朝起きて、目に前に女性の胸があったら男性諸君らは喜ぶであろう。
だが現実は違う。冷や汗をかくか、どうしようか気が動転するに違いない。僕がなっているのだから。二度目の経験である。一度目はティアーユ先生だったか。そう。旅行中に僕もティアーユ先生も寝相悪いから抱きつかれ、胸を揉んでしまったのだ。
目の前に姫路さんの胸、そしてそれを掴んでしまっている僕。その胸を掴んでいる僕の腕を掴んでいるメアとナナ。動かそうとしても動きません。専門用語的に言うならば『詰み』です。本当にありがとうございました。
「明久君……やですぅ、そんなとこぉ……」
姫路さんの寝言を聞きながらどうしようか考えてまずは素数を数えることにした。2、3、5、7、9、11……ダメだ。全く気分が落ち着かない。そして忘れていた。今は両親が帰ってきていることを。
「明久、起きているかい……」
「……」
急いで寝たフリ。だが流石にアウトだと思われたのか身体を揺すられる。
「起きて明久。今の君は本当に危ない」
「……そうだね……姫路さん、起きて」
「あ、あと五分……」
「……んっ……あっ、せんぱいのお父さん……おはようございます……」
「おはよう、黒崎さん。ナナちゃんも」
「おはよう……ございます……ひゃあっ!?」
「……おはよう、姫路さん」
「……おはよう、ございます……」
起きてご飯を作る。……皆も起きてくるのだが……
「あれ、ミズキ?顔赤いよ?」
「な、なんでもないです……」
「明久君に何かしてもらったんでしょ!羨ましい!」
「そ、そんなこと……」
どうして彼女達は羨ましいと思うのだ?普通何かされたら嫌がったりするもんじゃないの?
「明久、あんた瑞希に何したの」
「何もしてません」
「……隠すな?」
「隠してねぇよ!朝ご飯抜きにするぞ!」
「あぁいいよしなよ!でもね!この子がこんな顔真っ赤にするなんて珍しいの!あんたが何かした以外にこんな風になるわけないのよ!」
……凄い気迫だ。なんだと言うんだ……!
「……明久、正直に吐いてください。明久の為です。吐かないなら身体に聞くしか無くなります」
「……何をする気だ」
「……そんなの……恥ずかしくて言えません」
……この子までこんなんになっちゃって……まるで雄二に接する時の霧島さんじゃあないか。変態になってないか?顔あんなに赤らめて……
「……あのねヤミ、僕は普通の女の子になれと言ったけど変態になれと言った覚えはないよ」
「……明久が約束を破ったから」
「え、約束?」
「私がダークネスで暴走した時に言ってくれた言葉……あれは嘘だったんですか」
……逃げようとした所を女性陣に質量スクラムされてしまう。逃げられない!
「聞いたよ?ヤミちぃの間違いを正そうとセクハラしたんだってねぇ?やっぱりヤミちぃがオキニなのかね?」
「そうじゃない!離せー!」
そこに母親がやって来る。……こちらを凄い目で見ながら……
「あんた、早速手を出したの?」
「ち、ちが……!」
「……と、特に何もされてません!」
姫路さん……!君こそ僕の天使だ……!
「あ、でもせんぱい瑞希先輩のおっぱい揉んでたよね」
……なんでこの子はバカ正直に言ってしまうん?僕に対する視線が辛いのだが?
