「…」
私は、悩んでいた。
…吉井明久と言う人の事を。…何故抹殺のターゲットなのに、こんなに渋っているのだろうか?…何故殺そうと思うと、心が苦しくなるのか。
「い、イヴ」
声を掛けられる。見なくてもわかる。声の主はティアだ。
「…なんでしょうか」
「…大丈夫?何か考え事してるような…」
「…」
押し黙る。…見透かされているのか。…真顔のつもりだったのだけれど…やはり、あの人のせい?
「あなたが悩んでるのなら、力になりたいの」
「…私は、分からないんです」
「何が?」
「…必要としていないのに、誰かの力になりたい人のことです」
なるべく隠しながらティアに聞いてみる。ティアなら分かるかもしれない。その思いで聞いてみた。
「うーん…その子はどんな子?」
「…お節介な人だと思います」
「でもお節介なだけでそんなに悩むの?」
「…だって、初めて私に…」
沢山の事を教えてくれた。突っ撥ねようとしてもダメだった。自分を殺して終わるなら殺しても構わない?バカバカしい。私は兵器でしかない。普通の女の子…なんて…
「…ティア、最後にひとつ聞かせてください」
「なぁに?」
「…私は、普通の女の子になれますか?」
「…えぇ。なれるわ」
彼女は嘘偽りない笑顔で答えてくれた。兵器な私が…普通の女の子に…
「分かりません」
「わかる日は来るわ。…じゃあ私は行くね」
ティアは先生の仕事があると言って行ってしまった。少しの時間、私はある仮定を立てながら自分に問いかけていた。
『普通の女の子になれるとして、どうすればなれる?』
それを考えながら数分。後ろの殺気に気付く。
「…何者ですか」
「へぇ、やっぱ分かるんだ…流石に伊達に殺し屋はやってないね」
現れたのは私くらいの赤毛の少女。
「…あなたは?」
「私?黒咲芽亜だよ。
「お姉ちゃん…とは?」
「簡単だよ。姉妹。私が妹でヤミお姉ちゃんはお姉ちゃん」
「…私には妹はいません」
「大丈夫、これが何よりの証拠だから」
そう言うと彼女の髪の毛が変化した。これは…
「
「そうだよ、これが何よりの証拠なんだっ」
「…それなら、何故?何故ここに?」
彼女の目的を聞く為に、黒咲芽亜と言う少女に問い始めた。
――――――
「いらっしゃいませー!」
目が覚めて接客を始める僕ら。昨日いつの間にかベッドで寝ていた僕は雄二の置き手紙を読んで『ころころダンジョくん』を持ってきて接客をしている。
その置手紙の内容は『明日の決勝は男に戻って挑む』との事だ。僕もそれには同意している。
接客と料理を同時にこなすのも慣れてきた僕らはトイレに行ったララと沙姫ちゃんが居なくなったのに気付いた。
「…10分帰ってこない…おかしい」
「…まさか、何かあった?」
「明久!」
そこにやってきたモモとナナ。チャイナ服を着ている。
「な、何してるの?」
「お姉様と明久の手伝いだよ!何か出来ることあると思ったんだ」
「明久さん、私達では足を引っ張るかと思いますが、居ないよりかはマシだと思います」
「コータが一日で服を作ってくれたんだ!ありがと!」
「…康太」
「…こいつらの熱意を買っただけだ」
「…ありがとう…でも今は…そうだ!二人共!接客お願い!」
「どうしたんです?」
ララと沙姫ちゃんが居なくなったのを話す。二人は秀吉と共に手伝ってくれるみたいだ。
「康太!」
「…あぁ、発信機はすまないが付けてある…これは…」
「何処?」
「…駅前のカラオケだ。…連れて行かれたらしい」
「仕方ない、乗り込むか」
「…これを持っていけ」
そう言って康太に渡されたのは…
「目出し帽?」
「…顔がバレれば不味いからな…それと、このスーツを」
真っ黒なピッチピチスーツだ。…恥ずかしいけど背に腹は変えられない。それを下に着て、上から服を被る。
「…潜入前に目出し帽とその服になれ。…潜入方法とかはこちらでレクチャーする」
「…わかった、早急に処理する…康太、頼むよ」
「…良いだろう、この学園祭は皆で終わらせよう」
「…あぁ、行くぞ!」
「明久!お姉様ちゃんと助けるんだぞ!」
