仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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第48話 生きる るき生 話84第

 

 

 

「謝罪は――、よそう。あまりにも言葉が薄くなる」

 

「だったら――ッ! あ……、いや」

 

 

あれだけ街を赤く照らしてた夕日も、もう空の向こうへと消えてしまった。

オレンジと紫の層がつくる空を見ながら、二人は近くの公園で話をする事に。

戦いを止める為にまどかを殺す。普段の真司なら、手塚の胸倉を掴んで激高していただろう。

だが今、蓮の事があり、さらに色々とショッキングな出来事が重なっていた為、真司はとても疲れていた。

 

手塚が正しいとは絶対に思わない。

しかし、手塚の行動を否定する権利が無い。

偉そうな事をいくら叫ぼうが、何も出来ていない真司では全く響かないはずだ。

 

 

「手塚。はじめに言いたいんだけどさ」

 

「ああ」

 

 

少しだけ間があく。

 

 

「俺はやっぱり……。うん、色々な事に迷ってるけど、まどかちゃんは死なせたくない」

 

「それは、世界を犠牲にしてもか?」

 

「決まってる訳じゃないだろ」

 

 

確実な話ではない。それが真司の唯一の希望だといってもいい。

ワルプルギスを倒して、魔法少女の呪いからまどかを解放させれば、可能性はずっと低くなる。

たとえその後にキュゥべえが彼女を狙ってきたとしても、そしたら全力で守ればいい。

 

 

「考え直せよ手塚! まどかちゃんが死んでいい訳ないだろ!」

 

「………」

 

「ほむらちゃんだって、きっとショックを受けてる!」

 

「悪いが――」

 

 

悪いがそれはできない、手塚は確かにそう言った。

 

 

「分かってる。分かってるけど! それは綺麗事かもしれないけど! やっぱりそれが一番良いだろ!?」

 

「確かに、俺としても鹿目を殺すのは一番良い方法ではないと思う。それに身勝手だとも」

 

 

だから手塚はココに来た。

真司が自分を許せず、その怒りを戦いと言う物に乗せたいなら、今すぐライアになって受けて立つと。

 

 

「もちろん負けるつもりもないが」

 

「なんでそうなるんだよ! 戦う以外にも、戦いを止める方法なんていくらでも――ッ! あるだろ……!」

 

 

言葉が詰まる。最後まで上手く言えない。

その方法がいくらでもあるのなら、今こうして悩んでいない。

手塚は思う。迷っているのはお互い同じだ。だがそれでも、時間は進んでいく。

真司はまだそこから目を背けている。それじゃあダメなんだ。

 

 

斉藤(さいとう)雄一(ゆういち)

 

「っ?」

 

 

唐突に手塚の口から出た名前。

 

 

「俺の友人だった。親友だったんだ」

 

「――ッ」

 

 

真司にとっての、蓮や美穂だ。

 

 

「ピアノをやってた。昔は神童だなんて、持て囃されてた」

 

 

限定的な物だが、音楽会社と契約してCDまで出していた。

しかも中学生でだ。手塚は自分の事ではないのに、少しだけ自慢げに語る。

 

 

「今ではプレミアとされてるんだ。凄いだろ?」

 

「う、うん」

 

 

手塚は口を吊り上げたまま、真司にそれを告げていく。

思い出に浸る様に、懐かしさを憂い、そしてそこにある悲しみを噛み締める。

 

 

「アイツは凄いヤツだったよ」

 

 

自分よりも早く夢を持ち、自分よりも大きな才能を手にし、自分よりも明るく尊敬できた人間。

出会いなど、何の事は無い、幼稚園だか小学校だか、もうそれこそ忘れてしまう程に普通である。

しかし友情には劇的な出会いや、思い出など必要ない。

ただ単純に気が合っただけで十分ではないか。

 

 

「アイツは俺の親友で、凄いヤツだった。俺なんかよりもずっと……」

 

 

その一言は真司に言ったのではなく、自分自身にに言い聞かせたように感じる。

 

 

「その雄一って人が、手塚の戦う理由なのか?」

 

「………」

 

 

手塚は無言で頷いた。そしてゆっくりと口を開く。

そこにはやはり躊躇と迷いがある様に感じた。もしかしたら手塚はまだ――。

 

 

「雄一は死んだ。俺の目の前で」

 

「!」

 

「アイツは言ったんだ。家族を。大切な者がいるこの世界を絶対に守ってほしいと」

 

「じゃあ――」

 

「ああ、そうだな。俺はアイツとの約束を守りたいんだ」

 

 

それは手塚海之として、雄一の友人としてだ。

真司はその言葉を聞いて、怒りや不安で膨張していた心が針で刺された様に萎んでいくのを感じた。

まだ納得をしている訳ではないが、今の状況と少しリンクした物を感じる。

手塚もまた、友人の事で色々と抱えていたのだろう。

 

 

「秋山も戦う覚悟を決めたんだろう?」

 

「ど、どうしてそれを!?」

 

 

蓮は手塚にもメールを送っていたのだろうか?

真司は慌てたように手塚へ視線を移す。すると手塚は小さく唇を吊り上げた。

驚いている真司の表情が面白かったのか。それとも分かりやすい彼の性質を笑ったのかは知らないが。

 

 

「占いで何となくな。でも、今の態度で分かったよ」

 

「なっ!」

 

「やはり俺の占いは、当たる。あまり感情を表に出しすぎると損をするぞ」

 

 

手塚はうな垂れ、地面を見る。

 

 

「答えを出すのは、難しい事だ」

 

「………」

 

「秋山も迷い、いや――、今もまだ迷っているのかもしれない」

 

 

しかし答えを出さなければ失われてしまう物がある。

それが大切であれば大切であるほど、迷いも霧の様に深くなる。

だがそれでも答えを出さなければならないジレンマ。

押し潰されそうになったろう、でも押し潰されてはいけない。

何故か? 簡単だ、背負う物があったからこそ。

 

 

「俺は約束を守る。だから今まで戦ってきた」

 

 

雄一の想いを、手塚は託された。

手塚の心の中には、もう一人の人間の意志がある。

親友の想いがライアのデッキには存在しているのだ。

だからこそ手塚は答えを出さなければならなかった。

 

 

「結局、俺も逃げ続けていただけなのかもしれない……」

 

「っ」

 

「アイツとの約束の為にも、鹿目まどかは大きすぎる障害なんだ」

 

「そんな言い方――ッッ!」

 

「ならアンタには! 鹿目まどかを絶対、絶望の魔女にしないと約束できるのかッ?」

 

「ッッ!」

 

 

珍しく声を荒げる手塚。それだけ余裕が無いという事なのだろう。

そうだ、そんな事はできないのだ。

滅んでからでは全てが遅い。手塚には約束がある。だから、だからこそ――!

