バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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Function

「え? もうそんな時期?」

 

 美柑の三者面談と聞いてリビングで頭を悩ませる。父さんも母さんも姉さんも仕事。なら僕が行くしかない。……あれを、使うのか……

 

「……ララ、あれを頼む」

「あれってなーにー?」

「性転換銃」

「あぁ! 良いよ!」

 

 そう言って僕に銃を撃つララ。久々の如月明奈ちゃんだ。女の子になった僕を見たララのお母さんは目を丸くする。確か見せたのは初めてだっけ。

 

「えぇ!? 明久君……よね?」

「そうですよ。モモかナナ説明よろしく。さて美柑、僕が行ってあげるからね」

「うん、ありがとう。先生も歳が離れてるお姉ちゃんならいいって言ってたから」

「良かった……いつ?」

「明日」

「随分と急だなおい」

 

 スーツを着てお化粧してなんとか、これで良しと言われるような容貌にした。思えば僕って結構可愛い顔をしている気がする。お化粧したらそれなりに美少女になってる気がする。

 

「わぁぁぁ……! せんぱい、綺麗ですよ! エロいです!」

「……明久、似合ってる」

 

 ……エロいと言われる日が来るとは思わなかった。

 

「ありがと……さて、お買い物行ってくるか」

「あ、私も行くよー?」

「大丈夫、お風呂掃除お願い」

「はぁーい!」

「私は何をすれば良いでしょう!」

「モモは……洗濯物畳んでくれるかな」

「お任せを!」

 

 それぞれに役割を与えて外へ。街ゆく人達の視線が僕に集まってるのは気の所為だと思いたい。

 

「おっ、君可愛いね! お茶しない?」

 

 ……嘘でしょ? これナンパ? 僕が? されてるってマジ? 

 

『お? 下僕、ナンパされるとは凄いではないか』

 

 ……黙ってて欲しい。……野郎は三人か。

 

「嫌です、怪我したくなかったらお家に帰りなさい」

「は? 何言ってんの君?」

「こっちには三人居るんだよ? 状況わかってる?」

「あ! もしかして初めてのナンパで緊張してる? なら俺達が優しく……グェッ」

 

 壁に向かって頭を蹴飛ばして壁に打ち付ける。残りは二人だ。

 

「……こうなりたい?」

「お、おい! こいつやべぇよ!」

「……いや、もう遅いや……僕をナンパしようだなんて……いい度胸じゃないか……さて、死にたい奴から前に出な」

「じ、上等じゃねぇかこの野郎!!」

「僕が勝ったら……そうさな、有り金全部出してね?」

「舐めてんじゃねーぞこのアマァ!」

 

 

 ―3分後―

 

 

「よっっわ……本当にお兄さん達僕より力あるの?」

「な、なんで……」

「さーて、有り金全部出しな? 約束したよね? それとも警察付き出そうか? ……よいしょっと」

 

 一人軽傷な男の手を掴んで僕のお腹を触らせる。それを写メで撮った。

 

「これを警察に突き出すよ」

「あ、悪魔だぁ……!」

「わかったろ? 有り金出しな」

 

 三人纏めて三百円程度しか巻き上げられなかった。……なんだコイツら。金も無いのにナンパしていたのか? 

 

「ジャンプしてみ? まだあるだろう?」

「も、もうねぇよぉ……!」

「ちっ、男として最底辺だな……あっ! タイムセールが! お前達さっさと消えないと次は歯だぞ!」

「「「うわぁぁぁ!」」」

 

 僕もさっさと走り出してタイムセールに間に合わせる。夜ご飯はカレーにしよう。

 

「あれー? 明久じゃん、なんで女の子になってんの?」

 

 そこに里紗と鉢合わせした。彼女の手には惣菜が入った袋が。

 

「明日美柑の三者面談だから僕が行くことになったんだ。……で? 君はそれどうしたのよ」

「はは……料理めんどくさくてね」

「はぁ……カレーでいいなら来なよ。惣菜は一部貰うけど」

「良いよ! へへ……嬉しいな、明久が誘ってくれるなんてね」

「僕は優しいんだよ」

「そう言えば知ってる? さっきナンパを繰り返してた三人組が怪我してたんだって! 警察に事情を話してるんだけど信じてもらえないっぽい」

「ふーん」

 

