「え、勝ったんだ」
あれから1日が経ち、雄二達が家に遊びに来てくれた。来たのは男メンツだけだが、来てくれるだけでも心が落ち着いた。
「そりゃな?で、取り敢えず学園長にFクラス設備を掛け合ってもらうようにお願いしたんだ」
「そりゃ良かったよ」
それなら僕も身体を張った甲斐があったというもの。秀吉と康太は何があったか話してくれたりと暇でなくなったこと自体が僕の心が安らいだ気がした。
「…お主、薬を飲むまで大変だったのかのう」
「別に、即効性だからすぐ効いた。だからほら、目も赤くないでしょ?」
「…あの時もすぐに治ってたな…あれだけの事があったのに」
「前回は輸血もあったから少し掛かったけど今回はそんな必要なかったからね。…で、なんか宿題とかは?」
「特にねぇよ」
「分かった、ありがとう」
「じゃ、俺らもそろそろお暇するか。じゃな」
「美柑ちゃん、お邪魔したのじゃ」
「…忙しいところすまない」
「大丈夫ですよ。また遊びに来てください」
雄二達が帰っていったのと入れ替わりで女子達が入って来た。達と言うのはララだけではない。西連寺さんと姫路さん、里紗が着いてきたのだ。取り敢えずは寝た振り。
「アキ、西連寺さん達来たよ…あれ?」
「どうかしたんですか?」
「ごめんなさい、疲れちゃったのか寝ちゃったみたいで」
「そうですか…吉井君結構大変だったって聞くし」
「大丈夫!今はもう症状は出てないんだよ!」
「そ、そうなの?良かった…」
「お菓子あるけど食べますか?」
「わーい!行こ!春菜!瑞希!里紗!」
「うん、先行っててくれるかな?」
「うん、分かった」
…この様子だと里紗だけ残ったかな。でも寝た振りは続けとかないと…
「…起きてるでしょ、明久」
「…」
「そう、じゃあこのまま話を続けるよ。…私、決めた。…沢山悩んで決めた。…明久の事、まだ諦めない」
…へ?
「…明久に振り向いてもらえるように私、頑張るから」
待て待て待て待て?どういう事?…てか、何?本当に何??
「…わ」
「ん?」
「…わかりません、どういう意味か…」
「えぇ…本気?」
「…僕は察しの悪さは日本一だからね」
「まぁね。…まぁ、話を進めるけど、あんたはきっと私を選ばない。かと言ってララちぃや春菜、瑞希も選ばない」
…なんで残りの二人の名前が挙げられたのかは分からないとして…ほんとなんの事だ?
「…でも、私は諦めの悪い女でね?…明久が選ばなくてもいい。それでも私は明久と一緒に居たいって思うから」
やっと意味がわかった。…てことは…え?マジ?
