バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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Honest

「明久、しっかりしてよ」

「むぅ、返事がない…ただの屍のようだ」

「…なんで居る事を黙ってたんですか?」

「俺らはこいつに口封じをされてな…」

「…何があっても喋るな、さもなくば沈めると言われて従うしかなかった」

「怖かったのじゃ」

 

 あれからのぼせた明久を引き連れてご飯を食べるため皆でロビーに集まっていた。今は明久を介抱中なのだ。

 

「…ったく、逆上せるまで入るか普通」

「…まぁこやつならやりかねんのじゃ」

「うぅーん…」

 

 明久が唸り声と共に目を覚ます。

 

「おぉ、起きたか」

「うぅ…まだぼーっとする…ここは…?」

「ロビーだよ、お前がのぼせて気絶した間皆待っててもうご飯だぞ」

「あぁ、ごめん…よいしょっと…」

 

 目が覚めた明久と共に食事へと向かう。

 

 

 

 ―――

 

 

 

「美味かった」

 

 開口一番がそれだった。いやだって、何から何まで美味いんですもん。僕も見習いたい。さて。

 

「寝るか」

「は?」

「へ?」

「えっ?」

「…えっ、何その顔」

 

 皆の視線が痛い。

 

「ダメに決まってんだろ!アホかお前は!」

「…やめろ雄二、こいつの根幹は馬鹿だ」

「それもそうか」

「おぉい!ふざけんなよ!?僕は疲れたんだよ!」

「情けないなぁ」

「そうですよ、まだ夜はこれからですよっ」

「私達とも遊んでくれなきゃ困るよ」

「…遊んで、くれないんですか」

 

 …女子の猛攻が辛過ぎる。最早この状況、四面楚歌と呼ぶに相応しいのではなかろうか。旅行って楽しいものだった気がするけど僕の精神的な疲労が…しかも最後のヤミなんて泣きだしそうなんてやめてくれよ…それは僕に効く…

 

「明久を差し出す、俺らは自由にしろ」

「OK!」

 

 …男子組が逃れる為、僕を生け贄にしやがった。

 

「う、裏切り者!」

「黙れ、俺は部屋で大人しく寝るわ」

「このクズ!生きて帰れると思うなよ!」

「お前が言うと本当にそう聞こえるが…まぁ、楽しんでな」

「明日の朝が楽しみじゃ」

「…気が向いたらカメラを仕掛けに行く」

「お前らなんか嫌いだぁー!」

 

 結局女子達の部屋に赴き、トークをする事に。壁際に追い詰められ、僕は逃げられない。

 

「改めて見ると凄いねぇ…明久の事好きな人こんなにいるんだよ」

「それも学園を代表する美人ばっかじゃん」

「…一思いに殺せ」

「なんでー?お花畑で選り取りみどりじゃーん」

「…女子トークに僕が混じってること自体処刑も同等なんだ」

「アキ君なら皆問題ないと思ってるのよ」

 

 …僕を男として見てないと言ってるも同義なんですがそれは…

 

「沙姫先輩の言う通りですよせんぱい!せんぱいなら皆信用してますし」

「…はぁ、帰っていいですか」

「ダメだよ、帰ったら今度はティアーユ先生に食べられちゃうよ」

「ティアーユ先生はそんな事しないよ、お淑やかだし」

「どうだろう、そういう人に限って肉食だよきっと」

「君みたいに誰これ構わず胸を触る人じゃないから」

「酷いなぁ」

 

 …里紗に至っては本気でどうしようか考えものだからなぁ。

 

「…でもティアは土屋さんみたいなタイプです」

「…マジで?」

 

 あのティアーユ先生がムッツリスケベとはたまげたなぁ。

 

「失礼な、美女と美少女のおっぱいしか触りたくないよ」

「…お前はオヤジか」

「ひっどーい、こんな麗らかな乙女をオヤジ呼ばわりするなんて!」

「現にそう言われるようなことしてるだろ!」

「アキ君って里紗ちゃんと仲良いねー」

 

 里紗と一悶着しているとルンさんがそんな事を言い出した。

 

「そう?」

「うん、だって気兼ねなくそんなに話せるんだもん」

「違う違う、腐れ縁で振り回されてるだけだよ」

「そうでもしないとずっとこいつぼっちだったからねー」

「ほっとけや」

 