 その事は黙っておこう。家に着いたら里紗から惣菜を受け取ってリビングで寛がせる。

 

 その後イヤホンを耳に、カレーを作り始めた。

 

「里紗ちゃんは明久君の家に入り浸っているけれどご両親はいいの?」

「私両親は海外で仕事中でして、今一人なんですよ」

「その寂しさを紛らわせる為に明久の家に来るんだよね!」

「そ、そういう事は言わんでよろしい……!」

「……でも肝心の明久君はイヤホンして料理してるけど」

 

 僕の事を見ていたのを確認すると、イヤホンを取って皆に問いた。

 

「何か用ー?」

「ふんっだ、乙女心の分からんやつめ」

「はぁ……?」

 

 何言ってんだ本当に。もう訳わかんない……

 

「アキ、はい。これ明日三者面談で話す内容」

 

 渡された紙を見ると、成績だったり学校での様子だったりと、在り来りなものを話すらしい。

 

「わかった、明日何時?」

「11時だって」

「了解、じゃ三者面談終わったら何か買ってあげるからね」

「ふふ、ありがと」

 

 料理に戻る。カレーと言うのは基本的に二日目が美味しい食べ物だ。僕はシーフードやチキンカレーとかあとは変わり種も結構好きだが、やはりシンプルなカレーが一番好きだ。カレーと言うのは誰にでも出来る料理。だからこそ丁寧丁寧丁寧に作る事で僕が出来る主婦なのだと思い知らせる事が可能。

 

「明久、電話来てるよ?」

 

 里紗が知らせに来て初めて気付いた。

 

「あいよ……え? ティアーユ先生?」

「えっ……ティアから?」

「はいもしもし」

『こんばんは、明久君。お時間空いてますか?』

 

 あぁ……律儀でちゃんと時間があるかを聞いてくれる……雄二達も見習ってくれ……序に里紗、君もだ。

 

「空いてますよ。どうしたんですか」

『あのね! 三者面談の時期で……西村先生が……その……』

「鉄人にいじめられたんですか?」

『そ、そうじゃないの! 吉井君はお母さんとお父さんが不在だと知ってるらしくて……その、吉井君に話を聞いてくれないかって』

「えぇ? ……ったく……鉄人の奴……」

『だから……空いてる日とかあるかな?』

「うーん、予定入らなければ問題ないです」

『じゃあまた連絡するね、こんな夜遅くにごめんなさいね』

「いえ、大丈夫ですよ。では」

 

 常識ある人と会話をするとこんなに感動するのは何故だろう。

 

「ほい、出来たよ」

「わーい! お腹空いたー!」

「せんぱい、私焼きカレーにして下さーい!」

「仕方ないなぁ……メアだけ少し待っててね」

「私シーフード!」

「……ナナも待っててね」

「ごめんなさいね、明久君……」

「いえ、大丈夫です」

 

 チーズを乗っけて炙って溶かし、シーフードを適当にフライパンに乗せて焼いていく。まぁ僕も好きだからシーフードカレーにしよう。

 

「ほら、たんと食え〜! 僕は風呂行くよ」

「あーん! 私も行くから待っててー!」

「待たない!」

 

 ご飯中の女子達を跳ね除けて風呂に一人。と言ってもシャワーだけなのだが。

 

「はぁ……疲れたなぁ」

 

 久しぶりの女の子の身体というのはなんだかドキドキするなぁ……と言っても洗うしかないのだが、さっさと身体を洗って女性用の下着に着替えてパジャマに着替えたらリビングへと向かう。

 

「うーわっ、明久エッロいなぁ」

「はぁ……こんなエロの塊にエロと言われても嬉しくないなぁ」

「明久君はし、下着とかどうしてるのかしら?」

 

 物凄い顔でセフィさんに言い寄られる。溜息を吐いて台所に向かって口を開いた。

 

「普通に女物を着てますよ……男物でもいいんですけど周りが五月蝿くて……特にモモが」

「うっ!?」

「『明久さんなら絶対似合いますからこんなのもいってみましょー』ってしつこくて……」

「……モモ、そこに座りなさい」

「ごめんなさいぃぃぃ!」

 

 モモが説教をされている間、僕はカレーを食べながらテレビを見ていた。見てるのはサスペンスドラマ。

 

