「さて、そろそろ期末試験なので勉強するように」
周りが嫌な雰囲気を醸し出している中、僕ら5人は集まっていた。嫌な予感しかしない。
「お前ら!試召戦争のリベンジと行くぞ!」
「僕はパス、家の事もあるし」
「ワシもパスじゃ。…最近忙しくての」
「…お前と違って暇じゃない」
「明久がパスなら私もパスー!」
「お前らなぁ…」
「…勝ってなんの意味がある?勝って僕らにメリットはあるの?」
「そ、それは…」
「…明久の精神的に攻撃を浴びせているがその通りじゃな、ワシらにメリットがない」
精神的に攻撃してるつもりは無いんだがなぁ。
「…対価を差し出せ」
「お前らの願いをひとつ聞いてやると言ったらどうだ?」
「本気か?」
「今の俺はそれくらい本気だな」
「…仕方ない、ワシは乗ってやろう」
「…俺も」
「じゃあ良いよね、僕は帰るよ」
「待て待て待て!そこはお主も戦うところじゃろ!?」
「五月蝿いなぁ、僕いたって戦力にならんだろうに」
「お前が居ないと戦えないんだよ!」
うわっ、完全に人任せだ。正直僕は帰って献立考える為に色々しなきゃいけないのに。美柑だって心配してるに決まってる。ナナに任せるか?…いや、僕の事を警戒している人間に任せるわけにはいかない。ならモモ?…ダメだ、腹の底で何を考えてるかわからない。
「どうしたらお前は参加してくれるんだよ」
「どうしたらって…簡単だよ、メリットがあれば参戦する」
「お前はそんなに効率主義だったか?」
「別に?ただ何も得しないのに血を流すのは嫌だなって」
…まぁ、本当に欲しいのはそんな事じゃない。…雄二達の本当に勝ちたいという心だけ。それが無ければ参戦する気は無い。
「…それに僕が居ないと勝てないって覚悟が足りてないんじゃない?そんなんで本当に勝つ気あるの?」
「当たりめぇだ!…一度やられっぱなしで終われるかよ!勝つまで俺も戦う!…今度こそ勝つんだ!その為にお前の力を借りたいんだよ!」
…よし、その気はあるみたいだね…
「…合格だ」
「へ?」
「僕もやるよ、試召戦争」
「な、なんで…」
「僕が欲しかったのは純粋な勝利への気持ちだけ。…さっきみたいな弱気の君だったら間違いなく負けてただろうしね。…勝ち気のある君はちゃーんと勝つ要素を揃えてくれるだろうって思ってね」
「…はぁ、試されてたって事かよ」
「まぁ、本気で勝ちたいって雄二の為なら僕は血も流せるからさ。…そこら辺見ておきたかったんだ」
「…ほんっと変な野郎だな」
「ほっとけ」
「吉井君、ちょっと良いかしら」
御門先生が呼んでいた。珍しいな。
「ごめん、行ってくる。ララ、荷物お願い」
「あいあいさー!」
呼び出しってなんだろう…今までの治療費の催促?
「さて、吉井君。貴方に会わせたい人がいるの」
「え?誰です?」
「…金色の闇の親にあたる人よ」
「えっ……」
保健室に入ると、そこには金髪の女の人が座っていた。
「や、ヤミにそっくりだ…」
「彼女はティアーユ・ルナティーク。私の同級生でね。…金色の闇の生みの親」
「あ、貴方がイヴの…」
「い、イヴ…?ヤミの事ですか?」
「…そう、貴方が…」
そう言ってマジマジと見つめてくる。…は、恥ずかしい…!
「あ、あの…」
「彼女はここの先生になる予定でね。…案内してあげてくれないかしら」
「な、なんで僕なんです?」
「だって金色の闇の事、聞いておきたいでしょう?」
「っ…」
「それにティアーユは貴方と似てるから一緒にいさせた方がいいかなって」
「僕と?何処がですか?」
「ドジな所よ」
…泣いた。僕もドジって言いたいんだこの人!!認めるよ!認めますけど!!なんか悲しいからやめて!!
