仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME   作:ホシボシ

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あとがきに龍騎スピンオフの事とか、マギレコのこと書いてます。
スオインオフは出ている情報だけを書いているのですが、マギレコはラストのネタバレもちょろっと書いてます。
まだ見てない人は、見ないでね(´・ω・)


第94話 ふぅん。なるほど。こうなるわけね

イチリンソウの花畑。

隅の方にソファがひとつドッカリと置かれている。そこにガープがドッカリと寝転び、肘枕をして戦いを眺めていた。

 

 

「まさにヴァイオレンスですな。大お嬢様」

 

 

覚えておりますかなお嬢様。

かつて貴女は鹿目まどかをご自分の魔法でお忘れになられた。

しかし、ええ、分かっておりますともこのガープ。因果ありますゆえ、ましてやお嬢様の存在意義、アンデンティティがそう簡単に失われることはありますまい。

世界がそれを許しません。だからこそ彼奴ら、魔獣共が魔女を取り込んだのではないのでしょうか。このガープ、そう考えております。

ましてや、ええ。お嬢様はご自身でも正体不明のご自身と対話されました。

 

その名は『I』。

 

ヤツは自身のことを『欠けてしまったまどかへの想いの結晶』と説明しましたが、あれはもう完全に自我を持っておりましたな。

お嬢様の悪い癖だ。ご自身でご自身の管理ができてない。

だからこそ、あんな『あけみ屋』なんてものまで生まれてしまう。

貴女は覚えておられるだろうか? 魔法少女がバイクで爆走した時間軸もまた本物にございます。

 

 

「して、お分かりください、暁美(お嬢様)。焔(大お嬢様)は最早、貴女に見切りをつけました」

 

 

ご覧ください。あの禍々しくも美しい翼。

鹿目まどかへの愛で生まれたかつての貴女とは違う。もはや歪みきっていれど、それは新しい愛の翼なのです。

同じ時間で足踏みをしていた貴女とはまるで違う。新たなる世界へ羽ばたこうとする破滅の黒翼にございます。

 

 

「受け止めきれますかな。若人よ」

 

 

黒い羽が舞った。

ライアはきりもみ状に吹き飛び、地面に叩き付けれる。

 

 

「手塚! 優しいのね!」

 

 

浮遊していた焔は地面をスライドし、ライアの傍までやって来る。

掌を前にかざすと、闇が収束して、まるで首輪のようにライアに纏わりつく。ほむらが手を上にやると、シンクロするようにライアの体が浮き上がった。

 

 

「どうしてサバイブを使わないの?」

 

「それは――……」

 

「手加減してくれてる? でもそれは悲しい事なの」

 

 

掌を翳す。魔法発動。記憶操作。

ライアの仮想ループでの記憶を強制的に思い出される。デカログスに殺される記憶。おお、痛い、首が、引きちぎられる。

 

 

「―――」

 

 

ライアはたまらず首を押さえた。そこで焔の蹴りを受けて吹き飛ぶ。

イチリンソウがライアを受け止めた。花が潰され、焔は悲しげな表情を浮かべた。

 

 

「私はフェアがいいの。分かってる? 手塚くん。サバイブ使わないとすぐに負けちゃうよ。私はそれでも別にいいけど、フェアじゃないって何か嫌」

 

「使わないさ。あの時は――、そんなもの無かったからな」

 

「え?」

 

「思い出してる。今、必死に、LIAR・HEARTSを」

 

「そうなんだ。じゃあ言ってくれればいいのに」

 

 

焔が指を鳴らすと周囲の景色が変化していく。地面には相変わらずイチリンソウが咲き乱れているが、他は違う。

手塚には覚えがあった。焔と出会った場所だ。ここで彼女はキリカとシザースに襲われていた。

 

 

「それを貴方が助けに来てくれたの。もしも貴女がいなかったら私、バラバラになってたかも。ほら、こんな風に切り裂かれて」

 

 

焔が右の拳を握り締めると、彼女の後ろに一瞬、異形の化け物が現れる。

すると右腕を覆うように闇の爪が装備された。焔がそのまま腕を振るうと、三本の爪から斬撃が発射されてライアを狙う。

ライアは盾でそれを防ぐが、斬撃の大きさを考えると防ぎきれるものではない。

さらに焔はもうライアの前にいた。爪を振るい、次々に装甲を傷つけていく。

 

上から下へ。ライアは盾をそこへ合わせる。

ガキンッと音がして防ぐことはできた。しかしほむらが左腕を横に払うと、そこに爪が装備されてライアの胴体を傷つける。

よろけた所に蹴りが入った。ライアが後退していくのを見て、焔は掌を前にかざす。

すると後方から無数のカラス型の使い魔、リーゼが飛来、次々と嘴をライアへ撃ち当てていく。

 

 

「一緒にカレーも作ったよね」

 

 

景色がほむらの家に変わる。

ライアの背中に壁が当たって、彼は動きを止めた。

穏やかな状況ではない。焔の傍に魔女のような化け物が杖をついている。

その杖にある宝石が光ると、ライアの周りに無数の『かぼちゃ』が配置された。

 

 

「大切な思い出だよ!」

 

「――ッ!」

 

 

かぼちゃが爆発した。凄まじい爆炎がライアを包み込む。

大丈夫。たとえ全身の皮が剥がれ、肉が焼け焦げようとも僅かに呼吸をしていれば、焔はそれで良かった。

しかれども、トリックベントは既に再生成されていたようだ。スケイプジョーカーによって爆炎を逃れたライアは花の上に転がる。

 

 

「覚えてるよ。お前、あの時、チェーンソーでかぼちゃを切ろうとしてたな」

 

「もうっ、恥ずかしいからやめてよ!」

 

 

しかし焔は嬉しそうに笑った。ライアがあの時の事を思い出してくれている証拠だから。

 

 

「じゃあ、お前も覚えてるか? 俺が言ったことを」

 

「ふふん。馬鹿にしないでよ。記憶に関する魔法があるのよ? どんな事だって――」

 

「依存は脱するべきだ。鹿目であれ、俺であれ」

 

「え……?」

 

「全ての魔法少女と友人になるくらいの心持でいろ」

 

「いや、ちょっと待ってよ。それ……、ほむらの方にいった言葉でしょ」

 

「だがお前も覚えてるだろ。まだ完全に分離してない」

 

「心はもう別よ!」

 

「だが根っこでは繋がってる」

 

 

焔は悔しげに歯を食いしばった。

確かに、まだ完全には分離できていない。精神はもうほぼ別だが、『心』はまだ……。

 

 

「焔。一つだけハッキリさせたい」

 

「なに……?」

 

「俺はこの世界に――、虚心星原に留まるつもりはない」

 

 

魔獣を倒し、全員の生存を目指す。

 

 

「城戸に協力する。それが新しい願いなんだ」

 

「――ッッ」

 

 

焔は余裕の無い表情を浮かべながら、何度か頷いた。

 

 

「大お嬢様。お忘れなきよう」

 

 

ガープが口を開く。

 

 

「この虚心星原も無限には構築できません。現在、大お嬢様の悪魔たる力によってデカログスという神を構築しておりますゆえ、あれが破壊されればココは終わりですとも。ええ。さすればお嬢様も選択を迫られる。暁美ほむらに吸収されるか、あるいはまたも逃げて悪魔の力を貯めるのか。後者を選ばれますと、さすがに参加者を連れてはいけないとこのガープは考えて――」

 

「分かってるわよ! 黙ってて!」

 

「ふむ。これは失礼!」

 

 

焔は汗を浮かべながらライアを睨んだ。

 

 

「焔。暁美と一つになる気は無いのか」

 

「当たり前でしょ!」

 

「きっと、暁美は――」

 

「受け入れる? まどかを嫌いな気持ちを。貴方を愛した記憶を受け入れると言うの? はッ、ご立派ね。散々ワガママを言っておいて私の役割が要らなくなったらおしまいだなんて!」

 

 

別人格やイマジナリーフレンドは強い孤独感や心の傷が生み出すといわれている。

焔もそうだった。しかしそれを受け入れるのは『ほむら』にとっては成長だが、『焔』にとっては死刑宣告だ。

 

 

「価値観が違う! あんな――、おぞましい! 苦痛だわ!」

 

 

が、しかし。手塚の言い分も理解できる。

焔もライアが譲るつもりの無い決意を固めている事は分かっていた。

 

 

「何が……、何が間違ってたの?」

 

 

己の欲望の為に巴マミや佐倉杏子らを引きずり込んだ事か?

それなら謝るからと焔は懇願する。しかしライアはもう気づいていた。焔からは喜びが感じられる。彼女は薄ら笑いを浮かべていた。

きっと思っているのだろう。

 

 

『出会わないほうが幸せだった』

 

 

――そんな悲劇は恋愛映画にはつき物だ。

事実、焔は高揚感を覚えていた。このやり取りもまた、愛を高めると思っている。

悪魔の力を解放した時から、考えがより記号的になっていく。不安定な精神はより異形に支配されていく。

『憎愛』こそが焔の本質であり、それが高まり、他の感情を侵食していく。

 

そもそも始めからまともな思考ではなかった。

自分の世界を獲得する為に、手塚にさえ死と再生の記憶を植えつける時点で、その愛は歪んでいたのかもしれない。

どうやら焔はこの短い時間でそれを自覚したようだ。

果てしない自己嫌悪を覚え、表情を歪ませる。他の『まとも』な感情は、きっとほむらの中にあるのだから。

 

 

「でも――、手塚。これだけは分かって」

 

 

諦めた『ほむら』は沢山いる。焔も言ってしまえばその中の一人だ。

剣豪だとか、剛拳だとか、やさぐれだとか、クワガタだとか。焔はなんだ? 例えばヤンデレとか?