「ねぇ里紗」

「ん〜?」

「これ犯人絶対あのオドオドしてた男でしょ」

「いーやあの女だね、絶対にわかる」

「なんでさ?」

「だってもう証拠上がってるようなもんでしょ」

「私はあのおじさんだと思うなー!」

「ララちぃもわかってないなー」

「あそこの男の行動は伏線に決まってらぁ」

 

 仲良く犯人当てをしつつ、食器を洗って犯人が追い詰められる。

 

「ほらぁ、私の言った通りでしょ!」

「やるね、でもこの後犯人自首か自殺しかないよね」

「まぁ基本前者だよ、そこまで血みどろな話でもないし」

「ならいっか、クイズ番組でも見る?」

「お、結構自信あるのよね」

 

 今度はアイスを見ながら。クイズ番組は皆が気楽に見れるものであるが故にヤミやメア、ナナもやって来て見ていた。気が付けばモモも説教を終わってこちらに来ている。

 

『第一問! どっちが正しいでしょう!』

「これはAだろ」

「いいやBだね!」

「お前バカか? Aに決まってるんだよなぁ」

 

 僕以外の答えが当たると言う僕のバカっぷりを皆に露呈してしまいましたが僕は元気です。心は硝子で出来ているのでもうバラバラに砕け散ってしまった。

 

「……明久、大丈夫?」

 

 ヤミが僕の頭を撫でながら聞いてくる。

 

「君だけが僕の味方だよぉ」

「こらぁヤミちぃ! 明久のポイントを稼がない!」

「……里紗さんが、明久を虐めるのが悪い」

「くぅぅぅ……! 超正論をぶつけられた……!」

「……明久が皆から虐められても、私は明久を傷付けるような事はしたくない……虐めはかっこ悪い」

「狡い……! 抱き着きながらあんな事をぉ……!」

 

 狡いも何も……えぇ……

 

「この場合ヤミが正論なんだよなぁ」

「なによぅ、私達が悪者みたいじゃん」

「え? 違うの?」

「あんな簡単な問題に間違えた明久のせいだろ」

「ぐっ……」

 

 まぁ確かに。彼女達の言う事は正しい。

 

「そろそろ美柑は寝なさい」

「はーい、お休みなさい」

「うん、お休み」

 

 美柑が部屋に向かっていった。明日は11時だが、夜更かしは良くない。

 

「はぁ……じゃ、僕自分の部屋行くからあまり五月蝿くしないでね……五月蝿くしたら強制退去だから」

「うわぁ、本気の目だ」

「家主だからって好き勝手やるのはよくなーい!」

「わかったわかった、抗議は取り下げます」

「ずるーい! 遊んでよー!」

 

 ……皆はなんでこんなに元気なんだろうか。

 

「明日ニコニコしてないといけないから今日のうちから休んで体調を万全にしないといけないんだ、わかってくれ」

「こら、明久君だっておやすみしないといけないでしょう?」

 

 ……何故だろう、物凄く母親らしいなと思った。……母親なのに。……何故だろう……いや、分かっているんだ。忙しかったから母親家業が出来ずにキャリアウーマンになってるだけだとは分かっているけども。

 

「じゃ、明久君。行きましょうか」

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

 僕の手を掴んで……そのまま部屋へ。あれ? 

 

「な、何を……」

「ふふ、あなたに興味を持ちました。……側室に夢中な旦那より……ふふっ」

「ほ、本気ですか!」

「だってあなた夫の持ってないもの沢山持ってるんですもの。気にもなるわ」

「……例えば?」

「うーん、優しい所に料理が美味しいところに……家庭的で娘達をあんなに思って……そうだ、あの子達のパパにならない?」

「何言ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 暑さで頭がおかしくなったのか? いやそれにしても目がガチなのが本当に怖い。

 

「ララ達の父親はこの世でたった一人でいいでしょ! 全く……」

「ほら、そういうところ」

「はい……?」

「あなたはほぼ全ての人に気を遣ってあげられる……思いやりのある人よ。ギドには無いけど、あなたにはある」

「……はぁ……僕もう寝るんで……」

「やんっ、そんなレディを粗末に扱うのは良くないぞっ」

「……」

 

 何も言わずに部屋から摘み出した。やれやれ、明日の為に早く寝ないと……

 

『『『『『えぇぇぇぇぇぇぇ!?』』』』』

 

 ……なんだ……喧しいなぁ……五月蝿くするなとあれほど……

 

