あれから僕の視線が変わった。今までは『観察処分者のヤベー奴』という認識なのに、今では『女をはべらすとんでもねー奴』に変わっている。何故だ?そう思ったけど周りに女の子が寄ってくるのだ。おかしい。これは何かがあったに違いない。
この謎は解き明かしてみせる!じっちゃんの名にかけて!
…と思ってみたものの、Fクラスではララしかいないし、僕は女の子が寄ってくる理由とか皆目検討もつかない。そのせいで
「今日もお疲れさん」
「もうやだ、おうち帰る」
「幼児退行するでない、見苦しいぞい」
「…秀吉だって追いかけ回される苦しみはわかるはずだ」
「まぁ、それに関しては否定はしないがのう…強く生きる事が大切じゃ」
「説得力ないね」
「あ、明久お帰りー」
「うん、ただいま…」
「そうだ、転入生来たらしいよ?」
「こんな時期に?珍しいね」
「クラスはC」
康太の早い情報収集。流石としか言いようがない。
「…どんな奴だ?」
「…エメラルド色の髪の毛の綺麗な女の子」
「………ん?」
その特徴に見覚えがある。…ていうか忘れられない。だってその子は…
「…明久どうした?」
「い、いや、何でもない」
言えない!昨晩交通事故で轢いちゃったなんて口が裂けても言えるか!そんな事を考えていると…
「あー!ララちゃん!」
「ん?あ、ルンちゃん!」
…へ?ララの知り合い?珍しいもんだなぁと思って振り返ると…
「いつ引っ越してきたの?」
「うーんとね、三日前くらい!」
「…」
「おい明久、なんでそんな震えてるんだ」
「な、何でもない…」
取り敢えず隠れるように雄二の後ろに隠れていると…
「あ!この前の!匿名希望さん!」
バレた…!観念して隠れている場所から出る。そして…
「あの時はすんませんでしたぁぁぁぁーッ!」
即土下座。これには周りの人間も驚いている。Fクラスもざわついている。
「おい………!あれ………!」
「あぁ、吉井が美少女に土下座しているぞ………!」
「ま、まさか……!?よからぬ事を……!?」
「な、何したんだよ明久」
「…交通事故です」
そう静かに告げると雄二がどこからかメガホンを取り出して叫ぶ。
『吉井明久は美少女に交通事故で怪我を負わせましたぁぁぁぁ!!』
うわぁぁぁ!?なにしてんだぁあぁぁ?!
「バカぁぁぁぁぁあ!!やめんかぁぁぁぁぁぁ!」
「ち、違うよ!私が注意不足だっただけで!」
「優しいな明久?この子が罪を被ろうとしてるんだぜ?それに比べてお前はとんでもねぇゲス野郎だ」
ゲス野郎はお前だよ!返せ!僕の平穏な日常を返せ!
「そ、それに…家まで送ってくれたし…怪我はそんなでもないのに応急手当してくれたし…嬉しかったって言うか…」
「……ん?」
え、何?なんで顔赤くしてるの?
「おい吉井…?本当にそれだけなんだよなぁ……?」
「ど、どういう意味さ?」
「惚けるなッ!どうせ怪我をした事をいい事に家に連れ込んで貴様のラッキースケベであんな事やこんな事を!」
「するわけないだろ!バカ言うな!」
流石にそんな事したら僕は退学どころか豚箱の世話になるよ!?世間でよく言う臭くて不味い飯にお世話になるぞ!?…ていうかテレビで見たけどムショのご飯そこまで悪くない気がするんだよなぁ…そんなことはどうでもいい!
…ラッキースケベは何度かあるけど…いや、あれはマジで病気レベルだ。気を抜いたら即発だし。てかこれもどうでもいい!!
