仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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予約投稿です。なんか誤字ってたらごめんなさい、明日直します


第4話 騎士と魔法少女 女少法魔と士騎 話4第

 

 

「……あった」

 

 

病院。数多くある病室の中で、黒髪の少女は目的の部屋を見つける。

だが、中に入る事はなかった。扉の前に立って深呼吸を一回。しかしなかなか前に進む事ができない。

早くしないと『――』が、来るのに。

 

 

「よ、ようし!」

 

 

とにかく迷っている暇はない。少女は意を決して中に入る。

意味が無いと知っているのにノックを忘れずに。

 

 

所は変わって、カフェ・アトリ。そこでは今日も様々な人がやって来ては、帰っていく。

普通の喫茶店にしては料理のレベルが高いと雑誌で紹介されてからは、客の出入りが特に多くなった。

看板メニューであるバケツパフェは高額ながらも毎日完売する人気っぷりだ。

しかし、それでも空席ができる時はできるし、時間によってはガラガラと言う場合もある。

 

 

「蓮、そろそろ時間。あがっていいよ」

 

「はい。お疲れ様です」

 

 

蓮に声をかけたのはアトリのマスター、立花(たちばな)宗一郎(そういちろう)

蓮とは親戚でもあり、この喫茶店に蓮を誘ったのも立花からだった。

アトリの隣に繋がっている家は立花の物であり、蓮はそこに住まわせてもらっている。

 

橘は恵里の事を知っている数少ない人物でもあり、こうして毎日欠かさず、蓮が病院に行ける様に早めに終わらせてくれるのだ。

従業員の数は少ない。蓮としても申し訳なさがあるのだが、やはりそれでも恵里の傍についていてやりたかった。

蓮はすぐに更衣室に向かうと、エプロンをロッカーの中に放り投げる。

 

 

「………」

 

 

そこで動きが止まる。

医者からは、奇跡でも起こらない限り恵里が目覚める事は無いと言われた。

それだけではなく、悪化する場合もあると念を押された。いつ永遠の別れになるのか、蓮には常に張り付くような不安があった。

それでもいつか恵里が眠りから目覚める様に、すんなりと目を開けるんじゃないかと奇跡を期待してしまう。

 

 

「……ッ」

 

 

だがすぐにそんな事はないと自分で考える。

さまざまな感情がグチャグチャになり、毎日恵里に会う度に心が張り裂けそうになる。

このまま時間がどれだけ経とうとも、自分たちの時間は永遠に閉じ込められたままじゃないのだろうか。

 

苛立ちは消えない。こんな事を考えていても仕方ないのだ。

考える時間があったら病院に行った方がいい。

蓮は頷き、そこでまた動きを止める。

 

 

「っ」

 

 

ロッカーの中にはデッキがあった。

未知の存在。もしもこのデッキが何か、例えば恵里の病気を治す役にたったならどれだけ良かったか。

 

 

(馬鹿な考えだな……)

 

 

蓮は苦笑すると、デッキをポケットに入れて店を後にするのだった。

 

翌朝、蓮は自室にて目を覚ます。

昨日も恵里が目を覚ます事はなかったが、彼女が生きていると言う事実だけで希望がある。

今日は休みだ、もう少し寝ていてもいいかもしれない。蓮は目を閉じて寝返りをうった。

 

 

「………」

 

「すぅ」

 

「………」

 

 

今、何か、聞こえたような。そもそも何故かベッドが狭い気がする。

何か、これはまるで――

 

 

「………」

 

 

 

目を開ける。

そして蓮は、そっと。それはそれは優しくそっと。

まさに呼吸音すらも立てない程そっと目を、閉じた。

 

一瞬、恵里が隣にいるのかと思った。

最近忙しかった、きっと疲れているのだろう。

もしかしたらまだ夢の中にいるのかもしれない。

やれやれ、蓮はもう一度目をあけ――

 

 

「すぅ……、すぅ……」

 

 

(どうなってるんだ……)

 

 

そこにいたのは、少しクセッ毛の女の子だった。

 

 

「どういう事なんですッ?」

 

「ん? ああ、その娘ね。今日から家で預かる事になったから」

 

「は!?」

 

 

立花は蓮の朝食と、もう一つ、蓮に抱きかかえられながらスヤスヤ眠っている女の子の分をテーブルに並べている。

あまりにもすんなりと言われたが、つまり同居人が増えると言う事なのだろう。

蓮としても立花に世話になっている身だ。文句は言えた義理じゃないし、部屋だってあまっているらしい。なんで同居人が増えること自体は、別に構わないが。

 

 

「中学生に見えるんだが……」

 

「だって、中学生だもん」

 

 

立花が言うには、その娘も遠い親戚の一人らしい。

確かに蓮に似ているような気もするが。なんでも、親が仕事の都合で一緒に暮らせないらしく、一人暮らしさせるのも心配と言う事で立花の所に来たらしい。

 

 

「その娘、お前の事が気に入ってるらしくてね」

 

「はあ」

 

 

蓮は少女を見る。

気に入られているとは言うが、会った記憶が無い。もしかしたら忘れているだけなのだろうか?

そうしている内に、朝食の用意ができた様だ。

蓮は渋々ではあったが、少女の頬をぺちぺちと叩いて目覚めさせる。

 

 

「ぁぅ?」

 

「起きたか、俺は――」

 

「蓮さぁぁぁん!!」

 

「ぶっ!」

 

 

目を覚ますなり、少女は蓮にしがみ付いてきた。

これには蓮もどうしていいか分からない。立花に視線を送り、助けを求める。

が、残念! すでに立花はパンをむしゃむしゃと食べているだけだ!

 

 

「は、はなせッ! お前、名前は!」

 

「わたし? わたしはね!」

 

 

少女は満面の笑みで答える。また一瞬、『彼女』がそこに見えた。

 

 

「わたしは、かずみ! よろしくね!!」

 

 

蓮は曖昧な表情をうかべて、ただ頷くだけしかできなかった。

 

 

 

 

 

城戸真司が龍騎に覚醒してから一週間とちょっと経っただろうか?

とある公園。そこに今、真司――、正確には龍騎が立っていた。

普通の公園と言っても、その周りには結界が張られており、一般人からは公園の存在を確認する事はできない。

その結界を構築しているのは巴マミ。彼女の力によって公園はコロシアムに姿を変えている。

 

 

「では、城戸くん。軽くおさらいをしておきましょうか」

 

「あ、はい! ッしゃあ!」

 

 

今この公園にいるのは四人だ。

結界を張っているマミと、対峙している龍騎とシザース。

その様子を、まどかが心配そうに見つめている。

 

 

「がんばってね、城戸さん!」

 

「うふふ、しっかり教えてあげてくださいね。須藤さん」

 

 

二人の声援を受けて龍騎はさらに気合を入れ、シザースは小さく苦笑する。

 

 

「さて、まずは共通のカードから見ていきましょう」

 

 

そう言ってシザースはデッキから一枚のカードを引いた。

これは『アドベントカード』。騎士に備えられているバイザーに装填する事で効果を発揮する。

バイザーは龍騎やシザースのように、元々体に装備されている者。まだ見ぬが、剣や銃などの武器の役割を持つ者など、様々らしい。

龍騎とシザースは、さっそくバイザーに同じカードを装填した。

 

 

『ソードベント』

 

 

鏡が砕ける音がしたと思えば、龍騎の手にはドラグレッダーの尾を模した剣・ドラグセイバーが握られていた。

対してシザースもボルキャンサーの爪を模した短刀、ボルナイフが握られている。

 

