仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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ビヨンドライバーのモノマネにはまってます(´・ω・)


第93話 あの子の為に

 

 

「うッ、ぐッッ!」

 

 

ライアは勢い余ってレールの上に倒れこんだ。しかし雄一(まじゅう)に弁髪部分を掴まれ、強制的に引き起こされる。雄一は口では笑みを浮かべ、思い切りライアを殴りつける。もちろん人間ではなく魔獣としての一撃だ。

それだけ衝撃も強く、ライアはジェットコースターのレール上から落下し、遥か下の地面に激突する。

 

すぐに背中に衝撃が走った。

巨大な輪がライアの背中に直撃し、高速回転。ギロチンのように装甲を削っていく。

ライアはサバイブになろうという発想がなかった。なぜならばずっと耳に入ってくるエリーゼが、その思考を歪ませる。

洗脳攻撃とでも言えばいいのか。雄一との思い出が次々にフラッシュバックしていく。

脳内破壊音波とでも言えばいいのか。だがそれでもライアが理性を保っていたのは、果てない怒りがあったからだ。

 

 

「ォォオオ!」

 

 

ライアは叫び、拳を雄一の顔面に撃ちつける。

 

 

「手塚。弱いな。無意識に手加減をしている」

 

 

雄一は背中に張り付いていた輪をつかみ、思い切り振るった。

ライアの装甲から火花が上がり、彼はまたよろけて後退して行く。

雄一は指を鳴らした。すると瘴気があふれて、従者型の魔獣が構築されていく。

三体ほどの従者が一勢にレーザーを撃った。ライアはそれをバイザーで防いだが、それが隙を生み出してしまう。

雄一は思い切り輪を投げ飛ばした。それはたっぷりと瘴気を撒き散らしてライアへ直撃する。

 

 

「ぐあぁああ!」

 

 

ライアは大きく吹き飛び、遊園地のアトラクションの一つ。『鏡の館』の天井を打ち破って中に入っていく。

文字通り、そこは無数の鏡が張り巡らされた場所だった。ライアは大量に映る自分を見つめ、拳を握り締める。

あの斉藤雄一は魔獣であり、しかし雄一でもある。激しい不快感が身を包み、ライアは近くの自分(かがみ)を殴り砕いた。

頭が冷える。サバイブを抜き取ろうと思い、ライアは手を止めた。

 

 

「……!」

 

 

止まっていると、鏡が割れる音が聞こえる。

輪が飛んできた。鏡を破壊しながら飛んでくる凶器を、なんとか上に跳んで回避する。

ライアは天井を打ち破って外に出たが、そこで輪が分裂。無数のチャクラムとなって追尾してくる。

アドベントを使わなければ。しかし体が重い。手が動かない。ライアは次々と襲い掛かるチャクラムに切り刻まれ、落下していく。

一方で雄一は鏡の破片を踏み潰しながら、笑みを浮かべていた。

 

 

「安心してくれよ手塚。殺しはしないさ」

 

 

輪は一つに戻り、雄一の背中部分に浮遊する。

 

 

「お前を倒して、人質にする」

 

 

焔が手塚に執着していることは魔獣も知っていた。

だからこそ斉藤雄一を魔獣に作り変えたのだ。全ては手塚を捕らえ、焔を脅迫するために。

きっと焔は手塚を選ぶだろう。そして自らの中にある力を、ゼノバイターへと渡すのだ。

あとはそれを使ってフールをさらに強化すれば、魔獣の戦力は何倍にも膨れ上がるだろう。

 

 

「馬鹿な女だよな。愛だの言ってるけど、そんなものは存在しないのに。結局は自分が少しでも良い思いをしたいという自分勝手な妄想だ」

 

「――、雄一は、愛を否定したりはしない。あいつはその複雑な思いを演奏に乗せていた」

 

「ハハハ。昔の話だ。魔獣になって世界が広がった。お前もいつまでも過去に縛られるなよ。俺はここにいるんだ。それは疑いようのない事実だろ」

 

 

ライアは走った。

思い切り右腕を前に出し、雄一に殴りかかる。

しかし雄一は片手でそれを受け止めた。そしてライアの足を払うと、地面に倒し、そして蹴り飛ばす。

地面を転がっていくライアは、すぐに立ち上がり、再び飛び掛っていく。

だが雄一へ蹴りが届く前に、旋回する輪がライアを打ち弾いた。

墜落するライアと、戻ってきた輪をつかむ雄一。

 

 

「なんなら」

 

 

雄一は輪を投げる。ライアは盾でそれを防いだ。

跳ね返った輪を雄一は掴み、再び投擲する。ライアはまた盾で防いだ。

跳ね返ってきた輪を雄一は再び投擲する。衝撃でライアの防御が崩れた。

雄一は反動で戻ってきた輪を掴み、思い切り投げ返す。

 

 

「お前も魔獣になるか?」

 

 

ライアの体に輪が直撃した。

大きく吹き飛び、ライアは地面を滑る。

ふと、ライアが地面に沈んでいった。穴が開いていたようだ。中は祭壇だった。

煌びやかな空間、遥か遠くに暁美焔の首が鎮座している。

ここは一体? ライアが立ち上がると、心配そうに駆け寄るほむらが見えた。

 

 

「暁美――ッ、お前は?」

 

「ほむらよ。えっと……」

 

 

トークベントを使ったつもりなのだが、こうなったと言う。

この世界は焔の心の中でもある。だからこそ、演出が強化されたのかもしれない。

ほむらは戸惑いがちにライアを見た。何かを言おうとして――、口を閉じる。

 

 

「こっちの方が、今はいいわね」

 

 

ほむらはウルズコロナリアを使用した。

赤いメガネを身に着けると、ホムラに変わる。

 

 

「大丈夫ですか? 手塚さん」

 

「ああ。ダメージは受けたが――、まだ戦える」

 

「そうじゃ、ありません」

 

 

ライアは固まる。

なるほど確かに。考えてみれば『大丈夫』を言うためにわざわざホムラに変わったわけではあるまい。

その言葉は肉体的なダメージを心配しての言葉ではない。心の傷を聞いているのだ。

 

 

「わ、わたっ、私ッ! あの……、もちろん全部覚えいて」

 

 

焔が用意した仮想世界での出来事も記憶にはある。

それはとても素晴らしい日々だった。だからこそ、それが崩れたとき、思い出しても泣きたくなる。

いや、それだけじゃない。杏子に叱責されて、改めて鹿目まどかの大きさを理解した。

死んでほしくなかった。生きていてほしかった。だって彼女は――、はじめての『親友』だ。

家族ならともかく、他人が損得勘定を無しで一緒にいてくれる存在。

 

 

「鹿目さんが死んだ時も――ッ、佐倉さんが死んだ時だって! 私は、本当に辛かった……!」

 

 

ホムラはギュッと胸を掴んで俯く。確かに、ポロポロと涙が零れていた。

手塚が気遣って声をかけようと――。しかしそれよりも早く、ホムラは涙をぬぐって、メガネを拭いた。

 

 

「世界中の人間が皆、同じじゃないって、ゲームで分かりました。でもそれでもッ、同じところはきっとある筈でしょ?」

 

「ッ、それは、どういう……」

 

「私に鹿目さんや佐倉さんがいてくれたみたいに、手塚さんには斉藤さんがいた」

 

「!」

 

「あ、あ、あなたはいつも私に優しくしてくれます。パートナーだから? 私が女だから? 私が年下だから? えっと、罪悪感が消えるからだったっけ? ううん。ごめんなさい。理由なんてどうでもいいんです。大切なのは――、あの、だから……ッ!」

 

 

ホムラは、両手をライアの肩に置いた。

 

 

「たまには、私に心を見せてっ!」

 

「!!」

 

 

ライアは大きな衝撃を感じ、動けなかった。何も言えなかった。

 

 

「あ、あなッ、貴方だって人間でしょ!? だったら――、だったらどうして平気な様子で友達と戦えるんですか!?」

 

「それは……」

 

 

焔を通して、世界を通して、ホムラには今までの情報が頭に入ってきた。

斉藤雄一は魔獣になった。テセウスの船。雄一ではないが、雄一でもある。肩をつかむ手に力が入る。

ホムラは怒っていた。いい加減にしてほしかった。馬鹿にしないでほしかった。

そりゃ手塚は少しお兄さんかもしれないが、ホムラだってそこまで馬鹿じゃない。そこまでマヌケじゃない。

そもそも、同じ参加者だ。ナメないでほしかった。

 

 

「パートナーでしょ!? 私達は!」

 

 

張り裂けそうな程、痛いに決まってる。

頭掻き毟って逃げ出したくなるに決まっているじゃないか。

心が強い? 馬鹿にしないで欲しかった。手塚だって同じくせに。

 

 

「もっと頼ってよ! もっと弱さを晒してよ!!」

 

「……ッッ」

 

「私だけ醜い心を晒して、貴方だけカッコつけたままなんてズルいですよッ! あの時もそう! 私達、殺しあった時くらいしか分かり合えないなんてッ、ありえないでしょ!?」

 

 

ライアは変身を解除した。

女子中学生に説教されるのは少し情けないものがあるが、実に痛いところを突かれてしまった。

確かに、その通りだ。手塚は新しいループの世界を――、あの仮想世界を思い出していた。

ほむらは杏子と楽しそうにしていた。あれと同じような事をまどかともしていたのだろう。

 

間近に見てみて、まどかの執着心の理由が少しは理解できるというもの。

ましてやホムラの言う通りだ。ユウリの変身魔法も同じだが、『違う』と分かっているのに――……。

全く、人間は本当に愚かな生き物である。

 

 

「サバイブを――、使えなかったんだ」

 

