バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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Declension

 夏休みが中盤に差し掛かった。今日はティアーユ先生との面談が控えていて、僕はその後お出かけしませんかというお誘いに二つ返事でOKしてしまった。……いやね?断ろうとしたんですよ?でも折角のお誘いを断る事で心に傷を残してしまう可能性がある……それだけは阻止しなければならない。

 

「こんにちは、明久君」

「特例が許されるんですね、こんな教師と二人っきりって」

「そ、そうね……許されちゃったの……二人っきり」

 

 ……顔を赤らめる必要がどこにあると言うのか。

 

「とにかく始めます。吉井明久君。成績は1年生の時と比べて格段に高くなってます。これなら何処でも狙えるレベルです。ところで明久君は就職と進学、どちらにしますか?」

 

 正直どっちにしようか迷っているところだ。どちらにせよ僕はやりたい事がまだ見つかってない。結局僕は何をどうしようかまだわかっていないのだ。

 

「……実はまだよくわからないんです、色々あって考える時間がなかったと言うのは言い訳にしかならないけど……将来の夢は……まぁ自分のスキル生かせる仕事かなって」

「それって?」

「うぅーん……家政婦?」

「……明久君は男の子ですよ」

「……すみません、将来の夢は保留で」

「ち、ちなみにヒモとかはダメですからね!」

「な、何の話ですか!」

 

 何処で覚えたんだそんな言葉。……全く、僕はそんなのにはならないってのに。

 

「……でも、明久君も大人になるのね」

「……僕のお母さんよりお母さんらしいですね」

「そ、そうかしら?学園生活は楽しくやってそうだし……特に問題はなさそうね」

「なら良かった。……じゃ、終わりでいいですよね先生」

「……えぇ。二者面談は終わりです。……でも明久君には付き合ってもらいます。行きましょ」

 

 資料を片付け、職員室に行った先生は5分程度で帰ってきた。

 

「ふぅ、疲れちゃった」

「じゃどこか喫茶店とかでも」

「ふふ、私珈琲飲めるのよ」

「僕も飲めますけど」

「むぅぅぅ〜ッ!」

 

 何故か僕の腕に組み付いて歩き出した先生。……今日も暑いな……こんな所、誰かにバレたらおしまいなのだが……大丈夫だよな……?

 

 

 ―――

 

 

「ちょ、ちょっと!なんで明久と先生がデートしてるの!」

 

 後から尾行していたララ達が汗を垂らしながら明久達の後ろを尾けていた。

 

「……ティア、許さない」

 

 ヤミが普段見せなさそうな顔を見て里紗も止めに入る。

 

「ヤミちぃ、あんた今怖い顔してるからやめとき」

「……明久を盗った罰は重いです」

「盗ってないと思うけど……」

「……それでも……今度は自分を制御しながらダークネスになるしか……」

「無駄だよヤミちぃ、アイツは無自覚でも女が寄ってくる何かを持ってるんだから」

「ラッキースケベされた人は明久に惚れるとかありそうだよね」

「でもそれはせんぱいの優しさからでしょ?せんぱいって頼りになるし優しいし!」

「よくわかってるねメアちゃん!まぁまだ慌てる時間じゃないよ」

 

 一行は喫茶店に入る二人を見ながら変装しつつ、二組に分かれて喫茶店へと入った。

 

「……明久、とても楽しそうだね」

「……ティアも凄く楽しそう」

「さぁて、何を話してるのか聞いてみましょう」

 

 ララは盗聴器をONにした。そこから声が聞こえてくる。

 

『明久君の教えてくれた料理出来たの!あれから家事が楽しいって思えるようになったわ』

『それは良かった、一人暮らしにおいてモチベを保つには家事でなんとかするしかないですからね』

『この前転んで資料をひっくり返しちゃった時に西村教諭に『ルナティークは吉井と似ているから気をつけろ』って呆れながら言われちゃったのよね』

『全く鉄人め……僕らをドジって言いたいんですよ』

『ケーキでも食べて落ち着きましょ。それに私はドジだもの…』

『ドジでも一生懸命やれば皆認めてくれますから。頑張りましょ』

『……うん、ありがとう。明久君』

「……デートですやん……しかも何あれ?めっちゃ良い雰囲気になってるんだけど」

 

 静かに呟いた里紗。その呟きに反応してヤミも連鎖的に呟く。

 