『ララのお母さん明久を口説いたってほんと!?』

『ママが明久を……!? パパはどうするのー!』

『良い? 明久君が新しくパパになるのよ〜』

 

 ……何一つ承認してないだろ……! そう思っていると、階段からドタドタと足音が。

 

「「「「明久ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

「あぁもう!! 安眠妨害すんじゃなぁぁぁぁい!」

 

 全員リビングへと連れてきて正座をさせている。

 

「……言い残す事は?」

「……ごめんなさい」

「明久君に惚れたんです」

「もう!! ママはまたそうやって!」

「お母様! 仕事で頭がおかしくなったのなら御門先生の所に行きましょう!」

「そうだぞ! あれだけ男なんて嫌い! とか言ってた母上が明久を好きになるわけない!」

「おやぁ? じゃナナちぃは明久の事が嫌いと」

「なっ! そういうことじゃ……」

「この際そんなのどうだっていいよ……僕がなんて言ったか……覚えてるよね? まさか忘れたなんて言わせないけど」

 

 皆が俯いて口を閉じる。……僕だって説教なんかしたくない。良いことなんか何一つ無いんだから。……でも近所迷惑になるし、美柑だって寝ている。ここは心を鬼にして……いや……ダメだ、怒る気になれない。……眠いのが先に来て……

 

「……頼むから寝かせてくれ、別に話すなと言ってるわけじゃないから……ただ静かにして欲しいんだ。……別にこの家を自由に使ってくれても構わないから、ただ静かにしてよね……美柑も寝てるんだし……ふぁぁ……」

 

 自分の部屋へ戻って来た。布団に入って目を閉じる。しばらく経ってもずっと静かなままだった。ようやく寝れる……

 

 

 ―――

 

 明久に説教された後、借りてきた猫のように静かになった一同。テレビを見ながらヒソヒソと話し始める。

 

「ほら、皆して騒ぐからせんぱい怒っちゃったね。私静かにって止めたのに」

「うぅ、面目ない……て言うかまだ11時になってないよ……」

「明久どうしたら許してくれるかな」

「皆せんぱいに嫌われちゃうかも」

「そ、そんなわけ……」

「せんぱいと約束したのにね。せんぱいの嫌いな人Best3にも入ってるよ。えぇと……約束を守れない人……人の事を全く考えずに悪さをする人……友達や家族や仲間を傷つける人だっけ」

 

 その言葉を聞いたリビングに居る人達の空気がさらに悪くなる。

 

「元はと言えばママが悪いんだけどね」

「……朝に言うべきだったかしら」

「まず明久を諦めなよ」

「嫌よ、あんな良い子放っておくなんて無理だわ」

「……ほんとに……お母様病院行きますか……?」

「うっさいわね……私はどこも悪くない」

「……でもプリンセスララのお母さんは、どうして……」

「そうね……夫より沢山優しいし……その……やっぱり優しくされちゃうとね……」

「うわ、チョロい……」

「一目惚れとかいう娘よりかはマシよ」

「……とにかく……今日は寝ますか……私は帰ります」

 

 そう言うと里紗は立ち上がった。皆も自分の部屋へと向かおうとする。

 

「そうだ、はい里紗! これで一瞬で帰れるよ」

「えぇ? それ確か明久が……」

「あ、里紗は使ってもらったことあるんだっけ。ぴょんぴょんワープくんって言って、スイッチ一つでワープできるんだけど行き先指定可能になったんだよ」

「凄くない?」

「ほら、押してみそ、すぐ帰れる」

「じゃ、お休みね」

 

 そう言ってスイッチを押すと一瞬にして里紗の身体が消えた。

 

「明日、明久さんに謝らないと……」

「そうね、明久君には悪い事をしたわね」

「皆は明久が本当に怒った時の怖さを知らないんだよ……パパと同じくらい怖いんだよ?」

「……明久君の怒った所見た事あるの?」

「皆が怯えるくらい怖かったんだよ。何もしてない雄二達が疑われて……本気で怒った事があって」

 

 だけどと繋ぐララ。

 

「……でも、そんな明久でも理由なく怒ってるわけじゃないから。……その時は教師や皆が悪かったし、今回は私達のせい。だから私は謝るよ。……だって、明久と仲悪くなるなんて嫌だもの」

 

 そう言ってララは自分の部屋へと戻って行った。

 

