旅行から帰ってきてから僕は部屋の片付けをしたりして今日という日に備えた。
今日はララのお母さんが来る日。失礼な事は出来ないし、そういう所は見せたくないのだが……
「なんで君達いるの?」
雄二と秀吉、康太が家に遊びに来ていた。
「いや、ララのお母さんがどんな人か気になる」
「やだ! こいつ人妻狙ってる!!」
「おいゴリラ! 母上を狙うなんてアホみたいな事言うんじゃねぇよ!」
「狙ってねぇよ! ただお前らから1度も口にされなかったからどんな人かと気になっただけだ!」
「まぁ確かに話した事があるのは明久さんだけですし」
「とにかく何もせずに待ってて、僕が迎えに行ってくるから。ララ、お母さんがどこにいるか教えて」
「あいあいさー」
外に出て指示された方へ向かう。辿り着いたのは駅。
「……こんな所に居るのか?」
『オラァ! 退きやがれ!』
「ん?」
声のした方向を向くとそこにはこっちに走ってくる男。倒れた女の人が叫ぶ。
「泥棒よ!」
「泥棒……か。かっこ悪いなぁ」
僕の方を逸れて顔を隠している女の人の方へ向かう。
「力の無さそうな人を襲うのか……泥棒ってほんとカッコ悪いな」
「邪魔だァ!」
女の人は突き飛ばされ、方向を変えて僕の方へ向かってくる。
「邪魔だガキ!」
「……ネメシス、行くよ」
『任せろ』
ネメシスに力を借りて泥棒に突っ込む。
「舐めんなぁ!」
『振りが甘い、素人か?』
「そりゃ素人でしょ……そこだっ」
ナイフを紙一重で躱して足払いをかける。
「お、おぁぁ!?」
勢い余った男は転けてそのまま壁に追突し気を失ってしまった。
カバンを取り戻して女の人に渡す。
「はい、どうぞ。お怪我は?」
「な、無いわ……ありがとう……」
次に突き飛ばされた女の人。ピンク色の髪で顔を隠していて……普通の人とは違う格好をして……あ、あれ……?
「大丈夫ですか?」
「ありがとう……あら? あなたは……」
「え?」
「やっぱり! 明久君ね」
という事はこの人が……ララのお母さん……うわぁ、声だけでわかる。凄い綺麗な人だ……
「カッコよかったわ」
「いや……決してそげな事は……あ、ララ達も待ってるので家まで案内します」
「ありがとう、家出するような子を3人も家に置いてくれて」
「まぁ、一人置いたらもうどうとでもなるんで」
「そうだ、またさっきみたいな人が居たら困るからエスコートしてくださる?」
「エッ!」
腕に抱きつかれてしまう。身長は同じくらいだから……あわわ……こんな所誰かに見られたら……僕は……
「あれ? 吉井じゃん」
「げぇ! 須川君!」
フラグ回収乙。一番会ったらヤベー奴に会った。FFF団の団長。
「ん? その人は……」
「あら、お友達かしら?」
「どうも、吉井君の友達の須川です。……おい吉井、次学校の時覚えてろや」
そう言って帰って言ってしまう。ヒェッ、怖過ぎる。
「ユニークな子ね」
「……あんなのばっかなのも苦労しますよ」
家に着いて扉を開けたのは……
「おぉ、帰ったか……ん?」
「あらナナ、元気にしてる?」
「母上! ……って! なんで母上と腕組んでるんだー!」
「ぎゃあああああ!!」
飛び蹴りされた。お母さん思いのいい子だって再認識したから許してやろう。運が良かったな!
