仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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なるべく早くしたいとは想いますが、次から多分一話ずつ更新になると思います。
私の体力は限界です。最近すぐに眠くなります(爺)


第71話 人類は試されているのさ

 

 

 

 

下宮鮫一は魔獣を裏切り、真司達に付きたいと言い出したのだ。

絶句する五人。素早く顔を見合わせてみるが、良い言葉が何も見つからなかった。

だが、その言葉を無視する事もできまい。

もしもそれが本当ならば、この上ない味方にもなり得るかもしれないのだ。

そう、"本当ならば"。

 

 

「お前を信用できるだけの理由が無い。その証拠があるのか?」

 

 

ニコは眉を顰め、バールの先端を下宮に向けていた。

いつでも必殺技が撃てる様にと言う事なのだろう。

ほむらも警戒しつつ、盾に手を掛けている。下宮が何か変な行動を取ればすぐに時間を止められる様にしているのだ。

下宮もそれは分かっているようだ。体を起こした時には、両手を広げて降伏の意を示していた。

 

 

「理由――……か」

 

 

簡単だ。そう言って一同を見る。

その目には確かな光と、どこかに冷めた様な感情が見え隠れしているようにも思える。

そして頭を抑え、目を閉じる真司。何か記憶の奥底に下宮の姿があるのだが、思い出せない。

 

 

「一番の理由は一つ。僕が――」

 

 

下宮は一度メガネを整えて、静かに言い放つ。

 

 

「僕が、人間だからだ」

 

「は……?」

 

「人間だと?」

 

 

混乱が辺りを包む。

つい今さっき、自分の事を魔獣だと言った男が、今度は自分を人間だと言う。

信じられない。ほむらの言葉に誰もが頷いた。

そこでふと頭をよぎる思い、まさか魔獣は魔女の様に人間が元なのか?

一瞬ゾッとする真司達ではあったが、下宮はその前に否定を行う。

 

 

「魔獣は魔獣だ。奴らは負のエネルギーの集合体であり、生き物に見せかけているだけの存在」

 

「おいおい、矛盾しか無いぞ。じゃあ今の言葉は何なんだ」

 

「僕は違う」

 

「?」

 

「僕は魔獣であり、魔獣ではない」

 

 

正確には下宮を含めて一部の魔獣は他とは違う。

下宮は何故ココに来たのか、何故協力したいと言う考えに至ったのか、それを詳しく話す必要があると理解した。

故に自分の事を。正確には魔獣の中にいる『イレギュラー』を説明する。

 

 

「下宮は僕の本当の苗字だ。しかし、鮫一と言うのは魔獣によって与えられた仮の名でしかない」

 

「それは、どういう?」

 

「魔獣は、人を理解する必要があった」

 

「理解……」

 

「そうだ、ゲーム運営をスムーズに行うため、人の姿や仕草、そして言葉を覚える必要があったんだ」

 

 

ギアはその為にゲームが始まる前から『教育』や『準備』を行ってきた。

その為の準備こそが、人間の拉致である。

純粋な人間を男女共に三人ずつ拉致して解析を行う。

選ばれたのは一般的に魔法少女に一番多い、中学生から同年代の人間達だった。

 

 

「僕たちは魔獣によって解析され、改造された」

 

 

そしてその後は言語や行動、世の中の仕組みや道具を教える役割を担わされ。

最後には一つの選択を強いられる。それは魔獣として生きるのか、それともそれを拒むのかだ。

 

 

「僕はそれを拒み、言わば人間と魔獣のハーフを続けてきた」

 

「じゃ、じゃあ下宮くんは魔獣に無理やり――?」

 

「まあ、そういう事になるけど」

 

 

被害者面はしたくは無いが、そう言う事になる。

しかし彼は、まどかが続けて言った言葉には首を確かに横に振る。

それは彼と同じ境遇にいる人間があと五人いるのかと言う話だった。

それは違う。大きく違うのだと言う。

 

 

「ハーフはあと一人だけだ。女の子が一人」

 

「……残りは?」

 

「もう手遅れだ」

 

 

被害者は確かに六人だった。

しかし一人の女は魔獣に歯向かい処刑され。

もう一人の女はゲームの運営と言う罪悪感に耐え切れずに自ら命を断った。

 

そして一人の男は魔獣の力に魅了されて堕ち。

もう一人の男は人類に絶望して、魔獣こそが正しき支配者であると言っていた。

 

その結果として、下宮以外の男性は人間を捨て、魔獣となり果てた。

脱皮と言えばいいのか。良心を内包した肉体を捨てて、魔獣としての肉体を一つの『新人格』として形成する。

そして既に独立した存在に成り果てたのだと。

 

堕ちきれなかった下宮と、あとは一人『小巻』と言う少女。

魔獣は役に立たない二人を処分する事も考えたが、ゲームの中に混入する監視者も必要と考えたか、二人をその役割に任命して、毎回毎回と箱庭と言うゲーム盤に混入させていたのだ。

 

 

「要するに、面倒な仕事を押し付けられたってだけさ」

 

 

こうして二人は、何とか今の今まで生きながらえていたのだと。

 

 

「なるほど見えてきた。つまりお前さんは魔獣の中でも最低の位置にいた訳だ」

 

「そうなるね」

 

「そして今、そのムカツク上司をブッ倒そうって言う城戸が出てきて、丁度いいと思った」

 

 

このままこき使われ続けるならば、いっそ魔獣を裏切ってしまおうと言う訳か。

それならば納得がいくかもしれないとニコは頷いた。

けれどもまあそれはそれで少しイラつくと言う物だ。

被害者である事はそうかもしれないが、結果として下宮もまた魔獣側であった事は変わりない。

果てしない輪廻の中で、それだけ自分達を騙して監視していた事になるのだ。

それなのに今更コチラの味方がしたいなど都合が良すぎる気もする。

 

 

「もちろん分かっている。僕も今までやってきた事の重さを理解していない訳じゃない」

 

 

今まで協力してこなかった事も事実なのだ。

仮に事情を話してしまえば魔獣は下宮と、それを伝えた参加者を殺すだろう。

もしくはイツトリの力で強制的にねじ伏せるかだ。

だからこそ下宮は自分の立場が汚い所と知りながらも、居座る事を決めたんだ。

もしももっと早く協力していれば、今よりも早くこのThe・ANSWERが始まっていたかもしれないのに。

 

 

「最低だと思ってくれて良い。でも、やっぱり僕も死にたくは無かった……」

 

 

どんな事をしてでも生きたいと思う心があった。

それにこんな言い方をすれば気を悪くするとは思うが、真司たちは死んでもまた記憶を消されて復活する。

言わば完全な死は訪れないと分かっていたのだ。

だからこそ下手な動きはできなかったのだと下宮は言う。

 

 

「しかし今、僕は城戸真司の選択に心を動かされた――ッ!」

 

 

叫ぶように説いた。

そしてこれは最後のチャンス。ここで真司たちがしくじれば、『次』は訪れない。

それだけは避けなくてはいけない。何よりも、もう終わりにしなくてはならないんだ。こんなバカな輪廻、繰り返す憎悪は断ち切らなければならない。

だからこそ下宮は魔獣を裏切った。真司の助けになりたいと心から思ったからだ。

 

 

「もしも君達が僕を信用できないと殺してくれても。僕はそれで構わないと割り切れる」

 

「そこまでなの……?」

 

「ああ。僕もそれだけは割り切っているつもりだから」

 

 

ここで信用されなければ死ぬも同じだ。

いっその事、終わらせるのも悪くは無いだろう。

下宮もこの提案は混乱を招くだろうと自分で理解している。

だがコチラもみすみす殺されては、魔獣を裏切った意味もなくなる。

 

 

「だからせめて、情報だけは渡したい」

 

「………」

 

 

非常に微妙なラインだった。

手塚とほむらはトークベントを発動して下宮についての考察を話し合う。

彼の現状や立ち位置は分かった。だとすれば魔獣を裏切る理由も分からなくはない。

 

しかしニコがはじめに言った通り、確実に信用できる証拠がいまひとつ足りない気もする。

答えの出ない話なのかもしれないが、彼が魔獣のスパイであり、今の話が全てでっち上げられた物である可能性も否定できないのだ。

ここで下手に仲間にいれては、内側から破壊されるリスクもある。

 

 

「わたしは信じるよ」

 

「!」

 

 

しかし、そんな時だ。

まどかの声が聞こえたのは。

 

 

「わたしは、下宮くんを信じる」

 

「ッ、まどか……」

 

 

そして、彼女に続くように真司も口を開いた。

言い放つ言葉は、もう想像がつくのではないだろうか。

 

 

「俺も信じるよ。下宮くんは俺に魔獣の居場所を教えてくれたから」

 

「城戸……?」

 

「ッ、あの時の事を覚えているのか!?」

 

「なんとなぁく、だけどね」

 

 

円環の理でギアと龍騎が対峙した時、あの場所に真司は行けない筈だった。

しかしそれでも彼が場所を特定できたのは、下宮に教えてもらったからに他ならない。

真司の頭にずっと濁っていた記憶で、微かだが下宮と話した記憶が蘇って来た。

特定はできないと言えばそうだ。しかし真司は自分にギアの居場所を教えてくれたのが下宮だと思えて仕方ない。

濁る記憶の中で、強く放つ光があると言えばいいか。

 

 

「だから俺は、君を信じたい」

 

「城戸真司……」

 

「君も、俺を信じてくれたんだろ?」

 

「………」

 

「だから俺に協力してくれた。今も、ココに来てくれたんだ」

 

 

