バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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Beginning

漆黒の闇の中。一人の少女は逃げる。

 

「ハァッ、ハァッ」

 

そして追い詰められた、断崖絶壁。

 

「はは、ようやく見つけた」

「まさかこんな辺境にお逃げになるとはねぇ…」

「さぁ、鬼ごっこは終わりですよ」

「くっ…!」

 

 

 

――――――

 

 

────世界は理不尽だ。

 

────いや、その前に神様がいるのなら、僕はそいつに文句を言ってやりたい。

 

────『何で自分だけこんな目に遭わなきゃいけないんだ』と。

 

────『どうして僕だけがこんな思いをしなければならないのか』と。

 

 

 

――――――

 

 

朝の小鳥が歌う中、朝の陽射しが部屋を満たし、ふと目が覚めた。

 

「…朝か」

 

まだダルい身体を起こして時計を見ると、6時半を差していた。ゆっくりとベッドから降りて制服に着替える。

 

下へ降りてから郵便物がなにか入ってないかを確認。その後、誰も居ないリビングに鞄を置いて、朝のご飯の準備をする。いつもと全く変わらない朝食。トーストにスクランブルエッグにサラダ。テレビを付けていつもと変わらないニュースを見て朝ご飯を静かに食べる。

 

「…今日、雨が降るのか…傘持ってこうかな」

「…おはよう」

 

テレビを見ていると、妹の美柑が起きてきた。

 

「おはよう。顔洗ってご飯食べて」

「…分かってるよ」

 

少しイラついてそうな声で洗面台へと向かって行く。これもいつもと変わらない。全て、僕が悪い。それも分かっている。ただだから親の元へ行かせようと思ったのだが、頑なに断ったのだ。理由は分からない。僕のせいで家事も出来るようになってしまった。

 

友達とかいるのかとか聞こうとしても僕が聞いたところであれだし、正直言うと話す話題が見つからない。実の妹に苦労までかけさせてしまった僕はなんて言えばいいのか。大体こんな兄と話したいとは思っていないはず。

 

『一時期引き篭もっていた僕』となんて。

 

だから必要最低限で済ませて後は僕が逃げるように部屋に入って終わり。そんな毎日を続けている。

 

「…僕は先に行くよ。…今日は雨降るから傘持っていった方が良いよ」

「…ん」

 

心が痛むが、解決策が何も思いつかばない。そんな日々を過ごして僕は今ここに居る。

 

私立文月学園。僕の通っている学校だ。オカルトと科学が入り交じって出来た『召喚獣』の試験校である。

 

ここまで遠いが、とある理由で僕は少し早く出てこの学校を選んだ。そして1年が経って、僕は2年生。友達が少しいるくらいの灰色の生活。いや、僕の親友と呼べる存在がそばに居るからそこまで灰色ではないが、少しマシになった程度。

 

Fクラスに在籍している僕は教室を見ていつも溜息を吐いてしまう。あまりの汚さとボロさ。豚小屋と言っても過言ではない。そして…

 

「おっす、明久」

「おはよう、雄二」

 

男しかいない。馬鹿だからと言う理由でここに追いやられた。…まぁ試験の結果なんだけど。でも今挨拶を交わした『坂本雄二』は違う。本来頭が良いはずなのにここに居るのは理由があると言っていた。

 

「おはようなのじゃ、明久」

「…今日も冴えなさそうな顔している」

「おはよう。…康太は五月蝿いよ」

 

こちらも僕の心のそこから信用出来る友達である『木下秀吉』と『土屋康太』。2人も本当は頭が良く、雄二に言われたからこのクラスに来るように点数調整したらしい。…僕は元から馬鹿だからそんな必要はなかったけど。

 

「さて、俺は一大プロジェクトを起こしたい」

「…え?何?」

「…さてはお主、試召戦争じゃな?」

「お、よく分かったな」

「…碌でもない」

「うるせぇな」

 

『試召戦争』。テストの点数を召喚獣に反映させて戦うというアニメの設定のような催しがある。戦争と言うのはあくまでクラス同士で戦うもので、戦略も多々あるため戦争っぽいと言う学園長の訳の分からない趣向で付いた。

 

雄二はクラス代表。考えればクラスを動かして戦争を起こすことが出来る。だけど…

 

「…僕無理だよ」

 

雄二は僕を一瞥して僕の反論に答えた。

 

「妹の事だろ?」

「…それもあるし…足を引っ張る」

「あのな、お前自身本気出してねぇだけだろ?」

「…明久の入学後の最初の試験、1位だったじゃないか」

「…まぐれだよ」

「それで済まされるほど楽な話じゃないんじゃぞ?…お主の事情もよくわかる。…だけどそんな連中はもういない。…お主が弾けても誰も文句は言わんのじゃ」

「そうさ。…そんな奴らまたあの時みたいにぶん殴ってやればいいのさ!…でもまぁ、強制はしねぇ。…家族の問題の方が大事だしな。…そっち終わらせたらでも構わねぇ。別にまだ1年始まったばっかだし」

