バカとToLOVEる!   作:抹茶スイーツはお好きですか?

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DarknessⅡ

 

 お昼ご飯。

 

 それは体育祭における唯一の楽しみ。そして、最後の決戦前の晩餐である。僕は一人屋上までやって来ていた。だが直ぐに全員に見つかって屋上でご飯を食べる事になったのだが……

 

「よくやったわアキ君、これはご褒美よ」

 

 目の前に重箱が出される。やばい、いつもなら舞い上がるのにクズとは言えど人を傷つけてる手前、素直に喜べない。

 

「人を殺めて食べる飯は美味いか?」

 

 コイツはなんでいつも人を煽ろうとするのか。

 

「お前も共犯に仕立て上げるからな」

「おーやだやだ」

「……雄二は吉井を見習うべき」

「いきなり現れてなんてことを言いやがる、コイツは三人殺っちまったんだぞ?」

 

 確かにいきなり現れて見習うはおかしいが……いや待て、三人殺ったってのはおかしいだろ。奴らまだ生きてるし。

 

「……友達の為に自ら手を汚すその姿勢はかっこいい、雄二もそう言うのは必須」

「だよね、坂本にもあればいいと思うのになー」

「うるせぇ、お前らはさっさと明久にベッドの上で降参でもしてろ」

 

 なんてことを言うんだ貴様。少なくとも女の子相手に使っていい言葉ではない。

 

「それセクハラですよ」

「知るか、俺らは鉄人ぶっ倒す為に食わなきゃいけねぇんだ、邪魔したら明久がお前を嫌うように仕向けるぞ」

「そんな事になったら明久殺して私も死ぬし」

「……コイツマジトーンじゃねぇか」

 

 割とマジで背筋が凍った。まぁ里紗がそんな事する子じゃないのは分かってるから良いんだけどたまにヤンデレ出るのやめて欲しい。たまったもんじゃない。

 

「にしてもネメシスもいい加減明久の身体使って悪戯するの辞めなよ」

「良いではないか、これで明久が馬鹿とか言われなくて済むだろ」

「それはそうだけど女の子達が狙い始めたらどうするの!」

「そうです、女の子は皆貞操逆転みたいになってるんですよ。明久君がこれから女の子としか接していけなくなります」

「良い事ではないか」

「「「良くない!」」」

 

 ネメシスが説教されてる。見てて面白いなこれ。なんにせよどうにかしないと僕のここでの未来は無い。そんな全ての元凶が目をうるうると揺らしてこちらを上目遣いで見てくる。

 

「……助けて?」

 

 凄い声高くなった。何度も言うけど低い時と高い時で声が違い過ぎる。別人かよ。

 

「僕被害者だぞ、当事者で何とかしろ」

「私悪くないもん」

「そんな声出してもダメッ!」

 

 ロリ声出して許してもらおうという作戦は失敗に終わったのか説教され続けている。その横で寝転がりながら唐揚げを頬張る。

 

「……さてと、残るは鉄人達だけだな」

「……お前本当に鉄人達を倒す気かよ、正気じゃないぜ」

 

 僕と同じ言い出しっぺの言う言葉か。なんでそんなやる気を見せないんだ。僕らに退路なんてないのに。

 

「お前は本当に僕の味方ではないのか?」

「冗談だ。……なんにせよ勝算はあるのか?今回ばかりは俺は勝つ為のピースが足りないと思っている」

「知るか。過程はどうあれ、ここまで来たんだ。勝ち以外の未来なんぞ認めない。お前は違うの?」

「……そうだな、お前の言う通りだ」

「でもいくら西村先生が許せないとはいえ……いいの?」

 

 春菜の一言に詰まってしまうが、もう引き返せないのだ。

 

「やるしかない。後戻りは出来ないし、ここまで来たんだから……それにパンツ一丁にされたのは許しておく訳にはいかない」

「意外と根に持つんだね」

「……アキ、そんなのアキらしくないです」

「……お前の覚悟はオキニに辞めろと諭されて辞めるくらいの軽いもんなのか?」

「ち、違います……辞めろとは言いませんが……その、アキが悪者になるのは見たくないんです」

 

 この子本当に僕の事をダメにする気か?そんなんだったら「ごめんなさいママ」って泣きついた挙句赤ちゃんまで退行するぞ?人目も気にせず甘えに甘えて社会的に死ぬまで甘えるぞ?