「……あんたねぇ……」
「ふ、不可抗力なんだ!朝起きたらあぁなってたんだ!」
「気をつけなきゃダメでしょ!寝相悪いのは私で証明済みじゃない!」
ララさんの言う通りで……
「……はい」
「ただでさえ勉強合宿の時に春菜の太腿にかぶりついていたのに……」
……えっ、マジで?西連寺さんの方を見ると顔真っ赤にしてるし……
「食べ物の夢見てたのかは知らないけどそれで春菜の太腿にかぷっとね……春菜に代われと言っても代わらなかったし……」
「み、皆があぁなると耐えられないと思ったからだよ!そ、そう!私なら耐えられる!」
「……」
家族の目が痛い。それに西連寺さんを見るララ達の視線も……
「……御門先生、この子は本当に大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫です、明久君はこういう年頃と言うのが少し遅かっただけで」
「待つんだ先生!僕をちょっと遅れた思春期みたいに言わないでください!僕はまともです!」
「「「「「「え?」」」」」」
全員から言われた。泣きたい。どうして皆してそういう風に言うの?僕悲しいよ……
「明久を女の子ばっかの所に放り出してみなよ、全員虜にして帰ってくるよ」
「無自覚ハーレム主人公って感じですよね明久さん」
「女の子って言うのは皆チョロいと思われるよ?僕なんかにそう言ってると」
「うーん……あ、良いこと思いついたわ」
母さんが手を叩く。それによって全員の視線が母さんに向いた。
「ここに居る人は皆バカ息子が好きなわけでしょう?」
「ここに来てない人も何人かいますけど」
「それなのに明久に特に何もされてないと」
全員が頷く。待て、一部例外が居るだろ。
「では明久、連休を生かして全員とデートしてきなさい」
……は?
「な、何言ってるのかな母さん?」
「だって可哀想じゃない、いくらあんたが朴念仁で鈍感で女の子の気持ちに全く気付かないとしてもこれじゃあんたを好きでいる子達が可哀想だもの、見ていて涙が出るわ」
「そんなに……?」
「中には小学校の頃から好きだった子も居るんでしょ?辛かったでしょうに……可哀想に、あんたのせいでろくに恋愛すら出来ないんだから責任取りなさい」
「……まぁ、そう言われれば僕のせいか……んじゃ行くか」
女子達が外国人が映画を見て大はしゃぎするような反応を見せる。だが母さんは『ただし』と付け加えた。
「ルールを設けます。その1、明久と一人がデートをしている間は誰も不干渉。偶然を装って監視するのもダメ。もしそれが成されなかった場合は……まぁそん時はあんたに任せるわ」
……てかなんで息子のデートのルールを母親が決めてるんだ。過保護か?
「その2。明久、あんたは可能だと思えるならば頼み事は絶対に聞くこと、良いわね」
「……はい」
「その3。時間は一人3時間までとします。ただでさえ人数多いんだからね」
「……はい」
「後はもう何も言わないわ。明久を煮るなり焼くなり好きにしちゃっていいわよ。……私達は仕事部屋で仕事してるから何かあったら教えて頂戴。じゃあ上手くやりなさいな」
そう言って父さんと部屋から出ていった。父さんは去り際に現ナマをくれた。デート資金だろう。
「さて、こうなってしまいましたが……既成事実を作るのはルール違反ではありませんよね?」
「えっ」
モモが言うと全員目をギラつかせる。ま、不味い。何とかして切り抜けなければ……
「僕はそれを可能とは思わないんで」
「なっ!狡いですよ明久さん!据え膳食わぬは男の恥と言うじゃないですか!」
「別に抵抗してもいいけどその時は……どうなるか分かってるよね」
「狡いです、明久さんは私達を女として見ていません……!」
「……手のかかる子供だなとは」
「サイテー!コイツサイテー!」
「瑞希の胸揉んでおいて女と見てないのはずるいんじゃないかな!」
「不可抗力だと言った!とにかく!順番決めるよ」
「え?デート行くのには賛成してるの?」
「……まぁ、たまにはね。……皆にはお世話になってるし……君達がそれで喜ぶなら僕は何処までも付き合うよ」
そう言うと先程までのギスギスした雰囲気が一気に無くなった。皆がニコニコしながらリビングに座る。
「先生達も明久とデートしたいの?」
「面白そうだからからかってみようかなと」
やめてください本当に……と思っていると里紗が電話をかけていた。相手は……ルンさん?
『里紗ちゃん!どうしたの?』
「明久の家おいで、明久とデートしたいならね」
『5分で行くから!』
ドタバタと音が聞こえてきたあとに通話が切れる。次は……沙姫ちゃんか?