「え?明久ルンちゃんに手を出したの?」
「出してないッ!てか散れ!誤解だってわかっただろ!」
「チッ、運が良かったな吉井」
「運もクソもあるか!」
そして皆散らばっていく。ララとルンちゃんと呼ばれた女の子だけを廊下に呼び出して話す。
「てか知り合いだったんだ…」
「うん、小さい頃よく遊んだ宇宙人!」
「…やっぱりか…」
「メモルゼ星人って言ってね」
「…それどんな宇宙人?」
「くしゃみすると性別変わるの」
「う〇〇や〇らか!」
やばい、世代がバレちゃう!…じゃなくてそんな宇宙人いたんだ…
「でもね、レンって言うんだけど男の子の方は何故か私に怯えちゃってねー」
「ララちゃんが女装ばっかさせてその健脚で追いかけ回してたからだよ…まぁどうでもいいんだけどね」
「そっかー」
レンって人。凄く同情するよ。うん。僕だって女装させられて追いかけ回されたことあるし!てかさ?
「扱い酷くない?」
「うん?良いんだよ!毎回毎回文句ばっかり言ってるから。それに仲もそんなに良くないし」
「そうなんだ…」
結構大変なんだなぁ。
「あれ?でもあと少しで第三次成長期だよね?」
「えっ?」
何それ?
「うんうん、あ、明久君は知らないんだよね。私達メモルゼ星人はその第三次成長期を迎えると男の子と女の子で分離するんだ〜」
「なるほどね…えっ」
なんか近い気が…てかそ、そのあた、当たって…
「あ、あの…ジュエリアさん?」
「堅苦しいからルンでいいよ〜」
「ル、ルンさん…当たって、当たってるんですが…」
「もうっ、当ててるんだよっ」
うわぁぁぁ!そんな台詞一生聞けないと思ってたよ!てか何!?僕に気があんの!?
「そんな事すると惚れてまうやろ〜なんちって」
「えっ!ほんと!?」
「…ん?」
何でそんな嬉しそうに…まさか!?
「え?本気?」
「うん!一目惚れっ」
「うわぁぁぁ!!」
嫌だ!!ララという許嫁(仮)を抱えているのに!その上里紗から告白紛いな事受けてるのに!
「…」
「あっ」
そこに通り掛かった横溝君(Fクラス)。そんな僕を見て一目散にFクラスへ駆けていく。え?不味くないこの状況?
「ルンちゃん!明久は渡さないよ!」
「ふーんだ!ララちゃんからアキ君を取ってやるんだから!」
「ま、待って!誤解だぁぁぁぁぁぁ!」
そしてFクラスに走っていく。てか後ろで聞こえたけど姉さんと同じ呼び名はやめて!トラウマがぁ!
…教室には混沌とした空気が。もう既にこの僅かな時間で皆ローブを纏っている。早くない?
「…諸君、ここは何処だ?」
「その下りいいから!僕の言い分を聞いてよ!」
「はぁ、同士Yから聞いた情報によれば貴様は転入生の美少女に一目惚れと言われたらしいが?」
ダメだ!横溝君は後でシバくしかねぇッ!考えろ!突破口を見つけ出すんだ!
……………………………いや、待てよ?
そして!閃く………!圧倒的閃き…………!この状況を打破し、僕の誤解も解け、皆が幸せになる……!そんな言い訳……!
「ら、ララに一目惚れしてたんだ!百合の花が咲いてたんだ!ルン×ララ!」
…ど、どうだ!?
「なんだよ、それならそうと言えや」
「百合って最高だよな!」
「女の子と女の子の絡みはいつ見ても至高」
「尊すぎだよな、仰げば尊死」
「そうだ、間違えた横溝は火炙りな」
「い、嫌だぁぁぁぁぁぁ!!」
はっ!お前が開けたのはパンドラの箱さ!開けたのを後悔するんだね!…てか手が胸に当たってるところ見えてなくてよかった…それにしても僕の考えた言い訳最強じゃね?