「ダメじゃないナナ! 明久君は駅前で助けてくれたのよ? 泥棒を一瞬で倒したの」
「母上、いいか? こいつヘンタイだから! その……頼りになったり優しかったりするけど! ヘンタイなんだ!」
「男の子なんだもの、至極当然だと思うわ」
「待ってください、変態はこの先の3人だけです。僕はまともだ」
「うるせぇ! いっつも女の股や胸に頭埋める癖に!」
「……ぐうの音も出ない」
「なにか事情があるんでしょう? 私、明久君がそんな人には見えないわ……な、泣いてる!?」
涙が止まらない。
「は、話をちゃんと聞いてくれるお母様で良かった……3人は聞いてくれないので……ぐすっ」
「な、なんだよ……悪いのは明久だろ」
「僕の信じるのはお母様だけです」
「まぁ……こんなに傷ついてるのに……ナナ? 私はあなたをそんな風に育てた覚えはありません」
「ふんっだ!」
ナナが行ってしまった。まぁ仕方ないか。
「……ララやナナ、モモは寂しかったんです。許してあげてください」
「えぇ? 何故私が? 許してあげるのは明久君の方じゃ?」
「……僕はただ皆が笑ってられればそれでいいんです。……僕は皆に元気を貰ってる側だから」
そう言ってリビングへ。雄二達がゲームをしていた。
「ララ、お母さん来たよ」
「あ! ママ!」
「お母様!」
「感動のご対面ってわけだ。俺らお邪魔だろ、出ていた方が良いんじゃないか?」
「お気遣いありがとう。大丈夫。それに私この子達に説教しないといけないの。母親として」
「「「「へ?」」」」
男4人で顔を見合わせているとララ、ナナ、モモの頭にゲンコツが。ヒェッ、なんだあの威力……
「全く、家を抜け出して居候させて貰ってるなんて……たまたま吉井君が優しかったから良かったものの悪い人だったらどうするんですか」
「「「……ごめんなさい」」」
「まぁまぁ、その辺に……」
「ダメです、明久君には申し訳ないですけど」
「それに、お父さんやお母さん側にも非はあると思います」
「……えっ?」
「明久……」
「確かに3人とも抜け出した理由はくだらないかもしれない。……でも、3人は自分のしたい事、やりたい事を我慢してきてそれが爆発しただけなんです。……ララのお見合いは嫌と言うのは知ってました?」
「……それは……」
「僕がこんな他の家の事をどうこう言うつもりはないですけど、お見合いをしたくないとかそういう声に耳を傾けてあげて欲しいんです」
「明久さん……」
雄二達も頷いているが多分話についていけてないだろう。
「……でも居候させているのは……それに、お家の人達にご迷惑でしょう?」
「家には今の最高責任者は僕ですし、問題は無いです。……それに、ララ達が来て悪い事があった訳じゃない。……寧ろ僕にとってはプラスに変わってるんです。……僕からもお願いします、3人を許してあげてください」
「……ま、まぁ明久君がそう言うなら……」
許して貰えたらしい。ララとモモが抱き着いてくる。
「ありがとう明久ー!」
「た、助かったよ……ありがと」
「ありがとうございます! 明久さん!」
「でもお母さんの言う事はちゃんと聞きなよ、うちのバカ親みたいに仕事ばっかりで子供の事なんかちっとも見向きもしない親とは違うんだから」
「明久の家は親が海外に行ってて居ないんです」
雄二が補足を入れてくれた。
「そういえばお名前を聞いていませんでした、お名前は?」
「坂本雄二」
「木下秀吉」
「……土屋康太」
「そう。改めて自己紹介を。セフィ・ミカエラ・デビルークと申します。この子達の母親です。よしなに」
「……一つ失礼な質問いいですか」
康太が聞いた。
「どうぞ」
「……三人同様に尻尾はないんですね」
「確かに……」
「私が代わりに説明します。私達はデビルーク人とチャーム人のハーフなんです。これはデビルーク人の尻尾で、お母様はチャーム人の最後の末裔で、まぁ私達はお母様に似ているんです。尻尾はお父様の遺伝です」
「じゃあ三人とも馬鹿力なのはデビルーク人の血か」
「失礼な! 岩を持ち上げたくらいでぇ〜!」
「十分馬鹿力だよ!」
「チャーム……魅了か」
「そうだぞ、母上の顔を直視したらお前ら全員母上にメロメロだ」
「そんな特殊能力あるわけないよ」
僕が呟くと、ナナはお母さんのヴェールを取った。
「あ! ナナ!」
ヴェールを取ると、ララ達がそのまま大人になった……そんな印象の美顔がそこにはあった。確かに美しい……でも……
「何か変化あったか?」
「綺麗だとは思うが……」
「……俺達はチャームにかかっているのか?」
「さぁ?」
そしてセフィさんの顔を見るとこっちを見てわなわなと震えていた。
「な、何故……? こんなにも美しい私が……」
「あ、自分で言うんだ」
「あぁいう所はお前の嫁そっくりだよな」
「嫁じゃないって言ってるだろ!」
「……モモ、チャームにかけられるとどうなるんだ?」
「ナナの言った通り、メロメロになってお母様を追いかけ回します…ですが4人共凄いですね」
「う、嘘よ! 本当はかかってるんだわ! そして私若い男の子達に(自主規制)されて(自主規制)されるんだわ!」
……え?