まあ、それは別にどうでもいい。問題は『if』が生まれた瞬間だ。

ユウリが変身するまどかに、自分のやってきた事を全て否定されたと思った瞬間、焔は確かに焔だった。

焔になったのだ。

 

 

「暁美ほむらは貴方をパートナーとしては信頼していたようだけど、愛さなかった。でもあの時、あの時間、LIAR・HEARTSで確かにこの暁美焔は貴方を好きになったの!」

 

「………」

 

「貴方はどうなの? それだけは――、もう嘘をつかず、教えて」

 

「確かに俺はあの時、あの時間、嘘をついた」

 

 

仮面で顔は見えないけれど、声色で察する。焔の中に生まれる期待、高揚。

 

 

「俺も――、お前が好きだった」

 

 

あの時間軸の手塚は16歳だった。

子供の分際で偉そうに語る事はできないが――

 

 

「愛してた。青い愛だったが、それは本物だ」

 

 

焔は一瞬パッと笑顔になった。

が――、しかし、すぐに目が据わる。

 

 

「好き、だった……?」

 

「ああ」

 

 

ただのワンループ。秋山蓮の恋人だった女を愛した時と同じだ。

あの時も嘘なんてなかった。

 

 

「俺は小川恵里を愛していた。それもまた真実だ」

 

「――めて」

 

「だがその時間は、もう終わったんだよ」

 

「やめて」

 

「お前も同じだ。申し訳ないが、引きずる程じゃない」

 

「ッッ、手塚ァアア!!」

 

 

焔は怒りに顔を歪ませると、また近くに形容しがたい化け物を生み出した。

するとその手に闇でできた鎖鎌が宿る。焔はそれを投げた。ライアは鎌をかわそうと走るが、鎖は意思を持ったように動き、鳥の形をした鎌は執拗にライアを狙う。

 

 

「なんでなんでなんでなんでぇえッ! どうしてェエエ!!」

 

 

納得がいかなかった。あれだけ大切な思い出なのに、ライアは違うというのか。

納得ができなかった。あれだけ守ってくれたのに。あれだけ助けてくれたのに。

 

だから壊すしかないと思った。殺すしかないと思った。

少なくともライアという外郭を粉々にすれば、きっと彼は本当の心をさらけ出してくれる。

だから焔はライアを切り刻んだ。装甲にはいくつもの傷が生まれ、焔はニヤリと笑う。

鋭利な刃が肩に刺さった。焔は腕を引き、ライアを引き寄せる。

 

 

「おもいだして」

 

 

澄んだ声だった。

ライアは記憶に触れられて焔の笑顔を思い出す。激しい恋慕を思い出した後、ライアは激しい痛みを思い出した。

腕がねじれ、何かが千切れる音が聞こえた。肉が裂け、神経が捻じ切れ、骨が砕ける。

あまりの痛みにライアは声を出すことができない。

 

そうしていると目の奥が痛み出す。まるで杭を打ち込まれたような激痛であった。

息ができない。肺が無い。体の真ん中に穴があいて、臓器がかき出される光景がそこにあった。

痛い。誰か。助けて。ああ、ああ、ああ……。

ライアは死を理解した。ライアは死んだのだ。

 

 

【手塚海之・死亡】【残り――】

 

 

 

 

 

 

 

いや、いや――、違う。

これはあくまでも『過去』だ。現在、焔は痛みに叫ぶライアを優しく抱きしめ、頭を撫でている。

 

 

「手塚くんが悪いんだよ。ちゃんと本音を打ち明けてくれないから……!」

 

 

そこでライアは現実に帰る。両手で焔を突き飛ばし、膝を突いた。

焔には少しの躊躇が見えたが、顔は笑っていた。

もはや戻れないところまできている。焔はマミ達を巻き込んだ仮想ループにおいて、より明確に『自分』を演出している。

 

手塚の呼び方にしたってそうだ。

LIAR・HEARTSの焔は、いわば限りなくオリジナルの暁美ほむらに近い。

しかし今は『くんづけ』であったり、より明確に差別化を図ろうとしている。

申し訳ないが、ライアにはそれが哀れな事に見えた。なぜならばLIAR・HEARTSの『ほむら』を好きになったのに、焔はそこからどんどん離れていこうとする。

 

ついて来て欲しいのか? 残念だが、そこまでの余裕はない。

むろんライアもその複雑な気持ちが分からぬわけではない。ライアは過去を思い出す。恵里を愛した際は、秋山蓮にどうしようもない嫉妬の感情を抱いたこともあったさ。

だがやはりそれは過去でしかなく、全てを思い出した手塚にとっては『過ぎ去った』ものなのだ。

 

だから何のカッコもつけずに言うなれば、手塚は前に進む為に焔をフラなければならない。

彼女の為に城戸真司が目指した理想を崩すわけにはいかなかった。

とはいえ、もちろん過去には愛した人だ。さようならの一言で全てを終わりにはできない。

だからこそライアはもう一度、焔に問いかける。

 

 

「一緒に来ないか?」

 

 

ライアとしてはフォムホームホムフォームを見る限り、ほむらは自分の中にいる別の自分とは上手くいっているようにも思える。

それにまどかを嫌う心だって、ほむらの中にあるまどかを好きな気持ちと交われば、焔としてもまどかを受け入れる事ができるのではないかと思っていた。

が、しかしそれを聞いたガープは呆れたように笑う。

 

 

「若人よ。理想は気持ちいいが、それが気持ち悪いと大お嬢様は感じているのだ。阿呆とも言えるが、やむなし!」

 

 

全てのほむらには根本的に一つ抱えていたものがある。

それが自己嫌悪だ。まどかと初めて会った時、或いは焔が用意した仮想ループにおいての杏子との初対面を見ても分かるとおりだ。

一方で焔は自分だけになろうとしている。個の獲得が進む中で、自己嫌悪は他者(ほむら)を嫌うようにシフト、昇華されていく。

 

 

「まどかも、ほむらも嫌いなのよ私ッ! 手塚くんには分かる? アイツと一緒になるなんて、最悪ッッ!」

 

 

同じになって、手塚や杏子と仲良くなる。

ああ、考えただけでも吐きそうになると、焔は青ざめた。

 

 

「これは酷い略奪にございます。今風に言うなれば――、フム! エヌッ、ティー、アールですかな! ガープは流行に疎いので、ゲームの中にある検索エンジンで調べましたぞ! 分かりやすく言えば若人よ! お前は害虫の体内にお邪魔して、害虫との間に愛を育めるかということよ! おっといけない。考えただけで――ッ! うっぷ! 失礼! 不愉快極まりない! しかしご理解頂きたい若人よ! 大お嬢様には同じような苦痛なのだ! 個である時だけ、貴様は不快な存在にはならぬ。暁美になってしまえば、大お嬢様は嫌悪の中で生きる事となる! それはあまりにも苦痛、拷問と同じかと思いますが……」

 

 

ガープは肩を竦めた。焔がライアを殴り飛ばしたのだ。

ライアはイチリンソウの中を転がっていくが、まだ終わらない。

焔が引き絞った弓からは大量の闇があふれ、まるで八岐大蛇のようにいくつもの闇の矢が縦横無尽にライアへ向かっていく。

 

 

「分かってよ手塚くん……、私はもう本当に駄目。置いてかないで。一人ぼっちになっちゃう。これがいけないの? ほむらに似てるから結局同じになるの?」

 

 

焔はそう言って自分の髪を掴み、引きちぎる。

ブチブチと抜けていく髪。ライアは思わず立ち上がり、やめろと叫んだ。

 

 

「よせ! 何をしてる?」

 

「心配してくれるの? 嬉しい!」

 

 

焔は笑顔を浮かべるが、反対に弓からは矢が発射されてライアに直撃した。

ただの矢じゃない。鎧に刺さったのは小さなカジキに見えた。

 

 

「だったら一緒にいてよ!!」

 

 

焔が叫ぶと、カジキが爆発して、ライアの肩が吹き飛んだ。

凄まじい痛みだ。装甲が粉々になり、手塚の肉体が晒される。さらに爆発の影響で肩の肉が弾け、骨が見えた。

ライアはうめき声をあげて肩を抑えた。

そこへ焔が歩いてくる。

 

 

「こんなにッ、こんなに! 好きなのに!」

 

 

殴り、蹴り、倒れたライアに蹴りを入れる。

 

 

「苦しいのに!!」

 

 

焔は笑い、かとも思えばボロボロと泣きながらライアを転がす。

弁髪部分を掴むと、それを引きちぎり、さらに赤い涙を流した。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

掌をかざすと、手塚の肩が修復される。回復魔法のようだ。

 

 

「LIAR・HEARTSでユウリに騙された時……、私は全てを失ったと思った」

 

 

焔はポツリポツリと改めてあの時を振り返る。

 

 

「あの瞬間、私が生まれて。そして思った。改めて、鹿目まどかなんて……、というよりも他者に依存することは愚かな事だと」

 

 

だって人間は絶対じゃない。

だからこそあの時のほむらは、まどかがユウリである事が分からなかった。

絶対にまどかはそんな事を言わない。その自信が持てなかったのだ。それは彼女がループを通して、いろいろな人間の側面を見てきたから言えることだ。

 

 

「あの時にこの私、焔の中でほむらが死んだ時だった。決別するべきだと思った時よ。鹿目まどかというものに頼ってきた私は、結局脆いままだった」

 

「それで次は、俺か」

 

「違う。依存じゃないよ。だってあの時の私達は魔獣のことなんて知らなかったじゃない。あの子――、あの馬鹿も杏子にも言われたみたいだけどループなんてするべきじゃなかった。だから私は少なくともあの時、LIAR・HEARTSで生きたいと思った」

 

 

全てを捨てて、手塚と一緒に生きてみたかった。

 

 

「確かにあの時、あの瞬間だけみれば、それもまた別の依存だったかもしれないけど……、でも貴方もそうだったでしょ? 覚えてるよ私」

 

「そうだな。雄一を死なせた事の罪を、お前を守ることで消したかった」

 

「それは歪な感情かもしれないけど。それでもお互いを救う事はできた筈でしょ?」

 

 

焔は治療をやめた。そしてまた現れる化け物――、悪魔。

焔の手に剣が現れる。彼女はそれを思い切りライアを足へ突き刺した。

 

 

「ぐアアァアぁッ!!」

 

「貴方は結果として自ら命を絶った。私を置いて、逃げたのよ」

 

 

残された焔は鈴音に切られ、終わり。

分離した力には悪魔の力が宿っており、長いゲームの中、端の端で力を蓄え続け、ついには世界を構築するデカログスを生み出した。

後はLIAR・HEARTSを意識したその世界、虚心星原に皆を引きずり込めばそれで計画は上手くいくはずだった。

なのに、なのに……。悔やまれる。

せめて城戸真司が魔獣に歯向かう前にこの世界を構築できていればと。

 

 

「貴方を愛しているかもしれないと思ったとき、どうしようもなくまどかが嫌いになった。もともと私に暁美達が鹿目まどかに対する不満を送り込んでいたんでしょうけど、もっと根本的に、どうして私がここまで苦しまなくちゃいけないのって……」

 

 

焔は剣を抉る。ライアは叫び、それでも意識を保った。

 

 

「お前――ッ、いつまで同じところを回ってるつもりだ!!」

 

 

確かに、後ろ向きな理由ではあったし、褒められたものじゃないと思う。

 

 

「それでも、俺がお前にウソをついたのは――ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地の階段は苦痛じゃない。

次のアトラクションに続く道だったり、美味しいご飯に続く道だったり。降りるのも、昇るのも楽しいものだ。

しかし暁美ホムラは違っていた。深刻な表情を浮かべて階段を駆け下りる。すぐ後ろでは爆発音や、何かがぶつかり合う音が聞こえてくる。

 

 

「ウオォオオォオオ! てめぇこの野郎! さっさと死にやがれコラァ!」

 

 

やさぐれほむらがマシンガンを。

彼女の頭にちょこんと乗っているぽむらがサブマシンガンを連射している。

しかし笑みを浮かべたまま歩いてくる魔獣・斉藤雄一。運命の輪が前に出ており、輪の空洞部分には瘴気のエネルギーでできたシールドが張られている。

それが銃弾を遮断しているらしい。やさぐれほむらは汗を浮かべて後ろへ下がっていったが、そこで悲鳴。

輪がすぐさま彼女を追尾して、弾き飛ばしたのだ。

 