「わーってる!」
駅前まで走っていく僕ら。ここからだと10分掛かるか掛からないか。文月駅前のカラオケは1つしかない。
「…着いたな」
「服装も取り敢えず変えるか」
路地裏に入って服を脱ぎ、目出し帽を被ってそのまま康太に繋ぐ。
『…聞こえるか』
「うん、聞こえるよ」
『お前達のいるところの真上に人が二人程入れる窓がある。そこの形状がわからないからどのようにして入るかは自由だが入れ、そこは倉庫で、監視カメラもない』
「真上…あれか」
少し上に大きな窓が空いていた。雄二に肩車してもらい、康太に教えられながら窓を開ける。下にいる雄二を引っ張って二人共中に入る。
「…お前の胸がデカくて邪魔だったな」
「五月蝿いよ…康太」
『侵入成功したか…次が難関だ。…そこを出ると人の出入りが激しい通路に出る。…そこを出て右に曲がると非常用階段がある。そこまで辿り着け』
「…ひとついいかな」
『なにか?』
「…これ僕らが普通に真正面から入った方が良かったんじゃない?」
『それは危険だ。…店員に顔をバレてる可能性がある。…もしも誘拐犯が『この人達が来たら教えてください』なんて教えられれば彼女達に被害が加わるのはお前の責任だぞ』
「…それもそうか」
納得いく説明だ。…確かに犯罪紛いな事をしているが、二人を助け出すため。これは仕方の無いことなんだ。
「…取り敢えず外の様子をバレないように見るか」
「…わかった。居ないでくれよ」
扉の鍵を開け、一ミリだけ開ける。外は五月蝿くて、カラオケといった感じだ。…今なら人は居ないか…?
『はい、2名様ですね?』
しめた。今なら客の対応で忙しいはず。これなら非常用階段へと行ける!
「雄二っ」
「あぁ、行くぞ」
サッと出てサッと移動する。…いつもの移動方法がこんな所で活躍するなんて。
「突破したよ」
『…よし、だがのんびりするな。…五階の二号室に行け。そこにララと先輩はいる』
「502か…よし、行こう」
「待て、一撃必殺の覚悟がなければきつい。…康太、何人いるかわかるか?」
『…三人はいるな』
「…仕方ない、なんとか潰すか」
「さて、突撃するよ…時間も惜しい」
『…朗報だ。…奴らは飲み物を注文したらしい…店員の真似をすれば不意を突ける』
「了解した」
階段を登り、502まで辿り着く。中の様子は黒い紙を貼ってある故に見えない。…では、行くか。
「失礼します、御注文のお飲み物をお持ちしました」
『へい、待ってたぜ』
中から扉が開く。その瞬間、僕は顎に飛び蹴りを食らわす。
「ぐぁっ!」
「ど、どうした!?なっ!?」
「コイツら…ッ!うぐっ!うぅ…!」
奇襲は成功、二人もノックダウンさせることに成功した僕らは三人の男の手足を縛り、口にガムテープを貼ってから頭に布頭巾を被せ、床に寝転がらせた。ララと沙姫ちゃんが怯えているから目出し帽を取った。
「助けに来たよ」
彼女達が声を出そうとした瞬間口を抑える。
「…まだ気絶してないみたいだし少し静かにしてて」
頷いた二人の頭を撫でてから僕は彼女達に指示を伝えた。
「ここを出たら真っ直ぐに文月へ戻って。…回収班を向かわせるから。僕らはまだやることがある」
頷いた二人は戻っていく。僕らも逃げて着てきた服などを回収する為、来た道を戻る。
「作戦は成功かな!」
「…いや、誰の差し金かわかってない以上は…」
「後で彼女達に聞けばいいよ。…なっ!不味い!誰か来る!」
「チィッ!隠れるぞ!」
人が来るのが分かってから僕らは三階へ隠れる。上にコツコツと音が消えていくのを確認してから外へ出た。
「…ヒヤヒヤさせるね」
「多分さっきの連中の飲み物オーダーだろ」
「よし、後はさっきの鬼門をくぐり抜けるだけだね」
「…待てよ、閉めてきたか?」
「え?閉めてきた気はするけど…なんで?」
「…もしかすると鍵が掛かってないのを不自然がった誰かが鍵を閉めた可能性も考えられる」
「…信じよう」
人を確認。誰も居ないことを確認したら倉庫の前に立つ。さぁ、開いているのか?神様…!