「……私も明久とデートしたいです」

「ヤミちぃ……あんた最近になって結構な頻度で明久を連れ回してるでしょ、私達にも回して欲しいもんだよ」

「明久と大人の階段を登るまで待っててください」

「……ほう?」

「……や、ヤミちゃん……?な、何を……」

「明久との子供は7人、家は三階建て」

 

 そう呟いたヤミに瑞希と春菜は顔を赤くし、顔を赤くしながらも里紗が対抗し始めた。

 

「バカ言うんじゃないよ!私は10人産むからね!」

「な、なんて事を……!てかバレちゃうよ!」

 

 その後もティアーユと明久の話を聞きながらララ達はドリンクバーを行き来していた。

 

「でも話す事といったら先生が明久に家事や炊事を習ってるだけじゃん」

「……いえ、ティアは強かな人です……きっと私達が監視してるのに気付いて他愛ない話をして、私達が飽きて帰った所で捕食します」

「……ヤミちぃって先生の事嫌いなの?」

「ティアは好きです、でも明久を盗って行くのが許せないんです」

「あんたねぇ……そんなヤンデレってゆーか物騒な事は明久嫌いなのわかるでしょ?」

「……!そ、そうでしたね……私はできる女なのでティアに少しくらいは……」

「手のひらくるっくるだねぇ……あっ!お金払ってるよ!」

 

 明久とティアーユがお金を払っているところを見過ごさなかった春菜は少ししてからお金を払って尾行再開。

 

『じゃあ明久君、今からお邪魔しても?』

『えぇ、料理の事ですよね』

「なーんだ、料理を教えてくれって……えぇ!?」

「明久に手料理を食べさせて胃袋を掴もうとしてます……!」

「何処でそんなこと覚えたんですかヤミちゃん……」

「……本で読みました……所謂泥棒猫……!」

「違うよ、とにかく家に突撃!」

 

 走って明久の家に戻ってきた一行は家の中に駆け込む。そしてリビングの扉を開いた。

 

「こらぁー!不純異性交遊の現行犯ー!」

「「えっ?」」

 

 そこにはティアーユにエプロンを着せてあげている明久が。

 

「……うわぁ、本当に不純異性交遊とは……エプロンプレイか……」

「何馬鹿な事言ってる、散々後をつけておいて」

「えぇ!?そんな事されてたの?」

「……ティア、明久を返して」

「ごめんねイヴ……でもダメよ。約束してたもの」

「……明久、私とは遊びだったんですか」

 

 そのヤミの発言に驚いた直後、ワナワナと震える明久。

 

「誰だヤミにこんな言葉教えたの!出てきやがれー!」

「……本で読みました」

「ダメーッ!変な知識つけちゃダメだから!」

「てかお料理教えてるだけならまだいいけどヤミはティアーユ先生が私達に隠れて明久を食べちゃうって言うから……」

「食べないわよ!?」

「先生はね、勉強熱心だからこれからご飯の作り方を習いに来てるの、邪魔しないでよね」

 

 そう言ってキッチンに入って料理を教え始めた明久。包丁の持ち方とか基本的な事を教えるのだが……

 

「……明久近くない?」

「あ?」

「だってそんな密着してさぁ」

「初めてやる人にはこうやって教えるんだよ。そうするとほぉら、すぐに包丁を持てるようになるんだ。次は野菜の切り方」

 

 それを見ていたヤミ達の視線に耐えきれなくなって明久は一時中断してしまう。

 

「そんなジロジロ見てるのはダメです、ティアーユ先生集中出来ないでしょ」

「……じゃあ私も料理教えてください、明久に食べさせて胃袋を掴むんです」

「ねぇヤミ、今度どういう本を読んでるのか僕にも見せて欲しいなぁ」

「私達も教えて?」

「君は出来るのにやらないだけだろ!姫路さんと西連寺さんも出来るんじゃなくて?」

「わ、私は……お恥ずかしながらした事がなくて……」

「お、お姉ちゃんがやってるのはよく見るんだけど……」

「仕方ないなぁ、後日三人にはある程度料理できるようになってもらうため別々の日にこうやって教えてあげるから」

「「「ほ、本当ですか!?」」」

 

 ハモリながら言う三人に圧倒されながらも明久は頷いた。そこに抗議の声が二つ。

 

「ずるーい!私もお料理したーい!」

「そうだよ!明久!アンタ私にも料理を教えなさい!」

「里紗には散々教えろって言われたから教えてきただろ!それも五回以上!」

「えぇ!?里紗ちゃん五回以上も明久君に!?」

「なんてずるい!」

「ふふんっ、私はチャンスは逃さない主義なのさ……て言うかじゃあ今度私が最近作ってる料理がなんかイマイチだからアドバイス頂戴よ」

「まぁそれくらいなら……」

「私はー!?」

「あーもう!全員予定空いてる日を紙に書けー!」

 

