バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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unexpected

 あれから夏休みを満喫した僕らは遂に新学期を迎えた。そんな僕を待っていたのは休み明けで気が抜けた生徒の他に、モテない男共の怨念だった。

 

「吉井貴様!また女子を侍らせてぇ!」

「しかもこの学園におけるトップクラスの美女達を!何故お前ばかり!」

「僕が聞きたいよ……」

「今日こそ成敗!」

 

 そう言って鎌が振り下ろされたが、目の前に黄色い髪の毛が。鎌は弾かれ、校庭に刺さる。視線を少し下へ向けると……なんとヤミが止めてくれたのだ。

 

「君は一年の!?何故邪魔をする!?」

「危ないから退いているんだ!」

「……明久を虐めないで下さい。……二度目は言いません。……もしまだやると言うのなら……」

「問答無用!その子を避けて攻撃すりゃいいんだぁー!」

「……ごめんなさい」

 

 そう言うと髪の毛を拳に変形させて殴り飛ばした。ヒェッ、怖過ぎる。

 

「怪我はありませんか?」

「別にいいのに……」

「明久に危害を加える輩は許しません。ですがもう私は誰かを傷つけるのも嫌なんです」

「良いの良いの。別に危害を加えられていると思ってないから。……こいつらはモテないから焦ってるだけでいい奴らなんだよ?」

「そうなんですか?……でもまぁ……容姿は全然悪くないと思います」

「お!?褒めてくれたのか!?」

「なんと……!」

「……ただ、思った事を一言言ってもいいですか」

「なんだね?」

「……そうやって行動せずにモテる人に私怨をぶつけてるだけだからモテないのだと思うんですが」

 

 ……ドの付く程の正論を投げられ横溝君と近藤君は瀕死状態に。

 

「ぐぅ……し、しかし……!」

「……人に優しくすればモテると思います。誰かに憎しみをぶつけていてもいいことはありません」

「……!……おい横溝、参ったな」

「……あぁ、こんな後輩に諭されて……情けねぇよな」

「……悪かったな吉井。今までの非礼を詫びさせてくれ」

「う、うん」

 

 ……え?何?なんでこんな爽やかな顔になってる訳?てかローブ捨てて良いんですか?鎌はどうするんだ?

 

「ありがとな一年。えーと……」

「ヤミです。吉井ヤミ」

「そうか。助かったよ。目が覚めた」

「行くぞ近藤、早速行動に移す」

 

 そう言って走っていった。えぇ……何この青春ドラマ的展開……しかも今のアイツらなんか顔面整形したの?と言わんばかりに爽やかキャラになってなかったか?

 

「ヤミちゃんやるねぇ!」

「……本に書いてあったことを言っただけであんな反応をするとは……」

「……えぇ……」

 

 何はともあれヤミと別れて教室に着く。いつもの席に腰掛けて卓袱台の上に突っ伏す。

 

「……おい、横溝と近藤がこれまでにないキラキラのオーラが出てるんだが」

「ほっといてくれ……」

「……逆に寒気がする」

「いいんじゃなかろうか?改心したんじゃろ?……いや待て、勉強し始めてるのは流石に……でもよく良く考えれば三日坊主になるかもしれん」

「経過を見る必要があるな」

「勝手にやっててくれ……疲れた……」

「なんだ?今度は何があった?またハーレム候補が増えたか?」

「そんなんじゃない……全員頭おかしくなる時があって」

「頭おかしくなる?どういう事だ?」

「……言う事すらおぞましいから放っておいてくれ」

「そうもいかねぇんだ。試召戦争を起こすからな」

 

 何胸張って言ってんだこのバカは。こちとら疲れてるんだぞ。勘弁してくれよ……

 

「……僕無しでも戦えよ。そうやって僕ばっかに頼ってると痛い目を見るぞ」

「俺はお前を含む全生徒を使うつもりだ」

「お前に付き従うメリットがない。以上」

「お前は俺の駒だぞ、俺はこのクラスの代表だからな」

「職権濫用すんな」

 

 そう言ってると教室の扉が開く。そこに入ってきたのは鉄人ではなく……

 

「失礼します。坂本雄二君はこのクラスですか?」

「そうだが……高城雅春先輩じゃないですか。なんで俺に用なんかあるんすか」

「えぇ。そうです。……おや?」

 

 彼は僕を見るなりこちらにやって来る。

 

「吉井君じゃないですか。見違えましたよ」

「さっさと用を話して帰ったらどうですか。次の授業に遅れますよ」

「そんな手厳しい事を言わなくてもいいじゃないですか。さて、用件を伝えます。……我々三年生は二年生に試召戦争を申し込みます」

「……は?」

 

 三年生が……二年生に?嘘だろ?