 

 

「俺は鹿目まどかを殺すと決めた――ッ! たとえそれが、歪な運命の上に成り立つ安定だったとしてもだ」

 

 

約束ががある。

それは暁美ほむらと同じく、ただ友の為に。

 

 

「手塚……ッ! 俺は、俺は絶対に認めない!」

 

「なら足掻け。運命に抗って見せろ!」

 

 

手塚は立ち上がり、真司に背を向ける。

決別が分かっている以上、双方ココで戦う事もできた。

いやむしろ手塚としては其方の方が楽であり、好都合だったろう。

しかし真司の心にある、迷いの炎の揺らめきを感じたのも事実だ。

よって手塚は戦う場所がここではないと悟る。

 

 

「明後日には確実に織莉子は動く。俺もそれを止める気は無い」

 

 

織莉子が手塚の申し出を断らなかったのは、その期間内にまどかが絶望する事は無いからだ。

そして都合のいい未来が見えているからに他ならない。

つまり鹿目まどかは、このまま進めば確実に死ぬ。だから織莉子は何も言わない。

だが彼は占い師。運命を変更するアドバイスを一つ。

 

 

「城戸真司。運命を変えたいのならば、抗い続けろ」

 

「!」

 

「たとえ悲しみの炎に身を焼かれようが、たとえ絶望の剣に心を刺し貫かれても、変えたい世界があるのならば命の炎を燃やし続けろ」

 

 

きっと真司には多くの苦しみが待っている。巨大な絶望が待っている。

しかしそれを受け入れ、同時に否定する事ができれば、世界は彼にひれ伏すだろう。

だからこそ城戸真司は諦めてはいけない。救えない苦しみ、守れない辛さ、変えられない現実に押し潰されても、どんなに苦痛を与えられても心を生かす事。

それができるのなら、きっと――……。

 

 

「いつだって……、運命に喰われるかどうかは自分次第なんだ」

 

 

手塚は真司がそれができるかもしれないと見抜いたから、言葉を投げた。

占い師を目指す上で、人を見る目は養ってきたと自負している。

手塚視点、城戸真司には他の人間とは違う『可能性』がある様に思えた。

 

それは良い物なのか、悪いものなのかは分からない。

しかしそれは秘めた力だ。活かすも殺すも真司次第。

きっと手塚は、どこかで期待しているのだろう。尤もそんな希望を待ち続ける程の余裕が無いからこうなっているのだけれど。

 

 

「じゃあな。邪魔をするなら、アンタも殺すぜ」

 

「手塚……ッ! 俺は、俺は――ッッ!!」

 

 

真司は闇に溶けていく手塚の姿を見て、拳を握り締めるだけしかできなかった。

まどかの事も、手塚の事も、蓮の事も、ましてゲームの事も。

答えは本当にでるのか? 不安。自分に何ができるのか?

疑問。結局自分はただ迷い、ボウっと立っているだけ?

 

怒り。

 

手塚は言った。諦めるなと、抗い続けろと。

できるんだろうか? 何も答えが出せず、泊まっているBOKUジャーナルに戻る時に、真司はやけに自分がみすぼらしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっせぇ」

 

「は?」

 

「だから遅いわよ。馬鹿」

 

 

真司がBOKUジャーナルに戻ると、入り口では美穂がしゃがみ込んでムスっとしていた。

 

 

「ダルかったわ」

 

 

美穂は唸り声を上げながら立ち上がると、大きく伸びを行う。

 

 

「ずっと待ってたのか?」

 

「うん。携帯の充電切れちゃって。わざわざコンビニで買うのもアレだし」

 

「あ、そう……」

 

「くぁー! ちょっとやだ、どうしたの? 美穂ちゃんが来たのに反応薄いわよ!」

 

 

髪をかき上げて胸を突き出す美穂。

いつもの真司なら何かしらのリアクションを返してくれるのだが、今はそんな元気など無いようだ。

小さくため息をつくと、「嬉しい嬉しい」と投げやりに返すだけ。

 

 

「って言うか、何で来たんだよ」

 

「女が男に会いにくるのに理由なんていらないわ! そこに愛があれば――!」

 

「はいはい。まあ、入るか?」

 

「……真司、そういう所だぞ」

 

 

美穂は腰に手を当てて、ヤレヤレと言った表情でため息をついた。

 

 

 

 

 

 

ボリボリ。

 

 

「「………」」

 

 

パリパリ。

 

 

「「………」」

 

 

ポリポリ。

 

 

「「………」」

 

 

バリバリ。

 

 

「「………」」

 

 

暴徒達に家を燃やされた真司は編集長のご厚意でBOKUジャーナルに住まわせてもらっている。部屋の明かりや水はなるべく節約する様に言われている。

よって真司と美穂は、蛍光灯一本で照らされた中、向かい合ってお茶を飲んでいた。

小さい冷蔵庫にたまたまあった漬物盛り合わせをお茶請けにして。

 

しかし薄暗い室内。さらにテンションが冷め切っている真司。

美穂も感化されたのか、無言になってしまう。

なので部屋には先ほどからお茶をすする音と、漬物を齧る音しか聞こえてこない。

 

 

「ねえ真司。私今なら、倦怠期の夫婦の気持ちがよく分かる」

 

「な、なんだよソレ……」

 

 

美穂はジットリとした目で真司を見ていた。

 

 

「そんなんじゃねーのよ美穂さんが期待しているリアクションは」

 

「仕方ないだろ。疲れてるんだよ、俺だって」

 

「はぁ、出た。なんかアンタって一発ヤるまでは張り切ってるけど、終わったらもうどうでもいいってタイプ?」

 

「ブゥウウウウウウッッ!!」

 

 

流石にコレは。

真司は口に含んでいたお茶を吹き出すと、真っ赤になって否定を行う。

 

 

「なななな何言ってんだよお前! 最低だぞ!!」

 

「……最低はお前だよ」

 

 

美穂はベタベタになった顔をおしぼりで乱暴に拭いていく。

口をパクパクとさせる真司だが、そこでふと思う。

 

 

「なんか嫌なデジャブを感じるぞ……! 前にもしてないか? こんな会話」

 

「は!? デジャブ!? ッてことはアンタ私以外の女ともこんな会話してんの!? 最低! 浮気物!!」

 

「な、なに言ってんだよ! お前とだけに決まってるだろ!」

 

 

いや待て! 逆に何言ってんだ!?

真司と美穂はお互いに訳が分からなくなって、手をブンブンと振り払う。

良くも悪くも変な風にテンションが上がってしまった。二人は呼吸を落ち着かせると、一旦また沈黙を。

 

 

「ハァ」

 

 

美穂は真面目な表情に戻り、会話をゲームの事へ移す。

 

 

「どこ行ってたのよ、今日」

 

「北岡さんの所だよ」

 

 

真司は北岡の事情を話す。

あまりこういう事を他人に言うのは褒められた物ではないが、もちろんコレは美穂を信用しての事だ。なんだかんだと言いつつ、やはり真司にとって蓮と美穂は特別だ。頭一つ抜けている信頼感があるのだろう。

 

 

「ふーん、大変なんだね。いろいろみんな」

 

「ああ、だよな……。みんな本当に大変なんだ」

 

 

だから戦う。

だから願いを叶えたい。

 

 

「分からないんだよ、俺……」

 

「うん」

 

「まどかちゃんを守りたいのに。でも、蓮の願いを叶えてやりたいって思いもある。手塚だって、北岡さんだって」

 

「それは無理よ」

 

「そう。無理なんだ。ワルプルギスを倒しては叶えられる願いは一つしかない」

 

 

じゃあ蓮を最後の一組にしてやるのか?

駄目だ、まどかを見捨てる事はできない。

それに真司だって死にたくないとは思ってる。

 

 

「………」

 

 

弱気な真司を見て、美穂フムと唸る。

 

 

「真司はさ、一番最初から"戦いを止めよう"って言ってたよね?」

 

「え?」

 

「今でも、そうでしょ?」

 

「それは、まあ。迷ってるけど……」

 

 

参加者同士で戦うのは間違っている。

だから戦いを止めようと真司は口にして、協力派として動いてきた。

 

 

「それってさ、何で?」

 

「は?」

 

「普通、ゲームに乗る方を考えるよね?」

 

 

確かに人を殺すのはいけない事だ。

しかしゲームと言う社会のルールに縛らず、かつ願いが叶うと言う大きな餌を見せられれば、心がブレるなと言う方が難しいのではないだろうか?