ノブを回す。しめた!開いている!そのまま中に入り、入って来た窓から出て荷物を回収し、服を着てからそのままカラオケを去る。
「作戦は成功だ!」
「あぁ!店に戻る!」
文月学園に帰ってきた。Fクラスに戻ってくると、いきなり抱きつかれる。
「アキ君!」
「助けてくれるって信じてたよ!」
「良かった…怪我は?」
「無いわ、坂本君もありがとう」
「まぁ先輩には助けられてるからな。これくらい当然だ…それで?どうしてあんな目に?」
「それがね、誰かの命令で動いてたらしいの」
聞けば、いきなり捕まえられて身動き出来ない状況にされ、声は変声器を使っていたため分からなかったらしい。ただ、誰か先生の命令で動いていたのは確からしい。
「…雄二、明久…そろそろ決勝なのじゃ」
時計を見ると、刻一刻と迫っていた決勝戦の時間。
「あぁ、そうか」
「…行こう。それに、これらは案外身近な事件だったのかもしれない」
「あ?どういう事だよ…おい!」
僕らは決勝戦の舞台に向かう。その前に、『ころころダンジョくん』でお互いを男子に戻した。そこにはもう何百人の人間がそこに居て、僕は圧倒された。
『さて皆様。長らくお待たせ致しました!これより試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を行います!』
聞こえてくるアナウンスは今まで聞いたことのない声だった。もしかするとプロを雇っているのかもしれない。世間の注目を集めている大会だし、充分考えられる。そうなると、あの時学園長が言っていたデモンストレーション…あながち嘘ではないみたいだ。
『出場選手の入場です!』
「行こう、雄二」
「あぁ、終わらせて帰ろう…明久」
『入場者はなんと!如月立花に代わって坂本吉井ペア!皆様拍手でお迎え下さい!』
拍手の雨が降り注ぐ。
『彼らはFクラスの中でも特に異質と呼ばれています!元神童の坂本君に加え、Aクラスをほぼ一人で圧倒した吉井君!Fクラスの中でもとびきり点数の高いこの二人はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか!』
僕らの紹介がされた後、向こうの選手も出てくる。
『それに対する選手は、三年A組の夏川俊平君と、同じくA組所属である常村勇作君です!皆様、こちらも拍手でお迎え下さい!』
なんだ、あの二人か。…ていうか出てたのか。全く知らなかった。
『出場選手が少ない三年生ですが、それでもきっちりと決勝戦に食い込んできました。さてさて、最年長の維持を見せることができるのでしょうか!』
同じように拍手を受けながら、二人はゆっくりと僕らの前にやって来た。
『それではルールを簡単に説明します。試験召喚獣とはテストの点数に比例したーー』
アナウンスでルール説明が入る。もう充分に知っていることなので、僕らはそれを無視して先輩達と睨み合う。
「おい常夏コンビ、ひとつ聞きたい」
「口の利き方には気をつけろや坂本?」
「誘拐指示を出したのはアンタらだな?」
「けっ、気づいてやがったか…あぁそうだよ。お前らに恥をかかせまいと思ったんだがな」
「では僕からも」
「あ?」
僕は確信を持って呟いた。
「…教頭先生の指示に従っている理由は?」
雄二を含めた三人が驚く。坊主先輩が聞き返してきた。
「吉井テメェ、何故知ってやがる?」
「…学園長の失脚を狙ってるのは教頭しか居ない。…加えてあの誘拐…手を組んで何かしらしてたのは想像がつく」
「なるほどな。…大方、美味い提案を持ちかけられてそれに従った…そんなとこか?」
「へっ、Fクラスの頭にしてはよく出来ましたってとこか」
「で?理由は?」
「進学だよ。うまくやれば推薦状を書いてくれるらしいからな。そうすりゃ受験勉強とはおさらばだ」
「そうですか。そっちのモヒカン先輩も同じ理由ですか?」
「まぁな」
「そう…ですか」
小さく頷いて会話を打ち切る。僕が聞きたいことはそれだけだ。…何より、今僕はそんな理由はただコイツらを痛めつける為の理由付けにしかならない。
『それでは試合に入りましょう!選手の皆さん、どうぞ!』
説明も終わり、僕達は配置についた。審判役の先生が僕らの間に立つ。
「「サモン!」」
総合
三年A組 夏川俊平=6047点
三年A組 常村勇作=6095点
高いな…流石はAクラスと言ったところか…?