「……おい明久、なんかコメントしろ」
「アホか、君の話術でなんとかしてくれ」
「秀吉、頼んだ」
「馬鹿か、こういう時こそ康太じゃろ」
「……俺はコミュ障だ」
「つっかえ!」
「てか凄いね! 4人ともかからないんだ!」
まぁね……
「確かに宇宙一の美を誇るのは納得したが」
「追いかけ回すまではのう……」
「……そんな欲に我慢出来なくなった猿と一緒にするな」
「僕らは人間だ。……感情だってコントロールしてみせるさ」
「因みに今までかかったことの無い人は4人含めてパパだけなんだよ!」
「へぇ、すげぇな」
「でもママ、チャームにかからない男の人好きなんでしょ?」
「えぇ。自分をコントロールできる男の人は素敵だと思うわ。……あなた達はいかなる状況下でも我を通すことの出来る人。心より尊敬します」
「ご丁寧にどうも」
「……まぁとりあえず座って。粗茶ですが出します」
「明久、俺ハーゲンダッツ」
「帰れ」
「ママ、さっきの言葉の意味を教えて〜?」
ララの発言により男陣とセフィさんが固まった。モモも固まってるな……ナナは知らない純粋な子か。良かった……
「お、大きくなったら教えてあげるわ」
「私もう子供じゃないよ! あ、そうだ! 明久や雄二達は知ってる?」
「「「「エッ!!!」」」」
四人同時に声が出た。仕方ない……ここは……
「ララ、そう言うのはお父さんかお母さんに習うものだよ」
「あ、明久君!? そんなご無体な!」
「い、いや……部外者が教えるのは流石に……ほら! お母さんが教えてあげるのが普通ですよ! 親が子に知識を与えるだけです!」
「明久君は部外者じゃないはずでしょう! これから私をお母様と呼ぶ人間なんですからね!」
「そうだ! お前は部外者じゃねーだろ!」
「真面目にやるのじゃ!」
「……お前それでも夫か」
「お前らはどっちの味方だよ!」
結局ララは僕の方に抱き着いてきて……
「わかんなくてもいいや、後で調べればいいし」
「……だ、ダメです! 調べてはいけません!」
「どうして調べちゃいけないの?」
「そ、それは……」
僕らがニヤケ顔になる。人妻がエロい台詞を吐くのは堪らないぜ。ヤミはメアと出掛けているし今は僕らしか居ない。ハーレムがバレる事も無い。この勝負、僕の勝ちだ!
ピンポーン
そこに狙ったかのタイミングでインターホンが。
「はい、今出ます」
そこには……
「はーい、ダメ息k……」
閉めた。凄い勢いで閉めた。
『ちょっと! 何すんのよ! あんた! まだ反抗期なの!?』
「あーもう! ねぇ! そこにいんでしょ!? 止めてよ!」
『……すまん、私じゃ止められない』
「使えねぇー! くそぉ!」
ドアが無理矢理開いた。ま、まさか……蹴り飛ばしたのか……!?