 

『おい、聞いたか今の』

『三年生が二年生に……?』

『どういう事だよ……』

「貴方達が勝利した場合、三年生のAクラスからCクラスの設備を二年生に譲渡します。我々三年生が勝利した際はそちらのAクラスからCクラスの設備を明け渡してもらいます」

「アンタらの余興に付き合うつもりは無い」

「残念ながらこれは学園長の意向でしてね」

 

 バカバカし過ぎる。対等ですらないじゃないか。僕は即座に口を開いた。

 

「条件を対等にしろ」

「と、言うと?」

「明久も気付いたか。そうだ、アンタらは勝っても負けてもあまり損は無い。何故ならこの季節は受験勉強なりで忙しい上にもう学校には来なくていいようになる。自由登校って訳だ。……そんな中設備を貰おうが開け渡そうが自由登校を理由に来なくなれば意味は無いからな」

『な!卑怯だぞ!』

「流石に貴方達にはバレましたか。向こうの生徒達にはバレていなかったみたいですが……流石は吉井君。死んだ目をしていた頃より遥かに頼もしくなってそうですね」

「……五月蝿い」

「まぁそういう事さね」

 

 学園長が現れた。……学園長の態度から察するに……

 

「クライアント……ですか?」

「……お前さんにはもう隠し事は出来ないねぇ……そう。二年生と三年生を戦わせたらどうなるか……そんな軽はずみな予測からこの試合が出来ちまった。そこで戦ってもらうという訳さ」

「……どうしても戦えと言うのなら……全てを捩じ伏せてやる。……誰一人として……立てなくなるまで……うぁっ」

「馬鹿野郎、殺意を剥き出しにするんじゃねぇよ。……で?条件くらい対等にしなきゃ応じるつもりはない。そうだな……代表の進学を取り消すとか?」

 

 ……僕より鬼畜過ぎる。人一人の人生潰そうとしてるじゃないか。

 

「これは困りました……学園長、僕ではもう彼らを釣れる条件は出せません」

「じゃあ諦めるんだな」

「そう言わないで欲しいさね。二年組が勝てば叶えられる範囲で願いを一つ叶える……これでどうだい?」

「……まぁ、学園長の頼み事は基本僕は断らないと決めてるので……あそこのイケメンの頼みは死んでも聞きたくないけど」

「……お前に何があったんだよ……」

「その説については謝罪したではないですか」

「謝っただけで許されると思うなよクソ野郎、僕はお前を絶対に許さん」

「ねぇねぇ、明久はなんであの人を毛嫌いしてるの?」

 

 ララが聞いてきて項垂れながら訳を話した。

 

「……僕が女装した時……無理矢理口説いてキスしてきたんだ……」

「……うわぁ……」

 

 あのララですらドン引きしているって相当だぞ。男子達も吐いてるし。いや、これが普通だよ。イケメンとはいえ男同士でキスとか流石に吐きそう。……まぁそう言うのが好きな人だっているからあまり表には出さないが僕はゴメンだ。

 

『そりゃ吉井キレていいわ、俺でもしねぇよ』

『なに?高城パイセンホモなの?引くわ』

『吉井、奴をぶっ殺せ!あの男がこの学園のトップだなんて俺嫌だよ!』

 

 こういう時に結束してくれる仲間は好きだ。一気に高城がアウェーになる。それに……

 

「そう言えば忘れるようにしてたけど思い出したよ……屋上行こうぜ……久々にキレちまったよ……」

 

 ……なんか物凄いキレてるんですけど、里紗さん?何してるんでせう?

 

『吉井の初代嫁である籾岡がキレてるぞ!』

『そういや籾岡あの時も半狂乱になってたしな!』

『いやー籾岡も流石に吉井が男に寝盗られちゃ黙ってられないもんな』

「喧しいよ外野ァッ!そこの見てくれだけの!勝負受けるよ!そして今度こそ再起不能になるまでボッコボコにしてやるんだから!」

「……明久、なんとかしろよ」

「あぁなった里紗は手に負えないよ……」

 

 一度だけあぁなった事があって、僕が色々言われていた時とかに何故か里紗がブチ切れてあんな状態になった。しばらくしないと大人しくならないのだ。

 

「良いでしょう。では試合のセッティング等はそちらの代表の立ち会いの元で行います。ルール等は普通の試召戦争と同じでいいですね?」

「上等じゃないの!アンタみたいなのは私達がギッタンギッタンのメッタメタにしてやるってのよー!」

「……どうにかしろよお前の嫁をよ……勝手に受けちまってるぞ」

「……里紗って感情昂ると結構コントロールが無理な所あるんだよ……」

 

 勝手に戦う事を約束してしまい、高城は帰っていく。僕はと言えば……

 

「なによあのただ顔が良いだけの奴!ムカつくっ!」

「落ち着きなよ……」

 

 里紗を宥める事しか出来なかった。いや、宥めないと後で面倒臭い。

 

「何よ!言われっぱなしで悔しくないの!」

「言わせておけばいいんだよ……争いなんて同じレベルでしか起きないんだから、自らのレベルを下げてどうする?煽り耐性無さすぎだよ」

「ふんっ!あの美形!必ず首撥ねてやる」

 

 首を求めているのか……てか本気じゃないか、その目。本気で首撥ねてしまいそうだ。

 

「やめなって……全く、戦う羽目になったじゃないか」

「あんた達、あの美形を必ず殺しなさい!手段は問わないから!」

「「「サー、イェッサー!」」」

「失敗したら私があんた達の首を撥ねるから」

「「「さ、サー、イェッサー!」」」

 

 ……そろそろやばくないか?目からハイライト消えてますよ?