「「サモン!」」
二年F組 坂本雄二=5984点
二年F組 吉井明久=6584点
「なっ!?俺らより高い!?」
常夏コンビが動揺してる中、静かに雄二に問いた。
「雄二、一つ聞きたい」
「あ?なんだよ」
「…雄二は、この学園祭…楽しかった?」
「…あぁ、最高にな…だが、あのクソ野郎を倒さないと俺らは終われねぇだろ?なら、コイツらぶっ飛ばして派手に終わらせて野郎じゃねぇか!」
雄二が武器を構える。
「…あぁ、そうだ…こんなところで終わりたくない…なぁ、そうだろ…?」
静かに召喚獣に問うように呟く。召喚獣は赤いオーラを纏う。目からはいつものような赤い光が尾を引くように放っている。
敵を見据える。こちらの様子に怯んだようだ。舌舐めずりしながらニィッと笑う。
「じゃあ…行くかぁッ…!」
呟いた瞬間、坊主先輩の懐に飛び込み、バスターソードを叩き付ける。雄二もモヒカンを相手にしているようだ。…さぁ、蹂躙の時間だ…!
☆
「あ、あれがアキ君なの…?」
観客席で見ていた沙姫が震えるように言う。店を閉めて見に来ていた里紗や瑞希、春菜やララも見えていた。
「…じゃが、あれはあの時とは違うのう」
「…完全に明久の意思で動かしている」
「ど、どういうこと?」
「…明久、1度暴走させたことあって…AクラスとFクラス…私と坂本以外は全員あれにやられたんです」
「そ、そんな…」
「だが、あの動き…情報の処理もままならないだろう…このままでは目や鼻からの出血だけでは済まなくなる」
「…おや、あなた達は…吉井明久のお友達の…」
秀吉が反応して隣を見た。そこにはヤミが小籠包を食べながら明久を見ている。
「おぉ、そなたは確か…小籠包を買っていってくれた明久の知り合いじゃったな」
「あ!ヤミちゃん!明久を見に来たの?」
「決勝戦というので見に来ました…なるほど、彼の尋常なまでのあの殺意…彼が怒るとあぁなるんですね」
「ヤミちゃんには絶対に怒らないと思うよ?」
「…あの人の事はよく分かりません」
「おろ、結構仲良いと思っていたのじゃが…あやつの事がよく分からぬとは?」
「…頼んでもいないのにお節介をするんです」
「あぁ、そういう奴じゃからな。諦めた方が良いぞい」
「…明久は自分の為より他人を優先するからな」
「…それをするのは難しいと本に書いてありました」
「そうじゃな。…故に明久は強いんじゃよ」
気付けば試合も終盤、明久のありえない動きの連発により、雄二が動くこと無く試合が進んでいく。
「それにしても、奴はやっぱり化け物じゃな」
「…人を食いちぎるような戦い方をしている…今回は相当怒ってるな」
「…分かるの?」
「うむ。…あやつは滅多に怒らんからな。…じゃが、自分以外の友達を傷つけられたりしたら、ワシらじゃ手に負えなくなるくらい怖いのう」
「…正直漏らしてもしょうがないと思えるくらい怖い」
「…故に、先輩とララが下らない理由で誘拐された…それが許せんのじゃろ」
「…吉井明久…ますますわかりません」
「そりゃヤミお姉ちゃんの硬い頭じゃわからないだろうね」
そこにやってきた赤毛の少女。
