仮面ライダー龍騎&魔法少女まどか☆マギカ FOOLS,GAME 作:ホシボシ
聳え立つ塔、デカログス。そこからは大量の使い魔が放たれ、世界中に飛んでいく。
使い魔は『ほむら』の顔を模していた。あるのは右半分だけ。左半分はひし形を組み合わせ、鳥の翼と足を思わせるパーツがくっついている。
デカログスのモデルとなった糸車の魔女が生み出したものと違うのは、右半分の顔にメガネがあることだ。
この使い魔・『レイブン』は、足についている鋭利な爪で対象を引き裂くのだ。
はじめは数羽ほどが飛来する程度だったが、距離が近づくにつれて数も増えてくる。
辺り一面の黒。参加者は怯んだが、それでもスピードは緩めない。
「こんの――ッ!」
龍騎はハンドルを思い切り右へ切ってドリフト。
ライドシューターの車体が横をむいて、キャノピーが展開。龍騎が飛び出していく。
勢いに任せて地面を転がり、立ち上がった際にはソードベント。龍騎はドラグセイバーを振り回しながら前に出て行く。
龍舞斬、刃に炎が纏わりつき、剣を振るえば斬撃が発射されてレイブンを打ち落としていく。
しかし一度くらいの攻撃では消滅までいかない。
再び翼を広げて龍騎を狙うレイブンたち。
龍騎は一端回転切りで炎を撒き散らすと、眼前に迫った一体を回し蹴りで弾き飛ばし、デッキに手をかける。
「ハァア! ダァアアアアア!!」『ファイナルベント』
上空から火炎弾が落下して龍騎の背後に墜落する。
爆発が起こり、レイブンを吹き飛ばし、龍騎もまた爆風で空に舞い上がる。
そのまま空中で一回転。右足を突き出すと、既に背後にて大口を開けていたドラグレッダーが炎を発射した。
ドラゴンライダーキックがレイブンの群れを突き破り、次々に爆破させていく。
着地した龍騎は勢いに身を任せて地面を滑っていき、その頭上をまどかが翼を広げて飛行していた。
「はぁあああああああ!」
まどか体を捻り、高速回転。
光の翼で次々にレイブンを叩き落としていく。
さらにその間に二つのアクションが起こった。
一つは魔法。
まどかの周囲に迫るレイブンが球体状のバリアに閉じ込めれられていく。
加えて、まどかは弦を引き絞っていた。収束していく桃色の光。
指を離すと、無数の光の矢が発射されて丸いバリアに向かう。しかし矢はバリアを貫かない。矢先がバリアを押していき、無数の球体が一箇所に集まった。
それはまるでブドウのようだ。まどかは着地すると、ユニオンを使用して武器をドラグアローに持ち変える。
すぐに矢を発射し、結界ブドウの傍に突き刺す。
「真司さん!」
『ストライクベント』『ユニオン』『ストライクベント』
「オッケー! まどかちゃん!」
二人はドラグクローを構え、そして突き出した。
発射される炎はドラグアローの矢先にあるエネルギーに触れ、大爆発を巻き起こす。
それはブドウの中にいた全てのレイブンを消滅させ、二人はさらに走って戦闘を続ける。
それは他のメンバーも同じだ。なぎさは顔だけをシャルロッテに変えると、次々にレイブン達をクロッシュに閉じ込めて、お皿ごと口の中に入れる。
「もぐもぐ。うまうまです」
その脇を駆け抜けるさやか。
地面を蹴って跳躍。さらに魔法陣を足場にして、二段ジャンプ。上空高くに位置を取ると、マントを思い切り翻した。
するとマントから無数の剣が射出。刃が周囲に撒き散らされる。
しかもこの剣、回転しながら飛んでいき、次々にレイブンを切り裂いて消滅させた。
さやかは着地後、すぐに走り出した。無数の剣は全て地面に突き刺さっており、まるで剣の森だ。
さやかは走る中で適当に見つけた一本を抜き取ると、それを振るってレイブンの爪を弾いた。
さらに近くにあった一本を抜き取ると、二刀流にしてレイブンを切り裂いていく。
跳び、斬り、そしてターン。両手に持っていた剣を投げて二体のレイブンに突き刺した。
手ぶらになったさやかだが、体術もある程度はできる。迫る爪を交わし、蹴りをお見舞いすると、反動で後ろへ跳躍。
着地したのは刺さっていた剣の柄頭だ。さやかはそれを蹴ると、跳び回し蹴りでレイブンを散らしていく。着地したのも、剣の前。
さやかはそれを抜き取ると、迫るレイブンに立ち向かった。
しかし、限界がある。斬られても新しいレイブンがさやかの周りに迫っていく。
遂に、さやかの背中に爪が入った。
呻き、よろけた彼女は、そのまま地面に倒れてしまう。
こうなってはもう終わりだ。無数のレイブンが一気にさやかへ群がり、爪を突き立てていく。肉を裂く音が聞こえ、大量の血が飛び散った。
しかし違和感。飛び散った血から、『赤』が粒子化して消えた。
残ったのは透明な液体、するとそれが一点に収束して、巨大なシルエットを形作った。
「ォオオオオオオオオオ!」
血液を媒介にしてオクタヴィアが召喚される。
エネルギーの飛沫がレイブンを吹き飛ばし、その隙を狙ってオクタヴィアが大剣を振るった。
一瞬で両断された無数のレイブン。オクタヴィアの真下には、丁度立ち上がったさやかが血を拭っていた。
とはいえ、すぐに血は消える。彼女の固有魔法は自己回復。攻撃を受ければ血でオクタヴィアをつくり、自身はすぐに回復できる。
これが円環の使者になった美樹さやかの強みなのである。
オクタヴィアはさやかの意思に従い、忠実に動く。魔女はさやかを掴んで投げ飛ばし、ゾルダの傍に着地させた。
「先生!」
「ああ! 一掃するぞ!」『ユニオン』『ファイナルベント』
マグナギガ、ゾルダ、さやかの並びになる。
さやかがゾルダの背中に両手を押し付けると、マグナギガの前方に青い魔法陣が広がった。
エンドレスワールド、弾丸が魔法陣を通過すると、剣に変わり、無数の刃がレイブンたちに突き刺さっていく。
さらにマグナギガはゆっくりと旋回。範囲はさらに増していく。
「わわわ! 裕くん! あぶないのですよ!」
なぎさは放心しているように立っていたサイコローグの手を引くと、シャルロッテに変身して飛んでいく。
背中に乗せられたサイコローグはそこでハッとしたように意識を取り戻した。
「え? あれ? ぼく、なんで……」
「どうしたんですか?」
「いやッ、今……!」
「???」
なぎさは詳細を求めようとしたが、それよりも早く悲鳴が出てきた。
突き刺さった剣が爆発を起こしたのだ。あれだけいたレイブンも、あっという間に塵になっていく。
さらに追撃。仁美がコネクトで呼び出したエリザが必殺技を使用したのだ。
デア・ドラッヘ・リンドヴルム。それは、竜の雷火と名乗るに相応しい威力であった。
巨大化した砲身から発射されたのは高威力のレーザー。それはレイブンを蒸発させるように消滅させ、デカログスにも直撃してみせる。
デカログスの悲鳴に混じる、エリザの笑い声。
「にょわほほほ。いいですの仁美。これが圧倒的な実力というものですわ!」
「お見事ですわ先生。勉強になります」
エリザは満足したのか、頷くと笑うのをやめる。
レイブンは相当な数がいたと思われたが、今はもう静けさすら感じさせるフィールド。
だが、だからこそ今は『音』がより鋭敏に感じられる。ふいにザッと足音がして、一同はすぐにその方向に注目した。
レイブンとは違うタイプの使い魔か、はたまた魔獣か?