「……ではお休みなさい」

「お休みなさい」

 

 皆がそれぞれ部屋へ戻っていく。セフィはモモの部屋へ入って二人で寝るのであった。

 

 

 

 ―――

 

 

 目が覚めたが、気分は良くなかった。

 

 昨日の説教だろうか。……やはり慣れないことはするもんじゃない。……説教なんてされて嫌なのは自分だとわかっているのに。

 

「……はぁ」

「おはよう……」

 

 ララが起きてきた。……気不味い……

 

「……ごめんね、昨日は騒いじゃって」

 

 ララが先に口を開いた。……この瞬間、僕の行動を止めていたものは消え去り、自然と口が開いた。

 

「……僕も言い過ぎた。……ごめん」

「! えへへ……えいっ」

 

 抱き着いてきた。口元が綻ぶくらい安心した。……彼女達は悪い子じゃないのは僕が知っている。それだけは僕は曲げないし、曲げさせはしない。

 

「お、おはようございます」

「……おはよう」

 

 そこにモモとナナもやって来た。

 

「おはよう、朝ご飯出来てるよ」

「……えっ」

「……昨日はごめんね、言い過ぎたって自覚あるから……許してくれるとありがたいな」

「な、なんで……五月蝿くしたのはあたし達だろ」

「確かに……」

「良いから、ご飯食べてね。自分の部屋の掃除はちゃんとするように。誰かにお使い頼みたいんだけどいいかな」

「それなら私がやります!」

 

 モモが名乗りを上げてくれた。

 

「じゃあお願い。後でメモ渡すから。……それと……美柑はまだか……おはようございます、セフィさん」

「あ、あのね明久君……昨日は……」

「あぁ、こちらこそごめんなさい」

「……え? なんで?」

「やっぱりお母様も思いますよね? なんで怒らずに謝るんです?」

「そうだよ、はっきり言うがおかしいぞ」

 

 こう言われたら言うしかない。窓の外を眺めながら静かに口を開いた。

 

「……怒ったって、誰かが良い気分になるわけじゃないし……怒って良いことなんか何一つ無い。……だから怒らない。……あまり怒りたくないんだ、皆ここの家に住んでるんだから……気不味くなったら僕は嫌だし」

「……ほらね、お父さんにはないでしょ?」

「確かに……お父様にはありませんね」

 

 ララのお父さんに無くて僕にあるもの? なんだろう。

 

「あの人に無くて明久君にあるもの……それはその温かい心よ」

「確かに、誰にでも優しいしな」

「……口にすれば大した話じゃない。……僕はただ、もう目の前から友達や大切な人達が消えていくのが嫌なだけだからただ必死こいて離れていかないようにするにはどうすればいいか試行錯誤してただけだよ」

「理由はどうあれ皆の心を掴んで離さない理由がわかったわ。……ふふ、私も本気になりそう」

 

 ……まだ諦めてないのか……

 

「おはようございます、せんぱい!」

「おはようございます、明久」

 

 ヤミとメアも起きてきたか。美柑も起こしてきてくれたのか、はたまた自分で起きたのか後ろから着いてきた。

 

「……美柑には申し訳なく思いますが、起きておかないと」

「起こしてくれたの? ありがとう」

「明久、抱っこ」

「……ヤミお姉ちゃんのデレ方が尋常じゃない件について」

 

 確かに尋常じゃない。前だったら『近づかないで下さい、殺しますよ』とか言ってくるのに。

 

「さて、美柑もご飯食べて顔洗って着替えてね。僕もスーツ着てしっかりとしなきゃ」

「はぁい」

「明久君、スーツ着たことは?」

「ないです」

「では私が着付けをして差し上げましょう」

「え!? お母様が!?」

「え!? 母上が!?」

「え!? ママが!?」

「……あなた達本当に私の娘か心配になるくらい人を信じないのね」

 

 日頃の行いだと思うんですけど。そう思ってる間にスーツを着付けてもらった。

 

「な、なんで……!」

「なんでって……あなた達、お仕事してる時私スーツなのよ?」

「嘘だぁ! ママお腹とおっぱいでスーツ入らないじゃん!」

「お腹は余計です!!」

 

 とはいえキツいな……主に胸が……

 

「くそっ、バカ久のくせに生意気だっ」

「な、何するのさ」

 