「あんた、母親に勝てると思ってるわけ?」
「う、うるさい……! 今まで連絡のひとつも寄越さなかった癖に……!」
「ん? 何この靴……あんた、女を連れ込んでるわけ!?」
「話しても聞かない人に話せって言うの?」
「いいよ、僕が止めるから話してくれるかい?」
「明久ー、何かあったのー?」
あ、来ちゃった。
「明久……説明しなさい……」
「ちゃんと暴走せずに聞きなよ」
リビングに向かってセフィさん達には僕の部屋へと行ってもらって話を行う。美柑も居て家族会議だ。事の顛末を全て話す。
「で? あんたが居候させてると」
「良いだろ、実質今この家の所有権限は僕にある」
「玲はどうしたのよ」
「仕事とララ達が連れてきた男の人とイチャイチャしてるでしょ」
「ふーん……で? あんた明るくなった?」
「さぁね」
「明久が決めてやった事だ。僕は何も口出ししないよ。それに、話を聞く限り明久がやった事は全て間違ってないからね」
「……父さんがまともでよかったよ」
「何よ! 私はまともじゃないって?」
「誰が見てもそうだろ、頭のネジ外れてませんか?」
「やめなよ……で? お仕事はどうなの?」
「結局向こうで頑張る事にしたよ。ごめんね、家に居られなくて」
「なんでこっち来なかったのよ。明久、あんたなんか特に」
「……行けるわけないだろ、友達が居るんだ……それに」
僕はお茶を飲んで流しに置いて答えた。
「僕は今満足してるんだ。……皆が僕を変えてくれたから。……そっちに行ってたら僕は何も変わらなかった」
「……そう。もう良いわ。あんたも子供じゃないしね。……私が何を言ってもきっと無駄だろうし。……私は、仕事ばかりでアンタの世話をしてあげられなかったからね」
「……なにさ、仕事ばっかりの癖にらしくない」
「……そうね、私は仕事ばっかりの子供に顔を見せてあげることもできないダメ親よ」
「……はぁ、ほんっと今更になってこれだから……もういいよ、話は終わりだ」
「アキ!」
立ち上がって部屋に向かう。皆が待っていたのか、僕が来る事を意外に思っていたのか。僕が来ると目を丸くする。
「もう良いのか?」
「話は終わった。僕は買い物に行ってくる」
「……えっ、どう言う……」
そう言って僕はそそくさと家を出た。全く……せっかく楽しかったのに……全部パァになった。そう思いながら僕は今日の夕飯の為の買い出しへと向かった。
──―
「失礼しまーす……あっ」
ララがリビングに向かうと、顔を俯かせた三人がいた。
「ご、ごめんなさい」
「あら、あなたは……明久の……」
「……友達のララ・サタリン・デビルークです」
「……ごめんなさいね、こんな……」
「いいえ……あの、なんでそんなに暗いの?」
「……僕らは自分達の過ちに今更気付いたのさ。……仕事を沢山して、お金を稼いで……いつか子供達に顔向け出来るような父親と母親になろうとした。……妻は明久ばかり厳しくしててね。……それで嫌いになったのかな。まぁ反抗的な態度をとるようになったんだ」
「……何も言い訳はしない。私は親として最低なの。……だから今日、向こうへ経つ」
「……なんで明久にだけ厳しくしたの? そんなに明久の事が嫌いだった?」
ララが問うと明久の母親は机を叩いた。
「嫌いなわけがない! ……あの子は何をやっても平均より下だったから……厳しくして、苦労しないようにしようとしただけ」
「……明久の気持ちとか……聞いてあげたりした?」
「……してない。聞こうとしてもすぐ切られるし、美柑しか通話が無いから……いえ、これも言い訳ね」
「……今の明久は、変わったんだよ。中学の時に色々あって引きこもって……それでも変わりたいと願って、今ようやく笑えているの! ……明久を好きな人が沢山いるんだよ! えぇと……」
「……もう私は親としてあの子に顔向け出来ない。……あの子を苦しめる事しか出来なかったから……」
「……私のママも……明久と同じだった」
「えっ?」
「お仕事ばかりで……だからわかる。……明久は寂しかったんだよ。……ママに優しくされたかっただけなんだってわかるの」
「ララちゃん……」
静かに手を取って礼を告げた後、スーツケースを持って歩き始めた。
「もう良いの? お姉ちゃんは?」
「玲はつい最近顔を合わせたから。2人の元気な姿を見れてよかった。それに、明久はもう一人じゃないしね」
「……まぁ飛行機もそろそろだし。ララちゃん。あの子をお願いね」
「……そうだ、明久はハーレムなんだって? 何人くらい?」
「10人以上かな」
「凄いね、何をしたらそうなるんだろう」
「明久は皆に優しいんだよ!だから皆から好きって言われるの!」