「………」
立っていたのは両手に持った剣を掲げていたアビスであった。
急いで走ってきたのか、ゼェゼェと息が荒い。
「………」
聞こえるのはハァハァと荒げる呼吸音だけ。アビスはゆっくりと周りを見回し、やがて静かに剣を下ろした。
「まあ、あの……。ど、どうも」
「おバカ者!!」
「うげぇえ!」
バキューンと音がしてエリザの銃剣が火を噴いた。
肩から火花が上がり、アビスは思い切りしりもちをつく。
「う、撃つなんて酷いですよ先生ッ!」
「お黙りなさい! タイミングッ! どのタイミングで駆けつけてますの! もっと早く来い! 危ないところを助けろ! それが騎士というものでしょうに!」
「いやッ、だって! 先生が全部倒しちゃうから!」
「それは当然ですわ! 何故ならばわたくしは神聖ローマ皇帝ジギスムントの偉大なる妃、バルバラ・ツェリスカが娘! ドラゴン騎士団員がひとりッ、エリザ・ツェ――」
シュン! と音がして、エリザが消滅する。
『仁美ィイイイイイイイ! タイミング! わざとですわね! 師匠を弄るとは良い度胸で――』
ソウルジェムから怒号が聞こえてきたが、それもシャットアウト。
「タイミングが悪いのは私もですので。気になさらないで」
仁美は意地悪な笑みを浮かべると、アビスに手を差し伸べた。
「おかえりなさい中沢くん。よく、ご無事で」
「あッ、う、うん! た、ただいま……!」
アビスは変身を解除すると、恥ずかしそうにしながらも笑みを浮かべて手を取った。
「なかざわぁ! 心配しなのですよ!」
「なぎさちゃんも、ありがとう!」
「お腹すいてないですか? チーズを食べるのです」
なぎさは仁美におぶさると、どこからかベビーチーズを取り出し、銀紙を剥くと、中沢のお口に押し当てていく。
「いやッ、なぎさちゃ! 別に今はいら――ッ、あ、すごいっ、すごい押し付けてくる。う、うぅうむ」
「おいしいですか? もう一個食べるのです!」
「い、いやッ、一個でいいよ! あッ、一個で良いって言ったのに凄い入れてくる! うむッ、うぐ! な、なぎさちゃん!? もういいよ! もういら――、うぐっ! ちょ、ちょっと待って! もう口の中チーズだらけだから! いやッ、二個一気に入れないで! ひょ、ひょっと! もうおくひにはいはは――ッッ!!」
口の中がチーズでパンパンになった中沢は放っておいて、一同はデカログスを目指すことに。
レイブンは使い魔だ。今は落ち着いたが、またすぐに生み出される可能性が高い。
やはり本体を叩かなければ。一同は再びライドシューターを走らせるが、ここでなぎさが深刻な表情を浮かべる。
「忘れてました。あのデカログスが糸車の魔女のままなら、糸には絶対に気をつけてください! 絡み付いたら即死します!」
「何! それは大変だな!」
そういうとゾルダはハンドルを切って急旋回。
デカログスから離れようとする。しかし車体上部にいたさやかがキャノピーの中に入って操縦席にもぐりこむと、ハンドルを掴んでそれを阻止した。
「やめろクソガキ! 俺に触るな! 撃つぞ」
「撃てよ! ああ撃てばいいさ! あたしらはパートナー! 傷つけあえない!」
「聞こえるかジュゥべえ! 聞こえてるんだろ! 今すぐそのルールを廃止してくれ! 金ならいくらでもくれてやる!」
「諦めろ悪徳弁護士! ほら行くよ!」
ゾルダペアがギャーギャー言い合いながら蛇行運転を繰り返す。
龍騎は仮面の中で汗を浮かべるが、それは何もゾルダに呆れるだけじゃない。
確かにそれは恐ろしい情報であった。なぎさの情報では、騎士は鎧があるぶん、分からないが、少なくとも魔法少女に関してはほぼ一発でアウトだろうと。
だがしかし気になるのは、その糸が全てデカログス上部にいる『ホムリリー』を縛り上げるために使われている事だ。
『あの魔女を殺してるのかな?』
サイコローグがポツリと呟いた。
何気ない一言だったが、なぎさは真剣な表情で頷く。
「裕くんの言うとおりかもしれません。ココはほむらの心の中でもあります。あのデカログスは――」
まどかへの歪んだ愛の結晶が、ホムリリーを無限に縛り、殺していく。
「現代アートみたいなもん?」
ゾルダがそう言う。
間違いではない。焔からのメッセージのようなものだ。皮肉と、愛憎と、絶望と、僅かな希望が込められている。
だがその多くは苦しみ。デカログスは悲鳴のような声を上げると、上部にある『輪』から巨大なレーザーを発射する。
「わたしは難しいことは分からないけど――」
強力な一撃は――、強力な盾が受け止めた。
まどかはアライブに変身。リバースレイエルにてレーザーを反射すると、デカログスに直撃させる。
「ほむらちゃんを苦しめてるなら、壊すよ!」
神弓から、巨大な光の矢が発射された。
一直線に飛んでいったそれは、塔の部分に直撃すると、一撃で粉砕してみせる。
「「マジか!」」
ゾルダとさやかの声が重なった。
塔が折れ、デカログスが崩壊していく。それを見て参加者達は皆、声を失った。
それだけ鹿目まどかの力が強いのだ。だがしかし、なぎさは訝しげな表情を浮かべていた。
いくら何でも――、簡単すぎる。糸が散り、塔が崩れる中で、上部にいたホムリリーが着地した。
なぎさは唸る。デカログスが、まどかへの歪んだ愛情や崇拝心の表れであるとしたならば、それをまどか自身に否定させる事こそが、焔の狙いではないのか?
「フハハハハハハ!!」
「!」
笑い声がした。上を見ると、巨大な『頭』があった。
「ゼノバイター!」
ゼノバイター・リボーン。ゼノバイターの上半身、下半身は巨大化したゼノバイターの頭部になっている。
他のリボーン態もそうだが、力が強すぎる為に時間と共に自己崩壊は免れない。
ゼノバイターは内包している瘴気が他よりも多いのか。自己崩壊は既にかなり進んでいた。
腕が無くなり、巨大化した頭部も部分部分が剥がれ落ちている。
なによりも『顎』が既に無くなっていた。
欲張った結果と言えばそうだが、ゼノバイターも無策ではない。これはわざとなのだ。
「最高のタイミングだぜェエ! ハハハハ! ありがとよ鹿目まどかァ!!」
「えッ?」
ゼノバイターが着地したのは、ホムリリーの頭部であった。
それは――、凄く丁度いい。なぜならばホムリリーは顎から上がない。そこはイチリンソウの花畑。
一方でゼノバイターは顎から下がない。ならばその二つが組み合わされるのは、非常に合理的だ。
「これが虚心星原の核の核! 最後のピース!!」
焔も所詮、暁美である。暁美であるという事は、鹿目からは逃げられない。
しかし焔は暁美でなくなりたかった。その為に、鹿目まどかを全て抹消しなければならない。
まどかへの歪んだ感情を、まどか自身が否定すれば、その時、焔は個になれる――、と。
デカログスは、鹿目が焔を縛るものであり、同時に解き放つものだ。死の糸は千切れ、ホムリリーは地に降り立つ。
このホムリリーこそ、魔女であって魔女に非ず。
神の力なのだ。
「まあ壊すのはフールでも良かったんだけどよ。オメェがやってくれたなら、それはそれでオッケーよ!」
ゼノバイター下半身部分の巨大な顔。つまりホムリリーと合体したフェイスが変化していく。
ゼノバイターから女性を模したものへ。二本の触覚も、増殖し、それが髪の毛になる。
まるでそれはギリシャ彫刻のようなものだった。青い、女性の顔。神々しく、まさにそれは『神』のようだ。
むき出しになった肋骨にも肉が現れ、装甲が現れる。
服のデザインも変更され、青と黒を基調としたものへ。
「ワリィな焔ちゃんよ! パクらせてもらうわ! テメェの
ゼノバイターの上半身が、ホムリリーの顔に沈んでいく。
同時に崩れ落ちた塔の中から、上の部分が浮かび上がり、それがホムリリーの頭に被さった。
それは冠、それはヘッドベール。
「究極邪神・ディザスター! 俺様はもはやッ、魔獣を超越した!」
ディザスターの眉間内でゼノバイターがはしゃいでいた。
虚心星原においてのホムリリー。まどかから奪った円環の理の力。
神の概念をハッキングしたゼノバイターは、おしげも無くその力を使っていく。
ディザスターが腕をあげれば、龍騎達がいるだろう場所まわりが次々に爆発していく。
悲鳴が聞こえた。それだけじゃない。嵐が巻き起こり、落雷が落ち、参加者達は火花の中に消えていった。
「終わりにしようぜ! 鹿目ェ! テメェを消して、中にある神のエネルギーを全部俺様が奪ってやるッ!」
ディザスターが両手を挙げると、凄まじい闇が発生して、まどかの視界がブラックアウトした。
ハッと、意識を取り戻すと、そこはもはや銀河の中。
アライブも解除されており、虹色のオーロラが見える世界に、たった一人。
「ここは――ッ! きゃああ!」
衝撃を感じた。まどかは凄まじい力を感じて、次の瞬間には真下に浮いていた惑星に叩き落される。
何も無い空間。荒野のような場所で、まどかはすぐに体を起こした。
痛い。血が出ている。そしてこの場所は――、そうだ。ほむらと別れた、あの宇宙。
「この虚心星原は焔の中であり、暁美ほむらの中とも言える」
黒い翼を広げて、フールがゆっくりと降りてきた。
「この世界を構成するのは神の概念が持つ力――、悪魔の力だよね。それが分かりやすく、デカログスという邪神になってた」
着地したフールはジットリとまどかを睨む。
「悪魔の力っていうのは愛。愛っていうのは貴方への。でも焔はそれが嫌だから、クソ面倒なことばっかりして自分だけを確立しようとした。私、よく知らないけど、愛と憎さって近いんでしょ? アイツはだから縛られてた」
でもそれをまどか自身が壊したことで、焔の望みが解き放たれる。
望みどおりである個が生まれようとしたが、それをゼノバイターが奪ったのだ。
「いずれにせよ、円環の理の、神の力が詰まった肉体はコチラのもの。まだ慣れてないだろうけど、いずれは完全に支配できる」
フールは弓を出すと、弦を引いて次々に矢を発射する。
まどかはすぐに手を前に出して防御を行おうとするが、そこで異変に気づく。
盾が、出ない。そうしていると矢はまどかへ着弾していき、苦痛の声が聞こえてくる。
「あッ、うぐ!」
倒れ、転がるまどか。
また次の矢が来た。体を起こして結界を出そうとするが、かろうじて張られたバリアは脆いもの。
矢は簡単にそれを突き破ってまどかへ直撃する。
「きゃああ!」
「フフフ、不思議か? 鹿目まどか」
倒れたまどか。後方に現れたのはハサビーだ。腕を組みながら歩き、その途中でバズスティンガー・ワスプへと変身する。
「お前には既に私の毒針が打ち込んである。守護魔法が封じられれば、お前など脅威ではないんだ」
ワスプは蜂型の銃を取り出した。
スティングシューター。引き金を引くと、蜂の腹部分を模した銃口から針型のエネルギー弾が発射されていった。
まどかはすぐに腕を前に出す。守護魔法は封じられたが、魔力を壁にする基本的な動きはできるようだ。
とはいえ、そんなもので魔獣の攻撃が防げるわけが無い。ドーム型の結界だったが、まずは空中に浮遊していたナイトメアのミサイルが降り注ぎ、全壊。
針がまどかに刺さっていき、爆発。さらによろけた所にフールの矢が直撃した。
「うぁぁあ゛ッッ!!」
煙をあげ、血を流しながら倒れる。
それを見てナイトメアがゲラゲラと笑い始めた。
「ゲビビババ! オワリ! オワリ! クソカスまどかの死でございマス!!」
「ハハハハ! この隔離空間では他の誰も助けはこないぞ!」
「そーゆーことぉ。だからさぁ」
フールが弦を引くと、黒い光が収束していく。
「ばいばーい。鹿目まどかァア!!」
指を離すと、黒い矢がまどかに向けて放たれた。
イチリンソウの花が空に舞い上がった。
大切な何かが離れていく気がして、焔は腕を伸ばした。
でもそれを掴んでも……、結局意味のないことだ。だから彼女は手を止めた。そしてゆっくりと歩いてくるライアを見つめた。
「……多くの人間を愛した。今は他人で、それほどの人間も」
全ての記憶を思い出したとて、それは歩んできた道を思い出しただけにしか過ぎない。
過去は過去。今は今。昔の強い想いが自分を縛り、行く手を阻むなら――。今、ライアがやらねばならない事はそれらを全て切り裂いて、前に進む事だ。
確かに、胸は痛む。確かに――、愛しさはすぐに思い出せる。
それでも、彼女は『過去』だ。過ぎ去った運命の人なのだ。
小指に結ばれていた赤い糸は、今や足首に絡みついた。
「私を殺すの?」
改めて、焔は自分の姿を手塚に見せ付ける。
彼の為に年齢を変えた。彼の為に髪を切った。彼の為に、彼の為に、彼の為に――ッ!