 

「この様に、同じカードでも騎士によって細部が違う場合が多いんです。だから、しっかりと自分の使えるカードは把握しておいた方がいいですね」

 

「は、はい! 了解です!!」

 

 

次に二人はストライクベントのカードを発動する。

龍騎の手にはドラグレッダーの頭部を模したドラグクローが、シザースの手にはボルキャンサーの腕を模したシザースピンチが装備される。

 

 

「カードは一度使用すると、しばらくの間、再使用ができなくなります。ですが、このストライクベントと、ソードベントは何度でも使用可能なんですよ」

 

「へぇー……」

 

 

シザースは共通で使えるカードの種類を龍騎に説明していく。

盾を出現させるガードベント、自身の分身とも言える『ミラーモンスター』を呼び出すアドベント。

そして、必殺のファイナルベント。これが全ての騎士に共通して与えられるらしい。

 

 

「では次は特殊なカードについて軽く説明しましょうか」

 

「はい! お願いしますッ!」

 

「あはは、力まなくても大丈夫ですよ。では説明します」

 

 

騎士のカードは増えていくらしい。

その条件はシザースにも分からないが、彼の場合、時間が経つにつれてデッキにカードが追加されていったという。

 

 

「私もまだよく分からないのですが、私たち『騎士』と呼ばれる存在は巴さんや鹿目さん達『魔法少女』と繋がりがあるらしいのです」

 

「繋がり?」

 

「はい、それも一人にです。私の場合は巴さんでした。そして真司くんは鹿目さんがパートナーの様ですね」

 

 

パートナーとして認識された際には、騎士の紋章が魔法少女時の姿に追加されるという。

マミの場合は胸にあるリボンの中心がシザースのブローチになっており、まどかの場合はスカートの一部に龍騎の紋章が見えた。

 

 

「私の場合、巴さんがパートナーになった時まずこのカードが追加されました」『シュートベント』

 

 

巴マミの主な武器は銃。

様々な種類の銃を使用する彼女だが、その中でもマスケット銃の使用頻度は高い。

そのせいなのかは知らないが、シザースもまたマスケット銃を使える様になったのだ。

 

 

「おそらく君も、何か使用できるカードが増えている筈です。どうでしょう?」

 

 

龍騎はその言葉を聞いて、デッキから全てのカードを抜き出してみる。

すると、一枚だけだが、確かにカードが追加されている。龍騎は早速そのカードをバイザーに装填してみる事に。

 

 

『シュートベント』

 

 

龍騎の元にドラグレッダーを模した弓、ドラグアローが出現する。

まどかが使用する武器が弓だからだろう。

 

 

「一方で、魔法少女も私たちの力を共有できるのです」

 

 

魔法少女が発動する『ユニオン』と言う魔法。

簡単に言えば、魔法少女が騎士のカードを使えるようになるのだ。

ユニオンは再使用不可の縛りを受けない。これにより、たとえば騎士がアドベントを使用したとする。一度使用すればしばらく使えなくなるカードだが、ユニオンを使うことですぐに使用ができるのだ。

さらにユニオンを発動してファイナルベントを使うと、パートナーとの合体必殺が撃てる様にもなる。

 

パートナーがいない騎士ならば、ファイナルベントは一回撃てば再使用までに時間がかかるが、パートナーがいれば、ファイナルベント→ユニオンを使用したファイナルベントが可能になり、大技を連発もできるわけだ。

 

 

「ここまでで何か質問はありますか?」

 

「あの、そもそもミラーモンスターってのは一体……?」

 

 

シザースは頷き、アドベントを発動する。

地面から現れたのはシザースのミラーモンスター、ボルキャンサーだ。

その姿は、やはりシザースと似ている様に見える。

そう言えば龍騎もドラグレッダーの頭部そのものと言っていいバイザーがついている。モンスターと騎士もまた繋がりがあるのだろうか?

 

 

「ミラーモンスターは自分自身の鏡像。つまり、一心同体の分身です」

 

「分身?」

 

「はい、君は変身する時に何を思いましたか? そして、何を託しましたか? どうやらミラーモンスターはその性質を備えているそうなんです」

 

 

自覚しているか、無自覚かはともかく、変身時には強い想いがあったはず。それを象徴するのがミラーモンスターと言うわけだ。

彼らは自身の分身ながらも心があり、空腹を感じる事はないが、ちゃんと食事もできる。

言わば、立派な生命なのだ。自分が生み出した命。不思議な感じではあるが。

 

 

「モチーフの動物は、強い影響を受けた物になる様です。私は昔、小さな蟹を飼っていた事があるのですが、おかげでこの姿ですよ。ははは……」

 

 

少し自虐的な笑みを浮べてシザースはボルキャンサーを見る。

 

 

「キミのドラゴンと比べるとどうしてもしょぼ……」

 

 

バキッ!

 

 

「………」

 

「………」

 

「あ、あの須藤さん……」

 

「彼らにも心があります。だからこの様に……、殴られる事もあるのです」

 

 

シザースは怒っている様子のボルキャンサーをなだめると、彼をカードに戻す。

 

 

「アドベントは自動で発動される事もあります。ピンチになった時、ミラーモンスターへの信頼と絆が強ければ助けにきてくれるのです」

 

 

成る程と龍騎は頷く。

そう言えば幼いころ夢中になっていた戦隊物のヒーロー、そのレッドの相棒だったドラゴンに憧れていた時代があった。

思い出してみればドラグレッダーに少し似ている様な気もする。

だが、そこで浮かぶ疑問。龍騎はドラグレッダーのカードを取り出して、質問を。

 

 

「じゃあ、もしコイツがやられたらどうなるんですか?」

 

「はい、実はミラーモンスターは完全には死なないんです。私たちの鏡像である彼らは、私たち本人が死なない限り死にません」

 

 

ですが――、と、シザースは少し強調する様に言う。

モンスターが破壊された場合、再構築されるまでの時間は24時間。

それまでは『ブランク体』と言われる弱体化した体で戦わないといけなくなるのだと。

 

 

「一度ブランク体を味わっていただきましょうか。ジュゥべえ、居ませんか?」

 

『いるぜ、話も聞いてた』

 

 

結界の中から現れたのは黒い猫の様な生き物だった。

名はジュゥべえ。彼もまたキュゥべぇと同じく妖精らしく、キュゥべぇが魔法少女側のサポーターならば、ジュゥべえは騎士側のサポーターと言える存在だろう。

 

 

『龍騎をブランク体にすりゃあいいんだろ?』

 

「ええ、お願いできますか?」

 

『楽勝だい!』

 

 

そう言ってジュゥべえが龍騎の周りを駆け回ると、龍騎の体から赤が消え、灰色っぽい色になる。

バイザーもドラグレッダーの特徴が消えてしまい、装飾も地味になる。

なんともみすぼらしい容姿になってしまった龍騎。シザースはその状態でソードベントを発動させる様に言う。

 

 

『ソードベント』

 

 

出現したのは、ドラグセイバーよりもはるかに貧相に見える剣。

 

 

「それで私を斬ってみてください」

 

「えッ、いやでも流石にそれは……!」

 

 

戸惑う龍騎。いくら装甲を纏っていようが、剣を人に向けるのは抵抗がある。

 

 

「構わないわ城戸さん。須藤さんを叩き割る勢いでやってください」

 

「こ、怖い事を言わないでください巴さんッ!! ですが、はい、構いませんよ? 思い切りきても」

 

 

「だ、だけど……ッ!」

 

 

龍騎はそれでも少し躊躇してしまう。

手に持っている剣は玩具じゃなくて本物だ。それを他人に当てるという事は、相手を傷つけると言う事になる。

なかなか動き出せない真司。シザースもマミも、まどかも呆れ――

 

 

「そうですよね城戸さん。普通剣はヒトに向けないもん」

 

 

――てはいなかった。

むしろ龍騎の反応が当然である事を知っていたため、龍騎を急かす事はしない。

その後しばらく時間が経ち、ついに龍騎は覚悟を決める。

 

「本当にいいんですね?」

 

「もちろん」

 

 

と言うことなので、龍騎はついに剣を構え走り出した!