 

「どうせあと一試合やったら終わりだ。……僕は夢を見せてやるって決めたんだ。それに音楽プレイヤーは……初めて自分の小遣いで買ったものだから。……大切な思い出をあんなクソ教師に盗られて……黙って終われるか」

「……分かりました。アキの力になります……メア、ネメシス……あとは任せてください」

「何を言う?独り占めする気か?」

「……ダークネスを使います」

 

 その場にいる全員が固まった。そりゃそうだ。僕の身体にダイブしてダークネスとなるのだ。先程も説明があったけど……僕もその影響が……

 

「良いではないか、ハーレムの中で見たいという人が100%居たぞ」

「全員じゃねぇか!これ以上明久をゲシュタルト崩壊させるな!俺らの中の明久ってなんだったっけってなってんだぞ!」

「この程度でそうなるとはその程度の友情だったと言う事だ。さて、お望みならお前に取り憑いて翔子を従順にしたって構わないのだぞ?」

「……それはダメ、雄二本人がやらないと雄二が従順にした事にならない」

「何のこだわりだよ!飯の最中だぞ!」

 

 女の子って時々よく分からん話で盛り上がるけど僕には分からない。分かりたくもない。その意味とかを完全に理解してしまったら僕はきっと戻れなくなる。

 

「じゃあ頼むよヤミ」

「はい」

「……明久と話す時だけ声のトーンが二段階上がる」

「お主本当に明久が好きなんじゃな」

 

 気付かなかった。最近のヤミが他の人と話すの見てないし……って言うか僕にベッタリなせいでマジでコミュニケーション能力落ちてる気がする。ただ甘えてくるだけの可愛い生き物。それが彼女である。

 

「……アキ以外の男と接するのは無理でしょう。あなた達は友人なので例外です」

「……明久、本当に洗脳とかしてないんだな?」

「これ見てたら不安になってくるよ……」

 

 皆少し前のヤミを知ってるからこんな事が言える。そりゃそうだ。人格180°変わってるんだから洗脳も疑われる。

 

「なんにせよお前達とララも今回協力的で助かったよ。お前居なかったら確実に負けてたからな」

「……最初はやる気なかったというか、否定的だった」

「明久放っといたらまた怪我とかするしねぇ」

「……私もFクラス編入しようかな」

 

 頭の良い女の子達が一斉にバカの巣窟に行こうと血迷い始めている。どうするんだこれ。

 

『あと10分で二年Fクラス対教師陣による召喚獣野球試合が開始されますので、参加する方は準備を始めてください』

 

 アナウンスが響く。重い腰を上げて顔を叩く。

 

「よぉし、鉄人共に一泡吹かせてやるか」

「……ラストスパート」

「勝つぞい」

「……あぁ、行くか。これが最後だ……目にもの見せてやる」

 

 僕らは気持ちを切り替えてグラウンドへ向かった。

 

 

 ◆

 

 

『これより、生徒・教師交流野球試合決勝戦を始めます。皆さん整列をお願いします』

 

 審判を務める先生の声に従って整列。身体にトランスして憑依しているのはヤミだけ。観客席にメアとネメシスも確認した。

 

「さて吉井。……お前のふざけた態度を改める時が来たようだ」

「……それを決めるのはアンタじゃないんだよ」

「……む?」

「もういつまでも観察処分者だとか、問題児とか……最弱とか呼ばれてた僕じゃない。それを痛い目を見ながら再認識するんだな、鉄人」

「……良かろう。お前がそこまで言うのなら本気で戦ってやる」

「……その時点で間違ってる事に気付いた方がいい」

 

 そう言い残して守備に回る。まずは化学から。確か点数はティアーユ先生のお陰で割と高かった気がするが……

 

「はは、野球なんて何年ぶりでしょうか……サモン」

 

 トップバッターは布施先生。バッターボックスに入って召喚獣を呼び出した。

 

 化学教師 布施文博

 化学 501点

 

 VS

 

 Fクラス 吉井明久

 化学 401点

 

 凄い。やっぱ先生の教え方ってわかりやすいし分かるまで教えてくれるし正解したらいい子いい子で頭撫でてくれるしで点数は自ずと付いてくるものだ。

 

「感動しました。あの吉井君が化学でさえ私と点数差100点程なんて」

「……余裕ぶっこいてる暇があるのか……ッ!」

 

 雄二に視線で指示を送る。外角低め、速い球で。思いっきり投げられた球は突き刺す様に召喚獣のキャッチャーミットに収まった。

 

『ストライク!』

 

 相手は動かない。予想通り、向こうは様子見か。

 