 

誰だって人を殺す事をリアルな物と捉えず。

かつ願いが叶えば、その罪悪感に包まれた記憶を消す事もできるのだ。

殺した参加者の死体だって、ましてや存在だって消える。

周りの人間の記憶からも完全に消えるのだ。

 

つまりF・Gは多人数が生き残る道はあれど、とにかく殺し合いに特化したルールと環境が整っている。騎士に選ばれた者も、魔法少女に選ばれた者も。何かしら大きな物を背負っていたり、腹に一物を抱えている物だ。

もちろんそれ等もまた、殺し合いを助長する一環と言えばいいか。

 

 

「私も正直、結構揺れてた」

 

 

急に非日常に突き落とされ、不安と絶望と隣り合わせ。

周りが何を言っても否定的に捉えてしまい、感情はマイナスの要素だけを膨らませていく。

好意は悪意に感じ、かと言って放置されれば、誰も自分を気にかけてくれないと怒りが出てくる。

 

 

「前に言ったよね、まどかちゃんに嫉妬してたって」

 

「あ、ああ」

 

「殺したかった。ハッキリ言って」

 

「――ッッ」

 

 

たとえば自分を助けてくれると言った真司の注意を引いていた事だったり。

たとえば気の弱い子と言う印象だったのに、自分には無い強さを幾つも持っていたり。

些細な劣等感や、普段ならば絶対に感じない嫉妬が生まれ、それらは全て憎悪に変わり、『ゲームに乗ってもいいかな』なんて思わせてしまう。

 

それは美穂が弱いと言う訳ではなく。

ある種当たり前と言ってもいいかもしれない。

人は皆が強い訳ではない。誰もが持つ心の弱さにつけ込む因子が、F・Gには多々あった。

ユウリが変身魔法を利用して美穂に近づいた面もあったが、全ては心の弱さを刺激された行為だ。

 

 

「でも今は違う」

 

「美穂……」

 

「私はまどかちゃんを心の底から守りたいと思うし、サキだってそう」

 

 

誰も犠牲にしたくは無い。

つまり、今の美穂は真司と同じ志を持っている。

 

 

「でも、最初はそう思えなかった」

 

 

色々な過程があって、今の霧島美穂がいるのだ。

しかし真司は最初から戦いを否定していた。ゲームを否定していた。

それは考えてみれば凄い事なのではないだろうか?

美穂は真司の意思を貫く強さを、ヒシヒシと感じていたのだ。

 

 

「違う。俺は最初から背負う物とか無かっただけで……」

 

「私も別に無かった」

 

「嘘つけ、お姉さんの事とか色々あったろ」

 

「まあ確かにお姉ちゃんを生き返らせたいって想いはあるにはあったけど……」

 

 

でも美穂は姉の死を受け入れていた。

姉には申し訳ないが、死は受け入れれば慣れる物だ。

そりゃ生き返れば嬉しいが、姉はもしかしたら生き返りたくないかもしれない。

そう思えば、なんだか特別な理由にはならない気がしてきた。

 

 

「だいたい世の中に何人身内を亡くしたヤツがいると思ってんのよ。テレビでもやってるでしょ? まだ小さな子供が死んだ人だっている」

 

「それはそうだけど」

 

「お前だって、尊敬してたお祖母ちゃんが亡くなって悲しいとか言ってたじゃん。蘇らせようとは思わなかったの?」

 

 

真司は田舎の祖母を思い出す。

随分、影響されたとも思う。

まあ詳しい話は彼らしか知らぬ事なのだろうが。

 

 

「祖母ちゃんは十分生きたって言ってたし」

「ま、そうだよね」

 

 

美穂はホラねとジェスチャーを取る。

要は誰もが色々あると言われればそうなんだ。

でも何かしら自分にいい訳だのケジメだのをつけて暮らしてる。

でもそれ等がF・Gにおいてはある程度の起爆剤になろうとする。

誰もが持っている心にある『何か』が、戦う理由になろうとして暴れだす。

 

 

「でも何だかんだとアンタはゲームの否定を、綺麗事を貫いた」

 

「………」

 

「それってやっぱ、すっごい事だと私は思うけど?」

 

 

綺麗事――、そう綺麗事だ。

他の何かを抱えている参加者にとっては、真司の抱える理想は目障りで、何にも分かってないヤツだと怒りを買うかもしれない。

しかし綺麗事と言う言葉が意味する通り、戦いを止めようと言う意思は綺麗なのだ。

 

 

「汚いよりは、よっぽどいいわよ! なぁ?」

 

「美穂……」

 

 

ケラケラと笑う美穂。

真司は緊張が解けたように少し笑みを浮かべた。

 

 

「皆が真司の言う綺麗事を下らないって蔑むのは、きっとソイツ自身が自分の取ろうとする行動に自信がないからよ。心のどこかで間違っているとか、汚いとか思ってるのよ」

 

 

誰だって綺麗が良いに決まってる。

でも綺麗なままじゃ掴み取れない物がある。

F・Gと言う汚い汚い泥の中に、何よりも光る物があるのだから。

まあ純粋に浅倉あたりは汚いことが普通と思ってそうだが、真司が目障りなのは、明確に感じる眩しさがあるからだろう。

 

 

「まあそこら辺は各々で色々あるとは思うけどさ。とにかく、私はアンタの事、凄いと思うけどね」

 

 

一番難しくて、一番綺麗で、一番愚かな選択肢を選び続けてる真司が本当に尊敬できる。

それは賢い選択ではないのかもしれないけれど、美穂は間違っているとは思わなかった。

真司はそれを聞くと彼女に礼を言う。しかし今は胸を張って同じことは言えない、状況は少しずつ悪くなっている気がしてならないからだ。

何も考えず、ただ純粋に戦う事が間違っていると思っていた自分は、もういない気がする。

 

 

「何て言うか――、俺はただ、馬鹿なだけだったのかも」

 

「っ!!」

 

 

その時、美穂は何故かニンマリ笑うとバチンと指を鳴らす。

嬉々とした表情は、まるでその言葉を待ってましたと言わんばかりに見える。

なんだ? 真司は嬉しそうな美穂を見て呆気に取られてしまった。

 

 

「そう! そうなんだよ真司ッ!」

 

「はぁ!?」

 

「やっと気づいた! いい? よく聴いてよ!」

 

「お、おう」

 

 

なんだ? なんなんだ? 真司は目を丸くして固まってしまう。

一方で美穂さんは大きく息をすって、真司を強く指差した。

先ほどのしんみりした様子ではなく、なんだか普段の――、と言うか何も考えず馬鹿みたいに笑っていた学生時代の美穂に見えた。

 

 

「城戸真司くん! 君は――!」

 

「お、俺は?」

 

「君は――ッッ!!」

 

 

美穂は一旦、何も言わずに口パクだけで文字を一つずつ表していく。

何を言いたいのか分からない。とりあえず口の動きだけは注目しておく。

 

 

『あ』

 

『あ』

 

『あ』

 

『お』

 

 

(あああお……?)