 

妨害はされたが、制限されたわけではない。

自分の意思で、手塚はサバイブになれなかった。

初めてサバイブのカードが生まれたとき、手塚は魔獣への怒りをそこに乗せた。

魔獣を殺すためのカード。それを、使うことができなかった。

焔との会話でも言っていたじゃないか。どれだけループを重ねても、変わらない想いがある。

因果律、因果――、それは友情だ。雄一は友達だった。

 

 

「辛いな……。友達と戦うのは」

 

 

ホムラは目を見開いた。凄まじいショックだった。

手塚の目から、涙が零れていた。

 

 

「雄一を殴りたくないんだ。雄一を憎みたくないんだ」

 

「はい……。分かります」

 

「痛いんだ。雄一から攻撃されると」

 

「分かります――ッ!」

 

「だから」

 

 

手塚は俯き、弱弱しく、それは小さく呟いた。

 

 

「雄一とは――……、戦いたくないなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

地面から、ホムラが飛び出してきた。

雄一は少し驚いたようにしていたが、すぐに笑みを浮かべる。

 

 

「なんだったか。えぇっと……、トリックベントか」

 

「はい。チェンジザデスティニーによって、私と手塚さんの位置が入れ替わりました」

 

「はぁ。女の子に丸投げして逃げるなんて。酷いヤツだ」

 

「違う」

 

「違わないさ。焔じゃないホムラなら、最悪殺しても構わないだろう。手塚はお前を裏切ったんだ。俺は強いぞ。お前じゃ勝てない」

 

「黙ってください。もう何も喋らなくていいです。貴方は、私が倒す」

 

「それは無理だ。少なくとも、お前には」

 

 

雄一が示したのはホムラの足だ。ブルブルと震えていた。

 

 

「逃げてもいいぞ。お前には興味が無い」

 

 

それを聞いた時、ホムラの目つきが変わった。

 

 

「それは……、それだけは、できません。」

 

「え?」

 

「私は! 貴方を倒すとッ! て、手塚さんに約束したんです!! 彼は……、こんなにも弱い私に生きていていいとッ、幸せになってもいいと言ってくれました!」

 

 

ホムラ・アライブは杖をギュッとを握り締め、ボロボロと涙をこぼす。そして悔しげに言葉を搾り出した。

 

 

「そんな素晴らしい人をッッ、どぉうして私が裏切る事ができましょうか!?」

 

 

友達の命を理不尽に奪われて、人格まで変えられて、どうして、どうしてどうして!

ホムラは納得がいかなかった。どうしても納得がいかなかった。そこにさらに理不尽を強いる魔獣が、どうしても許せなかった。

 

 

「私は絶対に貴方を倒す! 私は! 手塚さんのパートナーですッ! 彼を泣かせた貴方をッ、私は絶対に許しませんッッ!!」

 

 

ホムラは杖先にある盾を雄一に向けた。すると笑い声が返ってくる。

 

 

「ハハハ! 愚かなヤツ! 優しさ、同情、全部俺が捨てたモノだ」

 

「ならそれが間違いであったと、貴方は思い知るでしょう」

 

 

ホムラの前方に、11個の魔法陣が広がった。

同じくして雄一は背後に浮遊していた輪を掴むと、地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わわわ!」

 

 

突如前にいたほむらが手塚に変わって、杏子はしりもちをついていた。

 

 

「いってぇ。なんなんだよ!」

 

「………」

 

 

手塚は今あった事を杏子達に話した。雄一のことや、焔のことを。

 

 

「つまりなんだ。焔はあそこにいて」

 

 

杏子は、遠くに見えるデカログス、そこにいるホムリリーの頭部を睨んだ。

 

 

「ホムラは――、あそこか」

 

 

窓から身を乗り出す。遠くの方に観覧車が見えた。

 

 

「大丈夫なのかよ。その魔獣、強いんだろ」

 

「……ああ」

 

「ったく! 仕方ない。アタシはホムラの所に行くよ」

 

 

マミもそれに賛成した。とにかく今は暁美の事を考えると胸が痛む。

二手に別れ、学校を飛び出した手塚たち。するとなにやら空にシャボン玉が昇っているのが見えた。

ピンと来た手塚たち、すぐにそこへ向かうと須藤とボルキャンサーがいた。

 

 

「手塚くん! 良かった!」

 

「須藤さん!」

 

「壁が壊れたみたいで。合流できましたね」

 

 

二人は大まかに情報を交換する。

まどか達もデカログスのほうに向かったらしい。

 

 

「ですが――、手塚くんの話を聞くに、暁美さんの答えが重要みたいですね」

 

「それは、そうだな。暁美が焔をどうするのかは、いずれにせよ決着をつけるべき事だと思う」

 

「とにかく私達も行きま――」

 

 

そこでボルキャンサーが須藤を押しのけて前に出た。そこへ薔薇が飛んできて突き刺さっていく。

固い装甲で弾いたからダメージは無いが、どうやら『泡』を見つけたのは仲間だけでは無かったようだ。

 

 

「グガカカカガカカ! 見つけたぞ! 参加者共!!」

 

 

女帝はトラバサミのような歯をガチガチと鳴らしながら歩いてきた。

 

 

「随分、趣味の悪い姿になった」

 

「貴様らの負を吸収したのだ! また、すぐに変わる! 新たな絶望を私は求めているのだ!」

 

 

女帝は両腕を広げ、天を仰ぐ。

 

 

「この世界もまたッ、実に心地いい! 負が蠢き、深呼吸をするたびに絶望が肺を満たす! まだ死臭が染み付いているぞ手塚海之。それに、運命(いろつき)に会ったな。どうだ? 親友と殺しあった気分は!」

 

 

手塚は何も言わない。お喋りなのは悪くない。

手塚は須藤とアイコンタクト。頷きあい、デッキを取り出した。

今の内に変身すれば――

 

 

「………」「………」「………」

 

 

コン、と、音がした。

無音になる。女帝は下を見た。石ころがあった。

手塚と須藤の間を抜けて、石が飛んできたのだ。それが女帝に当たったのである。

そもそも合流した時点で、三人だった。

 

 

「なんッなんだよ! マジで!!」

 

 

中沢昴は本心で叫んだ。

そもそも、誰にも言えずにいたが中沢は大きなショックを受けていた。

仮想ループにおいて中沢はあっさりと焔の精神操作に脳をやられてしまった。

ひっそりと焔のファンクラブを作り、ラブレターを書き、そして撃沈した。

あれだけ好きだと思っていた仁美の事はあっさりと忘れた。何度もデカログスにあっさりと殺された。

 

 

「クソクソクソクソクソォオッ!」

 

 

完全なる舞台装置だ。

 

 

「全然ッ、上手くいかない! 何もかも!」

 

 

もう自分で自分が分からなくなった。

中沢とは誰だ? 何だ? もう何も分からない。何もかもか嘘に思える。

だから一つだけ、真実を作らなければならない。中沢はそれを、いつか魔獣に向かって投げた言葉にしようと思った。

今もきっと女帝は自分のことなんて見ていないんだろうから。

 

 

「かかってこいよクソ魔獣! 俺がお前らを全員倒してやる! 魔獣キラー中沢昴が! 今の俺だ!!」

 

 

中沢はアビスのデッキを取り出し、叫ぶ。

手塚と須藤は一瞬ポカンとしていたが、何か大きな感情を覚えた。

悪くないと、思う。中沢のように激しく燃える青いエネルギーは、自分達には無いものだ。

手塚は前のめりに進む。三人はバラバラに並んでいたが、同じ方向を睨んでいた。

 

 

「中沢。ヤツを倒そう」

 

「微力ながら、私も協力します」

 

「お、お願いします! 手塚さんッ、須藤さん!」

 

 

声が重なる。

 

 

「「「変身!」」」

 

 

鏡像が舞う。ライア、アビス、シザース。三人の騎士を見て、女帝は吼えた。

 

 

「殺してやる! 今ッ、ここで!」

 

 

アビスが前に出た。

 

 

「言ってろよ。死ぬのはテメェだ! 行きましょう。海洋物トリオの力を見せてやりましょう!」

 

 

悪くない。サメ、エイ、カニは走り出し、薔薇を目指した。

 

 

「ウォオオオオオオオオ!!」

 

 

吼える女帝。掌から大量の茨が伸び、無数の鞭が地面を叩く。

バチュンと音がした。次はそれを騎士に向けて伸ばす。アビスはそれを見て減速した。

ミスパイダー戦はよくも悪くも勢いがあった。初めて変身できた興奮で痛みも恐れも感じなかったが、今は違う。

殺意がたっぷりと乗った攻撃を見て、恐れる。死ぬかもしれない。殺されるかも。

だからつい、弱気な足がブレーキをかけた。

 

 

「!」

 

 

だがそれを追い抜いていくライアとシザースの背中を見て、なにくそと前に出た。

それぞれバイザーを振るう。ライアの盾にあるブレードで、シザースのガントレットにあるハサミで。アビスのガントレットの歯で、それぞれ鞭を切り裂き、前に出る。

一番乗りはシザースだった。バイザーを振るい、刃で女帝の胴に一撃を食らわせ、そのまま切り抜ける。

 

女帝はすぐにシザースを追うように後ろを向いたが、すぐに間違いだと気づいた。

その時には既にライアのバイザーの刃が肩を切り裂いていた。

唸り、女帝は踏みとどまる。今度こそとライアを睨む。が。

 

 

「だから俺もいるって言ってるだろ!」

 

 

背後、腰部分に衝撃。

振り向くとアビスの拳がそこにはあった。

女帝は目障りだと吼え、拳に薔薇型のポンポンを装備する。強化された拳での一撃、スピードも速いが――

 

