「明久君!そこに正座しなさいっ」
掃除が終わってリビングでごろごろしてる最中、帰ってきたティアーユ先生に正座させられる。雄二達も居るって言うのに……何故僕だけ女の子に囲まれて説教を受けねばならんのだ?ていうかなんでそんなに『今度という今度はお説教です』なんて張り切ってるの?
「またよからぬ事を考えてるわよね、危ない事はしちゃダメってあれほど……」
「そうだぞ明久、良くないと思うが」
「うむ、鉄人に牙を向くなんて危ないにも程があろう?」
「……死に急ぎ過ぎ」
「お前らは僕の味方じゃねぇのかよ!」
いつの間に寝返ってるんだろう。寝返ってお前らに得があるのか?僕はお前達の味方なのに?もう僕だけ音楽プレイヤー取り返してしまおうか?協力しないぞ?
「とにかく!音楽プレイヤーは反省しているって私の方から言って回収してあげるから、馬鹿な真似はやめなさいっ」
「え!回収してくれるんですか!流石先生!」
柄にもなく抱き着くと僕の頭を微笑みながら撫で始めた。やっぱり先生って母性溢れて良いと思うな……なんて考えながら頬擦りしてたら他の子達に引っぺがされて反省する様にムチで叩かれたり小言を連ねられたり。
「でも明久に協力してもらわない事には俺らの悲願を達成出来ねぇんだ。ララは承認してたからお前らも目を瞑ってくれよ」
「何さ!翔子というものがありながらエロ本に浮気した癖に!」
「坂本君、そんなんじゃ翔子ちゃん泣いちゃいますよ」
「……吉井のハーレムに加わるかもしれない」
うんうんと頷く霧島さん。先程まで居なかったのにいつの間に入ってきたんだこの人は?ていうかサラッと凄いこと言ってるのやばない?
「なんでお前は恰もずっと一緒に居たかのようにここに居るんだよ!さっきまで居なかったろ!」
「……美柑ちゃんに開けてもらった」
霧島さん、健気だなぁ……こんなでも好きだから頑張って想いを伝えているのに……雄二と来たら……はぁ……
「……雄二がそんなんなら、私は吉井に浮気する」
「ダメですよ翔子ちゃん、それはそれで坂本君が悲しみで心に穴が空いて一歩も動けなくなるくらい重症になっちゃいます」
「そうだよ翔子!雄二だって本当は愛してるぞ翔子ーって言ってたじゃん」
「……そうだった」
「おい待て、そんな台詞いつ俺が……」
『愛してるぞ、翔子ー!』
そんな声が霧島さんの持ってるmp3プレイヤーから紛うことなき雄二の愛の告白が聞こえてくる。他の女子の皆が顔を赤らめる中、雄二は顔を青くし、真っ先に秀吉の首根っこを掴んだ。
「……おい秀吉、何を取引に使った?」
「わ、ワシはなんも知らん……!は、離せ阿呆……!」
「俺が喋ってないとしたらお前以外居ないだろうが……!吐け!何と取引しやがった!」
「……雄二、優子の妹に手を出すのはダメ」
霧島さんが雄二の頭を掴んで秀吉を助ける。まぁ、本人が言ってなければ秀吉を狙うのも無理はない。助けてもらった秀吉は女の子扱いされたから納得いかない様子だった。
「お主までワシを女扱いするのか!?」
「……雄二に色目を使ってる疑惑がある」
「そんな事するわけなかろう!なんて気持ち悪いことを!」
「……土屋も吉井もその疑惑がある」
「……馬鹿な事を言うな……!」
「君はそこまでして僕らに吐かせたいのか!」
健気なのはいいことだが風評被害は良くない。僕が雄二と付き合う……オェッ。康太とえずいている間に雄二の拘束から逃れて僕の後ろに隠れた秀吉。家主の僕が一番安全ってか?
