仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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今日は二話更新します。
なるべく早めにしていきたいですが、誤字がッ、文字化けが! ひぃひぃ( ;´・ω・`)



第5話 焼肉定食 食定肉焼 話5第

 

朝、それは嫌でも毎日やってくるものである。

今日も眠そうに目を閉じていると母親と、まどかは肩を並べて歯を磨いていた。

 

 

「最近……、どうよ?」

 

「うん、楽しいよ。新しいお友達もできたんだ」

 

「ああ、前に……、話してた、かずみって娘?」

 

 

二人は同時に口をゆすいで吐き出す。

シンクロっぷりを見るに、やはりこの二人は親子なのだろう。

 

 

「あと、真司さんとか秋山さん、美穂先生も」

 

 

顔を洗うまどかだが、タオルの位置が分からずに手をジタバタと動かす。

 

 

「なんか最近すごい友達が増えてくわね、まあいいけどさ」

 

 

まどかの母、鹿目(かなめ)詢子(じゅんこ)は、まどかの為にタオルを手の方へ持っていく。まどかはお礼を言うと顔を拭いて鏡を見た。

母親も化粧が完成したみたいで、二人は会社と学校。それぞれに分かれて行くのだった。

 

 

「いってらっしゃいまどか」

 

「いっれらっさいまろかー!」

 

「あはは、いってきます!」

 

 

この当たり前を守る為に、今日もまどかは一歩を踏み出すのだ。

そんな、彼女を見つめる影が一つ。ほむらではない。そしてそれは魔女でもなく、使い魔でもなく――。

その影は、ニヤリと笑った。

 

 

「鹿目まどか、か……」

 

 

せいぜい、残り少ない幸せでも謳歌する事だな。

絶望のカウントダウンは始まった。お前も、お前の仲間も全ては『愚かな歯車』に飲み込まれるんだ、もちろんそれは――

 

 

「アタシ様も同じってね」

 

 

大きな魔女帽子を被った少女は、ニヤリと笑うと踵を返した。

 

 

 

 

 

「おぉ! やったぞ真司! これは中々のスクープだ!」

 

「でしょう! いやぁ、駆け回ったかいがありましたよぉ!!」

 

 

BOKUジャーナル。そこには四人の人間が働いていた。

編集長である大久保(おおくぼ)大介(だいすけ)、ジャーナリストの桃井(ももい)令子(れいこ)、システム担当の島田(しまだ)奈々子(ななこ)

そして、城戸真司だ。

 

四人しかいないと言う事もあって、中々仕事は厳しいものがあるが、それでも彼らの実力は確かなものだ。

このBOKUジャーナルが潰れずに残っているのもその証拠だろう。

真司は久しぶりのスクープ、金色のザリガニのネタをどこよりも早く見つけ、伝える事ができた。

こう言う小さな事件やスクープでも、待っている人がいる。その人の為に彼らジャーナリストは日々新たなる情報を求めている訳だ。

 

 

「編集長、こっちもうまくいきそうです」

 

「おお、そうかそうか! 期待してるぞ令子!」

 

 

一方で令子の方も何かネタを掴んだようだ。

なにやら、最近平和なのをいい事に、見滝原の警察がたるんでいると言う話を聞いたのだ。

たしかに平和なのはいい事だが、それを理由に堕落するのはどうだろう?

 

聞けば、違法賭博に手を染めている者もいるとか。

警察の情報を暴力団にリークする者。軽犯罪に手を染める者。最近の警察にはモラルが問われてしまう時代となった。

手錠をかける者が手錠をかけられる、なんとも皮肉な話ではないか。

 

ましてや、最近おきている猟奇殺人の事もある。

見滝原はまだ関係ないとは言え、こんな事ではどうするのかと言う市民の不満は大きいようだ。

 

 

(須藤さんも大変なんだな……)

 

 

令子はまた取材をする為に外へ出て行く。その背中を真司はただジッと見るしかできない。

一方の警察では真司の予想通り、不祥事の件のでかなり慌しくなっていた。警察署の入り口には記者達が溢れ、対応に必死なものである。

やはり時期が悪かった。人を恐怖のどん底に落とした連続猟奇殺人の真っ只中に違法賭博だのと、市民の怒りも倍増するのは当たり前だ。

 

 

「やれやれッ、また不祥事ですか! 全く、一体何を考えているんだか――ッ!」

 

「まあ落ちついて須藤。彼らも人間なんだから、怒ってたってしょうがないわ」

 

 

苛立ちを隠せない須藤。

そんな彼をなだめるのは、石島(いしじま)美佐子(みさこ)。須藤にとって警察内でのパートナーであり、女性刑事でもある。

最近頻繁に起こる警察の不祥事。確かに美佐子の言う通り、一個人が怒っても何にもならない。

 

 

「それでも、怒らずにはいられませんよ。市民の手本となるべき存在が、情けない……!」

 

 

警察が犯罪に手を染める。

それを知った子供達はどうなる? きっと裏切られた気持ちになるに違いない。

それはとても悲しい事だ。きっと今も警察の仕事に憧れている子供がいる。警察学校で必死に勉強している人がいる。

その人達の夢の為にも、自分達は常に模範的でなければならないと言うのに……。

ああ、苛立ちが止まらない。須藤は舌打ちを零し、歯を食いしばる。

 

 

「須藤、気持ちは分かるけど……。あまり何でもかんでも噛み付くものじゃないわ。この前も上層部に喧嘩をふっかけたそうじゃない」

 

「あれは、警察に圧力をかけてくる者に屈しそうになったからです! 人を傷つけておいて無罪なんてありえないッ!!」

 

 

美佐子は須藤を落ち着けるのに必死のようだ。

須藤の生き方はあまり賢い物とは言いがたい、いつか痛い目を見させられるのではないかとヒヤヒヤしてしまう。

 

 

「須藤……。正義と言うものは愚直な物じゃないの。残念だけど、それが現実なのよ」

 

「ええ、かもしれませんね……」

 

「どうにも貴方は夢を見すぎな気がするわ」

 

耳が痛い。その時だった。須藤にお呼びがかかったのは。

 

「っ? 何かしら?」

 

「わ、わかりません。まあ行けば分かるでしょう」

 