 明久の叫びと女子達の歓喜の声が重なる。そんな明久を見たティアーユは包丁を置いて明久の頭を撫で始めた。

 

「明久君も苦労してるのね……」

「うぅ……ティアーユママ……」

「よしよし、良い子ね〜」

「うわぁ……先生をママ呼ばわりしたぁ……てか先生もなんでノリノリなんですか!?なんなら嬉しそうだし!」

「今の明久君に足りないのは癒しと母性……!」

「……明久君ごめんね……無理させちゃって……」

 

 そんなしおらしくなる女の子達に反応した明久。

 

「無理はしてないけどさぁ……僕よりお友達と遊ぶとかしてきたら?」友達いないの?」

「明久だってそうじゃん」

「僕は暇じゃないんですー家の事とか忙しいんですー」

「なによぅ!私達が暇みたいじゃない!」

「暇人は日中から男を尾行したりしねぇよ!」

 

 そんな話も交えながら明久は料理を教え、ララ達は明久の部屋へと向かい始めた。

 

「ほーら瑞希や春菜も今のうちに明久の布団の匂いを嗅ぎな、今なら汗の匂いもプラスでついてくるよ」

「し、失礼します!」

「明久にバレたら白い目で見られるけど気にしなければいいよー」

「明久君に嫌われたくないけど……えいっ」

 

 二人がベッドに潜り込むとヤミはクローゼットを開いた。そして……

 

「……私はこれです」

「キャー!?ヤミちゃんなんて大胆な!?」

 

 なんと明久のパンツだ。ヤミはそれを持ってベッドに潜り込む。

 

「わ、私も……!」

「じゃー私もー!」

 

 皆が皆明久の下着を取ってベッドに潜り込む。臭いを嗅いでる最中に事件は起きた。

 

「皆、カレーのトッピング……は……」

「「「「……」」」」

 

 明久が入ってきた事だ。明久は扉を閉めて深呼吸をして叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変態だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――

 

 

 

「信じられないよ……姫路さんや西連寺さんまで一緒になって……」

「ご、ごめんなさいっ」

「良いじゃないの、減るもんじゃあるまいし」

「黙れ首謀者、口聞かないぞ」

「ベッドに潜り込もうと言ったのは私だけどパンツを持ち出し始めたのは私じゃないよ」

「は?じゃあ誰が」

「それはねー!ヤミちゃんなのです!」

 

 ……は?

 

「嘘も休み休み言いなよララ、あのヤミがそんな事する訳ないでしょ」

「ところがどっこい明久、アンタの事が好き過ぎるヤミちゃんは欲望を抑えられずに明久の下着に真っ先に手を伸ばしたのです」

 

 ……そんな馬鹿な。そう思ってヤミの方を見た。……顔がリンゴやサクランボより赤くなったヤミは下を俯いたまま動かない。……マジで?

 

「……イヴも残念ね、明久君があなたの事を変態だと思ってる以上明久君はもう嫌いになっちゃうかも」

「流石にそこまでは……えっ」

 

 カタカタと震え始め、顔が白くなっていくヤミ。え?そこまで?……てか姫路さんや西連寺さん、里紗やララまで真っ白に染まっていってる。……え?嫌われるって思ってそこまでなる?

 

「あーもう分かった!皆許すから!嫌いになんてならないよ!別に持って帰ったり穿いてる訳じゃあるまいし」

 

 そう言うと皆に色が戻ってきた。……僕ってモテモテなのでは?

 

「あれ?ミカンは?」

「姉さんのとこにザスティンと二人分の弁当を渡しに行った」

「……まだ九死に一生を得たからいいかな」

「……怒った?」

「怒ってないけど……皆なんで下着を取ったか不思議で仕方がなかった、特に今回半分以上しそうにないって思ってたし……姫路さんと西連寺さんはそういう事はしないと思ってたしヤミはそういうの嫌いだって言ってたから」

「私達はすると思ってたの!?」

「ララはないと思ったけど里紗は前科あるからな」

「なんでバレたんだっけ」

 

 ……なんでそんなすっとぼけた顔で言うんだこのアマ!?