 

 

もちろんア行だけではないだろうから、母音が示す通りなのだろうが、サッパリ分からない。

 

 

「なんだよ、教えてくれよ」

 

「知りたい?」

 

「もったいぶんなって。知りたい知りたい、教えてくれ」

 

「じゃあ言ってあげる!」

 

 

美穂は両手を真司の肩においてニンマリと笑った。

 

 

「馬鹿なの!」

 

「………」

 

 

は?

 

 

「だから! 真司くんは、お・ば・か! なのッッ!!」

 

「な、なんだそりゃ! ふッざけんな!!」

 

 

真司が怒って手を払いのけると、美穂はケラケラ笑って腹を押さえていた。

彼女は真司にはもう一つ大きな武器があると言う。

それは他の参加者とは大きく違う、何よりの武器なんだと。

 

 

「それはアンタが馬鹿な所だよ!」

 

「お前……、すっごく酷いな」

 

「馬鹿言えよ、いや馬鹿なのか! あ、いや違う違う、だから――!」

 

 

普通、まともなオツムをしているヤツならば、戦いを止めようと最初から今日までは思わない。

それでも理由を貫くのならば、それは大きく分けて三つの理由があると美穂は言った。

一つは明確な理由がある言う場合。美穂も詳しくは知らないが、手塚はそれに入るのだろう。

 

もう一つは本当に強い意思があっての事だ。

コレはまどかが該当すると美穂は言った。

優しさと言う強さ、その道のりは厳しい物ではあるが、自らの正しさを信じて彼女は戦いを拒む。

それが茨の道と知りつつも。

 

 

「んで最後、純粋な馬鹿」

 

「………」

 

「ソレ、オマエ。オマエ、バカ」

 

「何で片言なんだよ……!」

 

 

落ち着けと美穂は言う。

自分がバカだと、真司自身が言ったんじゃないか。

これは決してバカにしている訳じゃないのだ。誤解がある。美穂はフフンと自信げに笑った。

 

 

「アンタの強さは馬鹿だって事! それを誇りに思え、自信に変えろよ!」

 

「……いや、意味が分かんないんだけど」

 

「そりゃそうよ、馬鹿なんだもん!」

 

「馬鹿馬鹿うるさいな!」

 

 

真司が身を乗り出すと、美穂はおおっと言って後ろへ下がる。

 

 

「だいたい、お前だってそんなに俺と成績とか変わらなかったろ!」

 

「ぅォ……! いやでもアンタよりは100倍良かったわッ!」

 

 

まあ行動は同じ様な物だったけど。

美穂はそう言って少し真面目な表情に戻る。

だからこそ分かる物があるのだ、考えとかじゃなく、もっと純粋な行動原理と言うべきか。

 

 

「……なあ真司、考えて答えなんて出た?」

 

「え?」

 

「ずっと迷って、ずっと苦しんで、それでも考えてた」

 

 

でも答えなんて出なかった。

いや。まあまあ答えが出たからこそ、今こうしてココにいると言われればそうではあるが。

しかしそれは考えた末での事ではなく、どちらかと言えば色々な想いの果てに見出した自分なりの考え方だ。

 

それはそうだろう。

だって今直面している問題は数学じゃない。

最初から用意されていた一つの答えなど無いのだ。

要するに根本的な事を突き詰めれば、『答え』なんてそもそも本当に存在しているのだろうか?

 

 

「方程式もまともに解けなかったアンタが、もっと難しくて複雑な今の問題に、答えなんて出せる訳ないのよ」

 

「う゛……ッ」

 

 

100パーセント馬鹿にされている。

そう思った真司だが、言われてみれば確かにそうかもしれない。

馬鹿――、とは思っていない。断じて思っていないが、確かに頭が良いとは思わない。

そんな自分が考えても、そう簡単に答えなど出ないと?

そう言われればそんな気はしてくる。

 

 

「でも勘違いしないで。アンタは馬鹿でも、悪い馬鹿じゃなくて、良い馬鹿だ! それは忘れんなよ城戸真司くん!!」

 

「……なあ、お前本当に褒めてんのか?」

 

「当たり前でしょ! いい? 本当によく聴きなよ!」

 

 

まだ美穂達が仲良く無かった時に起こったコンビニでの事件。

仮にも向こうは凶器を持った強盗だ。しかし真司と蓮は素手で立ち向かっていった。

蓮には何かしらの考えがあったのだろうが、少なくとも真司はノープランで突っ込んだのだろう。

ハッキリ言って馬鹿だ。大人しくしてれば良い物を、わざわざ凶器持ちに立ち向かうなんて馬鹿、大馬鹿!

 

 

「猪か! 獣かお前は! おサルか! よッ、モンキー真司!!」

 

「うるせーッッ!」

 

 

しかしそんなリスクを背負ってまで真司が動いたのは何故か?

彼を突き動かしたのは何か?

それをもう一度よく考えて、よく思い出せと美穂は言った。

 

 

「どうして動いたか?」

 

「そう、アンタを突き動かしたは何?」

 

「それは……」

 

 

真司はあの時の事を思い出す。

やはり印象的な出来事であったし、恐怖もあった為にすぐに思い出すことができた。

そう、あの時に自分が動いたのは――

 

 

「助けたかった。誰も傷つけたくなかった」

 

 

ましてや自分の目の前で。

それを聞くと美穂は少し安心した様に微笑む。

 

 

「そう、突き動かしたのは本能ってね」

 

「?」

 

「なあ真司。もう考えちゃダメだよ」

 

 

下手に頭を使ってしまえば、城戸真司の良い所が全て消えてしまうと美穂は言った。

美穂は自分の拳を握り締め、一度自分の胸に当てる。

直後その拳を真司の胸に当てた。胸と言うよりも心臓、つまりハートに。

 

 

「馬鹿は馬鹿のまま突っ走れ! アンタの本能は、きっと誰かを救ってくれる」

 

「美穂……」

 

「一番大事なのは、何百の言葉より自分のハートでしょ」

 

「………」

 

 

目を閉じる真司。

自分のハート、つまり心の中にある願い。

するとどうだろうか。真司の瞼の下には、自分でも驚くほど鮮明に一人の女の子の顔が浮かんできた。

 

それは、時間だ。

始まりの人。

 

 

『あなたの悪事は私が潰す! 魔法少女マミ!』

 

 

いつも笑顔だった。

いつも周りを笑顔にしていた。

きっと彼女はこれからも皆に慕われ、誰かを癒してくれると思っていた。

 

 

『も……み―――一緒に………でも……』

 

 

彼女の表情が変わる。

それは何よりも悲しく、何よりも諦めに満ちていた。

未練もあったろう、でも納得しなければ――、受け入れなければならなかったのだ。

きっと心はそれを拒んでいたとしても。

 

 

『騎士は、魔法少女を守る為に存在するのだと思います』

 

 

次の人物もまた、真司の前に鮮明に姿を現す。

それは彼らが多大な影響を与えてくれたからだろう。

それが結果として良い意味なのか、悪い意味なのかは別としても、心に刻まれた繋がりは普通の人間が一生の内に体験するソレとは比にならない筈だ。

 

そうだ、ハッキリと分かる。

騎士のあり方を教えてくれた『彼』に、憧れていたんだ。

 

 

『隠蔽、冤罪――ッ! 誤報! この世は腐っている!』

 

 

しかし彼は心の闇に呑まれてしまった。

いや、それは彼が出した答えだったのだろうか?