 

 

「うぉぉぉおおおおおッッ!!」

 

 

そして、剣をシザースに向けて振り下ろす。

 

バキンッ!

 

「………れた」

 

「え?」

 

「折れたぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

なんと、シザースの体に傷一つつける事なく剣は折れてしまった。

そのまま宙に舞う剣の半分。シザースは笑いながら言う。

 

 

「この様に契約モンスターを失えば、限りなく弱体化した状態になってしまいます」

 

 

このまま戦うのは厳しいものがあり、モンスターを失うと言う事は、戦いにおいて大変危険な事なのだと言った。

成る程、だからモンスターを常に出現させる事はしないわけだ。

もし敵がミラーモンスターを狙ってきたら戦いにくい事このうえない。

それを防ぐ為に――

 

 

ブスリ☆

 

 

「………え?」

 

 

叩き折れた龍騎の剣。

その折れた部分は宙を舞って――

 

 

そのままシザースの頭に突き刺さる。

 

 

「――ッた」

 

「………」

 

「刺さったぁああああああああああああああああああ!!」

 

 

パタリ……。

 

 

「す、須藤さんッ? 須藤さーん!? す……、すどっ……! 須藤さぁぁぁぁぁぁああああああああんッッ!!!」

 

 

龍騎とまどかが涙目で駆け寄るなか、マミは一人苦笑していたのだった。

 

 

『危なかったな、シリアスパートなら致命傷だったぜこりゃ!』

 

「何の話……?」

 

楽しそうに笑うジュゥべえを無視して、マミもまたシザースの所へ駆け寄るのだった。

 

 

 

時間は巻き戻る。

城戸真司が龍騎と言う騎士に変身した。その事実は、なんなく受け入れた。

もちろん驚きや恐怖があった事は事実だ。しかし一度変身してしまった――、もとい、できてしまった以上、言い訳はできない。

 

だから、知りたいと望むのは当然だった。

自分が知れる全てをだ。騎士とは何なのか? 魔法少女とは何なのか? 魔女とはなんなのか? 魔女たちとの戦いが終わった後、真司はその事をマミたちに頼んだのだ。

 

 

「……分かりました。お話します」

 

 

話すと言う事は、巻き込む事でもある。

何か良からぬトラブルに、真司を関わらせてしまう事になるかもしれない。

マミ達はそれが心配だったが、真司が言う様に一度足を踏み入れた時点で関わるなとは言えない。

それに絶対に話したら駄目な話でもない。だからマミ達も覚悟を決めて、真司に自分たちが知りえる全てを話す事を決めたのだ。

 

 

「どうぞ、おもてなしの準備もないんですけど」

 

 

後日、マンションの一室に真司と美穂はやって来ていた。

あれからすぐに目を覚ました美穂、特に怪我もしていなかったので一緒についてきてもらった。

デッキの事がある以上、彼女も関係者なのだ。やはり事実は知っておくべきだろう。

マミはもてなす用意はしていないと言いつつ、真司と美穂の前にそれなりに高級そうな紅茶とケーキが置いてくれた。

マミは同じく部屋に来ていたまどか、さやか、サキ、そして須藤にもケーキとお茶を差し出すと、やっと自分も座る。

 

 

「あれ? そう言えば美穂、蓮のヤツは?」

 

「いろいろ忙しいみたいで今日は駄目だって」

 

「なんだよアイツ! 大事な情報があるのに!」

 

「そりゃ私だって同じだよ。いい加減教えてよ、なんなのよコレは」

 

 

実はまだ美穂には一連のことを伝えてはいなかった。

真司は背筋を伸ばすと、正座になり、わざとらしく咳払いを行う。

 

 

「あのな、美穂、落ち着いて聞いてくれ」

 

「うん」

 

「実はココにいるまどかちゃん達はな。魔法少女なんだ。そして俺と須藤さんは、デッキを使って騎士って言うスーパー戦士に変身するんだ」

 

「けつ毛」

 

「うん。ん? いや――ッ、え? 分からん! どういう返しだよ! おまッ、ちょ、もう最低だよ。ごめんまどかちゃん……、お下品なヤツで」

 

「あのね、前にも言ったじゃん。私は真司の趣味は否定しないわよ。否定しないけど、巻き込むのは止めろって」

 

 

美穂はモシャモシャとケーキをむさぼり、ズゾゾゾゾと音をたてて紅茶を啜っていた。

次の瞬間。まどか達は一瞬で制服から魔法少女の衣装に変わり、須藤はシザースへ。ダメ押しにボルキャンサーが美穂の背後に立っていた。

 

 

「………」

 

 

美穂はモグモグしながら辺りを見回す。

状況を確認すると、持っていた紅茶をテーブルにおいて、真司の方を見た。

 

 

「ブボォッホォゥ!!」

 

「なんでだよ!!」

 

 

ケーキの欠片と、紅茶が真司の顔面にシャワーされる。

なぜタイムラグがあった。なぜわざわざコチラを見た。真司の疑問は尽きないが、美穂は青ざめながら呼吸を荒げている。

 

 

「じょ、冗談でしょ……ッ!?」

 

「俺も最初はそう思った」

 

 

とにかく、これで美穂も信じざるを得なくなってしまった。

一旦、彼女が落ち着くのを待ってから、一同は再び話し合いを始めることに。

 

 

「お、オーケー! 美穂先輩も馬鹿じゃないわ。まだちょっと信じられないけど、とりあえずは理解した」

 

 

大まかに理解した美穂は、頭を抑えながらもニヤリと笑ってみせる。

デッキと言う事前異変があったからこそ、まだ精神的な衝撃は低かったのだろう。

 

 

「はいはーい! じゃ、何か聞きたい事はありますか!? さやかちゃんが何でも答えちゃいますよーッッ!!」

 

「24154×325428は?」

 

 

さやかはもう二度と口を開くことはなかった。

そういう事じゃねぇよ。真司に睨まれ、美穂は小さく舌を出して笑う。

 

「やっぱり、まずは――」

 

 

真司は『魔法少女』についての詳細を求めた。

まどか達は一体何者なのか。どうしてあんな化け物と戦っていたのか。それが何よりも気になってしまったのだ。

 

 

「わかりました、まずは私たち魔法少女の事を説明する必要がありますね」

 

 

マミが口を開く。どうやらこの件は彼女が説明する様だ。

真司と美穂は思わず身構えてしまう。目の前にいるマミは、普通の人間よりずっと強い、魔法で戦う戦士なのだから。

 

 

「まずはこれを見てください」

 

「?」

 

 

マミが取り出したのは美しく輝く黄色の宝石だった。装飾が施され、形と大きさはタマゴ程だろうか?