「とにかくお願いね」
二人揃って保健室を追い出された。…ティアーユさんのコケ方が僕と同じだったのは気のせいだろう。とにかく、案内するしかない…
「宜しく御願いします」
「よ、宜しく御願いします…」
「じゃあどこか話せるところ行きましょうか」
「…吉井君…で良かったでしょうか?」
「はい」
「…貴方はイヴの事、どう思っているのか聞かせてくれませんか」
…ヤミのことか。やっぱり親みたいなものって言ってたし気になるのかな。
「…彼女には嫌われてるんですけど…今の彼女と昔の僕は似てて。…放っておけないんです。…だから、彼女に嫌われたとしても…例え彼女が僕を殺しても。…僕は止めなければならないんだって思うんです」
「自分が殺されるのかもしれないのに?」
「約束したんです。…彼女が僕を殺して普通の女の子に戻れるなら僕は喜んでその命を差し出すって。…僕の命なんて、それくらいしか使い物にならないから」
「あの子の事、大切に思ってくれてありがとうございます」
「…礼を言われるほどのの事でもないですよ」
「…あの子、昔はあんな風じゃ無かったの」
「えっ?」
…ヤミも昔は、普通の女の子のようだったってことか…
「…私が研究なんかしてなければ、きっとイヴは幸せに暮らすことが出来た…でも研究員達があの子に兵器であると言う幻想を事実にしようとして記憶に刻みつけた」
「じゃあ、彼女が兵器だって言うのは…」
先生は頷いた。
「私は何としても…彼女の為に止めなければならないの…そんな時、貴方のことをミカドから聞いた」
「僕のこと?」
「貴方といる時のイヴはとても楽しそうって」
「へ?あんなに邪険に扱われるのに…」
「え?そうなの?」
「あ、ここ降りましょう」
そんな時だった。御門先生の言っていた『ドジ』はこんな所で働くらしい。そして気を抜いていたのか、僕の『ラッキースケベ』もこんな所で働いたのか。はたまた本当に偶然なのか。そこら辺は知らない。
ティアーユさんが躓いて階段から落ちそうになる。それを何とか怪我はさせまいと腕を掴もうとしたのだが、その時何故か僕もコケてしまう。お互い階段から落ちる形でそれはもう何とか頭を打たせまいと彼女の頭を抱き抱えるようにしたわけで。
「きゃあ!」
「うぐっ、くぅぅ…」
…気付けば彼女の股に頭を埋めていたのは気の所為だと思いたかった。あぁ、黒か。美人ってやっぱりいい下着つけるんだなぁ…いや!違う!
「…明久?何してんだお前?」
「そ、その声は…ゆ、雄二…?」
「明久…見損なったのじゃ」
「…金髪美人の股間に頭を埋めるとは…ラッキースケベもいい所」
いつもの3人がやってきていた。不味い!写真を撮られた!?
「…すまんな、弱みを握らせてもらった」
「ま、待て!取引しよう!」
「…弁当3日間、その中には全て違う肉料理」
「さらに健康を考えたフルーツの盛り合わせをセットにしよう」
「…交渉成立」
…危ない危ない。僕が弁当作っていくだけで社会復帰できるなら安いものだ。
「はぁ…助かった…」
「で?誰なんだこの人は?」
「うん、この学園の先生になる予定のティアーユ・ルナティークさんだよ」
「よ、宜しく御願いします!」
頭を勢いよく下げた故に上げていた僕の頭とぶつかってお互い頭を抑える。
「…明久と似てるなぁ」
「金髪巨乳のドジっ子教師とは…Fクラスには絶対に阻止しなければならないのじゃ」
「…エロ同人の展開になる」
…確かに。酷い事をされそうだ。
「…ララは?」
「帰ったぞ」
「そっか。じゃあ僕は案内を続けるから」
「おう、また明日」
雄二達は帰る途中だったらしい。…何とも運の悪い。
「あの子達はお友達?」
「えぇ」
「…ごめんなさいね?なんか…」
「なんで先生が謝るんですか?悪いの僕でしょうに」
「へ?だって私が転ばなければ…」
「…いいえ、転ぶのは誰だってある。…僕の助け方が悪かったんです。…恥ずかしい思いもさせてしまい、ごめんなさい」
「い、いえ!気にしてないから!」
僕に気を遣わせないようにしてくれているんだ。…なんて優しい。とにかく。
「…先生ってどこのクラス配属なんですか?」
「私?私はFって聞いてるけど…」
「…先生、悪い事は言わないから今すぐ逃げた方がいいですよ」
「ほえ?」
ダメだ。こんな純粋なお姉さんがあんなクソみたいな豚小屋に行ったら風邪は絶対引くし身体は壊すしクラスの猿共にそれこそエロ同人のようにされてしまう。
「…でも、良かった」
「へ?」
「吉井君、話に聞いてた通り、優しい人だったから…私、不安だったから…」
「…まぁ、他人事でもなくなったし…困ったら頼ってください」
「ありがとう、吉井君」
微笑む所もヤミそっくりだ。…美柑と居る時は笑ったりするんだけどなぁ。…さっきの行為の贖罪である。…この程度で許されるとは思ってはいないが。
「じゃあ私はミカドの所に行かなきゃ。吉井君、案内ありがとう」
「いいえ、また何かあれば呼んでくれれば」
「えぇ、是非呼びに行くね。吉井君も何かあったら頼って」
「ありがとうございます」
仲良くなれて良かった。これなら色々と出来ることも広がるし、いざと言う時教師の中で頼ることが出来る。
家に帰ってくると、なかなかカオスなことになっていた。
「待てよモモー!」
「私は悪くありませんよーだ!」
「こらー!裸で走るなー!」
「そう言うララさんも裸で走るのはどうかと思いますが!?」
三姉妹全員スッポンポンで家の中を走り回っている。…うぅ…!疲れてるのにさぁ…!
