朝。心地良い布団の中。まだあと一時間は寝ていたい……そんな気分の中。
「明久、起きて!」
ララが馬乗りになって起こしに来る。
「……あと5分」
「だぁーめー!」
ララに起こされてリビングへ。今日はララとデートする日だった。顔を洗って朝ご飯を作る用意をする。
「お姉様、何処に行く気ですか?」
「秘密!」
「……プリンセスララ、明久を食べようものなら……」
「しないよ、大丈夫。私は明久と色んな所に行って、色んなものを見たいだけだし。皆と違って私健全だもん」
「私達不純なんですか」
「純粋な子は明久のベッドに入り込んだりしないよ」
まともな意見をありがとうと言いたいけど、君は普通にベッドに入ってたから人の事言えないぞ。……でも、そうか。今の僕があるのは……彼女があの時、風呂場に現れてから……全部変わったんだな……
「明久、どうしたの?」
「……思い出に耽ってただけさ」
「とにかく!今日は私が連れ回すんだから皆ルールは守ってねー!」
「大丈夫、皆今まで守ってきた。僕は信じてる……てかあなた何時までいる気なんですか」
セフィさんがソファーに寝転がってテレビを見ていた。何をしてるんだ本当に……
「私は帰る気はありません」
「何を寝言言ってる」
「だって……ねぇ?私ある目標を立てました」
「目標……?」
なんだ?娘達の成長を見るってことか?いい事だ、母親らしい事をしようと思ったんだn……
「私のチャームが効かない人間代表を私の魅力で堕とすまで帰らない」
「ララ、道具出して」
「いいよー」
「待ちなさい!ララ!母親を摘み出そうとするなんて!明久君も!」
何を言うかと思えば……10-0でそっちが悪いだろう。
「明久、人妻に意地悪して楽しいのかしら?」
「別に意地悪してる訳でもなければ断らなきゃ僕がやばいんだよ」
「明久が女の子を引き寄せる魔力があると言うのは聞いたわ。でも年上だったり人妻を虜にするなんてね?御門先生やルナティーク先生も虜にしてると聞いた時私は頭が痛くなったわ」
「……僕は何も悪くない」
そうだ。何も悪くないのだ。一部例外はあるにせよ、いつの間にか増えてただけだし……
「すみません、彼がそこらの男より魅力的なのが悪いのです」
「良かったわね明久?」
「……母さんから何か言ってくれよ」
「そうね……バカ息子をよろしくお願いします」
腹痛と頭痛が止まらない。なんで了承してるんだ?
「仮にも娘の友達と人妻なのに……」
「禁断の恋のようで興奮しない?」
「……変態だ……!度し難い変態がいる……!」
「失礼ね」
「とにかく行ってきます!ほら明久も着替えて!」
「あぁ、すぐ行くよ」
着替えてリビングに降りるや否や、ララに手を引かれて走り出した。何時ぞやとは状況は違えど立場が逆転したな……そんな事を思いながらララが行きたいと願う場所に共に向かうのだった。
◆
「……にしても、あの子本当に変わったわね」
「だね」
明久の母である明葉と父である晴人は微笑ましそうに話を始めた。
「うん、アキはあの方がいいよ」
「……明久のお母さんは、明久が暗かった頃を知っているんですか?」
ヤミが尋ねると明葉は頷いた。
「そうね……何とかしようと思っても何も浮かばなかったから時間が解決してくれる……としか思えなかったけどね……だからあなた達には本当に感謝してるわ。ありがとう」
「ヤミお姉ちゃんマスターの事殺そうとしてたのにねぇ」
「……そんな時期ありましたっけ」
「はぁ!?記憶改竄してもダメだからね!?」
「……でもあの子を好きでいるんでしょう?あの子も水に流してるだろうし……」
ヤミも顔を暗くさせて言った。その表情は誰が見ても苦しそうとわかるほど。
「……あの時の私は本当にどうかしてたと思います。こっちが素です」
「嘘つかないの!ごめんなさい明久のお母さん、この子明久関わると見境無くなるから……」
「見境無くなるのは里紗も同じでしょう」
「なにをぅ!」
「にしても……本当に美少女しか居ないのね……うちの息子ってイケメンだったかしら」
明葉も周りを見ながらそんな事を言う。晴人もため息を吐きながら呟いた。
「僕がそうでもないからイケメンではないと思うよ……ブサイクに産んだつもりもないけどね」
「そうだけど……」
「誰にでも優しいから皆堕ちちゃったんだよ。アキが優しくしたりラキスケした女の子ってみーんな堕ちてる気がするから」
「……つまりラキスケの被害者ってことね……ごめんなさいね、嫌な思いしたでしょう?」
「えっ……ま、まぁ……あはは……」
「嫌な思いしてたのヤミさんだけじゃないの?多分皆喜んでたと思うけど……」
「「「「美柑ちゃん!!」」」」
その叫びにより何かを察したのか明葉も明久のように頭を抱えた。
