぐにユニオンでドラグアローを呼び出した。

 

狙うのは、龍騎の方へ飛んでいく輪だ。

龍騎は外してしまったが、まどかはいつも弓を使っている。

それに射撃に関してはマミの特訓を受けていた為、不得意ではない。

不規則に動き回る輪だが、先読みして矢を放ったら見事に命中した。

後は龍騎がドラグクローから炎を発射すれば、輪に打ち込まれたエネルギーと呼応して爆発が起きる。

 

破壊とまではいかなかったが、輪は地面に墜落して勢いを完全に失った。

龍騎は腰を落とすと、再びドラグクローを構える。

そこへを旋回して、狙いを定めるドラグレッダー。

エリスはすぐに攻撃を中断させる為にメ腕からビームを発射した。

だがまどかが腕を伸ばすと、龍騎の前にオーロラ状の結界が出現、光弾を受け止めてみせる。

 

 

「リーバスレイエル!」

 

 

天使が現れ、目を開く。

すると光弾が反さされて、エリスの体に直撃した。

 

 

『ウグァア!』

 

 

同時に突き出したドラグクロー。

炎と炎が交じり合い、巨大な炎塊に変わる。

 

 

『グガアアアアアアア!!』

 

 

昇竜突破だ。

エリスはよろけながらも、炎をかき消し、声を荒げる。

 

 

『ぐゥウ! 何故裁きを受け入れてくれないのですか!?』

 

「こんなのが裁きであっていいかよ!!」

 

『なぜ! 自らの罪の意識を攻撃に変える。それは大罪ですよ……!』

 

 

悪は裁かなければ成らない。

疑わしきは罰せよ。そしてその疑いを掛けられたのならば、世界のためにも自らを犠牲にするべきではないのか?

 

 

『なのに何故あなた達は死なない? 何故己の罪を認めようとしない? 何故まだ生きようと、希望を見ようとする! そんなのは正義じゃない!!』

 

「関係ない人を巻き込んで、何が正義だよ!!」

 

 

龍騎は地面に突き立てていたドラグセイバーを抜くと、再びドラグレッダーの背中に乗って空を翔た。狙うはエリス本体だ。龍騎はドラグセイバーに炎を纏わせる『龍舞斬』を発動して突っ込んでいく。

まどかも龍騎のアシストを行うために弓を引き絞った。

ソウルジェムの穢れはそれなりに溜まっている。魔力配分はよく考えなければ。

 

 

『私は世界の事を誰よりも愛しています。ゆえに、貴方達は死ななければならない』

 

 

世界を恐怖させる者たちは存在を許されない。

でなければ愛も夢も希望も全てが壊れてしまう。

それが何故分からないのかと龍騎達に吼えた。

 

それに切り返す龍騎とまどか。

確かに自分達の存在はリーベエリスの人たちにとっては恐怖以外の何者でも無いだろう。

しかしそれは誤解なんだ。それに仁美達は本当に関係ない、そしてゲームの事もある。

自分達は誤解で死ぬわけには行かない。それにこれ以上犠牲者が出ない様に、ゲームを止めなければならないのだから。

 

 

「悪いけど、俺達は死ねないんだ!!」

 

「仁美ちゃんを、タツヤを守りたい!」

 

 

仁美は既に膝上辺りまでがステンドグラスになっていた。

あまり時間は残されていないようだ。

 

 

『黙りなさいッ! 世界を汚す要因に、これ以上大地を踏みしめる資格など無い!』

 

 

エリスの傍にあった光の手が、凄まじいスピードで龍騎へ向かっていく。

まるでロケットパンチだ。ドラグセイバーを物ともせず、裏拳で龍騎を弾き飛ばす。

さらにもう一つの手でドラグレッダーを殴り飛ばした。放物線を描いて飛んでいくドラグレッダー、巨大なパイプオルガンにぶつかり、それを破壊しながら倒れていく。

龍騎も近くにあった壁に叩き付けれてしまった。

 

 

「真司さん! ドラグレッダー!」

 

「だ、大丈夫大丈夫ッ!」

 

 

たじろぐまどか。だが龍騎はすぐに立ち上がって、まどかの所へ走る。

 

 

「!」「!!」

 

 

エリスは背中にある六枚の翼を大きく広げた。

すると翼の一つが体から離れていき、回転を始めた。

龍騎は翼が無くても空中を浮いているエリスを見て察する。

 