 

須藤は渋々立ち上がり、お呼びが掛かった方へと歩いていく。

そして、所は変わり、見滝原中学校。今は授業中なのだが、なにやらクラスがザワついている。

 

 

「はい中沢君! 女性が困っていたら貴方はどうしますか!!」

 

「え……? えっと――ッ た、助けるんじゃないかなぁと思いますけど、それは」

 

「声が小さいィイイイイイイイイイッッ!!」

 

「は、はひぃ!! た、助けます!!」

 

「まだまだぁぁあああああああッッ!!」

 

「助けますぅぅぅうッッ!!」

 

「よろしいッ! そうですね、助けるのです!! それに比べて最近の男ときたら!!」

 

 

今日も早乙女先生は本調子の様だ。

呆れ顔の生徒達を無視して、過去の男に対する愚痴を浴びせていく。

ああ、中沢君。恨むのであればその席になった自分を恨んではくれまいか。

同情の視線が中沢を貫くなか、やっと先生は落ち着きを取り戻したのか、冷静な表情でその言葉を口にした。

 

 

「はい、じゃあ今日もまたこのクラスに転校生がやってきまーす」

 

「「「「………」」」」

 

 

どええええええええええええええええッッ!!??

 

あまりにも淡々と呟く先生に、一同からの絶叫に似た声が上がる。

とは言え、まどか達にはそれが誰なのかはもう分かっていた。

先生が『彼女』の名前を呼ぶ。すると教室の扉が勢いよく開いて、女の子が顔を見せた。

 

 

「じゃあ自己紹介してもらいましょうか」

 

「はい! 立花かずみです! よろしくねー!」

 

 

元気を具現させた様な女の子。かずみの登場で教室が一気に明るくなった様な気がする。

暁美ほむらに続く第二の転校生、クラスのテンションも上がると言うものだ。

まどか達もかずみと同じクラスになれた事が嬉しいのか、早速彼女の周りに集まっていった。

しかし、そんな中で冷たい空気を放つ少女が一人。

 

 

「ッ」

 

 

暁美ほむら。

彼女は冷めた目で、そして焦りの心でかずみを見ていた。

かずみに会うのは『初めて』だ。そうだ、ありえないのだ。しかしありえている。前だってそう、ゲルトルート戦でまどか達があんなに苦戦するなんて思わなかった。

駆けつけた時には勝負が決していたからいいものの、『彼女』が危険になった事は言うまでもない。

 

 

(この時間軸は異質すぎる……)

 

 

見知らぬ魔法少女に、なによりも騎士と言う存在。そして謎のパートナーシステム。

それだけではない、初めて見る『魔女もどき』。全てがおかしい。

ここは身を潜めるべきなのか? いや、いずれにせよ、『彼女』を守る為なら動かなければならない。

 

もう少し調査してみるのもいい。

確実に起きている異変、それはほむらにとっても希望となるかもしれないのだ。

ほむらは唇を噛んで『彼女』を見る。絶対に救う方法がある筈だ。

必ず。そう、必ずある筈なんだ。ほむらは虚空を睨みつけ、自分に何度も言い聞かせていた。

 

 

その日の夕方。とある食堂に、その男はいた。

 

 

「えー!? いいじゃないっすか! 絶対返しますから!!」

 

 

携帯の向こうでは先輩の怒鳴る声が聞こえてくる。

コッチだって二週間もやしの生活なんだと。つまり、向こうも金欠状態と言う訳か。

 

 

「わかりましたよぉ、まあじゃあ諦めます」

 

 

そう言って男は電話を切る。どうやら頼れると思っていた先輩は、とんだ役立たずだった様だ。

 

 

「ん~。まあ、こんなモンなのかなぁ?」

 

 

青年はため息をついて、一ヶ月の給料が入った袋をポケットに押し込んだ。

はっきり言って少ない。もっとあっても良い。となれば正社員の方がいいのだが、ネクタイをしめたり8時間以上も拘束されるのは合わない。向いてない。

 

できれば、楽して生きたいものだが、なかなかそういかないのが人生の辛いところだ。

どこかに一発ドカンと稼げる話はないものか。ここ最近そんな事ばかり考えて生きている。

あぁ、それにしても金が欲しい。ダルい生活はうんざりだ。

 

 

「おー、うまそー」

 

 

しかし、大切なのは何よりも今だ。目の前にある焼肉定食が自分を呼んでいる。

二週間もやしで耐え抜いた甲斐があった。今は何よりこの食事を堪能しようじゃないか!

男は早速、割り箸を手に、眩しい程の輝きを放つ白米へ手を伸ばし――

 

 

「………」

 

「………」

 

 

ふと、男の手が止まる。

何か――ッ、目の前に小さな女の子がいるのだが。

しかもこの娘。物凄い表情で男を――、この定食を睨んでいる。涎を隠す事なく、腹をグーグーと鳴らして定食を見ている。

 

 

「「………」」

 

 

な、なんなんだよこのガキ! 親はどこにいるんだ? しっかり見ておけよ!

男は苛立つ心を覚えながらも、ご飯を口に入れようとする。

 

 

「ジィィ……」

 

「………ッ」

 

 

だが、入れられなかった。

食いづらい、非常に食いづらい! まるで飢えたライオンの様に、女の子はジッと見つめてくるじゃないか。

 

と言うか、既に表情が語っている。

わたしによこせと、お前のその焼肉定食をわたしの腹の中に送れと、送ってみせろと! 顔が語っている。

 

 

「や、やらねーぞ! ほらほら、ママの所に帰りな! シッシ!」

 

 

男は手で女の子を追い払うジェスチャーを取ってみせる。

鬱陶しいったら無い、こんな子供に構っているほど暇じゃないのだ。

それにしても本当にムカつくガキではないか。なによりも、こういう子に育てているだろう親がムカついて仕方ない。銃があったら今すぐ撃ち殺してやりたかった。

 

 

「………」

 

 

ともあれ、女の子は諦めたのか、踵を返してトボトボと離れていく。

その寂しげな後姿。そして肉に手を伸ばした瞬間、確実に振り返ってくるその様。

何か、周りからみれば青年が女の子をいじめている様にしか見えない。遠くの席に座っているおばさんがコチラを睨んでいるのは気のせいだろうか?