「ああ」
ライアは淡々と答え、デッキに手をかける。
「最低」
「……別に。普通のことさ」
ライアはカードを抜いて、指で挟んだまま上に投げた。
回転しながら空に舞い上がるカード。ライアは持っていたエビルブレードを振り上げる。
一瞬だった。刃がカードを切断し、発動されたのは。
『ブラストベント』
エビルブレードの刃に赤紫の電撃が纏わりつく。武器を強化する『サンダーブレード』だ。
ライアは――、走り出した。焔は歯を食いしばって後退していく。その中で、羽ばたく黒い翼。
炎のつぶてが大量に飛来し、ライアに向かっていく。
ライアは冷静だった。迫る炎を見て、呼吸を整える。
止まって見えるようだ。フォームチェンジによる感知能力の変化。ライアは剣を振るい、次々に迫る火炎を切り裂いた。
刃も特殊なものらしい。エビルブレードは炎や雷など、『斬る』という概念が通用しない存在も切断することができる。
「ふっざけんなァアア!!」
焔は右手に炎を纏わせ、ボディーブローを叩き込む。
それはライアのわき腹に入ると、そのまま貫通してみせた。
『トリックベント』
だがドロンと音。ほむらが貫いていたのは、ライアにみせかけた『丸太』だ。
本体は煙と共に焔の背後に現れた。基本形態との違いは、ダメージ自体は受けるというものだ。ライアは激しい痛みを感じながらも、刃を振るった。
悲鳴が聞こえる。赤い血が飛び散った。
ライアは踏み込む。
焔が止めてと叫んだが、それでも全ての力を込めて刃を突き出した。
一瞬、間。刃が焔を貫いたと思ったが、今度は焔が弾けとんだ。
無数の黒。大量のカラスとなって、彼女は空を飛んでいく。
『シュートベント』
刃の周りに無数のクナイが出現する。
剣先を焔の方へ向けると、それらが一勢に発射されて追尾。次々にカラスに直撃して、爆散させていく。
それでも発射したのが十五発程度。一方でカラスは千羽ほど。全てを破壊するのは不可能だ。
そうしている間にカラスが一点に集中。人型のシルエットになり、焔に戻る。
「なんでッ、なんでよ! なんであの時、ウソなんてついたの!」
弓から発射される闇の矢。
ライアのシュートベントはまだ継続中らしい。掌を翳すと、巨大な手裏剣が生まれる。
ライアはそれを投げた。矢と手裏剣は交差し、お互いに直撃する。
「あの時ッ、手塚くんが私を好きだって言ってくれれば! それで良かったのに! 私の中にいた馬鹿なほむらを完全に消し去る理由が生まれたのに! そしたら私、あの世界で貴方といつまでも一緒にいられたのよ!?」
焔は泣きながら矢を連射する。
ライアは剣を振るい、それを切り裂いていくが、今回は矢の勢いが強い。
次々と迫る弾丸を防ぎきれず、ライアは地面を転がり、煙をあげる。
「いつまでも? 無理さ。魔獣がいたから、俺達はきっと……!」
「でもッ、それでも! あの時は分からなかったでしょ! 私があの時、貴方とキスをした時ッ! 愛がないと言ったのは傷つきたくなかったからよ! あれ以上、傷を受け入れる事のできない私を貴方は絶対に分かっていたでしょう!? なのに貴方は引き金を引いた! 自分で自分を殺したの!」
ライアは立ち上がり、矢を受けながらカードを抜いた。
『スラッシュベント』
剣を一度、鞘に収める。
鞘は基本的に背中に固定されているものの、分離させる事はできる。
ライアは鞘を左手に持ち、剣の柄を右手に持った。そして腰を落とす。
矢を受ける。痛みはある。だが基本フォームよりは防御力が上昇しているのを感じる。
冷静に、静寂を求めた。
心の中に浮かぶのは波一つ存在しない水面。ライアは呼吸を整える。冷たさが痛みを忘れさせた。
防御力の上昇。ライアはさらに精神を集中させる。
しかし水面のすぐ下では、激しい感情が渦を巻いていた。
「そんなに私の事が嫌いだったの!?」
焔が、力を込めて矢を撃った。
ライアは感情を込めて刃を抜いた。
「違う」
焔は目を見開く。抜刀が見えなかった。
気づけばライアは剣を振り終えていたし、気づけば焔の胴に赤い線が入っていた。
「俺はお前を愛していたんだ」
焔の胴体から血が噴き出た。撃った矢は全て真っ二つになっていた。
焔はゆっくりと地面に落ちていく。ふと気づけば、ライアが上に跳んでいた。
剣技・サイレントムーン。刃の軌跡は三日月を描き、焔の黒い翼が傷つけられ、大量の羽が舞う。
切断とは行かなかったが、墜落した焔は悲鳴をあげて転がりまわった。
「………」
それを見て、ライアは強く柄を握り締める。
抑えていた感情が――、爆発しそうだった。やめてくれと叫びたかった。それは卑怯だと叫びたかった。
「焔――ッ! いいかッ? 俺があの時、嘘をついたのは! 笑っていてほしかったかからだ!」
「ウァアァアアアッ! あぐぁあぁ!」
「鹿目まどかを好きでいてほしかった! 鹿目が好きなお前が好きだった! だって……、だって、友達といる時が楽しいのは俺にも分かる。でもお前は少し歪んでいると思ったからッ、それで……ッ、他のやつらとも仲良くやれたら、それはきっとお前にとってもっと豊かな未来になった筈だろ!」
「違う違う違う!! 少なくともあの時の私は貴方が良かった! もうまどかなんていらなかった! 他のほむらは嫌がるだろうけど! 私は貴方が良かったの! どうしてよ! なんでよ! 馬鹿みたいにカッコつけんな! どうして、どうして私を抱きしめたままで――ッ! あぁぁああ! クソクソクソ! 痛い痛い痛い゛ィイ!」
おかしなジェスチャーだった。転がりまわる焔は、傷ついた背中や胴ではなく、ずっと胸を押さえていた。
ライアはそれを見て、つくづくと繰り返す自分の愚かさを思い知った。
手塚海之は多くの時間軸で生きる理由を『他者』にした。
雄一の正しさを証明するために戦いを止めようとしたり、恵里の為に戦おうとしたり、暁美ほむらを守ることを存在の理由にしたり。
それは結局、他者への依存だ。結局ライアもまた暁美ほむらと同じようなものである。
「それで良かったでしょ! なんで今更ッ自分なんて! 出すのよ!!」
焔は立ち上がり、両手に出現させたマシンガンをぶっ放した。
無数の弾丸がライアに直撃していき、彼も悲鳴を上げる。
そして弾丸が止んだ。後退していくライア。至る所に銃弾を受けたというのに、彼はずっと胸を押さえていた。
そこが一番、痛い。
「俺だって傷つきたくなかったんだ! だって……、怖いんだ。耐えられない!」
「だったら!」
「でも、もう逃げられない。逃げたくないんだ! 結局また雄一が死んだ! 俺のせいだ! なのに俺はそこから逃げて、暁美に押し付けた!」
雄一という人間は歪ながらも生きていた。本気で戦えば瘴気が流れ出て良心が戻ってくるかもしれなかった。
でもそういう事を全て投げて、パートナーに『親友の殺害』を依頼したのだ。
流石にもう逃げられない。ライアはをそれを理解している。
「お前なら分かるだろ! なんだよ! まだ幸せになる事が怖いのか! まだ向き合う事から逃げているのか?」
「違う!」
「ならいいだろ! なぜ暁美と融合しない! 今のアイツなら絶対にお前を尊重してくれる! 魔法で外にも出られる! 俺とも一緒にいられるんだぞ!!」
情けなく、声が上ずった。
だって仕方ない。悲しかったし、意味が分からなかった。
そもそも何で自分達が戦っているのかも理解できない。
「俺はお前を、殺したくないのに!!」
馬鹿みたいな声だった。焔は泣いていた。
「貴方ならッ、救ってくれると思ってたのに!」
焔は剣を生み出した。そして走る。
ライアも走らなければならなかった。互いに振るった刃。焔は上から下へ。ライアは下から上へ。
刃がぶつかり合い、硬直が生まれる。焔の方が早かった。肘でライアの仮面を打つ。
よろけるライア。焔は踏み込み、また斜め上から斜め下へ。それが終わればまた剣を振り上げて上から下へ。それを繰り返す。
火花が散る。後退していくライアを逃さず、焔は右から左へ真っ直ぐに一閃を刻み込んだ。勢いでライアは回転する。だがそこで踏み込み、回転斬りで焔を狙った。
「私は傲慢なの! ずっと見下されてて、だから逆にプライドが高くなっちゃったの! 一番じゃないと嫌なの!」
焔は一撃目は受け止めたが、ライアはそこですぐに剣を振るいあげるように追撃を打ち込む。
焔は勢いづいた剣に引っ張られるように腕を上げてしまい、隙を晒した。
まずはライアが掌底を打ち込み、電撃を流し込む。帯電しながらフラつく焔へ、ライアはさらに払いを仕掛ける。
「一つになったらキスをするときは結局アイツの唇じゃない! アイツの髪も嫌! 私本当はもっと明るい色がいい! アイツの声もやだ! 暁美ほむらの概念下なんてやだよ! 嫉妬しちゃう! 嫉妬が止まらない! でもそんな事にいちいち憤怒してる自分も嫌だ! やだやだ!」
斬り合い、斬られ、火花が、血が飛び散る。
斬り抜き、回し、踏み込み、潜り抜け、刃が交差する。そしてついに焔の持っていた剣が吹き飛ばされた。