分からない、何も、誰も、ただ一つだけ言えるのならば彼に待っていたのは終わりだった。

 

 

『本当!? やったぁ! マミお姉ちゃん大好き!』

 

 

幼い彼女は幸せを望んだ。

何よりもと言う訳ではない、ただ『当たり前』と称される規模の物だ。

彼女は普通を望んだ、その普通がやっと手に入ったと彼女は笑っていた。

屈託の無い、穏やかで純粋な笑みを浮かべていた。

 

 

『――――』

 

 

彼女は泣いていた。

当たり前を望んでいた彼女には、普通ならば在り得ない絶望が身に降りかかった。

大切な人の死を、理不尽な形で与えられ、自らを取り巻く環境に彼女は飲み込まれて死んだ。

 

 

『オレは、オレの大切な人のために戦ってます』

 

 

関わりは決して多く、深い物ではなかっただろう。

友、とは言わずとも決して自分達は憎みあってもいなかった筈だ。

なのに戦わなければならない現実に、彼はいち早く答えを出していた。

 

 

『先輩とオレじゃ、背負ってるモンが違うんですよ』

 

 

背負う重さが違うのか。

ならば自分は彼には勝てなかったのか。自分が彼の代わりに死ねばよかったのか。

答えは云々、純粋に了承はできない。彼の覚悟が自分の何倍も上をいっていたとて、死にたくないと言う、当たり前の感情がそこにはあるのだから。

当然、それは彼にもあったろう。

 

 

『貴女には、理解できない』

 

 

自分にも彼女の考えは理解できなかった。

しかしだからと言って永遠に分かり合えないと言う訳ではない。

それを自分は信じていた。

 

 

『淳君が死ぬなんて嫌! でも、わたしも……死にたくない!!』

 

 

彼女は、彼女達は人だった。

魔法と言う、人間を遥かに超越した力を持っていても。

騎士と言う、神にも等しき力を持っていても。

自分達の中身はあくまでも弱い人ではないのか。

 

 

『お前等だって選ばれたんだろ? だったら、何であんなゴミみたいな連中に構うんだよ』

 

 

選ばれたと錯覚していたんじゃないのかよ。お前も、俺も。

鏡に映るのは人ではなくなった自分かもしれない。

だがそれはどんなに姿形が違っても、自分と言うカテゴリを離れる事は無い。

あくまでも、自分だったんだ。

 

 

『ああそうだよ。邪魔な奴等、ウザイ奴らをぶっ殺して成り立つ。それがおれの幸せさ!!』

 

 

幸せの定義は人それぞれだ。

でも俺は――、お前の幸せは間違っていると思う。

いや何度だって言い続けてやる。もっと誰も悲しまない幸せが、お前にもあったんじゃないのか。

 

でも一つだけ分かる事がある。

お前はもうその幸せを見つける事はできないし、お前が感じていた幸せも感じる事はできない。

幸福は、生きているから感じられるんだから。

 

 

「………」

 

 

ゆっくりと目を開ける真司。

俺、自分、彼、彼女、あなた、キミ。誰もが答えを見つけていると思っていた。

事実、何かしらの想いを抱えて戦っていたのだろう。それが答えと言えばそうだ。

だけど世界は誰かの解答を気にせず回る。

答えは、出ない。

 

 

「………」

 

 

でも、世界は回る。

 

 

「………」

 

 

愚かな歯車は、回り続ける。

 

 

「……ッッ」

 

 

でも、多分。

多分だけど、分かる事が一つだけある。

もしかしたら違うかもしれない、だって俺はあまり頭が良くないから。

でもきっとそうだと思える事が一つだけあった。

 

そう、そうだ。

だから今日まで――、今まで動いてきた。

動いてこれたのかもしれない。

 

 

「それは、誰も死にたくないって事」

 

 

だって怖いだろ、辛いだろ。何もかもひっくるめて死ぬって嫌だろ?

いや、もしかしたら死にたいって願っている人達はたくさんいるのかもしれない。

でもそれはきっと何か辛い事があるから、『死』でしか逃げれない事があるからだ。

もしもその障害がなくなって、幸せな日々と思える時がきたらその考えは消えるはず。

 

そうだ、そうに決まっている。

だからみんな根本の所ではきっと同じなんだ。

死にたくない、生きたい――ッッ! 生きて、幸せになりたい!

 

 

「――ッッ」

 

「っ? 真司?」

 

 

真司は俯き頭を掻き毟る。

燻っているのだろう、美穂は少し息を呑んで見守った。

 

 

「なあ、美穂」

 

「んあ?」

 

 

真司は落ち着いたのか、たった一言、質問を。

 

 

「死にたくないよな?」

 

「………」

 

 

美穂は少し間を置いて、無言で一度頷いた。

そして――

 

 

「当たり前じゃん。こんな完璧な美貌を持った美穂様が死ぬとか、それもう世界にとっても大きな損失になるよ」

 

「ハハハ、言ってろよ」

 

 

だが真司は少し穏やかな表情に戻った。

そしてッシャア! と叫び、自分の手で、自分の頬を叩く。

 

 

「え? 何? 一人SMごっこ? ひ、ひくわー……」

 

「違うわ! 気合を入れたんだよ気合を!!」

 

「あはは、分かってるって」

 

 

コイツは!

真司はギロリと美穂を睨む。

 

 

「……そうだよな。考えたって、答えなんて出ないか」

 

 

いつだってそうだった。

自分を突き動かしたのは揺ぎ無い本能だけだ。今も昔も、そしてこれからも。

とは言え、今するべき事だけは、しっかりと分かっているつもりだ。

真司は頷くと、美穂にお礼を言う。

 

 

「サンキュー美穂、やっぱ考えるより前に動くタイプだよな、俺って」

 

「そそそ」

 

「悪い、ちょっと行かなきゃいけない所ができた。すぐに戻ってくるから」

 

 

真司はそう言うが、美穂は首を振って一緒に立ち上がる。

どうやらもう帰るらしい、あまり遅くなるのも美佐子に迷惑だからと、二人は一緒にBOKUジャーナルを出ることに。

そして外に出た時だ、真司は原付を取りに行こうとするが、美穂に呼び止められた。

 

 

「指きりしよう」

 

「ん?」

 

「約束よ。や・く・そ・く」

 

「約束?」

 

 

真司は言われるままに小指を差し出した。

 

 

「勝つぞ、絶対に」

 

「な、何にだよ」

 

「全部にだよ」

 

 

美穂は少し寂しげに微笑みながら、小指と小指を絡ませる。

 

 

「勝つ、か」

 

「カツ丼の話しじゃないわよ」

 

「知ってるよ! あんまナメんな!」

 

「真司の事だから勘違いしてると思って。うほほほ!」

 

「あ、霧島さんって凄いゴリラみたいな笑い方するんですね。やっぱ普段ウンコとか投げてる感じですか?」

 

「………」

 

「や、やめろ! 無言で指をねじ切ろうとするな! いでででッッ!!」

 

「ふざけてないで、約束は?」

 

 

真司は少し責任を感じならがも、強く頷いた。

ゲームに勝つ。簡単には約束できない事だ。その言葉は第三者が感じるよりもずっと重たい物だ。

しかし真司はいつも通りの笑顔で手を振り、約束の言葉を述べていく。

 

 

「「指切った」」

 

 

子供のようだ。二人は笑う。

 

 

「変わんないね、私達」

 

「かもな。ずっと子供のままだ」

 

 