「……ごめんなさい、本当にあの子の代わりに謝ります」
「この中で一番多くラキスケされたのはヤミさんで次はティアーユ先生ですね……にしても西連寺さんや姫路さんもかなりされてる筈ですから堕ちるのも無理ないですね」
「西連寺さんなんて太腿を……ごめんなさいね、嫌だったでしょう?」
「い、いえ!気にしてませんから!大丈夫です!」
「寧ろ喜んでましたね」
「里紗!!」
顔を赤くしながら抗議する春菜を見た二人も溜息を零さずにはいられなかった。
「あの子、本当に大丈夫なのかしら……不安だわ……」
「ご安心下さい。明久君は本当にどこも異常ありません。ただ女性を惹き付ける魅力があるだけです」
「うちの子に限って……」
「あ、そうだお母さん、アキが女の子になった時の写真見る?」
「……え?女装?」
「お姉様の発明のせいで女の子になった時があるのです。こちらですね」
モモの写真を見て二人は目を丸くする。そこには胸と尻が大きく、くびれがあって髪が長く、美柑や玲と同様な美少女が里紗やララ達の女子達に囲まれた明久が。
「偽名は如月明奈、結構男からモテてげんなりしてたねぇ」
「……あなた」
「……うん、なんて言うか……うん……」
「結構可愛いでしょ?」
「女より女らしいって言われた事もあるんですよ」
「……下着とかどうしてたのかしら」
「玲さんの使ってたらしいですよ」
後は自分で買ったりと……なんて話を聞いた明葉の目が焦点が合わなくなっていく。
「……帰ってきたら家族会議ねこれは」
「でもお姉様が勝手に明久さんを女の子にしてしまったので……許してあげてください」
「それも考慮して話すけど……うーん、自分の息子が娘になるなんて……」
「所で二人はどこへ?」
「教えてくれませんでした……」
「……明久……早く帰ってきて……」
◆
「じゃーん!明久、どう?」
「どう?と言われましても……」
ここはどこなのか分からん。何せ僕は目隠しして来てるのだから。……違うな、途中からいきなり目隠しされて『そのまま着いてきて』と言われて数分なのでどこなのか分からない。
「目隠し外す前にクイズです!明久、明久は私と初めて出会った時、私を連れて逃げてくれました。それは何処でしょう?」
「何処って……公園だろ?」
あの時は助ける必要なかったと思ったよマジで。車投げる黒服一人で殲滅するのだから。
「外していいよー」
目隠しを外すと、そこは初めてララを連れて逃げた僕らに黒服がトラックを投げてララがデカい掃除機で全てを吸い尽くした場所だ。今見てもゾッとする。
「明久の事を好きになった場所……そこから散歩したりするの!どう?」
「君の好きにしな。僕はこの3時間、君の好きにさせるし、君は3時間、僕を好きにしていい」
「うん!じゃあ行こ」
ララに手を引かれて歩き始める。この公園は実は隣町に続く公園で、隣町とこの街を繋ぐ大きな公園として有名な場所である。……思えば13回ほどデートしたのに、ここにはデートで一度も来てないな……
そんな事を思うのも束の間。ララの身体とずっとくっついて歩いているのだ。僕としては恥ずかしいが、ララはニコニコしながら隣を歩いている。嬉しそうならいいかと思いつつ、周りの景色を眺めてみる。デートでも来た事が無い上に、殆ど来る事のなかった公園。見れば見るほど良い場所だと気が付かされる。散歩する時はこっちまで来てみようかしら。
「ねぇ明久、色んな事があったねぇ」
「何さ急に……おばあちゃんみたいなこと言って」
「……うぅん……私、明久と出会ってからとっても楽しい事ばかりだった。辛い事もあったけど……楽しい事でいっぱいだったよ」
「よしなよ、最期みたいで縁起悪い。それなら僕も同じだし、これからもっと楽しくなると思うよ」
「……にへぇ」
「……ありがとう、ララ」
「……うん」
後は3時間経つまでお互い話をして終了。長かったな……でも、楽しかったからいいか。
「帰ろっ」
「あぁ」
家に帰ってくると父さんと母さんに引っ張られて『家族会議』と書かれた部屋にぶち込まれる。
「な、何さ」
「……アンタ、女の子になった事があるのよね」
モモ辺りが話したか……どちらにせよ僕はその件では全く悪くない。
「……ララが僕を女の子にするんだよ。……始まりは事故だった。ララが胸を大きくするミサイル作って僕に当てたのが悪い」
「下着、玲のを使ってると聞いたわ……」
「姉さんが使いなさいと脅して来たし美柑もそれがいいって……」
「だってアキのスリーサイズお姉ちゃんと同じ位だよ?」
「……ちょっと気になるから女の子になってくれない?」
実の母親にこれを言われる日が来るとは思わなかったよ。どうして父さんも気になるという目で見るんだ?実の息子のTSに興味があるのか?業が深過ぎやしないか?