しかしこの宝石、普通の輝きとは違う『輝き』を放っているように見える。美しくも、どこか神秘的なものだった。

 

 

「これはソウルジェム。キュゥべぇに選ばれ、契約を交わした誓いとして手に入れた魔力の源であり、魔法少女の証です」

 

「私たちで言うデッキの様な物ですね」

 

 

須藤が補足を。

成る程、どうやらソウルジェムと言うヤツが魔法少女にとって大切な物らしい。

しかし、気になる発言があった。キュゥべぇと契約? 今はいないが、あの白い生き物と契約した事で彼女達は魔法少女になったと言う事なのだろうか?

その事を問いかけると、マミはしっかりと頷く。

 

 

「キュゥべぇと契約した女の子は、このソウルジェムを手に入れて魔女と戦う使命を課せられるんです」

 

 

魔女。その言葉に美穂は思わず身震いしてしまう。あの時は気絶していた為に姿こそ見ていない。だが、もし真司やまどか達が止めてくれなければ、いくら操られていたとは言え仁美を殺すところだったし、ましてや食われていた。

さらに、まどかとさやか、サキもそれぞれ自分のソウルジェムを真司達に見せる。

宝石の色は違うが、みんな同じデザインだ。

 

 

「でも、どうしてキミ達はそんな契約を?」

 

「……魔法少女になる代わりに、キュゥべぇはなんでも一つ願いを叶えてくれるんです」

 

「!!」

 

 

今、何と言った? 何でも願いを!?

真司たちの驚く顔を見て、マミは念を押す様に言う。何でもだ。たとえそれがどんな不可能に思える事だってキュゥべぇは叶えてくれると。

その代わり、それ以後ずっと魔法少女として戦わなければならない。

 

 

「じゃ……じゃあ、まどかちゃん達は――」

 

「はい。ここにいる皆は、願いを叶えて魔法少女になったんです」

 

 

真司たちは置いていかれている気分だった。自分達がなんの疑問も違和感もなく過ごしていた日常の裏で、そんな事が行われていたとは夢にも思わなかった。

まどか達がどんな願いを叶えたのかまでは聞けなかったが、彼女はその願いを叶える為に命がけの毎日に足を踏み入れたのと言う事なのだ。

 

 

「では、次は騎士について説明しましょうか」

 

「は、はい!」

 

 

いよいよだ。デッキ所有者である二人に緊張が走る。

須藤はデッキを取り出すと、それを真司たちへ見せ付けるように示した。

 

 

「私達もまた、契約の対象に選ばれた物なのです」

 

「え?」

 

「彼女達はキュゥべぇ君に、そして私達はジュゥべえ君に選ばれた存在。と言う事ですかね」

 

 

ジュゥべえ。

彼もまた今日はここにいないが、デッキは彼が用意したものらしい。

その数は不明だが、少なくとも四つは確実にあると言う事になる。

 

 

「じゃあ俺達も願いを叶えるチャンスが!?」

 

 

一瞬、真司と美穂の脳裏にその考えが浮かんだ。どんな奇跡も起こせると言うのなら――。

だが、須藤はすぐにそれを否定する。魔法少女と騎士、互いに妖精から契約を結ぶものだが何よりも決定的な違いが一つ。

 

 

「確かに、私達も願いを叶える事はできます。ただそれは、全ての戦いが終わった後らしいんですよ」

 

「全ての戦い?」

 

「はい、おそらく全ての魔女を倒した時なのだと思います。魔法少女は願いを先に叶え、私達騎士は後に叶えるらしいんです」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

真司は自分のデッキを見る。

中央に輝く龍の紋章、この力は魔女と戦う為の物なのだ。

その後も、須藤が魔法少女と騎士の違いを簡単に教えてくれる。

とはいえ、須藤やマミ自身まだよく分からない事が多いらしい。全ての情報はキュゥべぇ、ジュゥべえが握っている。

あくまでも須藤達は基本的な情報をジュゥべえから聞いただけなのだから。

 

まず、魔法少女は先に願いを叶えられる。

しかし、その先は魔女との戦いの運命から『逃げられない』らしい。

そして騎士は願いを叶えられるのは最後だが、魔法少女よりも制約がすくない分、日常においては負担が少ないと言う一長一短を持っていた。

 

 

「次は魔女の事について話します」

 

 

魔女、魔法少女と騎士にとっての『敵』。

 

 

「魔女については私達もまだ分からない事が多いのですが……」

 

「希望で生まれた者が魔法少女なら、魔女は呪いから生まれた存在だと聞きます」

 

 

希望を振りまく魔法少女とは対なる存在。

魔女は人々に絶望や悲しみを振りまく悪しき存在なのだ。

しかも魔女達は、普通の人間には確認される事はほとんど無い為、それだけ厄介な存在になる。

それこそ、魔女の姿を見る者には死が待っていると言ってもいいだろう。

 

 

『不安や猜疑心、嫉妬や怒り。全ての悪しき性質を魔女はばら撒いているんだ』

 

「!」

 

 

突然頭に声が響いたと思えば、そこにはキュゥべぇとジュゥべえが座っていた。

白い妖精キュゥべぇ、黒い妖精ジュゥべえ。二匹は互いに並びながら説明役をかってでる。

 

 

『厄介なモンだぜ本当によ。お前らもたまにニュースなんかで聞くんじゃねぇか? 理由がよく分からない殺人や自殺。あと未解決事件なんかもよぉ』

 

 

確かに、そういった事件はたまにニュースや新聞で見かけたりする。

自殺する理由が分からない人や、未だに解決していない殺人事件。同じく、未だに見つからない行方不明者。それら全ては高確率で魔女の仕業らしい。

魔女は『口付け』と呼ばれる刻印を相手に打ち込み、洗脳してみせる。

そして自殺や殺人を誘発させ、絶望を連鎖させていくのだ。

 

 

『魔女は結界の中に隠れ潜んでいるから人間にはどうする事もできないんだ。しかも魔女が直接人間を襲う場合もある。城戸真司、キミが迷い込んだあの不自然な世界。あれがそうさ』

 

「ッ!」

 

 

もし、あの時まどか達が助けに来てくれなかったら。そう思うとゾッとする。

仮に騎士になっていたら助かったかもしれないが、もしそうでなかったら自分は今ここにはいないだろう。

 

 

「魔女には自らの従者である『使い魔』を生み出す事ができます。魔女が放った使い魔が人を殺し続ければ、やがて使い魔も母体の魔女に変わるんです」

 

「そ、そんな怖い物と巴さん達は戦ってるって訳?」

 

『魔女が死ぬときに落とす"グリーフシード"と言われるものは魔法少女にとって必要なモノとなる。倒すメリットももちろんあるのさ』

 

「そう、でも結構命がけなんですよ。何故魔女が生まれたのかは分からない。でもこのまま魔女達をほっておく事はできない。たとえ、私達の命を賭けようとも」

 

 

そう言ったマミの目には、何か信念の様な物が感じ取れた。

思わず真司と美穂もその迫力に気おされる。これが本当に中学生の女の子なのか?

 

 

「では最後ですね。騎士と魔法少女についての事です。これは私の自己解釈と予想の域をでない意見なので、あくまでもそう言う意見があるとだけ考えてください」

 

「?」

 

 

真司は思う。

別にジュゥべえとキュゥべぇがいるのだから、彼等に聞けば早い話なのではないか?