 一言黙ってれば美人だとは思うけどなぁ…

 

「お?黙ってれば美人なのにって顔すんなし」

「心を読むな!」

 

 僕も読心術を得ようか迷う。皆身につけてて一方的に心を読まれるんだもん。

 

「それにしてもヤミちゃんは変わったよねぇ」

「そ、そうですか…?」

「前まで明久に興味無さそうにしてた割には今じゃこれだもんねー」

「それは違うよリサ!明久にたい焼きもらってから好物にしてたしコート貰った時は夏場でも着てたもん」

 

 ララが要らんことを言うとヤミの顔が一気に朱に染まり、僕の後ろから出てこようとしない。全く、皆してヤミを虐めるんだから…

 

「虐めるのはやめなさい」

「そーいやヤミちゃんにだけ贔屓ばっかしてるよね」

「は?」

 

 訳の分からん事を言い始めたララのせいで皆がそうだそうだと言わんばかりに僕を責め立て始める。

 

「そうです!ヤミちゃんばっかりずるいです!」

「そうだよ!ヤミちゃん抱きついても文句言わないでしょ?」

「せんぱいはお姉ちゃん好きだもんね?」

「…帰ります」

「えぇー?なんでよ?その前にこの疑惑を晴らしてから!」

「五月蝿いんじゃい!僕は悪くない!」

「じゃーもっと私達にもベタベタしなさい!」

 

 ララの一言が皆を焚きつけ、抑えようのない波へと変わっていく。僕はどんどん悪者扱いだ。帰って寝たい。…今何時だと思ってる?もう23時に差し掛かるぞ?

 

「…明久、眠そうだから…もう辞めにしませんか…」

 

 そう言ってくれたのは後ろで隠れてるヤミ。あぁ、君だけが僕の味方なんだ!

 

「…むぅ、明久なんで眠たそうなの」

「休みたいんだよ…」

「アキ君も疲れてるし…ね?」

「…仕方ないか、今日はお開きにしよ」

「明日また遊んでよね」

「善処しよう」

「明日は明奈ちゃんになって一緒にお風呂だからね!」

「…勘弁してくれ…」

 

 なんとか解放されて部屋に戻ってきた。

 

「あら、お帰りなさい」

 

 …まだこの二人が残ってた…

 

「振り回されてばっかで疲れました…あれ、布団…」

「ごめんなさいね?勝手に場所決めちゃったの。明久君は真ん中で」

 

 真ん中…か。下手すれば…やばい。モモから僕は寝てる間に女の子にいたずらするらしいし…

 

「…いや、僕は床で寝ます」

「ダメよ!か、風邪…そう!風邪を引いてしまうわ!」

「落ち着きなさいティア。そうよ。風邪を引かれるのは困るわ。問題ないわよ。ただ寝るだけだし…それとも?明久君は期待しちゃうかしら?」

「…寝ます」

 

 僕の精神はハニトラに耐えるだけでもう疲れた。寝てしまえば問題ない。そう思って布団に入る。

 

「じゃ、私達も寝ましょうか」

「えぇ、そうね。明久君、おやすみ」

「えぇ…おやすみなさい」

 

 旅行先の布団はいつも慣れなくて寝るのに時間がかかってしまうけれど、今回は疲れ果てていたのか直ぐに意識が落ちていった。

 

 

 ―――

 

 雀達の鳴き声が部屋に聞こえてくる中、僕は目を静かに、ゆっくりと開き始める。

 

 まず目に見えてきたのは肌色。その後、良い匂いが鼻をくすぐる。

 

 まだ完全に目覚めた訳では無いため何が目の前にあるのかわからず、僕は目の前の肌色に手を伸ばした。

 

 掴んでみると、むにゅっと柔らかな感触。ふむ…マシュマロみたいだ。そして手探りで触ってみると、今度は硬い何かが僕の手に当たる。そこで僕の意識と言うか、ぼやけた頭は直ぐにクリアになっていく。そうなる事で目の前の状況がよくわかるようになる。

 

 ふむ、これは…僕にとってはなかなかハードな事案である事が窺える。何故か?これは…きっと…

 

「んぁっ、あぁ…っ…」

 