 ナナが僕の胸を鷲掴みにしてきた。物凄い妬ましそうな顔をしている。

 

「まさか自分の胸のなさを気にしてるのなら君愚かだよ」

「な、なんでだよ」

「女の魅力が胸だけじゃないんだよ……ほら、君にはこのすらっとした足にお腹にお尻だって良い形をしてるじゃないか」

「そ、そうか?」

「僕は小さくても大きくても等しく胸として扱うから大きさは拘らないんだ」

「そ、そうなんだな……」

 

 よし、なんとかこの場は切り抜けられそう。今の時間は……10時5分前。そろそろ出とくか。

 

「美柑、大丈夫?」

「うん、行けるよ」

「さぁて……食器は各自自分で洗っとくか水に浸けといてね。美柑行くよ」

「うん。じゃあ行ってきます」

 

 美柑の学校へ自転車で向かう。学校自体は遠くないが、僕は美柑の小学校に入った事がないので早め早めに行動をしておくと言う事だ。

 

 自転車を駐輪場に停め、受付の事務員さんに許可を貰って美柑の教室前まで足を運ぶ。そこには次に面談をする子とその親が座っていた。

 

「あっ、サッちゃん」

「美柑ちゃん! 2週間ぶりだね」

「うん、面談どう? 緊張する?」

「私はするよ〜美柑より成績悪いもん」

「そんな事ないよ」

 

 仲良くお話する子は居るようだ。……当然か、僕じゃあるまいし。虐められたりとかそう言うのはある訳では無い。ホっとした。

 

「あの……お母様ですか? それにしては若過ぎる気が……」

「いえいえ、私は母ではありません。美柑の姉です。それにまだサッちゃん……でしたか、お母様もまだお若いですよ」

「あらま、お上手ね〜」

「美柑ちゃんのお姉ちゃんって二人いたんだ。お兄さんじゃなかったっけ」

「うん、お姉ちゃん。黙っててごめんね」

 

 ……僕からもごめんなさい。本当は男なんだけど……性転換しちゃってるから……

 

「いいの! でも美柑ちゃんの家って美人さん多いよね」

「そうかな? 美人なのかな」

「美人だよ! 一番上のお姉さんも綺麗だったし、お姉さんも綺麗!」

「ありがとう、美柑がお世話になってます」

「い、いえ! こちらこそ……美柑ちゃんには勉強を教えてもらったりとか……」

「これからも美柑と仲良くしてあげてくださいね」

「は、はい!」

 

 そして前の子の面談が始まる。その子の面談は10分くらい掛かっただろうか。でも安心した顔で出てきた。

 

「美柑ちゃん、またね!」

「うん、またね。……アキ、行こう」

「うん。失礼します」

 

 教室に入ると若い女の先生がニコニコしながら座っていた。

 

「初めまして、美柑の姉の吉井明奈です。上の姉も両親も多忙につき、私が代役としてきました」

「お姉さんですね、宜しくお願いします。まずは美柑ちゃんの成績なんですが、いつも100点満点で完璧と言えます。塾とかは通われてますか?」

「いえ、いつも自習を怠らないんです。良かったね美柑」

「なるほど。妹さんの頭脳なら私立なども目指せますが」

「私は……」

 

 美柑が悩んでいる……お兄ちゃんらしいところを見せるか。

 

「自分で考えな。父さんも母さんも美柑の選択を断ったりはしない。それを決めるのって早い方が良いのは承知ですが……まだ答えを待ってもらっても?」

「分かりました。考える時間も必要ですし。では次に学校生活での美柑ちゃんですが……素行も良く、人当たりも良ければ誰一人として嫌いな人も喧嘩もせず、分け隔てなく接してますね」

「優秀な妹を持ったと思います」

「えぇ。優秀でとても優しい妹さんですよ。……何か聞きたいこととかは?」

「いえ、特に。妹が元気にやっているのなら成績とか関係ないですから。……友達と仲良く話して遊んで……楽しくやれているのなら、私からは言う事は何もありません」

「分かりました。以上で面談は終わりとなります。ありがとうございました」

 

 教室を出て暑い外へと。

 

「さて、久々に外食でもしようか。何処がいい?」

「……アキと一緒ならどこでもいい」

「……そっか。よし、お兄ちゃんセンス見せつけちゃうぞ」

 

 暑いとある夏の日。僕らは外食をする為に自転車を走らせるのだった。

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