 

「うッ!」

 

 

少し情けない声が漏れたが、アビスは後ろへ下がってそれを回避した。

女帝はまだ諦めない。前に出て次は拳を上から下へ振り下ろす。

薔薇のハンマーは一撃でアビスの仮面を叩き割り、頭蓋骨を粉砕するだろう

だが当たらなければ意味はない。アビスはしっかりと女帝の攻撃を回避していた。

 

 

「………」

 

 

亜里紗にボコボコにされた過去が過ぎる。なんだかカッと体が熱くなって、アビスは大きく首を振った。

とにかく回避だけじゃ駄目だ。攻撃をしないと。

 

 

「!」

 

 

本能とでも言えばいいのか。

女帝が叫び、拳を真上に掲げたところでアビスは回避するべきだと悟った。なので次は思い切り後ろへ飛ぶ。

同じくして女帝が地面を殴った。すると彼女の周りに大量の薔薇が咲きほこり、檻となる。

もしもアビスが後ろに飛ばなければ、大量の薔薇に打ち上げられていただろう。

ライアとシザースは既にストライクベントを発動していた。

アビスもすぐにソードベントを発動して、アビスセイバーを両手に構える。

 

 

「下宮ッ!」

 

 

アビスの背後、アビソドンが地面から飛び出してきた。フォルムチェンジを行い、ノコギリザメの形態になる。

アビスは右手に持った剣を左下から右上へ。左手に持った剣を右上から左下へ振るった。

二本の青い斬撃が発射され、さらにアビソドンは刃を左から右へ振るった。三本の斬撃が交わりあい、茨の檻を粉砕していく。

ライアもまたバイザーを思い切り振るって、三日月状の斬撃を発射した。

薔薇が切り裂かれていく。シザースも強引に腕を伸ばして、ハサミで中にいた女帝を挟み掴んだ。

 

 

「ウガァアアア!!」

 

 

投げ飛ばされた女帝は地面を転がり、悔しげに地面を殴りつける。

そこで煙のように体から負が湧き出てきた。どうやら本気を出してきたようだ。両腕を地面につけて四速歩行のようになる女帝。

思い切り地面を蹴ると、まさに獣のように地面を突き進み、一瞬でシザースの眼前に迫る。

三人は抵抗しようにも、瘴気を解放した際に生まれた従者型のレーザーに気を取られてしまっていた。

 

 

「がッッ!」

 

 

シザースの胴体にめり込む足。

凄まじい勢いで蹴り飛ばされ、女帝はすぐに移動を開始する。

ライアは危険を感じてスイングベントを発動するが、伸ばした鞭は簡単に掴まれてしまった。

それだけじゃない。女帝は鞭を引いてライアを引き寄せると、ラリアットで引き倒した。

 

 

「シね」

 

 

ヒールでライアの頭部を踏み潰す。

バリガリと音が聞こえ、ライアの頭部は粉々になった。が、しかし、それは文字通り砕け散ったからだ。

 

 

「くッ!」

 

 

トリックベント、スケイプジョーカーによってライアは離れたところに具現する。

ならば追えばいい。女帝はヒールに刺さったジョーカーのカードを引き抜き、投げ捨てると、再び腰を低くした。

しかしすぐに元に戻ると、裏拳で後ろを叩く。

そこにはアビスがいた。背後から攻撃を仕掛けようとしていたらしい。

 

 

「うがぁあ!」

 

 

顔面を押さえながらアビスは地面を擦った。すぐに立ち上がると、女帝が大口を開いてコチラを見ているのが分かる。

 

 

「マジか……!」

 

 

女帝の口から瘴気を圧縮したエネルギー弾が発射される。

逃げろ。ライアが叫んだが、アビスは足がすくんで動けない。

走馬灯が流れる。あぁ、思い出されるや。エリザに殴られた日。

エリザに撃たれた日。エリザに蹴られた日。エリザに殺されかけた日。エリザにナチュラルに人格を否定された日。エリザにしばかれた日。

 

 

「せ、先生の方が怖いッッ!」

 

 

足が動いた。アビスは体を捻って飛んできた弾丸を回避する。

それだけではない。地面を転がりながらも、デッキに手をかけてカードを抜いていた。スムーズな流れで、それをバイザーに噛ませて発動させる。

 

 

『ストライクベント』

 

 

アビスラッシャーの頭部を模した、アビスクローが腕に装備される。

すると再び地面からシュモクモードになったアビソドンが現れる。無数の弾丸で女帝の動きを鈍らせ、アビスはその隙に腰を落としてエネルギーをチャージする。

 

 

「ウラアアアアアアア!!」

 

 

思い切り腕を突き出すと、アビスクローから激しい水流が発射された。

激流突破。しかしそこでアビスは声をあげる。女帝はトラバサミのような口を開くと、ゴクゴクと水を飲み干しながら強引に前に出てくる。

 

 

「む、むちゃくちゃな!」

 

 

女帝は一気にスピードを上げた。怯んでいるアビスの首を掴むと、そのまま走り、近くにあった建物の壁に押し当てる。

衝撃が走る。骨がきしむ。アビスは両腕で女帝の右腕を引き剥がそうとするが、ビクともしない。

 

 

「ぁぁあぁああぃ! いぎぃぃ!」

 

 

情けない声が出てきた。というのも女帝が大口でアビスの左肩に噛み付いたのだ。

その力は凄まじく、鎧を貫いて歯が肩に入る。

痛い。血が出てきた。アビスは女帝の頭部を殴るが、勢いはますばかりだ。

まずい。こわい。その恐怖が形になって、女帝の口から肉体へ入っていく。

 

 

「美味い。ウマイ! 良い恐怖、良い負のエネルギーだ!」

 

 

しかしそこで女帝の体が吹き飛ぶ。ライアが呼んだエビルダイバーが突進で女帝を打ったのだ。

解放されたアビスは崩れ落ちると、ブルブルと震え始める。

女帝は既に立ち上がっており、追撃を加えようとするエビルダイバーを回避。

さらに腕を伸ばして尻尾を掴むと、逆に投げ飛ばしてみせる。

 

 

「ハハハハハ! いいぞ中沢! 貴様の負は、美樹さやかよりも美味い!!」

 

「み、美樹さんを襲ったのか……ッ?」

 

「そう。我々が上条恭介を殺し、それを見せ付けてやったのだ!!」

 

「ッッ、上条を!?」

 

「そう。蝉堂様がヤツを! そしてヤツの母親は私が殺した!!」

 

 

上条と中沢が友人関係であることは既に女帝も知っていた。だからこそ、それを使って煽るのだ。

 

 

「お前もヤツのように骨まで解け崩れ、絶望に叫びながら死んでいくのだ!!」

 

 

アビスを心配して駆けつけたライアとシザース。

それは女帝にとっては幸いな事だ。なぜならば三人の騎士が一箇所に集まってくれた。

だからこそ女帝は頭に咲いている大量の薔薇の花を光らせる。口を開くと、凄まじい勢いで花粉が発射された。

 

もちろんただの花粉ではない。

瘴気花粉は相手に触れれば爆発を起こし、肺に入れば強烈な不快感を発生させて動きを封じる。

後者は騎士の仮面がなるべく遮断してくれるものの、前者は別だ。

スパークする火花。激しい衝撃が全身を包み、ライア達は地面に膝をついた。

 

しかし花粉はどんどん勢いを増して女帝の口から出てくる。

もはや視界が毒々しいピンク色で埋め尽くされる。

どうするべきか。ライア達が耐える中で、一人走る騎士がいた。

 

 

(あぁ、もう、何なんだよ)

 

 

アビスは、辛くても苦しくてもひたすらに前に進んだ。

不快感が苛立ちを募らせる。上条は殺されたが、仮想ループに上条はいなかった。

ならば友人ではないのか。駄目だ。訳が分からなくなる。そして上条を殺したことで煽ろうとした魔獣に何よりも苛立ちを感じる。

 

もしかしたら今までのループはそんな感じの積み重ねだったのかもしれない。

共通するものがなくて、フワフワしていて。アビスはまっすぐに進んだ。

それくらいしか自分にできる戦いが見つからなかったからだ。ただがむしゃらに、ど真ん中まっすぐを走った。

そのタックルが女帝に一撃を食らわせたのは、何か意味があると思いたい。

 

 

「グォォ! この花粉の中を――ッ! まさか!!」

 

「ウザったいんだよお前はァ! ちくしょうッッ!!」

 

 

アビスは思い切り、それは思い切り女帝を殴った。

女帝が怯んだところで追撃の飛び回し蹴りをヒットさせる。

そこでアビスは思い切り腕を振った。バイザーから水があふれ、花粉を散らす。

アビスは水を上に放ち、身にかぶる。少し、頭を冷やしたかった。

 

 

(落ち着け、俺)

 

 

今は、今の自分を信じるべきだ。

普通に考えて、友達を、その母親を殺した魔獣がどうにもムカついて仕方ない。

それにあのループの事も女帝達は楽しげに見ていたのだろう。あんな酷い、あんな辛いものを面白いと思う魔獣がどうにも。

これは当たり前の感情だ。それを押し通せばいい。もしも過去の自分がノイズになるなら――!