 

 

「はぁ……。厄日だぁ」

 

 

 

 

 

あぐあぐッ! もフッ! はふはふっ! えふっ ごっきゅん!!

はむはむっ! えぐえぐッッ!! もぎゅもぎゅ! えぐっ! ごきゅごきゅ!

むちゃむっちゃ! ごくごくごくごくッ!

 

 

「はぁ」

 

 

青年は七回目のため息を漏らす。

結局、一度も口に入れる事がなかった焼肉定食¥1200が、目の前の幼女の腹に消えていく。

 

 

(くそっ! こうなったらこのガキの親に謝礼をふんだくってやる!)

 

 

青年が決意の炎に包まれるなか、女の子は何かを喉に詰まらせてしまったようだ。

このまま放置していじめるのも悪くはないが、それでは少し目覚めが悪い。青年は水を女の子に差し出して、背中を叩いてやる。

 

 

「キミさぁ、あんまり焦って食わないでよ。それ高かったんだからさ、もっと味わった方がいいって」

 

 

女の子は了解したのか、こくりと頷いてゆっくり食べ始めた。

しかし、辺りを見ても女の子の親らしき人物がいない。一体この娘はどこから来たのだろうか?

 

 

「チビちゃん、お前さ、お名前は?」

 

「……千歳(ちとせ)ゆま」

 

「ふぅん、ゆまちゃんかぁ。もしかして迷子ってヤツ?」

 

 

ゆまは沈黙する。

なぜ沈黙するのか全く分からなかった。

ただ一つ分かる事があるならば、関わったら面倒な事になりそうと言う事だ。青年としては飯を奢ってやったんだ、それだけで十分だろう。

これ以上ゆまに関わる必要性はない。青年はさっさとこの場を離れる事を決めて、ゆまに別れを告げる。

 

 

「この飯屋は食券タイプだから、食い終わったらそのまま店を出な。そこで立ってれば親も君をみつけるだろうよ」

 

 

おまけだ。ポケットに入っていた飴をゆまに持たせる。

これでこのガキともサヨナラだ。飴の一つや二つくれてやるのもいいだろう。青年はそのまま定食屋を出て歩き出した。

 

 

「でも、腹が減ったなぁ。コンビニでオニギリでも――」

 

 

なにやら気配がする。

ふと、後ろを向いたらば、ゆまの姿が見えた。

 

 

「は!? つ、着いてきたのか!?」

 

「………」

 

 

無言で頷くゆま。青年は頭を抱えてゆまに駆け寄る。

 

 

「あそこにいれば親が来るって! 今からでも遅くないからさ、さっさとあそこに戻りな! ほら、さあ!」

 

 

その時、ゆまはしっかりと首を横に振った。

 

 

「あそこに、戻りたくない」

 

「え?」

 

 

それだけ。ただそれだけしか言わなかった。あとは、何度理由を聞いても『あそこに戻りたくない』だけ。『あそこ』がどこなのか青年には分からないし、戻りたくない理由もさっぱりだ。

ますます、どうにかできる問題ではない。

なにより、ついてこられても何もできないし、迷惑だ。

 

戻りたくないとは言え、向こう側もゆまを探しているに違いない。

もし、このままゆまを連れて行けば、それこそ警察沙汰に巻き込まれる事は想像に難しくなかった。

 

 

「ちょっと冗談キツいって。そんなのゴメンだね」

 

 

何とかしてゆまを撒く方法はないものか、考える。

 

 

「!」

 

 

そして思いついた。青年はゆまにこの場で待っている様に言う。

 

 

「ジュースを買ってきてやるよ、ここで待ってな。ゆまちゃん」

 

「!!」

 

 

パッとゆまの表情が明るくなった。コクコクと何度も頷き、動きを止める。

もちろんこれは嘘だ。ジュースを買いに行くと走り、もう戻ってこない。

その内にゆまも諦めて帰るか、もしくは他の人間が気にかけるだろう。

 

 

(じゃあなガキ。もう二度と会う事もないだろうけど――)

 

 

青年は小走りでゆまから離れていく。

早くしないとバレる可能性もあった。青年はスピードを速めて、あとはもう一度も振り返る事はなかった。

 

 

「………」

 

 

一方のゆま。

ずっと青年の帰りを待ち続けているが、一向に戻ってこない。

 

 

「ひぐっ……」

 

あたりも暗くなってきた、だけど男は一向にこない。

一度探しに行こうと思ったが、そこにいろと言われた。

約束を破ってはいけない、ゆまは涙を拭くとまたベンチに深く腰掛ける。

途中、何度か他の大人に話しかけられたが、待っている人がいると動かなかった。

 

 

「………」

 

 

誰もいない公園。そこに一人ぼっちのゆま。

目を閉じると思い出したくない事まで鮮明に思い出してしまう。首をふると、来るはずのない人を待った。

 

それから、どれだけ待ち続けただろうか?

辺りが完全に夜へと変わった時、ふと耳に『声』が聞こえてきた。

 

 

『どうして……君はそんなに馬鹿なの?』

 

「えっ!」

 

 

辺りを見回す。

そこで気づいた、場所が変わっている?

いや違う。変わっているんじゃない。これは――ッッ!

 

 

『馬鹿のくせに、哀れなくせに何もできないならさ、いっそ!』

 

 

死んじゃえばいいんだ。

 

 

『▲▲▲!!』

 

「ひ――ッッ!!」

 

辺りが暗闇に包まれ、ゆまは思わずベンチから飛び降りた。

暗い、真っ暗だ。そこで思い出す、思い出してしまった。

 

 

「やだぁッッ!! ごめんなさいぃ!! ゆるしてぇ!!」

 

 

暗闇が記憶を掘り起こす。

何度謝っても、何度懇願しても暗闇から『あの人』は解放してくれなかった。

苦しい、悲しい、怖い。でも、誰も助けてくれない。

むしろ笑い声が聞こえてくるようだ。

 

闇がゆまに迫る。

ああ、また思い出した。閉じ込められた日の事を。

ゆまが悪いの? ゆまが馬鹿だから閉じ込めるの?