大人(りこう)になるのは難しい。

ずっと子供(バカ)なんじゃないかと思ってしまう。

それが今はプラスになる事を切に願うだけだ。

 

 

「そうだ、一応コレあげる」

 

 

美穂はサキに貰ったグリーフシードを真司に投げ渡した。

まどかに渡す予定だったが、サキも忙しくてままならなかったと。

 

 

「お、分かった。サキちゃんに、ありがとうって伝えてくれ」

 

「ん。じゃあ明日、作戦会議するわよ多分。だから――」

 

「ああ、分かってる」

 

「そう、じゃあいいのよ」

 

 

美穂はそう言ってブランウイングを召喚させた。

どうやら今の交通手段は常にミラーモンスターらしい。

大丈夫かとも思うが、便利なのだから仕方ないと美穂は笑った。

 

 

「人に見られんなよ、ただでさえ今、ネットじゃ見滝原はヤバイとか言われてんだから」

 

「大丈夫大丈夫。行こうブランウイング!」

 

 

そう言って闇夜に飛び立っていく美穂。

真司もまた、原付に走っていった。美穂にありったけの感謝を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ、残りたい?」

 

「うん。ごめんね……」

 

 

ふぅ、とため息をついて、詢子は苦い顔を浮かべる。

鹿目家では家族会議が行われていた。と言ってもタツヤは既に夢の中で、父の知久もまだ骨折で入院中である。しかし一応無理を言って病院を風見野の方へ変えてもらう事はできそうなので、詢子としては見滝原を出たいとの事だった。

 

 

「アタシもオカルトとかは信じないけどさ、やっぱ最近見滝原って普通に考えて治安かなり悪いし」

 

 

ココ最近で見滝原で起こる行方不明事件や、猟奇殺人の多さは明らかに異常だった。

一般人からしてみれば芝浦のやった事はテロと置き換えられている訳で、そしてさらに見滝原を通りかかったバスや飛行機の爆発。

 

ニュースでは前日報道されていた殺人事件はもう放送されない。

なぜか? 新しい殺人事件に更新されるからだ。

さすがの詢子も自分のいる街がおかしいと気づいている。いろいろ問題はあるが、一番大切なのは家族である。

まどかがテロに巻き込まれて、かろうじて生き残った。

親バカで無くとも過保護になるのは当たり前だ。

 

 

「前にも家の鍵、壊されてたし、サキちゃんの家なんて爆破されたんだろ!? ありえないって」

 

「そ、そうだね」

 

 

これでタツヤが実は誘拐されてましたなんて知れば、まどかを引きずってでも家を出る事間違いなしだ。だからまどかは事前にタツヤに絶対にリーベエリスに行った事を言わないでと口止めはしておいた。果たしてタツヤがそれを守ってくれるのかは心配なところだが。

 

 

「ニュースじゃ、テロ組織が見滝原にいるんじゃないかって言ってる」

 

「こ、こわいね……」

 

「まどかも流石にやべぇって思うでしょ?」

 

「や、やべぇだなんて」

 

 

まずい。詢子の気迫に満ちた表情を見て、怯んでしまう。

詢子としては見滝原を出たい一心なのだろうが、まどかとしては困るところである。

なんて説明すればいいのか。殺し合いに巻き込まれて、見滝原から出たら死にますとは口が裂けても言えない。

とは言え、まどかとしても詢子の気持ちも良く分かる。

だがそれでも、突き通さなければならない嘘がある訳で。

 

 

「ほら、家の事とかもあるし――」

 

「家なんてまた建てればいい。賃貸だっていい! 私にとって家なんかより、ずっとアンタとタツヤの方が大事なんだって!」

 

 

それは父も同じだろう。

一度鍵が壊されていると言う事は、再びココが標的になる可能性が高いと詢子は考えていた。

 

 

「見滝原は……、さやかちゃんと、仁美ちゃんの思い出があるから」

 

「……っ」

 

 

嘘ではない。本音だった。

見滝原はまどかにとって思い出の詰まった街であり、ココが戦いの場になっている現状は辛い物がある。

だからこそ見滝原を破壊しようとするワルプルギスの夜は止めたい。

それに加えて――……、自分の事も色々と考えてしまう。

 

 

「………」

 

「まどか……ッ!」

 

 

堪え様としても、ついつい涙が浮かんでしまう。

母を、父を、弟を守るには、やはり死んだほうがいいのだろうか?

なるべく考えないようにはしているが、そんなの無理だ。

死にたくないとは思いつつ、けれども自分が死んだほうが一番良いとは分かりきっている事なんだ。

 

 

「気持ちは分かるけど……! パパとママの気持ちも分かってくれ!」

 

「――ッ、それは」

 

 

今までは父と母を傷つけたくないと、魔法少女の事を隠してきた。

だが、このままでは余計に母を傷つけてしまうだけだ。

それはまどかとしても本心ではない。

 

 

「分かった」

 

「まどか……! 分かってく――」

 

「でも、あと六日だけ待って!」

 

「っ! まどか!!」

 

「ごめんママ、でもどうしても――……ッ! どうしてもお願い!」

 

 

詢子はいつもと違う娘の様子に息を呑んだ。

普段のまどかが出す雰囲気ではない。それがどういう意味なのかまでは読み取れないが。

それでもただ一つ言える事は、ただのワガママでは無い事。

まどかだって危険なのは分かっている筈。

それでも尚、この見滝原に留まりたい理由があるのだろう。

 

目を見れば分かる。

それに、理由を聞いても、まどかはきっと嘘をつくとも分かった。

自分の娘の事だ。似た部分は必ずある。

まどかは今まで嘘をつかなかった、でもきっと嘘をつく。そんな気がしてならない。

 

 

「まどか」

 

「……ごめんなさい」

 

 

まどかは、唇を噛んで俯く。

母として取るべき行動は何なんだろう? 詢子はため息をついて苦い顔を浮かべた。

それはもちろん、嫌がる彼女を引きずってでも明日か明後日には見滝原を出る事だ。

しかし今まで、母の言う事には何ひとつ文句を言わなかったまどかが、初めて自分の意思で何かをなし得たいと思うのならば、背中を押したいと言うのが『鹿目詢子』の想いだった。

 

 

「………」

 

 

だが――、それでも。

 

 

「駄目だ。明日か明後日、用意でき次第、一旦見滝原を出るぞ」

 

「ママ……!」

 

「風見野の方にアパートを借りるから、そこでしばらく様子を――」

 

「ママ!」

 

 

その時、詢子はまどかをキッと睨む。

 

 

「まどか! アンタの命は、アンタだけの物じゃねぇんだッ!」

 

「――っ!」

 

 

杞憂に終わる。と言う考えを持つレベルじゃなくなっている。

見滝原には毎日毎日警察がパトロールを行う様になったが、その警察が何人も死体で発見されているのが連日ニュースだ。

 

そんな街に住んでいられるものか。

不動産屋を覗けば、見滝原の土地だったり物件は、いまや格安で販売されており、それを象徴するべく見滝原を離れる者が後を絶たない。

 

 

「悪いけど、やっぱり納得できない」

 

「どうしても?」

 

「ああ。タツヤと知久の為にも、アンタを危険には晒せない」

 

「………ッ」

 

 

母の愛を感じて。まどかは真剣な表情を、複雑な表情へシフトさせた。

分かっていたと言えばそうだ。しかしココだけはまどかも色々な意味を込めて、引き下がれない部分である。

なんとかして分かってもらうしかない。しかし知れば知るほど辛くなる。

 