 

 

「俺は、自分(セカイ)を変えてみせる!」

 

 

バイザーからウォーターカッターが発射され、待機していた従者型の首を跳ね飛ばす。

だが全速力で走る女帝、アビスは拳を握り締めて立ち向かっていく。

 

 

「ォオオオオオオオオオ!」

 

 

お互いの咆哮が交じり合う。

まずは一発ずつ胴体に入った。追撃を行うアビスだが、女帝は両手を払ってアビスのパンチを弾いた。

続けざまに、まずはわき腹に一発食らわせ、アビスの動きを鈍らせた。

 

次は胸。

胴体に連打。肩を掴んで膝蹴り、アッパーで顎を撃ち、キックで押し出した。

掌から茨の鞭を伸ばして連打。アビスの呻き声が聞こえ、女帝はニヤリと笑う。

しかしすぐに表情が歪んだ。ライアとシザースの刃で切られたからだ。

 

 

「オオオオオ!」

 

 

アビスは痛みを抑えるために叫び、すぐに走った。

これは八つ当たりだ。だが、だからこそ全力で行く。

女帝は一応女性型だが、だからこそ思い出す。本気で殴れ。鬼教官の教えどおり。

 

 

「ウゥウ゛ァ」

 

 

仰向けに倒れる女帝。すぐに大股を広げて立ち上がるが――

 

 

『ファイナルベント』

 

 

エビルダイバーに乗っているライアが見えた。

女帝は両腕をクロスさせてハイドベノンを受け止める。

 

 

「オゴゴゴゴぉォッ!」

 

 

凄まじい衝撃ではあったが、何とか耐え切っ――

 

 

「ハァアアア!!」『ファイナルベント』

 

「グゴアァアア!」

 

 

シザースアタック。丸まり、高速回転で飛んできたシザースが両腕のガードを崩した。

手をバタつかせ、女帝は後のめりで後退していく。そこで女帝は見た。空中に飛び上がるアビスの姿を。

 

 

「ォオオオオオオオ!!」

 

 

頭の薔薇を伸ばし、妨害しようとするが、アビスは既に空中で一回転。

体を思い切り伸ばし、両足が青白く発光する。それは迫る薔薇をかき消しながら飛んでいく。

 

 

「ウラアアアアアア!!」

 

「ウゴガァアアアア!!」

 

 

両足の裏が女帝の胸に入った。

女帝は二回転ほどしながら仰向けに倒れる。

静寂。しかし笑い声が聞こえてきた。ライア、シザース、アビス。

三人のファイナルベントを受けたことを自覚したのか、女帝は笑っていた。

 

 

「耐え切ったぞ! どうだ騎士共! これが負の力を得た魔獣の力なの――」

 

 

そこで、空から猛スピードで何かが降ってきた。

アビスが両足を当てた部分に、アビソドンは大きなノコギリの刃を差し込んだ。

 

 

「ギョエアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

断末魔と共に女帝は爆散する。

アビスダイブはアビスが蹴りを当てたところにアビソドンが追撃を行うファイナルベントだ。

どうやら追撃は耐えられなかったらしい。

 

 

「勝った……、んッ、ですよね?」

 

「ああ。助かった。中沢」

 

「ええ。よくあの花粉の中を抜けましたね」

 

 

変身を解除する三人。中沢恥ずかしそうに笑った。

 

 

「なんていうか、その、逃げたくなくて」

 

 

中沢は大きなため息をついてへたり込んだ。疲れたし、肩が痛い。

気分が重い。ふとポケットに入っている携帯を取り出してみる。起動させると、ホーム画面が映った。

写真だ。ループを抜け出したからか、仮想世界に入る前の写真になっている。

それはいつの日か、なぎさが撮ろうと言ったものだった。なぎさと、下宮、中沢、仁美が映っている。

 

 

「えッ!?」

 

「どうしました?」

 

「い、いえ!」

 

 

びっくりした。いや、あまりにも可愛すぎて、綺麗すぎてつい声が出た。

仮想世界じゃ、ほむらに恋をしていた気がしたが、それは夢だった。

中沢のハートに雷が落ちた。いや、もう、本当に、びっくり。志筑仁美が、可愛すぎて、もう、本当、最高。

 

 

「仁美さん……!」

 

 

本音を言えば、まだ若干ほむらを引きずっていたような気がしたが、浄化されていく。

完全に、仁美派です。中沢は携帯を見つめながらニマニマとしていた。

一方で手塚は遠くに見えるデカログスを見ていた。

 

 

「逃げたくないか。そうだな。それはあるな」

 

「え?」

 

 

中沢は何気なく口にしたつもりだったが、手塚には刺さったようだ。

 

 

「パートナーに厄介ごとを押し付けてきた。だから俺も……」

 

 

手塚はコインを落とす。

 

 

「これ以上は、パートナーから逃げる訳にはいかないな」

 

 

手塚が、消えた。

 

 

「あれ!? て、手塚さんっ!?」

 

 

中沢は立ち上がり周囲を探すが、気配がない。

近くにいた須藤も少し驚いたが、この世界での出来事と、先程の手塚の様子から異常事態ではないと察した。

 

 

「彼には彼のやる事ができたんでしょう」

 

 

パートナーから逃げない。

 

 

「なるほど。中沢くん。私も少しいいですか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

手塚はイチリンソウの花畑に立っていた。

 

 

「嬉しい。会いたいなんて。情熱的なんだから」

 

 

一つだけ、椅子があった。

そこに焔は座り、手塚に笑みを向ける。しかし目が据わっている。隈も酷い。

確かに――、会いたいとは願った。しかし残念ながら、それは焔が望む意味ではない。

 

 

「暁美に雄一を押し付けてきた。どうやら俺は、思っている以上に心が弱いらしい」

 

「うんうん、仕方ないわね。分かるわ。でも大丈夫、私なら分かってあげられる」

 

「かもしれない。だが俺は、お前を分かってやれない」

 

「え?」

 

 

風が吹いた。いくつかのイチリンソウが千切れ、舞う。

 

 

「……綺麗ごとは要らないのかもしれないな」

 

 

鏡像が現れた。変身と口にしたのだから、ライアが立っているのは当然の事だった。

 

 

「焔。お前の理想には、もう付き合ってられない」

 

 

パチンと、焔は手を叩いた。

そうか。手塚は怒っているのか。まあ、無理もない。

勝手に仮想世界に幽閉されて、記憶を弄られて、死と再生を繰り返したのならば頭にくるのは当然だ。

しかしそれは誤解なのである。苦痛はあったかもしれないが、手塚は大切なことに気づいてくれた筈だ。

 

 

「それだけ本気なのよ!」

 

 

分かるとも。親友にした女を、憧れたという女を、惚れた男を閉じ込めて何度も殺すくらいには本気だったのだろう。

しかしそこに対する不信感など、些細なものでしかない。

手塚が重要としていたのは、ホムラの叫びだ。救われたと思う。切に。だからこそ――……!

 

 

「俺は、暁美ほむらを選ぶ」

 

 

手塚は、その時の焔の表情を一生忘れないだろう。

彼女は打ちのめされたようにして、目線を下に落とす。

その内に瞳が潤んだ。赤黒い涙が一筋、頬を伝う。

 

 

「……見たの」

 

「?」

 

「小説でね! 女の人が好きになった男の人の手と足を切っちゃってね。飾るの! あ、なに? 手塚くん引いてる? うん、うん。分かるよ。酷いと思うでしょ。私も思ったもん」

 

 

焔は笑顔を消した。

 

 

「でも、その人の気持ち、今なら分かる」

 

 

だって、愛してるから。離したくないから。心が向いていない事を自覚したくないから。

今だって心は張り裂けそうに痛い。これだけの痛みを感じたんだ。少しは向こうも痛くなってもらわないとフェアじゃない。

 

 

「うん! 手塚くん! そうしよう!」

 

 

その笑顔は――、『悪魔』のようだった。妖艶で、悲しげで。

そしてその服装も変わっていく。黒を基調とした露出の高い、バレリーナのような格好だ。そしてその背中には、大きな翼があった。

 

 

「ゴメンね。でも、愛してるから!!」

 

 

悪魔ほむらは翼を広げ、両腕を広げ、手塚を包み込む準備を整えた。

 

 

 

 

 

一方、杏子とマミは、遊園地を目指していた。

 

 

「なあ、マミ」

 

「なに?」

 

「その――、悪かったな。腐っちまって、アンタを裏切った」

 

「え? なんの話?」

 

「あぁ、そうか。アンタもう、アタシの知っているマミじゃねーのか」

 

 

そこでピンと来た。LIAR・HEARTSの事を言っているのだろう。

よく思い出してみると、分かるような、分からないような。

いずれにせよ、どんな時間軸でも同じような理由で分かれた。

 

 

「結構、同じ事をね、繰り返してるのよ私達って」

 

「はッ、馬鹿だな。救えない」

 

 

そこで杏子はまどかが言っていた事を思い出す。嫌われている、と。

 

 

「なあマミ。未来のアタシって、どんな感じなんだ」

 

「最低って聞いてるわ。私は死んだからよく覚えてないけど」

 

「はぁー」

 

 

杏子は呆れたように大きなため息をつく。

 

 

「輪廻転生というか、永劫回帰っていうか」

 

「ん? 何の話だ?」

 

 

繰り返されるゲームをどう捉えるか。そういう話である。

違うルートはあれど、結局同じような事を繰り返す。いくら仕組まれた部分もあるとは言え、自らの愚かさが招いた結果でもある。

 

 

「アタシはまだここしかないからな。ピンとこない」

 

「まあ、それもいいわね。自分の愚かさを知ることはかなり恥ずかしい事だもの」

 

 

杏子は振り返り、デカログスを見る。あれもまた繰り返した結果か。

 

 

「暁美のヤツの中じゃ鹿目がそんなにデカいのか」

 

「そうね。私達じゃ結局代わりにはならなかったみたいね」

 

「………」

 

「妬いてるの?」

 

「うっせ」

 

 

嫉妬じゃない。分かるところがある。

杏子だって、結局いつも家族に縛られてる。

 

 