それとも嫌いだから? 何も、できない……。役たたず。

 

 

『▲▲▲!!』

 

 

暗闇にはっきりと映る白い線。

それで構成される体はまるで猫の様、だが頭部は金平糖の様に弾けている。

暗闇の使い魔、『ウラ』は、うずくまって震えているゆまを食い殺すため、ゆっくりとにじりよっていく。

 

ゆまが、かもし出す絶望と悲しみの香りは使い魔にとって何よりのスパイスだ。

きっと噛み付けば、もっといい悲鳴を上げてくれるのだろう。

噛み千切れば、きっと良い絶望を振りまいてくれるのだろう。

 

 

「ヒッ!! いやああああああ!!」

 

ウラに気づいたゆま。助けを求めて走り出す。

逃げられる筈もないのに。愚かな行為だ。

 

 

『▲▲ッ!!』

 

 

ウラはゆまに飛び掛った。

だがウラは知らない。この街には、魔の侵略を許さぬ存在がいる事を。

 

 

『▲ッッッッ!!!!』

 

 

着弾していく光。吹き飛ぶウラと、目を丸くするゆま。

何が起こったのか。立ち尽くすゆまを優しく抱きしめて、安全な場所に移動させたのは――、巴マミだ。

 

 

「大丈夫だった? 怪我はない?」

 

「う……、うん!」

 

 

マミは優しく頷くと、ゆまの周りに結界を張る。

颯爽と現れた魔法少女は、ゆまの目に映る美しいヒーローだ。

 

 

『▲!!』

 

 

邪魔されたことに怒ったのか。ウラはマミに向かって白い弾丸を発射する。

無数の弾丸は不規則な軌道で迫るが、マミの表情は崩れない。

 

 

「甘いッ!」

 

 

弾丸はマミには届かない。

白い弾丸にぶつかっていく光の爆雷。雷の雨が、弾丸を全て無効化して打ち消したのだ。雷光と共に浅海サキが現れ、ウラをさらに蹴り飛ばす。

 

 

「ありがとうサキ。助かるわ」

 

「ハッ、任せておけ」

 

 

笑い合う二人。

まだ終わらない、今度はウラへ青い閃光が襲いかかる。

美樹さやか。そのスピードと剣技が繰り出す連撃は、美しくも強力だ。ウラは抵抗すら許されずに上空へと巻き上げられる。

 

 

「だああああああッッ!!」

 

 

そして一気に叩き落す、さやかはマントを翻して着地した。

その様子を見て、思わずゆまからこぼれる言葉。

 

 

「……かっこいい」

 

 

ふと気がつけば周りには何人もの魔法少女が集まっているではないか。

ゆまの心から恐怖が消えて、新たな感情が湧きあがっていく。

 

 

「凄い! かっこいい!」

 

『▲……ッ!』

 

ウラは勝ち目なしと悟ったのか、踵を返して走り出す。

ここで逃げ、いずれまた力を蓄えた後に魔法少女達を殺せばいいと思ったのだろう。

だが、やはり甘かった。逃げ出したウラは再びマミたちの所へと吹き飛ばされる。

それは、二人の騎士が放つ蹴りが原因。

 

 

「もう逃げられませんよ!」

 

「女の子を襲うとした、アンタが悪いんだぜ!!」

 

 

シザースと龍騎。二人の騎士がウラの行く手を阻む。

マミ達も龍騎のところへ移動して、声を張り上げた。

 

 

「じゃあ! 行くわよ!!」

 

 

「「え゛!?」」

 

 

まさか――……。

サキとまどかは、顔を見合わせる。まさかまたアレをやるのか?

ああ、マミの表情が既に語っている。というか既に言いたくて堪らなさそうだ。こうなると、もはや諦めるしかないだろう。

嫌だ嫌だ、やろうやろうと無駄なやり取りをグダグダ繰り広げると、敵を逃がしてしまうかもしれない。

だからサキもまどかも、半ばやけくそ状態となりマミの隣に並ぶ。

 

 

「あなたの悪事は私が潰す! 魔法少女マミ!」

 

 

声高らかに言い放つマミ。何か凄く嬉しそうだ、表情が満足している。

 

 

「ゥ蒼き閃光ォ、無敵の剣! 魔法少女さやか!」

 

 

同じくさやかが叫ぶ。ノリノリである。

 

 

「正義の雷ぃ!! ハートフル魔法少女サキぃぁ!」※ふっきれました

 

「桃色ピンキー! 魔法少女まどか!」(もっといい決め台詞ないのかなぁ)

 

 

そして。

 

 

「漆黒の十字架!! 魔法少女かずみ!!」(ドヤァァァ

 

 

新メンバーかずみ。

魔女らしい帽子に、十字架の杖が映えるものだ。

マミを中心として五人の魔法少女は決めポーズを行なう!!

 

 

「「「「「我ら! マジカルガールズ5!!」」」」」ドカーン☆

 

 

カラフルな爆発が起こり、ゆまも思わず目を輝かせる。

ちなみに龍騎達は棒立ちで拍手中である。

 

 

「すごーい! かっこいい!!」

 

 

龍騎達につられてゆまも拍手である。

そんな中、まどかとかずみは前に出て武器を構えた。

矢を振り絞るまどか、こんな小さな女の子を襲う悪い使い魔は――。

 

 

「おしおきだよッ!!」

 

『▲ッ!』

 

 

まどかの矢がウラに直撃する。

動きが止まり、隙が生まれた。かずみはそこへ十字架を向けた。光が十字架の先端に収束していき、かずみはその力を解放させる。

 

 

「リーミティ・エステールニ!!」

 

 

かずみの十字架から巨大なレーザーが発射され、ウラは光に飲み込まれる。そのまま何もできずに、使い魔は塵となった。

ウラが死んだ事で魔女結界が砕け散る。

五人の魔法少女と、二人の騎士は、変身を解除してゆまに駆け寄っていく。

 

 

「大丈夫だった?」

 

「う、うん!」

 

 

マミはゆまの目線になる為、屈みながら肩に手を置いた。

かわいそうに、怖かっただろう。マミはゆまを優しく撫でながら、もう安全だという事を説いた。

ゆまはウラに襲われたショックが大きいのか。しばらくその場で呆けていたが、マミ達の格好を見て急に元気を取り戻す。

 