何も持っていない。ライアは大きく飛び上がり、剣を振り上げて落下する。
「本当はね、あの後もう一度遊園地にいくつもりだったの! 知ってる? あそこのレストランはビッフェなの! 世界には私とあなただけ、誰にも邪魔されずッ、好きなものを好きなだけ食べようって思ってた!」
しかし焔の横に化け物が現れると、次の瞬間、焔の手には巨大な鎌が握られていた。
それを使って焔はライアの刃を受け止める。さらに別の化け物が現れると、焔が影に沈んでしまう。
「私ね、いっぱい食べるつもりだったの……」
下から声がする。ライアは首を動かすが、見えるのは淡く光るイチリンソウだけ。
「馬鹿みたいに食べて、呆れたように貴方は笑って……! でもきっと、私が暴食の限りをつくしてブクブクになっても、貴方はきっと私を見捨てないでくれたでしょう? 傍に――、いれてくれたんでしょう?」
「ああ……、きっと! そうだった!」
下から出るものばかりと思っていたが、正解は空であった。
化け物がブラックホールを生み出し、そこから焔が飛び出してくる。
「新しい世界ができたら、みんなが生き返るの」
焔はライアの首を掴む。
そして背後に化け物が生まれると、凄まじい電流が流し込まれた。
これは、この化け物は――。
悪魔。
「でも彼女達は私達を覚えていない。ふたりだけ。でもふたりだけでも良かった……。私はまどかを忘れ、貴方は雄一を忘れ、二人で静かなところで暮らせば良かった! 甘い、怠惰を過ごせばよかったじゃない……!」
焔が吹き飛ぶ。アドベントは使っていないが、エビルダイバーが助けに来てくれた。
それだけじゃない。空からはエビルサンダーが飛来、落雷を落とし、焔を攻撃する。
するとまた闇が迸り、焔を守るように悪魔が現れる。黒い翼を広げた異形は、闇の衝撃波を発生させてエビルダイバーを吹き飛ばす。
焔は悪魔を消して、フラつく足で痛みを放つ腕や胸を押さえる。
「い、色があってもいいわ。毎日おはようのキスをして、夜には二人抱き合うの……。最初は不慣れかもしれないけど、貴方のためなら勉強もするわ。甘美な色欲も、やがては全て愛になるもん……! きっと、きっと――ッ!」
焔は歩き、腕を伸ばした。再びライアの首を掴もうと。
しかしライアは回し蹴りで、その腕を弾くと、そのまま全力を込めてエビルブレードを突き出した。
「あ」
刃が、焔の腹を貫いた。
剣を引き抜くと、焔は涙を流して後ずさる。そしてイチリンソウの上に膝を置いて、ワアワアと泣き出した。
「うぇえええええん! ひぐっ! うあぁッ! あぁぁあぁああ!!」
強欲な女がボロボロと泣いていた。
でもそれくらい許して欲しかった。今まで沢山諦めて、沢山捨ててきたのだから、せめて最期くらいは本当に欲しいものを一つ取ってやりたかった。
でも焔もつくづく思い知らされる。話していたのは全て『かもしれない』事だ。そもそもはじめからか? 手塚と自分が語る愛は全て夢のような物語でしかなかった。
「ぅぅぅうぁあああぁあ!」
損得だとか、理論とか効率だとか、論理的だとか、合理主義だとか。
それを超越する愛が欲しかった。愛を与えたかった。
それが手塚だったら良いと――、この女は『とある時間軸』で思った。
それはたぶん何億分の一の確立だったのかもしれない。しかし確かに焔は、まどかよりも手塚を選んだのだ。
「――ッッ!!」
ライアは剣を落とした。
胸に激しい激痛を覚え、思わず剣を落とした。
何をしているのか。頭がおかしくなりそうだった。いや、既におかしいのか。何をどうしたら愛した人と殺しあえるのか。
本音を言えばライアは焔が分かってくれると思っていた。
それほどまで彼女にとって暁美と同じになる事が嫌悪するものとは思わなかった。むろん理由は複数ある。
例えば、サバイブを封印したのだって、LIAR・HEARTSの手塚になるためだ。あの時の彼はまだサバイブに覚醒していなかった。
あの時の自分に近づくことで、彼女と分かり合えると思っていた。
だが違った。それは間違いだった。
そうするべきでは無かった。所詮、歪んだ愛だった。
しかしそれでもお互いにとっては……。
それは――、いけない。ブレイドフォームになると言うことは、それらを一切拒み、拒絶し、今の自分として彼女を殺すという意思の表れだ。
だというのにライアは剣を落としてしまった。内なる自分が――、あの時の手塚が出てきてしまう。
愛する人を斬るというのは、どうにも具合が悪くなる。
ライアはへたり込む焔の前に膝をついた。
「もうやめよう。俺には……、やっぱり耐えられないみたいだ」
「終わりにしてくれるの?」
焔は期待の眼差しでライアを見つめ、そして悪魔を生み出した。
植物のような悪魔だった。花の王冠を被ったそれは、蔦をライアの装甲に突き刺す。中身を吸収しようとしているのだ。
「――、どうして?」
ライアが掠れた声で呟く。
焔は悲しげな表情で笑っていた。呼吸を荒げ、涙を浮かべ、彼女は震える唇で呟いた。
「お願いだから傍にいて。一緒に――、死んでほしいの」
それが嫌なら。
(殺してください)
ライアは首をガクリと落とした。最期の嘘をつかれた気がした。
だからガードベント。ショックウェーブ、バイザーを介していなくとも使えるものだ。赤紫の電撃波がライアを中心に発生し、焔を吹き飛ばした。
イチリンソウと黒い羽がヒラヒラ舞い落ちていく。
焔は吹き飛ばされ、すぐに立ち上がった。全ての力を込めて闇の剣を生み出す。
理由は一つではない。
焔はライアを諦めてはいない。
彼が好きだから、彼を愛しているから――……。
だから、殺されても。それは当然の事であると。
「………」
歪な後押し。
ライアは走った。走り、落ちている剣を拾い上げた。
イチリンソウを踏みしめる。振り返り、カードを引き抜いた。
「ァアアアアアアアアアアアアア!!」
焦燥に叫ぶ。ライアはカードを空に弾いた。
ヒラリヒラリと舞い落ちる黒い羽、イチリンソウの花びら。そして一枚のカード。
星が瞬く、その中で。エビルブレードの刃が、その全てを切り裂いた。
『ファイナルベント』
いや、違うのか。
そうか。大切な事を忘れていた。
嘘も、真実も、そこにはあったのか。
「ココで終わりだ! 焔ァアッ!!」
ライアが剣を天に掲げると、空が砕け散った。
そこから現れるのはエビルサンダー。飛翔する中で、雷鳥に変わる。
加速するサンダーバード。それはライアに直撃し、一つになる。
地面を蹴ったライア。そのスピードはまさに電光石火。それを見て焔は目を細めた。
泣き崩れたのは本当だった。本当に悲しいから、本気で泣いた。そしたらライアが来てくれた。
本当に嬉しかったから、どうしても嘘をつかなければならなかった。
彼を愛しているから、背中を押すべきだから――。
自分の願いに嘘をつくのだ。
「!」
焔は剣を振った。帯電する刃に撃ちつけ、そして弾かれる。
焔は腕を伸ばした。手刀でライアの喉を潰すためだ。しかしそれよりも早く、エビルブードがみぞおちに突き刺さった。
「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!」
ライアは地面を蹴って、飛び上がる。
切り上げ。刺さった焔は共に空へ舞い上がる。
剣に纏わりついた電撃が溢れ、再び鳥の形になる。巨大なサンダーバードは嘴で焔を捕らえたまま、昇りきる。
ライアは叫んだ。叫び、
これが、ファイナルベント・ライトニングスラッシュ。
「………」
今は何を言っても薄っぺらくなるような気がしたので、二人は何も喋らなかった。
何を言ってもウソになると思ったから、焔は優しくライアの頬を撫でた。
仮面でよかった。本物だったら、耐えられない。
一方でライアは力を込め続けた。剣先は焔の体の中央、心臓をしっかりと捉えていた。
ライアは焔の手を取ってはならない。彼女を殺す為に、ひたすら剣を、深く、深く。
そうしていると、焔は全身の感覚が鈍くなっていく事に気づいた。
眠い。寒い。怖い。でも言葉は発しない。腕の力が無くなってきた。ライアの頬に触れていた手がダラリと落ちる。
落ちる。筈だった。
「……!」
その手を、『暁美ほむら』が確かに掴んでいた。
焔の存在が消えかけている事で、ほむら=焔がより明確になっているのだ。焔はそれが不快で、悔しくて、ほむらを吹き飛ばそうとした。
しかしそんな元気もない。だから諦めた。皮肉にもほむらが手を包み込むように握り締めてくれたので、温かかった。涙が出てきた。
「どうして?」
焔が問いかけると、ほむらは頷いた。
「貴女は私の事が大嫌いでしょうけど、私は違うからッ」
「……まどかを助けなくちゃいけないのか。そう思ってしまった瞬間があるでしょう?」
ほむらには心当たりが無かった。本当に? いや、分からない。
そもそも、きっとあったのだろう。それらの負は全て焔が請け負っただけで。
「まどかを過去にして、喪に服す自分も、それはそれで酔いしれるには丁度良いわ」