「嫌だと言ってもどうせやらせるんだろ……ララー」
「はーい!どうしたの?」
「僕の女の子姿が見たいって。女の子にしてくれる?」
「いいよ!」
ララの光線銃にて女の子にされる。女の子になった僕を見るなり目を丸くしたりする母さんと父さん。
「ほ、本当に……」
「凄いものだね、ララちゃんの発明品は」
「ありがとう!明久のお父さんも女の子に……」
「やめろ、本当にやめろ」
ララを追い出して今度はモモを部屋に。女の間に何があったのか、何をさせたのかを白状させることに。
「えー、女物の下着があるのは彼女が買えと言ったのです」
「明久さんは女の子になるのですし、何かあった時に起きてからではダメだという事でこうしました。すみません」
「明久の為にねぇ……ありがとうね、モモちゃん」
「いえいえ!これからも明久さんの身の回りのサポートとか努めて参りますので!」
「……」
あの、モモさん?何言ってるんでしょうか?あまりにも素っ頓狂な事言ってません?
「……こんな息子の為に……ありがとうね……」
「いえいえ!好きでやってる事なので!明久さん!ではまた後で〜」
部屋を出て行くモモ。僕は頭を抱えるしかなかった。何をどうしてもここからひっくり返せる未来が見えない。僕が男に戻されると、母さんも悟った顔をして此方を見つめて言う。
「……あんた、本当に愛されてるのね」
「……何もした覚えはないんだけどね。……でも、僕は今楽しいからいいんだ」
「……ちゃんと皆のこと気にしなさいよ」
「わかってる。……どんなに大変になっても……きっと頑張るから」
母さんが笑って部屋から出してくれた。時計を見れば、もうおやつの時間を過ぎ、夕方になっていたのでキッチンへ向かう。デートをした女の子や先生達も家へと帰って行った。御門先生に至っては本当に家の隣に引っ越してきたから帰るもクソもないけど。
「珍しく2人きりだねぇ」
「私達も居ますけど」
「モモ達もママの所に帰ったら?」
「なんでですか!嫌です!」
「お姉様だけ独り占めなんて狡いぞ!」
「ふふーん!私本妻だもーん!」
いつ決まったんだそんなの。ナナもモモも僕の腕から離れてくれなくなったではないか。てか二人共そんなに密着されると困るのだが……?
「こら!明久君が困ってるでしょう!」
そこに現れた三姉妹の母。ここにいるはずの無い御人。セフィさんだ。
「……なんでいるんですか、さっき帰ったはずでは」
「また来ちゃった☆」
「明久、大丈夫!摘み出すから!」
……自分の母親を摘み出すとかいう娘を僕は初めて見た。当然セフィさんも怒らないわけがなく。
「何言ってるのよ!何こんないい男を娘だけで占拠しようとしてるわけ!?許さないわよ!」
あの、怒るところそこですか?摘み出そうとしたところは?
「お母様!いい加減娘達の婚約者を摘み食いしようとするのはおやめ下さい!」
「摘み食い?ふふ、バカね……堂々と食べようとしてるわ!」
「余計ダメです!人妻がはしたない!」
「人妻だって女だって言ってるじゃない!」
もうダメだ。僕は人妻にも食べられるのだろう。性的な意味で。父さん、母さんごめん……僕はもう無理みたいだ。ハーレムですら罪深いのに幼馴染にお嬢様先輩に異星の女の子に兵器だと言い張る元暗殺者に……先生に人妻……どうしろってんだよ……!