「……もしかして雄二に浮気するくらいなら吉井に浮気した方がマシってこと?」
「ねぇ木下君、お話があるんだけど」
「お、落ち着くのじゃ!目が怖いぞい!?」
あの温厚で優しい瑞希までもが目からハイライトが消えてめっちゃ怖いんだけど。
「そういや少し前、明久に色目使ってたもんねぇ?」
「木下君……お仕置です……」
「あ、明久助けてくれ!霧島に詰められるよりもやばい状況に立たされておる気がするのじゃ!」
「はいはい、どんちゃん騒ぎなら他所でやっておくれ」
僕の一声で全員散って行くが、秀吉へのヘイトが止まらない。別に色目使ってるわけじゃないと思うけどなぁ……
「落ち着きなよ。秀吉は男だろ」
「だって明久と一緒に女装してたじゃん」
「ノリノリでしたよね」
「それは雄二に作戦だと言われた上に、明久位しかワシと同じ境遇がおらんかったから……」
「同じ境遇?」
「男で顔が女っぽい」
「表出ろテメェ」
顔が女っぽいのはお前だけで充分なのだ。助けてやったのにその言い草はなんなんだお前はよぉ!?
「二度と男に戻れなくしてやろうか」
「……そうなったら……責任取るのじゃ……」
……なんでこの子は色目使い始めたのん?わざわざ内股擦り合ってモジモジする必要ないと思うんですけど。ほらぁ、他の娘達が殺気放ってるし……
「……秀吉、あんたほんとに男なのよね……?」
「優子に言いつけちゃおうよ……流石に看過できないし……」
「えぇ……その後お仕置ですね……」
再度僕の後ろに引っ込んでしまう。秀吉……可愛いとは思うけど僕は男とは付き合えないんだ……ごめんな……てか皆の殺意高過ぎない?どうした?割と僕もちびるレベルだぞ?
「秀吉、いくらお前が男に興味があったとしても明久に色目使うたぁ堕ちたもんだな」
「……お前が攻めになる事は絶対にない」
「ぐぬぬ……明久に男らしさで負けてること自体が許せん……」
「じゃあ色目使うのやめろ、なんで色目使ったんだ」
謎が謎を呼んでいる。僕にはもう男として生きるのを辞めたようにしか見えん。
「で?どうすんだよ、野球大会は」
「鉄人の召喚獣にフィードバックつけて股間にホームラン球を打ち込んで召喚獣ごと吹っ飛ばす計画は終わったつもりはない。皆がなんと言おうと今回ばかりは鉄人に目に物見せてやる」
「……エグい事しやがる」
「流石に急所を狙うのは同じ男としてどうかと思うからせめて顔面とかにした方が良さそうね」
「……アンタ保健医だろ、なんでそんな協力的なんだ?」
「そりゃ明久君のお手伝いしたらご褒美貰えるもの」
「明久……」
ダメだ、鉄人フルボッコの前に僕のメンタルがフルボッコにされている。どうしてうっとりした顔で皆顔を赤くしてうんうんと頷いているんだ?
「流石に17人も相手してたらいつか血とか吹き出しそうだが」
「大丈夫、私医者だもの」
「……良かったな」
「良いもんか、代わって?」
「……断る」
あのムッツリーニですら嫌がるとは……ハーレムってエロ魔神すら嫌がらせるのか?
「とにかく、トーナメントを見る限りまずは雑魚相手で慣らす。翔子達は……これ勝てんのか?」
なんと相手は3-Aである。僕としては……
「僕としてはまた高城のヤローぶっ潰せるから負けて欲しいんだよね」
「……何する気だよ」
「フルスイングしてバット離して顔面にぶつける」
「……本物の悪魔」
「人として終わってるのじゃ」
「このクズ野郎がよ」
おかしい。奴は皆にも迷惑掛けたから結構乗ってくれると思ったのに……
てかお前らは少なくともこっち側に居ないとおかしいだろ。
「うるせぇ、取り敢えず案を出せ。出なければ帰れ」
「美柑ちゃん……お前の兄貴、こんなに意地悪だったか……?」
「……私の知ってるアキはこんなんじゃないんですけどね……」
お前、美柑を盾に扱うとは卑怯かつ言語道断だぞ。小さい子に同意を求めるな。
「てか明久がネメシス憑依させてドSモードにしたら速攻だろ。うちらの学園女子と男子の比率6:4なんだぞ」
「僕が風評被害に遭うだろ」
「でもドS明久君結構人気だよ?普通の時より魅力感じるって人もいれば虐めて欲しいって声も……」
泣いた。通常時の僕魅力ないじゃんか。虐めて欲しいってなんだよ。僕にどうしろと?