「面倒なもんさ。もっとスパッと割り切れたなら、アンタとも上手くいった」

 

「割り切れないから人間なんだと思いたいわ。それに貴女が今、そう考えてくれる事は嬉しいわ。いつかきっと、とても大きな光になる」

 

 

無言の杏子。

 

 

「だから、少なくとも今は気にしてないわ。安心して佐倉さん」

 

「本当かよ」

 

「………」

 

 

無言のマミ。そこで表情が変わる。

張り付く恐怖。心音、耳鳴り。それは杏子も感じたようで、周囲を警戒する。

すると何かが光った。銃口だ。マミと杏子はそれぞれ左右に飛んで、瘴気のレーザービームを回避した。

ショッピングモール屋上。ゼノバイターがブレードトンファーを構えて立っていた。

 

 

「はーッ、めんどくせッ!」

 

 

ゼノバイターは気だるげに首を回して唸り声を上げる。

焔のところ行きたいはいいが、この世界の神である焔を捕まえることは、このままではゼノバイターにはできない。

ならば、交渉材料を用意する。手塚とおまけがあれば完璧だ。

 

 

「だが本命は手塚である以上、一人はいらねぇ」

 

 

厄介なのはどちらか。

決まっている。今はマミだ。

 

 

「いい加減ムカついてんだ。一人減らすぜ」

 

「………」

 

 

マミは杏子にお願いを一つ。ここは任せて、先に行ってくれ。

 

 

「でもッ、いいのかよ」

 

「貴女は優しいから、ある時は美樹さんを選んだわ」

 

「は?」

 

「またある時は、私を選んでくれた」

 

 

マミは杏子の背中を押す。

 

 

「次は、暁美さんを選んでね」

 

 

思うところはあるが、それが今、一番マミが望んでいる事だと分かった。

杏子はマミのため、なによりもほむらの為に頷き、全力で前に進んだ。

一方でマミはリボンを伸ばし、屋上手すりに巻きつけ、一気に移動する。

 

 

「巴マミぃ。面白いよな、運命ってのは。因果ってのはァ!」

 

 

肩をまわし、ゼノバイターは一度しゃがみこむ。

 

 

「やっぱテメェが先に死ぬ」

 

「冗談言わないで。死ぬつもりはないわ」

 

「そりゃ、おめ。無理ってもんだ。俺様の実力は魔獣の中でもトップクラス。カスのお前じゃ百万回ループしても勝てねぇよ」

 

「それを聞いて安心したわ。なら貴方に勝てば、他の魔獣にも勝てるのね」

 

「はぁー!」

 

 

歩き出すゼノバイター。

マミは自身の周りに大量のマスケット銃を召喚して、一勢に発射する。

しかし無数の弾丸を身に受けながらも、ゼノバイターの勢いが止まる事はない。

ならばとマミは踏み込んだ。両手に大きな筒状の大砲を装備して、直接殴りにかかる。

 

 

「ティロッ!」

 

 

右腕の砲口を押し当て、ゼロ距離射撃。

 

 

「ドッピエッタ!!」

 

 

次は左腕のフック。砲口が爆発を起こし、ゼノバイターが後ろに下がる。

 

 

「ティロ! フィナーレ!」

 

 

巨大な銃を出現させ、弾丸を発射させる。しかしゼノバイターは呆れたように腕を十字に組んだ。

 

 

「魔皇十死砲!!」

 

 

青黒い閃光が発射され、マミの弾丸を簡単にかき消した。

悲鳴が聞こえる。レーザーはマミに直撃。手すりを破壊して、彼女を地面に叩きつける。

ゼノバイターは笑いながら屋上から飛び降りる。駐車場ではマミが地面に両膝と両手をつけており、血を流しながら呼吸を荒げていた。

 

 

「いつも一番最初に死んだから印象うっすいわ、お前。コメントもありゃしねぇ。さっさとくたばれ。俺様はな、急いでんだよ」

 

「……貴方に分かる? あの子、とっても可愛い顔で眠るのよ」

 

「あ?」

 

 

怒られるだろうから言っていないが、マミは眠っているほむらの顔をよく見ていた。

安心したように寝息を立てる彼女を見て、嬉しいと思う反面で、自己嫌悪もあった。

だって、眠っている事を確認しないと、眠れない。本当はまだほむらの心の中には黒いものがあるかもしれない。

 

もちろんそんな馬鹿な事はないと、ありえないとマミは思っている。

それでも、The・ANSWERにたどり着くまでに積み重ねた無限とも言える死が、べっとりと背中に張り付くのだ。

ご飯を作ってあげるのも、何かを混ぜられたくないから? 違う。違うとも。だからほむらが作ってくれたコーヒーを全部飲み干す。

美味しいねって笑顔でいう。紅茶のほうがいいなんていったら、撃たれるかも。馬鹿ね。そんな事ないわ。

コーヒーだって別に好き。どっちでもいいの。暁美さんだってたまには違うの、飲みたいかもしれないし。

 

 

「そう。でも――、たまに、フラッシュバックするみたいに、暁美さんが怖くなる」

 

「ハハハハ! そう、そうだ! それが人間だ! お前らクソ愚かな雑魚どもは! 割り切れない! いつまでも負を背負い続ける! 傑作だぜこりゃあよぉ。その馬鹿な心がゲームを続けッ、今の状況をも生み出したって事よ!!」

 

「でもあの子が笑ってくれると、本当に心が温かくなって、嬉しくなる」

 

「そう思わなければ壊れるからじゃねぇのかい? お前そりぁよォっ、本当の感情じゃあねぇッッ!!」

 

「本当よ! 間違いなくッッ! だって! じゃないと――ッッ!!」

 

 

マミは立ち上がり、ゼノバイターをまっすぐ睨んだ。

 

 

「じゃないと! 涙なんて流れない!」

 

 

マミは涙を流し、ゼノバイターを睨んだ。

仮想世界は悪いことばかりじゃなかった。あれが焔の、ほむらの望む世界ならば、彼女はマミの事を好きになろうとしている。

大切なものがマミでもいいと思っているからあんな夢を見せたんじゃないのか。

 

マミは今、戦っている。

今までの殺しあう自分を少しずつ消していく。

苦しいが――、それでも一緒に住むほむらが笑ってくれたとき、何よりも嬉しくなる。

でも今まではどうだ? ディスパイダーによって精神を揺さぶられ迷惑をかけた後は、テラバイターによって苦しめられるほむらを救えなかった。

そして今、焔に夢を見せられて、それだけなんて。

それも、嫌だ。

 

 

「私はあの子を、あの子達を助ける。だって私は先輩魔法少女であり、みんなの仲間なんだから! 友達なんだから!!」

 

「あぁーん? さっきから何言ってんだオメェはよゥ?」

 

「まだ分からないの? だったら分かりやすく言ってあげるわ!」

 

 

マミはマスケット銃を出現させると、銃口をゼノバイターにしっかりと合わせた。

 

 

「何の為に生き残ったと思ってるの? この私がッ、かつてのゲーム達を否定するためよ! だから暁美さんのために、まずッ! 私が貴方を倒す!」

 

「ハハハハ! だから! それはムゥリっつうハァ! ナァ! シィ!」

 

 

しかしそこでエンジン音が聞こえた。

立体駐車場の壁を打ち破り、ライドシューターが飛び出してくる。

 

 

「本当にそうでしょうか?」

 

「!」

 

 

粒子となって消滅するライドシューター。中から現れたのは、シザースだった。

 

 

「須藤さん! どうして!」

 

「ジュゥべえが場所を教えてくれました。ゼノバイターには電車での借りがあります。それに――」

 

 

パートナーから逃げない。

須藤もまた、戦うものの一人だ。ふとした時に黒い感情が湧きあがり、抑える。

それは当然のことだ。そう思っている。憎むのも、疑うのも、それは心ある人間の証拠だ。大切なのは、それを抑えること。

抑えようとする理由が存在している事だ。

 

 

「正義の姿を目指す。貴女と戦えば、少しは理想の自分になれる」

 

「……ええ、そう。そうね須藤さん。私達はパートナーですもの」

 

 

前方にはマミ。背後にはシザース。

しかしゼノバイターは相変わらず笑っていた。確かに、パートナーが近くにいれば性能が上がるシステムは存在している。

だがそれがどうしたというのか。

 

 

「犠牲者が二人になっただけだ。上等だぜ参加者ども。俺様が、今ココで、地獄に送ってやるよォ。クカカカカカ!!」

 

 

一応、会話の途中ではあったが、ゼノバイターが目を光らせると、赤いレーザーが発射されて一瞬でマミに届く。

掌に魔力を集中させ、簡易的な結界で対処したはいいが、痛みはある。

マミが表情を曇らせると、ゼノバイターは瞬時に後ろへ走っていた。

構えるシザース。ゼノバイターは銃弾を連射しながら接近。瞬時に地面を蹴り、大きく跳躍した。

 

 

「あらよぉっと!」

 

 

シザースの肩を蹴り、さらに大ジャンプ。

デパート入り口にある雨避けの上に着地すると、弾丸を乱射する。

死ねの連呼。マミとシザースは並んで駐車しているある車の奥へ飛び込み、身を隠した。次々と弾丸が命中して、爆発していく車の間を走る二人。

 

マミはそこでリボンを伸ばした。

レガーレヴァスタアリア。黄色いリボンが車を縛り上げ、五台ほどゼノバイターへ投げ飛ばしてみせる。

しかしゼノバイターは淡々と指を鳴らした。すると肉体から瘴気が噴射され五体の従者型が出現する。

 