そうだ、元々翼は体にはくっついていなかった。

と言うことは、エリスが宙に浮いていたのは、翼があったからではなく自分自身の能力だったのだろう。では翼の役割とは何なのか? たとえば先程のように盾にするだとか。

 

 

『消えなさい! 神の鉄槌を!!』

 

「ッ!!」

 

 

やはりと言うか、それは剣であり、それはブーメランであり、つまり純粋なる武器である。

巨大な翼が刃となって飛んできた。しかも六枚全てだ。

翼型のブレードは縦横無尽に大聖堂を飛び回り、辺りを傷つけていく。

龍騎は一旦ドラグレッダーの召喚を解除し、盾を二枚構えて前に進んでいく。

 

しかしその大きさから来る衝撃は凄まじく、まどかも自分の周りに結界を展開させるのが精一杯だった。そうしているとエリスは自分の身体を回転させながらまどかへと突進していく。

捻りを加えたからか、腕の部分から結界を突き破っていき、楕円の腕部がまどかを掴みあげて壁へと押し付けた

 

 

「あぐっ!!」

 

『消えなさい!』

 

 

このままゼロ距離でビームでも発射してやろうか。

そうだ、それがいい。エリスがエネルギーを集中させると、細長い腕が爆発して粉々になった。

 

 

『な、なにィ!?』

 

 

さらに空中で待機していた光の手も爆発して吹き飛んでいく。

エネルギーが暴走したなんて話しじゃない。

エリスが怯んだ隙にまどかは翼を広げて飛翔する。逃げる中で、しっかりと見た。

飛んでいくミサイル。爆発するエリスの体。それを仕掛けた騎士の姿を。

 

 

「いい所で登場するね。俺って」

 

「北岡さん!!」

 

 

ギガランチャーとギガキャノンを装備したゾルダが立っていた。

隣にはマグナギガの姿もある。アームを破壊したのは彼らだ。

ゾルダは間髪いれずに三発の弾丸を発射した。エリスはすぐに翼を広げて盾にするが、伝わる衝撃と震える羽。いずれ翼は粉々になるのは明白だった。

 

 

『裁かれるべき罪人が増えましたね……!』

 

「冗談! 俺は裁く側なんで」

 

 

マグナギガ、その性質は均衡。

もたらされるのは対等なる立場だ。

ゾルダの合図と共に、再びその身体から無数のミサイルが発射された。

 

 

『なんてッ、厄介な!』

 

 

エリスは防御を続ける。

そこで龍騎の姿がどこにも無い事に気づく。すると真下から聞こえる龍の咆哮。

 

 

『しま――ッ!』

 

「ダアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

大きな翼が逆にめくらましになってくれた。

龍騎はダッシュで一気にエリスの懐に潜り込むと、インファイトに持ち込んでいく。

手に持っているドラグセイバーを思い切り突き出し、ドラグレッダーの炎を纏った。

 

ドラグセイバーには炎を纏わせて斬撃を強化する『龍舞斬』の他に、もう一つ技があった。

その名も『ドラゴン爆炎突き』。名前こそ他の物と毛色が違っているが、その威力は言うまでも無く強力だ。

ドラグレッダーの炎を受けた龍騎はジェットの様に飛んでいき、ドラグセイバーをエリスの身体に思い切り突き入れる。

 

 

『ぐぐうぅぅう!』

 

「ウラァッ!!」

 

 

下から上に炎の斬痕が刻まれる。

さらに龍騎は剣を刺したまま、エリスの身体を蹴って離れる。

すると突き入れられたドラグセイバーが点滅を始め――、直後大爆発を起こした。

 

 

『おのれェェエエエエッッ!!』

 

 

吹き飛び、倒れるエリス。

その隙に龍騎達三人は合流してすばやく情報を交換し合う。

ナイトに助けられたゾルダは、彼と共に移動するのを拒否し、リーベエリス本部のマップを思い出していた。ゾルダは仁美には興味は無い、目指すのはこの事態に陥ったが故に頂点のコルディアのもとだ。

 

 

「部屋に移動する際、窓の外にアイツが飛んでいくのが見えた。とりあえず攻撃したけど、あれは一体何なんだ?」

 

「あれがコルディアなんだって!」

 

 