『もしもし?里紗ちゃん?悪いけど今日私用事が……』
「あぁ、ごめんなさい……じゃあ明久とのデートは無かったことに……」
『えぇ、今日の会食は中止で。え?相手が困惑するですって!?そんなの気にしなくていいのよ!上手く中止に出来たら休暇を与えますから!宜しい!里紗ちゃん!?3分で行くから待ってて!』
何やってるんだ……!仮にもお嬢様だろ……!そんな簡単にキャンセルしていいのかよ……!
「えぇと、整理しますね。デートしたいのは私、お姉様、ナナ、里紗さんに瑞希さんに春菜さんにルンさんに沙姫さんにヤミさん、メアさん、ネメシス、ティアーユ先生、御門先生……美柑さんはどうします?デートとは行かなくてもお兄ちゃんとお出かけしたい気持ちはありますでしょ?」
「久々にアキを連れ回すのもいいかも。じゃあ数入れといて」
「……なんと14人ですよ」
そんな時だ。インターホンが鳴る。外に出ると、目の前にリムジンが止まっていた。黒塗りの高級車。初めて見たリムジンに自然と背筋が伸びる。リムジンの中からは普段着の沙姫ちゃんが……
「アキ君、デートしてくれるって本当?」
「今それについて話してるから説明聞いてきて……あ、ルンさん」
「やっほー明久くーん!会いたかった!」
「あはは……」
二人を中に入れた後、僕は顔見知りの執事さんと言葉を交わす。
「明久君、お嬢様をどうぞよろしくお願いします」
「はい。すみません、会食があったのでは……」
「ほほほ、良いのですよ。お嬢様の自由にさせてあげたいのです。では失礼しますね」
「はい、お気をつけて」
見送った後に皆がこちらをキラキラとした目で見ていた。
「な、何かな」
「順番決めの前に……誰からデートしたいとかありますか?」
「そんなものあるか、皆平等だから順位とかないよ」
「……なんかつまんないです」
「でもそれが明久の良いとこだから。あんたの負けだよモモちぃ、順番決めよ」
こうしてくじ引きによるデートの順番決めが始まる。全く、なんの因果で……でもまぁ、決めてる間も楽しそうならそれでいいか。
「私一番最後だー!」
「ララちぃチートは良くないよ?」
「使ってないもんねー!」
「私が一番ね、ふふっ」
「先生からだなんて……!アキ君!骨抜きにされないでね!」
「どんな事になっても僕は全員と出かけるよ……僕の役割だし」
そうこう言ってる間に順番が決まった。
上から御門先生、ナナ、里紗、姫路さん、モモ、メア、ヤミ、ルンさん、沙姫ちゃん、ティアーユ先生、ネメシス、美柑、西連寺さん、ララという順番。
「連休って学校何日でしたっけ?」
「5日間はある。……だから3時間ずつとなると……4日あれば全員回せるね」
「じゃあデートプラン考えなきゃ!明久!覚悟しててよね」
「はいはい、楽しみにしてますよ。……現在午前10時20分前か……10時からスタートしても4人回せるかな」
「え、夜もいいの?」
「……時間はある。だからめいいっぱい使うさ。待ってて下さい、着替えてきます」
「あら、じゃあ私も着替えてくるわ。診療所の前まで来てくれる?」
「分かりました」
そう返事すると御門先生は出て行った。その後、リビングの皆に出てくる旨を伝える。
「じゃあ皆、部屋とか好きに使っていいからね」
「私は部屋で用意してくる!」
「私も帰って用意するよ、瑞希も用意しよ?」
「はい!じゃあ明久君、後で連絡しますね」
「あぁ。大丈夫、僕は約束は守るから」
皆がニコニコしながら送り出してくれたのをいい事に僕は部屋で着替えて財布を入れて外へと出る。色々しなきゃいけないけれど、まずは一つ一つ出来ることを成していこう。そう考えながら僕は御門先生の家まで走り始めた。
えー、複数の方からお便りを頂きR指定版書く事になりました。多分デート後からぼちぼち書き始めると思うのでそちらもよろしくお願いします。
まるで同人誌のようだったり、ハーレムでもこんな展開有り得るか?ってくらいスピード早いなだとか思われるかもしれませんが温かく見守っていただけると幸いです。