「だぁぁぁぁぁぁ!全員服を着てリビングで正座ぁぁぁぁぁ!!」
大声を張り上げると、5分後、皆が服を着てリビングで正座していた。ソファに座って説教タイム。
「で?なんで嫁入り前の女の子が揃いも揃って裸で走り回ってたんだい?」
「お姉様の発明品が悪いんだ!」
「発明品…はぁ、また怪しげなものを作ったのか」
「怪しくないよ!ほら!まるまるチェンジくん!」
「…嫌な予感しかしないんだが?」
「ほら!見てね!スイッチON!」
そう言った瞬間ナナとモモは離れた。は?どゆこと?全く意味のわからない僕はただただその機械の放つ光を見ていた。
次の瞬間、目の前に『僕』が座っていた。
「…へ?」
「ははは!成功ー!ふーむ、やっぱり自分を見るって変な気分だねぇ!」
「…えっ…じゃあ今僕は…」
「そう!明久はララ・サタリン・デビルークだよ!私は吉井明久なのです!」
「嘘だぁぁぁぁぁ!!」
僕とララの中身が入れ替わった!?それでまるまるチェンジくん!?…毎回思うけどこの天才的発明をもっと他のことに役立てて欲しい!
「お、お姉様の中には今明久さんがいて…明久さんの中にはお姉様ってことですか…?」
「ふぅ、逃げて良かった…モモと中身入れ替わるなんてやだからなぁ」
「私だってそんなぺったんこなんかに…ひぁっ」
見れば姉妹が尻尾を攻め合っている。…そうだ、確か弱点なんだっけ。試しに尻尾を触ってみた。
「────!?」
「ダメだよ明久、尻尾触ったら力抜けちゃうよ?」
「さ、サイヤ人かな…?で、でもなにこれ…」
身体中に電気が走ったみたいな…まぁ尻尾触られたら嫌がるわけだ。
「とにかく…いつ戻るのこれ」
「明日かなぁ」
「よし、試召戦争はララの体でやる」
「明久強いし身体能力高いから使っていいよね?」
「良いけど苦しいよ?」
「リミッター全部外したからでしょ?そんなことしないよ」
「え?なんの話です?」
「明久ねー、試召戦争って言うのやると目とか耳とかから血が出るの。…召喚獣の情報量に耐えきれないからだと思うけど」
「…それってその試召戦争での使役させる召喚獣と感覚共有切ればマシになるんじゃないの?もしくは単純な動きだけさせて複雑な動きはさせないか」
…ナナって案外鋭いんだなぁ、流石は姉妹。天才肌なのは姉妹揃ってなのかも。
「…別に?僕が無理をして勝てるならそれでいいよ」
「…苦しくないんですか?」
「さぁ?苦しいからって言って逃げてたらきっと後悔するから」
そう。逃げてたら何も変わらない。ただ逃げなければよかったと後悔が残るだけ。それだったらやれる事をやった方がいい。それがたとえ自分にとって酷い結果になろうとも。
「ご飯作るね」
「ララはじゃあその僕にしてはとても不自然な対応を何とかして」
「明久だって急に私がそんなキャラになったら皆怖いでしょ!」
「クール系お姉様とか絶対ないわー」
「これはナナの言う通りです。お姉様がそんなクールになれる訳ありません」
「酷いなぁ」
…ボロクソ言われてて悲しいなぁ。
「さーて、ご飯作るぞー」
中身が交換するから運動とかその他の細かい動作は身体の持ち主に依存するらしいがララはそんな風に感じさせなかった。
「すごーい!私の身体って結構やれるんだね!」
「元々お姉様身体能力高いじゃないですか」
「じゃあミカン!お風呂入ろ!」
「えっ!!」
や、やめろ!この身体ならいいかもしれないけど僕の身体では絶対にやめろ!!
「ダメだよ!ララの身体戻ったらいいけど!」
「そうだ、じゃあ男の子がどんな感じなのか観察してくるのです!」
「やめんかぁぁぁぁ!そ、そうだ!喰らえ!」
ビームを放つ。馬鹿め!いつも忍ばせている光線銃…えーと、名前は…そう!『ころころダンジョくん』!
「あーん!なんてことするのー!」
「五月蝿いよ!僕の身体は自由にはさせないよ!」
「私の光線銃ー!」
「知るか!風呂行け!」
そう言って僕(inララ)を風呂に向かわせる。よし、なんとかなったな。
「明久さん?お姉様の体どうです?」
「うん。なかなか動きやすいし、これならいつもやってることが出来そうだ」
「いつもやってること?」
「三階から飛び降りたり全力で走ったりとか」
「…お前ほんと変な奴だなぁ」
失敬な。
「三階から飛び降りる…なぜ?」
「うーん、早く帰りたい時とか追いかけ回される時とか」
「?なんで追いかけ回されるんだ?」
「…女の子が沢山寄ってくるからってさ。はぁ、Fクラスにならなきゃ良かったなぁ」
「自業自得だろー」
「はぁ、仰る通りで…出来た、ご飯食べよう?」
「しゃーない、お姉様呼んでくる」
「助かる」
こうしてララ(IN僕の身体)を呼びご飯を食べる。…考えたって仕方ない。