どんな事情であの姿になったのかは知らないが、とにかくこのリーベエリスはゾルダにとって邪魔以外の何物でも無い。

それにエリスも普通の魔女とは明らかに実力が違っている。

ゲームの事はあるが、それを行う舞台を滅茶苦茶にされては元も子もない。

 

 

「仕方ない。不本意だが、協力するべきだ」

 

「オッケ。頼むよ先生」

 

「馴れ合いは好きじゃない。お前ら、足引っ張るなよ」

 

 

うんざりしたような龍騎と、苦笑するまどか。

だが余裕はない。早くしなければ仁美たちが危ないのだ。

 

 

「あの羽が邪魔だな」

 

「とにかく、隙を見てまどかちゃんが二人を助けられる様にしないと」

 

 

まどかは自分のソウルジェムを取り出して確認する。

魔法の連続使用で、かなり穢れてしまっている。

だからそれを浄化させる為のグリーフシードを取り出した。

 

 

「………」

 

 

杏子にもらったグリーフシード。

あの善意はきっと無駄なものではないと信じたかった。

 

 

「さあ、ヤツが起き上がるぞ」

 

「ああ、まどかちゃん」

 

「はい! 真司さん、北岡さん――ッ! 頑張りましょう!」

 

 

三人は頷き合うと、立ち上がって翼を広げるエリスを睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁあッッ!!」

 

 

別の場所。

吹き飛んだのはサキだ。

彼女を助けようとファムは走るが――!

 

 

「無駄だ」

 

「うっ!」

 

 

目の前に現れる黄金の鎧。

ファムはすぐに武器を構えるが、その前にオーディンは手を伸ばして金色の羽を無数に発射した。

一見すれば普通の羽に見えるが、当たれば小規模の爆発が起きる武器の一種だ。

小さな爆弾と言っても過言ではない。ファムも羽を散らそうと剣を振るうが、羽は意思を持ったようにファムへと命中していく。

ファムは火花を散らして倒れる。周りを見れば彼女と同じように倒れた者達が目立つ。

 

オーディンは冷静だった。

前回のホールでは目の前に王蛇ペアと言う憎悪する相手がいたから自分を見失った。

しかし今は違う。最強の騎士と言う自覚、そして得られる力を存分に振るって、ナイト達全員を地につかせていた。

織莉子も少しは手伝ったが、それでもライア、ほむら、タイガ、ナイト、かずみ、サキ、ファムと七人をたった一人の騎士が打ち倒したのである。

 

 

「強すぎる……ッ!」

 

 

ライアは規格外だとつくづく思う。

コチラは七人もいたのだ、なのにたった一人の騎士も止められない。

その攻撃力、その防御力。そして厄介なのが自在に空間をワープする能力と黄金の羽である。

全てが他の騎士とレベルが違っているではないか。

織莉子とオーディンはライア達がキリカを退けた事を知ると、攻撃を仕掛けてきた。

あっという間にライア達はボロボロにされてしまい、地面に伏せている状態だ。

 

 

「ふざけないで――ッ!!」

 

 

色々と思うところがあるのだろう。

ほむらは立ち上がると、マシンガンを乱射してオーディン達を狙った。

しかしオーディンは不動。ワープすらしない。弾丸を真っ向から受け止めて何のリアクションもせずに歩いていく。

 

 

「くッ!」

 

 

ほむらはマシンガンを捨てて盾の中に手を入れる。

もっと高威力の武器でなければ、あの黄金の鎧を砕く事なんて不可能なのだ。

 

 

「無駄だよ」

 

「!」

 

 

エコー掛かった声。気が付けば腕を掴まれていた。

ほむらの隣にはオーディンが。どうやら目に映る場所ならば一瞬で飛べるらしい。

ほむらは全力でオーディンの手を振り払おうと力を込めるが、騎士と魔法少女ではやはり腕力には大きな差が出てきてしまう。ましてやほむらはスペック自体は他の魔法少女よりも低い。

オーディンは簡単にほむらの手を盾から引き抜くと、そのまま彼女の胴体に掌底を打ち込んで強制的に後退させる。

距離が開いたところにオーディンが手をかざす。すぐに金色の羽が発射されていった。

 

 

「!」

 

 

素早く立ち上がったライアは、ほむらを守るために間に滑り込む。

一応エビルバイザーを盾として構えていた為に、何とか爆発を堪える事ができた。

そのまま間髪いれずにデッキからカードを抜き取ると、ほむらの名前を呼ぶ。

 