頷く下宮。

そうだ、下宮は人間に勝って欲しいからココに来た。

真司の目指す勝利を形にしたいと心から思ったからこそ、円環の理の場所を真司に教えたのだ。

その想いを真司は本当だと信じたかった。だからこそ、彼は下宮を信頼するに至ったのだ。

 

それにまだ理由はある。それはニコが思い浮かぶものだ。

下宮は監視役。それが一体どの程度の存在なのかは知らないが、織莉子が飛ばしたオラクルを見逃したのではないかと。

 

 

「そうだな、美国織莉子がオーディンに向けて飛ばしたオラクルは人間側にとって大きなヒントになると思った」

 

「だから見逃したの?」

 

「僕は、人間にも可能性が必要だと思ったんだ」

 

 

勝って欲しいと思ったんだ。

渇望した想いを無駄にはしたくなかった。

それは人間サイドにとっても、そして自分自身にとってもだ。

それを言えば、真司はもう一度強く頷く。もちろんそれはまどかも。

 

 

「信じる想いを、俺は無駄にしたくない」

 

「わたしも、下宮くんは友達だから」

 

「……!」

 

 

信じられないと言う表情をしたのは、他でもない下宮自身だった。

友達。その言葉を聞いて、しばらく戸惑いの表情を浮かべたまま真司達を見つめ、やがて呆れた様に笑った。

 

 

「僕が言うのもなんだが、君達はもっと疑う事を覚えた方がいいかもしれないね」

 

「だったら、下宮君は信じられないよ」

 

「そうそう、俺も俺も」

 

 

意地悪に笑うまどかと真司を見て、下宮は安心したように笑った。

面白い二人だ。だからこそ今に繋がったという事か。次に手塚達を見てアイコンタクトを。

僕を信じられるのか? そんな想いを一同は汲み取る。

もちろん手塚達はまどか達ほど、"お人よし"とはいかない。

 

しかしだ。

皆の心にあるのは龍騎ペアの助けになりたいと言う想い。

だったら手塚達はできる限り彼らの思い描く道を辿りたいと言うもの。

手塚達の役割と言えば、真司達の想いを邪魔するより、彼らが選んだ道に障害があればそれを取り除く事だ。

 

 

「まあ、後々お前さんが裏切っても軌道修正できる様にするのが私らの役割だろうからね」

 

「まどかを裏切ったら絶対に許さないわ」

 

「あははは……こ、怖いな」

 

 

ニコやほむらも変身を解除した。

まどか達の決定に手塚達も従うようだ。

最後に手塚がコインを弾き、下宮を見つめる。

 

 

「お前からも運命の分岐点を感じる。なるほど、なかなか面白そうだ」

 

「そ、それはどうも」

 

 

やや不安は残るものの、一同は下宮を信じると言う結論に出たらしい。

まあ幸いと言うべきか。下宮は確かにココに至るまでにも真司に協力はしている。

それもあってか、信頼できるべき存在だと言う所にまで話を持っていく事ができたようだ。

 

 

「よろしく! 下宮くん!!」

 

「一緒にがんばろうね!」

 

「あ、ああ」

 

 

手を差し伸べるまどかと真司。

案外と言うべきか、一番驚いているのは下宮自身だったのかもしれない。

信じて欲しいからココに来たのだが、まさかこうもすんなり信じてもらえるとは思っていなかった。

戸惑いの表情を浮かべながらも両手を差し出して二人と握手を。

 

 

「でも協力してくれるのはいいけど、お前さんの居場所で私達の居場所が割れるって事は無いのか?」

 

「それは大丈夫だよ。魔獣はもうゲーム運営ではなく、君達と同じ参加者だ」

 

 

下宮は早速自分達の事を話し始める。

魔獣はもう、ゲーム中は参加者の居場所を知ると言う事はできない。

何故ならばゲーム運営はあくまでもインキュベーター。魔獣達は真司達と同じく、『参加者』のカテゴリに属すると言う。

とは言え、魔獣には魔獣のルールがあるのだが。

 

 

「魔獣のルール?」

 

「そう。魔獣は君たちと同じく、全てのメンバーがゲーム盤にいる訳じゃない」

 

 

そこで手を上げる手塚。

いまひとつその『ゲーム盤』だのと言う専門用語がややこしいと。

それを聞くと下宮は頷く。まずはその構成から説明することに。

やはり注目するべきは魔獣が今いる場所と、自分達が今いる場所の違いである。

 

 

「ゲーム盤とはこの世界、僕達が今いる次元のことさ」

 

 

簡単に言えば地球だと。

そしてさらに細かくする。このゲームが行われる『見滝原』を『箱庭』と呼んでいた。

様々な因子が重なり、さらにイツトリや魔獣によって構成されたゲームを行うフィールド。

テレビゲームで言うなれば画面の中、競馬で言うならコースとでも言えばいいのか。

とにかくとまどか達が立っている場所、地球の総称をゲーム盤。

フールズゲームが行われるステージである見滝原、そこを箱庭と名づけていたと言うのだ。

 

 

「キミ達、円環の理での記憶は?」

 

「正直ほとんど無い。ッて言うかキュゥべえの言ってた言葉を覚えているし」

 

 

円環の理――、つまり『お茶会』と呼ばれた時の記憶はほぼ全て消すと言っていた。

それだけだけではなく、過去のゲームもあやふやな記憶はある。やはり人間の脳は覚えられる容量がある。急激なフラッシュバックでは、その全てを記憶する事は難しい。

過去のゲームほど思い出すのに時間はかかる。

 

 

「ただお茶会に関しては、少しだけ記憶はある。特にギアと対峙した時の事はなんとなく覚えている」

 

「僕もお茶会と呼ばれている出来事は詳しく知らないけど……」

 

 

世界と言う漠然とした存在。魔獣だからこそ知りえる情報がある。

皮肉な物だ、下宮は言葉を並べながら頭では嘲笑を浮かべていた。

真司達に情報を開示するという事は、魔獣に対する裏切りでもある。

信頼の証拠に裏切りの証を強めていく。何とも滑稽で醜い位置に自分はいる物だと。

 

だが後悔はしない。

何故ならば裏切りと言うのはキュゥべえも言っていたが、文字通り仲間の間に行われる事である。

しかし下宮はつくづく思う。自分は魔獣を仲間だと思ったことなど一度も無い。

今こそ滅びの時はやってきたのだ。人の革命が、絶対であった悪意を砕く時が来たのだと。

だから下宮に迷いはなかった、言葉は並べる為に用意した。

 

 

「騎士と魔法少女は、元々は別世界の存在だった」

 

 

下宮は事の発端。

なぜフールズゲームが行われる事になったのかを、話し始めた。

彼も全てを知っている訳では無いが、魔獣側に属しているが故に色々と調べる事もできた。

魔法少女と騎士は異なる世界の存在だった。それが何らかの要因にて融合を果たし、さらに離別、今の世界形態に至っていったと。

 

 

「なるほど。だから俺の記憶には魔法少女の存在が一切無い時期があったのか」

 

「私も目が覚めた時点では手塚の……、つまり騎士の存在はイレギュラーだと認識したわ」

 

「そう。それはそう言う事なんだよ」

 

 

ははあと唸る真司達。そう言われてみればフラッシュバックする記憶もある。

どうやら様々な要因で記憶が蘇る事がある様だ。

手塚に関しては、年齢が『記憶』と『現在』で違っている事にも気づく。

 

 

「世界に適応する際に。年齢設定にバグが発生したんだろう」

 

「バグか、マジでゲームみたいなのな」

 

「世界と世界は異物だ。拒絶反応を起こすことは珍しい話ではない」

 

 

もしくは運営側が操作したとも考えられる。

騎士はその全てが魔法少女よりも年上だった。

しかして年齢が近い場合、或いは下の場合から生まれる絆のケースを用意したかったのかもしれない。

それに手塚や芝浦が飲み込まれた。

同時に美穂に関しては年齢がやや上になっていた事に関しても同じことが言える。

 

 

「……ごめん、まどかちゃん」

 

「え?」

 

「今の話を聞くに、俺達の世界が君の世界に混ざったからこんな事に……!」

 

「ううん! 真司さんは悪くないよ! むしろ、わたし達のせいで巻き込んで……」

 

 

首を振る真司。

違う。こういう考え方はよくない。

確かに昔は別々の世界だったかもしれない。

だがもう今は今だ。巻き込まれたとかそう言うのじゃなく、自分は当事者なんだ。

関係無いなんて事は無い、他人事なんて事はない。

 

それを聞くとまどかも強く頷いた。

いや彼女だけじゃない、ココにいる全員が同じ思いであったことだろう。

今は確かに存在してる。魔法少女と騎士の記憶は確かに刻まれているんだ。

騎士と魔法少女は同じ世界の産物だ、だからこそ今は手を取り合う事が必要になる。

 

 

「じゃあ、お互いに恨みっこなしだ!」

 

「うん! それでいいよ!」

 

 

笑みを浮かべ、握り締めた拳と拳を軽く合わせる真司とまどか。

頷く下宮、二人の言う通りだ。もはやコレはどちらかの世界一つで済む問題ではない。

龍騎の世界に潜む脅威である『ミラーモンスター』の力を得た、まどかの世界の脅威である『魔獣』。

この事態を解決するには魔法少女と騎士が手を取り合い、100%以上の力を出しあう必要がある。

 

 

「分かるだろう?」

 

 

レンズ越しに、下宮の視線が真司とまどかを貫く。

 

 

「覚悟は、できてる」

 

「わたしも」

 

 