 

「いい加減にしなよ。争い事は嫌いだと言ってるでしょ」

「でも!」

「でももへったくれもない。……落ち着け、周りを良く見渡すんだ。今の君は周りが全く見えてない。君は今、二年生全員を巻き込んだんだぞ」

「……う、嘘……」

「……まぁどうせ奴は僕を焚き付けて来ようとした。だから君の役目じゃない。僕がやる。……悪いが皆、あのクソ美形を倒すのに力を貸してくれ。美少女顔なら手当り次第に手をつけてキスしようとするクソ男だ。殺さないといけない!何よりそんな事が繰り返されれば学園中の女性達が被害に遭う!それを僕らで防ぐぞ!」

「吉井隊長!一生ついていきます!」

「一丸となればあのクソイケメン殺せますか!」

「イケメンでホモとか許すな!殺らせて下さい!」

 

 里紗の代わりに僕がやればいい。皆を焚きつけるのは得意だ。それに、こうなった時の焚き付け方もわかる。

 

「勿論だとも!ただ容姿がイケメンな奴がモテるんじゃない!心がイケメンな奴が最後に勝つんだ!」

「「「「うぉぉぉぉー!」」」」

「一人に石を投げられたら二人で投げ返せ!四人なら八人!三年生全員なら二年生全員で立ち向かえ!売られた喧嘩をみすみす逃すな!僕らは甘く見られている!舐められてるんだ!今こそ結束せよ!三年生なんて僕らの結束力の前では無力である!」

「「「「そうだそうだ!」」」」

「僕達は馬鹿だ!自分達が馬鹿である事を認めろ!それ故にもう下を見なくていい!上だけを見ていられるのだ!上を向いて牙を研げ!そして屠れ!ふんぞり返っている三年共をな!」

「「「「クリーク!クリーク!クリーク!」」」」

「そうだ!殲滅しろ!三年生は抹殺すべし!」

「「「「抹殺!抹殺!抹殺!!」」」」

「よろしい!君達はもう惰眠を貪る怠惰な怠け者ではない!牙を研いだ獣だ!獣のように荒々しく!全てを壊せ!立ち止まるな!」

「「「吉井隊長!」」」

「君達はモテなくても心に大切なものを持っている!それは友情!そして団結力だ!それが最後にものをいう!だからそれを捨てずに最後まで走り抜けるぞ!それさえこなければあんな顔の良いだけの奴より遥かにモテる!」

「「「「「うぉぉぉぉぉーッ!!」」」」」

 

 皆の士気が最高潮になってから雄二に後は任せ、里紗を連れ出した。

 

「……ごめん、熱くなっちゃった」

「まぁ僕の為にやってくれたのはわかるから。でもいいんだ。気にする方が負けなんだよ。言われても流せばいい」

「……それもできない私はまだ子供だよね」

「いいじゃんか。……ありがとう里紗。嬉しかったよ」

「……ほんっと、あんたは優しいよ」

「だろ?……さて、こうなったんだから奴を倒す算段を立てないといけない。協力しなよ」

「わかってる。私も頑張るけど……沙姫ちゃん先輩と戦えるわけ?」

「……さぁ……彼女が戦いたくないと言うなら何か策を考えるが」

「……本当にごめんね」

「次謝ったら許さない」

「うぅ……」

「……気にするなって」

 

 騒ぎが落ち着いてから雄二達を集めて話し始める。

 

「どうするよ、三年生戦」

「お前をアテにしてる」

「そう言うと思ったよチクショー」

「大丈夫、僕は君の言う通り動いてやる」

「はぁ……わかった。作戦を練っておく。二年生全員を集めてくれ」

「アキ君!」

 

 凛とした声。そこに現れたのは沙姫ちゃんだった。何やら不安そうな顔をしている。

 

「沙姫ちゃん……」

「二年生と三年生で戦うことになったって……本当なの?」

「……あぁ、さっき高城先輩が来て言ってた」

「……そうなの……」

「……戦いたくない?」

「……えぇ」

 

 そう言うのならばなんとかしないと。

 

「わかった。なんとかしよう。取り巻きの二人は?」

「……内緒で来てるの。多分それを二人は許さないから」

「……了解した。当日は僕の家で匿ってあげる。……悪いけど家に居て」

「……わかったわ。……坂本君」

「なんだ?」

「……役に立つかは分からないけれど、上位陣の得意科目と苦手科目。私は貴方達側についているから……これくらいは」

「……助かる……でも、いいのか?」

「えぇ。私はアキ君の、そして皆の味方だもの。それにアキ君の唇を奪った高城は許せないわ」

「沙姫先輩も思いますよね!ね!?」

「えぇ!多分春菜ちゃんや瑞希ちゃんに言っても同じ結果になるわよ!」

「……愛されてんな、お前」

「……僕は皆が怖いよ」

 

 頭を抱えながら僕の家で帰って作戦会議を開くことになった。

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