 

「分かったわッ!」『ユニオン』『ファイナルベント』

 

 

盾の砂が無くなってしまった為、ほむら一人では時間停止はできない。

しかし複合ファイナルベント時には砂が微量に回復すると言う性質があった。これにより再び時間を止める事が許される。

尤も、ファイナルベント終了と共に回復した分の砂は消滅する為、重複して回復はできないが。

 

 

「暁美ッ! ヤツは危険だ! 何が何でも倒すぞ!!」

 

「ええ……ッ!」

 

 

時間が止まる。動くのを許されたのはライアペアとエビルダイバーのみ。

ほむらはロケットランチャーを織莉子に向けて発射した。

これは殺すための一撃である事をライアも理解していたが、燻る物を感じるだけで何も言えなかった。

 

板ばさみと言う曖昧な状況だ。

ライアは織莉子から話を聞いている。しかしほむら達の事もある。

だから何も言えない。何も――。

 

 

「――ッ」

 

 

ほむらはアサルトライフルの引き金を引いて、オーディンの前に六発の弾丸を停止させる。

そして自分達は後ろに周り、そこで時間停止が解除された。

聞こえる爆発音。しかし織莉子の方を確認している余裕はない。

ライアとほむらは、エビルダイバーの突進をオーディンに命中させる。

 

 

「ッ!?」「!!」

 

 

エビルダイバーはオーディンに直撃した。

そう、確かに直撃したのに手ごたえと言うモノが感じられなかった。

まるで何も無いところに突っ込んだ様な感覚だ。透けたような、すり抜けたような感覚。

現にオーディンは何のリアクションもしていなかった。平然と腕を組み、鼻を鳴らす。

 

 

「ぐあッ!」

 

「手づ――! きゃっ!」

 

 

空中を舞う様に飛び出してきた『何か』がライアの装甲を削り、地面に叩き落す。

それに気づいたほむらにも蹴りが飛んできて、彼女もまたエビルダイバーから落下する。

さらに目に入ったのは円形状の刀だ。

チャクラムと言うのか、それはほむらの顔面をスレスレに迫っていた。

すぐに顔を反らすが、バランスを崩す事になり、近くの階段を一気に転げ落ちてしまう。

 

 

「うぅう……ッ!」

 

 

何だ? 倒れていたファム達も必死に状況を把握しようと目を見開く。

まず爆炎から姿を見せる織莉子。彼女もまた無表情で無傷である。

ロケットランチャーの弾は避けたのか? それとも――?

 

 

「ご苦労、ガルドミラージュ」

 

「ええ、助かりました」

 

「………」

 

 

無言で頭を下げるガルドミラージュ。

鳳凰をモチーフにしたモンスターであるが、その美しい緑色の体と展開されている羽を見るに、孔雀も混ざっていると言う事が分かる。

そうだ、孔雀のように広がる翼。そこから見える『陽炎』が答えを示した。

 

ガルドミラージュ。

その能力は『蜃気楼』を作り出すことができると言うもの。ただの蜃気楼ではなく、強力な幻影だ。

オーディンがスキルベントによって未来を視ていた。だからこそガルドミラージュに指示を出し、相応の幻影を生み出したのだ。

 

ガルドミラージュの能力はそれだけではない。

羽から放つ光によって、オーディン達の姿が透明になる。

その流れをスムーズに行い、結果としてはライアペアは幻影を攻撃したのである。

 

 

「どうする織莉子、殺すかい?」

 

「いえ、悪戯に命を奪う必要はありません」

 

 

しかし気になる事もある。

織莉子は笑みを浮かべながら足を進める。

 

 

「クッ!」

 

 

倒れたまま鞭を伸ばすサキ。

伸縮する鞭はすぐに織莉子の足を絡め取った。

しかし織莉子は無言でオラクルを出現させる。彼女に焦りは無い。

その時ナイトが何かをしている様だったが――……。

 

 

「オラクルレイ」

 

 

オラクルから光の剣が生え、足を絡め取っていた鞭を切り裂く。

そしてオーディンが金色の羽をサキに向かって発射した。

サキは落雷を自分の周りに纏わせる魔法を発動して、羽を消し飛ばすが――

 

 

「抵抗は止めたほうがいい」

 

「あぐっ!!」

 

 

ワープしたオーディンはゴルトバイザーでサキの背中を思い切り突いて、動きを封じた。

ファムやライアはダメージが大きく、立ち上がれないと言った様子だ。

その隙に織莉子はかずみの前へとやってくる。

 

 

「ッ!」

 

 

織莉子の目が金色に光った。

どうやら未来を視ている様なのだが――?