「流石…君はやっぱわかる人だよ」

 

雄二も出張で帰らないお父さんが居なくて、お母さんと二人暮らしらしく、何事も助け合ってるらしい。…それを知ったのは、僕がちょっと雄二と初めてあって喧嘩した時のこと。

 

「ま、出来るようになったら言ってくれや」

「そうさせてもらうよ」

そして始まる授業。何事もなく、ただ普通に終わっていく。

 

 

――――――

 

 

6限目を終えて、荷物を纏めて僕はクラスを出た。

 

「じゃあな明久」

「うん。また明日」

 

家へと真っ直ぐ帰ってきた。荷物を部屋に置いて晩御飯の用意。まだ美柑も帰ってきてないし、風呂掃除とかもやればいいかな。

 

『ただいま』

 

そう思っていた時に美柑が帰ってくる。イヤホンを付けて目の前の料理に集中し始める。

 

…これも全部、僕が逃げているだけに過ぎない。…でも、弱い自分を隠す為にはこうするしかない。

 

ある程度作っていたシチューが煮えてきたので火を切って風呂場へ向かう。美柑は自分の部屋へ向かったようだ。

 

風呂場を掃除して、お湯を張ってからリビングに戻ると美柑がテレビを見ていた。やっているのはお笑い番組なのに、全く笑っていない。…僕も面白いはずなのに笑えない。…この空気が不味くて、流石に声をかけないといけない状況なのでかける事に。

「…帰ってたんだ」

「…うん」

「…もうすぐご飯だから」

 

そう言ってまたキッチンへと戻る。自分と美柑の分をよそってテーブルに置く。

 

「…パンとご飯、どっちが良い」

「パン」

 

そう言ったのと条件反射で食パンを手に取る。皿に乗せたパンを机に置いてご飯を取って席に座る。

 

「…食べるよ」

「分かった」

「「頂きます」」

 

お互いに何も言わずに静かに食べていく。昔は会話が弾んでいた。美柑が2年生の時とかはお互い笑ってご飯とか楽しく食べていたのに。…こんなに変わってしまうなんて。

 

そしていち早く食べ終わった僕は先に席を立つ。

 

「…ご馳走様」

 

食器を洗ってから風呂場へと行く。皆から言われた言葉を思い出す。

 

『お主はもう少し本気出したらどうじゃ?』

『もうお前を阻むものは何も無いんだぞ?』

『…もっと元気出せ』

 

「分かってる…分かってるよそんなの」

 

ただ、昔の事を思い出してしまうと…身体が足を1歩前に出すのを拒んでしまう。何とかしないといけないのは僕自身がわかってる…でも、どうすればいいのかわからない。そんな事を考えていた刹那。やけに泡が出るなと思って湯船に視線を落とすと、湯船から溢れんばかりの光が漏れ始め、爆発してしまう。

 

「なっ…!なんだ…!?」

 

するとそこには…

 

「んー!脱出完了!」

 

裸の女の子が立っていた。

 

「ん?」

「…えっ」

 

ダメだ、思考が固まった。疲れている?そんなわけあるか!僕だって毎日寝てるし疲れる要素全くないわ!

 

「ど、どちら様…」

「私?私ね、ララ!」

「…さ、さいですか…いや、違う…」

「え?」

「何か羽織れー!」

 

さっさとタオルを羽織らせて風呂を出てすぐ着替えた僕は自分の部屋に女の子を押し込む。そこにやってきた美柑。

 

「何かあったの?」

「な、何でもない…それより、風呂…入っていいよ」

「そう…わかった」

 

美柑が風呂に入ったのを見計らって女の子と話すことに。

 

「で、ララさんだっけ」

「あはは、ララでいいよ!私ね、デビルーク星から来たの!」

「…デビルーク星…?宇宙人だって言うの?」

「まぁ、地球の人から見たらそうなるよね!…おや?信じてないな〜?じゃあ証拠見せてあげる」

 

そう言ったララはタオルをまくって僕にお尻を突き出してきた。

 

「な、なぁ…!」

「ほら!地球人には尻尾(これ)ないでしょ?」

「わ、分かった!分かったから!頼むから隠して!」

「なんで赤くなってるのー?可愛いー」

 

椅子に座って僕は深呼吸。その後、落ち着いてから話を聞く事に。

 

「…宇宙人なら、なんで風呂から現れたのさ」

「あぁ、それはね〜これ使ったの」

 

そう言って腕につけていたリストバンド?的なものを見せてもらった。

 

「これ!私が作った『ぴょんぴょんワープくん』!行き先は指定できないけど生体単位での短距離ワープが可能になるんだよ!」

「…ワープ…?」

「そ!バスルームで使ったらたまたまここのお風呂だったってわけ」

「…宇宙船…どうして?」

「……」

 

何故だか悲しそうな顔をした彼女はすぐ口を開いた。

 

「追われてるの」

「…!」

「地球まで来れば問題ないとは思ったんだけど…奴らの船に乗せられてこれがなかったら私は今頃…」

 

…追っ手…

 