 

「すっごーい!! みんな強いんだぁ! ゆまと全然ちがう!」

 

「え?」

 

 

マミは曖昧な笑みを浮かべた。何か少し引っかかるものがあった。

その時、かずみのアホ毛が、ピキピキピコピコと思い切り反応を示す。

かずみはハッとして、笑顔でゆまに話しかけた。

 

 

「むむっ! 君も魔法少女なんだね!」

 

「うん! ゆまも綺麗なお洋服きてたたかうの!!」

 

「「「――――」」」

 

 

一同が真っ白になった事は言うまでも無い。

 

 

「? えへへー!」

 

「わぁ! 一緒だねぇ!」

 

 

そんな事を気にせず、ゆまとかずみは無邪気に笑いあうのだった。

 

 

 

 

 

 

『確かに、ある程度魔法少女同士、もしくは魔法少女とパートナーが引き合うのは事実だよ』

 

『この街は魔法少女が元々多かった。だから見滝原(ココ)に集まってくるのは頷ける話だぜ』

 

 

それが、キュゥべぇとジュゥべえの意見だった。

時間は少し戻り、カフェ・アトリ。正確にはアトリの隣につながっているかずみの家。そこに皆は集まっていた。

 

とりあえずそれぞれの親には夕食を済ませると言う事を伝え、一同は軽い歓迎会の様な物をする事にしたのだ。

最初はかずみだけの物だったが、ゆまも加えてとなる。

 

とは言え、肝心のゆまの表情は暗い。

ゆまを助けた後、一旦彼女を家に帰そうと思ったのだが、どんなに聞いてもゆまは家の場所を言わなかった。

それどころか帰りたくないの一点張り。親の事についても、家の事についても、まして自分の事についても何も話さない。

 

これは困った。

ならばとりあえず、保護する為ゆまに一緒に来る様に言うが、ゆまはそれさえも拒んだのだ。

あんな危険な目にあっておきながらも、彼女は待っている人がいると言って聞かない。

 

彼はジュースを買いに行っただけなのだから、すぐに戻ってくると駄々をこねる。

だが、それから何分待ってもその人は来ない。

きっと何かに巻き込まれたに違いないとゆまは言うが――

 

 

「おそらく、その人は嘘をついたのでしょうね」

 

「そうね、自販機はすぐ近くにあるし。たぶんもう戻ってくる事はないかしら」

 

 

須藤とマミは結論に至る。

おそらくゆまが言っている青年はもう戻らない。ならば、早くこの場所を離れたいところだ。

 

 

「ゆまちゃん。残念だけど……、その人は嘘をついたの」

 

「ッ!」

 

「ジュースを買いに行くのにこんな時間がかかる訳――」

 

 

その時、ゆまは声を張り上げて叫んだ。

 

 

「戻ってくるもんッ!!」

 

「……ッ」

 

 

そう、戻ってくる。

ちゃんと自分にジュースを買ってきてくれる。ゆまはそう信じて疑わなかった。

何が、ゆまをそうさせているのか? マミと須藤にはさっぱり分からない。

 

ジュースを買いに行っただけ。

それなのに一時間以上も待つなんておかしな話だ。いくらゆまが小さいからと言って、それくらいは分かりそうなものだが。

それでもゆまは名前も知らぬ青年を待った。

彼から受け取った飴を大切に握り締めて。

 

 

「………」

 

 

まどか達は困った様に顔を見合わせる。

だがそんな中、二人の人影がゆまの手をとった。

 

 

「よしッ! じゃあ探そうぜゆまちゃん! その男の人を!」

 

「うん! もしかして道に迷ってるとかだもんね!」

 

 

笑顔の真司。

あっけにとられる一同を差し置いて、二人はゆまを連れて走り出す。

 

 

「き、城戸くん? そんな事をしても――」

 

 

無駄ではないか。そう言おうとした須藤を、マミが止める。

マミは理解したようだ。つまりそれは北風と太陽、無理やり旅人の服を脱がそうとした北風は、勝負に負けてしまう。

真司たちはゆまを納得させる為に、あえて青年を探しに行ったに違いない。

 

 

「なるほど、相手を尊重した上でですか」

 

「ええ、ゆまちゃんを傷つける事無く諦めさせるなんてね」

 

 

マミ達もゆまの後を追う。実は、真司とかずみは何も考えてなかった訳なのだが、まあそこはいいだろう。

結果的にどれだけ探しても男は見つからず、ゆまはしぶしぶマミ達についてきた。

 

アトリでは既にかずみを歓迎する為の用意がされており、ゆまもかずみの隣に座らせられる。

ニコニコと笑うかずみ、頬を膨らませて不機嫌そうなゆま。

対照的な二人だが、蓮が持ってきたバケツパフェを見たとたん、同じように目を輝かせる。

 

 

「うわぁー! すごーい!!」

 

「おいしそーッ!!」

 

「特別だぞ、それを食ったらさっさと帰れ」

 

 

限定のバケツパフェを、特別に二人分とっておいてくれたのだ。

なんだかんだ言って、蓮もかずみに慣れてきたらしい。お礼を言いながら抱きつくかずみを軽くいなすと、蓮はさっさと背を向けて歩き出す。

 

 

「蓮、お前も一緒にどうだ?」

 

「ふざけるな。俺は明日も仕事なんだよ。キッチンは自由に使っていいから、もう俺を呼ぶな。あと、使い終わったら片付けておけよ」

 

 

そう言って蓮は自室の方へと行ってしまった。

まあ無理に誘っても仕方ない、真司が首を再びかずみ達に向けた時、そこにはバケツパフェをハイエナの様に食い漁るかずみとゆまの姿が見えた。

 

 

「おいしいねぇ、ゆまちゃん!」

 

「うん! おいしい!」

 

 

数分前まであんなに頑固だったのに、今はすっかりバケツパフェに夢中になっているゆまを見て、マミは吹き出してしまう。

やはり、まだまだ子供なんだと再確認する一同。

だが忘れてはいけない。千歳ゆまもまた『魔法少女』だと言う事を。

 