しかし、そうではなかった。実はジュゥべえとキュゥべぇには『主人』がいるらしい。

その主人が彼等の記憶に特殊なロックをかけ、情報の流出を防いでいるのだ。

だから、ジュゥべえとキュゥべぇでさえ魔法少女と騎士の全てを知っている訳ではない。

あくまでも契約を交わす事と、基本的な知識しか覚えていないのだ。

そのなか、須藤が口を開く。

 

 

「私と巴さん。城戸くんと鹿目さん。魔法少女と騎士は、恐らくそれぞれ対応したパートナーがいるのではないかと思います

 

 

何かしらの条件が満たされる事で二人がパートナーになるケースも考えたが、まどかと真司はさほど共通点も関わりもない状態でパートナーになった。

ならば、まどかのパートナーは最初から真司だったと、須藤は考えたのだ。

 

 

「ペアになる事ができれば、それぞれはパワーアップできる訳です。しかも騎士は相方を助ける事もできるのですよ」

 

「助ける?」

 

「はい、先ほど魔女を倒すメリットもあると言いましたよね」

 

 

魔法少女の力の源であるソウルジェム。

その輝きは常に保たれるわけではない。魔法少女が魔力を消費するか、時間が経てば徐々に穢れが溜まっていくのだ。

 

 

「その穢れは、魔女を倒した時に落とすグリーフシードで浄化できます」

 

 

どうやら、そのアイテムを得ると言うのが魔女を倒すメリットの様だ。

 

 

「だから、私達は穢れを溜めない為にも魔女を倒さなければならないんです」

 

 

つまり、魔女を倒さずに魔法を使い続ければ、魔法少女は穢れに侵されてしまうと言う事なのだった。そして騎士とパートナーになるメリットの一つとして、そのグリーフシードの問題がある。

本来、魔法少女が穢れを浄化するには魔女が落とすグリーフシードを使うしかない。

だがもしマミやまどかの様に相棒の騎士がいる場合は、魔女や使い魔を倒すだけで穢れがある程度、晴れるのだ。

 

それはつまり、グリーフシードが無くても構わないというメリット。

もちろんグリーフシードを使った方がより早く穢れを祓うことができるし、あくまでも倒すことによる浄化はおまけ程度でしかないが、それでも無いよりはマシである。

 

 

「――と、まあこんな所ですかね。おや、もうこんな時間だ」

 

 

須藤はそう言って時計を見る。

少しの時間で済ませるつもりが、案外時間を掛けてしまった様だ。

自分達ならまだしも、まどか達は学生である。家族に心配させない為、あまり長い時間拘束する訳にもいかないのだ。

 

 

「じゃあ、今日はありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそ時間を掛けてしまってごめんなさい」

 

 

またいつでも来て下さいとマミは笑う。

先ほどまでの緊張した空気も無くなり、思わず真司達も微笑みかけた。

外はもう暗くなってきている。須藤が自分の車で皆を送ってくれると言うので、まどか達はそれに甘える事にした。

一人、また一人と自宅に送り届けて、最後は真司の番となる。

 

 

「あ! そう言えば須藤さんって刑事って言ってましたよね」

 

「ええ、最近は結構忙しいんですよ。真司君を送った後は一度署に戻らないといけないんです」

 

 

最近起こっている事件が原因らしい。

それにしても刑事の知り合いができた事は驚くべきことだろう。

警察官、子供なら一度は憧れる職業である。それは真司も例外ではない。

少しの間だけだが、お巡りさんに憧れた時期があると言うものだ。

 

 

「須藤さんは、どうして刑事になったんですか? あ、あと騎士にも」

 

「私ですか?」

 

「あ! 別に無理にって訳じゃ……!」

 

「構いませんよ」

 

 

須藤は微笑む。真司の家まで、まだもう少し時間はかかる。

その間の暇つぶしと言う事か、須藤は少し恥ずかしそうに口を開いた。

 

 

「夢だったんですよ……正義の味方になるのが??」

 

「え?」

 

 

気恥ずかしいのか、須藤は真司に相槌を打たせないスピードで話していく。

昔から悪者を倒すヒーローに憧れていた。子供の時に見たヒーローは、銀河刑事と言って悪い奴らと戦い、正義を守るヒーロー。

いつか自分もこのテレビの中にいる刑事になりたいと、須藤は思っていたらしい。

 

 

「凄いじゃないですか! 須藤さんは夢を叶えられたんだ」

 

「はは……。どうも。まあ現実は私が夢見ていた物よりずっと厳しかったんですがね」

 

 

そして刑事になってしばらくしたある日。事件の捜査をしていた途中、須藤はカードデッキを見つけた。その時は何も不振に思わず、落し物として処理したが――。

 

 

「その次の日です。私と仲間の刑事は街で指名手配中の犯人を見つけました。私達はその後を追ったのですが……」

 

 

犯人は人気の無い路地に入って行き、何と二人の前で自殺したのだ。

あまりにも唐突だった為に、須藤たちは犯人をみすみす死なせてしまった。

だが、もう須藤たちに犯人の事を思うだけの思考能力は存在していなかった。なぜか? 次に二人の目に飛び込んできたのが異形の姿だったからだ。

 

 

「おそらく、使い魔の罠に私達は嵌ってしまったのでしょう。自殺したのも魔女の口付けがあったからです。とにかく、そのまま魔女結界に引きずり込まれてしまいました」

 

 

そこで仲間の刑事は気絶。須藤は何とかして使い魔達から自分と彼女を守ろうとした。

しかし、いくら刑事とは言え相手は化け物。勝てるわけも無く須藤は死を覚悟したと言う。

 

 

「その時でした。巴さんが颯爽と現れて使い魔を倒してくれたのは」

 

「マミちゃんが!?」

 

 

マミ達は日ごろ街中をパトロールしているらしい。

マミ以外にも、まどか、さやか、サキ。彼女達は町を守る使命を苦痛とは思っていない。

人を恐怖に陥れる魔女を憎み、正義の為に戦うのだ。

 

 

「真司君も驚いたでしょう? まさかこの世に本当の魔法使いがいるなんてね」

 

「は、はい! そりゃもう!」

 

「私も驚きました。ただ、同時に悔しかった」

 

「え?」

 

 

自分は刑事であり、何より大人だ。子供である彼女達に助けられ、何よりも彼女達が自分達の為に命がけで戦ってくれていると言う事実。

刑事と言う職業に憧れていた自分。おそらく彼女達も小さい時に一度くらいは魔法少女に本当になりたい、なれると信じていたのではないだろうか?

そして、自分も彼女達も、その夢見た存在に変わっている。

 

 

「本来、私は彼女達を守る側の筈です。だけど、あの時私は恐怖に怯える事しかできなかった。仲間を助けようとはしていましたが、もし彼女がきてくれなかったら――」

 

 

おそらく、自分は仲間の刑事を見捨ててでも助かりたいと思ったかもしれない。

そんな事を思うと、本当に悔しかった。

 

 

「その時です。私が変わりたいと思ったのは」

 

 

そして、気がつけばコートの中にデッキが入っていた。

頭に響くジュゥべえの声、変わりたいと思うのなら変わればいい。

須藤は、その声に従いデッキを掲げた。その意思と共に。

 

 

「気がつけば私は騎士に変わっていました。それから、巴さんにお願いして魔女退治を協力させてもらっているんです」

 

「そうだったんですか……」

 

「できる事なら、彼女達には戦わないで夢だけ見ていて欲しかった。普通の生活を送って、普通に結婚して、普通に生涯を終える」

 

 

だけど、それはもう叶わない。いや、叶うとすれば魔女を全て倒した時だろう。

だから、須藤は戦う。シザースとして、マミのパートナーとしてだ。

 

 

「魔法少女と騎士が何故ペアになるのかは分かりません。ですが、城戸くんや霧島さん。まだお会いしてはいませんが秋山くん――」

 

 

少なくとも、デッキ所有者の多くは魔法少女達より年上だ。

そして騎士と魔法少女、文字にしてみても分かる。

 

 

「騎士は、魔法少女を守る為に存在するのだと思います」

 

「!!」

 

 

そうかもしれない。

真司だってまどか達を、切に助けたいと願ったから龍騎になれた。

須藤の車が止まる、どうやらアパートについた様だ。真司はお礼を言うと車から外に出た。

そして、別れの挨拶と共に一言だけつけ加える。

 

 

「俺もッ、須藤さんの意見に賛成ですよ! 一緒に魔女を倒しましょう!!」

 

「あはは、期待していますよ。では」

 

 

そう言って別れる真司と須藤。真司の心には何か清清しい物があった。

何がなんだか分からず恐怖したデッキだが。それが人を助ける事ができる力となるのなら、それはとても素晴らしい事じゃないか?