「む?誰じゃ?」
「名乗り遅れてごめんね、センパイ。私は黒咲芽亜。ヤミお姉ちゃんの妹です」
「わー!妹居たんだね!私ララ!宜しくね!」
「よろしくお願いします!…あそこにいるのが吉井センパイ?」
「うん、俯いてる方」
メアに教えたナナの言葉を聞いたメアは明久の方を見る。
「う〜ん…素敵っ」
そう嬉嬉として呟いた彼女の顔は満面の笑みだった。
☆
「クソッ!抜け出せねぇ!」
「待ってろ夏川!今援護に…なっ!?」
「逃がさないって言っただろ…?」
鎖に繋いだ刀が自由自在に、『手を使わず』に動く。坊主先輩の召喚獣はもう虫の息だ。
「…そろそろ消えなよ」
バスターソードを突き刺し、爪が異常なまでに伸びた左手で腹部を突き刺す。バスターソードを引き抜いてから、さらに左手を押し込むと、血が舞台に散った。あぁ、こういう演出もあるのか。
「まず…一匹…」
「な、なんだよこいつ!やべぇだろ!」
左手に坊主先輩を突き刺したまま、その左手にある肉塊でモヒカン先輩の召喚獣を殴り付ける。
モヒカン先輩の召喚獣の頭を掴んで、坊主先輩が手に刺さったままなのもお構い無しに手刀。手は身体を貫通し、赤い花を散華させる。
「…これで…終わりだ」
一気に左手を引き抜き、会場の壁まで蹴飛ばす。点数は0点となり、相手は動かない。
『し、勝者!坂本吉井ペア!なんという一方的な試合展開でしょう!』
拍手が沸き起こった。後ろからは皆がやって来ていた。
「アキ君!優勝おめでとう!」
「沙姫ちゃん…あぁ、ありがとう…」
皆の方を向くと、皆の顔が強ばる。
「あ、アキ君…?血が…」
「目や花だけじゃない…耳からも…」
「…いつもの事だよ…あれ?知らない顔が増えてる」
ヤミの隣にいた赤毛の少女に目が留まる。
「初めまして、吉井センパイ。私、ヤミお姉ちゃんの妹の黒咲芽亜!」
「嘘ぉ!?ヤミの妹!?」
彼女の顔を見ると、嘘ではない反応が見えた。落ち着いて深呼吸。その後に手を伸ばす。
「…そっか。宜しくね」
『さて、坂本に吉井。表彰台に来な』
「呼ばれてますよ」
「…あぁ、行ってくる」
表彰台に向かうと、学園長のため息が。
「…本当にリミッターを全て外すとはね」
「勝つため、ですから」
「…なるほどね」
それからは表彰式が行われる。で、これが…グランドパークの…
「任務完了…だね」
「あぁ…ババア長の部屋に行くぞ」
満身創痍ながら学園長の部屋に向かう。
「…失礼します、吉井です」
「同じく坂本だ」
『入りな』
中に待っていたのは笑った学園長だ。
「良くやった。…お前さんがたには感謝してるよ」
「約束の品です。ご査収ください」
「その必要は無いね。…アタシが渡したんだから」
「はは、それもそうだ」
「…あれ?」
「ん?どうした?」
「…待て、よく考えたら…」
どうしてあの二人は僕らが学園長と通じているとがわかったんだ?
「まぁ、とにかく…こんな不備のある賞品が出回っていたというのがおかしかったんだけどな…「ッ!!待て雄二!」な、なんだよ!?」
扉の方を睨むと、パタンと音が聞こえてきた。クソッ!遅かった!