やはり二人の目には強い光が見えた。

安心感。やはり真司達を見ていると、久しく忘れていた感情を刺激される。

さて、続きだ。交じり合った世界ではあるが、所詮はイレギュラー同士の衝突、そこにもまた同じくして『歪』が発生するのだ。

 

 

「僅かだが、二つの世界が衝突した際に狭間が生まれた」

 

「狭間?」

 

「ああ。騎士の世界をA、魔法少女の世界をBとしよう」

 

 

交じり合った際に生まれた歪な空間。

世界と世界の境界線。ぶつかり合った際に生まれた虚構なる空間。

つまりAとBが交じり合った際のエネルギーが原因で新たにCと言う空間が生まれたのだ。

程なくして交じり合った世界は分離、騎士の世界であるAは、再びAと言う存在を確立してBから離れていった。

そして残ったのが真司たちが混じったまどか達魔法少女の世界であるB。

ゲーム盤とはBの世界を指すのだが――

 

 

「Cが消えていなかったと言う事か」

 

「そう。その狭間こそが、魔獣達が拠点としていた場所。星の(むくろ)だ」

 

「星の、骸」

 

 

Bの世界に内包されていながらも、別次元の場所に存在しているCの世界。

その星の骸と言う場所に、今の今まで魔獣達は身を潜めて殺し合いのゲームを堪能していた。

イツトリの力によって次元の壁を忘れる事ができる魔獣は、星の骸を拠点として今まで活動を行ってきたのだ。

 

 

「それは今も変わってはいない筈だ。イツトリが弱まった今もね」

 

「つまり奴等は私たちが手を出せない場所にいると?」

 

「そう。おそらく君たちでは星の骸に侵入する事はできないだろう」

 

 

そもそも向こうは魔獣が発生させている瘴気に満ち満ちている。常人がいていい場所ではない。

浅倉でさえも短時間で撤退を余儀なくされた程だ。

ましてやあの時はジュゥべえの力があったからこそ。今はもうそれは無い。

簡単に言えば毒ガスが充満している空間に足を踏み入れるようなものだ。

 

 

「じゃあ私達が向こうに殴りこみをしてってのは無理って訳だ」

 

「そうなる」

 

「向こうが私達を根絶やしにってのは?」

 

「単刀直入に言えば可能だろう」

 

「おいおい、マジかよ……!」

 

 

簡単だ、自分たちは皆ゲーム盤にいるのだから。

箱庭の中にいる自分達を順に殺していけば良い。それだけの話、それで魔獣の勝利が確定する。

だがそうは単純にはいかないだろうと下宮は睨んでいる。

 

 

「と言うと?」

 

「そんな簡単には魔獣は君達を殺しはしない」

 

 

死は苦痛でもあり、同時に安息でもある。

安息などと言う物を魔獣は決して与えはしない。

彼らは相当参加者に対して怒りを覚えている。圧倒的なプライドを持つ彼らが、人間を許すわけもなし。

 

 

「死と言う安息を与えるからには、奴等は徹底的に参加者を追い詰めて殺す筈だ」

 

 

特に同じ世界の存在である魔法少女にはよりいっそう敵対心を持っているはず。

要するに時間をかけてじっくりと殺しにかかるのではないか。

それだけではなく、魔獣にも参加者として課せられたルールと言う物がある。

 

 

「まず、骸から必ずインキュベーターが指定した人数はゲーム盤に降りなければならない」

 

 

つまり戦いの舞台に必ず上がる者がいると言う事だ。

同時に数が指定されているため、大人数で散らばって参加者を殺すと言う事もできない。

今もどこか、この見滝原に魔獣は潜伏している事だろう。

 

 

「僕ともう一人、上臈小巻と言う少女はハーフの為に、その人数指定を潜り抜けられる」

 

 

故に魔獣は、相変わらず監視役として下宮と小巻を見滝原に送り、そこで見た景色、参加者の居場所を、骸にいる魔獣や、見滝原に潜伏している魔獣に知らせる役割を与えた。

以前は監視役の居場所は魔獣に筒抜けではあったが、現在はそれは叶わない。

 

 

「だからこそ僕の居場所は奴らには割れない」

 

「だといいけど」

 

 

もうこうなれば下宮の言う事を信じるしかない。

もしくは後でキュゥべえかジュゥべえに問い詰めるしか他ないか。

ニコはため息をついて両手を挙げた。

下宮も少し困ったように唇を吊り上げるが、すぐに説明を続けることに。

 

 

「さらに魔獣には活動に制限時間がある」

 

 

舞台に上がる魔獣の数は、一日単位で変わり、それとは別に行動にも『制限時間』が設けられている。活動の時間は魔獣によって変わり、そしてその制限時間が適応されるのは、参加者と交戦が始まった時である。

 

 

「交戦とはインキュベーターが認識することで発生するイベントのようなものだ」

 

「アイツ等のさじ加減って訳だ」

 

「そう。コレは双方にとってメリットにもデメリットにもなるルールだ」

 

 

例えば魔獣が参加者を追い詰めたときに制限時間が来れば、魔獣は骸へと強制送還させられる。

これは襲われていた参加者が不利の場合には当然メリットになるだろうが、逆もまたしかり。

 

 

「追い詰めていた場合には、魔獣に逃げられる事になる訳か」

 

「そうなる。だがコレは別のルールによって多少強引に解決できるかもしれない」

 

「どういう事だ?」

 

「後で説明する」

 

 

加えて、大半の魔獣は一度狙った獲物に固執するクセがあると下宮は説いた。

これはあくまでもクセなので、ルールで定められたものではない。

しかし下宮には確かな確信があった。

 

ほとんどの魔獣は一度決めた相手を執拗に狙うはずだ。

何故ならば奴等は尋常ではないプライドの高さを持っている。

狙いを定めた獲物に逃げられる、これほど屈辱な事はない。

 

 

「それに奴等の根本的考え。ゲームを楽しむと言う性格がある。だからそう簡単には短期決着を狙わないはずだ」

 

「向こうも向こうでゲームを楽しむって訳か」

 

「そう言えば――」

 

 

ギアの言葉がフラッシュバックしてきた。

希望は積み木、高く高く積み上げられれば、それだけ崩された時のショックも大きい。

そう簡単には積み木は崩さない。それが向こうの方針である。

 

 

「ギアが最初から来る可能性は?」

 

「無い。これもルールだ」

 

 

魔獣のトップであるギアは当然ゲーム終盤でしか活動を許されない。

そのルールとは二つに分けられている。一つはギアを除いた全てのバッドエンドギアが死亡している場合。

もう一つは最終日、つまりワルプルギスが襲来する日である。

 

 

「次に説明するルールは僕もいま一つ分からない部分が多い」

 

「ど、どういう事?」

 

「なんと言えば良いのか……。とにかく、そう。アバウトなんだ色々と」

 

「アバウト?」

 

 

頷く下宮。メガネを整えながら口を開く。額には若干汗が浮かんでいた。

アバウト故、間違った情報を与えてしまわないかの不安があった。

加えてかなりデリケートな話題である。

 

 

「魔獣が行う"殺害"と言う行為についてだ」

 

「……ッ」

 

 

空気がピリつく。

思い出したくも無い光景が山程と脳には刻まれているのだ。

特にまどか。一瞬バズビーに殺された家族の姿を思い浮かべてしまい、唇を強く噛む。

 

時間軸が移動したとは言え、この今がある限り、あれも本当なんだ。

守れなかった、救えなかった。そして家族が受けた苦痛を思えば心が砕けそうになる。

下宮としてもそれが分かっている以上、できれば避けたい会話ではあったが、逃げることもできないことだ。

立ち向かわなければならない問題なのだ。それは今も。いや今だからこそと言えばいいか。

 

 

「まず、結論から言えば、魔獣はゲーム盤にいる人間を自由に殺害する事ができる」

 

「!」

 

「つまり、前回のゲームの様に参加者の家族を狙ってくる可能性も十分に考えられる」

 

 

事実それが手っ取り早く絶望を与えられる方法だ。

本人を狙うより、その大切な物を壊していくと言う卑劣なやり方。

そしてその卑劣さ故に、与えられる精神的なダメージも大きい。それは当然魔獣も良く知っている。

だからこそバズビーはまどかを絶望させる方法に、彼女の家族を殺害すると言う方法を選んだ。

 

 

「魔獣は知っているんだ。それが最も早く、かつ効率的に絶望させる方法だと言う事を」

 

「そんな……!」

 

 

あの惨劇が繰り返されるかもしれないのか。一同の背中に冷たい物が走る。

けれども下宮の言い方には引っかかる物があった。

まるでそれはまだ続きがあるかの様な言い回しだったから。

それをすぐに問いかける手塚、すると下宮は二度三度と強く頷いてみせる。

 

 

「そう、そうなんだ。ココが非常にアバウトな部分なんだ」

 

 

まず、死と言う概念の話。

何も哲学的な話をしようと言う訳じゃない。

それが今回のゲームのルールとして確立されるワードとシステムなのだから。

そう、システムでありルール。それはゲームの中にある確立された存在だと言う事だ。

 

 

「人の死は、肉体的な物と精神的な物に分けられる」

 

 

それは誰かが決める事ではないのかもしれないが、大きく分けるならばそうなる筈だ。

この点に関して今は深く掘り下げるつもりも語り合うつもりも無い。

しかして魔獣に与えられたルールを知れば、それを考えてしまうのは必然といえる物なのかもしれない。

 

 

「魔獣はゲーム盤で人を殺す際、肉体の死のみ与える事ができる」

 

「……どういう事だ?」

 