 向こうは体育祭の監督も関係している故にメンバーを総入れ替えしている為、向こうは初めての召喚獣野球となる。そりゃ使用感とか色々確かめたい事もあるだろうて。

 

『……行きますよアキ』

 

 あぁ。僕と君なら敵無しだろう。身体から力が湧き上がってくる。……これが……ダークネス……

 

「……ッ!」

 

 二球目を投げる。外角高め、先程よりスピードも早め。雄二は一瞬でそれを察し、キャッチャーミットを構えてくれる。奴の点数も加味してなんとか点数消費も少なめにと狙ってはいるが、その狙いに対して完璧に対応してくれている。ありがたい事だ。

 

『ストライク!』

 

 球を受け取って雄二に指示を出す。ストレート、速球。それに対して頷いたのを確認すると投球フォームを取らせる。

 

「吉井君、殺意高めですね」

 

 そんな事を言ってくる。なるほど、心理戦でも仕掛けてくる気か。

 

 野球にも駆け引きがある。その為に心理戦は必須なもの。相手は何を投げてくるか。どんな行動をしてくるか。その予想を全てしながら相手と戦う必要があるが、揺さぶりをかけようと言うのかこの化学教師は。

 

「真剣勝負にそんな余裕ぶっこいてる時点でアンタの負けだ。さっさとベンチに戻ってろ……ッ!」

 

 召喚獣が投げた球はストレートド真ん中で飛んでいく。これを待っていたと言わんばかりに召喚獣がバットを振るうが、なんということか、バット毎召喚獣を吹き飛ばしてしまったのである。

 

「そ、そんな……バット毎……吹っ飛ばすなんて……」

 

 召喚獣が倒れたのと同時に布施先生も項垂れてしまう。これはヒット扱いになるが、召喚獣が吹っ飛んでいた為雄二がボールを取ってそのままアウトに。

 

「テメェ!殺す気か!」

「……その位の覚悟もないのか?一々騒ぐな、今度は頭を狙うぞ」

「……あれがダークネスかよ……殺意高過ぎんだろ……」

 

 何か言ってるが気にしない。気にしたら負けだ。

 

「さっさとベンチに戻って次の打者を寄越せ」

「……うぅ……問題児に負けてしまった……」

「普段身体も動かさないで優雅に珈琲啜ってるだけの教師なんざに負けるか。さっさと交代して次のバッターを出せと言っている」

「……うぅ……身体鍛えようかな……」

 

 そして寺井先生が出てくる。文月学園の教師の中では若く、竹内先生とは別のもう一人の現国教師。

 

「サモンっ」

 

 現国教師 寺井伸介

 化学 211点

 

 VS

 

 Fクラス 吉井明久

 化学 401点

 

「苦手科目とはいえ君に負けるとは思いませんでした」

「文系には厳しかっただろう。別に気にする事はない」

「……やはり君は多重人格なのですかね」

「その事をアンタが気にする必要はない。それで勝敗が左右するわけでもないからな」

 

 低め一杯の速球の指示が来た。その指示に乗ってやるか。今度はほんとに低めの球を召喚獣に投げさせる。狙い通りだが……どうだ?

 

「ふっ!」

 

 カンッと鈍い音が響き、ボールは一、二塁の間をすり抜けていく。打たれたか……まぁいい。確か寺井先生は学生時代に野球をやっていたと聞いた事がある。まぁ過ぎた事を気にしても仕方ない。さっさと次の相手を……

 

「よろしくお願いします」

「……ほう、三番にあなたが来るとはね」

「お手柔らかにお願いします、サモン」

 

 いつもは交流のない高橋女史だ。学年主任を務める才女である。なるほど、お堅い印象のスーツではなくジャージ……故にいつもよりは柔らかい印象を受けたわけだ。

 

 学年主任 高橋洋子

 化学 801点

 

 VS

 

 Fクラス 吉井明久

 化学 401点

 

「……アンタ本当に人間か?」

「失礼ですね坂本君。私も人間ですよ。それに勝てない相手くらいいます」

「是非聞きたいもんだな」

「保健体育なら土屋君に負けますね。一教科で1000点を越えるなんてそれこそ人間を辞めてるかと」

 

 正論である。奴に関しては1000点越えた時点でこの学園で勝てる者は居ないとされ、遂に学園長までも認めてしまった。担当教師の二倍の点差を誇るなんて頭も去ることながら腕とかテスト中どうなってんだ?