『ララ様ー!』

そんな時、いきなり変な顔をした何かが入ってきた。

「な、なにそれは…」

「ペケー!良かったー!無事だったのね!」

『何とか!…ん?』

 

するとペケと呼ばれたそれは僕の方を向いた。

 

『ララ様、なんなんですかあの超根暗そうな少年は』

 

…余計なお世話だよ。

 

「この家の住人。…名前聞いてなかったね!名前は?」

「…明久。吉井明久」

「ふーん、そう!この子はペケ!私が作った万能コスチュームロボットだよ!」

 

そう言ってララはタオルを剥ぎ取った。

 

「な、なんで取ってるのさ!」

「じゃ、ペケよろしく」

『了解!』

 

その瞬間、部屋が光に包まれた。次の瞬間、ララの身体はさっきまでと違って服が身につけられていた。

 

「良かったよ、ペケが居ないと着る服なくて困るもんねー…あ、どう明久!素敵でしょ?」

「そ、そうだね」

『時にララ様。これからどうなさるおつもりで?』

「あ、それに関していい事考えたんだ」

 

ララがそう口にした瞬間。大柄のスーツの男が窓から入り込んできた。

 

「全く…こうなるのならあなたの手足を縛ってでも自由を封じるべきでした」

「…ペケ、私尾行には注意しろって散々言ったよね?」

『ハイ…すみません』

「このポンコツロボ!すべて水の泡じゃない!」

「さぁ!覚悟を決めてもらいます!」

 

そう言ってララの手を掴む黒服。

 

「イヤ!離してよ!」

 

勘弁してよ…何でこんなこと僕の自室で起きてるのさ?…誰よりも平穏な人生を送るはずだったのに。それに、…せっかく綺麗にしたのに。あんなカーペット汚しちゃってさぁ!…黒服は強そうだけど…でも…!

 

『お前、本気になってみろよ』

「…ッ!」

 

雄二の一言を思い出して、僕は部屋にあった木刀をララを掴んでいた男に投げつける。痛みからか、男はララを解放した。

 

「こっち!」

「明久!?」

「待て!」

「待てと言われて待つバカが何処にいるんだよ!」

 

そう言って屋根をジャンプして走る。裸足だから痛い。…でも、不思議と身体が楽に動いてくれる。

 

「ど、どうして…」

「わかんないよ!でも!あの状況を黙って見てろなんて…僕には出来ないッ!女の子が嫌がってるのに黙って見てるだけなんて、僕には出来るわけがないッ!」

「…明久…」

 

公園まで走ってきた。だが…

 

「ぬぅんっ!」

 

目の前にトラックが飛んできた。…初めて見た。いや、二度と見る事などないと思っていた。

 

逃げ道を塞がれた…!黒服はやってくる…ッ!

 

「僕の後ろに!」

「邪魔をするな、地球人」

「五月蝿い!こんなか弱い女の子を大の大人が追い掛け回して!恥ずかしいと思わないのかよ!」

「…」

「…ララ様、いい加減おやめください…家出など」

「嫌よ!」

「そうだ!そんなのお断り…だ…あれ?」

 

 

 

…家出?

 

 

 

 

「もうコリゴリ!後継者だかなんだか知らないけどお見合いばっかり!」

「…お父上の意志なのです」

 

…あれ、僕って壮大な家出に付き合わされてただけ?

 

「パパなんて関係ない!それ!全部吸い込んじゃえ!」

 

携帯から何か大きな物体が出てきた。

 

「不味い!ララ様の発明品だ!」

「う、うわぁぁあ!」

 

黒服の男は吸い込まれてしまった。凄い大きな掃除機によって。でも待って。…これ、僕必要なかったよね?

 

「…明久、ありがとう。助けてくれて…嬉しかった」

「…帰らないの?」

「…また帰ったら、お見合いばっかりで嫌よ」

「…そっか。じゃ、そのまま家出し続けてやればいいよ」

「えっ?」

「僕は詳しい事は何も知らない。…でも、君は鳥籠の中の鳥じゃないから。家族の為なんかに自分が結婚するなんてそんなの間違ってるでしょ。…君は自由だから、君のしたい事をすればいいと思うんだ」

「私の、したいこと…」

 

「…じゃ、僕は帰るからね」

そう言って僕は家へと帰る道を裸足のまま歩いた。たまに落ちてる小石が痛い。でも、あんなヒーローみたいな…女の子を助けたなんて久々だった。…悪くないと思った矢先、後ろから声をかけられる。

 

「明久ー!」

「ララ?どうしたの?」

「私!決めたの!」

「何を?」

「パパも黙らせて、尚且つみんな平和に終わる方法!」

「…どんな?」

 

そんな方法があったのか?てかあるなら聞いておきたい。

 

「明久!私と結婚してよ!」

 

 

 

 

 

………………………………………はい?

 

 

 

「…ごめん、なんて?」

「明久、私と結婚して!」

 

高校2年生が始まって、何かが起ころうと期待していた僕だった。だけど僕は…こんな展開望んじゃいない────ッ!

 

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