「そうなの……とにかく、ありがとう。上の明久のお友達にも言っといてくれる?」
「うん、わかった……明久のママは明久に会って話はしなくていいの?」
「……私は……臆病だから」
明久の母親はそう言って出て行く。父親も合わせて出て行く。
「……結局、蟠りは消えないね」
「……私、昔からこうだった。……いつもやって後悔する。……これがあの子に対する最高だと思ってやってきた。……それが窮屈に思ってるのも知らないで」
「……そうだね……ん?」
明久の両親の前に買い物袋を持った明久が。
「……なにさ、もう良いの?」
「うん。二人の顔を見れてよかったし」
「そうかい」
「……明久」
「何?」
「……ごめんな、傍に居れなくて」
「……ごめんなさい、あなたの本当の気持ちに触れる事すら出来ない母親で……こんなダメな大人が親で……ごめんね……」
明久は俯いて二人の横を通ろうとする。
「……別に、大丈夫。父さんと母さんがいなかったら今の僕はいないし」
母親の隣に立ち止まる明久。
「……風邪、引くんじゃないよ」
「……っ!」
「……体調崩しやすいんだし、気をつけなよ……事故に遭うなよ、寝覚めも悪いし」
「……うん。わかった」
「……僕の事は良いから、誰かに優しくしてあげなよ。……次は、ちゃんと予定を立てて帰ってくる時を教えてよ。……ちゃんと用意してるから」
「……私を……恨んでないの?」
「……そんなに子供じゃないよ。……それに、父さんと母さんだって頑張ってるのわかるから」
「……!」
そう言うと明久は去って行く。
「……僕らも頑張らないと……今度は胸を張って子供達の前に立つ為に」
「……まだ、出来るかしら」
「……親である僕らが頑張らないでどうする」
「……えぇ、そうね」
二人はそのまま駅へ向かって行くのだった。前とは違って笑顔で。
──―
「ただいま」
「明久! ママ悲しんでたよ!」
「……その件はもういいよ、今話してきたし」
「えっ? 会ったの?」
「これ以上追及する必要はない」
「明久がそれでいいならいいんだけど」
そう言ってリビングに戻るとセフィさんと雄二達、モモにナナががテレビを見ていた。
「おう明久、今日の夜飯はなんだ」
「出てけよ、なんであたかも夜飯頂きますなんて考えしてんだ……霧島さんに浮気って言うぞ」
「待てよ! 秀吉と康太はいいのか!?」
「秀吉も古手川さんに、康太は工藤さんにチクるぞ」
「ゲス過ぎるのじゃ……」
「……俺はただ明久の手料理が食いたい」
「……女の子に言われたかったよその台詞は……チェッ、良いよ……許してやる」
「流石明久大明神!」
「器が海より大きいのじゃ!」
「優しさなら誰にも負けない仏の明久」
チッ! 煽てるなんて……そんな事より……
「ララのお母さんは食べて行くんですか?」
「えぇ! あなたとララの事をあなたのお母さんに話したの。そしたら息子をよろしくお願いしますって!」
「……ん?」
「ママ暫く泊まっていくんだって!」
「良かったじゃねぇか、お前らも母親とは一緒に居たいだろうしな……おい明久ァ! テメェまさか出てけとか言わんだろうなぁ?」
「そうじゃぞ、いくらお主がクズでも親子を出て行かせる事はせんじゃろうて」
「……俺はお前を信じてる」
「……気が変わった、お前ら全員帰れ」
3人をララの発明品で追い出してからご飯を作る。
「……僕だってそんなに鬼じゃないよ……ララ達だって寂しかったんだからお母さんと一緒に居たいなら居ればいい。……ここは自由に使って構わないから」
「流石明久!」
「ありがとう、明久君」
「……まぁ窮屈な家かもしれないですけど」
「じゃあ家にいる間が私が明久君のお母さんになってあげるわ」
……何を言ってるんだ???
「……遠慮します、手のかかる娘3人抱えておいて言うセリフではないです」
「むぅ、私の美しさの前に落ちない男がいるなんて釈然としないわ!」
「どう考えても普通の人妻が吐く台詞じゃないんだよなぁ……美柑、風呂洗ってあるから栓してお湯沸かしてー」
「はーい」
「……いつもこんな感じなの?」
「……少し前までは違いましたけど、基本的に僕と美柑で料理したり洗濯したり家事をしてるんですよ」
「……なんて偉い……あなた達も見習いなさい」
「子供がそんな窮屈な事をするもんじゃないですよ」
「あなた達も子供でしょ?」
「……僕は、父さんも母さんも仕事してるんだから出来る事はしなきゃって思うだけで」
「偉いわぁ……娘3人もこんな風になってくれないかしら」
「そうですか? 僕は今の三人は好きですよ」
「えっ! それは食べちゃいたいって意味で!?」
なんでそんなに目を光らせて言うんだ!