もし、自分が皆を守れるのなら――

 

 

「うッしゃあ!」

 

 

真司は気合を入れてデッキを握り締める。

この力は正義の為に、皆を守る為なのだから。

 

 

 

そして、場面は公園に映る。

 

 

「ハッ!」

 

「す、須藤さんッッ!! 良かったぁ!」

 

 

飛び起きる須藤。どうやら龍騎の剣が頭に刺さった――、ように見えただけで、実際はぶつかっただけらしい。

思わず倒れてしまったから、一大事かと思い龍騎達は焦ったが、特に怪我もない様なので、安心だ。

 

 

「すみません。まさか頭に振ってくるとは――」

 

「まあ、何もなかったから良かったです。今日はこのくらいにしておきましょうか」

 

 

取りあえずカードや戦い方については勉強できた。

真司とまどかは、須藤とマミにお礼を言って帰路につくのだった。

 

 

「でさあ、その金色のザリガニってヤツがさ中々見つからなくてさー……」

 

「へー、すごいなぁ金色なんて」

 

 

並木道を歩く真司とまどか。

はじめ、まどかは年上の真司に緊張してしまい、うまく話せないと悩んでいた。

だがそれに反して真司がベラベラとどうでもいい事を畳み掛ける様に話してきたので、思っていたよりも早く緊張の糸が切れたのだ。

最初はガチガチの敬語だったが、今はなんとか落ち着いているものである。

 

 

「城戸さんは――」

 

「真司でいいよ、まどかちゃん! せっかくパートナーになったんだからさ! 他人行儀ってのも寂しいじゃん!」

 

これから長い付き合いになりそうなんだから、真司はもっと親しくなりたいと思っていた。

 

 

「俺たちパートナーなんだからさ! 遠慮とかは無しって事で! ね!」

 

 

そう言って真司は満面の笑みをまどかに向ける。

まどかは少し照れながらも、真司に満面の笑みを返した。

 

 

「う、うん! じゃあ真司さん! えへへ!!」

 

「オッケーオッケー! 困った事があったらなんでも言ってくれよ。すぐに飛んでいくからさ!」

 

いい人がパートナーでよかった。まどかは安心した様に微笑んだ。

 

 

「真司さんは何か願い事決めたんですか?」

 

「え? お、俺?」

 

 

全ての戦いが終われば、何か願い事が叶うのだ。しかしいざ考えてみると言葉が詰まる。

 

 

「う、うーん……」

 

 

叶えたい願いがない訳じゃない、もちろんそれは願望やらも含めてだ。

無欲で何も願いが無い人間などいないだろう、だからこそ悩んでしまう。

一体、自分はどんな願いを叶えたいのだろう?

 

 

「えへへ、いざ決めようと思うと決まらないよね!」

 

「ははっ、確かに。お、到着だ」

 

 

丁度会話も終わった時、二人はまどかの家に到着する。

今日は土曜日、まどかもお休みだ。このまま帰ってもいいが、それじゃ少しつまらない。

 

 

「まどかちゃん。俺さ、これから友達が働いてる喫茶店行くんだけど、一緒にどう?」

 

「いいんですか!」

 

「もちろん! おし、じゃあ行こう行こう!」

 

「やったぁ! 行きましょう! 行きましょう!」

 

 

蓮にはデッキや騎士の事で伝えたい事もある。

それにアトリの売り上げに貢献するのも悪くはないだろう。

ちょうど暇だった美穂とさやかも誘って、真司達は蓮のいるアトリに向かう。

 

 

「わぁ! おいしい!」

 

「うんまーッ!!」

 

 

15分後、アトリ名物『バケツパフェ』を、まどかとさやかは、もしゃもしゃ食べていた。

習い事で来れなかった仁美の為にお土産を買おうと、二人は盛り上がっている。

 

一方、対照的にシリアスな雰囲気の真司と蓮。

まどか達から離れたテーブル席。真司はデッキを置いて事情を説明する。

真司一人の言い分ならまた妄言だと言われそうだが、今は隣に美穂もいる。彼女も本当だと言う以上、蓮も信じざるを得ないだろう。

 

 

「つまり、お前の話が本当なら、俺達は騎士になる可能性を持っていると?」

 

「ああ、蓮。お前も一緒に戦わないか?」

 

「………」

 

 

もし、魔女を全て倒す事ができれば何でも願いを一つ叶える事ができる。

それはつまり蓮にとって、恵里を助けることができるかもしれない希望となるのだ。

 

 

「だが、少し疑わしいのも事実だ。本当に「蓮さ~ん!」

 

「俺は魔女を放ってはおけない! だからお前や美穂にも協力してほしいんだ!」

 

 

自分達にはその巨大な『悪』に対抗するだけの力がある。

まだ覚醒こそしていないが、美穂や蓮も魔女と戦うだけの十分な力を持っているのだ。

もう知ってしまった。魔女と言う存在、それと戦うまどか達の存在を。

 

もちろん、真司としても魔女との戦いが命がけだと言う事は分かっている。

大切な友人である二人を巻き込むのは心苦しいが、キュゥべぇ曰く最近魔女の力も上がっているらしい。

下手をすれば日常が壊される可能性だってある。別に毎回戦えと言う訳ではない、少しでも力になってくれればと。

 

 

「俺は賛成できんな。仕事にも支障が「蓮さ~ん!」……でる」

 

「でもな蓮! お前は、まどかちゃん達の負担が少しでも軽くなる様にしたいと思わないのか!」

 

「俺には関係な「蓮さ~ん!! 蓮蓮さ~ん!!」…い、話だ」

 

「まあ、頭に女の子乗せて言われてもねぇ……」

 

 

冷たい目の美穂。

シリアスな雰囲気かと思われていた二人の会話だったが、終始蓮の頭には女の子の顔がある。

クセのある黒髪、にっこりと笑い蓮にしがみついている少女。名は『かずみ』と言うらしい、オーナーの親戚で一緒に住んでいるらしいのだが――

 

 

「さっさと離れろ、邪魔だ」

 

「やだよぉ!」

 

「………」

 

蓮は諦めたようにため息を漏らす。

何度注意してもかずみは蓮の側を離れない。

一応自分の親戚でもあるため無下に扱う事もできず。結局、折れるしかなかった。

 

 

「まあいいんじゃないの、微笑ましいよマジで」

 

「ならば何故ゴミを見る様な目で俺を見る。変な事はしていないからな」

 

 