 

「ぶげぇ!」

 

 

猛スピードで迫る輪に対処できず、やさぐれほむらは胴体に輪を受けた。

頭から落ちたぽむらにも輪はしっかりと追撃を加えている。既にその周りには、ほむ姉や、むら姉、ドスコイほむらが倒れていた。

雄一はポケットに手を突っ込んだまま歩いていく。その周りを飛び回る『輪』。

ホムラは焦っていた。正直、少し油断があったといえばそうだ。

 

 

「え、えいッ!」

 

 

杖を振るうと、時間が停止する。ホムラはその間にハンドガンを抜いて銃弾を連射した。おまけのグレードも投げて、時間を戻せばそれでいいと思っていた。

しかし時間が元に戻ったとき、聞こえてきたのはホムラが苦痛に呻く声と、雄一の笑い声だった。

 

 

「学習しないなぁ、キミは」

 

 

ホムラから赤い血が吐きだされる。

胴体にはしっかりと輪が直撃していた。

 

 

「俺は運命! お前が時間を操作しようとも、俺がお前に攻撃を当てたという運命が残っている以上、現実はそちらの方に傾く」

 

「そ、そんな……!」

 

 

よく分からないが、それが雄一の能力らしい。

つまりホムラとライアの複合ファイナルベントであるファイナルアンサーと同じである。

あれは12本、別々のほむらが矢を撃ったとして、一つでも当たるという時間軸が存在すれば、現実がそこに合わさるというものである。

 

ホムラが時間を止めたとしても時間停止が終わった時――、つまり現実に還るときに雄一の能力がホムラの能力を上書きするというものだ。

もしも時間が止まらなかったらという前提で、ホムラの攻撃が当たるのか、雄一の攻撃が当たるのかが計算される。

そして時間停止を解除した瞬間に、その結果が現実となるのだ。だから輪を回避したと思っても当たっているし、銃弾を当てたと思っても当たっていない。

 

 

「いくら魔法で己をプロデュースしても、所詮それは偽りだ。努力やセンスには勝てない」

 

「ッッ」

 

「キミの事は調べているよ暁美ホムラ。いくら数を増やそうが――」

 

 

雄一はそこで裏拳を繰り出した。

丁度後ろから飛び掛っていた剛拳ほむらを吹き飛ばし。さらに回し蹴りで剣豪ほむらの刀を受け止める。

剣豪ほむらはさらなる斬撃を加えようとしたが、残念だ。そこで輪が飛んできて彼女を弾き飛ばす。

しかし剣豪ほむらはそれをガードしていた。一瞬ニヤリと笑ったが、すぐに笑顔は消える。

 

輪が分裂して、無数の小型チャクラムになったからだ。

大量の輪が剣豪ほむらに纏わりつき、動きが鈍る。そこへ雄一は掌からレーザーを発射。

それは従者型が放つものよりも強力なもの。剣豪ほむらはチャクラムに気を取られたせいでレーザーを回避する事ができなかった。

 

爆発が起こる。

さらにチャクラムが合体。元の輪に戻ると近づいてきたほむらや、クワガタほむらをなぎ払い、さらに飛行。

ドローンステージで浮いていたアイドルほむらを撃墜する。

 

 

「いくら数を増やそうが、弱さは変わらない」

 

「うぅッ!」

 

「だが俺は努力を重ねてきた。ピアノにしてもそうだ。センスに甘えることなく、鍛錬を重ねた」

 

 

ホムラは杖を振るい、ロケットランチャーの弾丸を発射させる。

しかし雄一は近くにきた輪を掴むと、思い切り振るい、弾丸を爆発させる。爆炎の中からは、無傷の雄一が出てきた。

 

 

「しかし人間時代に重ねた努力も、些細なことで壊れた」

 

「でも、それは! 魔獣に仕組まれていた事じゃないですか!」

 

「そうとも。俺だけじゃなく、参加者の多くは――、特にシルヴィス様の演出によって絶望していった」

 

「そこまで分かっているなら! どうして協力を!?」

 

「そこまで分かったからだよ。別に魔獣になったからだとか、そういう事じゃない。上位存在がいると分かっておいて。さらにそこに仲間に加われると分かっておいて、まだ人に縋ろうというのは本当に馬鹿なことだ」

 

 

輪が迫る。ホムラは杖を盾にして身構えた。

しかし輪は猛スピードで空中を飛行、一瞬でホムラが盾を構えていないほうに移動してがら空きになった所を狙う。

怖い。嫌だ。ホムラはギュッと目を瞑った。 

すると体が浮き上がる感覚。というよりも、押される感覚。

目を開くと、ほむらがホムラを突き飛ばして変わりに輪を受けていた。

 

 

「あ!」

 

「うぐッッ!!」

 

 

ほむらは輪を受けながらもグッと踏みとどまる。

さらに高速回転する輪、魔法少女の防御力が切断を防いでくれるが、それでも血が撒き散らされる。

しかしそれでもほむらは立っていた。

 

 

「耳を貸す必要は無いわ。私」

 

「え? え? あ――ッ」

 

「貴方もこれ以上、喋らなくていい。偽者がいくら語ろうとも、それは斉藤雄一の言葉にはならないもの」

 

 

そこで爆発が起こり、ほむらを傷つけていた輪が吹き飛ぶ。

博士が助けてくれたようだ。ヒヨコのボディにムキムキの腕とキャタピラをくっつけた自信作。

永久機関マウリッツエンジン搭載の魔女駆逐ロボット『ポルポ』。

 

口からは『産地直送』とかかれた垂れ幕が見える。

ふざけたデザインだが戦闘能力は高い。現に、ご自慢の上腕が輪を殴りとばした。

とはいえ破壊には至らない。雄一は舞い戻ってくる輪を見て少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐにまた薄ら笑いを浮かべる。

 

 

「ニセモノ? それは違う。そもそも偽者も本物もない。今ココにいる自分こそが全てだ。キミなら分かると思うが?」

 

「理解できないわ。さっさとくたばりなさい」

 

「なるほど。話しても無駄というわけか」

 

 

そう、無駄なのだ。

だからほむらは盾からアサルトライフルを抜いて撃ちまくる。

しかしやはり輪が動き出し、雄一をバリアで防御した。

 

 

「しかし暁美ほむら。お前のその直視しない行為こそ、この虚心星原を生み出した原因とも言えるが?」

 

「――チッ!」

 

「人間は誰もが心に違う自分を飼っている。ピアニストや表現者なら尚更だ。善も悪も知ってこそ心を打つ演奏ができる」

 

 

雄一は輪を呼び寄せると、そこについている鍵盤を撫でた。するとひとりでに奏で始める、エリーゼのために。

その怪音波が機械を狂わせる。ポルポから煙があがり、博士は焦ったようにレバーをガチャガチャと動かし始めた。

 

 

「あれっ! お、おかしいの! 動かないの!」

 

 

そこで博士は見てしまう。モザイク状のエネルギーが迸る雄一の顔。

人を傷つける事で浮かぶ高揚感に満ち満ちた笑みを。

ゾッとする。改めて魔獣が負の集合体である事を思い知らされた。

 

 

「かつて多くの芸術家が愛を表現しようと模索を重ねた。ピアニストもその例外ではない。だが、存在しないものを表そう等とはおこがましい」

 

 

輪が空を翔る。博士はたまらずポルポから飛びおり、急いで逃げ出す。

しかしスピードが遅い。既に輪は彼女の近くに迫っていた。

駄目だ。怖い。嫌だ。博士は時間を停止するが――。

 

 

「愚かな。既に運命は決定されている」

 

 

雄一は目を細めた。

ほむらが助けようとしても、ホムラが助けようとしても無駄だった。どうあったとしても、博士は輪に当たる運命なのだ。

事実、博士を輪から引き剥がしても、時間停止を解除すれば小学生くらい体に大きすぎる凶器が刻まれていた。

 

 

「きゃぁあああぁあ!」

 

「しかし今日に至るまで、まだ多くの表現者達がその愚かさの道を歩んでいる。なぜか? それが存在すると信じたいからさ」

 

 

輪が跳ね返り、雄一の背後に戻ってきた。

 

 

「鹿目まどかに対する愛と、手塚に向けた愛は違うかもしれないが、そもそもそれはオブラートに包んだ言葉でしかない」

 

 

ドスコイほむらのつっぱりをいなし、雄一は握りこぶしを顔面に叩き込む。

 

 

「友愛の独占。或いは純粋な性的な欲求。はたまた孤独を埋めるための依存か」

 

 

剣豪ほむらが切りかかってくるが、雄一は刃をヒラリと交わすと、刀を掴んで剣豪ほむらを引き寄せた。

 

 

「まあそんな事はどうでもいい。些細な問題だよ。大切なのは、それら感情には先程言ったように別の役割がある。どこにも愛なんて文字を使わなくてもいい事だ」

 

 

雄一の膝が剣豪ほむらの腹部に入る。

よろける剣豪ほむらに、さらに雄一は回し蹴りを叩き込むと、その勢いで背後をむいた。

 

 

「それくらい曖昧なんだよ。だからこそ、その不安定なものを明確に形作りたいという先人達の気持ちも分かる。だが少なくとも、それは俺の目指していた芸術ではないと思ったんだ。そう、気づきだよ。それはどんな人間にも訪れかもしれない悟りのようなものだ」

 

 

そこには剛拳ほむらがいる。

雄一は飛んできた拳を掌で受け止めると、輪を呼んで剛拳ほむらを切り裂いた。

 

 

「夢中になったトレーディングカード。必死に集めた切手なんかも、ふとゴミに見えてしまう瞬間がある。それと同じだ。今まで応援してくれた人たちには申し訳ないが、自分の人生だ。取捨選択くらいは許されるだろ?」

 

「それが洗脳であったとしても!?」

 

 

ほむらの問いかけに、雄一は確かに頷いた。

 

 

「では今、俺が最も興味をそそられる表現課題とは何か? 分かるかなキミには」

 

 

輪は止まらない。アイドルほむらを弾き飛ばすと、むら姉を弾き飛ばす。

やさぐれほむらが連射する弾丸も効かない。むしろスピードが上がり、いろんなほむらを傷つけた。

 

 

「それは簡単。殺意だよ! 相手を殺したいという当たり前で分かりやすい感情はひどく愚直で美しい。ましてやその裏には、多種多様な理由がある!」

 

 

愛なんて不確かなものは気持ちが悪い。確かに男女が結ばれるというのは珍しい事ではないが、他の動物を見てみれば、それは主に繁殖のためだ。

しかし殺意だけは分かる。生きる為に殺す。食う為に殺す。それは当たり前の行動だ。

人間はそれをいけない事として設定したが、あくまでもそれは人間の間に定めたルールにしか過ぎない。

過去、そして世界の端では、今も人が人を殺すことはある主『正しい』こととして認識されている。

 

 