「……あぁ、モモのお母さんだなぁって思った」
「失礼な! 私はこんな目に見えて卑猥な事は言いません!」
「……元気があって微笑ましいって意味ですよ」
「……言ってる事お爺ちゃんじゃない」
「ははは、違いないです……あ、嫌いなものとかありますか」
「特に無いわ。何を作っているの?」
「パエリア」
「わーい! 明久の得意料理だー!」
「明久のパエリアは店なんかに負けないよな」
「ナナが素直に褒めるとか天変地異の前触れだけど普通に嬉しいからもっと褒めて」
「やだ」
「ああああああああああああ!!」
発狂し始める。ナナに嫌われたぁ!
「……ナナ、お願いだから明久さんを虐めるのはやめてあげて」
「虐めてねぇよ……」
「こら! 明久を虐めない! 明久悲しんでるよ! こういう時はどうするの!」
……あれ? ララがお姉ちゃんっぽい事してる……
「……悪かったよ……美味しいってのは本当だから」
「……」
「な、なんて顔してんだよ」
今の僕、凄い気持ち悪い顔をしてそう。
「……まぁ、ナナは優しいってわかってるから」
「〜ッ! お前のそういうとこだよ!」
「ぎゃああああ!!」
お腹に蹴りを入れられたけどなんとか料理は出来た。
「美味しそうね……これ明久君が……?」
「1から作ってるんだよ!」
「ギドもこれくらいしてくれないかしら」
「無理だよ! パパ不器用だし」
「センス無いし」
「お父様が料理は想像出来ませんね」
「多分今頃泣いてると思うよ」
「間違ってないから良いわ」
「……味方0なのか」
絶賛を受けながらご飯を食べて風呂へ。……男が1人ってのも今考えればなかなか辛いな。
『明久君、良いかしら』
……何しに来たんだ……?
「はい、なんですか」
『……確認をしておきたくて』
「確認?」
『……あなたは、ハーレムだと聞きました』
「あー……」
確かモモの情報だとセフィさんは物凄いハーレム嫌いだとか……
『……でもあなたはそんなに女性を好きではないとお見受けしたの』
「好きじゃないわけじゃないし、寧ろ好きですよ」
『え? そうなの? じゃあララの事は……』
「……彼女は特別なんです」
『……特別?』
「……何も持ってなかった僕の手に沢山のものをくれた……そんな特別な人。それがララなんです。……ハーレムと言っても、僕はただ普通に女の子と接してきただけなんです。……実際僕はどうすればいいのかわからないし、その答えは未だ曖昧だけど分かってる事はある」
『それは?』
「……皆を不幸にさせない為なら僕はなんだってするって事です」
『なんだってするの?』
「……僕は、ララが危険な目に遭ってるなら、血を流す事だって厭わない。……友達皆同じだけど……傷ついたりするのは見たくないから」
『……そう、わかったわ……やっぱり、話で聞いていた通りの子だった』
「え?」
聞いていた……ララかな?
『……優しくて、強くて……夫に似てる所があるけど、圧倒的に違う部分がある』
「何処です?」
『争いが嫌いな所。……そういう点では私はあの人よりあなたを選びたいと思うわ』
「……人妻がそんな事言っていいんですか」
『人妻だけど私も女よ?』
「それを夫に聞かせてあげてください……話が終わったなら向こう行ってもらっていいですか、僕もう出るんですけど」
『あぁ、ごめんなさいねっ』
風呂から出て帰ってきたヤミとメアを迎え入れ、部屋から布団を持ってきてリビングのソファーに布団を載せた。
「ララのお母さんは僕の部屋で寝てください。……一応綺麗にしてありますので」
「えぇ!? わ、若い男の子の部屋ってその……問題とか……」
「あぁ、お母様。その点は問題ないです。明久さん本当に男の子の部屋ってよりかは囚人の部屋ですから」
「ほんっと君たまに失礼だよね」
囚人ってなんだよ! まぁその通りだけどさぁ!
「……まぁ僕はそろそろ寝るので……ヤミ、メア。ご飯は?」
「頂きます、部屋に持って行っていいですか、後で洗いますから」
「わかった、だけど洗わなくていいよ。流し入れといて」
「……わかりました、メア。行きますよ」
「はーい! せんぱい、いただきますね」
やがてリビングには僕だけになり、明かりを消してソファーの上で静かに目を閉じる。自分の部屋よりかは涼しい気がするのは気の所為だと思うが、まぁこういう体験もありだろう。さて、明日は何をしよう。宿題をしながらどこかへ遊びに行くのもいいかもしれない。そう考えながら僕は意識を落としていくのだった。