「あれ、教室暗いよ?」
「ごめんデビルークさん、すぐ明かりつけるから待っててね」
「わかった!」
そして光る……!命の明かり……!…てかこれとあるアニメのナレーション好きだから真似してるけど疲れるなぁ。やめるか。…てかマジで火炙りされてるけど大丈夫?苦しそうに呻き声聞こえるんだけど…
「ねぇ須川君、横溝君は平気なの?」
「ん?アイツ何故か耐熱装甲的なの身体に巻いてて今脱出したところだぞ」
「…随分器用な事で」
「あいつ曰くいつ何があっても良い様にしてるんだと」
じゃあいつも体には何かしらあるのか?そうだとしたら危機管理ガチ勢じゃないか。…てか燃やされてたのに鎮火までしてしまうなんて…すごい器用だ。
そして鉄人が来てルン・エルシ・ジュエリアさんとも別れて授業を受ける。その後また昼休みになる。そして現れた女子達。…流石に女子が原因でクラスメイトに襲われて体力失いたくないので外の壁に這い登って隠れて様子を伺う。
『アキくーん!…あれ?アキ君は?』
『さぁ?さっきまで居たんだがな』
『明久、遊びに来たよー…あれ、増えてる』
「なっ!まさかあなた達は私とアキ君の関係を邪魔する人達なのかな?!」
『えっ、明久と?ふーん、明久も大変だねぇ』
他人事みたいに言うな!君は2番目にやばいんだぞ!弁当を持っているのでそのまま屋上に這い上る。こんな時のために身につけて良かったスキル。まさか役立つとは思わなかった。
「ふぃ〜、落ち着けるなぁ」
弁当を開けて青空の元ご飯を食べる。うーん、我ながら美味しい。…騒がしいのは悪くは無い。…だけどこうして1人で食べてる方が落ち着くなぁ。
「よぉ、ハーレム男」
…落ち着いた空間は一瞬で消え去った。
「帰れ、僕の平穏はここしかないんだ」
「そう邪険にするなよ、隣いいかー?」
「嫌だって言っても来るんだろ」
「ご明察」
そして雄二も弁当を持ってきたらしい。隣で弁当を広げ始めた。
「で、どうすんだよ?誰選ぶんだお前は?」
「何が?」
「あの女達から誰か一人選ばなきゃいけないだろ?」
「…誰も選ばないよ。…誰か一人を選んで誰かが不幸になるなら皆平等に不幸になればダメージは少ない」
「一生独り身を選ぶのか?」
「さぁね。召喚獣を使いまくってここで死ぬのもいいかもね」
「…お前なぁ…」
「もう疲れたよ。休ませて欲しいな」
「…男にとっては最高のシチュエーションだろ?喜べよ」
「…さぁ、女の子だって男と少し違うだけで同じ人間だ。…宇宙人だって同じ…」
「は?宇宙人?」
やべ、口が滑った…
「…まぁ、デビルークは分かってたよ。尻尾あるしな」
「…そうかい。…話を戻すけど僕にとっては同じ人間だからそんな大差ないし、それよりなんで僕があぁなるのかが分からない」
「あぁって…そっか、ハーレムの事を言いたいんだな」
「助けてくれよ雄二、僕はどうすればいい?」
「知るか、お前が考えろ」
「…僕ら本当に友達だよね?」
「…さぁな」
「…二度と顔を見せるなクソ野郎」
信じた僕が馬鹿だったよ!
「冗談だ。別にいいんじゃねぇか?」
「適当だなぁ」
「…別に、俺に関係はないしな」
「…だよね」
あとは2人でご飯を食べて寝転がっている。
「…授業どーするよ」
「眠い、マジで寝ようか迷う」
「…寝ちまうか」
「…お前それでどうせ僕が寝たのを見計らって1人教室に戻るつもりだったろ」
「心を覗くのをやめろ」
「…まずその前に裏切りの心を持つのをやめろよ」
他愛ない会話をしてから教室へ戻る。それと同時にチャイムが鳴り響いた。完璧過ぎる。
「あ、明久!どこ行ってたの?」
「ちょっとね。眠い…」
残りの授業も受けて学校が終わり、いち早く学校から出る。ハーレムだかなんだか知らないけど僕は平穏な日常が欲しいんだ。邪魔をしないでくれ!