しばらくしてキュゥべぇとジュゥべえにコンタクトが取れた。

そこで先ほどの言葉となる訳だ。魔法少女同士がある程度引き合うという事。

なるほど。それならば、かずみやゆま。こうして立て続けに新しい魔法少女に出会ったのも、ある程度は予測範囲内だったと言う訳か。

 

まして見滝原には最初からマミ、さやか、サキ、まどかと言う四人もの魔法少女が集まっていたのだ。それならば見滝原を中心に集まってくると言う事も頷ける。

そもそも魔女の数も見滝原は多いほうらしい。魔法少女がグリーフシード確保に集うのは納得だ。

 

 

「久しぶりだねぇ、ぬいぐるみ~!」

 

『やめてよゆま、ボクはぬいぐるみじゃないよ』

 

 

まどか達は、ゆまに抱きつかれてジタバタともがくキュゥべぇを笑いながら見ていた。

そこでサキは、先ほどまで隣にいたジュゥべえがいなくなっている事に気づく。

 

 

「そういえば最近キミ達を見ない日が多いな。一体何をしているんだ?」

 

『それは――』

 

「おっし! 皆! できたぜ!」

 

 

キュゥべぇの言葉を遮るようにして真司がキッチンから現れた。

一同は視線を真司に移す。そして、目をさらに輝かせるゆま達。

 

 

「わー! すごーい!!」

 

 

真司の手には綺麗に焼けた餃子があった。おいしそうな匂いが一同の食欲を刺激する。

 

 

「食べていいの?」

 

「もちろん! いっぱいあるから!」

 

「いっただっきまーす!」

 

 

ゆま達は左手にパフェを食べるフォークを。

右手に餃子を食べるフォークを構えて、早速餃子に手を伸ばす。

 

 

「へー、真司さんも料理するんだ?」

 

「まあ、一人暮らしだから。少しくらいは」

 

 

意外と言う目でさやかは真司を見た。

案外不器用そうに見えるのだが、百聞は一見になんたらだ。さやかは早速餃子を口に放り込んだ。

 

 

「おおおおおッッッ!!!???」

 

「「!?」」

 

「なにこれぇ!? めちゃくちゃうんまい! すごいじゃん真司さんってば!」

 

「へへーん! だろぉ?」

 

 

さやかは真司を見る目を、疑いの目から、尊敬の眼差しにシフトチェンジした。

ドヤ顔の真司を見て、まどか達も箸を伸ばす。

 

 

「……?」

 

 

サキは気づく。いつのまにか、キュゥべぇも消えていた。

まだ話を聞き終わっていなかったのに。だが、サキも今は餃子が気になる。キュゥべえの事は深く考えず、餃子に手を伸ばした。

 

 

「おいしい!」「おお、確かに!」

 

 

好評の連続で真司も鼻が高い。

そうしていると遅れて美穂がやって来た。到着するなり、美穂は真司の餃子を口に放り込んでいく。

 

 

「うーん、うまうま。アンタ昔から餃子だけは美味いわね」

 

「なんだよ。だけって」

 

「でも今日は一段と美味いわね」

 

「材料が違うんだ。それなりに高価な肉や野菜で作ったから」

 

「へー、でも大丈夫なのか? アンタ給料日前でやばいとか言ってなかった? ずっともやし生活とか言ってたじゃん」

 

「ああ、だから美穂。お前の金で買ったんだ」

 

「へー、そうなんだ。うん、そうかー。なるほどー、私の金でねー……、ふーん」

 

「………」

 

「馬鹿かテメぇええええエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!」

 

「シャバディ!」

 

 

美穂の鉄拳が炸裂し、真司はよく分からない声を上げて吹き飛んでいった。

使い魔くらいなら一撃で倒せるくらいのパンチに見えるが大丈夫なのだろうか?

 

 

「いででででッ! 馬鹿ッ! 冗談に決まってんだろッ! 俺だって貯金くらいあるっての!!」

 

「うっるさい! アンタの言葉は冗談に聞こえないっての!!」

 

 

ギャーギャーと言い合いを始める二人。

止めた方がいいのか? まどかは困ったようにオロオロとしている。

だがそんなまどかを制したのは、サキだ。ギラリと目を光らせ、真司たちを睨む。

 

 

「やはり、間違いない」

 

 

サキはジッと真司と美穂を見つめてる。

観察と言ってもいいか。随分と真剣な眼差しではないか。

赤面して鼻息が荒いような気もするが、一体どうしたのだろうか。

 

 

「前も保健室で見たぞ。二人は――」

 

「「え?」」

 

「――付き合っているのか?」

 

 

場が、凍りつく。

ムシャムシャとパフェや餃子を食べている。ゆまとかずみ以外が一様に動きを止めた。

尤も、サキはとても楽しそうなのだが。

 

 

「なッ!? いやッ、べ、別に付き合ってなんかないって!」

 

 

たじろぐ真司を見て、サキの眼光が光る。

すると、どこからともなく取り出した本をテーブルに叩きつけた。

 

 

「は、はつこいは……、みるきーうぇい?」

 

「隠さなくてもいいじゃないか! 二人はこの本に出てくるマリとシンゴにそっくりなんだ! これはもはや運命としか言い様がないだろぅ! ささ、早くチューでもなんでもしてくれたまえ!!」

 

 

チュー!? 驚いた美穂は張り手で真司をぶっ飛ばした。

なぜだ。理不尽である。完全に無茶苦茶である。きりもみ状に吹き飛んだ真司は壁に叩きつけられて白目をむいていた。

 

 

「ど、どうしたのサキさん!? ちょ、ちょっと落ちつい――」

 

「これが落ち着いていられる状況かぁあああああッッ!!」

 

「ひぃいいいいい!!」

 

 

どうやら真司と美穂のやり取りをみていたサキのハートに火がついたらしい。

ヒートアップしたサキを止められるものはいない。シラフにも関わらず、サキはハイテンションで人が変わったように笑っていた。

 

 

三十分後

 

 

「そもそも二人はむしろマリとシンゴを見習うべきではないのか!!」

 

「は、はあ」

 

「愛とは正義だ! つまり……それは分かるな城戸真司!」

 

「え……? あ、いや――」

 

「LOVEだぁあああああッ!! LとOとVとEでラ・ブ!!