 

『勝負にならねぇ、敬遠するぞ』

『……待て、高橋女史って運動からっきしじゃないか?』

『……それもそうか。打たれたらお前の責任にすりゃいいしな』

『……絶対後でシバく……内角高めの遅球でいく』

 

 雄二とのアイコンタクトで作戦を決める。悪友やってまだ1年だが、こういう時とか頼りになるしこういう事も出来るから本当に凄い奴だと思う。

 

「そうだ高橋女史、バットの持ち手が逆だぞ。それだと打ちにくいだろう」

「言葉遣いはともかく、そのフェアな精神は評価しましょう」

「いやなに、アンタの事は風の噂で色々聞いてるからな」

「ほう、例えば?」

「……高橋女史、野球のルールはわかるか?」

「簡単です。投げてきた球を打てばいいんですよね」

 

 やはり噂は事実か。どんな人間にも弱点は存在する。そこを突けば勝てるかもしれない。

 

「それはざっくりとした説明だ……やはりか、運動についてはからっきしだって事だ。……つまり点数が2倍近くつけられても僕なら勝てる……せいっ!」

 

 流星のような球の軌道はキャッチャーミットに吸い込まれていく。勿論ストライク判定が成される。

 

「おや、手厳しいですね」

「どんな勝負にも真剣になれない奴が勝てるとお思いか?……アンタ程の人ならそれくらいわかると思っていたが」

「……なるほど。性格は変わっても確かに吉井君ですね」

「……いくら高い点数だろうが使えなきゃ意味は無い……!」

 

 投げられたボールは大きく弧を描き、雄二の召喚獣のキャッチャーミットに収まる。勿論ストライク。

 

「……ツーストライク、ですか」

「さっさと諦めてくれ。その方がこちらとしても……」

「いいえ、諦めません」

 

 決意の籠った目。ならば仕方ない。

 

「ルールとテクニックもまともに知らない素人に負けるほどこっちだって阿呆じゃねぇんだ……ッ!見下してんじゃねぇッ!」

 

 今まで投げた球より早くキャッチャーミットに突き刺さる。勿論振ろうとして空振りだった。

 

『ス、ストライク!バッターアウト!チェンジ!』

「……せめて本気で勝ちたいと思ってから来るんだな。どんな事にも真剣になれない阿呆共に負けるほどヤワじゃないんで」

 

 ベンチに戻っていく。こちらを見るクラスメイト達はなんか怯えているようでもあるが気にしない。

 

「さっさと攻撃に移るぞ。……おい、作戦はいいのか」

「あ?んなもん考えちゃいねぇよ。あるだけ無駄だろこんな点数差開いてる奴が多いんだから」

「……ったく……使えねぇな……」

「……なぁ坂本、吉井ってこんな怖かったっけ」

「……俺に聞くな、もう俺らの知ってる明久は何処にもいねぇんだ」

 

 揃いも揃って何をほざいているんだ。

 

「何をゴチャゴチャ言ってるんだ?さっさと三振になってこい。今のお前達じゃ何倍ついてるか分からんから両チーム点数を0にすれば延長戦になる。……そこまではもたせろ、エロ本の為だ」

「なんとかやってみる……!」

 

 そう言って砕けて行った奴らを見てさっさと守備の準備。血も涙もないなんて言葉を送られるが心外である。全て勝つ為の行動故に。

 

 教師側の攻撃。次は誰だ……なんて考えていると、僕の宿敵が。

 

「次は……ほう、アンタか」

「ふんっ、貴様には言いたい事が沢山あるからな……サモン」

 

 次は日本史だ。僕の唯一の得意科目。点数はどうなる?

 

 補習教師 西村宗一

 日本史 745点

 

 VS

 

 Fクラス 吉井明久

 日本史 803点

 

「貴様に負ける日が来るとはな」

「……やはり何も変わってないな。……勉強合宿の時の事をもう忘れたか?ただ外見で判断するんじゃなく、人の内面をしっかり見た上で判断も出来ない教師なんざ、生徒と向き合う資格すらない。学園長のお言葉だ」

「……故に俺は貴様とこうして対峙している。お前の球を全力で打つと予告しよう」

「……不当な持ち物検査で人の服を脱がせた罪はここで償ってもらう。僕はアンタを倒す為にここまで来た。僕は必ず……この試合で鉄人……アンタを病院か天国へ送ってやる……!」

「ほう、威勢がいいな」

 

 フォークボールを投げると雄二に目で伝える。それと同時に球を握る力を強める。召喚獣を使役する事なら僕は誰にも負けないと周りから言われてきたが、鉄人との勝負は何を隠そう、これが初めてである。故に……

 

「ッ!」

 

 球を投げる。絶妙な角度で曲がったフォークボールは雄二のミットの元へすっぽり収まる。

 

「ストライク!」

「やるな」

『次は低めのカーブで』

 

 雄二の指示に従いつつ早めで投げる。2回目の球も動かない。なんだと言うんだ?まだ様子見できるのか?