まあまあと真司は二人を落ち着ける。

とり合えず自分達が置かれている状況が普通ではない事を知ってもらえただけで十分だ。

少し冷たい言い方かもしれないが、騎士は魔法少女とは違って絶対に魔女と戦わなければならない理由はない。

変身できる様にしておくだけでも何かと後で役に立つかもしれないのだ。それだけは言いたかった。

 

 

「あー、おいしかった! 満足満足!」

 

「さやかちゃん! だらしないよもぅ!」

 

 

おなかをポンポンと叩きながらさやか達がやってくる。

どうやらバケツパフェを食べ終わった様だ。手には、お土産も見える。

そして、そこで初めて顔を合わせる蓮とまどか達。とり合えず挨拶を交わすが、それより早く反応したのは、かずみだった。

 

 

「!」

 

 

かずみの、所謂『あほ毛』がピキっと反応したかと思えば、本人は満面の笑みを浮べる。

そして、あれほど言われても離れなかった蓮の背中からいとも簡単に飛び降りると、まどか達のもとへ一直線に駆け寄った。

しかし何故? 真司と美穂が首をかしげる様子を見て、蓮が事情を説明した。

 

 

「かずみは今度、見滝原中学に転校するんだ」

 

「へぇ! じゃあまどかちゃん達と同じクラスになるかもしれないんだな!」

 

「そうなんだ! よろしくねかずみちゃん!」

 

「うん! よろしくねー!」

 

 

ソレを聞いたまどか達は、かずみに微笑みかけ自己紹介を行なう。

かずみもまた自己紹介を行い、三人はさっそく何かの話で盛り上がってしまった。

その様子に蓮はクールに笑ってみせる。所詮は子供だ。

 

 

「おーおー! かわゆいヤツめ! 一緒のクラスになるといいねぇ!」

 

「うん、かずみちゃん。何か困った事があったら――」

 

「魔法少女……!」

 

「「へ?」」

 

 

さやかとまどかは、一瞬で固まる。

かずみは変わらない笑みを浮べながら、二人にその言葉を投げかけた。

 

 

「魔法少女だよね二人共! わたしもなんだ! よろしくねー!!」

 

 

チリン! と、鈴型のピアスを鳴らして、かずみはニコリと笑った。

 

 

 

 

「いやー! それにしてもまさか、かずみちゃんが魔法少女だったなんて……!」

 

「とり合えずかずみちゃんの事は明日にでもマミさんに相談しようって――」

 

 

帰り道、まどかと真司は先ほどと同じ様に並木道を肩を並べて歩いていた。

とり合えず固まったまま動かなくなった蓮を放置して、解散にする。

さやかと美穂を送りとどけ、後はまどかだけとなった訳だ。

 

 

「でも味方が増えたって事は喜ぶ事なのかなぁ?」

 

 

かずみがあのタイミングで言った魔法少女と言う言葉。

嘘である訳がない、おそらく彼女もキュゥべぇと契約した魔法少女なのだろう。

最近キュゥべぇの姿が見えない日が多いのも、契約に精をだしている証拠なのだろうか?

まあ、なんにせよ魔女と戦う仲間が増えたことはいい事なのだろう。まどかと真司も驚きこそしたが、これからの事を考えると楽になる。

そんな中、ふと真司はまどかに『ソレ』を聞いてみた。

 

 

「わたしが魔法少女になった理由ですか? えっと??」

 

 

以外にもまどかはすんなりと理由を話してくれた。

彼女が魔法少女になろうと思ったきっかけは、真司や須藤とほぼ同じだった。

そう、それはさやかと共に使い魔に襲われていた所をマミに助けられた時。

 

 

「あの時のマミさんもかっこよかったなぁ!」

 

 

しかしその時、マミは一人だった。

今は自分やサキ達がいるから彼女の負担は軽くなったものの、その時はマミ一人で多くの魔女達から人を守っていたのだ。

 

まどかとさやかは、マミに助けられてから彼女の元で魔法少女と言うものをいろいろと勉強した。魔女や使い魔と戦う毎日、その中で必死に戦いつづけるマミ。

そんな彼女を見ている内に、まどかは思うようになっていた。

 

 

「わたしって、昔から得意な事とか、人に自慢できる才能とか何もなくて……。これから先、ずっと誰かに迷惑ばっかりかけて生きていくのかなって」

 

 

まどかはそれが嫌で仕方が無かった、悔しくて情けなくて、なによりも怖かった。

だけど、マミと出会い戦っている姿を見ている内に、知る。

 

 

『まどか。ボクと契約して、魔法少女になってよ!』

 

 

キュゥべぇから言われた言葉。

それは彼女にとって何よりの希望、そして、何よりも嬉しかった言葉だった。

マミの力になれる、人を守る力を手に入れる事ができる。何もできず、何の役にも立てない自分を超えられる!

 

 

「こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって! 胸を張って生きていけたら、それが一番の夢だから……!」

 

 

だから、鹿目まどかの望み、願いは魔法少女になる事で叶えられた。

彼女は魔法少女になれたらそれだけで良かった。

 

 

「わたしの願いは『誰かを守れる様、強くなりたい』それがわたしの……、戦う理由だから」

 

 

そう言って、まどかはもう一度笑ってみせる。

その優しい笑顔の裏にあるのは、何よりの決意。

もちろん、彼女の戦いは辛いものだ。傷つき、くじけそうになった時もある。

 

だが、彼女の家族。友達、仲間。

そして何より世界を守れる事は、彼女達にしかできない事。

だから鹿目まどかは戦う。魔法少女として、この大切な平和を乱す魔女と戦うのだ。

 

 

「そうだったんだ……」

 

「あはは、やっぱり甘いかな……! 明確な理由も無しに魔法少女になって」

 

「いや! そんな事は無いって。俺、感動したよ!!」

 

 

まだ中学生なのに彼女が随分と大きく見えた。改めて魔法少女の大きさと重さが伝わってくる。きっと今までもどこかで、彼女達が助けてくれた時があったかもしれない。

ならば自分が彼女達の助けになれれば、それはとても素晴らしい事だ。

 

 

「俺も、まどかちゃんと似た様な事、思ってたよ」

 

「え?」

 

 

そう、そしてそれは真司もまた同じだ。弱くて何もできない自分を超える。

自分の力がそれを可能にしたのなら、それを守る為に戦いたい。

 

 

「まどかちゃんはぜってー俺が守るからさ! 安心しててよ!」

 

「え? あ……、わたしは――ッ」

 

 

何故か、その時少しだけまどかの表情が暗くなった。

 

 

キィィイイィイイィイン――!