「理解できず、疑うものを糧とするよりも、誰もが理解できるものを掲げたほうが良い音が生まれるはずだ」

 

 

雄一は左の腕でアイドルほむらを掴み、右の腕でぽむらを掴み、打ちつける。

 

 

「俺は今、お前達を殺したい。それはたとえば邪魔だから。少しの嫉妬もあるかもしれない。手塚を奪われた気分になる。変な意味じゃないけれど」

 

 

暁美達は指示を出し合い、雄一を囲む。

そして一勢掃射。しかし輪が四つに分裂すると、雄一の周りを高速回転。エネルギーの竜巻を発生させ、銃弾を消し飛ばしていく。

 

 

「それに――、あぁ、簡単な理由が一つあるな」

 

 

雄一は四つの輪を攻撃に使う。縦横無尽に飛び回る輪が、次々にほむら達をなぎ倒していく。

相性が悪い。時間停止が通用しないとなると、たとえアライブ状態であったとしてもスペックの低さが出てきてしまう。

そんな中、雄一は唇を吊り上げた。相手に勝つというのは、それだけで気持ちがいい。

 

 

「俺もコンクールには出てる。もちろん演奏で人の心を打ちたいという気持ちもあったが、一位になりたいという思いもあった」

 

 

雄一は倒れているホムラの腹に足裏を叩き込む。

 

 

「うぐッッ!!」

 

「気持ちがいいな。見下すのは」

 

 

それは――、否定しなければと思った。だからホムラは両手で雄一の脚を掴む。

 

 

「斉藤雄一さんはッ、そんな事を言う人では! 無いとッ、思い……、うぐッ、思います!!」

 

「ハハ……。お前に俺の何が分かるんだよ」

 

「手塚さんが教えてくれた貴方は少しだけです。でもッ、それでもっっ、そんな事を言う人を、手塚さんがあんな嬉しそうな顔で、悲しそうな顔で言うはずが――ッッ!!」

 

 

雄一はホムラの顔面を思い切り蹴った。

右のレンズが割れ、その破片が眼球を傷つける。ホムラは目を押さえて叫び、転がりまわった。

すぐに他の暁美達が助けようとするが、輪が飛来し、次々に打ち弾かれていく。

 

かろうじて跳んできた弾丸も雄一はその身に受けるだけ。

ノーモーション。魔獣の肉体にはたいしたダメージじゃない。

そして雄一は見た。ホムラは今、雄一に背を向ける形で丸まり、泣いている。

恐怖と痛みからかガクガクと震え、すすり泣く声が聞こえていた。

 

 

「うぅぅう、ぐっす。いだいよぉ……! えぐっ、うぇえぇ」

 

「駄目! 気をしっかり持って!!」

 

 

ほむらの、むら姉の、博士の体が透ける。

あくまでもホムラの魔法で存続を許されているわけで、彼女が折れれば皆は消えてしまう。

 

 

「無様な姿だな。だがそれが、人間の限界というものだ」

 

 

雄一は輪を分裂させ、二つにする。

一つはホムラの首を刈り取る刃。もう一つは暁美たちの首を刈り取る刃。

 

 

「死ね。暁美ホムラ」

 

 

しかし、ふと、手を止める。

叫び声が聞こえてきた。暁美ホムラじゃない。他の暁美でもない。もっと乱暴で、乱雑で、力に溢れた叫び声だった。

 

 

「おいクソ男!」

 

 

雄一が空を見上げると、ジェットコースターのレールを猛スピードで走るシルエットがいた。

それは飛び上がると、槍を構えて降ってくる。

 

 

「アタシのダチに! 何してくれてんだァアアアアアアアア!!」

 

 

流星のように跳んできた佐倉杏子の一撃を、雄一は体を横にそらして回避する。

瞬時に繰り出した回し蹴りも、雄一は腕でしっかりと掴んで見せた。

 

 

「佐倉杏子……」

 

「気安く呼ぶんじゃねぇ!」

 

 

ブッと、杏子が何かを吐いた。

こういうものは唾かと思うが、実際は違う。小さくした槍だ。それが三本、的確な狙いで雄一の左の眼球に突き刺さる。

 

 

「うッ!」

 

 

魔獣になったとはいえ、急所は変わっていないのか。雄一は小さく呻いて後ろへ下がっていった。

しかしすぐに輪が飛んできて杏子を弾き飛ばす。きりもみ状に吹き飛んだ杏子は、そのままホムラの隣に墜落した。

 

 

「いってぇ……!」

 

「あ、あ、あ、さくっ、佐倉さん……! どどどど、どうして」

 

「どうして? ンな事決まってるだろ。助けに来たんだよ」

 

 

杏子はホムラの顔を覗き込み、傷を確認する。

 

 

「おい、おい暴れんな」

 

「だ、だだだだって痛くで……! ひっぐ!」

 

「馬鹿。落ち着けって。痛覚遮断しろ」

 

「あ……」

 

「こういう時は、魔法少女の特権を使えばいいのさ。な?」

 

 

一方で雄一は目に刺さった爪楊枝ほどの槍を引き抜く。

傷にはすぐにモザイク状のエネルギーがかかり、修復はわずか一秒ほどで終わった。

 

 

「佐倉。キミはまだ記憶を取り戻してないな? 洗脳されていた際の記憶だけで友情を語るか。愚かにも程がある」

 

「かもな。でも、考え方までは変わらなかった」

 

「なに?」

 

「馬鹿を繰り返したアタシだけど、それでもまだ馬鹿のままコイツと友達になったんだ。あの世界じゃ確かに馬鹿なアタシのまま、コイツを本気でダチだと思ったんだ!!」

 

 

ホムラは、ほむらは、暁美達はハッとしたように杏子を見る。

しかしその一方で、雄一は呆れたように笑っていた。

 

 

「お前が友人になったのは虚心星原の主である焔だ。そこで転がっているホムラじゃない」

 

「同じだろ。アイツとダチになれたなら、コイツともなれる」

 

 

全ては同じ。ホムラはグッと拳を握り締め、その言葉の意味を考える。

 

 

「っていうか、ゴチャゴチャお喋りなんざゴメンだね」

 

 

魔女がよく使う手だ。精神攻撃、杏子も隠したい過去があるため、揺さぶられる気持ちは分かる。

だからこそ、ここは一つの芯を見せなければならない。

 

 

「なあホムラ。あれって誰なんだよ」

 

「え? あ……、斉藤雄一さんです。手塚さんの、お、お、お友達で」

 

「ふぅん。まあ何でもいいや」

 

 

杏子は大きく伸びをして深呼吸。

ふと、跳んできた輪を思い切り槍で打ち返す。

 

 

「アタシもいろいろ、賢くなったつもりさ」

 

 

例えば意外と簡単に死ぬ事とか。だから伝えたい事はハッキリ伝えておかないと。

 

 

「いいかホムラ。よく聞いとけよ。今から恥ずかしいこと言うから、一回しか言わないからな」

 

「え……?」

 

 

杏子は覚悟を固めた。それは焔を守るため。

正しくは、それがマミであったとしても、或いは手塚であったとしても同じ行動を取っていただろう。

なぜか? 少なくとも杏子はあの世界で、彼女たちの事を親友だと思っていたからだ。

 

 

「血の繋がりが無くとも、損得なしで傍にいてくれる。苦しんでれば助けたいと思って! 一緒に怒ったり、泣いたり、心配したり、楽しかった笑ったりする! その絆こそが、人が生み出した魔法ってもんだろ!!」

 

「!」

 

「だからアタシはココに来たんだ! なんで焔はアタシを選んだ? きっとどっかの時間軸でアタシとアンタがダチになったからだろ!!」

 

 

杏子の肩に輪が入った。鎖骨が砕けるが、杏子は踏みとどまり、歯を食いしばった。

輪はさらに杏子の背を抉り、入る。血を吐き出しながらも、杏子は輪を掴んで思い切り投げ飛ばした。

そして激しく雄一を睨みつけ、人差し指と中指のふたつで雄一を指す。

 

 

「いいかホムラ。世界で一番ダセェ事はな! 自分(テメェ)の馬鹿で家族をッ、友達を傷つける事だ! 自分が欲しいって願ったくせに、くだらねぇプライドで奇跡を否定する事なんだよ!!」

 

 

そこで伸ばしていた腕が引き裂かれた。

断面から噴き出る血。呻き、傷を抑える杏子を、雄一は笑って見ている。

 

 

「絆? 冗談だろ。魔獣が最も嫌う言葉だ。世界で一番薄っぺらいワードだよ」

 

「言ってろ。アタシ等は、そんな薄いものの間に光を視てたんだ!」

 

「ならもっと薄くスライスしてやる」

 

 

雄一は杏子の腕を切り裂いた大輪を掴むと、思い切り体を捻って、もう一度輪を投げる。

どす黒い瘴気のエネルギーが輪に纏わりつき、杏子を狙う。

駄目。いけない。本心でそう思った。だからホムラは杖をかかげ、ストップを発動する。

 

 

「佐倉さん!」

 

「うぉ!」

 

 

杏子に触れると、その時間が動き出す。

 

 

「あ、あぁ、そっか。アンタ時間を――……」

 

「はい。でも雄一さんには効きません」

 

 

時間を止めたのは、杏子と話がしたかったからだ。

 

 

「私は佐倉さんが苦手でした」

 

「マジかよ。それ今、言うか? フツーさ」

 

「乱暴そうで。でも実際は……、貴女に魔法をかけられた」

 

「へ?」

 

「私も恥ずかしい事、言います。一回だけ」

 

 

ホムラは、暁美達は笑みを浮かべて杏子の前に立った。

 

 

「佐倉さん。私と友達になってくれて……、本当にありがとうございますっ!」

 

 

杏子は少しポカンとしていたが、やがて嬉しそうに、少しだけ悲しそうに笑う。

 

 

「気にすんな。アタシも……、そう思ってる。でもなんか別れの挨拶みたいだね」

 

「違います。逆ですよ。おかげで、固まりました」

 

「そっか。へぇ。っていうか何かすげーデカイのがいるな」

 

 

ドスコイほむらは前に出て頭を下げる。

 

 

「ごっつぁんです!」

 

「ハハハ! 気に入ったよ。めっちゃウマイ『ちゃんこ』の店、知ってるからさ。今度一緒に行こうな」

 

 

ホムラ達は頷き、時間停止を解除した。

 

 

「!」

 

 

雄一は表情を変える。輪が空を切っていた。

ホムラは杏子を連れて、別の場所に移動している。

 

 

「何ッ? どうして!」

 

「決まってます。私が貴方の攻撃を避けたから!」

 

 

雄一は沈黙する。僅かな焦り。

 

 

(運命の流れが変わったのか。佐倉杏子の些細な応援で? そんな馬鹿な……!)