モザイクから発射されるレーザーは、車を簡単に貫き、爆発させると、そのまま駐車していた無数の車にも届く。

次々と起きる爆発。しかしその時、ゼノバイターは舌打ちを零す。

目障りな音声が聞こえてきた。同時に銃声。並んでいた五体の従者型の頭部が同時に吹き飛ばされる。

爆炎がかき消された。姿を見せたのは、それぞれアライブとサバイブ状態になったシザースペアであった。

 

 

「ティロ」

 

 

右腕をまっすぐ伸ばすと、左右から何かが飛んできて合体。マミの腕が筒に覆われた形になる。

よく見るとそれは砲台だ。ゼノバイターは呆れたように地面を蹴ろうとして――、できなかった。

凄まじい抵抗感。足を見ると、青と黄色の糸が地面から伸びて、足を縛っているではないか。

 

 

「あぁ、クソったれ」

 

 

ティロフィナーレ。先程と同じ技だが、パワーのレベルが違っている。

飛んできた弾丸は一瞬でゼノバイターに直撃すると、後方に吹き飛ばしてデパートの中へブチ込んだ。

 

 

「ガァァ! クソ!」

 

 

インフォメーションを破壊して、メインホールまで滑る。

煙を手で払いながら立ち上がると、丁度シザースが双剣を構えて走ってくるのが見えた。

 

 

「ハァアア!」「ゥおおっと!」

 

 

払いをバックステップで交わすと、ゼノバイターは思い切り頭を振るった。

回転式のヘッドバンキング。頭についていた触角が伸び、鞭となってシザースの足を払った。

しかし直撃したはいいがシザースが倒れる気配はない。防御力も上がり、踏みとどまる力も当然強化される。

 

 

「ウゼェな!」

 

 

ならばとゼノバイターも足に力を込める。

シザースバイザーツバイ、右の一撃を肩で受け止めた。切断はされない。怯んでいるシザースの足を、ゼノバイターは自分の足で払う。

今度は成功だ。倒れたシザースの胴体を思い切り蹴り飛ばしてやった。青黒い衝撃波が発生し、シザースは周りのインショップを破壊しながら転がっていく。

 

だがゼノバイターが追撃を行おうと足を出した時、思わず踏みとどまる。

気づけば周囲、どこを見回しても無数のマスケット銃が浮遊しているではないか。

 

 

「くッ!」

 

 

どこもかしこも弾丸の雨。

デパートのメインホールは吹き抜けになっており、三階部分にマミが座って紅茶を飲んでいるのが見えた。

魔法の紅茶で精神と魔力を安定させつつ、ゼノバイターを蜂の巣にしようというのだ。

 

 

「ウォウッラアアア!!」

 

 

その時、ゼノバイターの雄たけびが聞こえた。

トンファーブレードを合体させてブーメランに変えたのだ。高速で回転するそれは銃弾を切り裂きながらマミを狙う。

ならばと青と黄色の糸が張り巡らされた。が、しかし、たとえアライブの魔力であったとしても瘴気をたっぷりと纏った刃は、それを切り裂いて突き進む。

 

やむをえまい。

やはり優雅のままには終わらないようだ。マミは椅子から立ち上がるとスカートの端を掴んで走り出した。

ブーメランはガラスを粉砕し、先程までマミが座っていた椅子を真っ二つにする。

もちろんそれで止まらない。マミの動きを感知して、ブーメランは執拗に空を飛び回る。

 

 

「ナメないで!」

 

 

リボンが円形に結ばれると、中央が鏡に変わる。

アイギスの鏡。相手の飛び道具を反射する技だが、マミが選んだのは別の方法だった。

ブーメランが鏡に触れた瞬間、意識を集中させる。するとブーメランが鏡の中に沈み、そのまま消え去った。

 

 

「なるほど! ミラーワールドの中に送られたか! こりゃ一本取られた!」

 

 

階下のホールではゼノバイターがエネルギーを棒状にした武器でシザースと切りあっていた。どうやら自分の武器が消えたことが分かったらしい。

しかし余裕は崩れない。当然だ。なぜなら武器は瘴気で作ったもの。無限にとはいかないが、材料があればまた作れる。

 

 

「こんな感じでよ!」

 

 

棒状の武器がトンファーブレードに変わった。

シザースの刃を受け止めると、まずは目から出すレーザーで怯ませ、二度ほど装甲を切る。

シザースが反撃に刃を出す前に胴を蹴り、少し後ろに下げると、トンファーにある引き金を引いて瘴気の弾丸を連射する。

 

だがシザースもここは意地で前に出た。

一発は受け、一発は切り裂き、距離を詰めていく。

マミもパートナーをサポートする為に、再びゼノバイターの周りに銃を出現させた。

だがゼノバイターは触覚を振り回して近くにあったマスケット中を弾き、銃口の位置をズラすと、自らは地面を蹴って高速回転を始めた。

 

 

「旋空瘴気斬!!」

 

 

青黒い嵐が巻き起こる。

凄まじい風が、シザースの足裏を地面から引き剥がした。

視界が二転三転する。気づけば地面に叩きつけられ、ゼノバイターは風に乗ってマミがいる階に着地した。

 

 

「ほむらちゃんの為に戦うゥ? いやいや感動感動。俺様、まいっちまったよ本当に」

 

 

マミは後ろへ、ゼノバイターは前に走る。

マミが指定した場所に出現するいくつものマスケット銃。しかしゼノバイターは一瞬で全ての場所を把握した。

まず持っていたダークオーブでギーゼラを呼び出した。魔女は既にバイク形態。

 

ゼノバイターはシートに飛び乗りながら、目からレーザーを発射して前方を塞ぐマスケットを全て破壊する。

次は左右。触覚を伸ばして右側のマスケットを全て掴み取ると、一気に引き戻してみせた。

そこで銃弾が発射される。ゼノバイターが掴んでいた方の銃から発射された弾丸が、左側から発射された弾丸にぶつかっていき、相殺していく。

 

ゼノバイターはさらに後方へ従者型を召喚してレーザーを発射されていた。

もちろん従者型の攻撃ではマスケット銃の弾丸には勝てないが、それでも勢いを殺して盾にするくらいにはなった。

そうしていると一気にトップスピード。マミは目を見開く。

ゼノバイターがもうすぐそこまで。

 

 

「ティロ! フィナーレ!」

 

 

技名を聞いて、ゼノバイターはギーゼラから飛び降りた。

それだけではなく、魔女を蹴る。

飛んでいくギーゼラは、弾丸に直撃。大爆発を起こす。しかしそれはフェイク。爆発を切り裂いて、ゼノバイターの腕が伸び、マミの頭を掴んだ。

 

 

「だがお前らに生まれたのは所詮、俺達魔獣への対抗意識、言い換えてみれば殺意だ」

 

 

ゼノバイターはマミの頭部を思い切り地面にたたきつけた。

そしてまずは一発顔面を殴り、次は腰につけていたトンファーを抜いて刃で一気に首を切断しようと試みる。

が、しかし抵抗感。刃は入ったが、血を流すだけで肉にせき止められる。

 

なるほど。

やはり肉体的にも強化されているようだ。

ゼノバイターは足裏でマミの腹部を押さえると、首の切断を諦め、銃口にエネルギーをチャージしていく。

 

 

「殺意を前にしていては、殺意から生まれたとも言える俺様たちには絶対に勝てない」

 

 

再びゼノバイターの周りに凄まじい数のマスケット中が生まれるが、ゼノバイターは構うことなく銃弾を全身に受けた。

ダメージはある。あるが、マミはここで終わりだ。

 

 

「なんつって」

 

 

ゼノバイターはマミを思い切り蹴り飛ばすと、銃口をマミのソウルジェムではなく、背後へ向けた。

そして発射。青黒いレーザーが空間を切り裂きながら飛んでいき、ランチャー砲を構えていたボルランページと、その隣にいたシザースを撃つ。

 

 

「バレてんだよ。カスが」

 

 

ゼノバイターはトンファーブレードを連結。再びブーメランモードに変える。

いや、ただのブーメランではない。構え、何かを引く動作を行うと、弦が現れた。

アローモード。腕を引くごとに瘴気が集中し、弓矢の形になる。

狙うのはマミだ。彼女も気づいたのか、再び青と黄色のリボンを張り巡らせるが――

 

 

「無駄だっつてんだろうが! おい頼むぜェ!?」

 

 

ゼノバイターが指を離すと、瘴気の矢が飛んでいく。それらはリボンを貫いていき、マミに届く。

 

 

「確かに! 根底にあるのは殺意かもしれない!」

 

「お?」

 

 

リボンでマミの姿が隠れていたため、魔法を発動した事に気づかなかった。

ユニオン、ガードベント。Rシールド。リボンで少し勢いが弱まっていたというのもあってか、矢は強固な盾にしっかりと止められた。

 

 

「でもッ、それでも! 私達はそれを貴方達の様には使わないのよ! だからこの力がッ、アライブが! サバイブがある!!」

 

 

盾が、矢を吸収した。

盾上部には穴が開いているが、それが銃口だとゼノバイターが気づいたのは、吸収した矢が発射された時だった。

ただの反射じゃない。スピードが上がっている。おそらく威力も。

 

 

「くだらねぇ。くだらなねぇなァ!」

 

 

ゼノバイターは飛んできた矢を、体を少し横にそらして回避した。

 

 

「どんなご立派な理由並べようが、ンなモン所詮な、よわっちぃテメェを守るための言い訳だろうが!」

 

 

まだ、心の奥でほむらに怯えているマミが愚かに見えて仕方ない。

だからこそ、そんな彼女には負ける気がしない。

 

 

「だがいつか!」

 

「なにッ!」

 

 

後ろから声がした。シザースが同じ盾で矢を受け止めていた。

 

 