「…バカだな君は」
「なんとでも」
「…頭大丈夫?」
「…あんたに言われたらおしまいだね。…でも諦めないってこと、覚えてて欲しいな」
「…話はそれだけ?」
「まだあるよ。…料理、教えてくんない?」
「…はぁ…建前が長すぎるよ…」
「…建前じゃなくて本気なんだけどな」
「え?何か言った?」
「何でもない!ほら早く!瑞希や春菜もお話したいと思うから行くよ!」
「手、手を掴むな!待って!いやマジで!」
最終的に引っ張られ、下の階まで連れてこられた。
「あ、吉井君。起きたんだ」
「叩き起されちゃってさ…悪いねララ、お使い頼んで」
「ヘーキヘーキ!」
「頼もしいよ」
時計を見ると5時を指していた。
「皆、ご飯食べてく?もう遅いし」
「なんなら泊まるのもいーよ!」
ファッ!?なんて事を!皆が了承するわけが…
「「お、お願いします!」」
する、わけが…
「勿論泊まるよ〜」
…結局止まることになった。美柑は苦笑。僕もララの無茶振りに笑うしかなかった。そんなこんなで身体も痛くないしご飯を作り始めることに。
「吉井君ってエプロンするんですね」
「そりゃね。デキる男はエプロンするんですよ」
そう言いながら包丁で肉を切っていく。
「美柑、外と門の電気つけてくれるかな」
「はーい」
「何か手伝うことある?」
「いいよ別に、客人に何かさせるほど僕も馬鹿じゃない」
「じゃ暇だし明久の部屋漁りに行こうよ」
「GO!突撃ー!」
ララの後押しで4人は僕の部屋に向かってしまう。
「…いいの?」
「見られて恥ずかしいものとかは何も置いてない。…美柑が1番よく知ってるはずだよ」
「それもそっか。…あ、明久の好物じゃん」
「急に食べたくなってさ」
そう言って明久は鍋に油を入れ始めた。
――――――
「明久の部屋に来たわけだけども」
「ララちぃは手慣れてるね」
「ふっふーん、そりゃ明久と寝てるもの」
「う、嘘!?」
「そ、そうなの!?」
「うん!そこのベッドでね」
ララがベッドにダイブする。それを羨ましそうに見る2人と、何かを閃いたように里紗は目を瞬かせ、2人をベッドに押し倒して自分もベッドに飛び込む。
「構わん!突撃ー!」
「わ、わわ!」
「う、嘘…吉井君のベッドに…」
「さてここらで明久のエロ本の1つでも探そうと思うんだけど…アイツ1冊もないんだよね何故か」
「明久がエッチな本を読んでる所は見たことないよ」
「そう言う事に興味無さそうな感じではあるよね」
「…パソコンとかに入ってるんじゃ?」
「「「それだ!」」」
パソコンを起動し、パスワード画面になる。
「明久ー!調べ物したいからパソコン貸してー!」
『パスワードは1018だよ〜』
明久はすんなりと答えた。4人は笑いを抑えきれない。
「おやまぁ、なんと油断してることで」
「誕生日に設定してあるんですね」
「おやおや?瑞希は明久の誕生日を知ってるんだね?」
「まぁ、誕生日お祝いした事もあるので」
「お楽しみだったと…」
「里紗が言うと変に聞こえるからやめて…」
春菜がクリックでホーム画面まで進む。ホーム画面には明久ともう1人の男の人。そして美柑と2人の女の人が並んで笑っている壁紙だった。
「これが明久君の家族…」
「幸せそうですね」
「…でも、なんか違うね」
ララが言うと3人は首を傾げた。
「どういう事、ララちぃ?」
「…明久、心の底から笑ってないよこれ」
「…そんなのが分かるの?」
「明久って本当に心の底から笑った事あるの?」
「…さぁ、分からないな…」
『ご飯出来たよー』
明久の声にビクッとした4人はすぐにシャットダウンしてから部屋を出た。リビングに行くと、美味しそうな匂いが漂う。
「あ、唐揚げ!?」
「そう。僕の好物さ。…レモンとかマヨネーズあるから好きなの使ってね」
「「「「「「いただきます」」」」」」
席に座って皆で一斉に食べ始める。
「お、美味しい…!」
「本当、凄い…!」
「慣れだよ。誰でも出来るさ…あぁ、レモン美味しい」
「素直に喜びなよ、美味しいって言われてるんだから」
「だって肉をタレにつけて揚げるだけなんて誰でも出来るでしょ…」