お互いに。

 

 

「ママ、ごめん。何度言われても、六日はわたし動かない」

 

「アンタ――ッ! なんでそこまで?」

 

「……ごめんね」

 

「それは危険を知りつつもやらなければならない事なのか?」

 

 

家族の事を天秤に掛けてまで。

何も知らない詢子にとってはそれが疑問で仕方ない。

 

 

「どうしても、わたしにしかできない事があるの」

 

「どんな事さ!?」

 

「ごめん、言えない」

 

「ッ」

 

 

まどかの目は本気だった。

もちろん詢子が言った、自分ひとりの命ではないと言う言葉は心に深く突き刺さる。

母と娘。双方の間には愛があるからこそ、譲れぬ物があるのだ。

しかし今のまどかには余裕も、時間も無い。

話し合い、納得してもらうのを待つ時間は無いのだ。

 

 

「ごめん――……。本当に、ごめんなさい!」

 

「え?」

 

「お願い、かずみちゃん」

 

「かず――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファンタズマビスビーリオ」

 

 

フッと。

蝋燭の火が吹き消された様にして、詢子の目から光が消えた。

その後、崩れるようにテーブルへ顔を伏せる。

姿を見せたかずみは、無表情で詢子を見ていた。

 

 

「ごめんね、かずみちゃん。急に呼び出して」

 

「びっくりしたよ。メール読んだ時は驚いた」

 

 

まどかは最初からこうなる事が分かっていたのかもしれない。

母に分かって欲しかった。だけど母が自分を心配してくれて、それが結果として双方のモヤモヤを大きくするだけだと言うことも分かっていた。

 

だから事前にかずみにメールを送っていたのだ。

母と話し合いがしたいけれど、恐らく纏まらないから助けてほしいと。

詢子は人間だ。どれだけ体力や精神力が万全の時でも、洗脳魔法には適うまい。

 

 

「どうする? 設定」

 

「わたしを置いて先に風見野にいく流れを作ってほしいの」

 

「ん、了解。ゴマアブラーユってね」

 

 

かずみはそう言って十字架を振るう。

かずみ自身も途中から裏で話を聞いていたので、まどかの望む流れは理解できた。

次に詢子が目覚めれば、都合のいいシナリオ通りに動いてくれるだろう。

 

 

「……駄目だよ、お父さんとお母さんを心配させちゃさ」

 

 

かずみの声には、何とも言えぬ寂しさがあった。

表情もまた寂しげだ。なぜだろうか、まどかは今になって、他人の表情の変化に敏感になってきた。

周りの目を気にしすぎたから、かもしれない。

 

 

「うん、そうだね。わたし悪い子だ」

 

 

まどかの儚げな笑みを、同じく儚げな笑みで受け止めるかずみ。

この言葉にできない寂しさは、一体いつになったら終わるというのか。

二人はふと、笑みを消して睨み合う。この今、流るる微妙な空気の意味を、まどかは以前ならば理解はできなかっただろう。

いや、理解したくないから目を背けていたかもしれない。

しかし北岡によって告げられた真実が、まどかを良くも悪くも成長させたのかもしれない。

鋭敏な寂しさには理由がある。それは決して無視してはいけないものだ。

 

 

「ごめんね、まどか。コレがわたしにできる、友達としての最後の魔法」

 

「うん、ありがとう」

 

 

分かっているのだ。

一度は戦った仲だ。かずみに、もう時間が残されていない事くらい、まどかはちゃんと分かってる。

 

 

「力になれなくてごめんね。わたし、何もできなかった」

 

「気にしてないよ。それに今は、むしろ邪魔してるじゃん」

 

「………」

 

「酷いよ、まどか」

 

 

酷いのは自分だ。かずみはそれを分かっていて、まどかを睨みつける。

 

 

「安心して、まどか。お母さんの洗脳はちゃんとしたから」

 

 

たとえば詢子を利用する事は無いし、ちゃんとまどかが望むシナリオを頭に埋め込んだ。

それは信じて欲しいとかずみは言う。

 

 

「信じるよ。かずみちゃんは……、友達だから」

 

 

その言葉を聞いて、観念したようにかずみは肩を竦めた。

 

 

「……うん。うん。わたしも、まどかの事、本当に友達だと思ってる」

 

 

だけど――!

かずみは十字架を振るった。その先を向けるのは、当然まどかだ。

 

 

「ごめん、決めたの。わたしは貴女を殺すって」

 

 

いや、まどかだけじゃない。

真司だって、サキ、美穂、北岡達だって殺す。

王蛇ペアも織莉子達も全員殺す。ワルプルギスの夜なんて関係ない。

殺して殺して殺した先に答えがあるのだから。

 

 

「わたしは蓮さんを勝者(かみ)にする。もう迷わない、もう逃げない」

 

 

かずみの言葉を聞いて、まどかは表情を歪める。

覚悟はしていたが、いざ目の前で言われると怯むものはある。

だが自分だって生きたい。自分だって……

 

 

「わたし、諦めたくないから」

 

「いいよそれで。今日はそれでいい」

 

 

次に会った時に答えは出る。まどかが死ぬか、それともかずみが死ぬか。

もしくは他の誰かに殺されるか、殺すのか。かずみの表情に明確な殺意が宿る。

目の前にいるのは友だ。しかし殺すべき相手でもある。

その事をしっかりと理解して、かずみはまどかを睨んでいた。

 

 

「まどか、わたしね……、貴女と同じくらい素敵な友達がいたんだよ」

 

 

一緒に色々な所に行ったし。シェアハウスだってしてた。

 

 

「でもね、二人はわたしが殺したんだ……」

 

 

分かるでしょ?

分かって、もう戻れない。

あの時。そう、友を殺した時から、もう戻れないなんて分かってたんだ。

 

 

「じゃあね、まどか。次は殺すから」

 

「……わたしも抵抗する」

 

 

まどかは変身すると、威嚇の意を込めて片翼を出現させる。

かずみは頷くと、黒いマントで自分を包み、そしてマントが翻ったときには誰もいなかった。

 

 

「疲れたな……」

 

 

色々な意味で。

 

 

「嫌だな、みんなと戦うの」

 

 

死にたくないんだ。

自分の為に、両親の為に。

なのに、なのに――!

 

 

「……ママ」

 

 

まどかは詢子をベッドまで運ぶと、変身を解除する。

寝顔を見つめ、そしてただ一言を「ゴメン」とだけ呟いて自室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

 

 

自室に戻ったまどかは、何をする訳でもなく椅子に座って俯いていた。

その時だ、窓がコンコンと音を立てる。

ここは二階だ。おまけにそこそこ遅い時間である。

まさか参加者か? まどかはいつでも変身できる用意をしてカーテンを開いた。

 

 

「きゃあ!」

 

 

視界に飛び込んできたのは赤。

まどかは思わず驚いてしりもちをついてしまった。

だが仕方ない、何故なら窓の外には巨大な龍の顔があったのだから。

ドアップで存在するドラグレッダー。流石にそれは想像もつかないと言うものだ。

 

 

「まどかちゃん! 今大丈夫?」

 

「し、真司さん……!」

 

 

ドラグレッダーの背中に乗っていたのは真司である。

まどかはすぐに気づいた。真司の表情が、何かこう先ほどと変わっているのだ。

楽になったと言うべきか。それとも覚悟を決めたというべきか。

とりあえず窓を開けて、真司を部屋に招き入れる。

 