「仮面も素顔に変わる!!」

 

 

矢が反射した。さらに上昇するスピード。

一瞬で、それは、ゼノバイターに直撃して爆発を巻き起こす。

 

 

「ごがぁああ!」

 

 

ゼノバイターはマミを通り抜けて吹き飛んでいく。

そこでマミとシザースは目を合わせ、大きく頷いた。

 

 

「ありがとう須藤さん! 上出来ッ!」

 

 

マミはリボンを伸ばし、シザースはそれを掴んだ。

マミはリボンを引き戻し、一気にシザースはマミのもとへ。

さらにシザースは走る。ゼノバイターが着地を決めたと同時に、二刀流の刃を振り下ろした。

 

 

「自分があやふやになるからこそ!」

 

「ぐっ!」

 

「今ッ、お前に一撃を与えるたびッッ!」

 

「ガァアア!」

 

「理想が見えてくる!!」

 

「グォオオ!!」

 

 

激しい乱舞がゼノバイターの防御を抜け、装甲を傷つける。

しかし見切られた。足を銃で撃たれ、動きが鈍ったところでフックが入る。

フラつくシザース。しかし状況とは裏腹にゼノバイターの悲鳴が響く。

マミが駆けつけ、まずはスライディング。避けたと思ったらリボンに縛られ、マミの髪がドリルになってゼノバイターの全身を抉る。

 

 

「ウォオオオオオオオ!!」

 

 

ゼノバイターは全力を込めて、体を縛るリボンを引きちぎった。

さらに体から瘴気が吹きでて、爆発を起こす。

マミは青黒い炎に包まれ、地面を転がったが、騎士の防御力と気力で耐え切ったシザースが強引に前に出る。

熱い。中が蒸し焼き状態になっており、須藤は喉が渇くのを感じた。

 

肺が焼ける。

しかし大きく息を吸い込んで前に出た。

この痛みはかつての罪の贖罪と考えよう。なればこそ、止まるわけにはいかなかった。

剣の柄頭でゼノバイターを殴る。しかし踏みとどまったゼノバイターに頭突きを打たれ、顔を殴られた。

痛みと衝撃で右手から剣が離れた。ならばとシザースは右の拳で思い切りゼノバイターを殴りつける。

 

 

「須藤さん!」

 

 

マミがリボンを伸ばし、落ちた剣を手に持たせてくれた。

シザースは一心不乱に両手の剣を突き出した。

連結する音。二つの刃が合体してハサミに変わる。力を込めて挟みこみ、ありったけの力を込める。

 

 

「ぐガァアアアア!!」

 

 

ゼノバイターの装甲がバキンと砕け、瘴気が漏れ出す。

抵抗に赤いレーザーが発射された。しかし幸いにもシザースは防御力が高い。

全身に受けながらも、シザースは前に出た。足を前に出して走る。

 

 

「苦しむ少女がいるのなら――ッッ!」

 

 

ガキンッ! と、音が聞こえた。

ゼノバイターを挟んだまま、刃が大きな柱に突き刺さったのだ。

どこかが焼け爛れているのか。叫ぶたびに痛みが走る。しかし反対に、シザースは声の音量を上げる。

痛み無ければ、大きくなければ、自分には聞こえない。

 

 

「助けるのが刑事の役割というものだ! 魔獣!!」『ファイナルベント』

 

 

カードを抜き、ハサミの中央部に差し込むと電子音。

シザースは左足の裏で思い切りゼノバイターの胴を蹴ると、その衝撃を利用して後方上に飛び上がる。

バク宙で一回転をすると、着地地点にはボルランページが出現していた。

 

トス。

ボルランページがシザースを打ち上げる。

シザースは体を丸めて高速回転。黄色と白色のエネルギーを纏いながら拘束されているゼノバイターに直撃した。

 

柱が粉々になる。

ゼノバイターは強制的に後ろに下がっていき、ボルランページは跳ね返ってきたシザースのところまでジャンプを行うと、大きなハサミで主人を叩き飛ばした。

トスからのアタック。シザースは殴られた勢いで加速し、発光する右足をゼノバイターの頭部に叩き込んだ。

シザースキック。ゼノバイターは悲鳴を上げながら床を転がっていく。どうやらまともに入ったらしい。唸り、口からは吐血するように瘴気を吐き出していた。

 

 

「キュゥべえ! 聞こえる!?」

 

『どうしたんだいマミ』

 

「ルールの事で確認があります!」

 

 

素早くやり取り。

 

 

「分かったわ! ありがとう!」

 

 

マミは銃を抜いて一発弾丸を放つ。

それがシザースを襲おうとしたトンファーブレードを打ち抜き、ゼノバイターの手から弾き飛ばす。

うざってぇ。ゼノバイターは武器を捨てて素手に切り替えた。

シザースも抵抗するが、ゼノバイターも本気に切り替えた。瘴気は決して少なくない量を失った。これ以上は減らせない。

 

 

「やってくれるよな。カス雑魚共の分際でよォ。せめて身の程を弁えてもらいたいもんだねぇい」

 

 

シザースの腕を掴み、投げ飛ばす。

マミの蹴りを受け止め、顔面に足裏を叩き込んだ。

マミが下がっていくと、倒れているシザースの肩を掴んで引き起こす。

飛んで来たシザースの拳を、ゼノバイターは顔を逸らして回避すると、そのままシザースの胴体に拳を何度も打ち込んでいく。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラァアアア!!」

 

 

猛連打。

フィニッシュは回し蹴りだ。

シザースは地面を滑り、ゼノバイターはおまけにレーザーを打ち込んでおいた。

そこで後ろからマミが飛び掛ってきた。リボンを持って首を絞めてくるが、ゼノバイターは一旦そこで思い切り倒れた。

 

背中にいたマミが地面にたたきつけられる。

ゼノバイターは立ち上がり、マミを引き起こすと背負い投げで地面にたたきつける。

まだ終わらない。触覚で彼女の足をしばると、頭を回して壁に直撃させる。

 

 

「俺様は勝ち続ける! 賭け事は勝つからこそ楽しいんだよ!!」

 

 

呼吸が荒い。ゼノバイターとて、余裕は既に失っていた。

だからこそ、地面から生えた砲身に気づかなかったのだ。

 

 

「ウゴオォオォ!」

 

 

上半身が爆発する。

マミは腕を伸ばし、血を流し、据わっている目でゼノバイターを睨んでいた。

プッと折れた歯を吐き出す。それでもニヤリと笑った。

 

 

「じゃあ、ごめんなさい。今日は貴方にとって一番楽しくない日になりそう」

 

 

シザースが、走っていた。

手にはストライクベントで出現させたランページブレイカーが装備されている。

シオマネキ型のモンスターの右腕、大きなランチャー付きのハサミが装備されている。

シザースは動き鈍らせているゼノバイターを思い切り殴った。殴った瞬間にエネルギーを発射した。

ゼノバイターは悲鳴をあげて吹き飛んだ。

 

 

「あぁ、なんか、ええ、違うわ。違うわね」

 

 

マミは大きく首を振って、自分で自分の頬を叩いた。

 

 

「そうよ。ええ、うん、ありがとう須藤さん。貴方の言うとおりよ」

 

「ッ? 私、何か言いましたか?」

 

「ええ。須藤さんの戦う理由を聞いてみて、私も分かったわ」

 

 

魔獣を倒すのももちろん大切だし、生き残ったからこそ何か大きな変化を起こしたいというもの本当だ。

でも一つだけ、もっと根本的な理由を忘れていた。

 

 

「ゼノバイターさん? 貴方の狙ってる暁美さんって、意地悪なのよ。私を閉じ込めて変な記憶を埋め込んで!」

 

 

でも、あれも、『ウソ』ではなかった。今までのループと同じだった。

 

 

「おかげでもっと――、あぁ、もっと好きになっちゃったじゃない! 酷いわね! もう、最悪っ!」

 

 

マミは走る。青と黄色のリボンが右足に巻きついた。

 

 

「あの子の為に、私はアンタをブッ飛ばすわ!!」

 

「!!」

 

「テラバイターの時とは違う! 私は、仲間を守る為に戦う! それが私の望んだ魔法少女のあるべき姿!!」

 

 

強化された蹴りがゼノバイターに迫る。

胴体に打ち込んだ。しかしゼノバイターは踏みとどまる。

ゼノバイターはイライラしていた。こうなればせめてものダメージだ。爪で、目を抉ってやる。

が、しかし腕を伸ばす前に聞こえたユニオンの音声。マミの右手にランページブレイカーが装備されていた。

 

 

「あぁ、クソ」

 

 

マミのストレートがゼノバイターに叩き込まれた。

ランチャー発射。爆発が起き、ゼノバイターは吹き飛んでいく。

 

 

「須藤さん!」

 

 

作戦会議。そしてゼノバイターが立ち上がったとき――

 

 

『ユニオン』『ファイナルベント』

 

 

巨大な大砲がマミの隣にあった。

 

 

「好きだァ? くっだらねぇぜ。今日1で下らないしムカつくぜ」

 

 

トンファーブレードを両手に構え、ゼノバイターは全身から瘴気を噴き出しながら立つ。

 

 

「テメェは、テメェらは今も、この瞬間も感じている筈だ。戦う事で湧き出る憎しみ、恐怖、絶望ッ、殺意!! それが一時の好意で埋められるモンかよ! なァ? おイ」

 

 

人間は戦いに理由を求める。だからこそ未知なるカードが生まれ、魔獣がココまで手を煩わされた。

それがどうにも気に入らない。納得できない理由で死ぬなんざゴメンだった。

逆に、それがもしも理由ならば潰したくてたまらなくなる。

 

 