焔はそこで自虐的な笑みを浮かべた。
「でも――、それを貴女は本当に受け入れられる? それを自己嫌悪の理由にしないと誓えるの? なによりも暁美ほむらを構成していたものを崩すことによって、自分を保てるのかしら……」
暁美が度重なるループを経ても壊れなかった理由を、自分で壊すのか。
ほむらも、その言葉に少し怯んだように沈黙した。口ではいくらでも覚悟を固められるが、もしも焔の中にずっと封じ込めてきた『鹿目まどかへの憎悪』を全て吸収するとしたら、それは彼女にとって最も恐れるべき事だ。
焔もそれが分かっている。遠くを見つめながら、呟く。
「ねえ、一番怖いのは何もない事でしょう? だから私は嫌だったのよ」
暁美と統合してしまえば、手塚への愛と、まどかへの愛がぶつかり合い、歪な相殺を起こすかもしれない。
それは最も避けなければならない事だ。お互いのためにも。
「私……、まどかは嫌いだけど、別にあなたのことは嫌いじゃないわ。むしろ……、ええ。でもね、手塚を奪われるのは別。そんなのズルイじゃない。私は私よ。私でいたかった」
焔は神を見たという。彼か――、彼女が教えてくれた。
個は個でなければならない。個を構成するのが個性であり、それは人が生きてきた道でもあるが、それを超越する概念がある。
概念を無視した時、それはそれで無くなる。個を無視する事は創造であり、消失であると。
まどかを捨てて他の人を愛する。そんな選択肢を選ぶのは本当に『暁美ほむら』なのか。暁美ほむらではない暁美ほむらがゲームに参加してもいいのか。
違う道、違うルート。誰だってある。例えば須藤がそうだ。彼は多くのルートで悪意に身をゆだねたが、正義を貫いた時間もある。それを今は選んでいる。
しかしほむらは違う。違わなければならない。それが今までの希望だった。
「……子供が自分だけのヒーローを生み出すじゃない? 貴女にとってそれが私じゃないの? ありえないからこそ与えてくれたもの、たくさんあるでしょう?」
仮想ループはそれを具現したものだ。取捨選択。まどか達を捨てたのが焔であれば、ほむらは本来それを選ぶ。そうやって今まで生きてきた。だから前に進めたのだ。
「それを全部奪うなんて……、裏切りもいいところよ。馬鹿、クズ、死ね」
焔の声が小さくなっていく。ほむらはギュッと、強く、強く焔の手を握った。
「ごめんなさい。でもッ、でも……!」
それは残酷な言葉ではあるが、言わねばならなかった。
「貴女は、私なの!」
焔からボロボロと涙が零れる。シンクロするように、ほむらからも涙が流れていた。
「ずっと……、向き合えなくてごめんなさい! ずっと一人にして本当にごめんなさい! ずっと助けてくれたのに! 邪険にしてごめんなさい!!」
「いま――、さら、すぎる。ううん、違うか。今更なんてものもあっちゃ駄目で――」
「駄目なんかじゃない! だって、だって……!」
ほむらは、いつか手塚と殺しあった時の事を思い出した。
そして誓ったのだ。
「だって! 私は皆を好きになりたいからッ! みんなとお友達になりたいから!」
ほむらは、強く叫んだ。
「私はッ、まどかを嫌いになりたいから!!」
「ッ」
「だからきっと貴女も! 貴女だってッ!」
「………」
「貴女の事は絶対に忘れない。死なせないわ!」
焔は驚いたような顔をしていたが、すぐに微笑んだ。
目の光が消えていく。体の感覚は、もう。
「ねえ、手塚く……、海之」
「なんだ?」
「最期に一つだけ。同じ事だけど、嘘かもしれないけど、聞いてくれる?」
「ああ……」
「愛してたよ。ずっと、ずっと」
「嘘でも、信じるさ。それに俺も愛してる」
「……ふふっ、ありがとう。嘘でも――、うれしい……」
「嘘じゃない。今も……! 今もだ!」
「え?」
「今も、お前を愛してる――ッ! 暁美ほむらじゃなくて、暁美焔ッ、お前の事を!」
「……嬉しい。嬉しいな。でもそしたらこんな事」
焔は胸に刺さった刃を見る。
「すまない。それでも――、俺はッ」
「不器用な人」
「みんな、そうだ。お前だって……!」
「ええ、そうね」
焔の呼吸が小さく、細くなっていく。もうすぐ死ぬ事は誰もが分かっていた。
しかし焔はまた馬鹿らしくなって微笑んだ。割り切りをつけようと思ったのに、今のライアの言葉で死にたくないと思ってしまう。
生きたいと思ってしまう。
かつて神でさえ狂い、死に追いやられた感情だ。
絶対的な完璧を崩すことができる。それは唯一の存在。
「まるでこの感情は、悪魔の代物ね」
焔は最期の力を込めて、もう一方の手を持ち上げた。
そこへ集中していく黒く、美しい光。その光をほむらの手に押し当てる。
「これは?」
「未練も……、愛も、執着も。全てをココに込めたわ。あげるから。大切に使ってね……」
光にリボンが巻かれた。赤い、リボンだった。
「まあ、もともと……、貴女のものか。ううん違うわ。まどかのね……」
「――ッ、ありがとう。絶対に無駄にしないわ」
「そぅ……、そうね……、お願い――、ね。あともう一つだけ……。海之とは、あまり、仲良く、しない、で、ね」
焔は目を閉じた。
ねえ海之。聞こえる? 聞こえてる? 声は出せているかしら。
最期って言ったのに、どんどん言葉が出てくるの。許してね。でももう長くは話せないから、疲れたから、眠いから、だから少しだけ。
怖いだろうけど、貴方は自分の人生を生きて。
運命に――、負けないでね。
「焔」
ライアはそこで言葉を放った。
「いつか――、迎えに行くから」
「うん。待ってるね」
焔は嬉しそうに微笑んだ。
「それじゃあ……、さようなら」
そこで焔は灰になった。砂のように、崩れ去っていった。
ライアも装甲も砕け散る。手塚はへたり込んだまま、焔が寝ていた場所を見つめていた。
「……他人の人生を変えるのが怖かった。ずっと前からだ」
「愚かね。私達は、つくづく」
簡単に終わる話だった。もっと話し合えれば。もっと自分を分かっていれば。
なのに結果としては愛し合う二人が殺しあって、こうなった。
「でも、それくらいの時間と覚悟が必要だったんだ。お前には」
手塚はエビルサンダーのカードを見つめる。
「俺にもな」
これを手にするのに随分時間がかかった。
ほむらは立ち上がると、長くて美しい黒髪をかきあげる。
「いつか、全てが終わった時、私は答えを出す。もしもその時に焔がいたのなら、貴方を食事に誘うわ」
「ああ」
「そこからは――、お願いね」
「ああ」
イチリンソウが枯れていく。衝撃を感じた。ゼノバイターの笑い声が聞こえる。
究極邪神ディザスターの誕生。それを知って、ほむらは小さくため息をつく。
「ああ、でも、本当に最悪」
胸を押さえる。あぁ、痛い。
「鹿目まどか。本当にあの子、ふざけてるわ」【アライブ】
黒い羽が舞う。漆黒の翼。露出の高いバレリーナのような格好。
そして受け取った赤いリボン。
悪魔ほむらと呼ばれた形態が、『暁美ほむら』のアライブなのである。
「文句言ってやらなきゃ」
以前と少し違うのは、翼のサイズが少し小さい。
そしてその数は、六つ。翼の一つが光を発した。
「でも動くのは嫌い。私は怠惰だから」
悪魔が生まれた。正確には、悪魔の名を借りた魔法の結晶だ。
ベルフェゴール。心なしか、さやかに似ており、ネグリジェ姿で枕を抱えている。
魔法の悪魔がほむらに力を授ける。強化された怠惰の翼を広げて、ほむらは手塚と共にイチリンソウの花畑を脱した。
「雄一を守れなかったから、お前が鹿目を助ける事ができれば、俺も救われる気がした」
「ええ」
「でも今回、俺は雄一を助けられたかもしれないのに、またお前に任せてしまったな」
「でもそれが――、あの時、私が怒ったことよ。貴方は自分の為に戦った。醜いエゴをさらけ出したのよ」
「だがそのせいで、雄一がまた死んだ」
「ならそれで終わりにしましょう。だから貴方は、焔を殺したんでしょう」
「ああ。協力してくれるか?」
「もちろんよ。だから貴方も私に力を貸して」
「当然だ。俺達は、パートナーだからな」
「ありがとう。じゃあ決まりね。もう死なせないわ。私達は勝つの」
「――そういうワケだから」
「!!」
「私の親友に触るな」
ほむらは矢を掴み、握りつぶした。
そしてライアはブレイドフォームとなり、剣を思い切り横に振るってワスプに刃を刻み込んだ。
「ぐああぁッ! お、お前はッ、ライア!」
惑星の上、まどかを庇うように前にはほむらが。後ろにはライアが降り立つ。
「そんなッ! どうして! ココは私達しか――ッ!」
そこでフールはほむらの容姿に気づく。
紛れもない。悪魔の姿だ。そこで舌打ちが零れた。全てを察したらしい。焔とほむらが一つになったのだ。
ゼノバイターは確かに円環の力を手に入れたが、まだ完全に支配下には置いていない。ほむらとゼノバイター。今はどちらもその力を使うことができる状態だ。
「うっざッ!」
そうしているとライアがまどかを掴み、ドロンと煙と共に消え去った。
どうやら逃げたらしい。しかし同じくしてほむらは肩に痛みを感じた。