 

 

「やはり貴女はおかしい」

 

「っ?」

 

「近くで視れば視るほどに――!」

 

 

かずみの姿が未来では非常にボヤけている。

未来視状態で目の前のかずみを確認しようとすると特にそれが感じられた。

それはまるで彼女の存在が有耶無耶であるかの様に。彼女がそこにいないかの様に。

砂嵐。ジャミング。存在が不確か。こんな事は初めてだ。

まるで、死んでいるように。

 

 

「ッ? これは……、ソウルジェム?」

 

「!」

 

 

織莉子はかずみの耳にあるピアスから魂の輝きが放たれている事を確認した。

問題はそれが両耳に存在しているという事だ。

今まで多くの魔法少女を見てきたが、こんなソウルジェムの形状を持った者はいない。

 

 

「何者ですか、貴女は」

 

「……ッ!」

 

 

唇を動かすだけでかずみは何も答えない。

隠していて黙っているのか、それとも自分でも自覚が無いから黙っているのか。

そしてもう一つ。かずみが絶望の魔女であるからこそ、イレギュラーの気配があるのかだ。

 

 

「お、教えてあげない!」

 

「……ッ」

 

 

かずみは地面を転がって立ち上がると、十字架を振るって織莉子を攻撃する。

しかし織莉子はちゃんとオラクルを防御に回しており、無数の球体が十字架をしっかりと受け止めて見せる。

 

 

「だったら――ッ!!」

 

 

かずみの十字架が変形。

分離して剣に変わると、二刀流となって攻撃を仕掛ける。

しかしコレもオラクルのスピードには勝てず、しっかりと織莉子はガードを行っていた。

 

 

「シビュラ!!」

 

「!」

 

 

かずみの背後から無数の小型十字架達が回転しながら織莉子を狙う。

だが所詮は劣化版である事には変わりない。

オラクルよりも強度が弱く、ぶつかり合うと、シビュラが先に壊れていく。

 

 

「ブレイドサトゥルヌス」

 

 

織莉子が魔法名を呼称すると、オラクルが黄土色に変わり、球体の回りに『輪』が出現する。

輪は高速回転を始め、全てのオラクルに回転するブレードが付与された。

まるでそれは土星のようだ。オラクルは加速し、かずみを取り囲んでいく。

 

 

「う――ッ!」

 

 

かずみはマントを広げて防御の構えを取った。

同時に立ち上がる音と、走り出す音が。

 

 

「ハァァァァ!!」

 

 

ナイトがダークバイザーとウイングウォールを装備して織莉子に向かう。

パートナーの危機に反応したと言う事なのだろうか?

しかしそれはオーディンも同じだ。サキを蹴り飛ばすと、ワープを行ってナイトの前にやってくる。その手にはゴルトセイバー。二刀流に構えた剣が、ナイトの剣と真っ向からぶつかり合う。

 

 

「遅い!」

 

「へぇ。やるじゃないか」

 

 

剣の腕前はナイトの方が上だった。

ダークバイザーが二本の剣に引けを取らない動きを見せる。

右から、左から、そして真下から。オーディンがの剣を振るっても、ナイトは蹴りやマントを翻して、的確にガードを行っていく。

 

しかしこれは殺し合いだ。

いつまでも正々堂々と真正面から剣を振るう訳も無い。

オーディンはワープを行うと、ナイトから距離を取り黄金の羽を噴射させる。

 

 

「クッ!」

 

 

ナイトはマントを翻して風を発生させる。こうする事で羽は吹き飛ばされることに。

かずみにもオラクルが命中していくが、マントの強度はそれなりにあるようで、攻撃を耐える事はできているようだ。

 

 

「でも甘いな、君は」

 

「!」

 

 

どうしても羽やオラクルに気を取られてしまう。

だからこそオーディンはワープでナイトの背後を取る。

ゴルトセイバーを一旦解除すると、代わりにゴルトバイザーを手にした。

巨大な杖であるゴルトバイザーは、槍やメイスとしても機能できる。

その大きな杖を振るい、ナイトの足を払って地面へ倒した。

マントの防御範囲は優秀なものだが、足元までは守れない。

 

 

「ぐッ!」

 

「フッ、終わりだね」

 

 

倒れたナイトの脚に向かって思い切りバイザーを突き入れるオーディン。

機能停止させようと考えたのだろう。その考えは非常に素晴らしいものだ。

現にナイトはもう立てない程のダメージを受けている。

だが――!