「死は複雑な物だ。肉体が損壊すれば、精神を証明する事もできず、それは決定的な死とも言えるのかもしれない」

 

 

けれども確実な死では無い。下宮は少し言葉を強めて言葉を放つ。

魔獣は確かに人を殺すことができるが、それは確定的な死ではない。

少しチープな言い方かもしれないが、肉体を粉々に粉砕されたとしても、魂はゲーム盤からは消滅しないと言う。

 

 

「どういう事ぞ?」

 

「そうだな……」

 

 

メガネを上げる下宮。

少し申し訳ないが、中沢で説明しよう。

 

 

「な、中沢くんで?」

 

「うん。まあ、彼なら許してくれるよ」

 

 

複雑そうな表情のまどかや真司を放って、説明を始める下宮。

前回のゲームや本来の世界では、中沢が殺されれば肉体的な死と精神的な死が同時に訪れていた。

精神と言うのは要するに魂だ。人を動かす根本なるコア。中心や動力源と言う意味であり、『心臓』に置き換える事もできる。

 

肉体のコアである心臓や脳。しかし精神の要と言えるのは魂だ。

それが壊れれば人は死に至る。どちらが先に訪れるのかはよく分からない。

 

たとえば中沢が何者かに銃で撃たれて殺されたとしよう。

するとやはり中沢の体が損壊した後に、魂が消えると言う事で死がやってくる。

もしくは逆かもしれないが。

 

 

「まあそこは置いておいて。とにかく、人は肉体と精神に別れていると人は考えているだろう?」

 

 

それがもたらす物こそが、二分割された死だ。

しかし今回の世界。この今と言うリアル。箱庭とゲーム盤では、死の定義が少し変わってくる。

それはインキュベーターが齎した歪な概念だ。真司が願った『皆が生き残る事ができる』ルールであり、逆を言えば前回の蘇生ルール同じく、命を軽視する事になるシステムである。

 

 

「簡単に言えば、参加者以外は殺されても蘇生できる可能性がある」

 

「蘇生……ッ」

 

「ああ。例えば、中沢くんが魔獣に殺されたとしよう」

 

 

前回のゲームや、巻き込まれる前の世界では、殺されれば当然死ぬ。

それは肉体的な意味でも精神的な意味でもだ。この二つはあくまでも分かれているとは言え、繋がっている部分もあるのだから。死が訪れれば二つの死が重なり合い、完全な死が齎される。

 

 

「しかし今回、齎されるのは肉体の死のみと言う事なんだ」

 

「肉体の死……」

 

「残った魂は見えないところで管理される。インキュベーターによってね」

 

「???」

 

「何も難しい話ではないよ」

 

 

要するに、形が違うだけで『復活ルール』は消えていないのだ。

前回は50人殺し。そして今回は――

 

 

「魔獣の全滅」

 

「!」

 

「あ、ハーフ以外! 僕らは別! 頼むよそこの所は!」

 

 

下宮は慌ててその言葉を付け足す。

つまり下宮と小巻以外の魔獣を倒す事で、失われた命が戻ってくると言う事だった。

そしてそれに基づいた派生ルールもまた存在している。

 

 

「一つは魔獣が殺害を行える最大数」

 

「と言うと?」

 

「今回、魔獣が行う殺人は食事と考えてもらえれば分かりやすいかもしれない」

 

 

殺す事は食う事だ。

つまり無限に殺せる訳では無い、満腹がくれば終わりだ。

魔獣によって個体差はあるが、一日に殺せる数には限りがあり、それを越えると星の骸へ強制送還され、更なる特殊ルールが発動する。

そしてその特殊ルールは、別の条件下に置いても同じく発動される物であった。

 

 

「その発動条件は過剰殺人だ」

 

「殺しすぎって事か?」

 

「ああ。限界が来ているのにも関わらず殺人を続ける。もしくは――」

 

 

例えばビルを連続で破壊して中にいる人や、破片で下にいる人たちを殺す。

例えば見滝原上空を飛んでいる飛行機を攻撃して落として殺す。

つまり、あまりにも『無意味』な殺害数が多い場合、インキュベーターが任意でそのルールを発動する。

 

 

「内容は、復活ルール」

 

 

先ほど魔獣を全て倒せば死んだ者が蘇生されると言ったが、それとは別の復活ルールがある。

もしも魔獣があまりにも常軌を逸した数や周期で殺戮を行う場合、もしくは建造物や地形を大幅に変える程の破壊を行い、参加者をおびき出す等と『雑』なプレイイングを行った場合、その行動を取った魔獣を殺せば、その時点で魔獣が殺害した参加者以外の人間、もしくは壊した建造物が復活する。

他にもふざけた行動を取った魔獣にはペナルティが与えられる。

 

これが新たな蘇生システムである。

魔獣がどれだけの人を巻き込もうとも、魔獣が滅べば世界は死者を引き戻して世界を構築しなおす。

ジュゥべえが真司の想いを汲み取ったが故に生まれた、やや歪な希望といった所だろうか。

 

当の真司も複雑そうな表情を浮かべていた。

何を言えばいいのか分からないのだろう。死者を蘇生できるシステムは悪いとは言わないし、現に希望ではあるのだが、どうしても命の軽視が訪れてしまう。

 

 

「ましてやインキュベーターが過剰殺人と見なす単位が分からない。これはかなりアバウトなルールだ」

 

「確かに。まああくまでも一つ抑止力って事か。イエローカードみたいなもんだな」

 

「そして、気づいたかな?」

 

 

その蘇生システムには、一つの特徴がある。

ジュゥべえと話した真司ならば分かっているだろう。

そうだ、ジュゥべえは言っていた、今回復活ルールを廃止すると。

 

 

「そう、コレはあくまでも参加者以外が使える物」

 

 

今回のゲームに存在する蘇生システムは、参加者ではなく関係の無い人たちに与えられた物なのだ。

参加者達の死を覆すルールは、今回一つも存在していない。

もしもこの時間軸で参加者が死ねば、最後の願いの力以外では蘇生させる事はできない。

50人殺せば等と言う甘えた立ち回りはできないのだ。

これはジュゥべえも言っていた事。真司は強く頷いてみせる。

 

 

「歪ではあるものの、インキュベーターは君の概念を汲み取ってくれたみたいだ」

 

 

感情無き故に、復活ルールその物の否定とはならなかったが、逆にこれはプラスに働くものだと下宮は言う。

関係の無い人たちが巻き込まれる事は非常に辛い事だ。

けれどもこのルールがあれば、魔獣を倒しさえすれば、その間違った死は否定できる。

 

 

「もちろん被害を出さないのが一番だ。なにせ過剰殺人が禁止されているだけで、殺害そのものは許されている」

 

「分かってる。魔獣を一刻も早く倒す。それが一番だろ」

 

「そういう事になる。何か質問は?」

 

「魔獣の数はどれくらいだ?」

 

 

フムと唸る下宮。

彼自身全てを把握している訳ではなく、雑魚の『従者型』を含めるとその数は膨大としか言えない。

しかし幹部であるバッドエンドギアや、クララドールズを種類別に分けるならば何となく数は出せるかもしれない。

 

 

「まずバッドエンドギアはだいたい22体前後と考えてもらえばいい」

 

 

よく見る者や、部屋でゲームを監視している者もいるだろうとの考えだった。

これだけで考えるなら、参加者よりはやや少ないと言える。

とは言え下宮もどんな魔獣がいるのか、詳しく知っている訳では無い。

それに一体一体の実力は本物だ。決して油断はできない。

 

 

「さらにココにクララドールズが入る」

 

「人形みたいなヤツだよな?」

 

「ああ。僕も詳しくは知らないが、負の具現と呼ばれていた」

 

 

下宮はそれを14体見たと言う。

おそらくそれが全てだとは思うのだが、これもまた確証はない。

 

 

「そして従者とは別に、少し力が高い魔獣がいる」

 

 

バッドエンドギアやゲストタイプの様に言語を覚えているかは微妙なラインの者達。

要するに雑魚タイプの従者と、幹部のバッドエンドギアの中間に位置付いている者達と言えば良いか。

従者は人を模した部分と、衣服が全て白色――……と言うより、無色で構成されている。

しかしその中間地点にいる者には、『色』が与えられていると。

 

 

「通称"色つき"、それが21体いると記憶している」

 

「うげ、結構いるのな」

 

「ああ。愚者(フール)を除くアルカナを模したヤツらだ」

 

「アルカナ?」

 

 

首を傾げるまどか。真司も頷いていたが全く分かっていない。なのですぐに手塚が説明を。

アルカナとはタロットカードの絵柄のモチーフに使われる物であり、ナンバー0は愚者を意味する。

 

 

「つまり、そこにイツトリとワルプルギスの二体を合わせるのなら、雑魚を除いて約59体の敵がいるのね」

 

「それマジ? 参加者全員合わせても26人、コッチがバリバリ不利じゃね?」

 

「そもそも参加者が全員すんなり協力してくれるとも限らない訳だからな」

 

 

頷く下宮。

一同から視線を外して少し沈黙。そしてメガネを整えると、真司を激しく睨みつけた。

息を呑む一同。先程までの下宮の雰囲気ではない。

 

それはまさに人間ではなく、魔獣としての顔と言えばいいのか。

下宮は今、確かな殺意を瞳に宿して真司を見ていた。

今の言葉の通りだ。敵の数は多く、それらを全て倒そうと言うのは、簡単な事ではない。

 

 

「口にするだけなら何とでも言える。しかし、この戦いは結果を出さなければならない」

 

 

真司はソレをちゃんと理解しているのだろうか?