見れば針が刺さっている。すると手錠のようなエフェクトが手首に現れた。鎖の先には、ワスプが笑っているのが見える。
「姿は変わっても愚かなのは変わっていないな。暁美ほむら」
「……?」
「貴様には私の針を打ち込んだ。もう魔法は使えない。時間停止も、記憶操作も駄目だ。ククク」
しかし、そこでワスプは目を見開いた。
というのも、ほむらの隣に一体の悪魔が現れたからだ。
「何――ッ?」
両手にフォークとナイフを持った悪魔は、なぎさに似ているような気がする。
ベルゼブブ。黒い翼を広げると、そのまま空中を浮遊してほむらの肩――、つまり針が打ち込まれた場所にかぶりつく。
「魔法を無効化?」
ほむらが目を細めた。
租借するベルゼブブ。ゴクリと、飲み込んだ音が聞こえると、次の瞬間ワスプの全身から瘴気が噴出した。
「おこがましいにも程があるわ」
「グアァアア!」
ジットリと、ほむらはターゲットを睨みつける。
ワスプはうめき声をあげて地面に膝をついた。理解できない。いきなり全身が爆発を起こし、衝撃と痛みが襲い掛かってきた。
「な、何をした!!」
「無効化を無効化したの。後は術者へのカウンターも添えて」
フールは再び舌打ちを零す。アライブの恐ろしさは理解しているつもりだ。発動終了まで時間を稼ぐのもいいが、逆に消耗させておきたい。
「ナイトメア!」「ハッ! ただいマに!」
空中を浮遊するナイトメアは口から三つほどミサイルを発射して、下にいるほむらを狙う。
しかしほむらに焦る様子は無い。冷静に、淡々と、彼女は指を鳴らしてみせる。
「来なさい、アモン」
稲妻が迸った。ほむらの背後に魔法でできた悪魔が召喚される。
それは重厚な鎧に身を包んだトリケラトプス。二本足で、人間のように立っており、背中からは黒い翼が生えている。
アモンは頷くと、ほむらへ力を与える。それは盾。トリケラトプスの頭を模した巨大なシールドである。
ほむらはそれを右手で軽々と持ち上げ、上に向ける。ミサイルはトリケラトプスの顔面に直撃していき、全てが無効化された。
それを見てフールとワスプも各々の弾丸を向ける。
しかしほむらが左手を前に出すと、もう一つ盾が現れてワスプの針を受け止めた。
右手の盾もフールの矢に合わせ、彼女は攻撃を無効化していく。
「上が目障りね。私より高く飛ぶなんて愚かしいわ」
小さく舌打ち。そして指を鳴らす。
「ハルパス!」
トリケラトプスの盾が消え、次はカラスの姿をした悪魔が一瞬姿を見せて、消える。
するとほむらの手に鎖鎌が握られてた。鎖の先には、カラスの形をした刃が見える。
ほむらは軽く、まさにもっていた鳥を空に放すように鎌を投げた。するとまるで意思を持ったようにカラスが飛び立ち、ナイトメアへ噛み付いていく。
「ウゲェエエエエエ!!」
いや、実際にカラスがいるのだ。
ハルパスの幻影がエネルギーとなって刃に纏わりつき、ナイトメアに嘴をつき立てていく。
これが悪魔ほむら――、アライブの力だ。
悪魔の力を得た彼女は、悪魔から武器を授かり、さらにアライブ状態ならば悪魔を召喚したまま操る事ができる。
「ぎ、ギヤアアアアア!!」
ナイトメアの悲鳴が聞こえた。
ハルパスが嘴でナイトメアの眼球を抉り出している所だった。
一方でワスプは立ち上がり、細身の剣を出現させて走り出した。
「嬉しいぞ暁美ほむら! 少しは焦らせてくれる!」
ワスプは早い。すぐにほむらの傍にやってくると、剣を突き出した。
鋭利な刃。しかしほむらの背中にあった怠惰の羽が光ると、ほむらは無数の羽を残して消え去った。
「ワープか!」「正解」「!」
現れたのはワスプの背後。ほむらはその首を掴むと、前に突き出した。
そこへ直撃するフールの矢。ワスプがうめき声をあげ、フールが呆れたような表情を浮かべる。
「ごめーん。ほむらちゃん狙ったつもりだったけどぉ……」
ほむらはそのまま盾にしたワスプを蹴ると、再びワープで距離をとる。
出現場所は空中で悲鳴をあげているナイトメアの上部。そこでほむらは、新たな悪魔を呼び出した。
「ボティス――ッ!」
西部劇のガンマンのような格好をしたコブラが現れた。
その両手には大きなガトリングガンが装備されている。早速と回転する砲身。すると無数の炎弾が発射されて、ナイトメアに降り注いだ。
「ギッ! ギアァァエエアァアゥブァアアアア!!」
あまりにも一瞬であった。弾丸の一つ一つがナイトメアの肉体を剥ぎ取り、数秒もしない内に燃え尽きるように消滅した。
翼を広げ、ほむらは悪魔を従えてゆっくりと地面に降り立つ。
そこでフールはステッキを。ワスプは剣を構えて走り出した。
「デカラビア!」
悪魔が切り替わり、巨大なヒトデが現れる。
中央には一つ目があり、それが光ると黒い落雷がほむらを中心に発生した。
その勢いと衝撃は凄まじく、ワスプは帯電しながら後退していく。
しかしフールはシールドで雷撃を防ぎながら前進。ほむらへステッキを振るう。
ほむらはステップでそれを回避すると、続く一撃を首を逸らすことで回避して見せた。
さらにステッキを掴み、フールを引き寄せると掌底で腹を打ち、怯んだところで新たな悪魔を生み出した。
「アイニ!」
ほむらの肩に黒猫の悪魔が出現する。
するとほむらの腕に纏わりつく爪状のエネルギー。そのまま踏み込み、下から上に振るいあげた。
「ハァアア!」
「ウグゥゥウウッ!」
打ち上げられたフールは回転しながら墜落していく。
しかし黒い翼を広げると、体制を立て直して上昇。弓を構えて黒い光を集中させる。
同じくしてワスプも銃を構えてエネルギーを高めた。上から、横から、再び巨大な弾丸が迫る。
「ベルゼブブ!」
再びなぎさに似た悪魔が出現する。
彼女が大口を開けると、矢が、針状のエネルギーがひとりでに口の中に吸い込まれていった。
すると持っていたフォークとナイフが光る。どうやら攻撃を吸収して自分のエネルギーに変換できるらしい。
ベルゼブブは踏み込むと、まずはフォークを思い切り空へ投げた。
「チッ! アイギスアカヤー!」
巨大な盾がナイフを受け止める。
「ファラス!」
ほむらが叫ぶと、ハロウィンのカボチャがローブを着たような悪魔が現れる。
すると一瞬でフールの盾にびっしりとカボチャが張り付いた。
当然、爆発。カボチャ型の爆弾が盾を破壊してフォークがフールの胴体に突き刺さる。
「グッ! ガァアア!」
ほむらが腕を伸ばすと、フォークは空中で固定。フールを磔にする。
フールは魔法でどうにかしようと試みるが、魔力や瘴気をフォークが吸収して、フールは何も発動できない。
一方でベルゼブブはナイフを振り回してワスプと戦闘を行っていた。
つまり決めるなら今だ。
「ガープ!」
「ハッ! ただいまに!」
ガープは黒い弓を出現させ、それをほむらに差し出す。
ほむらはそれを受け取ると、弦を引いて闇を収束させていく。
「消えろッ!」
手を離すと、闇の矢がフールに向かって飛んでいく。
だがフールにもプライドはある。目がまどかのそれから、クララドールズのそれに変わると、赤く光り、前方に魔法陣が出現した。
そこから腕が伸びてきたのはすぐのことだった。掌が闇の矢を受け止め、かき消してみせる。
「どれだけの力を手に入れたところで、所詮は現代の魔法少女」
飛び出してきたのはコルボーだ。カラスの羽を撒き散らしながら、一気に急降下。ほむらに足を向ける。
「戦う為に生きてきた我等に、勝てるものかよ!!」
しかし、その勢い凄まじい飛び蹴りも、簡単に片手で止められる事になる。
「調子に乗るなよ人間風情」
ほむらの前に立っていたのはガープだ。顔はナイトメアの上部分のため、マヌケに見えるが、声は凄まじく冷たいものだった。
「確かに貴様等は争いの時代を生きてきたかもしれんが――、所詮人間」
シュンと音がして、ガープがコルボーの背後に回る。
そして掌底。よろけるコルボーの前にガープがワープし、蹴り上げで空中に打ち上げた。
「我等は悪魔」
ガープはワープでコルボーの上に現れる。踵落としでコルボーを地面に叩きつけると、掌から光弾を発射して直撃させた。
ただの光弾じゃない。球体のエネルギーはコルボーを閉じ込めたまま、空中に浮かび上がる。
同じくしてその周りに現れる無数の剣。全ての剣先がコルボーに向けられいた。
「
ガープが指を鳴らすと、無数の剣が放たれてエネルギー弾を串刺しにする。
当然、中にいたコルボーは悲鳴をあげ、全身から血液を撒き散らした。
フールは怒りに表情を歪ませ、コルボーを戻した。
フールもまた、魔獣であり、魔法少女である。
生まれたてでは魔法を連発できない。他の魔法少女を呼び出すことはできないのだ。
一方でほむらも走っていた。向かうのはワスプのもとだ。
「バティン!」
鎧を着た馬が現れると、ほむらの腕に闇の剣が握られる。
走り、跳躍。飛び込みながら剣を振り下ろし、ワスプを切りつけた。
火花が散る。よろけた所に、ベルゼブブがナイフを振ってさらに斬撃を刻む。