 

 

一歩、後ずさる。

ホムラは、ほむら達は、皆集まって立っていた。

 

 

「奥の手を使います。皆さん。いいですね」

 

「了解よ」

 

 

ほむらが髪をかき上げる。

 

 

「こ、こわいけどっ、みんなの為にがんばるの!」

 

 

博士が白衣を翻す。

 

 

「さっきからやられてばっかりだものね。お姉さんもそろそろ怒っちゃうから!」

 

 

ほむ姉がグッと拳を握り締める。

 

 

「そうっす。一発デカイのぶちかましてやりましょ!」

 

 

剛拳ほむらがニヤリと笑った。

 

 

「安心せよ。彼奴の動きは既に見切った」

 

 

剣豪ほむらは刀を抜いて構えを取る。

 

 

「クワクワッ!」

 

 

クワガタほむらは蜜を啜った。

 

 

「杏子と約束しました。ちゃんこ、ごっつぁんです!」

 

 

四股を踏むドスコイほむら。

 

 

「御託はいいんだよ。さっさとあのいけすかねぇピアノマンをぶちのめそうぜ! ひゃははは!!」

 

 

中指を立てて、やさぐれほむらが舌を出しながら笑う。

 

 

「………」

 

 

ぽむらも無言で頷いた。

 

 

「ふふっ、みんなやる気いっぱいねー」

 

 

むら姉はニコニコしながら鼻血をぬぐう。

 

 

「あー、もう、さいあくっ! 血とか砂とか、きったなーい。これとれるかなー?」

 

 

アイドルほむらは自分の汚れを気にしているようだ。

 

 

「でも、いいのー?」

 

 

むら姉がホムラを見る。ホムラは少しだけ眉を動かしたが、しっかりと頷いた。

 

 

「はい。ここで終わりにします」

 

 

ホムラは杖を構えて腰を落とす。

発動するクイック。早送りによってホムラたち12人のスピードが上昇するのだ。

 

 

「倒す? それは無理だ。お前達が死ぬのは、運命なんだ」

 

 

雄一も腰を落とし、輪を構える。

輪には、たっぷりの瘴気を纏わせて攻撃力を上昇させる。どうやらお互い決着をつけるようだ。

杏子は思わず身を乗り出す。不安だ。心配だ。

しかしグッとこらえた。ホムラが杏子のほうを見て、微笑んだからだ。

 

 

『みてて』

 

 

口パク。

けれどもしっかりと伝わった。杏子は強く、それは強く頷いた。

 

 

「斉藤雄一さん! 貴方は繊細ですが優しく、とても素晴らしい音を奏でます。貴方の演奏が他者の心をうち、前に進もうと思わせる勇気を作り出した! 私は知っています。そんな人が、他人を傷つけようとする魔獣の仲間になる筈がないッ!!」

 

「運命から目を背けるな! 死も変化も、確かにそこにある!!」

 

「ならばその歪んだ運命! 私が正します! この私、手塚海之のパートナー! 暁美ホムラが貴方を証明する!!」

 

 

ホムラたち12人が、一勢に地面を蹴った。

 

 

「レミニセンスッ! ニコエンシス!」

 

 

それは、あまりにも単純な力技だった。

12人が固まって繰り出す突進。魔力を纏い、全速力で飛んでくるホムラ達を見て雄一は呆れながら輪を投げた。

 

一投目。

先頭にいた博士が受ける。なにやら盾を持っていたようだが、意味は無かった。

 

バウンド。二投目。

むら姉とほむ姉が受け、弾き飛ばされる。

 

三投目。

ここで輪が分離。多方向からの攻撃によってぽむら、クワガタほむらが離脱した。

 

四投目。

大量のチャクラムにしてみる。見切ったというのは本当だったらしい。剣豪ほむらは凄まじい太刀筋で輪を切り伏せるが、他は違う。

アイドルほむら、剛拳ほむら、ドスコイほむらが倒れた。

 

五投目。

力を込めてみる。大輪は剣豪ほむらの刀を粉砕して、彼女とやさぐれほむらを吹き飛ばす。

 

 

「終わりだ」

 

 

六投目。ほむらが輪を受けた。

 

 

「うぐうぅう!」

 

 

しかし彼女は踏みとどまり、血を吐き出しながら叫ぶ。

 

 

「行って!」「はい!!」

 

 

ほむらの肩を蹴り、ホムラが飛んだ。

 

 

「ハアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

杖を振り上げ、それを雄一へ振り下ろす。

雄一は考えた。輪を戻す? 駄目だ。ほむらが掴んでいる。

無理にでも引き戻すか? いや、そんな必要は無い。

 

ならば目を光らせた。

モザイク状に迸るエネルギー。眼球と掌からレーザーが発射され、ホムラに直撃する。

叫び声。杖が弾かれ、光がホムラを焼き焦がそうとする。

 

 

「ウォオオオオオオオオオ!!」

 

「!」

 

 

ホムラの背後から影。雄一は舌打ちをこぼした。

見てろって言われただろうが。クソ。

 

 

「やっぱアタシがいないと駄目だね! アンタ!」

 

「かも! です! ありがとう佐倉さん!!」

 

 

杏子がホムラを掴んで投げた。

無理だ。流石にこれ以上はどうしようもない。

雄一は回避を捨てて防御を選択。どうする? どう来る?

しかし早い。気づけばホムラの掌底を受けていた。

 

場所はわき腹。

とはいえ弱い。弱すぎる。

いくらアライブのステータスでも打撃力が無さ過ぎる。雄一はすぐにホムラの腕を掴み、思い切り投げ飛ばした。

 

 

「あう゛ッッ!!」

 

「捨て身の作戦か。悪くないが――」

 

 

そこでピーッと音がした。ハッとしてわき腹を見ると、爆弾が貼り付けてある。

 

 

「あぁ、まったく」

 

 

爆発音。雄一は炎に包まれ、そして笑う。

 

 

「少し焦った。だがそれだけだ。暁美ホムラ」

 

 

雄一は余裕だった。

それなりに爆弾には魔力が込められていたようで、左のわき腹は焦げついているが、耐え切った。。

駄目か。地面に倒れてた杏子は悔しげに歯を食いしばる。

一方で、ホムラは真剣な表情で雄一を睨んでいた。

 

 

「まだ、終わってません」

 

「そうだな。だが、気合を入れた割りには一撃しか与えてないぞ。そしてアライブも無限ではない。そろそろ切れるんじゃないか?」

 

「ええ、そう――、ですね」

 

「なら尚更、俺には勝てない。どうする? まだやるか? 俺としては別に逃げてくれてもいい。そうすれば手塚を追いかける時間が増える」

 

「いえ、逃げません。どうしてって? 決まってるじゃないですか。私は約束したんです。手塚さんに、貴方を倒すって」

 

「守れない約束はするものじゃな――」

 

 

爆発が起きた。雄一の左わき腹から。

 

 

「……ん?」

 

 

雄一はそこを確認する。痛みを感じる。熱を感じる。爆弾は無い。

 

 

「そうです。だから、守れる約束をしたんです」

 

 

ホムラの目が据わる。その目の周りには青いアザが出てきた。

それだけじゃない。ホムラの足が変形する。骨が折れているようで、嫌な音が聞こえてきた。

その時、雄一の左わき腹が爆発する。

 

 

「うがッ! え? え!?」

 

 

同じところにダメージが入る。痛い。傷が抉られる。

雄一がわき腹を抑える。そこには何もない。何もない筈なのに、また爆発が起こった。

 

 

「ご――ッッ!!」

 

「私達は、一人です。たとえどんな道を歩もうと、それが暁美ほむらである事には変わりない」

 

「ま、まさか!!」

 

「はい。レミニセンス・ニコエンシスは、全ての私を一つに纏める魔法です」

 

「そ、それじゃあ!!」

 

 

12人の暁美が受けた傷が、ホムラに収束される。

要するに博士が受けた傷や、ドスコイほむらが殴られた傷がホムラに与えられるのだ。

それは大きな苦痛であり。ホムラは怖くなって痛覚遮断を行う。

しかし、完全には遮断しなかった。向き合うべき痛みだからだ。これは自分であり、他者を傷つけた痛みだからだ。

 

そして一方で、纏めるという事は消滅させることではない。

12人の暁美達は確かに存在していた。その矛盾が武器になる。

ホムラが進み、雄一に一撃を食らわせたのは、12人が力を合わせたからだ。

それが実際は、1人が12人分がんばっていただけになる。

 

一方で、打ち込んだ一撃は12人分を打ち込んだものとして世界に認識されるのだ。

暁美は12人いるが、暁美は1人しかない。暁美達の痛みは暁美のもの。

暁美が与えた傷は、暁美達のもの。

 

 

「う、うがぁあ!!」

 

 

爆発が起きて雄一の肉が飛び散った。肋骨がむき出しになったところで、また爆発。

肉の鎧がないことで、ダメージがダイレクトに骨に響く。

 

 

「何が、何が起こってる!」

 

「私は博士です。博士は貴方と戦いました。私は貴方にダメージを与えました。だから博士が貴方にダメージを与えました」

 

 

ホムラが語り、博士が消える。

 

 

「は? は!?」

 

「私はクワガタほむらです。クワガタほむらは貴方と戦いました。私は貴方にダメージを与えました。だからクワガタほむらが貴方にダメージを与えました」

 

 

ホムラが語り、クワガタほむらが消える。そして爆発が置き、雄一が地面に倒れた。

ピンポイントのダメージ。しかも修復機能を発動しても回復しない。

なぜか? それは暁美ホムラの攻撃でわき腹が爆発したという概念が存在しているからだ。

まだ暁美ホムラの攻撃は終わっていない。確定された未来にたどり着いていないので、修復などできる筈も無い。

ホムラの頬骨が砕ける。腹が割かれ、血が噴き出る。

一方で雄一のわき腹が吹き飛ぶ。

 

 

「今ので、6回目の爆発。あと半分です」

 

「うごぁあああ! させるか!」

 

 

雄一は思った。何も爆発しているのを待っている必要は無い。その暁美ホムラを殺せばいいだけだ。

そう思い輪を向かわせる。すると輪がピタリと止まった。

 

 

「なにィ?」

 

「雄一さん。貴方は何か、勘違いしてますね」

 

 

今はある種、時間を巻き戻しているだけだ。

ホムラが掌底で爆弾を、雄一の左わき腹に押し付け、爆発させた。

その決定された事実の中を覗いているだけなんだから。

 

そこでまた爆発が起きた。

雄一は何か訳の分からない事を叫び、ホムラを殴ろうとするが、そこで体がピタリと止まる。

そしてまた爆発が起きた。

 

 

「う――ッ! ウゴォォォオオオオオオオ!!」

 

 

叫んだ。また爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、終わりですね」

 

 

12回の爆発が終わったとき、雄一は仰向けに倒れていた。

わき腹にはぽっかりと開いた穴。その向こうには臓器など無く、詰まっている瘴気が漏れ出てくるだけだった。

雄一は虚ろな目で空を見ていた。途中から何も喋らず、輪も地面に落ちているだけ。

 

 

「ハァ、ハァ……!」

 

「やったな。ホムラ」

 

「はい、はい……!」

 

 

喋るたびに歯が落ちる。それでもホムラは笑っていた。

 

 

「今は休め。顔に魔力を集めて修復するんだ」

 