下宮にはそれが疑問だった。

だからこそ、確かめなければならない。

 

 

「先程言ったルールの一つを今、説明する」

 

 

先ほど下宮は、魔獣に与えられた『時間制限』を無理やりに何とかできるかもしれないと言った。

そのルールを今説明する。尤もそれは口で話して教えると言う物ではない。

実際に、体験してもらうのが一番だ。

だから下宮は真司を睨んだ。その意味、その意図、分からない訳では無いだろう?

 

 

「城戸真司、僕と戦って欲しい」

 

「!」

 

「気を悪くしないでくれ。だが僕自身、確かめたかった」

 

 

魔獣に喧嘩を売った。魔獣を倒すと宣言した。そして参加者全員を救うと誓った男の強さを。

コレから先の戦いは半端な覚悟や強さでは乗り切れない。

時に傷つける事、時に乗り越えること。それを可能にするのは、何よりも『強さ』と言う捉えがたい存在ではないのか。

それを証明するためには、やはり拳を交える他ない。

下宮は確かめたい、見てみたい、そして信じたかった。真司らの強さと言う物を。

 

 

「戦いたくないは、もう許されない。お互いに」

 

「下宮君……」

 

「僕はハーフ。所詮は魔獣と人間の出来損ない。弱いが制限時間は与えられていない利点がある」

 

 

だが逆を言えば50%は魔獣である。

先程肉体と精神の話を持ち出したが、その点で言えば既に肉体を改造されている時点で下宮は魔獣のラインに足を置いている。

 

監視役は参加者と見なされる為、魔女に襲われる事もあった。

しかしそれでも死ななかったのは何故か?

簡単だ、身を守るだけの力があったからに他ならない。

ワルプルギス襲来の日も現場に居合わせたのは、それを可能にするだけの防衛力があったからだ。

 

 

「皮肉なものだ。忌むべき力が自身を守る力としても機能していた」

 

 

下宮はメガネを外し、真司を強く睨みつける。

 

 

「僕を! 魔を超えてみろッ。城戸真司!」

 

「!?」

 

 

空間が震える。

そして下宮の体から、濁った闇が溢れた。

それが彼の姿を覆い隠す。闇が晴れた時、そこにいたのは下宮鮫一であり、下宮鮫一ではなかった。

思わず声を上げるまどか。下宮が座っていた場所に今現在座っているのは、人に近いシルエットをしているだけで、人とは似つかぬ異形であった。

それはまさに鮫を模した化け物だ。

 

 

「し、下宮くん……」

 

「驚いたかい鹿目さん。コレが僕だ」

 

 

そして、今まで君達を騙し、ゲームを監視していた男の真の姿だと。

下宮は鮫の歯を模したブレードを構えると、その刃先を真司に向ける。

 

 

「戦え城戸真司。僕は貴方を殺す気で行きますよ!」

 

「ッ!」

 

「もう伝える事は伝えた。だから遠慮する必要なんて無い。そうだ、なんならば殺してくれても構わない!」

 

 

だが逆に、本気で殺す気だった。

そうだ、下宮は真司を殺す。もしも真司が負けるようならば、それは愚か以外の何者でもない。

そんなヤツは、もういらない。

 

 

「これが僕の覚悟だ」

 

 

いや、違うか。

 

 

「答えなんだ。コレが、僕自身のな」

 

「答え……!」

 

「そうだ。だから貴方も、答えを振りかざせ」

 

「………」

 

 

真司はデッキを一度まじまじと目に焼き付ける。

そう、そうだな、下宮もまた同じと言う訳か。

だとすればその想いには、想いを以ってして応えなければならないのかもしれない。

それもまた、自分が望んだ概念に賛同してくれた下宮への礼になるかもしれないと。

 

 

「分かった」

 

「真司さん――!」

 

「いいんだ、まどかちゃん。俺も戦う事からは逃げられないんだから」

 

 

ましてや、傷つけると言う事からも逃げられないのかもしれない。

真司は一度目を閉じてデッキを強く握り締める。

そして目を開いた時、立ち上がってデッキを前に突き出した。

現れるVバックル、真司は手を斜めに突き上げる。

 

 

「変身!」

 

 

現れる二対の鏡像。

それは回転しながら真司に合わさると龍騎の姿を与える。

 

 

「場所を移そう、下宮くん。ここじゃほむらちゃんに迷惑が掛かる」

 

 

ココは室内、こんなところで戦えば、ほむらの家が滅茶苦茶になると。

 

 

「そう、それだ」

 

「え?」

 

「新ルールの一つに次元に関係した物がある」

 

「次元?」

 

「ああ。星の骸と同じく、今僕達がいる場所とは違う次元の存在」

 

 

今まで戦うとなった場合、魔法少女が構築した結界が無ければ周りに存在がバレる。もしくは被害が出るケースがあった。

しかしそれを多少なりとも改善できる場合がある。

 

 

「アレを使う」

 

「アレって……」

 

 

下宮が指し示す場所には一枚の姿鏡があった。

何の事は無いただの鏡だ。だがそれが重要なアイテムになってくると言う。

下宮は龍騎に合図を出して、まずは鏡の前に移動させた。

 

 

「僕を押してみろ」

 

「え?」

 

「鏡の中に入れる様に」

 

 

大切なのは、鏡の中に入れる事を強く思う事だ。

 

 

「や、やだなぁ、鏡の中に入れるって。そんなの無理だ――……」

 

 

しかし沈黙する龍騎。

疑う事は無意味か。龍騎は頷くと言われた通り、下宮を鏡の中に入れる様に想像しながら背中を思い切り強く押した。

すると、一同の前に目を疑う様な光景が広がる。

 

 

「んなッ!!」

 

「鏡の中に――!?」

 

 

突き飛ばされた下宮は、姿鏡の中に吸い込まれる様にして消えていった。

かとも思えば文字通り、鏡の中に送り込まれて床の上を転がっていた。

すぐに立ち上がる下宮。周りを見回してみれば、そこには全てが反転した世界が広がっていた。

 

 

「つまりは、こう言う事なんだ」

 

「えッ?」

 

 

鏡の中から話しかける下宮。

手塚達は辺りを見回すが、現実世界に下宮の姿はどこにも無い。

当然だ。彼は今、現在文字通り『鏡の中の世界』にいるのだから。

 

 

「今立っているこの世界もまた、箱庭とは別の次元に存在している世界だ」

 

 

ゲーム盤。そして星の骸とは異なる、『第三の世界』とでも言えばいいのか。

 

 

「それがこの"ミラーワールド"だ」

 

「ミラーワールド……!」

 

 

頭に突き刺さる様な言葉だった。

それは騎士にとっては非常に関わりが深い世界だったと下宮は語る。

今はゲームの記憶が優先されているおかげで、真司達には初めて聞く単語と言っても良いだろう。

その経緯や歴史については下宮もココで語る気は無い。大切なのは今このゲームにおいて、このミラーワールドがどんな役割を果たすのかと言った所だ。

 

 

「来い、城戸真司」

 

「お、俺も? でもどうやって?」

 

「入りたいと願えば入れる」

 

「えっ? えっと……」

 

 

龍騎は鏡に手を当てた。

すると文字通り吸い込まれる感覚がしたと思えば、気がつけば一瞬で鏡の中に入っていた。

目の前には怪人体となっている下宮。そして周りを見回してみればどうだ。

一見すればほむらの家のリビングではあるが、よく見れば文字が反転している世界。

 

 

「俺もッ、ミラーワールドに入っちゃったって事……?」

 

「ああ。姿鏡の中を見てみると良い」

 

「え? って、あ……」

 

 

鏡の中にはコチラを不思議そうに見ているまどか達が。

下宮の言う通り、ここは鏡の中だ。その名はミラーワールド。

文字通り鏡の中の世界。それは騎士の力によって行き来できる世界なのだ。

 

 

「魔法少女は騎士と契約済みなら、同じように行き来ができる」

 

 

この世界は、現実世界と比べてみると、文字が反転した程度で、作りは同じだ。

鏡など、姿が映る物を出入り口として行き来が許される。

最大の特徴は先程の通り、魔獣や一般人は自分の意思で入る事が出来ないという事だ。

 

 

「意味が分かるか?」

 

 

そしてもう一つの特徴。

下宮はサーベルを近くのソファに向って振り下ろす。

当然切り裂かれるソファ、しかし表の世界、つまりまどか達が立っている現実の世界ではソファには何の変化も起きていない。

つまりミラーワールドは、あくまでも現実世界を模った虚構の存在であると言う事だ。

 

 

「ミラーワールドで活動できる時間にも限りはある」

 

 

しかしその間、魔獣は骸へ帰還する事ができず。

また、ミラーワールドから抜け出す事もできない。

どれだけ派手に戦っても周囲には被害はでず、時間が過ぎれば入り口に使った鏡から強制排出される。

 

これからの戦い、この立ち回りは覚えておいて欲しいと下宮は言った。

そして同時にサーベルを握り締める下宮。

お喋りの時間が長い、このミラーワールドにて活動できる時間も限られる。

 

 

「行くぞ! 城戸真司ッ!!」

 

「!」

 

 

テーブルを蹴り飛ばす下宮。同時に横へ飛んで、龍騎との距離を空ける。

一方龍騎はテーブルが脛に命中したせいで、少し動きが鈍る。

とは言えすぐにテーブルを持ち上げると、下宮のほうへと投げ飛ばした。

 

 

「フンッ!」

 

 

下宮は飛来してきたテーブルを切り裂いてみせる。

さらにソファの上に飛び乗ると跳躍。一回転しながらサーベルを龍騎に向って振り下ろした。

 