追撃のチャンスだ。ほむらは走り、剣を振った。
しかしワスプも吼えると、それを受け止めて弾き、向かってきたベルゼブブも切り抜けた。
「死ねッ、ほむらァア!」
剣を突き出す。
しかしほむらはワープ。ワスプの背後に現れると、剣を突き入れた。
「うぐゥ! ツァ!」
よろけたワスプ。そこへベルゼブブがナイフで突いて、ワスプを吹き飛ばした。
「降臨せよベルフェゴール!」
さやかに似た悪魔が空中に現れる。
持っていた枕を置いて、頭を乗せて寝転ぶと、まるでベットのように魔法陣が広がった。
「我が名は怠惰! 無限の刹那! 久遠をゼロに!」
ほむらは弓を構え、矢を魔法陣の中央に向けて放った。
「スロウスッ! スコール!!」
それを合図にして、魔法陣から矢の雨が降り注ぐ。
矢は追尾機能を搭載しており、ほむらが一歩も動かずともフールとワスプは悲鳴をあげるのだ。
「うッ! ぐああぁッ! つ、次に会う時が楽しみだな――ッ!」
ワスプは煙を上げながらも腕を思い切り振るう。
すると無数の蜂となって、空中に舞い上がっていった。
「やるねッ、ほむらちゃん……! 本当に悪魔みたいな女」
フールもまた背後に闇のトンネルを広げると、その中に消えていった。
残されたほむらは怠惰の翼――、ワープ機能で閉鎖世界を脱出した。
「ヒャハハハハハハ! ヒーッハハハハ!!」
参加者達に降り注ぐ炎の雨は、まるで隕石だ。
巻き起こる爆発の数々。しかしディザスターは、そこで笑みを消した。
「ほーゥ!」
炎の中から参加者達が姿を見せる。
傷はあるが――、それは先程までの攻撃によるものだ。少なくとも今の炎の雨でできたものじゃない。
先頭にいたのは――、オルタナティブ。
彼のガードベント。サイコシールドによる『シュレディンガーの猫』は、範囲内にいる仲間を一定時間『無敵』にできる。
「とはいえよォ。そっからどうすんだっちゅー話だわなァ?」
確かに。所詮ひとつの攻撃を防いだだけだ。
オルタナティブのシールドも消えてしまい、参加者達は息を呑む。
ジュゥべえから貰ったグリーフシードも尽きてきた。みんな消耗しているところに、ディザスターはまだ余裕ときている。
「クソ!」
ゾルダはシュートベントを発動。ギガランチャーを装備して、弾丸を発射するが――
「無駄だァ! こんなものはよォ! 神にゃきかねーんだよ!」
ディザスターは人差し指で弾丸を弾き飛ばすと、大きく胸を張る。
するとどうだ。髪の毛が光ると、毛先がカールされてドリルのようになっていく。
それを見てなぎさの表情が変わった。あの毛束からは、糸車の魔女の力を感じる。
つまり――?
「あの髪でできた槍に触れれば、死にますッッ!!」
一同がその危機感を覚える前に、ディザスターは毛の槍を伸ばし、参加者に向かわせた。
注目するべきはその数だ。無数の槍が、迫ってくる。
スピードも速い。どうすればいいのか。そんな事を考える時間さえない。騎士にはデッキに指を伸ばす時間さえない。
死んだ。きっと多くがそう思った事だろう。
しかし同時に、何かが空から降ってきた。
「あ」
それは殻。抜け殻だ。カニの抜け殻。
ガードベント・シェルアーマー。発射された抜け殻が龍騎達に覆いかぶさり、飛んできた槍を遮断してみせる。
中には――、気づいた者もいるだろう。殻が槍を塞いだのは、その防御力だけが原因ではない。
地面から赤い槍が飛び出していき、槍先にぶつかったからこそ、勢いが弱まっていたのだ。
「知ってるかしら」
誰かが、龍騎達の前に着地した。同じくしてディザスターは激しい違和感を覚える。
脚が重い。下を見ると、巨大な青いリボンや糸が、絡みついているではないか。
「神も死ぬのよ!」
ボンバルダメント。
ディザスターの前方。地面から巨大な大砲が突き出てくると、業火が発射された。
凄まじい衝撃に、ディザスターの巨体が浮き上がった。そのまま後ろへ飛んでいき、ビルを大量に破壊しながら仰向けに倒れていく。
「完全復活よ! おまたせ皆!」
「マミさん!」
さやが笑みを浮かべる。
体が元通りになったマミがウインクを返した。
とはいえ少し疲れたようで、アライブを解除すると、ゆっくりと息を吐く。
「バテんなよ。チョコくうかい?」
その隣で、佐倉杏子がポッキーを差し出していた。
どうやらマミ達と合流しており、一緒に来たようだ。
(なるほど。こういう風に登場すれば良かったのか……!)
アビスが感心していると、その時ドロンと音を立ててライアとまどかが現れた。
「まどかも!」
「まどかさん! よかった! ご無事でしたのね!」
「う、うん。手塚さんとほむらちゃんが助けに来てくれたの……!」
すぐにマミやさやかが、まどかに回復魔法をかける。
一方でライアはサバイブのカードを抜いた。
「城戸ッ! 須藤さん!」
「ああ、分かってる!」【サバイブ】
「今ならまだヤツも怯んでいる。ココで決めたいですね」
ライア、龍騎、シザース。
三人のサバイブが一勢に走り出してディザースターのもとへ向かう。
「我々も行きましょうか」
「はぁ。行きたくないけどねぇ」
「お、俺はやりますよ! うぉおお!」
オルタナティブとゾルダ、アビスも走っていく。
一方で魔法少女達はまどかに集まっていた。
まどかの傷も癒えていき、彼女は顔をあげて心配そうにしているさやかや仁美に、『大丈夫だから』と声をかけていた。
しかし、言葉が止まる。
まどかは少し怯んだように目を丸くしていた。
すぐ目の前に、ほむらが現れたのだ。
黒い翼。黒い羽が舞い落ちる。ほむらはアライブを解除した。赤いリボンが消えていく。
「……まどか」
「あっ、ほむらちゃん。さっきはありが――」
「このッ、ばか! おおばか!」
「えっ?」
「あほ! まぬけ! かっこつけ! ばか! ば――、いやッ、あ、やっぱりばかばか!」
「ちょ、ちょっとほむら……! アンタ何を――ッ」
語彙力が無いのか。
ほむらは小学生が喧嘩の時に使うようなワードばかりをまどかにぶつけていく。
一体どうしたというのか。とりあえずさやかは立ち上がり、ほむらを止めようとするが、そこでマミに止められた
マミは少し呆れたように笑い、首を振る。
意味は分からなかったが、とりあえずさやかは黙った。
杏子もそれを見ていたようで、目を細め、腕を組んだまま沈黙する。
戸惑うなぎさと仁美、そしてまどか。その前で、ほむらは顔を真っ赤にして肩を震わせていた。
「どうして貴女はいつもいつも、あんな道を選ぶのよ! 怖かったくせにッ! 悲しかったくせに!!」
「え……?」
「え? じゃないわよ! わ、わかってんの!? まどかッ! 私はね、今とっても怒ってるの! アンタに怒ってるのよ! こ、このまぬけばか!」
ポロリと、一粒だけ涙が零れた。
「あなたっ! わ、わ、私をいつも助けてくれて! そ、それはどうもありがとう! でもねッ、ど、どうしてアンタはいつもいつも、自分を助けようとしないのよ!!」
「――ッ」
「じ、自分にしかできない事がある――ッ、みたいな感じで格好つけて! そんなのただの逃げじゃない! アンタも結局、私と同じよ! 自分と向き合うことから逃げてる! だからあの時も、あの時だって! いつかの時もそうッ!」
ほむらは、まどかに駆け寄り、両肩を掴んだ。
「正しい事を盾にっ、みんなを置いてった! 私達を信頼してくれなかったのよ!!」
「そ、それはッ、でも……!」
まどかは、そこまで言って沈黙した。
いろいろ、思い出しているのだろう。そして聞いた言葉に刺さる物もあった。
一方でほむらは声を震わせ、裏返らせ、遂には涙をボロボロこぼしながら怒っていた。
「どぉして? どうしてよ!? どうしてあの時ッ、私も連れて行ってくれなかったのよ!」
まどかが神になった時だろう。
「どうして私から逃げたのよ!!」
「逃げ、た」
「ええそうよ! 貴女はいいわよ! 神様になれて! やりたい事もできて! そしてドロップアウトもできる! でも私はそうじゃなかった! 結局、こんなアホみたいなゲームに巻き込まれて、結局いつもいつも貴女を追いかけて――ッ! うぅぅう!」
ほむらは腕で目を拭い、また叫ぶ。
「向き合えバカ! 置いてかないでよ! 普通置いてかないわよ! だって私達友達じゃなかったの!? アンタ間違ってる! 間違ってたわよ! ええ! だってアンタがやるべき事は格好つけて自己犠牲するより、最後の最期まで二人で何とかする道を探すべきだったんじゃないの!? ねえ! おい! 聞いてるのか! なーにが最高の友達だったんだねよ。だったんだね? ばか! 最高の友達はどっちかっていうと、さやかでしょ! クソ! そういうなんか気を遣ってくれてる感も嫌なのよ! たとえ本心でも言葉を選んでよ! っていうかもし本当に最高の友達だったら尚更あんな選択意味不明でしょ! アンタだって絶対逆の立場だったら納得してないわよ!」
だいたい基本怖がってブルブル震えてるくせに! いつも最期は達観したようにヘラヘラしやがって!