 何かに悶える声が聞こえてくる。この声の主は…ティアーユ先生だ。よし。どうしようか考えよう。

 

 1。とにかく解いて素直に土下座。皆や先生達にもバレずに僕だけの秘密に。

 2。先生を素直に呼んで起こし、事の説明をしてから誤解であることを証明。

 3。まだ起きてないのをいい事に続ける。

 

 …3は論外。2は先生がまだ寝てるし、起こすのも可哀想。

 

「1しか有り得ないな…」

 

 取り敢えず解く事に。

 

「な、なんだこれ…離れない…」

「おはよう、明久君…あら?」

 

 見つかった。御門先生に。

 

「我慢出来なくなってティアを襲ったのね?」

「この体制を見てください。僕が襲ったように見えますか」

「知ってるわよ、ティア寝相悪いし。ほらティア。起きなさい。明久君を離したくないのはわかるけど明久君が動けないでしょ」

「う〜ん…まだあと5分…」

 

 そう言って目をぼんやりと開けて僕を見る。僕と目が合ってから僕は気まずそうに挨拶を交わす。

 

「…おはようございます」

「はっ!?ご、ごめんなさい!」

 

 布団を被って出てこなくなった先生を宥める。…取り敢えずさっき胸を揉んだことは無かったことにしよう。

 

「さーて、朝ご飯を食べに行くわよ。ティア、明久君を独占出来て満足?」

「ミカド!…はぁ、ごめんなさい。明久君」

「いえ、悪い気分にはならなかったしむしろ天国でした」

「…明久君のエッチ」

 

 …心にきた。大人のお姉さんというのはやはりこう、素敵な魅力がある。

 

「明久君、まだティアに抱きついていたいという顔をするのは辞めなさいな」

「え、してましたかそんな顔」

「…明久君」

「いや、どう見ても御門先生の言いがかりでしょうに」

「起こらないからホントの事を言いなさい?」

「…7割思ってました」

 

 そう言うとティアーユ先生が布団から出てきて僕を抱き締め始めた。…へ?

 

「…私でいいなら…」

「…」

「ティア、明久君が恥ずかし過ぎて言葉に出来ないみたいよ」

 

 改めて感じてしまう。ティアーユ先生って結構柔らかくていい匂いがするなぁ…

 

「おーい明久ー、飯だぞ…」

 

 なんという不幸か、雄二がやって来てしまった。

 

「…お邪魔しました」

「ま、待て!雄二ィィィ!」

 

 僕が言っても雄二は行ってしまう。ま、まぁ僕は雄二を信じるけど…

 

「ティア、もう満足した?」

「え、えぇ!ありがとう、明久君」

「…は、はい」

 

 最近の先生は何故かアプローチが激しい。僕がラッキースケベでいつも先生に危害があるからその仕返しか?てかそれなら照れたりしない気がするが…うーむ、乙女心がわからん。女の子になったとはいえ中身が男だから学ぶ術も無かった。結局永遠にわからぬままなのだろうか。

 

 取り敢えず朝食を取りに昨日やってきた場所へ。バイキングだが、何が並んでるんだろうなぁ…

 

「おう、来たか」

 

 雄二達が待っていた。だが。

 

「…」

 

 女子達の視線が痛いのだが?

 

「悪い明久、口が滑ったわ…グェッ!」

「…今ここで殺してやろう」

「ま、待つのじゃ!本気で雄二が白目を剥いとる!」

「ふ、ふふ…雄二を殺したら僕も死ぬんだ…秀吉も一緒だよ…」

「や、やめるのじゃああああ!」

 

 雄二を死ぬ寸前まで首絞めてからバイキングでご飯を取って席へ向かう。男子4人で固まっているが、離れた所からの視線が痛い。

 

「…死ぬかと思った」

「そのまま死ねば良かったのに」

「…冷たくね?」

「お前の口の緩さが招いたんだろ」

「悪かったよ、帰ったらなんか奢ってやる」

 

 …仕方ない。僕の心はロシア大陸より広いからな。許してやろう。

 

「はぁ、面倒事が増えた…」

「女子を厄介事にしか見てないお主の腹の底が気になるのじゃ」

「…人の気持ちを考えるのがめんどくさいんだよなぁ」

「…サラッとクズ発言をする所は昔のクソ陰キャだったお前と変わってない」

「黙れスケベ野郎め…」

「…お前のラッキースケベ率に比べたら俺は健全だ」

「ちくしょー…」

 