 

「う、うわっ!」

 

 

サーベルを交わしたものの後ろに倒れる龍騎。

ソファの上を転がりながら、次々と振り下ろされるサーベルを紙一重で交わしていく。

鼻を鳴らす下宮。逃げているだけでは勝てない、そう強めに言い放ちながらも、攻撃の手は全く緩めない。

 

 

「やはり抵抗があるか?」

 

「そ、それは――ッ!」

 

「魔獣は人の形を模している。場合によっては、人の見た目のまま殺す必要も出てくるだろう」

 

 

ましてや女性の姿をしているものもいる。

クララドールズ達は見た目で言えば子供でもある。

それを攻撃する事、それを殴るという事、蹴ると言う事。他でも無い、『殺す』と言う事に龍騎はまだ若干の抵抗を持っている。

 

 

「だが忘れるな! 奴等は悪意の集合体、人では無いッ!」

 

 

どれだけ人に近かろうが人では無く、人に擬態したモンスターだ。

放置すればより多くの人が死ぬ。下宮は確かにハーフ、ましてや協力を申し出た身。

龍騎も攻撃する事に遠慮はするだろう。

だが今は本気で戦って欲しいと下宮は叫んだ。

いずれにせよ下宮自身は本気だ、龍騎を殺すつもりで戦っている。

 

 

「傷つけぬ優しさと、倒すべき物の区別をつける頭の良さは、全く違うベクトルにあるぞ龍騎!」

 

「ぐっ! ぅうううう!!」

 

「そこを見間違わないでもらいたい!」

 

 

下宮は水流を発射して、転がる龍騎を凄まじい水圧で押さえ込んだ。

そしてソファの一角を持ち上げると、それを龍騎のほうへと倒した。

サンドイッチ状態となり、龍騎の動きが止まる。

その隙に下宮はバク宙で距離を取った。

 

二人の戦いを見ていたまどか達は下宮に起きた異変に目を見開いた。

と言うのも、下宮の姿がさらに変質したのだ。

手に持っていたサーベルは消え、代わりに二連射式の大型砲台を前に背負っている。

フォームチェンジ、彼はそのキャノン砲を構えてチャージを開始した。

 

 

「ッ!」

 

 

龍騎はそれに気づき何とか身動きを取ろうとするが、上下ソファに挟まれ、水流を受けた事による怯みも直っていない為にうまくいかない。

まずいか? 下宮は手加減をしないと今言ったじゃないか。

 

 

「龍騎、僕に勝てないなら、貴方は他の誰にも勝てない!」

 

 

ましてや、他の参加者を説得する事も絶対に不可能。

弱いと言う事は、甘いと言う事は、何もしない事ではない。

それを履き違える様であれば、いっその事ココで消え去る方が傷つかずに済む。

 

 

「消えろ、龍騎!」

 

「ッ!」

 

 

下宮は踏み込み、砲口を光らせた。

 

 

「シュウウウウアッッ!!」

 

 

砲台から凄まじいエネルギーを纏った水流弾が放たれた。

それは龍騎を抑えていたソファに触れると大爆発。辺りの家具や地形を吹き飛ばしていった。

凄まじい震動が起こるミラーワールド。けれども表の世界は何も無い。

まどか達は息を呑んでその様子を見ているだけだった。

ニコの再生成で鏡はモニターとなって中の様子を鮮明に映している。

しかし今は爆煙、二人はどうなった?

 

 

「………」

 

 

爆煙が晴れていく。

始めに姿を見せたのは当然と言うべきか、下宮であった。

砲口からは煙が放たれ、爆煙の向こうにいる龍騎を見ている。

手加減はしていない。下宮は龍騎に希望を視たのは事実であるが、この程度で死ぬのならばその程度だ。

 

 

「……なるほど」

 

 

下宮はゆっくりと呟く。

 

 

「中々頭が回る。安心したよ」

 

「ああ、それはどうも!」

 

 

爆煙が晴れ、そこにいたのは無傷の『真司』だった。

と言うのも彼の周りには龍騎の紋章の結界。スキルベント・ドラゴンハート。龍騎は大きな攻撃が来ると見て、あえて変身を解除したのだ。

そして自動で発動される結界の力で下宮の攻撃を防いだ。

 

 

「俺は……」

 

「?」

 

 

真司は大きな深呼吸を一つ。

そう、そうだよな、そうなんだよな。かみ締める様に記憶を探る

負けられない、負けられないんだ、だから死ねないし死なせないって決めたんだ。

下宮も期待をしてくれた。希望を持ってくれた。裏切れないよな、その大切な想いってのは。

 

 

「俺は、負けない!」

 

「………」

 

 

真司は叫ぶ。いつもの気合を入れる方法で。

そしてもう一度手を斜めに突き出してその文字を強く、唸る様に叫んだ。

 

 

「変身ッ!!」『ソードベント』

 

「それだ、それでいい!!」

 

 

結界をぶち破り、ドラグセイバーを持った龍騎が走ってくる。

下宮はフォームチェンジ、再び近接特化の形態に戻ると、サーベルを構えて走り出す。

爆発の影響で大きく散らかったほむら家のリビングで、二人は剣をぶつけ合い、火花を散らす。

 

 

「「オオオオオオオオオ!!」」

 

 

斬り合い、もみ合い、二人はキッチンの方へと移動していく。

並ぶ食器棚を次々と倒し、グラスや食器を割りながら二人は尚も切り付け合い、ほむらの家の中を移動していく。

 

 

「龍騎! 僕は貴方たちに対する罪悪感を常に感じてきたッ!」

 

「ッ!?」

 

「僕もまた人間でありたいと願い! 故に齎される殺戮の連鎖を傍観している事に、違和感と罪悪感を覚えていたんだ!」

 

 

剣と剣が交差し、激しい火花が二人を照らす。

 

 

「だが僕は弱かった! 貴方達が巻き込まれている間、何もしなかったんだ!」

 

 

踏み込めなかった。

何故か? もちろんそれは自己の弱さが原因だ。

だがもう一つ、信じられるだけの希望が無かった。

 

 

「君達を長い間見てきた。そして僕も思ってしまったのさ!」

 

 

人間は協力し合えない、人間は分かり合えない。

そしてどこかで思ってしまったのだろう、人間に生きる意味はあるのかと。

人の醜さが浮き彫りになるゲームだった。だからこそ、それを見てしまえば覚えてしまう。

人が魔獣を退いてまで生きる意味があるのか? 生きる価値があるのか?

 

 

「無理だと思ったよ、心から!」

 

 

魔獣を退ける力、価値が人には無いと思ってしまった。

だからこそ下宮はずっとその想いを心の中で抱いて、燻り続けるだけ。

行動には移さない、移す価値が無いと決め付けてしまっていた。

本当はずっと変えたかったのかもしれない、自分自身。

それを真司を見ていた思った。理解した、思い出したんだ。

 

 

「フンッ!」

 

「ハァア!」

 

 

舞い散る火花。

戦う中で気づく下宮。コチラは二刀流、向こうは一刀流。

手数は下宮の方が多いのだが、故に気づく異変。

剣を打ち付ける度に手が痺れてくる。龍騎の想いがビリビリと伝わってくる。

気のせい? いや、これは――!

 

 

(明らかに力が上がっている!)

 

 

元々の龍騎の実力はよく見ていたが故に理解しているつもりだった。

しかしこれはあまりにも規格外。少なくとも下宮がゲームで見ていた龍騎の力では無いと確信できる。

 

 

(やはりサバイブに覚醒した事が原因か……!)

 

「ハァアッ!!」

 

「ムッ! グゥウッッ!」

 

 

龍騎が振り下ろすドラグセイバーを、下宮はサーベルを交差させ受け止める。

ギリギリと競り合う二人。しかし先に圧され始めたのは下宮だった。

膝を付き、龍騎の剣を間近に見る。

 

間違いない、龍騎のスペックが明らかに上がっている。

サバイブに覚醒した事で齎された強化と言うべきか。

これもまた龍騎の希望となり得る訳だ。魔法少女と騎士が生んだ絆の力だとでも?

 

 

「だが――ッ!」

 

「!!」

 

 

純粋な力だけでは魔獣は超えられない。

下宮の体から爆発する様に放たれた水。それは龍騎を弾き飛ばすと、同時に大きな隙を生ませる。

がら空きになった胴体に刻む斬撃。よろける龍騎に、下宮は再び水流を発射していった。

 

 

「ぐッ! ブッ! アァア!」

 

「フッ! シュアア!!」

 

 

水流によって距離が開いた。

下宮はフォームチェンジを行い、遠距離特化に変わる。

龍騎も水流の影響でフラついて身動きが自由に取れない。

そこへ撃ち込まれる圧縮水流弾。並みの人間ならば受けただけで骨が粉砕されるだろう。

 

だが龍騎もただやられる訳では無い。

水流に飲み込まれながらも、手はデッキに伸ばしていたのだ。

信頼と絆がカードを生み出す、龍騎が調べた結果、サバイブ覚醒と共に新たなるカードが追加されていた。

龍騎はそれを抜き取り、水流に揉まれながらも確かに発動していたのだ。

 

 

『コールベント』

 

「ッ、させない!!」

 

 

何か面倒な事をやられる前にやってやる。下宮は高威力の弾丸を放った。

だが、それは龍騎には届かない。彼と弾丸の間には、確かな『力』が存在していた。

魔法と言う希望を介した力が。

 

 

「!!」

 

 

龍騎の前に現れる巨大な盾を構えた天使。

これは間違いなくまどかのアイギスアカヤー。

コールベントとはつまり、まどかが呼び出す天使を一体龍騎も選んで呼び出せると言う物だ。

エンゼルオーダー。龍騎は巨大な盾を出現させ、下宮の水流を防いでみせる。

 

 

「クッ!」

 

「トォオッ!」『アドベント』『ガードベント』

 

「な、何!?」

 

 

盾の向こうから飛び出してくる龍騎。

下宮は盾に目が行っていた為に、突如上に現れる龍騎に対応する事ができなかった。

だが跳んだとしても上にはすぐ天上がある筈。

そう思ったときには、既に龍騎の背後からドラグレッダーが飛び出していた。

ドラグレッダーは龍騎の軌道を阻む天上を破壊するとそのまま上昇。咆哮を挙げながら空へ昇る。

 

 

(それがッ、どうした!)