 

 

「!?」

 

 

ナイトの身体が粉々に砕け散り、その破片が弾丸となってオーディンの装甲を傷つける。

何だ? オーディンが怯むと同時に、空中から飛翔してくる四人のナイト。

 

 

「成程――ッ!」

 

「覚悟しろ!」

 

 

未来予知(スキルベント)を切っていた為に気が付かなかった。

どうやらナイトは分身ができるトリックベントを使用していた様だ。

分身とは言え質量を持っており、さらに一定の攻撃を受けて破壊された後は破片を斬撃の弾丸として使用できるかを選択できる。

 

なかなか優秀なカードといえるだろう。

しかし分身ならばコチラも負けてはいない。

オーディンは一旦ナイトから距離をとると。待機していたガルドミラージュに合図を出す。

 

 

「………」

 

 

同じくオーディンの元へ移動した織莉子。

それを見て、ガルドミラージュは二人の前に立ち、羽を展開させる。

孔雀の様に翼が広がり、そこから光の粒子が発射されて陽炎が巻き起こる。

特殊な蜃気楼は、オーディンと織莉子の分身を無数に作り出してみせた。

この分身はナイトと違って攻撃を直接行う事はできないが、行動の全てに分身の効果が発生する。

 

つまり、無数に増えたオーディンが羽を発射すれば、それだけフェイクの羽も発射されると言うことだ。視界を埋め尽くす黄金の羽。どこをガードすればいいのか、果たしてナイトには理解できるのだろうか?

 

 

「ダークウイング!」『ナスティベント』

 

 

飛翔してくるダークウイング。

すぐにソニックブレイカーを発動して空間を振動させた。

すると幻影を作り出していた蜃気楼が揺らぎ、オーディンの分身が不安定な形に歪む。

 

 

「もら――ッ! た!!」

 

「ッ!」

 

 

ナイトは本体のオーディンを目視。そこへ渾身の突きを繰り出した。

オーディンもソニックブレイカーに怯んでいたか、突きをまともに受けてしまった。

初めてオーディンの鎧から大きな火花が散っていく。

 

このチャンスは逃せない。

ナイトは己に宿る力を全て剣に乗せ、切りまくる。

縦に、横に、そして斜めに振るうダークバイザー。

黒い閃光がオーディンの美しい鎧を抉らんとばかりの勢いで刻まれていく!

 

 

「……ッ!」

 

 

頭を抑え膝をつく織莉子と、主人の危険に地面を蹴るガルドミラージュ。

チャクラムを構えてナイトを狙う。しかしそこへ飛んでくるのはダークウイングだ。

尻尾についているウイングランサーでガルドミラージュを突き、動きを鈍らせる。

 

 

「チッ!」

 

 

アシストは期待できない。

オーディンは隙を見てナイトの剣を手で弾くと、ワープを発動。

だがその瞬間ナイトは地面を踏み込んで、自らの背後を思い切り突いた。

 

 

「あ――ッ! グあッ!! 何故!?」

 

「勘だ!」

 

 

ダークバイザーが突き刺さるのはオーディンの鎧。

ナイトは度重なるワープを見て、攻撃時には背後に現れる事を観察していた。

山勘ではあったが、功を奏したと言う事だろう。

 

 

「ッ! オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

さらに、サキに巨大な落雷が落ちる。

イルフラース。雷の翼を広げてサキは一気にオーディンの目の前まで移動を行う。

オーディンは防御にと瞬間移動を行うが、今のサキのスペックならばオーディンが現れるのを確認してからその場所へ攻撃を行うなど容易い事だった。

 

 

「!」

 

 

サキの雷を纏った拳がオーディンの鎧を捉える。

そのまま目では確認できない速さで拳を打ち付けていくサキ。

サキもオーディンの危険性は理解している。拳を全力を打ち込むことに。

 

 

「かずみ!」『ファイナルベント』

 

「う、うん!」『ユニオン』『ファイナルベント』

 

 