「はい……!」

 

 

そこでホムラは顔を上げた。杏子と目が合い、笑う。

だが、笑顔が消えた。杏子の背後に浮遊する大輪があったからだ。

逃げて。そう叫ぼうとしたが上手く喋れない。そうしていると輪が杏子の脳天に入り、高速回転して一気に引き裂く。

ソウルジェムごと切断されたため、杏子はそこで息絶えた。

 

とまあ、そんな運命もあったのかもしれない。

だが少なくともその未来にはたどり着かなかった。

立ち上がった斉藤雄一が、杏子を突き飛ばして輪を受け止めたからだ。

 

 

「え?」

 

「逃げろ! 早く!!」

 

 

杏子は事情を理解した。ぽかんとしているホムラを横抱きにすると、走る。

一方で輪は雄一の腕を切り裂き、そのまま胴体に入り、縦に真っ二つにしてみせた。右と左、二つに別れた雄一が地面に倒れる。

しかしまだ生きていた。大量の瘴気を撒き散らしながらも、叫ぶ。

 

 

「運命の本体は俺じゃない! あの輪だ!!」

 

「マジかよ……!」

 

 

杏子の腕は既にくっついているものの、ホムラはもう戦えないように思える。

そして輪は分裂し、大量のチャクラムになった。

杏子一人であれを全て撃墜できるとは思えない。

 

 

「クッソ! どうりゃいいんだ」

 

「私がやるわ」

 

「え?」

 

 

杏子とホムラの傍に、ほむらが立っていた。

 

 

「アンタ……! どうやって!」

 

 

そこでホムラが手をあげる。

 

 

「私が出しました。レミニセンス・ニコエンシスはあくまでも一つの魔法だから。終わればまた私を出せるの」

 

「そういう事よ」

 

 

ほむらは時間を停止させる。

同一体のホムラに触っている杏子は動く事を許されたようだ。

 

 

「でもッ、どうするのさ?」

 

「さっきと同じよ。私があれを全て撃墜できる運命を生み出せば良い」

 

「や、だからどうやって……!」

 

「どうもこうもないわ」

 

 

ホムラも、ほむらも、同じ事を思った。

斉藤雄一が自分達を守って傷つた瞬間に、大切なものがこぼれていく感覚があった。

そもそも、人に迷惑をかけるのが嫌で。自分が好きになれなかった訳だ。なのに、なのに……。

 

 

「一体、いつまで他の人を巻き込むつもりなの? いつまで私のワガママにつき合わせるつもりなの?」

 

 

聞こえていない?

 

 

「嘘つけよッッ!」

 

 

ほむらはジェスチャーを取る。それは間違いなく、弓の弦を引っ張る動作だった。

 

 

「ガァアアアアプ! 弓をよこしなさい! ボサボサしてるとブッ飛ばすわよ!」

 

「は、はい! ただいま! ええ、ですので折檻はどうか!!」

 

 

ほむらが手を離すと、無数の闇の弓矢が発射されて浮遊するチャクラムを次々に撃墜していった。

 

 

「ガァアアアアプ! 何でほむらに武器を渡したァア!」

 

「おわぁあああ! しまったぁあ! 同じ顔で同じ声だからついぃぃ!」

 

 

焔が掌から爆炎を発射させ、ガープは吹き飛ばされる。

だがおかげでホムラ達は無傷で、そして何よりも色つき・『運命の輪』を破壊する事ができた。

それじゃあと、ほむらは髪をかき上げながら消え去る。

ホムラは立ち上がると、フラフラと雄一のもとへとやって来た。

 

 

「雄一さん……」

 

「あぁ、無事だったんだね」

 

「どうして?」

 

「分からないけど……。たぶん、瘴気が沢山体から出たからだと思う。なんか考え方も、変わってきたっていうか。そもそも、え? 俺、ちゃんと、喋れてるかな?」

 

 

ホムラはコクコクと頷いた。左半分だけの雄一は優しげに笑った。

 

 

「い、いろいろ酷い事して、ごめん」

 

「今のが、本当の貴方なんですね?」

 

「いや、別にそうじゃない。今までも本当だった……! でもまあ、たぶん、今のほうが、理想とは近いと思うよ」

 

 

とはいえ、雄一は悲しそうに笑った。片腕しかない。その指もホムラ達の血で汚れてる。

 

 

「これじゃあ、ピアノはひけないな……」

 

 

ホムラはボロボロと泣き始めた。

なんだか、一人の男の夢を台無しにしてしまったような気がして。

とはいえ、彼女は何も気にしなくて良い。だから雄一はホムラの頭を撫でようと手を伸ばした。まあ上手くいかずに、地面に落ちたが。

 

 

「気にしないでいいんだ。そ、それより……、あの、あぁ、なんだっけ? 駄目だな。体を構成する瘴気がなくなっていく。でも駄目だ。やっぱりこれだけは言わないと」

 

 

雄一はホムラの手に触れ、まっすぐに瞳を見つめた。

 

 

「手塚を、頼むよ」

 

「え……?」

 

「変な意味じゃないよ。ただ、助けてやってほしいんだ。ほら、俺はいろいろ迷惑かけたから今さらかもしれないけど……」

 

 

斉藤雄一は、己が消えいく事を理解していた。

その上で、ホムラに笑顔を見せたのだ。

 

 

「友達なんだ――っ! 大切な、親友だ……!」

 

「!!」

 

 

そこでホムラは気づく。雄一が手に触れたとき、そこには一枚のカードがあった。

 

 

「これって……」

 

「俺も同じなんだよアイツと……! でも、俺はなんだかんだ逃げてばっかりで! だから、いらない苦労を背負わせた」

 

 

雄一の目から瘴気が流れてきた。ただの偶然だが、ホムラはそれが涙だと理解した。

 

 

「せめて少しでも何かの力になってくれればいいって思ってる。それくらいしか、もう、俺にできる事はない」

 

 

ホムラはコクコクと頷いた。過剰に頷く姿を見て、雄一は笑う。

 

 

「あと、そうだな。ついでに伝えてもらおうかな」

 

 

雄一の半身は既に消えていた。下半身も消えていた。

 

 

「手塚には色々言ってしまったけど、一つだけ言い訳がしたいんだ」

 

「はい、はい……!」

 

「たとえ何回繰り返しても、俺は、お前を友達だと思ってたよって」

 

「はい。必ずッ伝えます! 絶対。絶対に伝えます!」

 

「ありがとう」

 

「手塚さんは賢い人ですから分かってくれます! 貴方が私たちを庇ってくれた事も全部伝えるから! だから、だから――ッッ!!」

 

 

消えちゃ駄目。それを言う前に、雄一はホムラに言葉を投げる。

 

 

「生きてくれ。そして――、勝つんだ。俺の想いは確かに託したよ」

 

 

そこで斉藤雄一は消え去った。ホムラはギュッとカードを握り締める。

伝わった筈だ。だって、伝えた。これが良い事なのか悪い事なのかホムラには分からない。

友達が死ぬ瞬間は辛い。辛すぎる。けれども絶対に何か大切なものが心に宿る。

だから、トークベントを使った。ホムラが聞いた言葉は、ライアも聞いていた。

 

 

『感謝しろよ』

 

 

ジュゥべえがライアの肩から降りた。

ライアは頷く。最大の感謝を。押し付けてしまったホムラに。雄一に。

 

 

「すまない焔」

 

「!」

 

「負けられない理由が、また増えた」

 

 

ホムラが受け取ったカードを、ジュゥべえがシステムに組み込む。

ライアはデッキから雄一がくれたカードを抜き取り、バイザーへセットした。

焔が動きを止める。ライアの背後に巨大なルーレットが出現した。

 

ルーレットというよりはスロットマシーンとでも言えばいいか。

アドベントカードのような枠の中に、モンスターの絵が映し出される。

それはドラグレッダー。どういう事だ? 焔が警戒していると、ルーレットがスタートする。

ドラグレッダーの絵柄がボルキャンサーに変わり、すぐにマグナギガに変わる。

次々と変わっていく絵柄。これは世界を表している。

 

 

『俺も同じ』

 

 

雄一が言っていたことだが、そのままの意味だ。

彼もまた、何も変わらない。ただやはり同じなところもあるようで。手塚は『ライア』が一番多かった。

その絡みついた因果律。何度繰り返しても同じ理由で同じ事を繰り返す。

それが染み付いた人間というものだ。

だがたまに、宿命がその道を狂わせる。

 

 

「運命よ。俺に従え!」『アドベント』

 

 

ルーレットが止まった。

その時、絵柄になっていたモンスターが飛び出してくる。

空間の破片を纏い、地面に降り立ったのはオーディンの使役モンスターであるガルドサンダー。それが、地面に降り立ったと同時に変色していく。

赤紫を貴重としたのは、紛れもないライアの色。

 

 

『さしずめ、エビルサンダーってところか』

 

 

新たなモンスターと契約したのであれば、新たなカードが増えるのは必然だ。

ライアは二枚目のカード、ソードベントを発動する。目の前に現れた剣を掴むと、ライアの姿が変わっていく。

 

 

「一緒に行こう。雄一」

 

 

焔の表情が歪む。嫉妬でおかしくなりそうだ。

一方でライアは剣を背中に装備し、鞘から引き抜く。

頭部の形状は元になったエビルサンダー(ガルドサンダー)に近く、胸部装甲にはまるで陣羽織のような装飾が見える。

ジュゥべえはフムと唸る。剣がメインならばソード。いや、ブレイド。騎士ブレイド? いや、ライアなのだからライアブレイド。

 

 

『決めたライア・ブレイドフォームだ。じゃ、がんばれよ』

 

 

消え去るジュゥべえ。ライアは剣先を焔に向ける。

 

 

「全ての嘘を、終わりにしよう」

 

 

ライアはエビルブレードの刃を光らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪神を目指すまどか達。デカログスが近づくにつれて、使い魔がやって来るようになる。

面倒だが対処できないわけではない。バイクを走らせる騎士と、ソレに乗って遠距離射撃を行う魔法少女。

 

 

「待っててね。ほむらちゃん」

 

 

そこでライドシューターが並ぶ。車体の上に乗っていたさやかは、まどかの声が聞こえたらしい。

 

 

「今度こそ、分かり合えるのかな。あたし達」

 

「うん。絶対。ね、仁美ちゃんも」

 

 

後ろにいる仁美に笑いかけると、笑顔が返ってきた。

 

 

「ええ。必ず、分かり合えますわ」

 

 

すると、怒号。

 

 

「分かり合える? 不快な言葉はやめいッッ!!」

 

 

炸裂音が響き、ライドシューターが急停止する。

ドンチキ・ポン。プワァー。ジャキジャンジャンジャンジャカジャン! ポン!