 

 

龍騎が斬りかかってくる前に、下宮の弾丸が先に届くはずだ。

 

 

(待て……、ガードベント!?)

 

 

下宮は自分の狙いが確かにズレている事を体感する。

ドラグレッダーが咥えていたのはドラグケープ。

なびく紅いマントが、下宮の集中力を嫌でも其方に注がせる。

 

 

「どッりゃぁあああああああ!!」

 

「ウグッ! アァ!!」

 

 

龍騎はそこへ炎を纏わせた剣を振り下ろす。

下宮は回避を選択するが、後ろには壁があった。それが原因で逃げられない。

龍騎の龍舞斬が、下宮の大砲に大きな傷をつける。

確かな熱を感じる。下宮は呻きながら龍騎から後退していく。そんな中、大砲は小規模の爆発を幾つも起こし、亀裂からは勢い良く水が噴射されていく。

 

 

「なるほど……! 良い攻撃だッ」

 

「ああ。俺の時間が作った重さが乗ってるんだ!」

 

「そうだな……。納得だ――ッ!」

 

 

大砲をパージする。

下宮は再びフォームチェンジを行い、サーベルを両手に構えた。

龍騎はドラグセイバーを消滅させてドラグシールドを二対構える。

そこで一旦沈黙し、睨み合う二人。

 

 

「龍騎。参加者は皆、生きるべきだと思うのか?」

 

「俺にソレを決める資格は無いのかもしれない。でも、少なくとも俺はそう思ったから願ったんだ」

 

「……ッ」

 

「君も、そう思ったから俺の所に来てくれたんだろ?」

 

「ああ、そうかもな」

 

 

ふと横を見る。そこには『表の世界』が見えた。

手を合わせて、まどかが祈りのポーズを取っている。

あの祈りが、この世界を巻き起こしたのなら。彼女の願いもまた、それだけの重さがあると言うものだ。

 

下宮は改めて前を向き、サーベルを擦り合わせる。刃物が擦れる音と共に火花が散った。

それを合図に走り出した両者。龍騎はシールドを前に突き出し、下宮は口から高圧の水流を放つ。

 

 

「ウオオオオオオオオ!!」

 

「グゥウウ!!」

 

 

龍騎はシールドで水流を防ぎながら前進してくる。

下宮は一度地面を転がり、立ち位置を逆にしてもう一度水流を発射した。

しかし龍騎は同じように盾で再び水を防いで進む。そして遂には突進が下宮に命中して、大きく吹き飛ばしてみせた。

 

 

「ぐあぁ! あぁぁう゛ッッ!!」

 

 

手足をバタつかせながら後方へと跳んでいく下宮。

ガードの意味で交差させたサーベルの刃も、また同じくして粉々に砕け散る。

 

 

「ガハッ! グッ!」

 

 

下宮は壁に激突し、立てかけていた絵と共に床へ伏せる。

すぐに立ち上がったものの、目の前には龍騎の両足が広がっていた。

つまりそれはドロップキック。龍騎の雄たけびが聞こえ、下宮の脳が振動する。

そこから先はいまいち覚えていない。

とにかく二転三転と床を転がり、気がついたときには青い空が見えていた。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

サバイブを使わずにココまでの力の片鱗を見せるとは。

下宮は手に残るサーベルの破片を掴み、それを見つめてつくづくそう思う。

鮫一とは、自分が得た力を示す物として適当に与えられた名前でしかない。

 

いつからだろうか? 本当の名を忘れたのは。

人間サイドに立っていると言い続けていたのに、結局いつからか諦めていたのかもしれない。

全て小巻の言うとおりだった。今となってはもっと彼女の傍にいてあげれば、孤独や恐怖を和らげてあげる事もできたのか。

だから、もしも真司が概念に至るのがもう少し遅かったのならば……。

 

 

「見事です。城戸真司」

 

「下宮くん……」

 

「貴方ならば、やはり……ッ、変えられるかもしれない」

 

 

ああいや、違う。

下宮は立ち上がりながらすぐに否定を行った。

変えられるかもしれないではない、変えて欲しいんだ。

それを下宮が口にする事は無かった。しかし誰かが変えてくれるのをずっと待っていた。

 

 

「………」

 

 

粒子化し始める体。下宮は変身を解除すると――。

いや、違う。人間の姿に変身すると、手を差し出した。

 

 

「連れて行ってくれ」

 

 

僕じゃ、"ココ"からは出られない。

その言葉に龍騎は深く、深く、頷いた。

そして下宮の手を取ると、ミラーワールドから抜け出していく。

そこに至る道は、下宮にはとても輝いている様に見えた。

 

 

「………」

 

 

しかし――。

 

 

「すまない」

 

「え?」

 

 

だからこそ、差す影もある。

 

 

「僕は、貴方たち騙した」

 

「騙した?」

 

 

そう、嘘をついた。

下宮がミラーワールドから戻ってきた際、一番初めに言った言葉は謝罪であった。

これから信頼関係が大切になってくる中で、彼は最大に愚かな行為を働いたと。

 

ただし、嘘――、と言うのは多少語弊かもしれない。

しいて言うのならばそれはとても大きな『賭け』を既にしてしまったというのだ。

それも、真司達には無断で。

 

 

「賭け?」

 

「おいおい、どういう事だよ?」

 

 

ほむらとニコの言葉に、下宮は答えを返した。

 

 

「君達は僕に気を取られすぎていた」

 

「えっ?」

 

 

下宮はメガネをかけ直すと真司ではなく、まどかではなく、ほむらではなく、手塚ではなく、ニコではない。

つまり五人の奥を見る。下宮の視線を追う一同、背後を振り返ると、そこには確かな足音が。

 

 

「―――」

 

 

まどかは言葉を失い、目を見開く。

他の四人も何を言って良いか分からず絶句していた。

固まる五人、その後ろで下宮は複雑そうにしながらメガネを整える。

申し訳なさはある。だが反対されると分かりきっていた。

だからこそ多少強引な手を使うしか無かったんだ。少し言葉を重く、早口にそう言った。

 

 

「僕は、勝つからには絶対の勝利の目指したかった」

 

 

その定義は誰かが決める事じゃないのかもしれない。

けれども、どうしても成し遂げたい想いがあったんだ。

真司がソレを望んだように、下宮にも望んだ想いがあった。

 

 

「すまない、本当に……、申し訳ないと思う」

 

 

そしてその上でどうか願いたい。

どうか、頼みたい。

 

 

「仁美……、ちゃん?」

 

「まどかさん――ッ!」

 

 

まどかの視線の先には、信じられないと言う表情でコチラを見ている中沢と仁美が確かに立っていた。下宮は一人でココに来たのではない。彼は既に自身の事を、このフールズゲームの事を志筑仁美と中沢昴に伝えていたのだ。

 

そして三人でココに来た。

中沢と仁美は隠れており、全ての真実を確かめていた。

そうだ。仁美は、中沢は、龍騎や変身した魔法少女たち。

何よりも異形と変わっていた下宮をしっかりと見ていたのだ。

だから下宮はまどか達の背後で、確かにその言葉を告げる。

 

 

「頼む。香川英行との接触を、僕達三人で行かせてほしい」

 

「ッ!!」

 

 

誰もが言葉を失い、信じられないと言う表情のままだった。

そしてそれは仁美と中沢でさえも。

だがその中で、確かに下宮鮫一ただ一人だけが、しっかりと未来を視ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、それは多くの人間が外で入り混じりる時間であろう。

人は今日も今日とて、決められた役割を果たしに交通手段が集う場所へと向っていく。

もしくは学校と言う子供が集まる場所に向っていくのだ。

そうやって次々と人が出入りする駅の上には二つの小さな影が。

 

 

『命のアルゴリズムはよく分からないね』

 

『ハッ、虫けら共が。今日も今日とてご苦労様だぜ』

 

 

なんちって。

ジュゥべえはニヤリと口を吊り上げて笑い声を上げる。

隣には無表情のキュゥべえ、二匹の対比は相変わらずである。

 

 

『魔獣の真似事かい?』

 

『似てたろ、へへへ』

 

 

だがまあそう思う所も中にはあると。

高い場所で見てみれば、行きかう人々はまさに虫だ。

毎日毎日決められた場所で仕事を行う、それはまさしく働きアリでは無いか。

彼らはきっと、自分達もまた繰り返してきたのだとは知らないだろう。

ゲームで言うのならばNPC、フィクションで言うなればモブキャラだ。

そして彼らと真司達の違いなど、ほとんど存在していない。

 

 

『そんな連中が26人死のうが、何も変わらない』

 

『確かに。それはボクも思っていた事だ』

 

 

しかし現に城戸真司は、その26人を守ると言う想いの下に覚醒を果たした。

それはつまりそれだけの価値があると見出したからだろう?