 

「ど、どうしたの? 真司さん」

 

「ああ。俺さ、やっぱ馬鹿なんだよ」

 

「へ?」

 

 

いきなり何を? 返答に困る。

そうだね、なんて言えないし、思ってもないし。

真司も困惑が伝わってきたのか、だははと笑いながら頭をかく。

そんな彼の様子はいつも通りというか。前の様な違和感は、微塵も感じさせなかった。

 

 

「何が言いたいのかって言うと、馬鹿だから考えても考えても分からないし。答えが出せるかは分からない」

 

「……っ」

 

「でも、一つだけ分かった。一つだけ言いたい」

 

 

真司は揺ぎ無い眼差しでまどかを見る。

 

 

「守るよ。まどかちゃんを」

 

「!」

 

「やっぱり、俺にはコレしか思いつかないんだ」

 

 

戦いを止めたいと言うのもあるが、とにかく今は、まどかを守る事だ。

それを城戸真司は、騎士・龍騎の意思であると彼女に告げた。

 

 

「真司さん……」

 

「ごめん、まどかちゃん。俺……、隠し事してたっ」

 

「!」

 

「全部話すよ」

 

 

真司は手に持っていたグリーフシードを握り締める。

それを見てまどかは力が抜けたように笑った。

 

 

「知ってるよ。わたし、絶望の魔女なんでしょ?」

 

「え!? あッ! だ、誰に――?」

 

「だから――」

 

 

まどかは問い掛ける。

自分を守ると言う事は、その覚悟を決めてもらわなければならない。

今のまどかは、存在自体が罪だ。いずれは爆発する爆弾。

それでも真司は自分を守ると言うのか?

 

 

「絶望の魔女の、わたしを……」

 

「当たり前だろ! まどかちゃん!」

 

 

真司はまどかの両肩をポンポンと叩いて笑う。

 

 

「俺は、キミのパートナーなんだから!」

 

「真司さん……!」

 

 

ソレに何よりも、まどかは生きたい筈だ。

真司はそれを絶対に無視したくなかった。

 

 

「そうだろう? まどかちゃん」

 

「………」

 

 

思わず視界が霞む。

 

 

「うん……、うん! わたし――ッ!」

 

 

生きたい。

その言葉を聞いて。真司はしっかりと、力強く頷いた。

生きたいのは皆そうだ。当たり前なんだ。でもその当たり前の事が許されない。

それは、まどか自身がよく知っている事であり、それが枷になっている事なのだ。

 

 

「でも、いいの……? 真司さん」

 

 

まどかはそれが気になってしまう。

守る事の責任。しかし彼女がそれを口にするよりも、真司はその絶望を否定した。

 

 

「まどかちゃんが絶望の魔女だって関係ない! パートナーだから、友達だから守るんだ!」

 

「でも――っ!」

 

「言われたんだ。運命を変えたいのならば、抗い続けろって!」

 

 

真司は手塚の言葉を信じていた。

当然だ。仲間の言葉は、信じるべきだ。

 

 

「絶望の魔女で終わるなんて悲しすぎるだろ! 生きよう、まどかちゃん!!」

 

 

真司はまどかを守る。

しかし一番大事なのは、まどかの意思だという事も知っている。

彼女が願わなければ絶望の運命は変わりはしないのだから。

 

それを言えば。まどかは少し沈黙して俯く。

真司には、彼女の心の声が聞こえた気がした。

彼女はきっと真司と同じで、思い出しているのだろう。

生を望み、そしてそれを叶えられずに散っていた命の炎を。

 

 

「まどかちゃん、君は生きていいんだよ……!」

 

「本当……?」

 

「もちろん! ダメだって言うヤツがいたら、俺が全員ぶっ飛ばしてやる!」

 

 

そうだろ?

誰も死を背負って生まれてきた訳じゃない。

ありったけの希望を背負って生まれてきたんだ。それを否定されてたまるか。

死ぬことが当たり前だなんて、そんな運命を認められる訳が無い。

 

抗うんだ、そうだろ手塚。

生き抜くんだ、そうだろ美穂。

否定するんだ、そうだろ蓮ッ!

そんな燻る真司の想い。

 

もちろんそれは、まどかだって同じだ。

思い出すのは、儚く崩れていく友の笑み。悲しみの涙。

それは絶望の支配。鹿目まどかは切に願う。

その絶望を、否定したいと!

 

 

「わたしは、生きたい!」

 

「ああ。それでいいんだよ、まどかちゃん!」

 

「生きていいよね? 真司さん。生きてもいいんだよね!」

 

「ああッ! ああ!!」

 

 

閉じた目を開く。

まどかの表情は、呪いに押しつぶされそうな以前の物とは明らかに変わっていた。

そこに感じる圧倒的な覚悟。真司は答えが分からぬけれど、自らの心に燃える想いに身を任せて突っ走った。

しかしまどかは自らの心と向き合い、それで自らの答えを出した。

 

 

「わたし、生きたい。死にたくない」

 

 

守ってくれた命だ。

両親が、友が。そして自分自身と言う存在が。

だから否定したくない。たとえ絶望の魔女であると知った今でも、その運命に押し潰されたくない。

 

 

「真司さん、わたしのワガママ……、聞いてほしい」

 

「当たり前だろ、俺たちはパートナーなんだからさ」

 

「うん、ありがとう真司さん」

 

 

それを聞いてまどかはニッコリと笑う。

一度決心を固めた後のまどかは強いものだ。

それもまた今までの経験で分かっていた。

まどかは自分の思いを簡潔に告げる。死にたくないし、このままゲームに翻弄される気も無い。

 

 

「織莉子さんも、かずみちゃんも説得するし、ワルプルギスの夜も倒す」

 

「ああ、戦いを止めよう。絶対に」

 

「うん! よろしくね真司さん!」

 

 

二人はしっかりと握手を行い、迷いを振り切る様に笑みを浮かべた。

どんなに心折れそうな時だって、この二人ならば食らいついていけるのかもと思う。

それが家族や恋人では得られぬ絆。騎士と魔法少女の絆なのかもしれない。

 

二人は戦いの終わりを誓う。

どうすればいいのか、何をすれば一番いい未来が作れるのかは分からない。

けれども、二人の心には戦いを止めたいと言う純粋な願いのエネルギーが激しく燃えている。

この想いは、きっと無駄にはしない。

 

 

「じゃあそろそろ俺は帰るよ」

 

「うん! 気をつけてくださいね!」

 

 

夜も夜だ。

真司はドラグレッダーに飛び乗ると、手塚が『明日』という時間を作ってくれた事を伝える。

 

 

「でも明後日には……」

 

「大丈夫。わたしはもう逃げないし、戦うよ……!」

 

 

絶望と。

 

 

「ああ、がんばろう」

 

 

夜の闇は深くなっていくが、二人の中にある希望の光はしっかりと大きくなっていく。

今ココに新たな意志が生まれた。夜を越えて、より大きくなる意思がある。

人の思いがあるからこそ、愚かな歯車はより強いエネルギーで回るのだ。

 

 

 

 

 

 

 







マギレコのホームでまどかをつんつくしまくると聞ける「そんな……(震え声)」ってヤツ、あれ、かわいいよね。

マミさんもケーキの事について語る時が輝いてるし。
こらもうワシがケーキになるしかおまへんなぁ( ^ω^ )ガーッハハッハ!!
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