何が神よ! 何が円環よ! 全部ガタガタだったから、叛逆なんてものが生まれたんでしょうが!
貴女ねぇ! 家族が危なかったら、自分が死ぬより怖がってたでしょ! 友達が死んだら悲しくて堪らなくて泣いてたじゃない!
そこまで分かってて! なんでッ、私の気持ち! 理解できないのよ!
「アンタ本当にッ、クソバカ! だって、貴女がいなくなって、私が残ったら、それは最悪! 答えはこれしかないみたいな感じで、家族も友達も捨てて!」
むろん、ほむらも話の分からぬ女ではない。
この怒りが理不尽なものであるとは分かっていた。
だから膝をつき、泣きじゃくる。子供がダダをこねるのと同じだ。
「うあぁぁぁあ! ひっく! えぐっ! うえぇえええん!」
「ほ、ほむらちゃん……」
まどかは大粒の涙を流すほむらを見て、初めて自分の過ちに気づいた。
救ったモノもたくさんあったが、傷つけてしまったモノもたくさんあったのだ。
「ホムラが……、消えちまったんだ」
そこで杏子がポツリと呟いた。
「ちょっと悔しいけどさ。アタシにはどうする事もできないんだ。できるのは――、アンタだけなんだろ? なあ、まどか」
それはとても難解な問いかけのような物だったが、今のまどかにはすんなりと理解することができた。
杏子は最後に、頼むよと言う。
だから、まどかは頷いて、ほむらの傍に来た。
跪いて視線を合わせ、肩に手を触れる。
「ごめんね。ごめんねほむらちゃん……!」
まどかの目から、涙が零れた。
「置いていって……、ごめんね」
あの時、起こすべき奇跡は、神になる事ではなかった。
共に、神を目指すことだったのかもしれない。
「今が一番幸せなのよッ」
ほむらはうな垂れ、吐き出すように言った。
「みんな生きてるし……! 傍にいて、優しくしてくれるから――ッ!」
「うん」
「あんたもそうでしょ? 違うとは言わせないわよ……!」
「うん――ッ!」
まどかは泣いている。声で分かったので、ほむらは顔を上げた。
お互い、酷い泣き顔だった。
「だから――、だからっ、まどかぁ、わたしを助けて! あの日から、ずっと縛られてる私を! どうか――ッ! お願いだから!!」
あの日、まどかが神になった日。
いや、まどかと出会った時からか。
「すぅぅぅ」
まどかは立ち上がると、ディザスターを睨み、大きく息を吸った。
「ほーッ! むッ! らッ! ちゃーッッん!!」
そして思い切り叫ぶ。
人生で一番大きい声を出した。顔を真っ赤にして、思い切り叫んだ。
「あーそーぼ!」
ただ、誰もその意味は分からない。
さやか、マミ、杏子――、仁美はもちろん。なぎさでさえ。
いきなり何を言っているのか? サッパリの様子だった。
しかし変化は確実に起きていた。
遠くの方で戦っているディザスターが呻き声をあげて苦しみ始めたのだ。
そして、顎を押さえる。
「ゴガァァアア!」
口が開いた。
その中にあったのはイチリンソウの残骸。そこに、ホムラが立っていた。
疲れたように。嬉しそうに。涙を流し、彼女は手を口にそえて叫ぶ。
「いーいーよ!」
震えた声だった。
徐々に、音量が、小さくなる。
「あーそー……ぼぉ」
なぎさは何となく、理解した。
この世界そのものが暁美ほむらなのだ。破壊があれば――、創造がある。
古いゲームが終わり、新しいゲームが始まったように。
そして人間の始まりは『子供』だ。まどかはそれを選んだのかもしれない。そして、ほむらも、ホムラも、暁美は――、きっとそれを理解したのだ。
新しい人生を歩むためのメッセージ。そしてそれは、当たり前の、ごく平凡なる友情の形。
一緒に、遊ぼう。
「助けるわよ! あの子を! 絶対に!」
マミが銃を構えて前に出た。
「あの子ともっと美味しい紅茶をッ、ケーキを食べるのよ!」
すると、杏子が一歩前に出る。
「アンタに言われるまでもないっての」
杏子は槍を地面に刺し、腕を頭の後ろに回してポッキーを咥えながら飄々とディザスターを睨む。
そしてまた、泣いているホムラを見つめて小さく呟いた。
「アイツは……、アタシの親友なんだ」
それを見て、次はさやかがニヤリと笑って前に出る。
「あたしは喧嘩ばっかりだったなー。でもさ、喧嘩するほど仲が良いっていうじゃん?」
剣を握り締めて決意の炎を胸に宿す。
「ま、それにまどかの友達はあたしの親友でもあるし。仕方ないってね」
まどかは頷き、ほむらへ手を差し出す。
「約束するよ、ほむらちゃん。もう絶対に一人にしないから。だから――ッ! ずっと一緒にいようよ!」
ほむらは頷き、その手を取った。
正面左から杏子、さやか、ほむら、まどか、マミの並びになる。
「むむむ! なぎさ達を忘れるなんて酷いです!」
「そうですわ。もう部外者じゃありませんのよ。暁美さん?」
左端になぎさが。右端に仁美がつく。
「ええ、そうね。ありがとう。二人とも」
ほむらを中央にして並び立つ7人。
「勝ちましょう! まずはあの、ふざけた邪神を殺すのよ!」
その視線を感じたのか、ディザスターはエネルギーを爆発させた。
近くにいた龍騎やドラグランザー、ライアやエクソダイバーを吹き飛ばし、ディザスターは吼える。
「あぁあクソ! マジでキメェなゴミ共が! くっだらねぇ、仲良しごっこをやってるテメェらなんかに、俺様が負けるワケねぇだろうがァア!」
「そうね。なかよしごっこは終わりよ。私達は、本当の友達になるの――ッ!」
百江なぎさ。志筑仁美。
「あの時の過ちも」
美樹さやか。佐倉杏子。
「いつかの苦しみも」
巴マミ。鹿目まどか。
「全部過去にして、前に進むのよ!」
そして、暁美ほむら。
確かに、この時、この瞬間、7人の気持ちは同じだった。
「いきましょう皆。今日で、
「うんっ!」「ええ!」「おーッ!」「ああ!」「ですっ!」「はい!」
ほむらの言葉に、それぞれは応え、7人は一勢に前に進んでいった。
次回でたぶんLIAR・HEARTS The・ANSWER編おわり。
ほむらはアライブが二つあります。
ほむらでアライブを使うと、悪魔ほむらになって。
ホムラでアライブを使うと、魔女帽子とローブの今までの姿になります。
言うなればサーナイトとエルレイド。ポケモンみたいなもんです(´・ω・)
それと、ほむらがパワーアップしました。
天使を呼び出すまどかと同じく、悪魔を呼び出していろいろします。(主に武器変更)
オリジナルです。ゴリゴリオリジナルです。
イメージとしてはフォーゼのスイッチみたいな感じをイメージしてます。
あとジオウのキバ編めっちゃ好きですけど、脚本家が賛否両論なのも本当に理解できるような気がしました(´・ω・)
あのヤ●ザはクセまみれじゃぁ!(ノブ)