 

「は、はい!」

 

「まずキミ達は互いが互いに突き放していると思わせて、想いあっているマリとシンゴをリスペクトする心意気が足りない!! ハートフルさが足りないのだ!! 私が第二巻で彼らがくっ付く事を全く予期していなかったと同じように、この世界にはなにがあるかなんて常に分からない! だからこそ毎日の中で愛を見つけ出すことが私は正しいと思って――こら! 霧島美穂! まだ話は終わっていないぞ! ッて、まどか! プリンをテーブルに置け! 君も真司のパートナーとして、初恋はミルキーウェイ一読者としての私の発言を聞くべきなのだ! むしろこの愛と言うのはだね――ッ」

 

「「ひぃぃいい! もう勘弁してぇえええええ!!」」

 

「待てッッ! まだ話は終わってないぞ!」

 

サキは吼える。昔から恋愛小説とか、人の恋を妄想するのが大好きだった。

テンションがおかしくなるから、マミに人前では控えろと言われていたが、どうにも抑えきれないのだ。

 

熱弁していると、時間が経つ。すると遅れて須藤がやって来た。

来てくれた事は嬉しいが、なんだか疲れた様な表情を浮かべており、マミは心配そうな表情を浮かべる。

 

 

「最近、大変みたいですね。お疲れですか?」

 

「え? あぁ、まあ……」

 

 

須藤は曖昧に笑う。

 

 

「何か悩みがあるなら言ってくださいね。私じゃ力になれるかどうかは、分からないけれど……」

 

「いえッ、そんな。どうもありがとうございます。ただ何でもないんです。仕事の事で少しトラブルがあって」

 

 

そうすると大声が聞こえてくる。

 

「「ごちそーさまー!」」

 

 

どうやら食事が終わった様だ。須藤はかずみとゆまを確認して頷く。

 

 

「彼女達が新しい」

 

「ええ。魔法少女です」

 

 

ゆまとかずみは、まどか達とじゃれ合い始めた。

なおも何か自論を熱弁しているサキと、正座で話を聞いている真司と美穂。

アンバランスな光景に、須藤は笑みを浮かべた。

 

 

「巴さんも鹿目さん達に混ざってはどうですか?」

 

「ふふっ、私はお姉さんだもの。見守るだけでいいわ」

 

 

とは言ったものの、顔があちらに混ざりたいと言わんばかりだ。

マミもまだ中学生。友達と遊びたいのだろう。

 

 

「……じゃあ、一緒に行きましょう」

 

「そ、そう? まあ須藤さんがそう言うのなら……」

 

 

そう言ってマミは須藤よりも先にまどか達の所へ駆け寄っていく。

須藤はその様子に笑い――、そしてまた複雑な表情を浮かべるのだった。

 

 

「ところで、どうしてゆまちゃんは襲われていた時に変身しなかったのかしら?」

 

 

そろそろ遅くなってきた頃、マミがそう言った。

ゆまも魔法少女。願いこそは聞かなかったが、ウラに襲われていた時に変身すればよかったのに。

 

 

「ゆま、弱いから……」

 

 

ゆまの話によると、魔法少女としての戦闘能力は極端に低いらしい。

以前にも使い魔と戦ったが、ボロボロに負けてしまったと言う。

その時は『赤い魔法少女』が助けてくれたらしいが、もし彼女がいなかったら、死んでいたかもしれないと震えている。

 

 

「そうなの。ごめんなさい、怖いことを思い出させてしまって」

 

 

マミはゆまを抱きしめ、落ち着かせる。

しかし、これは困った。魔女はともかく、使い魔の中には魔法少女の匂いを嗅ぎ付けて襲ってくるタイプの者もいる。だからゆまを一人にしておくのは少し危険かもしれない。

それに、やはり、どれだけ聞いても家の場所と親の事を言ってくれない。

須藤に任せる事も考えたが、そこでマミはあるものを見つけてしまう。

 

 

「えッ!!」

 

 

ゆまを撫でた時、額に傷が見えた。

前髪で隠していたが、これは火傷だ。

しかもただの火傷じゃない。円形の跡が見える。こんな傷をつけられる物は限られてくる。例えば、そう、タバコだ。

 

 

「!」

 

 

美穂もそれを見つけたのか、ゆまを抱きかかえた。

ただ抱きかかえた訳ではない、体重を感じるためだ。するとやはり軽いのだ。

あれだけふてくされていたのに、食べ物で一気に態度が変わったのは、それだけ執着があったからかもしれない。

 

 

「ゆまはッッ!!」

 

「!!」

 

 

子供ながらに、マミと美穂の態度を感じ取ったのか、ゆまは大きな声を上げる。

しかし、かと思えば、一気に弱弱しく変わり。不安定なトーンが続く。

その姿はとても儚げだった。

 

 

「ゆまは……ッ、あそこに、戻りたくないの……」

 

 

ゆまは吐き出すように呟いた。

 

 

「無理に、言わなくてもいいのよ?」

 

 

マミはそう言ったが、ゆまは聞こえていないのか、ポツポツと話を続ける。

 

 

「パパはッ、ママとゆまを叩くの――……。毎日、毎日。帰ってこない日もあったけど、その日はママがゆまを叩くの……!」

 

 

ゆまは頭を抑えて苦しそうに呻く。

思い出さないで話したかった、だけど思い出してしまう。

眼前に迫るタバコ、懇願しても振り下ろされる拳。食事の出ない毎日。押入れに、ゴミ袋に閉じ込められる夜。

寒い日も雨の日もベランダに出されてカーテンを、鍵を閉められた。

助けてって叫べばまた殴られる。

 

 

「ゆまッ、言われたよ!? お前なんて……! お前なんて――ッッ」

 

 

生まなければよかった。

その言葉を口にする前に、マミがゆまを強く抱きしめた。言葉もでない程に強く。

ゆまは堪えられなかったのか、しばらくマミの胸で泣きじゃくる。

どんな言葉をかけていいのか。まどかや、真司でさえ分からなかった。

 

 

「ママがゆまを叩くから……! だから、違うところの人が来て……、ゆまはお家じゃない所で暮らしなさいって」

 

 