和風な音楽が響き渡る。まどか達が警戒していると、近くの丘の上。摩訶不思議な光景が飛び込んできた。

 

馬だ。真っ白な馬が歩いてくる。

とはいえ、その顔にはモザイクがかかっていた。

従者型を馬の形に改造しているようだ。そしてその上に乗っているのは公家を彷彿とさせる男である。

和風の格好、烏帽子、白塗りに丸い眉毛。そして薄紫の長い髪の毛。

男はニヤリと笑った。真っ黒に塗った歯が特徴的だ。

 

 

「あ、貴方は……!」

 

「黙れ下種桃がァ!」

 

「!!」

 

 

下種桃、髪の色だろうか。まどかは怯んだような表情でこわばる。

 

 

「ホホホ! 怯えるな怯えるな! 麻呂も戯れが過ぎたわ。これは反省じゃての」

 

 

男の周りには和楽器を持った魔獣が大量に見える。

 

 

「麻呂は魔獣。その名は、下足之宮(げそのみやの)黒彦(くろひこ)。下種桃、鹿目まどか。うぬらはココで死ぬのでおじゃる」

 

 

黒彦が腕を上げると、まさに三百六十度。どこを見ても従者型の大群が現れる。

 

 

「んなッッ!!」

 

 

思わず龍騎から声が上がる。

従者型の大きさはバラバラだが、だからこそ無数の顔が見える。

なんて数だ。従者型は建物からも生えるように体を伸ばし、龍騎達を見つめている。

まどかはかつて教科書で見た魚の話を思い出した。一つ一つは小さくとも、集まれば大きな力になる。そういう話だ。

魔獣も変わらない。従者型のレーザーを一勢に発射されたら、流石に終わりだ。

 

 

「ぬほほほ! 良い表情じゃての!!」

 

「ちょ……、こんなのアリ!?」

 

 

さやかが青ざめる。

見渡す限りの白だった。何百のレベルじゃない。おそらく、何千。いや――

 

 

「一万の従者でおじゃる」

 

 

一万。その言葉でさやかは完全に沈黙した。

オルタナティブやなぎさも抜け道を探すが、そんなものは大群の前に存在する筈も無い。

むろん、こんな事は普通では許されない。

 

しかし今は普通ではない。

キュゥべえ達のルールによる強制力が弱まっている今、星の骸から大量の従者型を引っ張ってこれたのだ。

 

 

「は、反則だ! ゲームで決着をつけるんじゃなかったのかよ!」

 

「ホホホホ! 何を言うておるのじゃ龍騎よ! そんなものに納得している魔獣などほんの一握り。皆が思っているのはうぬらを八つ裂きにしたいという殺意のみよ!」

 

 

仁美はこっそりとクラリスを取り出した。

が、しかし、そこで黒彦の表情が変わる。

 

 

「何をしとるか畜生緑がッッ!!」

 

「きゃ!」

 

 

黒彦が口から何かを発射した。

墨だ。墨の塊。それが仁美の足元に着弾する。

 

 

「お前達にもできる事などもう無いわ! 今は麻呂が楽しむ時間! 邪魔をするな愚か者めがァアア!!」

 

 

黒彦は大きな矛を出現させると、それを天へ掲げる。

 

 

「ええィ! 不愉快極まりないわ! もうよろしい! 麻呂の前でせめて美しい炭になってみせよ!!」

 

 

皆――、焦る。

必死に突破口を探すが、見るところ見るところ従者の顔なのだからどうしようもない。

 

 

『キュゥべえ!』

 

 

まどかがテレパシーを使う。しかし脳内に響く怒号。

 

 

『無駄じゃ! 既にハッキング済よ! 運営に頼ろうとするのは浅はかでおじゃる!!』

 

 

駄目だ。もう守るしかない。

まどかはアライブを発動しようと――

 

 

「あ」

 

 

まどかの腕が消し飛んだ。

 

 

「無駄じゃ! その前に殺す! 発射!!」

 

 

光が――、溢れた。

もはや抵抗すら許さぬスピードであった。

魔法少女たちの結界は一瞬で蒸発し、騎士達がカードを引き抜く前に全てを終わらせた。

 

 

「ホホホホホホホ! ホーッホホホホ! オルタナティブゥ! 貴様には無敵になる技があったなぁ! だがしかし使えなければどうにもならぬのじゃ! ホーッッホホホハハハハ!!」

 

 

今はゲームではないため、実はアナウンスは流れない。

しかし、これは事実である。今の一撃で、ゾルダは死んだ。さやかは死んだ。再生すらも間に合わず、ソウルジェムが溶けたのである。

 

 

「愉快! 愉快でおじゃる!! 殺せ! さあ殺せや殺せ!!」

 

 

これは事実である。紛れもない事実である。

仁美は死んだし、なぎさも死んだ。オルタナティブはもちろん死んだ。

 

 

「命が溶けていく感覚はたまらんのぅ! ホホホ! オーッホホ!!」

 

 

そこでジュゥべえとキュゥべえも異常事態に気づいた。

 

 

『おい先輩。マジかよ』

 

『ああ。確認したよ。やられたね。龍騎ペアの死亡を確認した』

 

『くぁー! 魔獣共。マジでやりたい放題だな! これ――ッ、マジどうすんだ先輩』

 

『まあ残念だけど仕方ないよね。これがまどか達の限界だったという事さ。元の世界にいるニコ達に伝えて、彼女達だけでゲームを頑張ってもらおう』

 

『了解。ま、残ってる人数くらいだったら穴も開けられそうだし、マミや杏子を回収してトンズラすっか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅん。なるほど。こうなるわけね。

 

 

「魔法少女達はみんな、分かり合えるよ」

 

「分かり合える? 不快な言葉はやめいッッ!!」

 

 

炸裂音が響く。

ドンチキ・ポン。プワァー。ジャキジャンジャンジャンジャカジャン! ポン!

和風な音楽が響き渡る。近くの丘の上。摩訶不思議な光景が飛び込んできた。

 

馬だ。

真っ白な馬が歩いてくる。とはいえ、その顔にはモザイクがかかっている。

従者型を馬の形に改造しているようだ。そしてその上に乗っているのは公家を彷彿とさせる男である。

和風の格好、烏帽子、白塗りに丸い眉毛。そして薄紫の長い髪の毛。

男はニヤリと笑った。真っ黒に塗った歯が特徴的だ。

 

 

「………」

 

「………」

 

「ええい! 誰でおじゃるか! 貴様ッッッ!!」

 

 

下足之宮黒彦は困惑していた。

つい先程、まどか達の動きを調べ、絶対に通るであろう道に先回りしていたと言うのに、通りかかったのはまどか達ではない騎士であった。

おかしい。なぜまどか達は急にルートを変更したのか? デカログスに向かうためには絶対にココが一番近いはず。

 

 

(ましてや鹿目まどか達は麻呂がここにいる事を知らなんだ。なのに、ええぃ何故じゃ!)

 

 

心当たりがあるとすれば、間違いなく今、そこにいる騎士である。

 

 

「お前が何かをしたのか! ええい! よくも麻呂の愉悦を!!」

 

 

黒彦は一万の従者を呼び出し、騎士を囲ませる。

やりすぎかとも思ったが、なにせ黒彦はフールズゲームヘビーユーザーでありながら目の前にいる騎士を知らない。

オルタナティブでもなければ、アビスでもない。

 

 

「何者じゃ! 騎士め、名を名乗れ! 麻呂の悦楽の時間を邪魔し、かつそのふざけた面! 事と次第によっては地獄の苦しみを与えて殺してやるわ!!」

 

「騎士? うーん、騎士かぁ。まあ悪くはないんだけどさ、ちょっと違うんだよね」

 

「はァ!?」

 

「おれはさ、騎士じゃないよ。王様だよ」

 

「だからッ、ハァ!?!? 何を言うとる? 気狂いか!?」

 

「だからさ。うーん、あ、そうか! ゴメンゴメン。間違えてた」

 

 

騎士ではなく、王は自らを指し示し、高らかに叫ぶ。

その時、仮面についている文字型の装飾が光った。

読み方に間違いがなければ、それは『ラ』『イ』『ダー』の三文字。

 

 

「俺は常磐ソウゴ。最善最高の魔王になる男さ」

 

 

その時、黒彦は言いようの無い不快感と恐怖を感じた。

放置してはいけない。いずれにせよイレギュラー。ここで消しておいて損は無い。

彼は矛を出現させると、騎士――、ではなく王・ジオウを指し示す。

 

 

「放てェエエエエエエエエ!!」

 

 

モザイクを光らせる従者。

そこに混じって、謎の電子音が聞こえてきた。

 

 

『オーガ!』『カメンライド』

 

「うぬ!?」

 

『パラダイスロストォ』

 

 

気づけば、黒彦は檻の中に入れられていた。

 

 

(なんじゃ――……、これ)

 

 

先程まで虚心星原――、つまり見滝原の町にいたはずなのに。なぜか今、黒彦や一万の軍勢はスタジアムのような場所に入っている。

従者型も困惑しているのか。皆、動きを止めている。さらに気になる点があるとすれば、スタジアムのホールにて巨大なサイのような化け物がいる事だ。

"エラスモテリウムオルフェノク"は、明らかに敵意をむき出しにして黒彦へ近づいていく。

 

 

(なんじゃこの面妖な獣は……!!)

 

 

そこで黒彦は気づく。

白ばかりの観客席だからこそ気づいた。一点だけ色が違う。

それは、シアン。

 

 

「魂の宝石グリーフシードか。士もちょっかいをかけていたみたいだし、興味をそそられるね」

 

 

騎士ディエンドは、強化形態となりて黒彦を観察していた。

特別なことなどしていない。各々の力を使っただけだ。コンプリートフォームは劇場再現の力。それで黒彦や従者型を隔離したまでのこと。

その前は? それはジオウが未来を知っただけにしか過ぎない。

だからこそジオウは龍騎が黒彦のところに行く前にコンタクトを取った。

 

 

『こっちは危ないからさ。あっちから行った方がいいよ』

 

 

今頃龍騎達は少し遠回りをしているが、確実にデカログスに近づいていた。

 

 

「おい城戸。本当にあんな変なヤツ、信用して良かったのかよ」

 

 

ゾルダが訝しげに言い寄ってくるが、龍騎はしっかりと頷いた。

 

 

「ああ。前にも会った事がある気がするんだ……」

 

 

ゾルダは唸る。龍騎の『気がする』は馬鹿にできない。

思い返してみればかつてオーディンのタイムベントによる歴史修正にて真司はかなり長い間記憶を保持していた。

北岡もあの時、真司の言うことをまともに聞かなかったせいで浅倉を逃した手前、今回も無碍にはできなかったのだ。

 

 

「でも本当か? 本当の本当に本当か? あんなかっこ悪い仮面つけてるヤツなら一生忘れないだろ?」

 

「うん。そうなんだけど……。それにほら、なんとなく似てたじゃないか俺達」

 

「おい冗談だろ? このゾルダのデザインとあんな訳の分からない――」

 

「ほらセンセーうっさい! どっちにしろいいじゃん。もうすぐ着くんだし!」

 

 

こうして龍騎達が確実に目的地に近づいているころ、黒彦は大変に困惑していた。

 

 

「なんじゃ! なんなのじゃコレは!!」

 

 