インキュベーターには一生理解できそうにも無い。

 

しかし、それ故に、今の状況が齎された。

理解できない力は脅威以外の何物でもない。

それは自分達にとっても、魔獣にとっても。

 

 

『見届けようじゃないか。城戸真司や鹿目まどかが示した答えがどうなるのかを』

 

 

刹那的に燃え上がっただけなのか。それとも激しく燃える烈火なのかを。

もしも真司が言ったように参加者全員が生き残り、かつ魔獣を全て倒す事ができたのならば、人の評価を改める必要がある。

そしてそれはきっと、世界その物にも言える事だろう。

 

 

『人類は試されているのさ。生き残る価値があるのかどうか』

 

『そう、まさに世界の審判って所か』

 

『最後のゲームがその答えをボク達に、他ならぬ人間達に示してくれるだろう』

 

 

これはゲームと言う名の試練だ。

人が平和を手にする為には絶対にクリアしなければならない。

そして上辺だけの協力では攻略は不可能。それはもうインキュベーターにも分かりかねる次元の話。

 

昇華する世界。

しかし昇華したのは世界だけなのか。

それとも意思や人間もまた次なるステージへ上ったのか――?

それは、視ていれば分かる話だ。

 

 

『人は、歴史の上にしか歴史を作る事ができない』

 

『開拓する者が必要だな』

 

『そう。誰かが先駆者にならなければ、新たなる道は切り開かれない』

 

『だったらその先駆者が城戸真司と鹿目まどかになるのか』

 

 

そこで足音。

 

 

「不可能だよ」

 

『!』

 

 

振り返る二人の前には、ポケットに手を入れている一人の少年が立っていた。

その表情は憂い。紅い目と緑の髪の毛はクセがあり、そこそこ長い。

特に前髪。目が隠れたり見えたりと、風が彼の表情を大きく変えていく。

 

 

『お前……、誰だっけ?』

 

 

ジュゥべえがそう言うのも無理は無い。

彼はホールにはいなかった。ずっと自室に閉じこもってゲームを観察していたのだから。

そう、彼もまたバッドエンドギアの一員である。

 

 

『久しぶり、だね。アシナガ』

 

「そう、久しぶりだ」

 

 

風の感触。

呼吸をする度に冷たい空気が肺を支配する。

人が雑談する声、目を閉じれば自分だけが世界に取り残された様な孤独感が自分を包み込む。

彼らには忘れられない思い出や、大切にしたい人や物があるのだろう。

しかしその裏に存在していたフールズゲーム。

矛盾とも言える世界形態、想像するだけで心が震えてくる。

 

 

「苛立ちなのか、哀れみなのか」

 

 

アシナガは語る。

魔獣に頼みこみ、今日までの制限人数を自分に割いてもらった。

そして改めて人と言う存在をつくづくと感じてきた。

どれだけの時間が経ったのか。にも関わらず、何も変わってはいないように見える。

 

 

『当然だろ、時間が繋がってんのはお前ら一部のヤツだけなんだから』

 

「それもまた、哀れみに変わる」

 

 

人類は既に時間と言う概念に取り残され、哀れで愚かな存在へとなってしまった。

風化してしまった思い出は思い出のままに終わらせるのが一番では無いだろうか。

 

 

「城戸真司は勘違いをしてしまった」

 

 

先駆者になり、歴史を作るには歴史を残せるだけの世界と言う土台が必要では無いか。

確固たる未来とその環境がなければ後世と言う存在は確率できない。

終わった世界で歴史は紡げないんだから。

歴史と言う文字を刻むノートは既に最終ページに到達している。次のページは無い、次の文字は刻めはしない。

 

 

「あぁ……目を閉じるだけで魂が、体が震える――ッ!」

 

 

今も尚、この地球ではこの一秒一秒で生まれた命と終わる命があるのだろう。

そのサイクルが今となっては無駄な物に思えて仕方ない。

そしてその無駄を尊ぶ概念が可哀想で仕方ない。

 

 

「怒りさえ覚える。歪なサイクルは不要物しか生み出さないのに」

 

『………』

 

 

また変なのが来たなぁ。

ジュゥべえはそう思いながら呆れた様に目を閉じていた。

何言ってんだよコイツ、全然意味分からないわ。ため息一つ。

すると口を開くキュゥべえ。

 

 

『つまりキミは何が言いたいんだい?』

 

『お、先輩流石だね』

 

『随分たいそうな言い回しだけど、中身が伝わってこないよ』

 

 

その言葉にアシナガは鼻を鳴らした。

 

 

「簡単だよ。城戸真司の選択は間違っている」

 

 

分かるだろ、この騒音に耳を傾ければ。アシナガは両手を広げて世界を示す。

 

 

「人に、人間に生きる価値は無い」

 

『あらあら』

 

「城戸真司は人に生きる価値があると言う大前提の下に希望を示した」

 

 

そこがそもそもの間違いなんだ、アシナガはかみ締める様に何度も呟く。

ヤレヤレと首を振るジュゥべえ。そもそも彼は"アレ"だったな、だからこそ抱く考え方と言う物なのだろうか。

 

 

『お前、誰に賭けてた?』

 

「東條くんだ」

 

 

彼ならば至れると思っていた。それは今も変わらない。彼は英雄になりたいと渇望していた。

喉から手が出る程にその称号を求めていた。

彼は気づくべきだ、英雄とはそれに見合う行為を行ったものに与えられる物だと言う事を。

 

 

「人が不要な物だと気づけば。人を削除する事が必要な事だと、求められている事だと理解できれば、彼はきっと――」

 

『………』

 

 

人の価値か。

それは誰もが一度くらい考えた事がある話なのでは無いだろうか。

かと言ってその答え、一体何人の人間が見つけられたというのか?

答えは一握り程ではないのだろうか?

そしてその答えもまた、唯一にして絶対とは言えない。

誰がその価値を決めると言うのか、是非聞いてみたいものだ。

 

 

『まさに、神のみぞ知ると言う事かな』

 

「宗教や歴史の話をしているつもりは無い」

 

 

しかし、強いて言うのであれば。

神と言う物が本当にいたのならば、ソレはいつだって世界を観測してきたはずだ。

干渉を直接したのかは定かではないし、知る由も無い所。

しかし神が世の中に与え続けたものくらいは、この今を見れば分かるというもの。

 

 

「それは進化だよ」

 

 

生命は常にネクストステージへの移動を強いられてきた。

服を着ていない、言語を理解していない猿が、何故人へとなり得たのか。

その意味が分かるかい? アシナガの目はインキュベーターと言う生命を捉えた。

 

 

『決まってるだろ、オイラ達インキュベーターが人間と言う生き物を確立させてやったから――』

 

「違うよ」

 

『?』

 

 

猿人が長き時を経て服を手に入れ、言葉を手に入れ、文化を手に入れた。その理由は簡単だ。

神の力だのと妄言ではなく、戦争が齎した等と戦いの肯定を容認する事でもない。

ましてやインキュベーター等と言う存在は何の関係も無いと言える。裏を見ればの話。

全ての答えは一つ。

 

 

「それは、人だったからさ」

 

『なに?』

 

「正確には猿、とでも言えば良いかな?」

 

 

アシナガは駅に集う人間を目に映す。

彼らの遠い始祖は猿、だからこそ彼らには進化が齎された。

 

 

「全て、もう始めに決まっているんだよ。猿と言う種族は進化を与えられる生き物だった」

 

 

それが全ての答えでは無いか。

何故この現代に恐竜がいない? それは彼らが滅びに行き着く種族だったからである。

全てははじめから決まっている運命、猿は猿、恐竜は恐竜。種の運命は未来の結末へ導かれる決定的な要素。

インキュベーターが始めに声をかけた者も、それは種として彼らに目をつけられる条件を兼ね揃えていたからじゃないか。

 

 

「そう、人の歴史はまもなく終わろうとしている。彼らは十分に歴史を紡いだよ。そろそろステージから降りるべきだ」

 

 

彼らの進化はココまでだ。

一つの種が紡ぐ歴史にはやがて終わりがやってくる。

恐竜と言う種が滅んだように、時代の中心となっていた生命には皆等しく滅びがやってきた。

それが今、人の番になっただけの話。次の時代が始まれば、次の生命が中心を担い、世界から進化を与えられる。

 

 

「それが、魔獣と言う訳だよ」

 

 

滅ぶのは人になり、魔獣がこれからの時代を頂く。

人が進化したのは、人が支配者として適任だったからだ。

その座にもう人は相応しくない。ならば譲らなければならない、次の適任者に。

 

 

「まもなく魔獣は動き出す。参加者を消し、この世界を完全に支配する為に」

 

『どこを狙う?』

 

「まずはゲームに不必要なバグを取り除くだろうね」

 

 

始めの亀裂を入れるにはそこが相応しい。

アシナガは人を睨み、舌打ちを一つ行うとジュゥべえ達から離れていった。

ゲームはまだ始まってはいない、しかし全てを知っている者達からしてみれば、戦いはもう始まっているのだから。

キュゥべえ達も彼を見送ると、一瞬だけ下に群がる人々を目に映して、姿を消していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 






スマブラにしずえさんか……。
なつかしい名前だ。私をケモナーの道に引きずり込もうとしたとんでもないキャラクターの名前だ。

そう言えば私の友人はキュゥべえの中の人が大好きだったから、キュゥべえによからぬ感情を抱きつつあった。

分かるかい魔獣。


( ^ω^ ) こ れ が 人 間 や ! (闇)
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