 

 

「「!」」

 

 

その時、二人の頭に耳鳴りに似た音が聞こえる。

一体何なのか? 戸惑う二人だが、何かあるとすればそれは一つしかない。

 

 

「「魔女!」」

 

 

二人は頷き合うと、音が強くなる方へと走りだす。

正直、戦うのは怖い。戦いたくないと言えばそれは本当なのかもしれない。

だけど、まどかは真司を見る。そして真司はまどかを見る。もう一度微笑んで頷く二人。

自分は一人じゃない。それが嬉しかった。

 

 

「見てッ! 真司さん、あそこの公園!!」

 

「魔女結界か! よし、行こうまどかちゃん!」

 

 

小さな公園。しかしそこからは真っ黒な闇があふれ出していた。

二人はその闇の前で立ち止まる。真司は左手でデッキを取り出すと、前方に突き出す。

装備されるVバックル。そのまま右腕を斜め左へ突き上げた。

それを見ていたまどか。彼女もソウルジェムを右手に持って、前に突き出すと、左腕を斜め右へ突き上げて叫ぶ。

 

 

「変身!!」「へんしん!」

 

 

二人の姿が変わる。赤い龍騎士と、龍の紋章を刻んだ魔法少女。

二人は気合を入れて魔女結界の中へと飛び込むのだった。

 

 

『●●●●』

 

 

結界の中でその身を潜めていたのは、魔女ではなく、使い魔『ゴフェル』。

灰色のローブに身を包んでいる人型の使い魔だった。

ローブの中は闇が広がっており、その姿を確認することは不可能の様だ。

ゴフェルは、結界の中に異物が進入してきた事を悟ると早速攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「うぉッッ!!」

 

 

ゴフェルのローブから、闇の弾丸が放たれ龍騎の前に迫る。

なんとか地面を転がってそれをかわすが、油断はできない、すばやく一枚のカードをバイザーにセットした。

 

 

『ソードベント』

 

 

光と、鏡が割れる様な音。

それと共に龍騎の手にはドラグセイバーが装備された。そのまま龍騎はゴフェルに切りかかろうと走り出す。

 

 

「ッ!」

 

 

しかし、イマイチ視界が悪い。

真っ暗の世界に、申し訳程度に宝石が散りばめられただけの魔女空間。

とにかく暗いのだ。ゴフェルの動きは中々素早いため、この視界の中で動き回られるのは厄介なものだった。

 

 

「えいっ!!」

 

 

その時、光が見える。まどかが放つ弓矢がこの暗闇を切り裂いていく。

明るくなるのは一瞬だが、それだけでも十分だった。龍騎はその明かりを頼りに、ゴフェルに鋭い一撃を叩き込む。

 

 

『●●●●!!』

 

「!」

 

 

しかし切り裂かれたゴフェルは霧状に散布し、そのまま上空へと舞い上がった。

そして、一気に龍騎めがけ突進してきたではないか。

 

 

「しま――ッ!」

 

 

攻撃を受ける龍騎。だが痛みは襲ってこなかった。

 

 

「まどかちゃん!?」

 

 

そこには、龍騎を庇うまどかの姿があった。

明らかに鎧を纏っている龍騎の方が防御力に特化している筈なのに何故?

ミルシー戦が脳裏に浮かび、龍騎の心が痛みを発する。また守れなかった、龍騎は心配そうに手を伸ばす。

 

 

「えへへ、大丈夫」

 

 

まどかは心配無いと笑ってみせる。

何故ならば、まどかはこれでよかった。彼女自身がこの選択を選んだからだ。

まどかの望みは"人を守る事"だ。魔法少女の能力は、願いによって反映されるケースが多い。だからなのかは知らないが、まどかの魔法は他者を守る時に効果を発揮する。

 

 

「誰かを庇うとき、わたしのスピードと防御力が格段に跳ね上がるみたいなんです。だからッ、わたしは大丈夫!」

 

 

もちろん魔法は任意発動であるため、ミルシー戦のときはパニックになって魔法を発動せずに真司を庇ったが今は違う。

仲間として、味方として、何よりも――!

 

 

「パートナーは、助け合いかなって!」

 

 

パートナーとして龍騎を支えられる。それが嬉しかった。

 

 

「ッ!」

 

 

守られるだけが絆じゃない。助け合う事が大切なんだ。

真司はまどかを傷つけたくないと思っていた。だが、それはまどかも同じ。自分を守る為に誰かが傷つくなんて嫌だった。

 

だからまどかは先ほど真司が言った事に、複雑な表情を浮べたのだ。

まどかはそれを否定する。真のパートナーは、多少傷ついても守り合う。助け合いなのだと。

 

 

「だから、真司さんはわたしに構わず戦ってください! 守る事はわたしがやりますから! わたしの魔法は、その為にッ!」

 

「……ッ! わかった! ちょっとだけ我慢しててよ!」

 

 

龍騎の雰囲気が変わる。本当の意味で、まどかとパートナーになる為に!

 

 

「ッしゃあああッッ!!」

 

 

気合を入れる龍騎。一瞬だが複眼が赤く光った気がする。

 

 

(落ち着け! おそらくアイツは切っても無駄なんだ!)

 

 

ならば、ソードベントは意味を成さない。

でも大丈夫、カードは一種類だけじゃない。ちょうどいい、新しく手に入れた力を試そうではないか。

 

 

『シュートベント』

 

 

龍騎の手に"ドラグアロー"が装備される。

そして、まどかも絆の魔法『ユニオン』を発動させた。

使うのはストライクベント。ドラグレッダーの頭部を模した"ドラグクロ"ーがまどかの手に装着される。

 

 

「こんの――ッッ」

 

 

龍騎はドラグアローを振り絞り狙いを定める。

まどかの矢が放つ、僅かな光をたよりにして、龍騎はゴフェルに弓を放たなければならない。チャンスは一度、龍騎は神経を研ぎ澄ませゴフェルの動きを見据える。

 

 

『●●●!!』

 

 

そうとも知らないゴフェルは、真っ直ぐ龍騎達めがけ突進していく。

それが間違いだった、龍騎の直線状に存在するゴフェル、もう逃げ場はない。

龍騎はその手を離した。直後、風を切り裂き放たれるドラグアローの矢。

 

 

『●ッッッ!!』

 

 

ゴフェルの胸に突き刺さった矢は、そのまま結界の限界位置まで運び、磔にする。

だが、まだ終わらない。ドラグアローには特殊効果が存在するのだ。

それは、ロックオンと燃料。まどかドラグクローを思い切り突き出し、火炎弾を発射した。

 

 

「やああああああっっ!!」

 

 

通常ならば、火炎弾は真っ直ぐにしか飛んでいかない。

しかし、ドラグアローを打ち込まれた今のゴフェルは、ロックオンが成されている。

つまり――

 

 

『●●●●ッッ!!』

 

 

火炎弾は引き寄せられる様にドラグアローへと向かって飛んでいき、そのまま着弾。

しかも矢先はひし形の燃料でできており、爆発の威力が倍増する。

そう、まさに大爆発。粉々になるゴフェルと破壊される結界。龍騎達の勝利だった。

 

 

「やったぁ! 勝ったよ真司さん! えへへ!」

 

「うっしゃあッ! ナイスアシストだったぜ、まどかちゃん!」

 

 

二人はハイタッチを決めると、同時に変身を解除した。

それと同時に、ゴフェルがいた場所に光の球体が出現する。それをどこからともなく現れたドラグレッダーが捕食し、その欠片をまどかのソウルジェムに分け与えた。

まどかのソウルジェムが浄化され、ドラグレッダーは少し強力になる。パートナーを組んだ者だけが得られる特権だ。

 

 

「まどかちゃん。俺、少し勘違いしてたよ」

 

「え?」

 

 

パートナーは互いを守る為だけの存在じゃない。助け合い、高めあう存在なのだ。

まどかにも心がある。やはり、パートナーが傷ついている姿は見たくないに決まってる。

だから真司はその手を。まどかに向けて差し出した。

 

 

「もっと、強くなって。誰も傷つかない様に。"俺達"で一緒に頑張ろう!」

 

「!!」

 

 

まどかは、笑顔を浮べてその手を握り返した。

 

 

「はい! こちらこそ!」

 

 

龍騎とまどか。騎士と魔法少女の物語はここから始まるのだ。

 






かずみ勢はオリジナル色が強めです。
とにかくハートフルな物語にしていこうと思います(´・ω・)
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