ダークバイザーに激しい風が纏わりつく。

そのままナイトは、怯んでいるオーディンに向けて剣を思い切り縦に振った。

 

 

「疾風――ッ!!」

 

「クッ!」

 

 

巨大な鎌鼬がオーディンを捉える。

両手を盾にして攻撃を防ぐオーディンだが、まだナイト達のファイナルベントは終わっていない。

風の斬撃を耐えるオーディンの背後では、同じく風を纏った十字架を横に振るうかずみが。

 

 

「十字星!!」

 

「!」

 

 

ナイトが発射した振り下ろしの斬撃。

かずみが発射した切り払いの斬撃がオーディンにぶつかり合う。

背中からの攻撃には対処できなかったか、オーディンは風の十字架の直撃を許してしまう。

ナイトは続けざまにデッキから自身の紋章が刻まれたカードを抜き取った。

 

 

「終わりだ!」『ファイナルベント』

 

 

ガルドミラージュを弾き飛ばして猛スピードでナイトへ装備されるダークウイング。

そのまま地面を蹴って空に舞い上がる。

そう、連続ファイナルベントの使用。ナイトとしてもオーディンはココで倒しておきたかった。

だからこそ全力で潰しにかかる。

 

 

「……ッ!」

 

 

十字架を構えるかずみ。

ココでナイトのアシストを行うべきだ。

そう、ココでリーミティエステールニを放てばオーディンは確実に倒せる。

倒せる? それは違う。それは都合の良い言葉だ。

 

 

「――ゥッ!」

 

 

サキを見ればイルフラースが解除されて倒れる姿が見えた。

 

 

「ッッ」

 

 

かずみの持っていた十字架の先端が光を放つ。

しかし光を放つだけで、そこから先に進む事はなかった。

良心の葛藤。殺す事に対して覚悟を決めた筈だったが、やはり……。

 

 

「タァアアアアアアアアアア!!」

 

「グッ! ガアアアアアアアアアア!!」

 

 

疾風斬がオーディンを捉えた。

とはいえ変身を解除させるには至らなかったが、オーディンは勢いよく転がっていき動かなくなった。複合ファイナルベントに加えてのファイナルベント。

これでもうオーディンの機能は停止させたも同然だ。

 

 

「どうする? まだやるか!?」

 

「………」

 

 

少し、不気味な点がある。

何故織莉子はあんなにも冷静なのだろうか?

それにガルドミラージュでさえ、どこかまだ力を抜いている様な印象がある。

杞憂か? いや、織莉子の実力であればオラクルで邪魔くらいはできた筈。

それなのにあろう事かノーモーションを貫いた。この意図とは?

 

 

「フフ……」

 

「!」

 

 

織莉子は口を手にあて怪しく、妖艶に、黒い笑みを浮かべた。

 

 

「遊びすぎですわ、オーディン」

 

「!?」

 

 

ナイトは背中に寒いものを感じて背後を振り返った。

倒れているオーディン。しかしその前にはしっかりと浮遊しているゴルトバイザーが存在しているではないか。

どうやら本人の意思だけで動かせるようだ。

さらにオーディンのデッキから自動でカードが抜き取られると、そのままカードは意思を持ったようにバイザーへセットされていく。

 

 

『タイムベント』

 

「!」

 

 

時計の音が響き渡る。

そしてみるみるオーディンの装甲に刻まれていた傷が消えていくじゃないか。

そして同時に眩い光が放たれて――

 

 

「ぐっ!」

 

「フフフ、申し訳ない。ちょっとした余興だと思ってくれ」

 

 

気が付けばナイトの腹部にゴルトバイザーの先端が突き入れられていた。

貫通はしていないが、その衝撃にナイトは言葉を失い思考を停止する。

目の前には完全に無傷となったオーディンが立っていた。

 

 

「なッ、何故だ!」

 

 

あれだけダメージを与えたのに、まるで戦う前と変わっていないじゃないか。

 

 

「まさか――ッ!」

 

「そう。僕のタイムベントの効果は、自分の時間を操作できる」

 

 

だからオーディンは傷を負う前の自分に巻き戻った。

しかし所詮は戻しただけだ。いずれ時間が経過すれば受けたダメージは再生され、辻褄合わせが行われる。

しかしオーディンにはその未来を変える事が可能なのだ。

傷はナイトやサキに負わされた物。では、その傷つけた者達が戦えない状態にあるならばどうだろうか?