「マジでムカつくぜ。テメェらの顔を見ているだけでイライラしてくるし不快だ。サルみたいに見分けつかねーくせに言葉だけはイキがりやがって。あぁぁあ、クソクソ! 感謝して欲しいもんだな会話すらムカつくぜ。テメェらでいうならゴキブリと会話してるみてぇなもんだからな。おらどうした。さっさと来い巴のマミちゃん! テメェの希望とやらを俺様がぶっ潰してやるぜ!」

 

「――黙りなさい」

 

 

マミが腕を伸ばす。同時に、大砲からシザースが発射された。

ゼノバイターは、高速回転するシザースへ次々に弾丸を命中させる。

が、しかし勢いは衰えない。仕方ない。刃を向けて受け止めようと試みる。

 

 

「ぐ――ッ! ゴォオオ!」

 

 

腕に凄まじい衝撃を感じた。

が、踏みとどまる。前方には相変わらず回転しているシザースが。

止まれクズが。目からレーザーを発射してみるが無駄だった。光が散って、ゼノバイターはついに地面に倒れる。

 

 

「クソ!」

 

 

すぐに立ち上がる。通り過ぎたシザースの行き先は別の大砲だった。

砲口に入ると、また射撃音と共にシザースが飛び出してくる。次は思い切り足裏を前に出して蹴り止めようとしてみるが、無駄だった。

周りからマスケット銃が現れ、射撃で怯む。すると衝撃。ゼノバイターはシザースに吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

またも、シザースは別の大砲の砲口に入った。そして発射。

だがゼノバイターは学習している。幸い立っているのは始めのホールだった。

受け止めるのはもう止めだ。地面を蹴って二階へ移動する。

 

その時、地面を突き破って大砲が出てきた。

タイミングがいい。砲口がシザースをキャッチして、大砲は砲口を動かしてゼノバイターを狙う。

そして発射。シザースが二階へ発射された。

 

 

「クソが!」

 

 

跳ぶ。向こう側へ移動。

しかし大砲が壁を突き破って出てきた。シザースを砲口へ入れると、すぐに発射してゼノバイターに向けて飛ばす。

 

 

「魔獣は、お前らの遥か先を行く! 魔皇十死砲!!」

 

 

青黒い十字状のレーザーが発射され、シザースに直撃する。

競り合い。シザースは雄たけびを上げるが――、直後、爆発が起きてシザースが一階のホールへ墜落する。

 

 

「ハハ! ハハハ! ハーッハハハ! どうよォ! これが俺様の実力ッつぅもんなんだわ!」

 

 

しかし、すぐに笑みを消した。マミがいない。

するとその時、ゼノバイターの体を走る危機感。本能が危険を察知した。周りを――、いや違う。上を見る。

ビンゴ。天井から大砲が生えていた。砲口が真下に、ゼノバイターに向いていた。

大砲が火を噴いた。弾丸はまだある。シザースが駄目なら――

 

 

「あっせェエなオイィイイイイイイイ! モロバレなんだよォ!」

 

 

ゼノバイターは二つの刃を思い切り突き出した。

マミの整った顔に、二つの刃が深く、深く突き刺さる。

 

 

「あーあ、残念だったな人間ンン! ンーン! 悔しいねェ、おっ死んでコレで、はい! 終わりだな! 巴マ――……」

 

 

やけに、軽い。

そもそもマミを目視して安心したはいいが。何かが、おかしい。

刃に刺さっていたマミの顔が、笑っている。

 

 

「かかったわね!」

 

 

あまりこういう事はしたくないが、顔面に刃が刺さって貫いていても、痛覚遮断があればなんのその。

そもそも顔は本体ではないわけで。

 

マミはキュゥべえに確認していた。

ルールのひとつにパートナー同士で傷つけてはいけないとあったが、『作戦』のために体を『使う』のはありなのか?

答えはオーケー。殺意が伴っていなければ、それは許される。

 

パートナーを傷つけるのではなく、敵を傷つけるための行動。

マミはシザースにお願いして、てっとりばやくチョキンと『首を切ってもらった』のだ。

弾丸に――、囮にする為に。

 

 

『死んでも離さない!!』

 

「うッ、うァ! な、なんだこりゃぁあああ」

 

 

マミの顔が割れ、消え、リボンが出てきた。

太いリボンはゼノバイターの全身に絡みつくと、そこで結ばれ、錠前が出現してロックされた。動けない。ゼノバイターは倒れ、芋虫のように這うしかできない。

一方で天井の大砲から『二発目』が発射された。それは右腕の無いマミの体だ。両足を揃えて、ゼノバイターの上に直撃する。

 

 

『たとえ100回迷っても! 1000回苦しんだとしてもッッ!!』

 

 

口がないので喋れないから、テレパシーで会話をする。

マミの叫びはゼノバイターにも聞こえていたようだ。違うと言ってみるが、マミはお前のほうこそ違うと叫んだ。

もちろん、痛覚を遮断する機能があるとはいえ、自分の頭を『使う』のは抵抗感があるし、怖い。

 

しかしマミはそれでもこの手に打って出た。

繰り返したループはマイナスだけを連れてきたわけじゃない。数々の時間の中で培ってきた経験。怯えながらも必死に魔女に立ち向かっていていた意思。

ベテラン魔法少女、巴マミの意地とプライドが背中にあるのだ。

 

 

『10000回自分を見失ったとしても、だったらって新しい自分を創る! それがこのThe・ANSWERなのよ!』

 

 

地面が割れた。

 

 

『私は戦いの中で巴マミを獲得し、証明するッ!』

 

 

ゼノバイターとマミの体が穴の中に落ちていく。

かつてない程の大きさを持つ大砲が伸びた。デパートを破壊しながら聳え立つ。

 

 

「なんだ! どこだよココァ! せめぇなクソが!!」

 

 

マミの体が割れ、リボンになってさらにゼノバイターを縛り上げる。

本体のソウルジェムと、右手は少し離れたところにいるボルランページが持っていた。シザースもそこに駆け寄っており、大砲を見上げる。

 

 

『覚悟しなさいゼノバイター!!』

 

「待て! クソなんだ! やめろ! おい、ここから出せ!」

 

 

暴れるが、拘束は解けない。当然だ。死ぬ気を込めた。

 

 

『ボンバルッッ!!』

 

「おい! おい待てよ! おいおいおいおいおいおいッッ!!」

 

『ダメントォオオオオ!!』

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!!」

 

 

弾丸が発射され、ゼノバイターはそこに張り付いて天に発射される。それは天空で大爆発を巻き起こした。

 

 

「ヒアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

熱が、色とりどりの業火がゼノバイターを焼き尽くし、灰に変える。

 

 

『……見えてる? 暁美さん。暁美――、焔さん』

 

 

破裂した炎は、花火であった。

それはかつて、仮想世界で一緒に見に行った花火大会。そこで一緒に感動した、一番大きな花火の再現だった。

 

マミはまだ、それを覚えている。

たぶんきっとそれは夢なのですぐに忘れるのだろう。おそらく虚心星原から去れば忘れるのだろう。

でも、忘れないとマミはこの場で誓った。

そういう意味なのだが――、伝わっているだろうか。

 

 

『……でも、あの、本当に元に戻るのよねキュゥべえ。私もう頭も体も無くなっちゃったんですけど』

 

『戻るよ。ソウルジェムさえ無事ならね。今回は特別だ。早く戻るようにしてあるから、ほら、自分をイメージして』

 

 

もちろん少し時間は必要だが、外見も元通りになるようだ。

ソウルジェムと右腕だけのマミは良かったと安心し――

 

 

●――――【【【絶 望 連 鎖】】】――――●

 

 

よく、ない。

 

 

●●●●●【【【狂・気・融・合】】】●●●●●

 

 

空に、ゼノバイターの頭部が浮かんでいた。頭部のみが浮かんでいた。

大きな大きな頭部だ。脳天には上半身だけのゼノバイターが見える。

 

 

「アァァアア゛ッ! ちくしょうがぁああ!」

 

 

瘴気が漏れ出ている。ゼノバイターは怒りを抑えきれないのか、適当に腕を振るったりと暴れている。

 

 

「勘違いすんなよ参加者ァア! 俺は負けた訳じゃないッ! 俺様は瘴気を無駄に使えないだけだ! もっと! 大きなッ、高みへ! アァア゛! クソクソ! 駄目だ! おいどこにいやがるシザースペア! テメェらは殺す!!」

 

 

これは非常にマズイ話であった。マミはもう腕だけだし、ソウルジェムは濁っている。

そしてシザースも慢心相違。サバイブも解除されて、通常状態になっている

しかしどうやらゼノバイターも不調らしい。下半身の大きな頭部が目を光らせたかと思えば、レーザーが発射されるのではなく、上部にあるゼノバイターの右腕が吹き飛んだ。

 

 

「アァ! クソ! クソ! 駄目だ! やはりッ、土台ッッ!」

 

 

ゼノバイターはシザースたちには目もくれず、空を飛行していった。

どうなっているのか? シザースが行く先を目で追うと、どうやらデカログスに向かっているようだ。

 

 

「アイツ、まだ何か狙っているのか……!」

 

『行きましょう須藤さん! 今度は鹿目さんたちを助けるの』

 

「分かりました。ただ、魔力と体を回復してからにしましょう。無理は禁物です」

 

『ええ、そうね。確かにそうだわ』

 

 

それにしても、首だけ。首だけか。マミは複雑そうに連呼していた。

嫌な思い出であるが、まあ仕方ない。

マミは必死に自分の体を取り戻すため、早速イメージを膨らませる。

 

 

 






マミさんのバレンタイン衣装、ずっと見てられる(´・ω・)
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