 

「……見切った、来い」

「……舐めやがって……!」

 

 球を受け取り、雄二の指示を待つ。

 

『勝負に出ろ。ストレート、早め』

 

 今までで速い球を見せてやる。そう思案した球はド真ん中に投げられた。よし、この速さなら打てるわけ……

 

「ぬぅんッ!」

 

 だが鉄人は目を細め召喚獣は握る力を強め、フルスイングで迎え撃った。流石は他と違って身体を鍛えてるだけはある……!だが、球はゆったりと真上かつ場外へ行こうとしている。逃がすものか……!

 

「アンタだけには負けない……ッ!でぇいッ!」

 

 ミットを投げ、ボールを掴ませた上で召喚獣をジャンプさせ、ヤミがやってみせたようにホームランになるはずだった球をアウトにした。

 

「アウト!チェンジ!」

「むぅ……!」

「……それで本気か?なら僕らには勝てないぞ」

「……言ってくれるではないか」

 

 そろそろヒートアップも最高潮。攻撃は最大の防御であるが、次1点取れるか怪しい所だ。

 

「4番ララ・サタリン・デビルーク!行きまーす!サモン!」

 

 打順を変更した上で4番はララにし、その後は僕。そして康太。科目はなんだ……?

 

 Fクラス ララ・サタリン・デビルーク

 保健体育 499点

 

 VS

 

 補習教師 西村宗一

 保健体育 700点

 

 ……化け物か。ほぼ点数700点以上という事か?総合科目エグそう。

 

「次はデビルークか」

「こーい!鉄人の球を打つよ!」

「西村先生と呼ばんかッ!」

 

 投げられた球に対しララは空振り。これで1ストライクだ。

 

「諦めたらどうだ?デビルーク、野球をした事もないのだろう?」

「……まぁ、した事ないね……でも。諦めたらそこで何もかも終わりでしょ?なら諦める訳にはいかないよ。……私も諦めが悪いんだよ!」

 

 そう言ってバットを構える。なんとバントの形で。

 

「ま、待て!お前それは勝負を捨ててるようなもんだぞ!」

 

 雄二が叫ぶが、ララは秘策ありと言った顔をした。黙って見ていろの顔。大丈夫なのだろうか……?

 

「真っ向にやって勝てないなら策を弄するまでだよ!」

「ほう?その策を見せてもらいたいものだな……っ!」

 

 再度同じコースで投げられた球。先程より少し早めではある。だがララは見切った上でバットに当てた。

 

 ヒットした球は地面にめり込んでしまう。ま、まさか……

 

「にひひっ、取れるものなら取ってみなよ!」

「なっ……!?球が埋まって……!取れない……!?」

 

 考えたな。教師達も召喚獣を使う回数は少ない。故に細かい動作は出来ない。地面から球を掻き出そうとしても、球は埋まっていくばかり。

 

「何をしておられるか寺井先生!」

「し、仕方ないでしょう!?取ろうとしたらするほど球が……!」

「これで……!終わり、だよ!」

 

 なんとそのまま一塁に走って、二塁、三塁……そしてホームベースに戻って来た。つまりは僕らの得点である。

 

「1点ゲットー!」

「うおおおおお!すげぇぇぇぇ!!」

「デビルークさん素晴らしいー!」

「一発限りの隠し球だけど効いて良かったよー!さぁ、次は明久だよ!」

「……大口叩いたんだ。勝ってこい」

「……無論だ」

 

 立ち上がってホームベースに行き、召喚獣を呼び出す。

 

 補習教師 西村宗一

 保健体育 700点

 

 VS

 

 Fクラス 吉井明久

 保健体育 301点

 

「さて、一点取られたがお前が相手なら……」

「勝てると思ってるのか……本当に、本当になんも見えてないな」

「……なんだと?」

「投げろ。……全ての答えは投げてからわかる」

 

 鉄人が訝しみながら玉を投げる。無論、どんなコースを投げてきても動かない。

 

「……何故動かない?」

「……そんな疑問を投げる以前にさっさと二球目を投げたらどうだ」

「おい明久!ここでお前が取らなかったら……!」

「……黙ってろ、勝ちたいんだろ」

 