「追うぞ!」
「な、なんだ!?」
「あの二人だ!盗聴していたんだ!学園長!この会話…竹原にバレたらあなたが終わる!…どんな手を使っても揉み消してくれるなら僕らは絶対に阻止します!」
「そういう事かよ…!ババア長!許可をくれ!」
「…仕方ない、揉み消してやるさね。…ただし、必ず捕まえな」
「「おうッ!」」
走り出して、何処に行ったかを知る為に無線で康太に連絡を取る。
「康太ッ!あの坊主とモヒカンはどこにいるかわかるか!?」
『…放送室に向かっているな』
「しまった!盗聴していたのを流す気だ!」
「クソッ!追いつけるか!?」
「諦めるなッ!クソッ!ぶっ殺してやるッ!」
「ま、待て!流石にそれは…!おい!」
また目から血が流れる。…だが、身体が自然と思うように動いてくれる。誰よりも早く走り抜けられる。あっという間に階段を駆け登り、目の前に目標が見えた。
「逃がすかぁぁぁぁぁぁッ!!」
「なっ!?吉井だと!?いつの間に…!?」
「でぇいっ!」
「ぎゃあッ!!」
一人は木刀で殴り気絶させる。クソッ!逃がすかッ!
「逃がさないと言ったろッ!」
「な、なんだよ!進学の邪魔をすんじゃねぇ!」
「アンタ達は…!アンタ達もぉっ!!」
大切な仲間を誘拐し、また奪おうとする坊主とモヒカン。相手が先輩?関係ない。ただ潰す。それだけで終わる…!
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁッ!!」
木刀を投げ、モヒカンの後頭部に当たる。…後は…放送室にいるであろう…
「おぉ、来たか…これで学園長も終わり…なっ!?吉井!?」
竹原教頭。…全ての元凶…
「…アンタか…自分の地位の為に、僕らを玩具のように扱って…!」
「ま、待て!貴様自分が何をしているのかわかっているのか!」
「…それはこっちのセリフなんだよ…お前は自分の為なら他人を傷つけることも厭わないんだろう…?…ならここであの廊下で伸びてるモヒカンと坊主のようにしてやろうか」
「き、貴様がやったのか…!?な、なんだ…!?その、目は…!?」
「…今すぐここから消えろ…二度と顔を見せるな…!」
放送室の壁を蹴る。…旧校舎に入ったと言うのもあるのか、壁が脆く、僕でも壊せた。それを見た竹原は白目を剥き、口から泡が吹いている。
「…終わった…全て、終わったんだ…」
静かに床に座り、壁に寄りかかる。身体が動かない。無茶をしたのはわかってる。…だけど、これくらいの無茶なら…してもいい無茶だから…
「明久!」
「あぅ…ゆう、じ…?」
「アキ君!」
「みんな…」
皆が心配して来てくれたらしい。あぁ、こんな所で立ち止まってなんか居られない。
「よいしょっ…うっ…」
「う、動いちゃダメよ!」
「大丈夫…ようやく終わったんだ…打ち上げとか、したいし」
「そうだ。…それなら皆さん明日か明後日、私の家に来ませんか」
沙姫ちゃんが名乗りを上げた。
「良いのか?」
「えぇ。皆さんと一緒に頑張れたし、仲の良くなった人も増えたし。…是非歓迎します」
「…雄二、肩貸して」
「しゃーねぇな、ほら」
肩を借りながらメンツを眺める。
ララ、モモ、ナナ、里紗、霧島さん、優子さん、工藤さん、西連寺さん、姫路さん、沙姫ちゃん、雄二、秀吉、康太。それに、ヤミに妹と言うメアちゃんも居る。
「…疲れたね」
「あぁ、結果発表は後日。それまでゆっくり休もうぜ」
「ワシらも腹が減ったのじゃ」
「…あぁ、喉もカラカラだ」
皆の顔を見て、顔を上げて声を張る。
「帰ろう!」
「「「おおーっ!!」」」
竹原のことは先生達に任して、僕らは風が吹き抜ける中、皆でご飯を食べる為に僕の家へと向かったのだった。
メアちゃん登場&学祭終了でした。
メアちゃんは速攻落ちます。超チョロキャラにした後にネメシス出して、ダークネスに突入したいと思います。