家へと帰ってくると、もう帰宅していたらしい美柑が宿題をしていた。
「あ、アキお帰り」
「うん、ただいま。疲れたよ」
「なんだかアキ最近疲れてない?」
「色々あってね…今日はお魚だし早く焼かなきゃ」
「アキ、私やろうか?」
「いいよ!美柑は宿題してテレビ見てればいいの!」
「あっそ。お風呂掃除終わらせといたから風呂沸かして入りなよ」
あああああああ!?なんだこの出来る妹!?癒しだ…!感謝……!圧倒的感謝……!
『明久!ただいまー!』
「お帰り。今日はお魚だよ」
「わーい!明久!背中流してあげる!一緒に入ろー!」
「馬鹿な事言ってないで早く入りなさい」
「えー?なんで一緒に入ってくれないの?」
「…僕男だし」
そう言うと隣には銃を持ったララが。その銃には見覚えがあった。そ、それって…!性転換ライフル…!?
「ま、待って!」
「待てなーい」
そしてお約束の展開。如月明奈ちゃんに変身。
「…ララ…」
「…明久最近元気ないから、私が元気づけてあげたいの!」
その熱意を受け取って、僕はため息をついて立ち上がる。
「…いいよ。入ろう」
「わーい!美柑も入る?」
「うぅん、ラブラブな二人の間に入るわけにも行かないからねー」
「違うからね?」
魚を焼いている時間にお風呂に入る。湯船も張ってあるし、結構休めそうだ。
「ふい〜疲れた〜」
「明久、入るよ」
そしてララ侵入。…なんでだろう、女の子の身体になっても元が男だからドキドキする。
「…ララは本当に僕なんかでいいの」
「何が?」
「婚約者だよ。…僕みたいな性格の人と付き合ってたら苦労するのはララの方だよ?」
「うーん、私は苦労しないかな。明久が好きだし」
「…どうして君はそんなに恥ずかしい事を平然と言えるかな…」
「…好きな人の前だからだよ」
「ララ…」
驚いた。いつもみたいにニコニコしてるだけかと思った。
「…明久、私はね?…皆が明久の事を好きなのはわかってる。…でも、私は明久と結婚して色んなことしたいって思ってるんだよ」
「ど、どうしたの急に真面目に…」
「…明久、心の底から笑ったことある?」
「えっ…」
「無いんじゃないの?…私も無い。…ずっとつまらない事だらけで、いつも退屈な毎日。それでこの歳になればお見合いばっか。…明久が変えてくれたから、今私笑えるんだよ?」
「…そんな大袈裟な」
「明久がそう思っても私は違うよ。…明久は確かに辛い事もあったかもしれない。…でも私は、私を笑顔にしてくれた明久に笑って欲しいんだよ」
…圧倒されている。…今のララに本気で勝てる要素が見当たらない。
「…でも、もう手遅れだよ」
「手遅れなんかじゃない!まだ明久だって笑えるよ!」
「…本当、だろうか」
「これから作っていくんだよ!私も手伝うから!…まだ笑う事を諦めないで!」
…諦めないで…か。昔好きだった言葉だ。…でも人には限界ってものがある。それを思い知らされた。…でも。
「…」
ララの目を見てると信じてみたくなる。限界を超えた先。そして知りたくなった。それを超えた先に何があるのか。
「…いいよ、君に賭けるよ」
「えっ?」
「僕を心の底から笑わせてくれるんだろう?」
「…!うん!頑張るよ!じゃあ体洗うよ〜!」
観念してララに身体を洗わせてあげた。…擽ったい。…まぁ、でも。変われるなら変わりたいし…あともう少しだけ頑張ってみようかな。…暫く吉井明久はお休みで。…この如月明奈の身体で…
暫くは明奈ちゃんで進みます。
合宿からやるか学祭からやるか…悩みますね( `・ω・) ウーム…