「普通はこんなに上手くできないよ?」
すると明久が思い出したかのように呟く。
「…そんなもんかね…あ、牛乳買ってくるの忘れた…後で買ってこよう」
「何に使うの?」
「うーん、最近デザートっていうかスイーツ作りたいと思っててさ。簡単なもの作ろうかなって思ってるんだ」
「凄い…スイーツ作れるんですか?」
「いいや、まだ作ったことは無いんだけどね。でも食べたいので自分で作れるようなら作ってみたいと思ってさ」
「ちなみに何作ろうとしてるの?」
「タルト」
明久がそう言うと春菜や瑞希もポカーンとしていた。
「レベル高くないかな…?」
「そうでもないらしくてね。だから作ろうと思って」
「毒味役は任せなさい」
「ただ食べたいだけだろ…お粗末様でした。じゃ行ってくるからお風呂入るなり何なりしてくつろいでてね。食べ終わったら流しに置いといてくれると助かるかな」
明久はそう言い残して家を出る。
「スーパー開いてるかな…!?」
急いで自転車を漕ぐ明久。だが曲がり角の所で注意不足なのもあってか、もう一台の自転車とぶつかってしまう。
「キャッ!」
「ぐぁっ!…いたた…」
明久は打った所をさすってからもう1人の綺麗なエメラルド色の髪の毛の女の子が倒れているのに気づく。
「ご、ごめんなさい!大丈夫!?」
「う、うん…」
「ごめん、注意してなかった…け、怪我したの?」
「だ、大丈夫。かすり傷だよ」
「そんなんじゃダメだ!…あって良かった…」
ポケットの中にはいつも応急救急セット(自称)が入っており、消毒液と絆創膏を常備してたり。
「ごめん、染みるよ」
「痛っ…」
「絆創膏貼るね」
絆創膏を丁寧に貼り終えると、明久は他に怪我がないか確認し始めた。
「…改めてごめん。急いでて注意してなかった…」
「私も同じ。急いでたから…ごめんなさい」
「…足怪我させちゃったでしょ?送るよ!」
「近くだし大丈夫だよ?」
「僕自身が許せなくてさ。せめてもの償いをさせて欲しいな」
「お、お願いします」
「よし!じゃあ僕の自転車は一旦置いといて…」
明久は端に自転車を置いて女の子をおんぶし始める。
「きゃっ!?」
「あ、ごめん!降ろすよ!」
「だ、大丈夫…驚いちゃっただけなの」
「そう?じゃあ行こう!掴まってて!」
女の子の自転車に乗り、道案内の元走って行く。本当にすぐ近くだったらしく、そこまで走ってはいなかった。
「ここか!…ほんとごめんね?玉の肌に傷つけちゃって」
「気にしてないからほんといいよ。それよりありがとう。助かっちゃった」
「これくらいお安い御用さ!じゃ、僕は行くね」
「あ、あの!お名前は?!」
「モーツァルト」
「…へ?」
「匿名希望さ!じゃね!」
明久は闇の中へ消えていくのを女の子は名残惜しそうに眺めていた。そして貼られた絆創膏を見て呟く。
「…もう一度、会いたいな」
――――――
「…交通事故ってほんと怖いなー…安全確認しないと」
僕は先程よりスピードを落として周りに注意しながらスーパーに辿り着いた。
「よかった、まだ開いてるね」
ささっと牛乳三本を買って家へと戻る。家に帰る時も安全確認しつつ。もうあんな事故起こしたくないし。
「ただいま…」
「遅かったですね」
出迎えてくれたのは姫路さんだった。
「まぁね。色々あってさ…」
「おっす、遅かったじゃん」
「まぁね…あ、洗ってくれたの?」
見ると食器が全て洗われていた。
「美柑ちゃんが洗ってたよ」
「…美柑は?」
「もう寝ちゃったと思うよ」
「…明日お礼を言うか…風呂入ろう」
「背中流そうか?」
里紗がニヤニヤしながら言う。僕は呆れて振り返って言った。
「要らないよバーカ」
「はぁ、明久にバカと言われたぁー!」
リビングで騒ぐ里紗を西連寺さんや姫路さん、ララに任せて僕は2階へ上がる。そして美柑の部屋に入る。部屋はもう暗く、寝てしまったみたいだ。
「…ありがとう、美柑」
頭を撫でると、幸せそうに『むにゃむにゃ』と呟いてる。それを見た僕は口元を緩めて部屋を出た。
レンとルンが分かれるのは早めにやりたいです(個人的欲望)