エラスモテリウムを攻撃しようとしたが、そこでいつの間にか別の騎士が現れている事に気づいた。

 

 

『Exceed Charge』

 

 

騎士・オーガの伸ばした光の刃に見惚れていると、空中に飛び上がる騎士・ファイズブラスターを見つける。

 

 

「誰じゃ。麻呂は誰を狙えばいいのでおじゃる!?」

 

 

もはや何が何だかサッパリだ。

そうしているとファイズの紅い光を纏った蹴りが、オーガの光の刃に叩き込まれた。

 

 

「そもそもアレは誰でおじゃるか!?」

 

 

エネルギーとエネルギーのぶつかり合いが、激しい衝撃を発生させる。

黒彦は思わず叫んだ。凄まじい衝撃波。それはまるで紅い円だ。

ファイズのエネルギーがスタジアムを破壊し、紅い円は従者型を次々に巻き込んで消滅させていく。

 

 

「フフフフ」『アタックライド・インビジブル!』

 

 

消え去るディエンド。

一方で従者型は次々に連鎖爆発を起こしていき、一体が死ねば次は数十体が死ぬというスパイラルを巻き起こす。

その爆風にてスタジアムは崩壊。瓦礫の山が降り注ぎ、ファイズやオーガ、エラスモテリウムや従者型、なによりも黒彦を押しつぶしていく。

 

 

「ギアアァアァアアアア!!」

 

 

赤と金は尚も炸裂し、スタジアムは完全に崩れ去った。

しばし、沈黙。やがて一つのシルエットが瓦礫を掻き分けて這い出てきた。

 

 

「おのれぇえ! 何故じゃ! 何が起こっているのでおじゃるか!!」

 

 

下足之宮黒彦。その正体はイカ型のミラーモンスター・ウィスクラーケン。

周囲を見ても、従者型の気配はない。一万もの軍勢があの訳の分からない紅い光に消滅させられたというのか。

 

 

「へぇ。イカなんだね。イカしてるじゃん。ハハハ」

 

「貴様ァアア……!」

 

 

瓦礫の上。ウィスクラーケンはジオウを見つけ、怒りに震える。

 

 

「麻呂が入念に立てた計画が全ておじゃんでおじゃる!」

 

「おじゃんでおじゃる? いいね。面白い気がする」

 

「黙れェエ! 刺身にしてくれようぞ!!」

 

 

矛を回し、ウィスクラーケンは駆ける。

ジオウも剣を構えると真っ向から受け止めようと狙いを定めた。

しかしウィスクラーケンは正々堂々なんてつもりはない。口から黒い煙幕を発射すると、まずはジオウの視界を奪う。

 

 

「!」

 

 

黒煙から伸びた矛をかろうじて確認し、ジオウは剣でいなしていく。

しかしすぐに違和感。足にイカの足が絡みついている。ウィスクラーケンの頭部が伸びて、鞭になっているのだ。

動けない。ジオウは迫る矛を身に受け、火花を散らす。

 

 

「死ぬでおじゃる!」

 

 

突きが入った。うめき声をあげて後退していくジオウ。

しかし素早く腕から時計型のアイテムを取り出すと、起動させてベルトへ装填する。

 

 

2016(エグゼイド)

 

 

次に伸びてきた矛をジオウは回避せずに受けた。

もちろんただ受けたのではない。ギリギリ体に当たらないところ、ベルトだけに触れさせたのだ。それによりベルトのギミックが回転。

ジオウの背後に鎧が出現し、次々と装着されていく。

 

 

『アーマァータァイム!』【レベルアーップ!】『エグゼィィィッド!』

 

「なんじゃ!?」

 

 

黒煙を切り裂くシルエット。

ジオウは空に舞い上がると、そのまま両腕のハンマーを下にして落下する。

地面に当たると同時に衝撃波。煙を吹き飛ばし、さらに瓦礫とウィスクラーケンを空中へ巻き上げる。

 

 

「ノワァアアアア!!」

 

 

マヌケな声が聞こえて、ジオウはニヤリと笑った。

まだ終わらない。再び地面を蹴ってジャンプすると、巻き上がる瓦礫を踏み台にしてさらに跳んでいく。

空中では身動きがとれないため、ウィスクラーケンは手足をバタつかせるくらいしかできない。

そこへ入るハンマー。蹴り。ハンマー。

 

ジオウは瓦礫を使って標的の周囲を飛び回り、次々に攻撃を命中させていく。

さらに攻撃が当たるたび、カタカナで【ヒット!】の文字が浮かび上がり、それがウィスクラーケンの苛立ちを募らせる事となった。

 

 

「こんの下郎がァアア!!」

 

「おわ!」

 

 

ウィスクラーケンは頭のゲソを伸ばして、高速回転。しなる鞭が近づいてきたジオウに命中し、ジオウ共々墜落していく。

しかしジオウは気づいていた。殴っても墜落しても、ウィスクラーケンにダメージが入っているような感覚がない。

イカだからなのか、ヌルヌルしていて、殴ってもあまり手ごたえがない。ならばとジオウはベルトについている時計を交換。

 

 

『アーマァータァイム!』

 

「!?」

 

(ベスト)(マッチ)!】『ビッルッドォオオオオ!』

 

 

立ち上がったウィスクラーケンは、ジオウの姿が変わっている事に気づく。

ピンクだったカラーリングが、赤と青に。警戒していると、ジオウはその隙に勝利の法則を調べ始める。

数式は――、よく分からない。フィーリングと勘。

すると見つけた。『たぶんここが弱点』の場所を。

 

 

『フィニッシュタァーイム!』『ビルド!』『ボルテック! タァイムブレーック!』

 

 

バックルを回転させて飛び上がると、グラフがウィスクラーケンを捕まえる。

敵もすぐに白い拘束具をはずそうと試みるが、上手くはいかない。

そうしていると大量の『たぶんあってる数式』と共にジオウがドリルを突き出してきた。

 

 

「グアァアアアアアアアアアア!!」

 

 

らせん状のエネルギーが肉を削り、穴を開ける。

ウィスクラーケンは瘴気を撒き散らしながら吹き飛び、地面に倒れた。

 

 

「お、おのれッ、覚えておくでおじゃる! 魔獣は執念深い事をな!!」

 

 

ウィスクラーケンは大量の黒煙を撒き散らすと、そのまま消えていった。

ジオウはすぐに後を追うが、既に気配はない。

 

 

「ま。こんな所か」

 

 

するとノイズと共にディエンドが現れる。

 

 

「やあ、気が済んだかな王様くんは」

 

「うん。ありがと。じゃあ今回は戻ろうか」

 

 

灰色のオーロラが生まれ、ディエンドはその中に消えていく。

 

 

(ふふ。楽しみだね。ソウルジェム。グリーフシード。野汁。そしてアダムとイブ。面白そうなものは全て僕が頂くよ)

 

 

ジオウも続こうとして、ふと足を止めて振り返った。

 

 

「頑張ってね城戸真司。王様が目にかけたんだから、簡単に死んじゃだめだよ」

 

 

まあでも、たぶん大丈夫か。

よく分からないけど、いける気がする。

ジオウは小さく笑い、オーロラの中に消えていった。

 

 

 





ライアのブレイドフォームはオリジナルじゃなくて、宇宙船っていう雑誌でもしもライアサバイブと、斉藤雄一がガルドサンダーと契約していたらっていうコンセプトで作られた公式二次創作みたいなキャラクターです。
ライアサバイブもそれを元にしてます。フィギュアもあるみたいですね。

で、ブレイドフォームは、本来だと仮面ライダーブレイドっていうキャラになるんですけど、この作品ではライアがブレイドにフォームチェンジするっていう形になってます。
それでブレイドだと分かりにくいんで(0w0)
ブレイドフォームにしてます。



龍騎スピンオフの予告見ました。
いや本当に感動しましたね。まさか2019年にあんな龍騎を見れるとは。
手塚と芝浦がオリキャスなのもいいですよね。特に芝浦がまた見れるとはね。思ってなかったので。
あと、シザースとかベルデが他の変身者っていうのも、龍騎という作品コンセプトからしてみれば全然違和感がないので、そこらへんも期待ですよね(´・ω・)b


あとマギレコもつい先日の深夜にクリアしました。
いやー、良かったね本当。特に最終決戦の皆が出てくるところは感慨深いですよ。
結構ストーリーはかずみに近いかなって感じはしましたけど、特に英単語使う人がヤバイみたいな所とかまさになんだけど(´・ω・)

まあでも、かずみとはちょっと違う形のテーマだったんで、そこは面白かったですよね。


あと個人的にはかりんがいない所が実は結構好きなポイントなんですよね。
好きッっていうのは違うけれども、なんかこうライダーと被るっていうか。
あれってたぶんフルボイスが故に声優さんの都合でいなかったんでしょうけど、まさにカブトや電王を彷彿とさせるものがありますよね。
ここで出れなくなっちまうのかよ! どうすんだよ! みたいな苦労がねあったんじゃないかみたいな(´・ω・)

その結果生まれたのがカブトの展開であり、電王のコハナであり、そして使い魔と戦っていたら終わっていたかりんであったり。
まあ後でフォロー入るのかもしれないけど。
僕はかりんが好きなキャラなんで、一つかなりキャラ付けとかネタが生まれたなみたいな。

もちろんファンの中にはアリナパイセンとの絡みが見たかった人が多いんでしょうね。
正直、僕はどっちかっていうとパイセンとの組み合わせより、なぎたんとの組み合わせが好きなんで、そこまでショックじゃないけど。
まあもう声優さんも復帰してますし、後で何とかできるしね。
とにかく、いないっていうのは、これは裏の苦労が見える気がして好きなポイントなんですよ(´・ω・)


あと申し訳ない。
完全な自分語りの自慢しますけど、本当に僕2019年来てて、今回のガチャでアルまどと灯花ちゃん当たったんですよ。
まあもう皆さんも散々後書きとか、前書きでガチャ自慢してるヤツみてうるせぇどうでもいいんだよと思ってるかもしれないけれども、それでも嬉しいから書きたくなるよね
(´・ω・)

それで今から、すげぇ気持ち悪いこと書くけど。
そのガチャを終えて改めて思ったのは、もしもこの世界に魔法があるとすれば、その一つは絶対に釘宮ボイスだと思うんですよね。
なんかその今、全部エピローグまでやって、なんだかんだと今、自分の一番上にある感想って『灯花ちゃんが可愛い』なんだよな(´・ω・)

いや分かりますよ。
僕が気持ち悪いのは分かりますけど、なんか凄いやっぱそれを感じてて。
キャラデザ、釘宮さんの声、性格的な。凄いかみ合ってるなって。

好きってなると、一番はマミさんで、まどかとか海香とか、かりんなんですけど。
とんでもないキャラクターを生み出したなっていうのがあるんですよね。

いや分かりますよ。気持ち悪いのは。
でもお前らだって分かるだろ? なあ、おん。灯花の完成度凄まじいよな。


いや分かりますよ。気持ち悪いのは(´・ω・)
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