 

戦えない者はオーディンの鎧を傷つける事など不可能。

よって未来はその異変にあわせた結果を齎してくれる。

世界を騙すのだ。いや、認識させるのだ。オーディンの勝利は絶対だと。

未来が過去を変えるのだ。

 

 

「厄介な――ッ!」『トリックベント』

 

 

ライアは素早くカードを発動する。

だがそれはオーディンも同じだ。

 

 

「消えるがいい」『ファイナルベント』

 

「フフフ……!」『ユニオン』『ファイナルベント』

 

 

燃えるように揺らめく光を纏った不死鳥、ゴルトフェニックスが姿を現す。

その凄まじいエネルギーに誰もが言葉を失っていた。ゴルトフェニックスは織莉子と融合を果たし、オーディンも光となって織莉子のオラクル達に力を与えていく。

卵となったオラクル。そこからは次々に不死鳥が孵り、翼を広げていく。

 

 

「行け」

 

 

織莉子は不死鳥の群れを発射する。

鳴き声が聞こえ、次々に悲鳴も重なった。

もはや防御など意味を成さない。っと言う間に世界は光に染め上げられる。

インフィニティフェザー。不死鳥の突進を受けて、騎士達は変身が解除されて転がっていく。

 

 

「そうそう、一人忘れていました」

 

 

織莉子は階段の下にいるほむらに向かっても一羽の不死鳥を向かわせた。

直接確認はせずとも、巻き起こる光で着弾は確認できた。

 

 

「う――ッ! ぐ……!」

 

 

蓮、手塚、美穂の三人はデッキを破壊されており、24時間後でなければ変身ができない。

かずみやサキもぐったりとして動いていない。

全員死んではないが、もはや立つことも難しいようだ。

 

 

「失礼、あなた達は邪魔だったもので」

 

 

織莉子、オーディン、ガルドミラージュは同時にグリーフシードを一つずつ取り出して適当な場所に投げた。

 

 

「グリーフシードは傷つけてしまったお詫びの品だと思ってください」

 

 

命を奪う事は良しとしない。

しかし邪魔な存在は排除しなければならない。

これはゲーム故に当然の事だと織莉子は涼しい顔で言う。

 

 

「織莉子。もう誰も聞いてない」

 

「おや、これは失礼しました」

 

 

織莉子達は完全に意識を失った一同を確認していた。

しかしただ一人、変身すら解除していない者が。

 

 

「さて、安心してください」

 

「――ッ」

 

 

不死鳥はタイガを狙わなかった。

しかし二人の圧倒的な力を見て、タイガはへたり込んでいる。

 

 

「大丈夫。大丈夫ですよ東條さん」

 

 

優しく微笑む織莉子。

周りには気絶している参加者がいる中で、随分とまあ不釣合いな笑顔ではあったが。

 

 

「な、なに?」

 

「いえ、私は貴方の夢を応援したいんです」

 

「???」

 

「今から行うのは一人の英雄の話です」

 

「!」

 

「東條さん。貴方は英雄になれる資格を持っているのです!」

 

「え?」

 

「ある人は言いました――」

 

 

織莉子の言葉を聞いて、東條は仮面の奥で目を見開く。

 

 

「詳しい話は場所を移動してから」

 

 

織莉子はそう言うと、倒れた参加者に目もくれず移動を開始する。

タイガとしても手塚たちが気になる所ではあるが、織莉子に言われた英雄になれる資格と言うのが何よりも気になってしまった。

だから織莉子の後をついていく。

 

 

「………」

 

 

織莉子たちがいなくなった後、階段の下でほむらがゆっくりと立ち上がる。

例外なく不死鳥の一撃を受けてはいたが、その直前にライアがトリックベントを発動してくれた。

相手の攻撃を無効化するスケイプジョーカー。そのおかげで無傷だったと言うことだ。

 

 

「――ッ」

 

 

階段をあがると、予想していたが皆が倒れている。

それに聞こえたのは、先ほど織莉子が東條に言った言葉だ。

嫌な予感がする。ほむらは歯を食い縛って、手塚の肩を揺すり始めた。

 

 

 

 

 






佐倉桃子ってオリジナルです。
原作じゃモモだけだったんですけど、あだ名ぽかったんで。
まあ杏子なら桃子かな、みたいな。

でも考えてみたらさくらももこって、まるちゃ――
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