おそらく施設の事を言っているのだろう。

そこには自分と同じような子供達がいっぱいいて、みんな仲良しだと言ってくれた。

だからゆまは、それを信じて施設に入った。

 

 

「でも嘘だった! その子達も、その施設の人もゆまをいじめる!! ひどいよ! 何で!? ゆまが何かした!? 酷い、ひどいよぉ……!」

 

 

ゆまを待っていたのは施設内でのいじめだった。

既にグループができている中でゆまは孤立した存在だ。リーダー的存在の子に、食事を取られたり、殴られる。

結局施設でもゆまの生活はあまり変わらない物だったのだ。

 

 

「それを施設員達は黙認していたのですね……!」

 

 

須藤は拳を握り締める。

虐待を行ったゆまの両親、彼女を助けようともしない施設員に、大きな怒りを感じた。

ゆまは、魔法少女の力を得ても心が弱まる一方だった。

 

 

「大丈夫よ」

 

「!」

 

「大丈夫だから……」

 

 

マミはより強く、ゆまを抱きしめる。

まどかや、かずみも、ゆまを囲むように抱きしめた。

 

体温を感じて、安心したのか、ゆまは泣き止む。

マミもまどかも、ゆまの苦しみを和らげる方法が今は思いつかない。

だから、抱きしめるしかできない自分が悔しかった。

 

 

「ねえ、須藤さん。ゆまちゃんこれからどうなるの?」

 

「とにかく、他の児童養護施設に移ると言った所です。元いた施設には今回の事をしっかりと受け止めてもらい――」

 

「やだ! ゆまッ、もうどこにも行きたくない!!」

 

「で、ですが……」

 

 

話を聞いていた美穂は、何度か頷くと立ち上がる。

 

 

「よし! しばらく私がゆまちゃんを預かるって事でいいかな?」

 

「えっ!?」

 

 

美穂はゆまが落ち着く間、一緒に暮らすと言い出したのだ。

たじろぐ須藤、しかしそこにマミの追撃が放たれる。

 

 

「私からもお願いするわ。ゆまちゃんは何より魔法少女なんだもの、彼女を狙って使い魔が現れるかもしれない!」

 

「それは、まあ。しかし――」

 

「お願い須藤さん!」

 

「ッ」

 

 

俺からも、私からもと、皆そろって須藤に頭を下げる。

須藤はしばらく悩んでいたが、皆の熱意に圧倒されて、ついには折れた。

 

 

「とりあえずしばらくの間だけと言う事で」

 

「わあ! ありがとう須藤さん!」

 

 

しかし、そうなると変身できない美穂では危険かもしれない。

そんな訳で、マミの家にゆまが同居する事になった。

 

 

「巴さん、これはペットを飼うと言うレベルの話ではないですよ。いろいろ手続きがあったり、覚悟はいいですね?」

 

「ええ、もちろん! じゃあ、今日から私たちは家族よゆまちゃん!」

 

「本当!? やったぁ! マミお姉ちゃん大好き!」

 

 

ゆまは、嬉しそうにはしゃぐ。

それを見て須藤も戸惑うように笑った。何が正しくて、何が間違っているのか――、難しい話だ。

 

 

「ゆまも皆と戦うね! ゆまは役にたつんだから!!」

 

 

嬉しくてテンションが上がったのか、ゆまは変身してみせる。

かわいらしいドレスに、猫耳の帽子。ずいぶんと可愛らしい魔法少女の服装だった。

服のどこにも紋章らしき物が見えない為、パートナーは見つかっていないようだ。

 

 

「どうするマミさん。ゆまも魔女退治に同行させるの?」

 

「え? あ……」

 

 

できれば、幼いゆまを危険な目に合わせるのは避けたいが。

 

 

「ゆま、頑張るよ! お手伝いくらいならできるもん!!」

 

「―――」

 

 

下手に匿っておくよりも、魔法少女が集まっている場所にいるほうが安全かもしれない。

それに、どんなに幼かろうが、魔法少女になってしまった故、戦いからは逃げられない。ゆまを鍛える面でも、同行させるのは悪くない。

 

本人もそれを望むなら、ついて来させるのは有りだった。

騎士が二人、魔法少女が六人もいればほとんどの魔女には勝てるだろうし。

そして何よりも――

 

 

「緑」

 

「え?」

 

 

ゆまののイメージカラーはグリーンである事が容易に分かる。

それはつまりである。

 

 

「そろった」

 

「?」

 

 

マミは肩をプルプルと震わせて視線を移動させる。

まずはサキ、魔法少女時の服装からはレッドをイメージさせる。

さやかは間違いなくブルー。そしてマミは黄色、イエローだ。

まどかはピンク、かずみはブラック。

そして、マミが求めていた色はグリーン!!

 

 

「ようこそ! ゆまちゃんッ!! やっぱりグリーンは必要よね! 貴女は今日からマジカルガールズ・グリーン担当です!!」

 

「えぇ……」

 

 

お約束は大切だ。目を輝かせるマミと、仲間に加えてもらい嬉しそうに飛び跳ねるゆま。

 

 

「やったわ、これでマジカルガールズ6の誕生よ! あ、でも中心にリーダーを置くことを考えるとあと一人は欲しいかしら! ふふっ、どうしましょう! とにかく、こうしちゃいられないわ! はやくゆまちゃんの決め台詞と必殺技名を考えないと!」

 

「マミさん! シルバー増やしましょシルバー!!」

 

「合体バズーカーもないとねぇ! えへへ!」

 

 

仲間が加わった事で、まどか達はハイテンションで意見を出し合う。

 

 

「楽しそうだね。私らも昔はああやって馬鹿なことで盛りあがってたっけ?」

 

 

美穂は過去を懐かしむような目で、まどか達を見ていた。

いつからか、すっかり大人になってしまったものだ。何をするにも、どこか冷めてしまっているのが悲しくなる。

と言ってもまだ23ではあるが、それでも学生の頃の情熱は戻ってこない。

 

 

「アンタもそう思わない? ねぇ、真――」

 

 

 

 

 

「いやいや、マミちゃん! まずは合体ロボットだって!!」

 

「………」

 

 

お前もかい。

美穂は中学生に混じって目を輝かせている真司を見て、大きなため息を漏らした。

 

 

 

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