 ベンチを黙らせて二球目。これまた動かない。2ストライクとなってしまったが、僕としてもこれでいい。この状況がとても好ましい。

 

「……さてと。もう満足したか?処刑の時間だ」

「……なんだと?」

「さぁ、三球目を投げろ。……約束の時だ」

「ふんっ!」

 

 今までで一番早い球を投げる鉄人の召喚獣。もう全て見切っている。

 全ての力を込め、フルスイングし、球を打ち返す。……鉄人の召喚獣の股間目掛けて。

 

 鉄人の召喚獣の股間にクリーンヒットした球は鉄人の召喚獣毎ホームランの場外へと飛んでいってしまった。ホームランはフィールド範囲外なので鉄人の召喚獣は消えてしまったが、鉄人の顔が真っ青になってしまう。

 

「ぐぉぉぉぉっ!?」

「……約束しただろ。僕はアンタの股間にホームランを打つと。……最初から全力を出てない奴なんざに負けるわけねぇだろうがぁッ!」

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」

 

 Fクラスだけではなく他の男子生徒からも歓声が上がる。鉄人は青い顔をして泡を吹きながら倒れていた。

 

 ホームベースに帰ってきたと同時に審判から声を掛けられる。

 

「えー、吉井君。学園長がお呼びです」

「分かりました」

 

 スッキリしたのでダークネスを解除して学園長の元へ行く。そして学園長室に入って最初の一言が……

 

「吉井、お前は停学さね」

 

 まぁ、そうなりますよね。全くもって無問題なんだけど。

 

「まさか本当に実行するとは……まぁアタシもフィードバックを消し忘れていたからアタシの責任でもあるんだがねぇ……既に三人病院送りにしてしまってるのに関しては目を瞑るにしても、教師はまずいさね」

「なんで三人は目を瞑れるんですか」

 

 なかなか狂ってる。が、ここで……

 

「試合はお前達の勝ちさね」

「……え?」

「海外のスポンサーも満足していたし、教師陣の召喚獣の扱いがまだまだというデータも取れた。腕輪の件は仕方ないが、扱いに関しては改良の余地があるからね。あのままやっても多分教師は負けていた。故に試合を切り上げさせてもらった。交流試合故に体のいい事はいくらでも言えるさね」

「……じゃあ……」

「持ち物検査で没収した物を返還しよう」

 

 こうして、僕の停学と引き換えに戦いは集結を迎えた。

 

 

 ◆

 

 

「優勝は3年Eクラス!」

 

 閉会式も終わり、なんとか帰って来れた。エロ本とかも返ってきたのだが、クラスメイトの僕を見る目がなんか変だ。

 

「どうかした?」

「す、すいません!吉井さん!」

「な、何さ?なんでそんな怖いものを見る目を……」

 

 そう言うとハッとして僕の顔を見る面々。そして胸を撫で下ろした。

 

「あ、あれ……いつもの吉井じゃん……」

「試合が終わるまでお前めっちゃ怖かったから……」

 

 殺気が凄かったとか雄二が震えていたとか色々聞かされる。割と無自覚なんだな、ダークネスになると……

 

「……あー……もうならないから、多分……」

「聞いたぜ、お前停学だとか」

「長い休みがやって来たんだ……でぇっ!」

 

 後ろから物凄い勢いで殴られた。後ろに立っていたのはエプロンを身につけた美柑だった。

 

「聞いたよアキ、また悪さして停学なんて……」

「み、美柑!?なんで!?」

「モモさんから連絡を貰ったの。全く、何度言っても聞かないんだから……」

「……吉井、妹に叱られてるのか……」

「来なさい!今日という今日はお説教!因みにお説教したい人はいっぱい居るんだからね!」

 

 ララ達が般若のような顔をしてこちらを見下ろしていた。う、嘘だろ?

 

「……やっぱ俺ハーレムじゃなくていいや」

「……あれ見たらハーレムなんて……吉井、強く生きてくれ」

「や、やだぁ!助けろぉぉぉぉぉ!」

「まぁ、当然だわな」

「……雄二、お仕置き」

「翔子!?何故だぁぁぁぁぁ!!」

 

 雄二が引き摺られるのを見ながら家まで引き摺られ、帰ってきてから地獄のお説教が始まった。お説教から解放されたのはなんと4時間後の事であった────────

 

 

 




体育祭編終わりです。次からどうしようか悩んでおります。
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