「明久君!私はここに居てもいいかしら!?」
肩を掴まれる。このまま引き伸ばせば面倒だから取り敢えず好きにさせておこう。
「勝手にしてください……どうせ来るなって言ってもあなたは来るでしょう」
「ありがとう明久君♪」
抱き寄せられる。あのララでさえも般若のような形相をして母親を見ていた。モモやナナですら絶句という言葉を体現したかのような顔で自らの母親を見ていた。そりゃそうだ。娘と同い歳の男を好きだと言い張って抱き寄せているのだからそりゃまぁ僕がララだったとしても立ち尽くす事になる。
「明久、少し頼みが……」
本当に運が悪い。なんだと言うのだ?僕何か悪い事しました?
「……明久……あなた……」
「頼むから何も言わないでくれ。僕は何も悪くないんだ。ただララのお母さんが……」
「あらやだ明久君、セフィって呼んでいいのよ?」
「……もういいや、何言っても取り繕えそうにない」
母さんが珍しく優しい顔をして肩に手を置いてくる。おいやめろ、地味にそっちの方がダメージくるんだから。
「大丈夫、人妻が相手でも強く生きなさい」
「待て、寛容するんじゃない!」
「あら!ありがとうございます!明久君は本当に良い男でして……」
「そうですかね?何にせよ、御自身がそれで良いのなら……本気なのです?」
「えぇ……だって、こんなに優しくて頼りになって顔も可愛い男の子なんてそうそう居ませんからね」
お腹痛くなってきた……なんで親同士で変な事話してるんだよ……
「でも人妻まで堕とすなんてね」
「堕とした覚えなんてない。勝手に堕ちてただけだろ」
「ごめんね明久、ママがチャーム効かない人に対して弱過ぎるのがいけないんだよね」
「お母様は正直犯罪ですよ?地球ではニュースになりますからね?人妻が男子高校生を狙ってるなどと」
「……ララ、私を若くする銃を作りなさい」
「嫌だ!ママと同い歳なんてやだよ!」
至極最もな正論である。僕がララと同じ立ち位置になったとしても同じことを言うだろう。
「……にしても明久さんのお母様はお母様を気持ち悪いとか思われないのですか?」
「まぁ、思う所はあるけど……セフィさんからしたら明久の事を周りを気にしなくなるほど好きになっちゃったのでしょ?」
「どうして明久君もっと早く生まれなかったの?」
「……お腹痛い」
誰か僕を……助けてくれ……あの目は本気だ。どうしてもっと早く生まれなかったのか、本気で問われているのだ。
「だったらもう親として見守るしかないもの。セフィさんは旦那さんが側室と遊んでばかりだから仕方ないのよ」
「お父様も悪いですけど……うーん、どうしようナナ、これじゃ親子揃ってって事になっちゃう」
「……母上も諦める気がねぇからな……」
「ママ……今私は初めてママがどうかしてると思うよ……ほら、明久なんかお腹痛過ぎてトイレ篭っちゃったよ」
向こうから聞こえてくる声をシャットアウトしながら僕はトイレに籠る。もう自分の安息の地はここだけだ。自室ですら侵食されつつあるのだからもう帰れない。
『明久、出てきなさい』
「ふざけるなー!僕はもうここを出ない!もしくは自分の部屋から出たくなぁい!!」
『そんなに女の子にモテるのが嫌なの?』
「モテるという次元を超えてるだろ!」
どこからやり直せばよかったのだ?産まれる前からやり直したとて、きっと全員に冷たくしない限りこんな風になっていたはずだ。
「アンタの行いが実を結んでこうなったのよ。諦めなさい」
「まぁまぁお義母様、明久さんが篭もりたいと言うなら篭るサポートをするのが必要ですよ」
そう言うと何やらリモコンを操作する音が聞こえてくる。
「……おい待て、何をしてるんだ?」
「明久さんが快適に過ごせるようにドリンクのサービスですとか、色々機能を追加しておいたのです」
「何勝手に人の家改造しとんじゃあ!」
急に壁に張り付いているビデとかのパネルが外れ、中から淹れたてのコーヒーと新聞紙などが出てくる。
「快適なトイレを目指しました」
取り敢えず外に出る。そして直すように銘じた。全く、トイレに余計な機能をつけるんじゃない。何も無いシンプルさが良いのではないのか?
「えー、良いと思ったのに……」
「全く……とにかく、僕はご飯を作るんだ。邪魔したらご飯抜きだぞ」
「手伝うー!」
「……じゃあ頼むよ」
これからもこんな喧騒を聞きながら歩いていくのだろうか。そんな半分溜息の半分期待の気持ちでやめていた調理をララと再開するのだった。