「お前もうそっち路線でいけよ」
「ダメです!ノーマル明久君が居なかったら私達虐められて終わりじゃないですか!」
「知るか!お前らのプレイ内容なんて知ったこっちゃねぇ!」
「……でもマンネリ防止のために聞いておくべき」
「お前は一度頭冷やせ!」
雄二も大変なんだなぁ。南無南無……
「それで?作戦どうするのさ」
「あ?野球大会の作戦なんて正直いきあたりばったりでも何とかなる。問題は教師共の点数だ……おい明久、お前の弱点科目ってなんだ?」
「総合的に見て一番低いのは保健体育かな。それ以外は500点くらい」
「日本史はこちらも切り札だ。秀吉は古典、康太は保健体育……ララは……理科系。俺は数学。ある程度は戦えるが……」
「この前ティアーユ先生がマンツーマンで教えてたから理科は大丈夫だと思うんだよね」
確かにティアーユ先生科学者だし、教え方も上手だから点数上がったけど……教える際身体擦り付けて来るのどうにかして欲しい。いや、嫌という訳ではない集中できないのだ。
「確かにティアは頭いいけど……明久君に教える時身体擦り付けて発情しちゃうの先生失格じゃない?」
御門先生に普通に見られてるし。まぁそれをバレて結局勉強どころじゃなくなったってお話だったんだけど。
「……ティア、何してるんですか」
「し、仕方ないでしょ!明久君がサボらないか見てたんだから!」
「この度は私の友人、ティアーユ・ルナティークが勉強のためと言いつつ年下の男の子に擦り寄った事をお詫び申し上げます」
「あなただって体調管理って言いながらお風呂に突撃してるじゃない!」
「本当に体調管理する必要があるし、明久君ティア並にドジだから滑って転んで頭打ってあの世……なんて事も有り得るし」
そこまでドジじゃない。それは馬鹿にし過ぎでは?
「……何人か引き取ってくれよ」
「アホな事言うな」
「責任持つのじゃ」
「……お前の宿命」
「ちくしょー……」
作戦会議らしい作戦会議もせずに結局運に身を任せるという事で話が収束していった。何もすることがないので男4人でご飯を作る。
にしてもどっち転んでも波乱万丈な未来しか見えない。て言うか、このまま行けば3年生ぶっ倒してそのまま教師陣と戦う未来しか見えないのは何故だろう。もうお約束的なあれだろうか。
「にしても本当に賑やかになったよな、この家」
「うむ、ワシらも美柑ちゃんに許してもらって以降溜まり場として活動してたが……ここまで騒々しくなるとは……」
「……全員女はどうかと思うけど、結果的には良い事」
「……うん、気苦労は多いけど……賑やかなのはいい事だと思うよ」
「……お前に関しては色々と大変そうだからなぁ」
親が子のエロ本を見つけてしまったような顔をする3人。割とダメージあるなコレ。僕がエロ本を持ってたりしても割と寛容だったから気付かなかったけど父さんも母さんもこんな感情抱いてたのか。
「いつか身体から血が吹き出そう」
「案外何とかなるもんじゃろ」
「じゃあお前代わるか?」
「……遠慮しとくのじゃ」
ハーレムはやはり忌避されるものなのだろうか。皆が寄りたがらない領域となっているではないか。
「てか誰よりも望みが薄かった明久が先に大人の階段を昇るとはな」
「何が起こるかわかんないよほんと……」
「……十五人近く相手して一言」
「……代わってくれ」
「……断る」
そんなこんなで男子トークを盛り上げつつ、ご飯の準備を進めるのだった。