 何も言い返せない。…ところで…

 

「…どうしたの、ヤミ」

「…こっちの方が落ち着くので来ました」

「おう、お前も男子トークでよければ仲間に加わってくれ」

「…私で良ければ、宜しくお願いします」

 

 ヤミも雄二達と仲が良くなってるから気軽に話せて便利だ。

 

「さて、向こうは何話してた?」

「…明久がティアに取られたって」

「…確かに抱き締められてたもんな」

「御門先生が唆して来たんだよ、それでティアーユ先生があんな事に」

「…そういやお主、明久の何処を好きになったんじゃ?」

 

 秀吉がそんな事を聴き始めた。なんて事を。

 

「やめろ、ヤミも言わなくていいよ」

「…優しい所とか…です」

「優しい…ねぇ」

「…明久は優しいのか?」

「…えぇ、とても」

 

 …なんだか照れてきた。雄二達までこっちを変な目で見るし。

 

「ま、唯一の取り柄だな」

「は?」

 

 欠片も微塵もない雄二に言われたらおしまいだ。

 

「今日は何をするんですか」

「うーむ、決めてないの…なにか案があれば決めてもらおうかと思ったんだけどあの様子だしね」

 

 女子の方をちらりと覗き見る。うわ、目が怖いよ…

 

 

 ―――

 

「ティアーユ先生、申し開きはありますか」

 

 女子達はティアーユを囲み尋問を行っていたのだ。

 

「私が弁護してあげるわ、ティアは寝相悪いし明久君が欲しくて我慢出来なくなったのよ、自制心がなくなったのね」

「有罪」

「ま、待って!熱っ…!」

「だいたい先生は明久と似てるんですからもう少しですね…」

「うぅ…ぐうの音も出ない…!」

「あれ、ヤミちゃんは?」

「あの子なら明久君の所に行ったわ」

「「「えっ!」」」

 

 言われて明久の方を見ると笑って話しかけるヤミの姿が。

 

「「「ぐぬぬ…羨ましい…」」」

「素直になって話に行けばいいじゃない?明久君が女たらしなのはもう前から知ってるでしょう」

「部屋割りがティアーユ先生にとって得しかないし抱き着いたと言う事件があったから断罪しないといけないんですよっ」

「まぁ私が決めたのが悪かったわ。でもティアだって男を求める事だってあるのよ、それが生徒でも」

「うぅ…!」

「言われてみれば先生も女だし…」

「その矛先があの明久だもんねぇ…」

「あの根暗がここまでなるなんて私でも予想出来なかったよ」

「根暗…?」

 

 その一言でティアーユも止まった。里紗は夜に話しますと言ってご飯に戻る。

 

「でもこれで明久さんもハーレムの王ですね」

「せんぱいモテモテだねぇ」

「そりゃ人相ブサイクでも優しいしね」

「明久君はブサイクじゃないよ?」

「確かに、顔もイケメンだと思いますけど」

「せんぱいは顔も心もイケメンだよー」

「そうだよ!…もしかして里紗ちゃんホントは明久君の事はそんな好きじゃない…」

「バカ言うんじゃないよ、私が明久嫌いなんて事は無いわ」

「リサ先輩ってギャルそうに見えて純情なんですね」

「ギャルって…そんな風に見える?」

「確かに見えるんじゃないかなー」

「性格だけならギャルっぽいですね…ひゃうっ」

「そんな事言うモモちぃはこうじゃー!」

 

 女子達のご飯も賑やかになるが、男子達が立ち上がるのを見て一斉に食べ終える。

 

「で?どうするのさ、明久の事」

「ヤミお姉ちゃんの様に素直になって抱きついたらどうですか」

「それができれば苦労しないのよ…」

「私出来るよー」

「春菜とか瑞希とか多分死ぬでしょ」

「うん…その点ではララちゃん達が羨ましい」

「では素直になる発明品を貸してあげよう!」

「…辞めといた方がいいですよ、お姉様の発明品は…」

「「貸して!」」

 

 モモの静止を聞かずに道具を借りる2人。それからご飯を食べ終え各自部屋へと戻っていく──────────


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