 

「お前ん家の柔軟剤の匂いしたからだよ!なんで持ってたったか聞いたら君なんて答えたか覚えてる!?」

「うん、男のパンツに興味があったって、女だって男の下着に興味持つんだよ」

「そ、そうです!普段どんなの着てるのかとか興味くらいはあります!」

「……明久の匂いが落ち着くのに明久は離れろって言うから……」

「ほら!ヤミちゃんのお願いまで断って!」

「普段ララちぃと一緒にいるんだからこういう時くらい許してくれてもいいじゃない!」

「……なんで僕が怒られてるんだよ」

 

 訳が分からん。特に最後の方が。

 

「明久ももう少し女の子に対してグイグイいけるタイプだったら苦労しないのにねー」

「押し倒してとは言わないからねぇ」

「ほっとけよ、それ以上訳の分からん事を言うなら家から追い出すぞ」

「やだぁ、いじめないでぇ」

「いじめられてるのはこっちだよ……すみません、先生」

「いえ、とても楽しかったからいいのよ。そろそろ私もお暇しなきゃ。明久君、また教えてね」

 

 ……あぁ、先生は優しい……唯一の良心で唯一の癒し……

 

「えぇ、是非」

 

 先生を見送ってからリビングで寝転がる。ざっと疲れた。

 

「お風呂行こ!明久の背中流してあげる!」

「……お先にどうぞ……ふぁぁ……」

「明久君もお疲れのようですし私達もそろそろ……」

「いや、ララ達と入って来たら?わざわざ来たんだし」

「い、いいんですか?」

「うん、どうぞ」

 

 女の子達を全員風呂へ。……モモとナナ、メア、ネメシスが出掛けてて助かった。僕はテレビを付ける。丁度付けた番組にはルンさんが歌って踊っていた。あぁそうか、アイドルになったんだっけ。……綺麗だなぁ、宇宙人でもアイドルやれるんだ。

 

『以上、RUNさんでした!RUNさん、今のお気持ちを!』

『皆さん!聞いてくれてありがとー!』

 

 笑う顔も可愛いなぁ、そんな事を考えていると電話が鳴り響いた。

 

「相手は……誰だ?知らない番号……はい、もしもし」

『明久君!夏休み楽しんでる!?』

 

 ルンさんだ。……今まさに観てたアイドル。

 

「え、えぇ?!ルンさん!?今番組に……!」

『観てたの!?嬉しい!ありがとう!明久君の声を聞きたくて電話したんだ!どう?あの衣装似合ってたかな?』

「とても似合ってた、アイドル稼業お疲れ様。大変でしょう?」

『大変だけど楽しいよ!そうだ!今度会ってお話したいんだけど良いかな』

「僕でいいなら是非。でもいいの?ファンの人達に見つかったら……」

『その時はその時だよっ、じゃあね!ん〜チュッ!』

 

 多分電話越しに投げキッスでもされたんだろう。再度電話が鳴り響いた。相手はどれどれ……天条院沙姫……沙姫ちゃんだ。

 

「もしもし?」

『もしもし、アキ君?夏休み、如何お過ごしかしら?』

「振り回されてばかりだよ……どうかした?」

『また私の家の事で手伝って欲しくて。メイドさん達に休暇を出して凛達も居ないのよ』

「わかった、明日行くよ。僕が明日は身の回りのお世話をしてあげるね」

『ふふ、とっても嬉しいわ。じゃあ明日待ってるからね』

 

 

 電話が切れる。疲れたぁ……あ、やばい……寝ちゃいそうだ……

 

 

 ―――

 

 

「気持ち良かった〜!明久!良いよーあれ?」

「ララちゃんどうかした?」

「しーっ、見て」

 

 ララがニコニコしながらソファーを指差す。里紗を始めとした女子達が見ると、スヤスヤと寝息を立てて眠っている明久が。

 

「……明久の寝顔……可愛いです」

「部屋まで運んであげましょ」

「……運びますね」

 

 ヤミが明久をお姫様抱っこする。

 

「わお、力持ち〜」

「明久をお姫様抱っこ……ふふ……」

「じゃ、私達も明久に添い寝したげようか」

「里紗ちゃん、また明久君に怒られますよ」

「明久も怒らないってば!大丈夫、全責任は私とヤミちぃで取る」

「な、何故私が……」

「ほーん、明久と寝たくない?」

「……私が全責任を持ちましょう、大船に乗った気分でいてください」

「やりぃ」

 

 明久をベッドにそっと寝かせ、エアコンの電源ををタイマーセットして付け、ベッドに潜り込む。

 

「ふふ、おやすみ〜」

「「「「おやすみなさい」」」」

 

 女子達も明久の身体に抱きついて目を閉じるのだった。

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